【解決手段】サーバ装置500は、蓄積部502により、複数の地図レベルに階層分けされ、各地図レベルについて所定の道路区間ごとに設定されたリンクの情報を含む地図データと、地図データにおいて地図レベル1に対応する各下位リンクに対して、消費電力量または回生電力量を推定するための統計パラメータとを記憶する。また、演算処理部501の処理により、蓄積部502に記憶された下位リンクの統計パラメータに基づいて、レベル1よりも上位の地図レベルに対応する各上位リンクに対して、消費電力量または回生電力量を推定するための統計パラメータを算出する。これらの統計パラメータに基づいて、推奨経路の探索を行う。
複数の地図レベルに階層分けされ、各地図レベルについて所定の道路区間ごとに設定されたリンクの情報を含む地図データと、前記地図データにおいて所定階層の地図レベルに対応する各下位リンクに対して、消費エネルギーまたは回生エネルギーを推定するための統計パラメータとを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記下位リンクの統計パラメータに基づいて、前記地図データにおいて前記所定階層の地図レベルよりも上位の地図レベルに対応する各上位リンクに対して、消費エネルギーまたは回生エネルギーを推定するための統計パラメータを算出する上位統計パラメータ算出手段とを備えることを特徴とするサーバ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
−第1の実施形態−
本発明の一実施形態に係る車両用情報システムの構成を
図1に示す。この車両用情報システムは、車両100、200および300とサーバ装置500とが移動体通信網400を介して接続されることにより構成される。車両100、200および300は、バッテリに蓄積された電気エネルギーを利用して駆動する車両(EV:Electric Vehicle)である。
【0012】
車両100、200および300は、各々が走行中に検出した加速度または減速度の変化に関する加減速情報を移動体通信網400を介してサーバ装置500へ送信する。なお、以下の説明では、加速度と減速度を合わせて加減速度と称する。また、サーバ装置500に対して、当該車両の残電力量、位置、目的地などを表す車両情報を送信することにより、当該車両が走行すべき推奨経路の探索をサーバ装置500へ要求することもできる。
図1では、車両100からサーバ装置500へ車両情報を送信し、それに応じてサーバ装置500が推奨経路を探索することでサーバ装置500から送信される経路情報を車両100が受信する様子を示しているが、他の車両200、300においても同様である。
【0013】
サーバ装置500は、演算処理部501および蓄積部502を有している。演算処理部501は、車両100、200および300から移動体通信網400を介してそれぞれ送信された加減速情報を受信し、その内容に基づく演算処理を行う。また、いずれかの車両(
図1では車両100)から送信された車両情報に基づいて、当該車両の推奨経路を探索するための演算処理を行い、その演算結果に応じた経路情報を移動体通信網400を介して当該車両へ送信する。演算処理部501が行うこれらの演算処理の具体的な内容については、後で詳細に説明する。
【0014】
蓄積部502は、演算処理部501が行う上記演算処理に必要な地図データを含む各種データや、演算処理部501の演算処理結果に関するデータなどを記憶保持する。これらのデータは、演算処理部501の制御により、必要に応じて蓄積部502から読み出されたり、蓄積部502に書き込まれたりする。
【0015】
蓄積部502に記録された地図データは、地図の縮尺に応じて複数の地図レベルに階層分けされている。たとえば、最も詳細側(縮尺が最大)の地図データを最下位層のレベル1地図データとし、最も広域側(縮尺が最小)の地図データを最上位層のレベル7地図データとして、レベル1〜7に地図データが階層分けされている。なお、地図レベルの数はこれに限定されず、任意のレベル数で地図データを階層分けすることができる。
【0016】
各レベルの地図データは、経路計算データと、道路データと、背景データとを含む。経路計算データは、目的地までの推奨経路を探索する際などに用いられるデータである。道路データは、道路の形状や種別などを表すデータである。背景データは、地図の背景を表すデータである。なお、地図の背景とは、地図上に存在する道路以外の様々な構成物である。たとえば、河川、鉄道、緑地帯、各種構造物などが背景データによって表される。これらのデータは、所定の地図領域ごとに設定された地図メッシュ単位で地図レベルごとに区分されている。
【0017】
地図データにおいて各道路の最小単位はリンクと呼ばれている。すなわち、地図レベルごとに表された各地の道路は、所定の道路区間にそれぞれ対応する複数のリンクによって構成されており、リンク単位で経路計算データおよび道路データが表現されている。リンク同士を接続している点、すなわち各リンクの端点はノードと呼ばれる。地図データにおける各ノードの情報には、位置情報(座標情報)が含まれている。なお、リンク内においてノードとノードの間に必要に応じて形状補間点と呼ばれる点が設定されていることもある。地図データにおける各形状補間点の情報には、ノードの場合と同様に位置情報(座標情報)が含まれている。このノードと形状補間点の位置情報によって、各リンクの形状、すなわち道路の形状が決定される。このように、蓄積部502に記憶されている地図データにおいて、道路は地図レベルごとに複数のノードとリンクを用いて表されている。
【0018】
地図データでは一般的に、上位階層の地図レベルであるほど細かい道路が省略されており、各リンクが表す道路区間が長くなる。そのため、上位階層の地図レベルでは1つのリンクで表される道路区間が、下位階層の地図レベルでは2以上のリンクに分割して表される。すなわち、上位階層の地図レベルにおける1つのリンクは、下位階層の地図レベルにおける複数のリンクに対応する。なお、異なる地図レベルのリンクが同じ道路区間を表す場合もある。その場合、上位階層の地図レベルにおける1つのリンクは、下位階層の地図レベルにおいても1つのリンクに対応する。
【0019】
経路計算データには、各道路区間に対応するリンクごとに、車両が当該道路区間を走行する際の通過所要時間等に応じたリンクコストが設定されている。このリンクコストに基づいて、予め設定された経路探索条件に応じたリンクの組合せを求めることにより、サーバ装置500において推奨経路の探索が行われる。たとえば、移動時間の短さを最優先として経路探索を行うような経路探索条件が設定されている場合は、出発地から目的地までの通過所要時間が最小となるリンクの組合せが推奨経路として求められる。
【0020】
図1の車両用情報システムでは、上記のようなリンクコストに基づく経路探索以外に、電気エネルギーの消費量に基づく経路探索を行うことができる。すなわち、いずれかの車両(
図1では車両100)からサーバ装置500に対して車両情報が送信されて経路探索の要求が行われると、サーバ装置500は、当該車両の電気エネルギーの消費量が最小となる推奨経路を探索する。具体的には、車両100の現在位置を出発地として、車両100が出発地から目的地までの道路を走行する際に消費または回生される電気エネルギー量をリンクごとに推定し、その合計値が最小となるリンクの組み合わせを推奨経路として求める。このとき推定される各リンクの電気エネルギーの量は、車両100の重量や形状等の特徴および各リンクの道路状況などによって左右される。
【0021】
なお、
図1には、車両100、200および300とサーバ装置500とが移動体通信網400を介して接続された車両用情報システムを例として示したが、本発明の車両用情報システムにおける車両の数はこれに限定されるものではない。実際には、
図1に例示したものよりも多数の車両をサーバ装置500と接続して本発明の車両用情報システムを構成することが好ましい。
【0022】
図2は、
図1の車両用情報システムにおける車載システムの構成を示すブロック図である。
図2において、車両100には、ナビゲーション装置1、車両制御装置2、バッテリ3、電力変換装置4、電気モータ5および通信端末6が搭載されている。
【0023】
バッテリ3は、電気モータ5を駆動するための電力を供給する。バッテリ3から供給される電力を用いて電気モータ5が駆動することにより、車両100は走行する。また、車両100の減速時には電気モータ5が発電機として作用し、回生発電による電力が発生する。この回生発電によって得られた電力は、バッテリ3において蓄積される。電力変換装置4は、バッテリ3と電気モータ5との間で授受されるこれらの電力を相互に利用可能な形式に変換する。たとえば、バッテリ3から供給される直流電力を所望の交流電力に変換して電気モータ5へ出力すると共に、電気モータ5において回生発電により得られた交流電力を所望の直流電力に変換してバッテリ3へ出力する。
【0024】
車両制御装置2は、車両100の走行状態や、バッテリ3の状態、電気モータ5の状態などを監視し、その監視結果に基づいて電力変換装置4の動作を制御する。この車両制御装置2の制御により電力変換装置4が動作することで、車両100の走行状態に応じてバッテリ3と電気モータ5との間で適切に電力の授受が行われる。これにより、バッテリ3に蓄積された電気エネルギーを消費して、車両100が走行するための運動エネルギーを電気モータ5により発生することができる。また、車両100の運動エネルギーの少なくとも一部を電気モータ5により回収して、再利用可能な回生エネルギーとしての電気エネルギーをバッテリ3に蓄積することができる。
【0025】
ナビゲーション装置1は、地図データに基づいて地図を表示すると共に、サーバ装置500から受信した経路情報に基づいて推奨経路を地図上に表示し、その推奨経路に従って車両100を案内するためのナビゲーション機能を有している。これに加えて、
図1の車両用情報システムにおける車載装置としての機能もさらに有している。すなわち、ナビゲーション装置1は、車両100の加減速度の変化を検出して加減速情報をサーバ装置500へ送信したり、車両100に関する車両情報を送信して推奨経路の探索をサーバ装置500へ要求したりすることができる。これらの処理の具体的な内容については、後で詳細に説明する。
【0026】
なお、車両情報をサーバ装置500へ送信するために、ナビゲーション装置1は、現在の残電力量、すなわち車両100においてバッテリ3に蓄積されている電気エネルギーの量を示すバッテリ残量情報を、必要に応じて車両制御装置2から取得する。残電力量は、たとえば、完全放電状態である0%から満充電状態である100%までのいずれかの値をとるSOC(State Of Charge)によって表すことができる。
【0027】
通信端末6は、ナビゲーション装置1の制御により動作し、
図1の移動体通信網400との間で無線通信を行う。移動体通信網400には、
図1に示すようにサーバ装置500が接続されている。すなわちナビゲーション装置1は、通信端末6および移動体通信網400を介してサーバ装置500と接続されることで、加減速情報や車両情報をサーバ装置500へ送信したり、サーバ装置500から経路情報を受信したりすることができる。
【0028】
なお、
図2では車両100に搭載されている車載システムの構成を例示したが、車両200および300に搭載されている車載システムもこれと同様の構成を有している。すなわち、
図2に示すような車載システムが各車両において搭載されている。そして、各車両のナビゲーション装置1から加減速情報や車両情報がサーバ装置500へ送信されると共に、サーバ装置500から送信された経路情報が各車両のナビゲーション装置1において受信される。
【0029】
図3は、ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、制御部10、GPS(Global Positioning System)受信部11、振動ジャイロ12、車速センサ13、ハードディスクドライブ(HDD)14、表示モニタ15、スピーカ16および入力装置17を備えている。なお、以下では車両100に搭載されているナビゲーション装置1を代表例として説明するが、他の車両に搭載されているナビゲーション装置1についても同様である。
【0030】
制御部10は、マイクロプロセッサや各種周辺回路、RAM、ROM等によって構成されており、HDD14に記録されている制御プログラムや地図データに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、目的地を設定する際の目的地の検索処理、車両100の現在位置の検出処理、各種の画像表示処理、音声出力処理などを実行する。また、
図1の車両用情報システムにおいて用いられる車載装置としての機能を実現するための処理も行う。具体的には、車両100の加減速度の変化を検出してその内容に基づく加減速情報をサーバ装置500へ送信したり、推奨経路の探索を要求する際に車両情報をサーバ装置500へ送信したりする。
【0031】
制御部10には車両制御装置2および通信端末6が接続されている。制御部10は、これらの装置との間で必要に応じて情報の入出力を行う。たとえば、加減速情報や車両情報をサーバ装置500へ送信するために、これらの情報を通信端末6へ出力したり、バッテリ3の残電力量を求めるために、車両制御装置2からバッテリ残量情報を入力したりすることができる。
【0032】
GPS受信部11は、GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して制御部10へ出力する。GPS信号には、車両100の現在位置を求めるための情報として、そのGPS信号を送信したGPS衛星の位置と送信時刻に関する情報が含まれている。したがって、所定数以上のGPS衛星からGPS信号を受信することにより、これらの情報に基づいて、車両100の現在位置を制御部10において算出することができる。
【0033】
振動ジャイロ12は、車両100の角速度を検出するためのセンサである。車速センサ13は、車両100の走行速度を検出するためのセンサである。これらのセンサの検出結果に基づく車両100の移動方向および移動量の算出結果と、前述のGPS信号に基づく車両100の現在位置の算出結果とに基づいて、制御部10において所定時間ごとに位置検出処理が実行され、車両100の現在位置が検出される。
【0034】
HDD14は不揮発性の記録媒体であり、制御部10において上記のような処理を実行するための制御プログラムや地図データなどが記録されている。HDD14に記録されているデータは、必要に応じて制御部10の制御により読み出され、制御部10が実行する様々な処理や制御に利用される。
【0035】
なお、上記ではナビゲーション装置1においてデータがHDD14に記録されている例を説明したが、HDD以外の記録媒体にデータを記録することとしてもよい。たとえば、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードなどに記録されたデータを用いることができる。すなわち、ナビゲーション装置1では、どのような記録媒体を用いてデータを記憶してもよい。
【0036】
表示モニタ15は、ナビゲーション装置1において様々な画面表示を行うための装置であり、液晶ディスプレイ等を用いて構成される。この表示モニタ15により、地図画面の表示や推奨経路の案内表示などが行われる。表示モニタ15に表示される画面の内容は、制御部10が行う画面表示制御によって決定される。表示モニタ15は、たとえば車両100のダッシュボード上やインストルメントパネル内など、ユーザが見やすいような位置に設置されている。
【0037】
スピーカ16は、制御部10の制御により様々な音声情報を出力する。たとえば、推奨経路に従って車両100を目的地まで案内するための経路案内用の音声や、各種の警告音などがスピーカ16から出力される。
【0038】
入力装置17は、ナビゲーション装置1を動作させるための様々な入力操作をユーザが行うための装置であり、各種の入力スイッチ類を有している。ユーザは、入力装置17を操作することにより、たとえば、目的地に設定したい施設や地点の名称等を入力したり、推奨経路の探索条件を設定したり、予め登録された登録地の中から目的地を選択したり、地図を任意の方向にスクロールしたりすることができる。この入力装置17は、操作パネルやリモコンなどによって実現することができる。あるいは、入力装置17を表示モニタ15と一体化されたタッチパネルとしてもよい。
【0039】
ユーザが入力装置17を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、前述のようにして検出された車両100の現在位置を出発地として、出発地から目的地まで至る推奨経路の探索をサーバ装置500に要求する。この要求に応じて、サーバ装置500は、各リンクにおける車両100の電気エネルギー消費量を推定し、その合計が最小となる出発地から目的地までのリンクの組み合わせを求める。そして、求めたリンクの組み合わせから推奨経路を設定し、その推奨経路に関する経路情報をナビゲーション装置1に送信する。
【0040】
サーバ装置500から経路情報を受信すると、ナビゲーション装置1は、受信した経路情報に基づいて目的地までの経路案内を行う。このときナビゲーション装置1は、たとえば色を変える等の方法により、表示モニタ15に表示された地図上において他の道路と識別可能な形態で探索された推奨経路を表示する。そして、推奨経路に従って所定の画像情報や音声情報を表示モニタ15やスピーカ16から出力することにより、車両100を目的地まで案内する。
【0041】
次に、
図1に示した車両用情報システムにおける処理の内容について説明する。
図1の車両用情報システムでは、ナビゲーション装置1の制御部10により、車両100の加減速度の変化を検出して加減速情報をサーバ装置500へ送信するための加減速情報送信処理が実行される。また、サーバ装置500の演算処理部501により、最下位層のレベル1地図データに対する損失・回生パラメータおよびその統計値である統計パラメータを算出するための損失・回生パラメータ算出処理と、算出されたレベル1地図データの統計パラメータから上位階層の地図データに対する統計パラメータを生成するための上位リンク統計パラメータ生成処理と、推奨経路を探索して経路情報を車両に送信するための経路情報配信処理とが実行される。
【0042】
最初に、加減速情報送信処理について説明する。
図4は、加減速情報送信処理のフローチャートである。ナビゲーション装置1は、車両100が走行しているときに、制御部10により、
図4のフローチャートに示す加減速情報送信処理を所定の処理周期ごとに繰り返し実行する。
【0043】
ステップS10において、制御部10は、所定期間内での車両100の平均走行速度を算出する。ここでは、車速センサ13から出力された車速信号に基づいて、所定周期、たとえば20msごとに検出された車両100の走行速度を、所定回数分、たとえば25回分集計してその平均値を求めることにより、所定期間内での車両100の平均走行速度を算出する。これにより、たとえば500msの期間内での車両100の平均走行速度が算出される。
【0044】
ステップS20において、制御部10は、今回と前回の平均走行速度の差を算出する。ここでは、直前のステップS10で算出された平均走行速度を今回の平均走行速度とし、それより一回前のステップS10で算出された平均走行速度を前回の平均走行速度として、これらの間の差分を算出する。これにより、たとえば500msごとの平均走行速度の差が算出される。
【0045】
ステップS30において、制御部10は、ステップS20で算出した平均走行速度の差に基づいて、車両100が加速から減速に、または減速から加速に切り替わったか否かを判定する。この判定は、前回算出された平均走行速度の差の正負と、今回算出された平均走行速度の差の正負とを比較することによって行うことができる。たとえば、前回算出された平均走行速度の差が加速を表す正の値であり、今回算出された平均走行速度の差が減速を表す負の値である場合は、車両100が加速から減速に切り替わったと判定することができる。反対に、前回算出された平均走行速度の差が減速を表す負の値であり、今回算出された平均走行速度の差が加速を表す正の値である場合は、車両100が減速から加速に切り替わったと判定することができる。これらの条件を満たすことにより、車両100が加速から減速に、または減速から加速に切り替わったと判定した場合は、これを加減速度の変化として検出してステップS70へ進む。一方、上記条件を満たさない場合は、ステップS40へ進む。
【0046】
図5は、上記のようにして加減速度の変化を検出する様子を示す図である。
図5に示したグラフは、縦軸が車両100の車速Vを表し、横軸が車両100の走行距離Lを表している。このような車速Vが走行距離Lに対して検出された場合、グラフの山または谷に相当する各部分の車速V
peak_1、V
peak_2、V
peak_3およびV
peak_4に対して、加減速度の変化がステップS30においてそれぞれ検出される。
【0047】
なお、ステップS30の判定において、前回と今回の平均走行速度の差が所定の変動幅以内、たとえば1%以内であるときには、上記条件を満たす場合であっても、車両100が加速から減速に、または減速から加速に切り替わったと判定しないようにすることが好ましい。すなわち、ステップS20で算出された平均走行速度の差が所定の変動幅以内であるときには、ステップS30の判定を行わずにステップS40へ進むようにし、加減速度の変化を検出しないようにすることが好ましい。ただし、最後に加減速度の変化を検出してからしばらくの間、車両100の走行状態があまり変化していないような場合は、平均走行速度の差が所定の変動幅以内であっても、上記条件を満たしたときに加減速度の変化を検出することがより好ましい。こうした加減速度の変化の検出に関する処理の切り替えは、たとえば、最後に加減速度の変化を検出してからの経過時間に基づいて行うことができる。
【0048】
ステップS40において、制御部10は、後で説明するステップS80で最後に加減速情報を記録してからの車両100の仮想累積走行距離を算出する。ここでは、最後に加減速情報を記録したときの車両100の位置を起点として、そこから車両100が一定の推定加減速度で走行し続けたと仮定した場合の起点から現在位置までの累積走行距離を、仮想累積走行距離として算出する。このときの車両100の推定加減速度は、起点通過時、すなわち最後に加減速情報を記録したときの車両100の走行速度に基づいて求めることができる。たとえば、起点通過時の車両100の走行速度と、その直後に検出された車両100の走行速度との差から、起点通過後の車両100の推定加減速度を求めることができる。なお、加減速情報の記録は、ステップS30で加減速度の変化を検出した場合、または後述のステップS60で仮想累積走行距離と実累積走行距離との差が基準値以上であると判定した場合に、ステップS80において行われる。
【0049】
ステップS50において、制御部10は、上記起点から現在位置までの車両100の実累積走行距離を算出する。ここでは、起点通過後に車速センサ13から出力された車速信号に基づいて所定周期ごとに検出された各走行速度に基づいて、所定周期ごとの車両100の走行距離を積算することにより、実累積走行距離を算出することができる。
【0050】
ステップS60において、制御部10は、ステップS40で算出された仮想累積走行距離と、ステップS50で算出された実累積走行距離との差が、予め設定された所定の基準値以上であるか否かを判定する。仮想累積走行距離と実累積走行距離との差が所定の基準値、たとえば1.5m以上である場合は、これを加減速度の変化に相当する疑似点として検出してステップS70へ進む。一方、仮想累積走行距離と実累積走行距離との差が基準値未満である場合は、ステップS90へ進む。
【0051】
ステップS70において、制御部10は、現在時刻および車両100の現在位置を検出する。ここでは、GPS受信部11により受信されたGPS信号に基づいて、現在時刻および現在位置を検出することができる。
【0052】
ステップS80において、制御部10は、ステップS10で算出した平均走行速度と、ステップS70で検出した現在時刻および現在位置とを、加減速情報としてHDD14に記録する。これにより、ステップS30で加減速度の変化が検出されたとき、またはステップS60で加減速度の変化に相当する疑似点が検出されたときの時刻と、そのときの車両100の位置および速度とが、加減速情報としてHDD14に記録される。
【0053】
ステップS90において、制御部10は、これまでに記録された加減速情報のうち未送信の加減速情報をナビゲーション装置1からサーバ装置500へ送信するか否かを判定する。この判定は、所定の送信条件を満たすか否かにより行うことができる。たとえば、前回の送信から所定時間以上経過した場合や、所定数以上の加減速情報が記録された場合に、加減速情報を送信すると判定してステップS100へ進む。一方、これらの送信条件を満たさない場合は、加減速情報を送信しないと判定してステップS10へ戻り、前述のような処理を繰り返す。
【0054】
ステップS100において、制御部10は、HDD14に記録されている未送信の加減速情報をまとめてサーバ装置500へ送信する。ここでは、未送信の加減速情報として記録されている時刻、位置および速度の組み合わせをHDD14から複数組読み出し、これらをまとめて通信端末6へ出力することで、通信端末6および移動体通信網400を介して複数の加減速情報をサーバ装置500へ送信することができる。さらにこのとき、車両100の特徴を示す情報、たとえば車種情報などを加減速情報と共に送信する。これにより、車両100の運動状態に関する情報として、車両100の加減速度の変化に関する加減速情報をサーバ装置500へ送信することができる。なお、ステップS100の実行後に送信済みの加減速情報をHDD14から消去してもよい。
【0055】
ステップS100を実行したら、制御部10はステップS10へ戻り、
図4のフローチャートに示す処理を繰り返し実行する。
【0056】
次に、損失・回生パラメータ算出処理について説明する。
図6は、損失・回生パラメータ算出処理のフローチャートである。サーバ装置500は、車両100、200および300に搭載されているナビゲーション装置1のいずれかより加減速情報が送信されると、それに応じて演算処理部501により、
図6のフローチャートに示す損失・回生パラメータ算出処理を実行する。なお、以下では、車両100に搭載されているナビゲーション装置1から加減速情報が送信されたものとして説明する。
【0057】
ステップS110において、演算処理部501は、ナビゲーション装置1から送信された加減速情報を受信する。この加減速情報は、
図4のステップS100が実行されることでナビゲーション装置1からサーバ装置500へ送信されたものであり、複数の加減速情報がまとめて送信される。さらにこのとき、ナビゲーション装置1から加減速情報と共に送信される前述のような車両100の特徴を示す情報、すなわち車種情報等も合わせて受信する。
【0058】
ステップS120において、演算処理部501は、ステップS110で受信した各加減速情報と、最も詳細側である最下位層の地図データ、すなわちレベル1地図データにおけるリンクとの対応付けを行う。ここでは、受信した各加減速情報について、当該加減速情報に含まれる位置情報から、当該加減速情報が得られた位置、すなわち加減速度の変化が検出されたときの車両100の位置を求め、その位置に対応するリンクをレベル1地図データにおいて特定する。さらに、こうして特定したリンクに合わせて当該加減速情報が得られた位置を必要に応じて補正することで、リンク上の位置を特定する。なお、このようなリンクの特定やリンク上の位置の特定において用いられるリンクの情報は、たとえば蓄積部502に記憶されている地図データから取得することができる。
【0059】
上記ステップS120の処理を実行することにより、演算処理部501は、受信した各加減速情報を最下位層の地図データにおいて特定のリンクとそれぞれ対応付け、その各リンク上に、受信した各加減速情報に対応する位置をそれぞれ特定することができる。
【0060】
ステップS130において、演算処理部501は、ステップS120で対応付けを行った各リンクに対して、その端点の速度をそれぞれ算出する。ここでは、各リンクの端点のそれぞれについて、受信した加減速情報に対してステップS120で各リンク上に特定された位置のうち、当該リンク端点の両側にそれぞれ隣接する2つの位置の加減速情報に含まれる速度情報に基づいて、当該リンク端点の速度を算出する。
【0061】
たとえば、当該リンク端点の両側にそれぞれ隣接する2つの位置の加速度情報に含まれる速度情報がそれぞれ表す速度をV
0、V
1とすると、当該リンク端点の速度V
tは以下の式(1)により求めることができる。なお、式(1)において、L
0、L
1は、当該リンク端点からその両隣に特定された各位置までの距離をそれぞれ表す。
【0063】
なお、ステップS120で対応付けを行った一連のリンクにおいて両端部分に位置するリンクでは、その一方の端点について、加速度情報に対して特定された位置が片側にのみ隣接して存在する。そのため、上記のような方法では、その端点に対して速度を算出することができない。したがって、こうしたリンクは以降の処理対象から除外することが好ましい。
【0064】
ステップS140において、演算処理部501は、ステップS120で加減速情報と対応付けされたレベル1地図データのリンクのうちいずれかを選択する。すなわち、最下位層の地図データにおいて、各加減速情報が得られたときの車両100の位置に対応するリンクの中から、いずれかのリンクを選択する。
【0065】
ステップS150において、演算処理部501は、ステップS140で選択されたリンクにおける損失区間と回生区間をそれぞれ特定する。ここでは、ステップS120で当該リンクに対して行われた対応付けの結果に基づいて、当該リンク上で加減速情報に対して特定された各位置をそれぞれ求め、これらを分割点として用いることでリンクを複数の区間に分割する。さらに、ステップS120で当該リンクと対応付けされた加減速情報と、ステップS130で算出された当該リンクの両端点の速度とに基づいて、分割された各区間における車両100のエネルギー変化量をそれぞれ算出する。このエネルギー変化量の算出結果に基づいて、各区間がそれぞれ損失区間と回生区間のいずれに該当するかを判断することにより、損失区間および回生区間を特定する。
【0066】
ステップS150における損失区間と回生区間の判断方法について、以下に説明する。
図7は、損失区間と回生区間の判断方法を説明する図である。
図7では、算出対象のリンクの一例として、その両端点間の各位置に対応する加減速情報に含まれる速度情報が車速V
peak_1、V
peak_2、V
peak_3およびV
peak_4をそれぞれ表すと共に、両端点に対しては車速V
peak_0およびV
peak_5がそれぞれ算出されているリンクを示している。なお、各リンクには固有のリンクIDがそれぞれ設定されており、このリンクにはリンクID=nが設定されているものとする。
【0067】
図7のリンクにおいて、車両100は、V
peak_0からV
peak_1に対応する最初の区間では加速し、次のV
peak_1からV
peak_2の区間では減速し、次のV
peak_2からV
peak_3の区間では加速している。また、これに続くV
peak_3からV
peak_4の区間では減速し、最後のV
peak_4からV
peak_5の区間では加速している。
【0068】
ステップS150では、上記の各区間に対して、先ずはその水平距離L
2D_1〜L
2D_5と、走行距離L
3D_1〜L
3D_5と、上昇方向の標高差H
U_1〜H
U_5と、下降方向の標高差H
D_1〜H
D_5とをそれぞれ求める。これらの各値は、蓄積部502に記憶されているレベル1地図データに基づいて求めることができる。たとえば、レベル1地図データにおける当該リンクの水平距離をL
2Dとすると、この水平距離L
2Dを各区間の長さの比率に応じて配分することにより、各区間の水平距離L
2D_1〜L
2D_5が求められる。また、レベル1地図データにおいて当該リンク内に予め設定された各点の標高情報に基づいて、各区間の上昇方向の標高差H
U_1〜H
U_5および下降方向の標高差H
D_1〜H
D_5が求められる。こうして求められた各区間の水平距離L
2D_1〜L
2D_5、上昇方向の標高差H
U_1〜H
U_5および下降方向の標高差H
D_1〜H
D_5に基づいて、各区間の走行距離L
3D_1〜L
3D_5が求められる。なお、下降方向の標高差H
D_1〜H
D_5は、負の値として算出される。
【0069】
次に上記の各値を用いて、各区間におけるエネルギー変化量をそれぞれ求める。たとえば最初の区間に対するエネルギー変化量は、当該区間の始点における車速V
peak_0および終点における車速V
peak_1と、当該区間の水平距離L
2D_1および走行距離L
3D_1と、当該区間の上昇方向の標高差H
U_1および下降方向の標高差H
D_1とを用いて、以下の式(2)により求めることができる。
【0071】
上記の式(2)において、λ
1、λ
2、λ
3、λ
4は加速抵抗係数、勾配抵抗係数、路面抵抗係数および空気抵抗係数をそれぞれ表している。これらの各係数は、車両100の重量、形状等の特徴や重力加速度等の物理定数に応じて決まる定数であり、ステップS110で加減速情報と共に受信した車種情報等に基づいてその値が決定される。また、V
aveは当該リンクにおける平均車速を表しており、リンクごとに予め設定された値などに基づいてその値が決定される。
【0072】
なお、他の各区間に対するエネルギー変化量も、始点の車速、終点の車速、水平距離、走行距離、上昇方向の標高差および下降方向の標高差を用いて、式(2)と同様の計算を行うことにより求めることができる。
【0073】
上記のように各区間のエネルギー変化量を算出したら、最後にその各エネルギー変化量が正負いずれの値であるかを調べることにより、各区間が損失区間または回生区間のいずれであるかを判断する。すなわち、算出されたエネルギー変化量が正の値である場合、そのエネルギー変化量は、車両100が当該区間を走行したときにエネルギーが損失されたことを表している。したがってこの場合、当該区間は損失区間であると判断することができる。一方、算出されたエネルギー変化量が負の値である場合、そのエネルギー変化量は、車両100が当該区間を走行したときにエネルギーが回生されたことを表している。したがってこの場合、当該区間は回生区間であると判断することができる。こうした判断を各区間についてそれぞれ行うことにより、各区間が損失区間または回生区間のいずれであるかを判断することができる。
【0074】
ステップS150では、以上説明したような方法により、ステップS140で選択されたリンクを分割した各区間について、損失区間または回生区間のいずれであるかが判断される。たとえば、
図7に示した各区間のうち、最初の区間、4番目の区間および最後の区間が損失区間であるとそれぞれ判断され、2番目の区間および3番目の区間が回生区間であるとそれぞれ判断される。
【0075】
ステップS160において、演算処理部501は、ステップS150で特定された各損失区間での走行状態をまとめて表すための損失パラメータと、各回生区間での走行状態をまとめて表すための回生パラメータとを算出する。ここでは、ステップS150で行われた損失区間と回生区間の判断結果に基づいて、前述の
図7の例を用いて次に説明するような方法により、損失パラメータおよび回生パラメータを算出することができる。
【0076】
図7のリンクに対する損失パラメータとしての損失加速量ν
l_n(1)、損失区間水平距離L
2Dl_n(1)、損失区間走行距離L
3Dl_n(1)、損失区間UP標高差H
Ul_n(1)および損失区間DOWN標高差H
Dl_n(1)と、回生パラメータとしての回生加速量ν
r_n(1)、回生区間水平距離L
2Dr_n(1)、回生区間走行距離L
3Dr_n(1)、回生区間UP標高差H
Ur_n(1)および回生区間DOWN標高差H
Dr_n(1)とを、以下の式(3)〜(12)によりそれぞれ算出することができる。なお、損失区間DOWN標高差H
Dl_n(1)および損失区間DOWN標高差H
Dl_n(1)は、それぞれ負の値として算出される。また、損失加速量ν
l_n(1)および回生加速量ν
r_n(1)は、それぞれ正負いずれかの値として算出され、正の値である場合は加速量を、負の値である場合は減速量を表している。
【0087】
ステップS160では、以上説明したようにして損失パラメータおよび回生パラメータの各値を算出することができる。
【0088】
ステップS170において、演算処理部501は、ステップS160で算出した損失パラメータおよび回生パラメータを蓄積部502に記録する。
【0089】
図8は、蓄積部502に記録される損失・回生パラメータの例を示す図である。ここでは、
図7に例示したリンクID=nのリンクについて、前述のようにして算出した損失・回生パラメータの各値を一覧表に表している。このような損失・回生パラメータの値が蓄積部502においてリンクごとに記録される。
【0090】
ステップS180において、演算処理部501は、後述の統計パラメータを更新するか否かを判定する。この判定は、所定の更新条件を満たすか否かにより行うことができる。たとえば、前回の更新から所定時間以上経過した場合や、蓄積部502において所定数以上の損失・回生パラメータが新たに記録された場合に、統計パラメータを更新すると判定してステップS190へ進む。一方、これらの更新条件を満たさない場合は、統計パラメータを更新しないと判定してステップS200へ進む。
【0091】
ステップS190において、演算処理部501は、当該リンクに対する消費電力量または回生電力量を推定するための統計パラメータを算出する。ここでは、蓄積部502に記録されている損失パラメータと回生パラメータをそれぞれ統計的に処理することにより、統計パラメータとしての統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを算出する。
【0092】
ステップS190で統計パラメータを算出する方法を以下に説明する。
図9は、統計パラメータの算出方法を説明する図である。
図9では、リンクID=nのリンクについて、損失パラメータである損失加速量ν
l_n(1)〜ν
l_n(4)、損失区間水平距離L
2Dl_n(1)〜L
2Dl_n(4)、損失区間走行距離L
3Dl_n(1)〜L
3Dl_n(4)、損失区間UP標高差H
Ul_n(1)〜H
Ul_n(4)および損失区間DOWN標高差H
Dl_n(1)〜H
Dl_n(4)と、回生パラメータである回生加速量ν
r_n(1)〜ν
r_n(4)、回生区間水平距離L
2Dr_n(1)〜L
2Dr_n(4)、回生区間走行距離L
3Dr_n(1)〜L
3Dr_n(4)、回生区間UP標高差H
Ur_n(1)〜H
Ur_n(4)および回生区間DOWN標高差H
Dr_n(1)〜H
Dr_n(4)とが、蓄積部502において記録されている様子を示している。
【0093】
上記の各パラメータ値の統計平均を算出することにより、リンクID=nのリンクに対する統計パラメータを算出することができる。すなわち、統計損失パラメータとしての統計損失加速量ν
l_n、統計損失区間水平距離L
2Dl_n、統計損失区間走行距離L
3Dl_n、統計損失区間UP標高差H
Ul_nおよび統計損失区間DOWN標高差H
Dl_nと、統計回生パラメータとしての統計回生加速量ν
r_n、統計回生区間水平距離L
2Dr_n、統計回生区間走行距離L
3Dr_n、統計回生区間UP標高差H
Ur_nおよび統計回生区間DOWN標高差H
Dr_nとを、以下の式(13)〜(22)によりそれぞれ算出することができる。なお、統計損失区間DOWN標高差H
Dl_nおよび統計回生区間DOWN標高差H
Dr_nは、それぞれ負の値として算出される。また、統計損失加速量ν
l_nおよび統計回生加速量ν
r_nは、それぞれ正負いずれかの値として算出され、正の値である場合は加速量を、負の値である場合は減速量を表している。
【0104】
ステップS190では、以上説明したようにして統計損失パラメータおよび統計回生パラメータの各値を算出することができる。なお、蓄積部502に記録されている損失・回生パラメータを所定の条件に基づいて分類し、その分類ごとに上記のような算出方法で統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを算出してもよい。たとえば、当該損失・回生パラメータの算出に用いられた加減速情報を取得した車両の種類、時間帯、曜日などに応じて、損失・回生パラメータを分類し、その分類ごとに統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを算出することができる。
【0105】
ステップS191において、演算処理部501は、ステップS190で算出した統計損失パラメータおよび統計回生パラメータを蓄積部502に記録する。なお、既に統計損失パラメータおよび統計回生パラメータが記録されている場合は、ステップS190の算出結果を用いてその値を更新する。
【0106】
ステップS200において、演算処理部501は、ステップS120で加減速情報と対応付けされたレベル1地図データのリンクの全てをステップS140において選択済みであるか否かをする。選択対象であるこれらのリンクの中にまだ未選択のリンクがある場合はステップS140へ戻り、未選択のリンクのいずれかをステップS140で選択した後、そのリンクに対して上述のような処理を繰り返す。一方、全ての選択対象リンクを選択済みである場合は、
図6のフローチャートに示す処理を終了する。
【0107】
以上説明したような損失・回生パラメータ算出処理が演算処理部501において実行されることで、レベル1地図データに対応する各リンクに対して消費エネルギーまたは回生エネルギーを推定するための統計パラメータが算出され、蓄積部502に記憶される。
【0108】
次に、上位リンク統計パラメータ生成処理について説明する。
図10は、上位リンク統計パラメータ生成処理のフローチャートである。サーバ装置500は、演算処理部501により、
図10のフローチャートに示す上位リンク統計パラメータ生成処理を所定周期ごとに定期的に実行する。
【0109】
なお、上位リンク統計パラメータ生成処理では、
図6の損失・回生パラメータ算出処理によりレベル1地図データの各リンクに対して算出された統計パラメータを用いて、レベル2地図データの各リンクに対する統計パラメータが算出される。これらのリンクを互いに区別するため、以下の説明では、レベル1地図データが表す各リンクを「下位リンク」と称し、レベル2地図データが表す各リンクを「上位リンク」と称する。
【0110】
ステップS210において、演算処理部501は、レベル2地図データが表す上位リンクのいずれかを選択する。
【0111】
ステップS220において、演算処理部501は、ステップS210で選択した上位リンクに対応する各下位リンクの統計パラメータを算出済みであるか否かを判定する。
図6で説明した損失・回生パラメータ算出処理により、選択した上位リンクに対応する複数の下位リンクの全てについて統計パラメータを算出済みであれば、次のステップS230へ進む。一方、対応する下位リンクのうちいずれか少なくとも1つについて統計パラメータを未算出の場合は、ステップS280へ進む。なお、前述のように選択した上位リンクが1つの下位リンクのみに対応する場合、ステップS220では、その下位リンクの統計パラメータを算出済みであるか否かを判定すればよい。
【0112】
ステップS230において、演算処理部501は、ステップS210で選択した上位リンクの統計パラメータを更新するか否かを判定する。この判定は、所定の更新条件を満たすか否かにより行うことができる。たとえば、選択した上位リンクに対応する複数の下位リンクのうち所定数以上の下位リンクについての統計パラメータが前回の値より更新されている場合や、前回の更新から所定時間以上経過した場合に、統計パラメータを更新すると判定してステップS240へ進む。一方、これらの更新条件を満たさない場合は、統計パラメータを更新しないと判定してステップS280へ進む。
【0113】
ステップS240において、演算処理部501は、ステップS210で選択した上位リンクに対応する各下位リンクのエネルギー変化量を要因別に算出する。ここでは、
図6のステップS190で算出され、続くステップS191で蓄積部502に記憶された各下位リンクの統計パラメータに基づいて、その統計パラメータが表す要因別に、各下位リンクのエネルギー変化量を算出する。
【0114】
ステップS240で各下位リンクのエネルギー変化量を要因別に算出する方法について、以下に
図11および
図12を参照して説明する。
図11は、下位リンクの統計パラメータの例を示す図であり、
図12は、
図11に示した下位リンクの統計パラメータから上位リンクの統計パラメータを算出する方法を説明する図である。
【0115】
図11では、リンクID=n0の上位リンクをステップS210で選択した場合に、この上位リンクに対応するリンクID=n1〜n4の各下位リンクについて、統計損失パラメータである統計損失加速量ν
l_n1〜ν
l_n4、統計損失区間水平距離L
2Dl_n1〜L
2Dl_n4、統計損失区間走行距離L
3Dl_n1〜L
3Dl_n4、統計損失区間UP標高差H
Ul_n1〜H
Ul_n4および統計損失区間DOWN標高差H
Dl_n1〜H
Dl_n4と、統計回生パラメータである統計回生加速量ν
r_n1〜ν
r_n4、統計回生区間水平距離L
2Dr_n1〜L
2Dr_n4、統計回生区間走行距離L
3Dr_n1〜L
3Dr_n4、統計回生区間UP標高差H
Ur_n1〜H
Ur_n4および統計回生区間DOWN標高差H
Dr_n1〜H
Dr_n4とが、蓄積部502において記録されている様子を示している。
【0116】
上記の各統計パラメータに基づいて、リンクID=n1〜n4の各下位リンクのエネルギー変化量を要因別に算出することができる。具体的には、加速抵抗、勾配抵抗、路面抵抗および空気抵抗の各要因について、
図12の表中の各該当欄に示した式により、リンクID=n1〜n4の各下位リンクの損失区間と回生区間における要因別のエネルギー変化量をそれぞれ算出することができる。
【0117】
なお、
図12において、η
1、η
2、η
3、η
4は加速抵抗係数、勾配抵抗係数、路面抵抗係数および空気抵抗係数をそれぞれ表している。これらの各係数は、前述の式(2)における各係数λ
1、λ
2、λ
3、λ
4と同様に、対象とする車両の重量、形状等の特徴や重力加速度等の物理定数に応じて決まる定数であるが、ここでは任意の値をそれぞれ設定すればよい。
【0118】
また、
図12において、空気抵抗でのエネルギー変化量の算出式中に含まれるV
n1、V
n2、V
n3、V
n4は各下位リンクの走行速度を表している。これらの走行速度V
n1〜V
n4は、前述の式(2)で用いた平均車速V
aveと同様に、下位リンクごとに予め設定された値などに基づいてその値を決定することができる。あるいは、各下位リンクの統計損失パラメータおよび統計回生パラメータに基づいて、各下位リンクの走行速度を予め算出しておき、これを用いて走行速度V
n1〜V
n4を決定するようにしてもよい。
【0119】
ステップS250において、演算処理部501は、ステップS240で算出した各下位リンクのエネルギー変化量を要因別に積算する。具体的には、損失区間における加速抵抗でのエネルギー変化量の積算値E
νl_n0、勾配抵抗でのエネルギー変化量の積算値E
δl_n0、路面抵抗でのエネルギー変化量の積算値E
μl_n0および空気抵抗でのエネルギー変化量の積算値E
ρl_n0と、回生区間における加速抵抗でのエネルギー変化量の積算値E
νr_n0、勾配抵抗でのエネルギー変化量の積算値E
δr_n0、路面抵抗でのエネルギー変化量の積算値E
μr_n0および空気抵抗でのエネルギー変化量の積算値E
ρr_n0とを、以下の式(23)〜(30)によりそれぞれ算出することができる。
【0128】
ステップS260において、演算処理部501は、ステップS250で要因別に積算したエネルギー変化量に基づいて、ステップS210で選択した上位リンクの統計パラメータを算出する。具体的には、上記の式(23)〜(30)で表される損失区間および回生区間における要因別のエネルギー変化量の各積算値に基づいて、リンクID=n0の上位リンクに対して以下の式(31)〜(38)により、損失区間に対する統計パラメータとしての統計損失加速パラメータP
νl_n0、統計損失勾配パラメータP
δl_n0、統計損失路面パラメータP
μl_n0および統計損失空気パラメータP
ρl_n0と、回生区間に対する統計パラメータとしての統計回生加速パラメータP
νr_n0、統計回生勾配パラメータP
δr_n0、統計回生路面パラメータP
μr_n0および統計回生空気パラメータP
ρr_n0とをそれぞれ算出することができる。
【0137】
上記の式(33)におけるL
2Dl_n0と式(34)におけるL
3Dl_n0は、リンクID=n0の上位リンクでの損失区間における水平距離と走行距離をそれぞれ表している。これらは、以下の式(39)、(40)によりそれぞれ求められる。
【0140】
上記の式(39)において、分子のL
2Dl_n1、L
2Dl_n2、L
2Dl_n3、L
2Dl_n4は前述のように、リンクID=n1〜n4の各下位リンクに対して記録されている統計損失区間水平距離をそれぞれ表している。分母のL
2D_n1、L
2D_n2、L
2D_n3、L
2D_n4は各下位リンクの水平距離をそれぞれ表しており、L
2D_n0はリンクID=n0の上位リンクの水平距離を表している。
【0141】
一方、上記の式(40)において、分子のL
3Dl_n1、L
3Dl_n2、L
3Dl_n3、L
3Dl_n4は前述のように、リンクID=n1〜n4の各下位リンクに対して記録されている統計損失区間走行距離をそれぞれ表している。また、分母のL
3D_n1、L
3D_n2、L
3D_n3、L
3D_n4は各下位リンクの走行距離をそれぞれ表しており、L
3D_n0はリンクID=n0の上位リンクの走行距離を表している。
【0142】
また、上記の式(37)におけるL
2Dr_n0と式(38)におけるL
3Dr_n0は、リンクID=n0の上位リンクでの回生区間における水平距離と走行距離をそれぞれ表している。これらは、以下の式(41)、(42)によりそれぞれ求められる。
【0145】
上記の式(41)において、分子のL
2Dr_n1、L
2Dr_n2、L
2Dr_n3、L
2Dr_n4は前述のように、リンクID=n1〜n4の各下位リンクに対して記録されている統計回生区間水平距離をそれぞれ表している。なお、式(39)と同様に、分母のL
2D_n1、L
2D_n2、L
2D_n3、L
2D_n4は各下位リンクの水平距離をそれぞれ表しており、L
2D_n0はリンクID=n0の上位リンクの水平距離を表している。
【0146】
一方、上記の式(42)において、分子のL
3Dr_n1、L
3Dr_n2、L
3Dr_n3、L
3Dr_n4は前述のように、リンクID=n1〜n4の各下位リンクに対して記録されている統計回生区間走行距離をそれぞれ表している。なお、式(40)と同様に、分母のL
3D_n1、L
3D_n2、L
3D_n3、L
3D_n4は各下位リンクの走行距離をそれぞれ表しており、L
3D_n0はリンクID=n0の上位リンクの走行距離を表している。
【0147】
ステップS260では、以上説明したようにして上位リンクの統計パラメータの各値を算出することができる。なお、蓄積部502に記録されている下位リンクの統計パラメータを所定の条件に基づいて分類し、その分類ごとに上記のような算出方法で上位リンクの統計パラメータを算出してもよい。たとえば、車両の種類、時間帯、曜日などに応じて下位リンクの統計パラメータを分類し、その分類ごとに上位リンクの統計パラメータを算出することができる。
【0148】
ステップS270において、演算処理部501は、ステップS260で算出した上位リンクの統計パラメータを蓄積部502に記録する。なお、既に統計パラメータが記録されている場合は、ステップS260の算出結果を用いてその値を更新する。
【0149】
ステップS280において、演算処理部501は、上位リンクの全てをステップS210において選択済みであるか否かをする。レベル2地図データの中にまだ未選択の上位リンクがある場合はステップS210へ戻り、未選択の上位リンクのいずれかをステップS210で選択した後、その上位リンクに対して上述のような処理を繰り返す。一方、全ての上位リンクを選択済みである場合は、
図10のフローチャートに示す処理を終了する。
【0150】
以上説明したような上位リンク統計パラメータ生成処理が演算処理部501において実行されることで、上位階層のレベル2地図データに対応する各上位リンクに対して消費エネルギーまたは回生エネルギーを推定するための統計パラメータが算出され、蓄積部502に記憶される。
【0151】
なお、以上説明した上位リンク統計パラメータ生成処理では、レベル1地図データが表す各下位リンクの統計パラメータに基づいて、レベル2地図データが表す各上位リンクの統計パラメータを算出する例を説明した。しかし、レベル2以上の階層の地図データが表す各リンクについても、同様の処理を行うことで統計パラメータを算出することができる。以下では、レベル2以上の階層の地図データについても、レベル2地図データと同様に各リンクの統計パラメータが算出されているものとして説明する。
【0152】
次に、経路情報配信処理について説明する。
図13は、経路情報配信処理のフローチャートである。サーバ装置500は、車両100、200および300に搭載されているナビゲーション装置1のいずれかより、車両情報が送信されることで経路情報の要求が行われると、それに応じて演算処理部501により、
図13のフローチャートに示す経路情報配信処理を実行する。なお、以下では、車両100に搭載されているナビゲーション装置1から車両情報が送信されて経路情報が要求されたものとして説明する。
【0153】
ステップS310において、演算処理部501は、ナビゲーション装置1から送信された車両情報を受信する。この車両情報には、車両100の残電力量を示す情報と、出発地としての車両100の位置情報と、車両100において設定された目的地の情報と、消費電力量に関する車両100の特徴を示す情報、たとえば車種情報等が含まれている。ナビゲーション装置1は、ユーザの操作等により目的地が設定されると、これらの情報を取得し車両情報として送信するための処理を実行する。その結果、車両100に対応する車両情報がナビゲーション装置1から通信端末6および移動体通信網400を介してサーバ装置500へ送信される。
【0154】
ステップS320において、演算処理部501は、ステップS310で受信した車両情報に基づいて、出発地および目的地を設定する。ここでは、受信した車両情報に含まれる位置情報と目的地情報に基づいて出発地と目的地を設定する。
【0155】
ステップS330において、演算処理部501は、ステップS320で設定した出発地および目的地に基づいて、経路探索領域を設定する。ここでは、出発地と目的地を含む一定の範囲を経路探索領域として設定する。
【0156】
ステップS340において、演算処理部501は、ステップS330で設定した経路探索領域内の各地域に対して、経路探索に用いる地図データの地図レベルを選択する。ここでは、出発地と目的地付近の地域に対しては下位階層の地図レベルを選択し、それ以外の地域に対しては上位階層の地図レベルを選択する。
【0157】
図14は、地図レベルの選択方法を説明する図である。
図14では、
図13のステップS320において出発地21および目的地22が設定され、これらの出発地21および目的地22に対して、ステップS330において経路探索領域30が設定された場合の例を示している。この場合、ステップS340では、たとえば次のようにして経路探索に用いる地図データの地図レベルを選択する。
【0158】
出発地21を含む地域31と、目的地22を含む地域32では、出発地21から幹線道路に至るまでの詳細な経路や、幹線道路から目的地22に至るまでの詳細な経路を正確に探索する必要がある。そのため、これらの地域については、細かい道路を含むレベル1の地図データを経路探索に用いる地図データとして選択する。一方、地域31、32の周辺をそれぞれ取り囲む地域33、34については、地域31、32ほど詳細な経路探索を必要としないため、上位階層に当たるレベル2の地図データを経路探索に用いる地図データとして選択する。また、経路探索領域30内でこれらの地域を除いた残りの地域については、さらに上位階層に当たるレベル4の地図データを経路探索に用いる地図データとして選択する。このようにして、経路探索領域30内の各地域について、経路探索に用いる地図データの地図レベルが選択される。
【0159】
ステップS340では、以上説明したような方法により、経路探索領域内の各地域に対する地図レベルを選択することができる。なお、上記の地図レベルの選択方法はあくまで一例であるため、他の方法で地図レベルを選択してもよい。
【0160】
ステップS350において、演算処理部501は、ステップS330で設定した経路探索領域内で、ステップS340で選択した地図レベルの地図データからいずれかのリンクを選択する。ここでは、経路探索領域内の各地域について、当該地域に対して選択された地図レベルの各リンクを一つずつ選択する。
【0161】
ステップS360において、演算処理部501は、ステップS350で選択したリンクに対する統計パラメータを蓄積部502から読み出す。ここで読み出される統計パラメータは、レベル1地図データのリンクの場合は、過去に実行された損失・回生パラメータ算出処理において、前述した
図6のステップS191で蓄積部502に記録されたものである。また、レベル2以上の地図データのリンクの場合は、過去に実行された上位リンク統計パラメータ生成処理において、前述した
図10のステップS270で蓄積部502に記録されたものである。
【0162】
ステップS370において、演算処理部501は、ステップS360で読み出した統計パラメータに基づいて、当該リンクにおける推定対象車両の推定消費電力量または推定回生電力量を算出する。ここでは、ステップS310で車両情報を送信したナビゲーション装置1が搭載されている車両100を推定対象車両として、推定消費電力量または推定回生電力量の算出を行う。このとき、ステップS350で選択したリンクがレベル1地図データの場合とレベル2以上の地図データの場合とで、以下で説明するようにそれぞれ異なる算出方法により、推定消費電力量または推定回生電力量を算出する。
【0163】
レベル1地図データの場合、たとえばリンクID=nのリンクに対して、
図9に示したような統計パラメータがステップS360で読み出される。すなわち、統計損失パラメータである統計損失加速量ν
l_n、統計損失区間水平距離L
2Dl_n、統計損失区間走行距離L
3Dl_n、統計損失区間UP標高差H
Ul_nおよび統計損失区間DOWN標高差H
Dl_nと、統計回生パラメータである統計回生加速量ν
r_n、統計回生区間水平距離L
2Dr_n、統計回生区間走行距離L
3Dr_n、統計回生区間UP標高差H
Ur_nおよび統計回生区間DOWN標高差H
Dr_nとが、当該リンクに対する統計パラメータとして読み出される。この場合、読み出されたこれらの統計パラメータに基づいて、以下の式(43)により、リンクID=nのリンクに対する推定消費電力量(または推定回生電力量)E
nを算出することができる。
【0165】
上記の式(43)において、κ
1、κ
2、κ
3、κ
4は加速抵抗係数、勾配抵抗係数、路面抵抗係数および空気抵抗係数をそれぞれ表している。また、Cは電力変換係数を表し、Rは回生係数を表している。これらの各係数は、推定対象車両の重量、形状、モータ特性、スイッチング損失等の特徴や重力加速度等の物理定数に応じて決まる定数であり、ステップS310で受信した車両情報に含まれる車種情報等に基づいてその値が決定される。なお、ここでは車両100を推定対象車両としているため、上記の各係数κ
1、κ
2、κ
3、κ
4は、前述の式(2)における各係数λ
1、λ
2、λ
3、λ
4とそれぞれ等しい。
【0166】
また、上記の式(43)において、V
nは当該リンクの走行速度を表している。この走行速度V
nは、前述の式(2)で用いた平均車速V
aveと同様に、リンクごとに予め設定された値などに基づいてその値を決定することができる。あるいは、各リンクの統計損失パラメータおよび統計回生パラメータに基づいて、各リンクの走行速度を予め算出しておき、これを用いて走行速度V
nを決定するようにしてもよい。
【0167】
一方、レベル2以上の地図データの場合、たとえばリンクID=n0のリンクに対して、
図12および式(31)〜(38)に示したような統計パラメータがステップS360で読み出される。すなわち、損失区間に対する統計パラメータである統計損失加速パラメータP
νl_n0、統計損失勾配パラメータP
δl_n0、統計損失路面パラメータP
μl_n0および統計損失空気パラメータP
ρl_n0と、回生区間に対する統計パラメータである統計回生加速パラメータP
νr_n0、統計回生勾配パラメータP
δr_n0、統計回生路面パラメータP
μr_n0および統計回生空気パラメータP
ρr_n0とが、当該リンクに対する統計パラメータとして読み出される。この場合、読み出されたこれらの統計パラメータに基づいて、以下の式(44)により、リンクID=n0のリンクに対する推定消費電力量(または推定回生電力量)E
n0を算出することができる。
【0169】
なお、式(43)、(44)でそれぞれ算出されたE
n、E
n0が負の値である場合、それらは推定消費電力量ではなく、推定回生電力量を表している。すなわち、当該リンクを推定対象車両である車両100が走行すると、推定回生電力量E
nまたはE
n0が回生発電によって得られ、それによりバッテリ3が充電されて残電力量が増加するものと推定することができる。
【0170】
ステップS370では、以上説明したようにして、選択したリンクに対する推定消費電力量または推定回生電力量をそれぞれ算出することができる。このような処理を経路探索領域内の各リンクに対して行うことにより、出発地から目的地までの各リンクにおける推定対象車両の消費電力量または回生電力量を推定することができる。なお、以下の説明では、推定消費電力量と推定回生電力量を合わせて単に推定消費電力量と称することもある。ステップS370の処理を実行することで推定消費電力量または推定回生電力量を算出したら、ステップS380へ進む。
【0171】
ステップS380において、演算処理部501は、ステップS330で設定した経路探索領域内の全リンクを選択済みであるか否かを判定する。その結果、経路探索領域内に未選択のリンクが存在する場合はステップS350へ戻り、そのリンクのいずれかを選択して前述のような処理を繰り返す。一方、経路探索領域内の全リンクを選択済みである場合は、ステップS390へ進む。
【0172】
ステップS390において、演算処理部501は、ステップS370で算出した経路探索領域内の各リンクの推定消費電力量に基づいて、出発地から目的地までの推奨経路を探索する。ここでは、ダイクストラ法等の周知の処理手法を用いて、各リンクの推定消費電力量の合計が最小となるリンクの組み合わせを出発地から目的地までの間に特定することで、推奨径路を探索する。これにより、ステップS370で推定された各リンクの消費電力量または回生電力量に基づいて、推定対象車両である車両100に対する出発地から目的地までの推奨経路を探索することができる。
【0173】
ステップS400において、演算処理部501は、ステップS390で探索した推奨経路に関する経路情報をナビゲーション装置1へ送信する。ここでは、たとえば推奨経路に含まれるリンクを特定するための情報などを経路情報として、移動体通信網400を介してナビゲーション装置1へ送信する。ステップS400を実行したら、
図13のフローチャートに示す処理を終了する。
【0174】
以上説明したような経路情報配信処理がサーバ装置500において実行されることにより、ナビゲーション装置1からの要求に応じて、各リンクの推定消費電力量に基づく推奨経路が探索され、その推奨経路に関する経路情報がサーバ装置500からナビゲーション装置1へ送信される。サーバ装置500からの経路情報を受信すると、ナビゲーション装置1はその経路情報に基づいて、表示モニタ15において推奨経路を地図上に表示し、目的地までの経路案内を行う。
【0175】
以上説明した第1の実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
【0176】
(1)サーバ装置500は、蓄積部502により、複数の地図レベルに階層分けされ、各地図レベルについて所定の道路区間ごとに設定されたリンクの情報を含む地図データと、この地図データにおいて地図レベル1に対応する各下位リンクに対して、消費電力量または回生電力量を推定するための統計パラメータとを記憶する。また、演算処理部501の処理により、蓄積部502に記憶された下位リンクの統計パラメータに基づいて、レベル1よりも上位の地図レベルに対応する各上位リンクに対して、消費電力量または回生電力量を推定するための統計パラメータを算出する(ステップS260)。このようにしたので、車両の走行に要する消費エネルギー、すなわち消費電力量を正確に予測して、最適な経路を素早く探索することができる。
【0177】
(2)サーバ装置500は、演算処理部501の処理により、上位リンクのいずれかを選択し(ステップS210)、選択した上位リンクに対応する複数の下位リンクについて、蓄積部502に記憶された統計パラメータに基づくエネルギー変化量を要因別に算出して積算する(ステップS240、S250)。ステップS260では、こうして要因別に積算されたエネルギー変化量に基づいて、ステップS210で選択された上位リンクに対して統計パラメータを算出する。このようにしたので、下位リンクの統計パラメータに基づいて、上位リンクの統計パラメータを正確に算出することができる。
【0178】
(3)サーバ装置500において、蓄積部502は、地図データにおいて最下位の地図レベル1に対応する各下位リンクに対して統計パラメータを記憶する。演算処理部501は、ステップS260において、最下位の地図レベル1よりも上位の地図レベルに対応する各上位リンクに対して統計パラメータを算出する。このようにしたので、地図レベル1の各下位リンクに対する統計パラメータから、それよりも上位の地図レベルの各上位リンクに対する統計パラメータを算出することができる。
【0179】
(4)車両100、200および300にそれぞれ搭載されているナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、その車両の加減速度の変化を検出し(ステップS30)、検出した加減速度の変化に関する加減速情報をサーバ装置500へ送信する(ステップS100)。サーバ装置500は、演算処理部501の処理により、これらのナビゲーション装置1からそれぞれ送信される加減速情報を受信し(ステップS110)、受信した加減速情報に基づいて、下位リンクの統計パラメータを算出して蓄積部502に記憶させる(ステップS190、S191)。このようにしたので、各車両の走行状態をサーバ装置500において正確かつ効率的に収集し、下位リンクの統計パラメータを算出することができる。
【0180】
(5)サーバ装置500は、演算処理部501の処理により、蓄積部502に記憶された統計パラメータと、ステップS260で算出された統計パラメータとに基づいて、出発地から目的地までの各リンクにおける推定対象車両の消費電力量または回生電力量を推定する(ステップS370)。こうして推定された各リンクの消費電力量または回生電力量に基づいて、推定対象車両に対する出発地から目的地までの推奨経路を探索する(ステップS390)。このようにしたので、消費電力量に基づく最適な推奨経路を探索することができる。
【0181】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態について以下に説明する。本実施形態では、車両100、200および300のそれぞれにおける加減速傾向に応じて、各リンクの消費電力量または回生電力量の推定値を調節する例を説明する。なお、本実施形態による車両用情報システムの構成、車載システムの構成およびナビゲーション装置1の構成は、第1の実施形態において
図1、2および3に示したものとそれぞれ同一である。したがって、以下ではこれらの構成を用いて、本実施形態の説明を行う。
【0182】
サーバ装置500において推定される電気エネルギーの量は、車両100の重量や形状等の特徴および各道路の状況に加えて、運転者による車両100の運転傾向、特に加減速傾向によって左右される。他の車両200、300においても同様である。そのため、車両100、200および300は、当該車両の加減速傾向に基づいて、サーバ装置500において各リンクの消費電力量または回生電力量を推定する際に用いられる補正係数の算出を走行中にそれぞれ行う。そして、第1の実施形態で説明したように推奨経路の探索をサーバ装置500へ要求する際には、算出された補正係数に関する情報を車両情報に含めてサーバ装置500へ送信する。この補正係数は、当該車両を運転しているユーザ個人の加減速に対する運転傾向を表している。そのため、以下の説明では、この補正係数を「個人補正係数」と称する。
【0183】
本実施形態の車両用情報システムでは、ナビゲーション装置1の制御部10により、車両100の加減速傾向に応じた個人補正係数を算出するための個人補正係数算出処理が実行される。
図15は、個人補正係数算出処理のフローチャートである。ナビゲーション装置1は、制御部10により、
図15のフローチャートに示す個人補正係数算出処理を所定のタイミングごとに実行する。
【0184】
ステップS410において、制御部10は、車両100が走行済みの道路の各リンクに対して、統計損失加速量および統計回生加速量を取得する。ここでは、サーバ装置500において前述の
図6の損失・回生パラメータ算出処理が実行されることで蓄積部502に記録された下位リンクの各統計パラメータのうち、走行済みの道路に対応する各下位リンクの統計損失加速量および統計回生加速量をサーバ装置500から受信して、これらの値を取得する。なお、既に説明したように、統計損失加速量は、当該リンクのうち損失区間における車両の加減速量を統計的に表した値であり、統計回生加速量は、当該リンクのうち回生区間における車両の加減速量を統計的に表した値である。このステップS410の処理により、たとえばリンクID=nのリンクに対して、前述の式(13)で表される統計損失加速量ν
l_nと、式(14)で表される統計回生加速量ν
r_nとをサーバ装置500から取得することができる。
【0185】
なお、ステップS410において、制御部10は、たとえばHDD14に記録されている地図データに基づいて車両100が直前に走行したリンクを特定し、そのリンクを対象として統計損失加速量および統計回生加速量を取得することができる。または、車両100が既に走行済みの複数のリンクについて統計損失加速量および統計回生加速量をまとめて取得してもよい。
【0186】
あるいは、車両100が現在走行中のリンクや、これから走行する予定の道路の各リンクについて、統計損失加速量および統計回生加速量を前もって取得してもよい。たとえば、出発地から目的地までの推奨経路が設定されている場合、その推奨経路の各リンクを取得対象として、統計損失加速量および統計回生加速量を取得することができる。これ以外にも、
図15のフローチャートに示した個人補正係数算出処理の実行タイミングに応じて、車両100が走行済みの道路またはこれから走行する予定の道路の各リンクを統計パラメータの取得対象として特定し、その各リンクについて統計損失加速量および統計回生加速量を取得できれば、どのような方法を用いてもよい。
【0187】
ステップS420において、制御部10は、ステップS410で統計損失加速量および統計回生加速量を取得した各リンクにおける車両100の実加減速量を算出する。ここでは、当該リンクの損失区間と回生区間に対して、車両100が当該リンクを実際に走行した際の車両100の実加減速量をそれぞれ算出する。このときの車両100の実加減速量は、たとえば、
図4のステップS10で所定期間ごとに算出される平均走行速度に基づいて算出することができる。すなわち、当該リンクにおける平均走行速度の各算出値間の変化量から、損失区間と回生区間のそれぞれにおける実加減速量を算出することができる。以下では、損失区間に対して算出される実加減速量を実損失加速量と称し、回生区間について算出される実加減速量を実回生加速量と称する。このステップS420の処理により、たとえばリンクID=nのリンクに対して、実損失加速量μ
l_nおよび実回生加速量μ
r_nが算出される。
【0188】
なお、ステップS420では、たとえば前述の式(2)に基づいて算出されるエネルギー変化量を基に、車両100が走行した道路の各リンクに対して損失区間と回生区間を設定することができる。すなわち、
図4のステップS80において加減速情報が記録されたときの車両100の位置に基づいて、車両100が走行した道路の各リンクを複数の区間に分割する。このとき、加減速情報が記録されなかったリンクについては、当該リンク全体を1つの区間として取り扱う。そして、各区間に対して式(2)で算出されるエネルギー変化量が正負いずれの値であるかを判断し、正の値である区間を損失区間、負の値である区間を回生区間としてそれぞれ設定する。このようにして、走行した道路の各リンクに対して損失区間および回生区間を設定することができる。
【0189】
あるいは、車両100において実際に回生発電が行われた区間を回生区間として設定してもよい。すなわち、車両100の走行中に回生発電が行われた場合、その回生発電の開始地点から終了地点までの区間を回生区間とし、他の区間を損失区間とすることで、損失区間および回生区間を設定することができる。
【0190】
ステップS430において、制御部10は、ステップS410で取得した統計損失加速量および統計回生加速量と、ステップS420で算出した実加減速量とに基づいて、車両100が走行済みの道路に対する加減速量の誤差割合を算出する。ここでは、たとえば車両100が既に走行したリンクID=nのリンクに対して、ステップS410で取得された統計損失加速量ν
l_nおよび統計回生加速量ν
r_nと、ステップS420で算出された実損失加速量μ
l_nおよび実回生加速量μ
r_nとに基づいて、以下の式(45)、(46)により、損失区間における加減速量の誤差割合ε
l_nと、回生区間における加減速量の誤差割合ε
r_nとをそれぞれ算出することができる。
【0193】
なお、上記の式(45)、(46)は、リンクID=nのリンクに対して算出される損失区間での加減速度の誤差割合ε
l_nおよび回生区間での加減速度の誤差割合ε
r_nを表している。しかし、ステップS430では、これらの誤差割合をリンク単位ではなく、複数のリンクをまとめたリンク列単位で算出してもよい。たとえば、車両100が出発地から設定された目的地まで到達したときの走行リンク列を1トリップとして、トリップ単位で損失区間と回生区間における加減速量の誤差割合をそれぞれ算出することができる。その場合、たとえば、当該リンク列に含まれる各リンクの距離比に応じて、ステップS410で取得した各リンクの統計損失加速量や統計回生加速量を加重平均することで、当該リンク列の統計損失加速量や統計回生加速量を求めることができる。このときさらに、出発地から目的地までの距離が所定の基準値に満たなかった場合や、途中で寄り道をした場合などは、当該走行リンク列をトリップではないと判断して誤差割合の算出対象から除外することが好ましい。
【0194】
ステップS440において、制御部10は、ステップS430で算出した誤差割合の値を、当該リンク(またはリンク列)と対応付けて、誤差割合データとしてHDD14に蓄積する。このとき、損失区間に対して算出された加減速量の誤差割合と、回生区間に対して算出された加減速量の誤差割合とを、別々の誤差割合データとして蓄積してもよい。なお、当該リンクに対して既に誤差割合データが過去に蓄積されている場合、その誤差割合データとは別に、新たに算出された誤差割合データを蓄積する。このステップS440の処理が所定のタイミングごとに繰り返し実行されることで、過去に算出された誤差割合に関する誤差割合データがHDD14に蓄積される。
【0195】
ステップS450において、制御部10は、HDD14に蓄積されている誤差割合データに基づく収束性判断を行う。ここでは、過去に実行されたステップS440の処理によってこれまでHDD14に蓄積された誤差割合データが所定の判断条件を満たすか否かを各リンクごとに判断することにより、収束性判断を行う。たとえばリンクID=nのリンクに対して、以下の式(47)、(48)および(49)によって表される判断条件を用いて、ステップS450の収束性判断を行うことができる。式(47)において、N
nはリンクID=nのリンクについてこれまでに蓄積された誤差割合データ数を表し、N
0は必要な規定データ数を表している。式(48)において、ε
lave_n、ε
lmed_nはリンクID=nのリンクについてこれまでに蓄積された損失区間の誤差割合データの平均値と中央値をそれぞれ表し、W
l0は損失区間の誤差割合データに対する規定誤差幅を表している。式(49)において、ε
rave_n、ε
rmed_nはリンクID=nのリンクについてこれまでに蓄積された回生区間の誤差割合データの平均値と中央値をそれぞれ表し、W
r0は回生区間の誤差割合データに対する規定誤差幅を表している。
【0199】
ステップS450では、式(47)、(48)および(49)を全て満たす場合に、リンクID=nのリンクに対して蓄積された誤差割合データは収束性ありと判断する。反対に、式(47)、(48)または(49)のいずれか少なくとも一つを満たさない場合、リンクID=nのリンクに対して蓄積された誤差割合データは収束性なしと判断する。このような収束性判断を各リンクに対して行うことにより、各リンクについて蓄積された誤差割合データの収束性の有無を、リンクごとにそれぞれ判断することができる。すなわち、各リンクについて、誤差割合データが規定の所要データ数以上蓄積されており、かつその誤差割合データの平均値と中央値の差が規定の誤差幅の範囲内であれば、誤差割合データが収束傾向にあると判断することができる。なお、式(47)、(48)および(49)以外の判断条件を用いて、蓄積された誤差割合データの収束性の有無を判断してもよい。たとえば、蓄積された誤差割合データの分散値を算出し、これに基づいて収束性の有無を判断することもできる。
【0200】
なお、前述のようにステップS430においてリンク列単位で誤差割合を算出することで、リンク列ごとに誤差割合データが蓄積されている場合、ステップS450では、その誤差割合データに基づいて収束性判断を行う。その場合、以下で説明するステップS460の処理を省略することが好ましい。
【0201】
ステップS460において、制御部10は、ステップS450の収束性判断によって収束性ありと判断されたリンク数が所定値以上であるか否かを判断する。収束性ありと判断されたリンク数が所定値以上である場合はステップS470へ進み、所定値未満である場合はステップS410へ戻る。
【0202】
以上説明したようなステップS450およびS460の処理により、蓄積された誤差割合データが所定の収束条件を満たすか否かを判断することができる。その結果、収束条件を満たす場合はステップS470へ進み、後述のようにして個人補正係数を算出する一方で、収束条件を満たさない場合は個人補正係数を算出しないようにすることができる。なお、上記の収束条件は一例であり、他の収束条件を用いてもよい。
【0203】
ステップS470において、制御部10は、ステップS430で算出された誤差割合を基にHDD14に蓄積されている誤差割合データに基づいて、ここでは以下の式(50)、(51)により、個人損失補正係数α
lおよび個人回生補正係数α
rを算出することができる。式(50)において、Σε
lave_con、N
lconは各リンクに対する損失区間の誤差割合データのうち、前述のステップS450、S460で収束性ありと判断されたものの平均値の合計とそのデータ数を表している。式(51)において、Σε
rave_con、N
rconは各リンクに対する回生区間の誤差割合データのうち、前述のステップS450、S460で収束性ありと判断されたものの平均値の合計とそのデータ数を表している。
【0206】
以上説明したステップS470の処理により、損失区間と回生区間のそれぞれについて、過去に算出された誤差割合に基づいて、車両100の加減速傾向に応じた個人補正係数を算出することができる。
【0207】
上記のようにして算出された個人補正係数は、ナビゲーション装置1がサーバ装置500に経路情報を要求する際に、車両情報の一部としてナビゲーション装置1から送信される。サーバ装置500の演算処理部501は、前述の
図13に示した経路情報配信処理のステップS310において車両情報を受信することで、車両100に搭載されているナビゲーション装置1から、車両100の消費エネルギーまたは回生エネルギーに対する個人補正係数を取得することができる。
【0208】
ナビゲーション装置1から個人補正係数を取得すると、演算処理部501は、
図13のステップS370において、取得した個人補正係数に基づいて選択リンクの推定消費電力量または推定回生電力量を算出する。具体的には、前述の式(43)または(44)の代わりに、以下の式(52)または(53)を用いて、レベル1地図データにおけるリンクID=nのリンクに対する推定消費電力量(または推定回生電力量)E
n、またはレベル2以上の地図データにおけるリンクID=n0のリンクに対する推定消費電力量(または推定回生電力量)E
n0を算出することができる。
【0211】
以上説明した第2の実施形態によれば、車両100、200および300にそれぞれ搭載されているナビゲーション装置1は、制御部10の処理により、その車両の加減速傾向に応じて、当該車両の消費エネルギーまたは回生エネルギーに対する個人補正係数を算出する(ステップS470)。一方、サーバ装置500は、演算処理部501の処理により、推定対象車両に搭載されているナビゲーション装置1から個人補正係数を取得する(ステップS310)。そして、ステップS370において、蓄積部502に記憶された統計パラメータと、ステップS260で算出された統計パラメータと、ステップS310で取得された個人補正係数とに基づいて、推定対象車両の消費電力量または回生電力量を推定する。このようにしたので、車両を運転しているユーザ個人の加減速に対する運転傾向を反映して、車両の走行に要する消費エネルギー、すなわち消費電力量をより一層正確に予測することができる。
【0212】
なお、以上説明した第2の実施形態は、次のように変形してもよい。
【0213】
(変形例1)以上説明した実施の形態では、ステップS470において、全リンクの損失区間と回生区間に対して、個人損失補正係数と個人回生補正係数をそれぞれ算出することとした。しかし、各リンクを種類に応じて予め分類しておき、そのリンクの種類ごとに個人損失補正係数と個人回生補正係数をそれぞれ算出してもよい。たとえば、カーブの有無、渋滞度合い、道路種別、リンク長、勾配等に基づいて、リンクの分類を行うことができる。さらにこの場合、収束性の有無を判断するための収束条件をリンクの種類ごとに変化させてもよい。たとえば、前述の式(47)において、規定データ数N
0をリンクの種類ごとに変えることができる。
【0214】
(変形例2)車両を運転しているユーザ個人を特定し、ユーザごとに誤差割合データを蓄積して個人損失補正係数および個人回生補正係数を算出してもよい。たとえば、ユーザごとに異なる車両キーを予め登録しておき、運転中のユーザが所持している車両キーを判別することで、車両を運転しているユーザ個人を特定することができる。
【0215】
(変形例3)以上説明した実施の形態では、誤差割合データの蓄積が十分ではないために個人補正係数が存在しない場合、個人補正係数を用いずに、一般的な推定消費電力量または推定回生電力量を算出することとした。しかし、このような場合に、それまでの車両の運転における加減速傾向に応じた補正係数を設定し、その補正係数を個人補正係数の代わりに用いて、推定消費電力量または推定回生電力量を算出してもよい。たとえば、当該車両からそれまでに送信された加減速情報や、当該車両においてそれまでに算出された実加減速量に基づいて大まかな加減速傾向を判断し、その加減速傾向を基に、他車両の個人補正係数や予め設定された補正係数の中から最も近いものを選択して、これを個人補正係数の代わりに用いることができる。
【0216】
また、以上説明した第1および第2の各実施形態は、それぞれ次のように変形してもよい。
【0217】
(変形例4)上記の各実施形態において、回生時の車軸トルクを算出し、算出した車軸トルクに基づいて、車両における回生ブレーキと摩擦ブレーキの配分比率を算出してもよい。このようにすれば、算出した配分比率に基づいて、回生電力量をより正確に推定することができる。
【0218】
(変形例5)上記の各実施形態では、車両100、200および300から送信される加減速情報をサーバ装置500が受信し、これに基づいてサーバ装置500が
図6の損失・回生パラメータ算出処理を行うことにより、下位リンクの統計パラメータを算出して蓄積部502に記憶する車両用情報システムの例を説明した。しかし、サーバ装置500が下位リンクの統計パラメータを算出せずに、予め蓄積部502に記憶してもよい。その場合、
図10の上位リンク統計パラメータ生成処理では、予め記憶された下位リンクの統計パラメータを用いて、第1の実施形態で説明したのと同様の処理により、上位リンクの統計パラメータを算出することができる。
【0219】
(変形例6)上記の各実施形態では、サーバ装置500が
図13の経路情報配信処理を行うことにより、消費電力量に基づく推奨経路を探索してその経路情報をナビゲーション装置1に送信する車両用情報システムの例を説明した。しかし、こうした推奨経路の探索を各車両に搭載されているナビゲーション装置1がそれぞれ実行するようにしてもよい。その場合、各車両のナビゲーション装置1は、自車両を推定対象車両として、HDD14に記録されている地図データに基づいて
図13のステップS320〜S390の処理を実行する。その際に、ステップS360では、サーバ装置500から該当するリンクの統計パラメータを取得する。こうして取得した統計パラメータに基づいてステップS370を実行することで、出発地から目的地までの各リンクにおける推定対象車両の消費電力量または回生電力量を推定することができる。このようにすれば、各車両のナビゲーション装置1においても、消費電力量に基づく最適な推奨経路を探索することができる。さらに、
図6の損失・回生パラメータ算出処理や、
図10の上位リンク統計パラメータ生成処理についても、各車両に搭載されているナビゲーション装置1がそれぞれ実行してもよい。
【0220】
(変形例7)上記の各実施の形態では、車載装置としてナビゲーション装置1を利用した例を説明したが、ナビゲーション装置以外の車載装置を利用してもよい。また、上記の各実施の形態では、各リンクに対する推定消費電力量を目的地までの推奨経路の探索に利用する例を説明したが、これ以外のものに利用してもよい。たとえば、推定消費電力量に基づいて車両が航続可能なエリアを特定したり、経路途中での立ち寄り地点を提案したりすることができる。
【0221】
(変形例8)上記の各実施の形態では、EVである車両についてその消費電力量または回生電力量を推定する例を説明したが、これ以外の車両に対して本発明を適用してもよい。たとえば、ガソリン等の燃料と電気とを併用して駆動するハイブリッド自動車(HEV)や、ガソリン等の燃料のみを用いて駆動する通常の自動車についても本発明を適用可能である。なお、回生ブレーキ等のエネルギー回生機構を有しない通常の自動車の場合は、前述の式(43)、(44)、(52)および(53)において回生係数Rを0として推定消費エネルギー量を計算すればよい。
【0222】
上記の各実施形態や各変形例は任意に組み合わせて採用してもよい。また、上記実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。