【解決手段】タンク1内外の圧力差を利用してタンク1内に微細物16を移送する微細物の移送方法であって、当該方法は、タンク1の内外に延びる微細物誘導部9の先端に設けられタンク1内で鉛直下方または鉛直斜め下方に開口する先端開口9Bを、タンク1に貯留された液体15中に没入する先端没入工程と、微細物誘導部9内に気体を導入し、当該気体を先端開口9Bから放出させる気体放出工程と、気体放出工程の継続中、微細物誘導部9および先端開口9Bを介して、微細物16をタンク1内の液体15中に移送する微細物移送工程と、を含む。
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の微細物の移送方法によって移送された前記微細物を前記液体と共に撹拌して当該液体中に溶解させることを特徴とする微細物の溶解方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、微細物の上向き誘導法に関しては、多くの問題が存在する。
まず、微細物の吸引時、液体が吸引誘導管へ逆流するという問題が挙げられる。微細物の吸引速度が安定し、タンク内負圧(吸引圧力)が安定している場合には逆流は起こり難い。しかし、例えば微細物が粉体である場合、粉体の流れは摩擦やブリッジの形成などによって変動しやすく、その吸引速度が安定し難い。このため、移送する粉体の流量が急激に増加すると、タンク内負圧が低下して吸引力が大きく低減する場合があり、このとき逆流が生じる。
【0009】
また、逆流防止バルブは、タンク内の液体の逆流を防ぐために、タンク内の負圧がある一定値より小さくなると自動的に閉じるように設計されている。
しかし、逆流防止バルブを閉じるための制御には高速性が要求され、また、タンク内の負圧の閾値の設定は粉体の性質に依存するため、その設計には困難が伴う。また、逆流防止バルブによって、溶解液の製造時にトラブルが発生することもある。例えば、一般的に逆流防止バルブはバタフライバルブ等から構成されるが、このバタフライバルブが頻繁に動作することにより、パッキンの消耗が激しく、漏れや滲み出しが発生しやすい。
【0010】
さらに、上向き誘導法では、吸引誘導管がタンク底部に接続されるため、液体の自重による圧力が、常時、吸引誘導管の出口に加わる。これにより、液体が吸引誘導管へ逆流し易くなる。
【0011】
一旦、液体が吸引誘導管へ逆流すると、微細物が粉体である場合、粉体が吸引誘導管内面に付着したり、部分的に膨潤してダマを形成したりして、吸引誘導管が閉塞する。これを復旧するためには、製造を停止して、吸引誘導管を洗浄し、その内面を乾燥させる必要がある。このため、復旧には非常に時間がかかり、製造上の大きなリスクとなっている。
【0012】
本発明の目的は、液体の逆流のリスクが少なく、微細物を液中へ安定して供給できる微細物の移送方法、微細物の移送装置、微細物の溶解方法、および微細物の溶解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の微細物の移送方法は、タンク内外の圧力差を利用して前記タンク内に微細物を移送する微細物の移送方法であって、前記タンクの内外に延びる微細物誘導部の先端に設けられ前記タンク内で鉛直下方または鉛直斜め下方に開口する先端開口を、前記タンクに貯留された液体中に没入する先端没入工程と、前記微細物誘導部内に気体を導入し、当該気体を前記先端開口から放出させる気体放出工程と、前記気体放出工程の継続中、前記微細物誘導部および前記先端開口を介して、前記微細物を前記タンク内の前記液体中に移送する微細物移送工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
なお、本発明における液体とは、水のような低粘度の流体から、見掛け粘度が1000Pa.s程度の高粘性流体までの全ての流体をいう。また、本発明における微細物とは、乾燥した粉体、小固形物、ファイバー状物などの真空吸引可能な全ての乾物をいう。
【0015】
本発明は、まず、液体の逆流を抑制するために、微細物誘導部による微細物の導入を下向きに行う方法、つまり、下向き誘導法を採用している。すなわち、本発明では、タンク内で鉛直下方または鉛直斜め下方に開口する微細物誘導部の先端開口を、タンクに貯留された液体中に没入する先端没入工程を行う。これにより、タンク内の液体自重の圧力による逆流を防止できる。さらに、微細物誘導部とタンクとの接合部分に逆流防止バルブを設ける必要がなく、タンク内圧力の変動に伴う逆流防止バルブの開閉制御が不要であるうえ、パッキン等の老朽化による漏れや染み出しも発生しない。
【0016】
ここで、本発明者らは、下向き誘導法を採用した微細物誘導部の内面に濡れが発生するメカニズムに関して実験的な分析を行った。その結果、微細物誘導部の内面が濡れる場合、液体中にある先端開口から液体が逆流すること、微細物誘導部の内側に形成される液面に上下の揺れが存在すること、微細物誘導部の内側に形成される液面とタンク内の液面との差圧によって微細物誘導部内への液面の押し込み現象が発生することが原因となることを発見した。
【0017】
そこで、本発明では、上記押し込み圧よりも強い内圧を微細物誘導部に保持するために、外部から微細物誘導部内に気体を導入している。すなわち、本発明では、気体導入部によって前記微細物誘導部内に気体を導入し、当該気体を前記先端供給口から放出させる気体放出工程を行う。これにより、気体が微細物誘導部中に常時満たされ、移送路内面を乾いた状態で保持できる。
なお、実際には気体の流量は、微細物の供給が無いときに、微細物誘導部の先端開口から常時気泡が液体中に開放される程度で十分である。ただし、気体の流量が少な過ぎると逆流の危険性があり、逆に多過ぎるとタンク内負圧が小さくなる危険性があるために、流量を安定化させることが重要である。
【0018】
また、本発明では、気体放出工程の継続中に微細物移送工程を行う。これにより、供給口から気体が放出されるのみならず、タンク内の負圧によって吸引された微細物が放出されるため、さらに液体の逆流は発生し難くなる。よって、微細物の流量の変動に関わらず、微細物誘導部の内面の濡れや液体の逆流を完全に防止できる。
【0019】
したがって、本発明によれば、逆流のリスクが少なく、微細物を液中へ安定して供給する微細物の移送方法を提供することができる。
【0020】
なお、本発明の気体放出工程は、従来の上向き誘導法に用いることができない。仮に、従来の上向き誘導法を行う吸引誘導管に気体を導入すると、吸引誘導管とタンクとの接合部分付近で気体と液体の置換が起こり、その結果、液体の逆流が発生してしまう。すなわち、本発明の気体放出工程は、本発明の下向き誘導法に対してのみ有効である。
【0021】
本発明の微細物の移送方法において、前記気体放出工程の継続中、前記タンク内に前記液体を貯留することによって前記先端没入工程を実施してもよい。
また、本発明の微細物の移送方法において、前記気体放出工程の継続中、前記液体が貯留された前記タンクに前記微細物誘導部を設置することによって前記先端没入工程を実施してもよい。
【0022】
本発明の微細物の移送方法において、前記微細物誘導部に前記微細物を導入する第1導入口と、前記移送路に前記気体を導入する第2導入口とは異なることが好ましい。
本発明の微細物の移送方法において、前記気体は、加圧または圧縮された空気または窒素であることが好ましい。
【0023】
本発明の微細物の移送装置は、タンク内外の圧力差を利用して前記タンクの外部から前記タンク内に微細物を移送する微細物の移送装置であって、前記タンクの内外に延びる流路を構成する微細物誘導部と、前記微細物誘導部に気体を導入する気体導入部と、を備え、前記微細物誘導部は、前記タンク内で鉛直下方または鉛直斜め下方に開口している先端開口を有することを特徴とする。
このような微細物の移送装置によれば、上述と同様の効果を奏する。
【0024】
本発明の微細物の移送装置において、前記微細物誘導部には、前記微細物が導入される第1導入口と、前記気体導入部から前記移送路に前記気体が導入される第2導入口とがそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0025】
本発明の微細物の移送装置において、前記微細物誘導部は、前記タンクの上部、周壁、または底部を貫通していてもよい。
または、本発明の微細物の移送装置において、前記微細物誘導部は、前記タンク内で鉛直下方または鉛直斜め下方に向かって延びる先端部位を有しており、前記先端開口は、前記先端部位に設けられていてもよい。
【0026】
本発明の微細物の移送装置において、前記気体は、加圧または圧縮された空気または窒素であることが好ましい。
【0027】
本発明の微細物の溶解方法は、以上に説明したいずれかの微細物の移送方法によって移送された前記微細物を前記液体と共に撹拌して当該液体中に溶解させることを特徴とする。
このような微細物の溶解方法によれば、微細物の溶解液を安定して製造することができる。
【0028】
本発明の微細物の溶解装置は、液体が貯留されるタンクと、前記タンク内に前記液体を供給する液体供給部と、前記タンク内を減圧する減圧部と、以上に説明したいずれかの微細物の移送装置と、移送された前記微細物を前記液体と共に撹拌する撹拌部と、を備えることを特徴とする。
このような微細物の溶解装置によれば、上述と同様に、微細物の溶解液を安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を
図1に基づいて説明する。
図1において、本実施形態に係る溶解装置101は、液体15が貯留される密閉式のタンク1と、タンク1内に液体を供給する液体供給部25と、タンク1内を減圧する減圧部26と、粉体等の微細物16をタンク1内に移送する移送装置27と、移送された微細物16を液体15と共に撹拌する撹拌部28とを備える。
微細物16は、粉体や小固形物、あるいはファイバーなどである。
【0031】
タンク1は、金属やプラスチックなどで構成されており、タンク1内部の減圧に耐える強度を有する。減圧の度合いは、微細物16の供給速度や液体15の粘度、あるいは液体15に対する微細物16の混合比率などの製造条件や、微細物16の比重や付着性、あるいは安息角などの微細物16の物理的特性に依存する。例えば、タンク1は、絶対圧力で約50kPa程度の耐圧性を有することが好ましく、絶対真空まで耐える強度を持つことがより好ましい。
【0032】
タンク1は、上部112と、周壁113と、底部114とを有する。タンク1の底部114には、ミックス(液体15に微細物16を溶解させることで得られる溶解液)を排出する排出パイプ2と、排出バルブ3とが設置されている。
【0033】
液体供給部25は、液体供給源24と、液体バルブ23と、液体流量調整部22とを有する。液体供給源24から供給された液体15は、液体バルブ23を通り、液体流量調整部22を経由してタンク1に供給される。
液体15としては水が一般的であるが、これに限定しない。液体は必要があれば加熱されて供給される。
なお、タンク1内に液体15が供給されたとき、タンク1内では気体と液体15とが分離して存在し、この境界に液面が形成される。この液面より上側に存在する空間をヘッドスペースHと称する。
【0034】
減圧部26は、タンク1を減圧する真空ポンプ14と、タンク1の内部圧力を調整する圧力調整部11と、タンク1の内部圧力を計測する圧力計10と、真空ポンプ14の前段に設置され、タンク1の内部圧力の変動抑制と真空ポンプ14の保護を行うバッファタンク12とを有する。
減圧部26は、タンク1の上部112に接続され、ヘッドスペースHの気体を吸引することにより、タンク1内を減圧する。
バッファタンク12の容量は可能な限り大きくすることが望ましい。これにより、タンク1の内部圧力の変動によって引き起こされる微細物16の流量変動を緩和することができる。なお、バッファタンク12で気液分離された液体(ドレイン)はドレインバルブ13を開けて排出される。
【0035】
撹拌部28は、タンク1の上部112に設置された撹拌動力部4と、これに連結された撹拌翼5とを有する。
【0036】
移送装置27は、微細物供給ホッパー6と、微細物流量調整部7と、微細物バルブ8と、微細物誘導部9と、気体導入部20とを有する。
【0037】
微細物供給ホッパー6は、内側に微細物16を収容しており、その底部には微細物流量調整部7が接続されている。
微細物流量調整部7は、簡易なものとして、口径を調整したレデューサーやオリフィスなどを利用できる。また、動力を用いるものとして、市販のオーガスクリューや回転型の定量供給装置などを利用できる。
微細物流量調整部7の下方には、微細物16の供給の開始または停止を行う微細物バルブ8が設けられている。
【0038】
微細物誘導部9は、例えば管であり、タンク1の内外に延びて微細物16をタンク1の外部から内部まで誘導する流路を構成している。微細物誘導部9は、タンク1の外部の一端側に設けられた第1導入口9Cを有する。第1導入口9Cは、微細物バルブ8に接続されている。また、微細物誘導部9は、タンク1の内部の他端側に設けられた微細物排出部21を有する。微細物排出部21は、例えばノズルであり、タンク1内で開口している先端開口9Bを有している。先端開口9Bは、タンク1内の液体15中に没入される。
【0039】
また、微細物誘導部9の流路本体は、タンク1の上部112を貫通している。微細物誘導部9のうちのタンク1内部で延びる部分を移送路9Aと称する。第1実施形態では、移送路9Aは、タンク1の上下方向(重力方向)に沿って直線状に配置されている。また、先端開口9Bは、鉛直下方に向かって開口している。
【0040】
気体導入部20は、気体供給源17と、気体導入流路29と、気体導入流路29の途中に設けられた気体流量調整部18と、気体バルブ19とを有する。気体導入流路29の一端は、気体供給源17に接続され、気体導入流路29の他端は、微細物誘導部9に設けられた第2導入口9Dに接続されている。
【0041】
微細物誘導部9において、第2導入口9Dが設けられる位置は、第1導入口9Cよりも下流側であり、本実施形態では移送路9Aの上流端近傍である。
気体導入流路29は、例えば、微細物誘導部9の第2導入口9Dから先端開口9B側に向かって延びる直近部分の延伸方向に沿って配置される。
【0042】
気体供給源17が供給する気体としては、空気を使用できるが、微細物16や液体15の酸化を防止したい場合は窒素ガスなどを使用できる。供給方法としては圧縮ボンベや、コンプレッサーあるいはブロワーなどで加圧した気体を利用できる。なお、微細物誘導部9内の微細物16の有無に関わらず、微細物誘導部9に一定流量の気体を導入するという条件が満たされれば上述の気体の供給方法に限定されない。
【0043】
以上の移送装置27において、微細物供給ホッパー6から供給された微細物16は、微細物流量調整部7および微細物バルブ8を経由して微細物誘導部9に導入される。微細物誘導部9は、タンク1の内部に微細物16を誘導し、先端開口9Bを介してタンク1内の液体15中に微細物16を供給する。移送装置27における微細物移送の駆動力は、減圧部26により発生したタンク1内外の圧力差である。
【0044】
また、気体供給源17から供給された気体は、気体流量調整部18により一定流量に調整され、気体バルブ19を介して、微細物誘導部9の第2導入口9Dに供給される。微細物誘導部9に供給された気体は、単独または微細物16と混合されて、先端開口9Bを介してタンク1内の液体15中に放出される。
【0045】
なお、気体の流量は、微細物16の供給速度や液体15の粘度などの製造条件、微細物16の比重や付着性などのような微細物16の物理的特性、また微細物誘導部9や移送路9Aの口径や形状、あるいは移送路9Aに掛かる圧力など多くの因子に依存する。本実施形態では、少なくとも、タンク1内を溶解条件に基づいて減圧した状態で、微細物16の供給が無いときに、先端開口9Bから一定量の気泡が連続して放出される最低減の流量程度があればよい。
また、液体15の粘度が高い場合や、移送路9Aに掛かる圧力が高い場合などでは、気体流量を高めることが好ましいが、タンク1内の減圧度が低下しない程度に設定することが望ましい。
【0046】
第1実施形態の溶解装置101における移送方法および溶解方法について、以下に説明する。本実施形態の溶解装置101は、バッチ運転または連続運転によって運転される。
【0047】
溶解装置101をバッチ運転する場合について説明する。
(1)気体導入部20から気体を微細物誘導部9に一定流量で継続して導入して先端開口9Bから継続的に放出させる(気体放出工程)。
(2)液体供給部25からタンク1内に一定の容量の液体15を流入させ、タンク1内に液体15を貯留していくことによって先端開口9Bを液体15中へ没入させる(先端没入工程)。
(3)撹拌翼5を所定の回転数で回転させる。
(4)真空ポンプ14でタンク1内を所定の圧力に減圧する。
(5)微細物バルブ8を開けて一定量の微細物16をタンク1内に移送する(微細物移送工程)。
(6)撹拌が完了したら排出バルブ3を開けて液体15と微細物16が撹拌混合されたミックスを全て外部に排出する。
以上の工程(1)〜工程(6)により、初めのバッチ運転を完了する。
【0048】
なお、工程(1)の気体放出は、工程(2)から工程(5)が完了するまでの間で継続し、さらに工程(6)の後まで継続することが好ましい。また、工程(6)において、撹拌翼5を停止し、また真空ポンプ14を停止してタンク1内の減圧を解除することが好ましい。また、工程(2)〜工程(4)は、必要があれば順序を任意に変更することができる。工程(1)と工程(2)とは、移送路9Aの濡れをより完全に防止するために、この順で行うことが好ましい。
【0049】
初めのバッチ運転が完了すると、同様の工程によって次のバッチを処理する。このとき、工程(1)の気体放出は、微細物誘導部9の内面が濡れるのを防ぐために、バッチ運転間においても継続して行うことが望ましい。
【0050】
溶解装置101を連続運転する場合について説明する。
(1)気体導入部20から気体を微細物誘導部9に一定流量で継続して導入して先端開口9Bから放出させることを開始する(気体放出工程)。
(2)液体供給部25からタンク1内に一定の流量で液体15を流入することを開始する。タンク1内に液体15を貯留していくことによって先端開口9Bを液体15中へ没入させる(先端没入工程)。
(3)撹拌翼5を所定の回転数で回転させる。
(4)真空ポンプ14でタンク1内を所定の圧力に減圧する。
(5)微細物バルブ8を開けて一定の流量で微細物16の移送を開始する(微細物移送工程)。
(6)排出バルブ3を開け、タンク1内の液面が一定の高さを保つように、液体15と微細物16が撹拌混合されたミックスを外部に排出する。
以上の工程(1)〜工程(6)により、溶解装置101の連続運転が行われる。
【0051】
なお、上述のバッチ運転の場合と同様、工程(1)の気体放出は、工程(2)から工程(5)が完了するまでの間で継続し、さらに工程(6)の後まで継続することが好ましい。また、工程(2)〜工程(4)は、必要があれば順序を任意に変更することができる。工程(1)と工程(2)とは、移送路9Aの濡れをより完全に防止するために、この順で行うことが好ましい。
【0052】
以上の第1実施形態によれば、微細物誘導部9の内部は、常に、気体導入部20より供給される気体、あるいは、気体と微細物16の混合物により充満される。これにより、液体15が先端開口9Bから微細物誘導部9に逆流することを防止することができる。よって、安定的かつ衛生的に微細物16を供給することができる。
【0053】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態を
図2に基づいて説明する。
第2実施形態の溶解装置102は、移送装置27が遠方からの微細物16の移送に適した構成を採用している点が第1実施形態と異なっており、他の構成は第1実施形態と同様である。第2実施形態では、第1実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
遠方からの微細物16を移送する場合、微細物16と微細物誘導部9との摩擦抵抗により微細物16が流れ難くなり、微細物誘導部9が閉塞してしまうことがある。これを改善するには、タンク1の減圧度を高めることが考えられるが、タンク1内の液体15を加熱している場合は、減圧による沸騰や、回転中の撹拌翼5でキャビテーションが発生しやすくなる。また、連続運転の場合は、タンク1内から外部への排出量が減少する。
【0055】
そこで、第2実施形態は、遠方にある微細物供給ホッパー6の近傍から一定流量の気体を供給するように構成されている。
具体的には、気体導入用の第2導入口9Dは、第1導入口9Cの下流側であって、第1導入口9Cに近い位置に設けられる。また、気体導入流路29は、微細物誘導部9の第2導入口9Dからタンク1の近傍まで直線状に延びる部分の延伸方向に沿って配置される。
【0056】
この構成によれば、微細物16と気体が適度に混合されて微細物誘導部9内を流動し易くなり、流速の低下や閉塞が起き難くなる。また、仮に閉塞を起こした場合でも、微細物バルブ8を閉じてから、気体流量調整部18を調整して一時的に気体の流量を高めることによって、閉塞を解消することができる。閉塞が解消された後は再度、気体の流量を元の状態に調整し、安定運転に復帰することができる。
【0057】
したがって、第2実施形態によれば、第1実施形態の効果を奏すると共に、減圧したタンク1へ遠方から微細物16を安定的に供給することができる。
【0058】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態を
図3に基づいて説明する。
第3実施形態の溶解装置103は、タンク1の上部112に設置された撹拌部28の替わりに、タンク1の底部114に設置された撹拌部31を備える点が第1実施形態と異なっており、他の構成は第1実施形態と同様である。第3実施形態では、第1実施形態と同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
撹拌部31は、インペラ32、ステータ33、およびモータ34を有している。ステータ33は、タンク1内に配置された環状の部材であり、インペラ32を内側に収容する。ステータ33には、液体15が流通可能な複数の孔が設けられている。インペラ32は、モータ34に接続された軸35、および、軸35に設けられた複数の羽根36を有する。インペラ32の羽根36とステータ33との間には隙間が存在し、モータ34の駆動によってインペラ32が回転する。
【0060】
このような構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、後述する変形例と組み合わせることによって、微細物16の溶解をより好適に行うことができる。
【0061】
[変形例]
なお、本発明は、以上に説明した各実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での手順の変更、部品の数や形状、種類の変更などは、本発明に含まれる。
【0062】
(微細物誘導部の変形例)
上述の各実施形態において、微細物誘導部9を
図4〜
図6に示すように構成することができる。なお、
図4〜
図6では、タンク1および微細物誘導部9を模式的に示しており、他の要素の図示を省略している。
【0063】
図4(A)〜
図4(C)は、微細物誘導部9が、タンク1の周壁113を貫通している例を示している。各変形例において、移送路9Aは、重力方向に平行な面内で延伸方向を変える湾曲部位9A1と、鉛直下方または鉛直斜め下方に向かって延びる先端部位9A2とを有している。
【0064】
図5の(A)〜
図5(C)は、タンク1よりも下側から延びた微細物誘導部9が、タンク1の周壁113または底部114を貫通している例を示している。各変形例において、移送路9Aは、重力方向に平行な面内で延伸方向を変える湾曲部位9A1と、鉛直下方または鉛直斜め下方に向かって延びる先端部位9A2とを有している。
【0065】
図4および
図5に示すような構成によれば、微細物供給ホッパー6の設置高さがタンク1の底部114に近い場合などに、微細物誘導部9の長さを短縮でき、微細物16の移送時の抵抗を低減することができる。また、第1および第2実施形態における撹拌部28や、第3実施形態の撹拌部31などの近くに、先端開口9Bを配置することが容易になる。これにより、液体15中に供給された微細物16が即座に撹拌されるため、溶解を迅速化することができる。
【0066】
図4および
図5に示す各変形例において、微細物誘導部9の一端は、微細物供給ホッパー6に接続されていなくともよい。例えば、微細物誘導部9は、微細物16を収容する他の収容容器に接続されてもよい。また、微細物誘導部9と湾曲可能なホースとを接続することにより、人手で上下左右に移動できる吸引ノズルを実現してもよい。これらの場合、微細物誘導部9にポンプ等の搬送装置を設け、当該搬送装置が微細物16の移送を補助してもよい。
【0067】
図6(A)〜
図6(C)は、移送路9Aの湾曲部位9A1が、重力方向に平行な面内で大きく湾曲している例を示している。具体的には、湾曲部位9A1は、
図6(A)では一回転しており、
図6(B)ではS字状蛇行しており、
図6(C)では螺旋状に下降している。なお、移送路9Aの先端部位9A2は、鉛直下方に向かって延びている。
【0068】
このような構成によれば、移送路9Aの湾曲部位9A1の一部が気体の貯留部として働くため、移送路9Aの内部で気体の内圧を高めることができる。これにより、液体15の逆流防止効果をより高めることができ、液体15の粘度が高い場合などに好適である。特に、
図6(C)では、移送される微細物16に遠心力が加わるため、液体15の逆流防止効果をさらに高めることができる。
【0069】
(微細物排出部21の変形例)
上述の各実施形態において、微細物排出部21を
図7〜
図9に示すように構成することができる。なお、
図7〜
図9では、微細物排出部21を模式的に示している。
【0070】
図7(A)〜
図7(C)は、微細物排出部21の流路幅の例を示している。具体的には、微細物排出部21内の流路幅は、
図7(A)では一定であり、
図7(B)では先端に向かって狭まっており、
図7(C)では先端に向かって広がっている。
【0071】
図8(A)〜
図8(D)は、微細物排出部21の構成および先端開口9Bの向きの例を示している。具体的には、
図8(A)では、微細物排出部21が重力方向に対して斜めに配置され、先端開口9Bが鉛直斜め下方に開口している。
図8(B)では、微細物排出部21が重力方向に対して斜めに配置され、その先端が斜めに切り取られた形状をしているため、先端開口9Bが鉛直下方に開口している。
図8(C)では、微細物排出部21が重力方向に対して斜めに配置され、その先端が折れ曲がった形状をしているため、先端開口9Bが鉛直下方に開口している。また、
図8(D)では、微細物排出部21が重力方向に沿って配置され、その先端が斜めに切り取られた形状をしているため、先端開口9Bが鉛直斜め下方に開口している。
【0072】
これらの変形例は、液体15および微細物16の各物理的特性、溶解液の製造条件、ならびに、微細物誘導部9の全体的な構成など、様々な条件に合わせて選択可能である。
【0073】
例えば、
図7(B)に示す構成によれば、微細物排出部21の内部で気体の内圧を高めることができ、これにより、液体15の逆流防止効果をより高めることができる。また、
図7(C)に示す構成では、微細物排出部21から一部の気体が液体15と置換しても、液面が変化しにくいため、微細物排出部21の内部の濡れをより防止できる。
また、
図8(A)および
図8(D)に示す構成は、微細物排出部21の先端内部の濡れを抑制するために、先端開口9Bから放出される気体の流量が多い場合などに選択することが好ましい。
【0074】
図9(A)に示す構成では、微細物排出部21は、その内面側に撥水性材料によるコーティング部211を有している。
図9(B)に示す構成では、微細物排出部21は、撥水性材料から構成された先端部分212を有している。撥水性材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を利用することができる。
このような構成によれば、微細物排出部21の内面が濡れ難くなり、微細物16が先端開口9B付近で凝集付着することを抑制できる。これにより、微細物を液中へより安定して供給することができる。
また、
図9(A)または
図9(B)に示すような撥水性材料を用いた構成を、上述の
図7〜
図8に示す構成に組み合わせてもよい。
【0075】
(微細物の移送方法の変形例)
第1実施形態では、移送路9Aの先端開口9Bを液体15中に没入させる手順として、微細物誘導部9の移送路9Aをタンク1内の所定位置に予め固定しておき、気体のタンク1外からの導入およびタンク1内放出を継続させながらタンク1内に液体15を貯留していく過程で、先端開口9Bを液体15中へ没入させている。この変形例として、気体の導入および放出を継続させながら移送路9Aを液体が予め貯留されたタンク1に設置することにより、先端開口9Bを液体15中へ没入させてもよい。
【0076】
(その他)
本発明は、微細物の液体への移送方法および溶解方法を提供するものであるが、本発明のタンクに他の液体を負圧吸引することを組み合わせて行ってもよい。なお、本発明のタンクに他の液体を負圧吸引する方法としては、従来の負圧吸引技術を用いることができる。
例えば、タンク1内の液体15に、従来の負圧吸引技術で吸引した他の液体を溶解してから、移送装置27によって移送した微細物16を溶解してもよい。あるいは、移送装置27によって移送した微細物16を液体15に溶解してから、その溶解液に従来の負圧吸引技術で吸引した他の液体を混合してもよい。
すなわち、従来技術による他の液体の溶解は、本発明による微細物の溶解過程を妨げない範囲で、本発明のタンクにおいて任意に実施することができる。
【0077】
なお、粉体の移送性を高める従来技術として、粉体に多量の気体を混合して粉体の流動性を高める粉体流動化技術があるが、この流動化技術と本発明が提供する気体導入方法とは本質的に異なる。
すなわち、粉体流動化技術とは、粉体を貯留したホッパーにおいて、その底面から多量の気体を粉体内に導入し、粉体と気体の動的な混合状態を形成してこれを維持させ、粉体の流動性を高める技術である。このため、気体導入の位置は粉体を貯留するホッパー近傍に限られる。さらに、粉体と気体は容易に分離してしまうために、この動的な混合状態を維持するに極めて多量の気体の供給を継続する必要がある。
【0078】
一方、本発明が提供する気体導入方法は、タンク内外の差圧を利用して微細物をタンク内の液面下に導入するための技術であり、液面下に没入した先端開口の内側を乾いた状態に保持することを目的としている。このため、導入する気体の量は、タンク内の負圧を維持する程度の微量である。したがって、本発明が提供する気体導入方法では、粉体の流動化は発生せず、また必要ともしない。このため、本発明における気体導入は、微細物誘導部の先端開口より上流側の任意の位置に設定できる。
このように本発明における気体導入は、従来の粉体流動化技術とは異なる方法により、タンク内の負圧を低下させないで微細物流動部への液体の逆流を完全に防止するという新たな効果を奏する。
【実施例】
【0079】
本発明の各実施例を以下に示す。
[実施例1]
図1に示すような構成で製作した溶解装置に、本発明による微細物の移送装置を設置し、微細物として脱脂粉乳、液体として水を使用してバッチ型の溶解試験を行った。試験条件を以下に示す。
<装置条件>
タンク内全容量 : 150L
撹拌翼形状 : 直径150mm×幅30mm×3枚の平板状インペラ
移送装置 :
・1インチのステンレス製サニタリーパイプを使用。
・タンク上方より導入し、タンク内液面下20cmにパイプ出口を設定。
・円錐状ホッパー(20L)の下に、微細物バルブとしてボールバルブを設置。
・バルブの後段(タンク側)に、圧力調整器と流量計から成る気体供給装置を設置。
・タンクと微細物供給ホッパーの距離 : 約2m
<運転条件>
使用液体 : 20℃の水
使用気体 : コンプレッサー・エア
使用微細物 : 市販の脱脂粉乳
タンク内液量 : 100L
微細物の量 : 25kg
撹拌回転数 : 1500RPM
タンク内減圧度 : 絶対圧力で50kPa
気体の供給速度 : 1NL/s
微細物の供給速度 : 約1kg/s
<溶解試験の結果>
上記の装置および運転条件にて脱脂粉乳の溶解試験を行った。試験中、2回ほど意図的に微細物バルブを閉にして脱脂粉乳の供給を2〜3秒間停止し、しかる後再開させた。このとき気体は停止しないで供給し続けた。その結果、供給停止および再開操作においても、脱脂粉乳の供給は問題なく再開でき、閉塞などの問題は認められなかった。最終的に、溶解試験は良好に推移し、泡の発生も少なく、解け残りなどの無い均一な濃度の溶解液を得ることができた。
【0080】
[実施例2]
実施例1と同様な装置構成で、溶解時の粘度が高くなるCMCと水のバッチ型溶解試験を実施した。試験条件を以下に示す。
<装置条件>
実施例1と同じ装置構成。
<運転条件>
使用液体 : 65℃の水
使用気体 : コンプレッサー・エア
使用微細物 : CMC(カルボキシメチルセルロース)
タンク内液量 : 100L
微細物の量 : 1.5kg
撹拌回転数 : 2500RPM
タンク内減圧度 : 絶対圧力で50kPa
気体の供給速度 : 1NL/s
微細物の供給速度 : 約0.03kg/s
<溶解試験の結果>
上記の装置および運転条件にてCMCの溶解試験を行った。実施例1と同様に、気体供給は継続した状態で、試験中、2回ほど意図的にCMCの供給を2〜3秒間停止し、しかる後再開させた。その結果、供給停止および再開操作において、CMCの供給は問題なく再開でき、閉塞などの問題は認められず、粘度は上昇したものの溶解試験は良好に推移し、泡の発生も少なく、解け残りなどの無い均一な濃度のCMC溶解液を得ることができた。
【0081】
[実施例3]
実施例1と同様な装置構成で、脱脂粉乳と水の連続溶解試験を実施した。試験条件を以下に示す。
<装置条件>
実施例1と同じ装置構成に溶解液の外部への排出ポンプ(モーノポンプを使用)を加えた。
<運転条件>
使用液体 : 20℃の水
使用気体 : コンプレッサー・エア
使用微細物 : 市販の脱脂粉乳
タンク内液面位置 : 100L時の液面
撹拌回転数 : 1500RPM
タンク内減圧度 : 絶対圧力で50kPa
気体の供給速度 : 1NL/s
水の供給速度 : 2kg/s
微細物の供給速度 : 約0.5kg/s
外部への排出速度 : 2.5kg/s
<溶解試験の結果>
上記の装置および運転条件にて、約5分間の脱脂粉乳の連続溶解試験を行った。試験中、数回意図的に微細物供給バルブを閉にして脱脂粉乳の供給を2〜3秒間停止し、しかる後再開させた。このとき気体は停止しないで供給し続けた。その結果、供給停止および再開操作において、脱脂粉乳の供給は問題なく再開でき、溶解試験は良好に推移し、泡の発生も少なく、解け残りなどの無い均一な濃度の溶解液を得ることができた。
【0082】
[実施例4]
装置構成としては
図1とほぼ同じであるが、
図2に示すように微細物供給ホッパーを遠方に設置した構成で、微細物として脱脂粉乳、液体として水を使用してバッチ型の溶解試験を行った。試験条件を以下に示す。
<装置条件>
タンク内全容量 : 100L
撹拌翼形状 : 直径150mm×幅30mm×3枚の平板状インペラ
微細物供給装置 :
・2インチのステンレス製サニタリーパイプを使用。
・タンク上方より導入し、タンク内液面下20cmにパイプ出口を設定。
・円錐状ホッパー(20L)の下に、微細物バルブとしてボールバルブを設置。
・バルブの後段(タンク側)に、圧力調整器と流量計から成る気体供給装置を設置。
・タンクと微細物供給ホッパーの距離 : 約16m
<運転条件>
実施例1と同じ。
<溶解試験の結果>
上記の装置および運転条件にて脱脂粉乳の溶解試験を行った。実施例1と同様に気体の供給は停止しないで、試験中2回ほど意図的に微細物供給バルブを閉にして脱脂粉乳の供給を2〜3秒間停止し、しかる後再開させた。その結果、供給停止および再開操作において、脱脂粉乳の供給は問題なく再開でき、閉塞などの問題は認められなかった。最終的に、溶解試験は良好に推移し、泡の発生も少なく、解け残りなどの無い均一な濃度の溶解液を得ることができた。