【解決手段】光コネクタ1は、第一フェルール25に保持され、前端に第一突合面22を有する第一光ファイバ21と、第二フェルール45に保持され、前端に第二突合面42を有する第二光ファイバ41と、を備える。の光コネクタ1は、第一光ファイバ21の第一突合面22と第二光ファイバ41の第二突合面42とが、対向して配置され、第一光ファイバ21および第二光ファイバ41はプラスチック光ファイバからなり、第一突合面22と第二突合面42の間をゲル状透光体50又はゴム状透光体が埋める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバを備える車載ネットワークとして、MOST(Media Oriented Systems Transport)が知られているが、MOSTに使用される光ファイバとしては、POF(プラスチック光ファイバ:Plastic Optical Fiber)が知られている。ここで、POFは、典型的には、コアにアクリル樹脂が、また、クラッドにフッ素樹脂が用いられ、コアの径が980μm、クラッド径が1000μmと大口径を有する。
【0005】
一対のPOFの前端面に位置する突合面同士を接続するには、突合面を研磨して、シングルモードファイバに適用されるフィジカルコンタクトを一応は適用できるが、プラスチック製のPOFを研磨痕がなくなるまで研磨するには、相当の工数をかける必要がある。したがって、POFの突合面を研磨する工程を含む製造工程は、工業的な生産として現実的ではない。
また、POFをMOST、その他のネットワークに用いる場合に、長尺なPOFを所定の長さに調整する必要があるが、製造コストを考慮すると、刃物により切断するのが低コストでかつ作業効率もよい。ところが、切断された突合面の表面粗さが粗く起伏が激しいと、突合面の間を隙間なくすることは極めて困難である。特許文献1のように、屈折率整合性を有する単一層からなるシート状粘着材を突合面と突合面の間の接続部材として介在させることは有効であるが、突合面の起伏が激しい場合には、窪んだところにはどうしても空隙が残存するので、低損失を実現するのは難しい。
そこで本発明は、突合面の起伏が激しい場合にも、空隙を埋めて低損失を実現できる光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光コネクタは、第一フェルールに保持され、前端に第一突合面を有する第一光ファイバと、第二フェルールに保持され、前端に第二突合面を有する第二光ファイバと、を備え、第一光ファイバの第一突合面と第二光ファイバの第二突合面とが、対向して配置され、第一光ファイバおよび第二光ファイバはプラスチック光ファイバからなり、第一突合面と第二突合面の間をゲル状透光体又はゴム状透光体が埋める、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の光コネクタは、第一光ファイバの第一突合面と第二光ファイバの第二突合面の間にゲル状透光体又はゴム状透光体が介在しており、第一突合面と第二突合面の間に空隙があったとしてもその空隙はゲル状透光体又はゴム状透光体により埋められている。仮に、第一突合面および第二突合面に激しい起伏があったとしても、ゲル状透光体又はゴム状透光体はその窪みに進入することで、両者間の間に空隙が存在するのを避けることができる。空隙が存在すると、第一光ファイバおよび第二光ファイバと空気によるフレネル損失が生じるが、本発明の光コネクタによれば、空隙をゲル状透光体で埋めるので、大口径のプラスチック光ファイバを用いても、フレネル損失を低く抑えることができる。
また、光コネクタが繰り返して振動を受ける環境で使用されたとしても、第一光ファイバと第二光ファイバの間を埋めるゲル状透光体又はゴム状透光体が、振動を受けてあたかもダンパとして機能することにより振動を減衰させる。よって、第一光ファイバおよび第二光ファイバの特に前端部分の振動による劣化を抑制できる。加えて、第一光ファイバと第二光ファイバの間を埋めるゲル状透光体又はゴム状透光体は、屈折率が空気よりも第一光ファイバ及び第二光ファイバに近いため、境界面で生ずる屈折の角度を小さくすることができる。このため、第一光ファイバと第二光ファイバの間を伝搬する光の放射角が狭められ、両者の接続部における光の漏洩を小さくできる。
なお、本発明において、光ファイバを突き合わせる側を前と、また、光ファイバが引き出される側を後と定義する。
【0008】
本発明におけるプラスチック光ファイバとしては、コア及びクラッドがプラスチックからなる形態と、コアがガラスでクラッドがプラスチックからなる形態のいずれも包含する。
本発明の光コネクタにおいて、ゲル状透光体は、ゲル状のシリコーンからなり、また、ゲル状透光体の屈折率が、1.3〜1.8であることが好ましい。
【0009】
本発明の光コネクタにおいて、ゲル状透光体又はゴム状透光体は、第一突合面と第二突合面の間を埋めるとともに、第一突合面に連なる第一光ファイバの外周面、および、第二突合面に連なる第二光ファイバの外周面の一方又は双方に蓄えられる、ことが好ましい。
【0010】
本発明の光コネクタは、第一コネクタと、第一コネクタと嵌合する第二コネクタと、から構成することができる。この第一コネクタは、第一光ファイバよりも前端が前方に突き出す第一保護スリーブに、第一光ファイバを収容し、第二コネクタは、第二光ファイバよりも前端が前方に突き出し、第一保護スリーブと嵌合される第二保護スリーブに、第二光ファイバを収容する、ことが好ましい。
【0011】
本発明の光コネクタにおいて、第一突合面と第二突合面は、第一保護スリーブ又は第二保護スリーブの内側で互いに対向する、ことが好ましい。
【0012】
本発明の光コネクタにおいて、第一光ファイバを保持する第一フェルールの前端面よりも第一光ファイバの第一突合面が後退し、かつ、第二光ファイバを保持する第二フェルールの前端面よりも第二光ファイバの第二突合面が後退しており、第一突合面と第二突合面が接触せずに間隔を空けられる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光コネクタによれば、第一光ファイバの第一突合面と第二光ファイバの第二突合面の間をゲル状透光体が介在しており、第一突合面と第二突合面の間に空隙があったとしてもその空隙はゲル状透光体により埋められる。したがって、切断条件によっては、起伏が厳しくなる大口径のプラスチック光ファイバであっても、フレネル損失を低く抑えることができる。加えて、第一光ファイバと第二光ファイバの間を埋めるゲル状透光体又はゴム状透光体は、屈折率が空気よりも第一光ファイバ及び第二光ファイバに近いため、境界面で生ずる屈折の角度を小さくすることができる。このため、第一光ファイバと第二光ファイバの間を伝搬する光の放射角が狭められ、両者の接続部における光の漏洩を小さくできる。
また、光コネクタが繰り返して振動を受ける環境で使用されていたとしても、第一光ファイバと第二光ファイバの間を埋めるゲル状透光体又はゴム状透光体が振動を受けると、あたかもダンパとして機能することにより振動を減衰させ、第一光ファイバおよび第二光ファイバの特に前端部分の振動による劣化を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る光コネクタ1ついて説明する。
光コネクタ1は、
図1に示すように、オス型中継コネクタ(第一コネクタ)10とメス型中継コネクタ(第二コネクタ)30が互いに嵌合されることで構成されるものであり、オス型中継コネクタ10に保持される第一光ファイバ21とメス型中継コネクタ30に保持される第二光ファイバ41を光学的に接続する。光コネクタ1は、第一光ファイバ21と第二光ファイバ41の間の突き合わせ部分に、ゲル状透光体50を介在させて空隙を埋めることにより、第一光ファイバ21から第二光ファイバ41へ(またはその逆向き)の光の伝送損失を低く抑えることができる。また、光コネクタ1が継続的に振動を受ける環境下に置かれても、第一光ファイバ21と第二光ファイバ41の間に介在するゲル状透光体50が、第一光ファイバ21および第二光ファイバ41の前端部分の振動を減衰させる。
以下、オス型中継コネクタ10、メス型中継コネクタ30の構成について説明した後に、光コネクタ1が奏する効果に言及する。
【0016】
[オス型中継コネクタ10]
オス型中継コネクタ10は、
図2に示すように、オス型ハウジング11と、オス型ハウジング11のキャビティ15の内部にその前端部分が収容される第一光ファイバ21と、を備える。
オス型ハウジング11は、筒状の第一ハウジング本体12と、第一ハウジング本体12の内部に形成され、前端13と後端14が開口する中空円筒状のキャビティ15と、を備える。第一ハウジング本体12の外周面には、メス型中継コネクタ30と嵌合された際に抜け止めを担うラッチ16、および、メス型中継コネクタ30と嵌合および抜去の際に操作される操作突起17が形成されている。このオス型ハウジング11は、例えば、電気絶縁性の樹脂を射出成形することにより一体的に形成することができる。メス型中継コネクタ30のメス型ハウジング31も同様である。
なお、
図2において、第一光ファイバ21のハッチングを省略している。
【0017】
キャビティ15の内部には、筒状の第一保護スリーブ18が嵌合されており、第一光ファイバ21はその前端部分が第一保護スリーブ18の内部に収容されている。第一保護スリーブ18は、その前端部分は、第一ハウジング本体12の前端13から外部に突出している。
キャビティ15の内部であって、第一保護スリーブ18の後端部分には、第一保持リング19が設けられている。第一保持リング19は、その外周面が第一ハウジング本体12の内周面に摺動可能に接する一方、その中空部分に第一光ファイバ21が挿入されることで第一保持リング19は第一光ファイバ21を固定する。したがって、第一保持リング19は、第一光ファイバ21を保持しながら、第一保護スリーブ18の内部を前後方向に往復移動が可能である。
なお、本実施形態において、相手側の光ファイバと突き合わされる側を前(F)とし、その逆側を後(B)と定義する。
【0018】
第一ハウジング本体12の後端14には、第一キャップ20が固定されることで、キャビティ15の後端14が閉じられている。第一キャップ20と第一保持リング19の間に形成されるばね収容室24には、第一保持リング19に前方向に弾性力を付与するばね28が設けられている。ばね28は、前端が第一保持リング19の後端面に固定され、また、後端が第一キャップ20の前端面に固定されることにより、第一保持リング19に弾性力を付与する。オス型中継コネクタ10がメス型中継コネクタ30と嵌合されると、第一保持リング19に固定される第一光ファイバ21は、この弾性力によってメス型中継コネクタ30の第二光ファイバ41に向けて付勢される。第一キャップ20にはその中心部に表裏を貫通する挿通孔20Aが形成されており、第一光ファイバ21はこの挿通孔20Aを通って後方に引き出される。
【0019】
第一光ファイバ21は、第一突合面22および外周面23を有し、オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30が嵌合したときに、第一突合面22はメス型中継コネクタ30の第二光ファイバ41の第二突合面42と対向し、外周面23には第一フェルール25が嵌装される。
第一フェルール25は、中空円筒状の形態をなし、第一光ファイバ21を保持する。第一光ファイバ21は、その第一突合面22が第一フェルール25の前端面26と軸(前後)方向の位置がほぼ一致するように、第一フェルール25に保持されている。したがって、第一フェルール25は第一光ファイバ21の前端部分とともに、第一保護スリーブ18の内部に収容されている。
第一フェルール25は、ジルコニア(ZrO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、アルミナ(Al
2O
3)などのセラミックス材料、ステンレス鋼、黄銅などの金属材料、あるいはプラスチックから構成される。後述する第二フェルール45も同様である。
第一フェルール25は、中空部分である整列孔に第一光ファイバ21を固定し、第一光ファイバ21を保護しながら、第二光ファイバ41との接続に寄与する。
【0020】
本実施形態に用いられる第一光ファイバ21は、プラスチック光ファイバ(Plastic Optical Fiber:POF)からなる。本実施形態におけるPOFは、APF(All Plastic Fiber)とHPCF(Hard Plastic Clad Fiber)を含む概念を有している。APFおよびHPCFはともに、コア及びクラッドともに石英製の光ファイバに比べて大口径であり、また、ステップインデックス(Step Index: SI)型の光ファイバである。
APFは、コアおよびクラッドともにプラスチックからなり、典型的には、コアにはアクリル樹脂が、また、クラッドにはコアよりも屈折率の低いフッ素樹脂が用いられる。APFは、例えば、コア径が980μm、クラッド径が1000μmの寸法を有している。
HPCFは、典型的には、コアが石英ガラス、クラッドが高硬度のプラスチックで構成される。HPCFは、例えば、コア径が200μm、クラッド径が230μmの寸法を有している。
後述するメス型中継コネクタ30の第二光ファイバ41も、第一光ファイバ21と同様の寸法、材質からなる。
【0021】
第一光ファイバ21は、長尺な光ファイバ素材を刃物で切断されることで、所望する長さに調整される。したがって、第一光ファイバ21の第一突合面22には切断に伴う切断痕が残るので、
図4(a)に示すように、第一突合面22の表面粗さが粗く起伏が激しい。そのために、第二光ファイバ41の第二突合面42と接触させたとしても、第一突合面22の窪みに空隙が生じる。第二光ファイバ41の第二突合面42の窪みについても同様であり、本実施形態は、ゲル状透光体50を介在させて、この空隙をゲル状透光体50で埋めることで空気を排除して、フレネル損失を低減する。
なお、切断加工には、刃物による切断の他に、レーザ光による切断、砥石による切断などがあり、本発明はこれらの切断手法により長尺な光ファイバ素材を切断することもできる。また、切断後の端面を加熱して、あるいは、レーザ光などで平滑にする表面処理を加えてもよい。光ファイバは、フェルールに組み込まれてから切断に供されるため、フェルール先端との位置関係から完全な平滑面を得ることは困難であり、また、本実施形態に用いる光ファイバは大口径であることから、第一突合面22と第二突合面42の間の隙間の発生は避けられない。
【0022】
[メス型中継コネクタ30]
メス型中継コネクタ30は、メス型ハウジング31と、メス型ハウジング31の受容キャビティ35の内部にその前端部分が収容される第二光ファイバ41と、を備える。
メス型ハウジング31は、第二ハウジング本体32と、第二ハウジング本体32の前方側の内部に形成され、前端33が開口する円形の受容キャビティ35と、第二ハウジング本体32の後方側に設けられる第二光ファイバ41を保持する保持部36と、を備える。本実施形態において、受容キャビティ35と保持部36の前後方向の寸法がほぼ同等とされている。第二ハウジング本体32の外周面には、オス型中継コネクタ10と嵌合された際にラッチ16が挿入されて抜け止めを担うラッチ溝37が形成されている。
【0023】
受容キャビティ35の内部には、筒状の第二保護スリーブ38が配置されており、第二光ファイバ41はその前端部分が第二保護スリーブ38の内部に収容されている。第二保護スリーブ38は、その後端部分が保持部36に埋め込まれ、それ以外の部分が前端まで含めて受容キャビティ35の内部に収容されている。
保持部36の後端部分には第二保持リング39が埋め込まれており、第二保持リング39は、その中空部分に第二光ファイバ41が挿入されることで第二光ファイバ41を固定する。
第二ハウジング本体32の後端34には、第二キャップ40が固定され、この第二キャップ40にはその中心部に表裏を貫通する挿通孔40Aが形成されており、第二光ファイバ41はこの挿通孔40Aを通って後方に引き出される。
【0024】
第二光ファイバ41は、第二突合面42および外周面43を有し、オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30が嵌合したときに、第二突合面42はオス型中継コネクタ10の第一光ファイバ21の第一突合面22と対向し、外周面43には第二フェルール45が嵌装される。
第二光ファイバ41は、第一光ファイバ21と同様の寸法および材質からなる。また、第二光ファイバ41の第二突合面42の表面粗さが粗く、窪みに空隙が生じることも、第一光ファイバ21と同様である。
第二フェルール45は、中空円筒状の形態をなし、第二光ファイバ41を保持する。第二光ファイバ41は、その第二突合面42が第二フェルール45の前端面46と軸方向の位置がほぼ一致するように、第二フェルール45に保持されている。したがって、第二フェルール45は第二光ファイバ41の前端部分とともに、第二保護スリーブ38の内部に収容されている。
【0025】
[ゲル状透光体50]
光コネクタ1は、第一光ファイバ21の第一突合面22と第二光ファイバ41の第二突合面42の間に生じる空隙を埋めるために、ゲル状透光体50を用いる。本実施形態において、オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30の嵌合の前に、ゲル状透光体50はメス型中継コネクタ30の第二光ファイバ41の第二突合面42に担持されている。第二突合面42が第二保護スリーブ38の内部に配置されるので、メス型中継コネクタ30のハンドリング時およびオス型中継コネクタ10との嵌合作業の際に、ゲル状透光体50が第二突合面42から脱落するおそれがない。
【0026】
ゲル状透光体50は、オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30が嵌合されると、第一突合面22と第二突合面42の間にあって、第一突合面22および第二突合面42の窪みに隙間なく入り込んで、両者の間から空気を押し出して空隙を埋める。こうして、ゲル状透光体50は第一突合面22と第二突合面42の間のフレネル損失を低く抑える。
加えて、第一光ファイバ21と第二光ファイバ41の間を埋めるゲル状透光体50は、屈折率が空気よりも第一光ファイバ21及び第二光ファイバ41に近いため、境界面で生ずる屈折の角度を小さくすることができる。このため、第一光ファイバ21と第二光ファイバ41の間を伝搬する光の放射角が狭められ、両者の接続部における光の漏洩を小さくできる。
【0027】
本実施形態は、この空隙を隙間なく埋めるために、ゲル状透光体50を第一光ファイバ21と第二光ファイバ41の間に介在させる。したがって、ゲル状透光体50は、第一突合面22および第二突合面42の両者に接すると、その表面性状に倣って容易に変形できることが必要である。同じ組成物であっても弾性力を発揮するゴム状のものでは、窪みを埋め尽くすことができない。一方で、流動性がありすぎると、第一突合面22に担持させておくことが容易でなく、また、オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30の組み付け後に、特に振動を受けると、第一突合面22と第二突合面42の間から漏れ出てしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、ゲル状の透光体を用いる。
【0028】
本実施形態において、ゲル状か否かの判断基準として、JIS K 2220 に基づく針入度(1/4コーン)を用いる。針入度は、値が小さいほど硬く、逆にこの値が大きいほど柔らかい。針入度が20未満だと、第一突合面22および第二突合面42の起伏が大きくかつ微細になると、窪みを埋めきれなくなるおそれがある。逆に、針入度が90を超えるとゲル状透光体50が柔らかすぎて、光コネクタ1が激しい振動を受けると第一突合面22と第二突合面42の間から漏れ出るおそれがある。そこで、本実施形態では、ゲル状透光体50の針入度を20〜90とするが、好ましい針入度は30〜85であり、より好ましい針入度は60〜80である。ただし、針入度は、第一突合面22および第二突合面42の表面性状又は両者間の間隔などの要因に応じて、定めることもでき、この場合には、好ましい針入度又はより好ましい針入度から外れることもあり得る。
【0029】
ゲル状透光体50に用いられる物質に制限はなく、ゲル状を呈することおよび光を透過させることができることの二つの要素を備える物質を用いることができる。具体的には、アクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等の高分子材料を用いることができる。この中では、シリコーン系、アクリル系の高分子材料のゲルを用いるのが好ましく、最も好ましくはゲル状のシリコーンを用いる。ここで、シリコーンとは、シロキサン結合による主骨格を持つ、人工高分子化合物をいう。
【0030】
第二突合面42に担持されるゲル状透光体50の形態は、オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30を嵌合した後に、第一突合面22と第二突合面42の間を隙間なく埋めることができる限り任意である。例えば、直方体状、楕円柱状、三角柱形状などの形態にすることができる。また、ゲル状透光体50の寸法についても、上記嵌合がなされると、第一突合面22と第二突合面42の間を埋め尽くすのに足りる体積を備えていればよい。
【0031】
ゲル状透光体50は、その主たる目的が第一突合面22と第二突合面42の間の隙間を埋めることにあるので、その屈折率は任意である。ただし、第一光ファイバ21および第二光ファイバ41の屈折率が1.5程度であることを考慮すると、ゲル状透光体50の屈折率は1.3〜1.8の範囲にあることが好ましい。
【0032】
[オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30の嵌合]
次に、オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30を嵌合するには、両者の中心軸を位置合わせしてから、オス型中継コネクタ10のオス型ハウジング11をメス型中継コネクタ30の受容キャビティ35に押し込む。オス型ハウジング11のラッチ16がメス型ハウジング31のラッチ溝37に挿入されるまで押し込むと嵌合作業が終了する。そうすると、
図3に示すように、受容キャビティ35の内部において、オス型ハウジング11の第一保護スリーブ18の内側にメス型ハウジング31の第二保護スリーブ38が嵌合され、さらに、第二保護スリーブ38の内側で、第一光ファイバ21の第一突合面22と第二光ファイバ41の第二突合面42が突き合わされる。
【0033】
図4(b)に示すように、第二光ファイバ41の第二突合面42に担持されていたゲル状透光体50は、この嵌合作業の過程で、第一突合面22および第二突合面42の両者から押圧され、第一突合面22および第二突合面42の窪みに進入して、窪みに存在していた空気を外部に押し出しながら空隙を埋める。空隙に対して余剰となったゲル状透光体50は、
図4(c)に示すように、空隙から外部に浸み出して、第一突合面22に連なる第一光ファイバ21の外周面23および第二突合面42に連なる第二突合面42の外周面43に蓄えられる。この外周面23,43に蓄えられるゲル状透光体50は、後述するように、第一突合面22と第二突合面42の間に介在するゲル状透光体50を補填することができる。
なお、ここでは、外周面23,43の両者にゲル状透光体50が蓄えられる例を示したが、外周面23,43のいずれか一方のみに蓄えられる場合もあるし、第一突合面22と第二突合面42の間隔などによっては、ゲル状透光体50が外周面23,43に浸み出すことなく、第一突合面22と第二突合面42の間にのみ存在することもある。
【0034】
[作用および効果]
以下、光コネクタ1の作用および効果について説明する。
光コネクタ1は、第一光ファイバ21の第一突合面22と第二光ファイバ41の第二突合面42の間にゲル状透光体50が介在しており、
図4(c)に示すように、第一突合面22と第二突合面42の間の空隙はゲル状透光体50により埋められている。第一突合面22および第二突合面42に激しい起伏があったとしても、ゲル状透光体50はその窪みに進入することで、両者間の間に空隙が存在するのを避けることができる。空隙が存在すると、第一光ファイバ21および第二光ファイバ41と空気によるフレネル損失が生じるが、光コネクタ1によれば、空隙をゲル状透光体50で埋めるので、大口径の光ファイバを用いても、フレネル損失を低く抑えることができる。
【0035】
また、光コネクタ1が繰り返して振動を受ける環境で使用されていたとしても、第一光ファイバ21と第二光ファイバ41の間に介在されるゲル状透光体50が振動を受けると、あたかもダンパとして機能することにより振動を減衰させる。よって、第一光ファイバ21および第二光ファイバ41の特に前端部分の振動による劣化を抑制できる。
【0036】
しかも、ゲル状透光体50は、液体とは異なり、少々の振動を受けても、第一突合面22と第二突合面42の間から流れ出るおそれが小さいので、フレネル損失の低減および振動減衰の効果を長期間に亘って維持することができる。
特に、光コネクタ1は、
図1に示すように、ゲル状透光体50が介在する第一突合面22と第二突合面42は、第二保護スリーブ38の内側において互いに対向しているので、ゲル状透光体50が第一突合面22と第二突合面42の間から流れ出るおそれが小さい。
【0037】
さらに、本実施形態によれば、余剰となったゲル状透光体50が外周面23,43に蓄えられているために、光コネクタ1が振動を受けて第一突合面22と第二突合面42の間隔が広がったとしても、余剰となっていたゲル状透光体50が広がりに応じて第一突合面22と第二突合面42の間に補填される。一方で、第一突合面22と第二突合面42の間隔が微小量だけ狭くなれば、余剰となったゲル状透光体50は、外周面23,43に浸み出す。このように、本実施形態によれば、ゲル状透光体50を用いることにより、第一突合面22と第二突合面42の間の空隙を自己補填機能により埋めることができるので、振動を受ける環境下においても、フレネル損失の低減および振動減衰の効果をより長期間に亘って維持することができる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本実施形態の光コネクタ1は、本発明による光コネクタの一例を示しているに過ぎず、本発明の要旨であるゲル状透光体50により空隙を埋めることを除く部分の構成は任意である。
例えば、光コネクタ1はオス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30を備えるが、本発明はオス型及びメス型が存在することを必須とするものではない。例えば、相対する中継部落コネクタをアダプタで嵌合保持する形態の光コネクタにおいて、対向する一対の光ファイバの突合面の間をゲル状透光体で埋めることもできる。
また、本発明は、複数本の光ファイバ同士の接続を行う光コネクタに適用することもできる。
【0039】
また、光コネクタ1は、第一光ファイバ21及び第一フェルール25の前端部分が第一保護スリーブ18の内側に収容され、また、第二光ファイバ41及び第二フェルール45の前端部分が第二保護スリーブ38の内側に収容されており、第一光ファイバ21、第二光ファイバ41等を保護する効果を奏する。しかし、本発明はこれに限定されず、第一光ファイバ21、第二光ファイバ41等の前端部分がハウジングから突き出すことを許容する。
【0040】
また、オス型中継コネクタ10とメス型中継コネクタ30が嵌合された状態で、第一突合面22と第二突合面42の位置関係としては、
図5(a),(b)に示される二つの形態を許容する。つまり、
図5(a)に示すように、第一フェルール25の前端面26よりも第一光ファイバ21の第一突合面22が後退し、かつ、第二フェルール45の前端面46よりも第二光ファイバ41の第二突合面42が後退しているために、第一突合面22と第二突合面42の間に間隔を空けて接触させないようにできる。また、
図5(b)に示すように、第一フェルール25の前端面26よりも第一光ファイバ21の第一突合面22が突出し、かつ、第二フェルール45の前端面46よりも第二光ファイバ41の第二突合面42が突き出しているために、第一突合面22と第二突合面42を接触させるようにもできる。
図5(a)及び
図5(b)のいずれの形態においても、ゲル状透光体50が空隙を埋めることは共通するが、
図5(a)の形態の方が好ましい。第一フェルール25の第一突合面22が後退している窪み及び第二フェルール45の第二突合面42が後退している窪みが、ゲル状透光体50を保持する機能を発揮するからである。
また、以上の実施形態は、第一突合面22と第二突合面42の間を埋める要素としてゲル状透光体50について説明したが、本発明はゴム状透光体であってもよい。