【解決手段】溶解物又はそのままの試料からDNAを同時に抽出及び分画するためのデバイスであって、前記デバイスは、単一フロースルーマイクロ流体チャネルを備え、前記単一フロースルーマイクロ流体チャネルは、緩衝液チャンバと、試薬チャンバと、吸着剤フィルタと、を備えるデバイス。
溶解物又はそのままの試料からDNAを同時に抽出及び分画するためのデバイスであって、前記デバイスは、単一フロースルーマイクロ流体チャネルを備え、前記単一フロースルーマイクロ流体チャネルは、緩衝液チャンバと、試薬チャンバと、吸着剤フィルタと、を備えるデバイス。
前記単一フロースルーマイクロ流体チャネルは、その入口に球根状構造を備え、前記球根状構造は、その出口のより細い構造に向かってテーパ状である請求項1に記載のデバイス。
前記試料は前記単一フロースルーマイクロ流体チャネルの前記吸着剤フィルタを含む部分内に流され、その後、前記デバイスの外に流される前に、15秒から15分までの間、その中でインキュベートされる請求項10に記載の方法。
前記試料は前記単一フロースルーマイクロ流体チャネルの吸着剤フィルタを含む部分内に流され、その後、前記デバイスの外に流される前に、吸着剤フィルタチャネル内で前後に振動させられる請求項10に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
DNAは、ヌクレオチドと呼ばれる単位から成る長鎖ポリマーである。DNAポリマーは単一の単位の長い鎖であり、この鎖は一緒になって核酸と呼ばれる分子を形成する。ヌクレオチドは、4つのサブユニット(アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)及びチミン(T))の1つであってもよく、これらはポリマーとなって、細胞内の遺伝情報を運ぶことができる。DNAは、4つの異なるヌクレオチド塩基(例えば、AGTCATCGTAGCT...等)と、糖とリン酸基がエステル結合によって結合した主鎖とを含むヌクレオチドの2本の長鎖が、ねじれて二重らせんになり、相補的ヌクレオチド間の水素結合(Aが反対側の鎖のTに、Cが反対側の鎖のGに水素結合する)によって結合している。主鎖に沿ったヌクレオチド塩基の配列は、個々の遺伝的特性、又は、癌のような他の後天性疾患を決定する可能性がある。
【0004】
分子生物学のセントラルドグマは、一般的に、生体情報の通常の流れを説明する。すなわち、DNAをDNAに複製することができ、DNA中の遺伝情報をmRNAに「転写」することができ、翻訳と呼ばれるプロセスでmRNAの情報からタンパク質に翻訳することができ、このプロセスでは、tRNA(各tRNAはその配列に応じて特異的なアミノ酸を運ぶ)のmRNAへの結合によって、タンパク質サブユニット(アミノ酸)が順番(mRNA、したがってDNAの配列によって規定される)に結合できるように十分に近づけられる。
【0005】
試料からのDNA又はRNAの配列及び生物学的性質を研究又は分析するため、通常は、核酸を臨床的又は生物学的試料の残りの部分(すなわち、脂質、炭水化物、タンパク質等の他の細胞成分)から抽出又は分離することが必要である。これは、現在当業者によって多くの方法によって行われている。これらの方法を以下に簡単に説明する。
【0006】
標準的な手法は、用途及び試料の種類に応じて様々なバリエーションを有するプロトコールから成り、DNAを遊離させるために、細胞破壊又は細胞溶解から始まる。これは一般的に、(粉砕、又は、液体窒素中での組織の粉砕のような)機械的溶解、音波処理、酵素的処理、又は(カオトロピック塩(例えば、グアニジンチオシアネート)を試料に添加するような)化学的処理によって達成される。細胞の脂質膜及び他の脂質は、通常、界面活性剤を添加することによって除去され、タンパク質は、通常、(プロテイナーゼKのような、任意であるがたいてい添加される)プロテアーゼを添加することによって除去される。水飽和フェノール、クロロホルムは、上部水相及び下部有機相(主としてクロロホルム)を生じることを含む、水性試料及び溶液の混合物の遠心分離による相分離を可能にする。核酸が水相に存在し、タンパク質が有機相に存在する。最後のステップでは、水相から、氷冷の2−プロパノール又はエタノールによる沈殿によってRNAが回収される。DNAは、グアニジンチオシアネートのない状態で水相に位置するであろう。DNAはこれらのアルコールに不溶性であるため、沈殿し、凝集し、遠心分離によりペレットを生じるであろう。このステップは、アルコール可溶性塩も除去する。Mg2+及びCa2+のような2価陽イオンを隔離するためにキレート剤を添加することは、デオキシリボヌクレアーゼ酵素がDNAを分解するのを防ぐ。DNAに結合した細胞タンパク質及びヒストンタンパク質を、プロテアーゼを添加することによって、又は、酢酸ナトリウム若しくは酢酸アンモニウムでタンパク質を沈殿させるか、それらをDNA沈殿の前にフェノール−クロロホルム混合物によって抽出することによって、除去することができる。
【0007】
第2の方法は、高濃度のカオトロピック塩の存在下でシリカに結合するDNAの能力によって、DNAを溶解物(どのような溶解方法が使用されるかに関係なく)から分離する(Chen及びThomas、1980;Markoら、1982;Boomら、1990)。DNAは、マイクロ流体カセットを有するピラー、シリカ被膜された常磁性ビーズ、スピンカラム内のシリカフィルタ、又は、他のシリカ表面であろうとなかろうと、任意のシリカ表面に結合することができる。カオトロピック塩は、その後、アルコールベースの洗浄剤で除去され、DNAは、TE緩衝液(トリスヒドロキシメチルアミノメタン(「トリス」)及びエチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)から成る緩衝液)又は水のような低イオン強度溶液中に溶出される。DNAは、脱水及び、弱い静電反発と競合する水素結合形成のため、シリカと結合する(Melzakら、1996)。したがって、高濃度の塩は、DNAをシリカに吸着させるのを助けることになり、低濃度の塩は、DNAを遊離させることになる。DNAはシリカ表面に結合されるため、細胞の残りの部分及び他の破片は、シリカに結合したDNAをH
2O又はTE緩衝液に溶出させる前に、洗浄緩衝液によって単に洗い流される。
【0008】
ChargeSwitch(登録商標)(Invitrogen)の手法は、溶解物内の(それらの負に帯電したリン酸骨格によって)負に帯電したDNAが、低いpH値(<6.5)で正電荷を取得する特別な配位子に結合すると考える。タンパク質及び他の不純物は、ChargeSwitch(登録商標)に結合した核酸から、水性洗浄緩衝液の使用によって除去される。その後、周囲の媒体のpHが上昇し(>8.5)、正の電荷が中和されると、核酸をChargeSwitch(登録商標)配位子から遊離させることができる。
【0009】
Nexttec(登録商標)DNA分離システムは、細胞溶解後4分以内に単一の遠心分離ステップでDNAを精製することができる。これは、現在使用されているDNA分離システムより5倍速い。これは、独自の吸着剤マトリックスによって可能であり、この吸着剤マトリックスは、シリカベースの方法の逆反応で、タンパク質及び低分子量物質のような阻害物質を保持し、溶解試料内の純粋なDNAを通過させる。この方法の制限の1つは、60℃での長い酸素溶解ステップに依存することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
当業者によって現在使用されている手法は、チューブ、スピンカラム、又はプレート内に配置され、オペレータの時間及び複数のステップで相当な人手を必要とし、したがって、DNAの解析に関するボトルネックを示す。試料及び反応溶液を各技術のアクティブマトリクス内に引き込むために真空を利用するマルチウェルプレートでの、上述した技術の液体処理機械及び配置の使用は、より高い処理能力の用途に使用されているが、これらは、それらを費用効果的にするために試料のバッチ処理を必要とし、依然としてボトルネックを引き起こす。特に新興国及び第三世界の国で、伝染病の新興薬剤耐性問題を制御するための唯一の手法として急速に認識されてきている、治療現場(point of care)での臨床的に関連するDNAの分子解析のような多くの用途に関して、これらの手法は、不適当であり、治療現場のデバイスに容易に展開することはできない。
【0012】
マイクロピラー又はマイクロ流体チャネル内の他の特徴及び/若しくは構造のコーティング、或いは、シリカ表面を有する常磁性ビーズのようないくつかの手法は、転換され、マイクロ流体デバイスで展開されているが、複数の洗浄ステップ及び緩衝液のための要件は流体のプログラミングを意味し、マイクロ流体デバイス設計自体が複雑であり、したがってデバイスを高価にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態では、溶解物又はそのままの試料からDNAを同時に抽出及び分画するためのデバイスが開示され、デバイスは単一フロースルーマイクロ流体チャネルを備え、単一フロースルーマイクロ流体チャネルは、緩衝液チャンバと、試薬チャンバと、吸着剤フィルタと、を備える。
【0014】
吸着剤フィルタは、ポリアニリン又はその誘導体を含むポリマーコーティングによって少なくとも部分的に覆われた支持体を備えてもよい。
【0015】
デバイスはガラス材料を含んでもよい。
【0016】
デバイスはPDMS材料を含んでもよい。
【0017】
デバイスの一実施形態では、単一フロースルーマイクロ流体チャネルは、その入口にて球根状構造を備え、球根状構造は、その出口でのより細い構造に向かってテーパ状である。
【0018】
いくつかの実施形態では、吸着剤フィルタは、マイクロ流体チャネルの壁内に加工された一連の中実微細構造又は中空微細構造を備える。
【0019】
いくつかの実施形態では、吸着剤フィルタはゆるく、マイクロ流体チャネル内に充填される。
【0020】
他の実施形態では、吸着剤フィルタは、核酸以外の細胞及び他の臨床的/生物学的試料材料を結合するように構成されたマトリックスである。
【0021】
試料からDNAを抽出及び分画するためのマイクロ流体デバイスを製造する方法が、本発明のいくつかの実施形態によって開示される。方法は、チャネルを有する少なくとも2つのブランク層を形成するステップと、チャネルの入口及び出口ポートに対応して、ポートが層に切り開かれた(cut through the layer)接着層を形成するステップと、チャネルの一部に吸着材を真空充填するステップと、接着層を間に挟んでブランク層を整列させて、層を圧力下で互いに接合するステップと、を備える。
【0022】
溶解物又はそのままの試料からDNAを同時に抽出及び分画するための方法が、他の実施形態で開示される。方法は、緩衝液チャンバ及び試薬チャンバ並びに吸着剤フィルタを備える単一フロースルーマイクロ流体チャネルを備えるデバイスを設けるステップと、単一フロースルーマイクロ流体チャネルの入口に試料を適用するステップと、吸着剤フィルタを緩衝液で活性化するステップと、試料を、チャネルの吸着剤フィルタを含む部分内に流すステップと、チャネルを介して試料を流し、チャネルの吸着剤フィルタを含む部分を介して1回から10回までの間、ループさせるステップと、抽出されて分画されたDNAをデバイスの外に流すステップと、を備える。
【0023】
一変形例では、試料はチャネルの吸着剤フィルタを含む部分内に流され、その後、デバイスの外に流される前に、15秒から15分までの間、その中でインキュベートされる。他の変形例では、試料はチャネルの吸着剤フィルタを含む部分内に流され、その後、デバイスの外に流される前に、吸着剤フィルタチャネル内で前後に振動させられる(oscillated)。
【0024】
いくつかの実施形態では、吸着剤フィルタは緩衝液で活性化され、溶解された試料がフィルタを含むチャネル内に流され、試料はチャネルを介して端部に流され、結果として、純粋な又は純粋に近いDNA溶液が生じる。
【0025】
結果として生じる溶出液は、十分に純粋で、アガロースゲル内で検出されるように濃縮され、PCR、RT−PCR、DNA配列決定、ハイブリダイゼーション実験で使用することができ、ナノポア、カーボンナノチューブ、及びナノワイヤバイオセンサーのようなナノバイオセンサーで検出することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、緩衝液及び他の試薬は、カセットに分離して格納され、外部デバイスの流体素子を介して供給される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】DNA抽出及び分画のためのマイクロ流体デバイスの分解模式図を示す。
【
図4】マイクロ流体デバイスのポリカーボネート挿入物を示す。
【
図5】マイクロ流体デバイスのポリカーボネートシェルを示す。
【
図6】挿入物(
図4)及びシェル(
図5)を互いに結合し、それによってマイクロ流体デバイスのマイクロ流体チャネルを形成するために使用することができる、レーザ切断された両面テープ層を示す。
【
図7】流体リザーバを覆うように積層されたシェル及び挿入物を示す。
【
図8】吸着剤フィルタが所定の位置に残っていることを確実にするために、吸着材が充填されたチャンバの入口及び出口でカートリッジ挿入物内に配置されたフィルタを示す。
【
図9】カセットハーフ(挿入物及びシェル)を一緒に保持し、マイクロ流体チャネルを形成するために、挿入物に貼られている両面テープを示す。
【
図10】真空下で充填された吸着材チャンバを示す。
【
図11】組み立てられた核酸抽出マイクロ流体デバイスの上面図を示す。
【
図12】組み立てられた核酸抽出マイクロ流体デバイスの底面図を示す。
【
図13】抽出カセットを使用する抽出実験により11.0μg/mlのサケの精子の80μlを実行し、NexttecクリーンカラムDNA抽出でベンチマークした結果を示す。
【
図14a】抽出マイクロ流体デバイスを通過した溶解したヒト血液からの溶出液フラクションからのPCRを示す。レーン1内のマスラダー、及び、レーン2から12内の溶出液1から11を示す。
【
図14b】抽出マイクロ流体デバイスを通過した溶解したヒト血液からの溶出液フラクションからのPCRを示す。レーン1内のマスラダー、及び、溶出液フラクション13から21を含むレーン2から10を示す。
【
図15】DNAをサイズに基づいて分離する溶出液フラクションのバイオアナライザ解析からのゲル画像を示す。
【
図16】DNA抽出及び分画デバイスAの代わりの実施形態を示す。
【
図17】治療現場デバイス及び、カセット内にDNA抽出及び分画デバイスを含むマイクロ流体カセットを示す斜視図である。
【
図18】いくつかの実施形態によるハンドヘルド診断のために設計されたマイクロ流体カセットの構成要素を示す概略図である。
【
図19】いくつかの実施形態でのハンドヘルド配列決定のために設計されたマイクロ流体カセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼ−ポリメラーゼ増幅(RPA)、ハイブリダイゼーション(例えば、サザンブロット法、マイクロアレイ、発現アレイ等)、DNA配列決定(ペアエンド配列決定のための一体型の抽出及びサイズ選択を含む)、並びに他の関連する用途のような、しかしこれらに限定されない下流の用途のための、生物学的及び臨床的試料からの異なる分子量の核酸分子の一体型の核酸(DNA、RNA、cDNA等)抽出及び分画のためのデバイス及び分子生物学的方法が開示される。
【0029】
当該技術分野で現在使用されているDNA又はRNAの配列及び生物学を解析するための手法は、生物学的又は臨床的試料内に存在するすべてのDNAを単に収集する。DNA断片又はゲノムのサイズ又は分子量に基づいて分離されることはない。分子量に基づくDNA断片の分離は、目的とする特定のDNAのための試料を濃縮するための方法を提供する。例えば、血液由来の細菌感染症のための分子診断試験は、細菌のゲノムDNA(gDNA)のサイズ範囲内の分子量DNAについて試料を濃縮すること、並びに、DNAのより小さい断片及びヒトDNAのより大きい断片を廃棄することが有益であろう。
【0030】
分画は、分離プロセスとして定義され、分離プロセスでは、特定の量の混合物(この場合では、異なる分子量のDNA断片)が、多数のより小さい量(フラクション)に分割され、フラクションでは、組成は勾配(gradient)に応じて変化する(すなわち、異なるDNA断片は、分子量、サイズ、又は電荷によって編成される)。フラクションは、個々の成分の特定の特性(分子量のような)の差に基づいて収集される。単一フロースルーデバイスで異なる分子量のDNA分子の抽出及び分画の両方を行うことができる技術は存在しない。本発明は、したがって、単一フロースルーデバイスで、そのままの(whole)試料又は溶解した試料からDNA(例えば、ウイルス、プラスミド、gDNA等)の異なる分子量の断片のDNA抽出及び分画を行うための技術の製造及び使用に関する。
【0031】
次世代の配列決定手法は、構造要素を分解するために、ペアエンド又はメイトペア配列決定と呼ばれる技術に依存する。このプロトコールは、配列決定すべきテンプレートDNA分子が、設定されたサイズ又は分子量範囲内でなければならないことを必要とする。多くの作業及びリソースが、ペアエンド配列決定に使用されるこれらのライブラリの準備に費やされる。本出願で提示されるような、DNAの抽出及びDNA分子量に関する選択の両方を行うための、オールインワンの一体型デバイスを使用することは、このボトルネックを排除し、「フロントエンディング」配列決定デバイスによる試料調製を、本特許で提供されるデバイスで自動化する機会を提供する。
【0032】
マイクロ流体デバイスを製造する方法、及び、マイクロ流体デバイスを使用してDNAを抽出し分子量に基づいて分画する方法が、本発明の実施形態にしたがって開示される。方法は、マイクロ流体カセット、並びに、単一フロースルーデバイスで核酸抽出及び分画を行うためのこのカセットの使用に関して提案されるプロトコール及び例を提供することを含む。
【0033】
基本的な概念は、溶解した又はそのままの試料からの抽出、及び、断片の分子量に基づくDNAの分画の両方を行う、単一フロースルー流体デバイスである。最も単純なデバイスは、標本入口チャネル又はポート、抽出及び分画チャンバ、チャネル又はカラム、並びに、溶出液出口ポート又は流体チャネルで構成される。チャネル、チャンバ、又はカラムは、最も一般的にはマイクロ寸法であるが、マクロ、ナノ、及びピコ寸法であってもよい。本発明の独特の態様は、そのままの試料又は溶解物からのDNAの抽出及び分画の両方を行う単一のチャンバである。
【0034】
単一のチャネル/チャンバでのDNA抽出及び分画の可能性を試験するために、単純なマイクロ流体デバイスが本発明の実施形態にしたがって形成された。デバイスは、以下に
図1〜
図12を参照して説明されるように製造されて利用された。
【0035】
カートリッジのブランク構成要素(シェル及び挿入物)は、用途の要件に応じて種々のポリマー(例えば、PP、PE、PC、COP、COC、PMMA等)を使用して射出成形され、ミリングされ、又は他の製造プロセスで製造される。必要であれば、チャネルは必要とされる特定の深さ及び幅でポリマー内にさらにミリング及び加工される。カートリッジは、組み立て前に徹底的に洗浄される。接着層(adhesive)が、マクロ、マイクロ、ナノ、ピコ流体の入口及び出口とインタフェースするために必要なポートに対応するようにレーザ切断され、カートリッジ内の構成要素間の流路を提供する。吸着剤材料の漏出を抑制する疎水性フィルタが、サイズを修正するために手動で穴あけされ、切断され、又は他の方法で修正される。吸着剤は、吸着剤チャンバ内に真空充填され、疎水性フィルタでシールされる。複数の層が、(PSAのような)中間層と一緒に整列されて保持される。カートリッジ構成要素は、圧力ベースのシステム(例えば、積層、油圧プレス)を使用して互いにしっかりと結合される。デバイスの好適な実施形態では、カセットは、ポリカーボネート又は他の生体適合性プラスチック材料から射出成形され、又はミリングされることになる。他の実施形態では、カセットはガラスから成形され、又はミリングされる。
【0036】
マイクロ流体核酸抽出カセットのいくつかの要素/機能は、すべての他の細胞成分からDNAを分離することができ、分子量に基づいて試料内のDNAを分画することもできるチャンバである。チャンバ内には、フィルタ及び/又はクロマトグラフィーカラムがあり、フィルタ及び/又はクロマトグラフィーカラムは、別々に又は一緒に、溶解物又はそのままの試料内のすべての他の成分からDNAを分離し、また、サイズに基づいてDNA断片を分離する。以下に提示される例の多くでは、及び、これらのデバイスを研究するために提示される研究の大部分では、DNAを抽出するための方法は、(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1に記載されているもののような)吸着剤フィルタによって提供され、吸着剤フィルタは、細長いチャネル又はチャンバ内に特定の密度で充填されると、サイズに基づくDNAの分画も生じさせる。吸着剤は、好適には、ポリアニリン又はその誘導体を含むポリマーコーティングによって少なくとも部分的に覆われた支持体である。異なる充填密度での、及び、フィルタを伸長するマイクロ流体デバイスの設計範囲内でのこの吸着剤フィルタの使用は、組み合わせで、DNAを分画及び抽出する驚くべき能力を生み出す。
【0037】
充填密度を増加させて、異なる分子量のDNA断片群が吸着剤フィルタで充填されたチャネルを通過するときのそれらの保持率を研究することによって、異なる分子量のDNA断片が異なる時間に溶出することが観察された。
図13は、最初の5溶出液フラクション内に溶出する剪断されていないサケの精子のゲノムDNAを示し、次に
図14では、0.1〜10kbログラダー(log ladder)からのより小さい断片がフラクション6〜10内に溶出する。より小さい分子量のDNA断片は妨げられ、より大きい断片は最初に通過する。結果は、明らかに、抽出及び分画の両方が、単一のチャネル/チャンバ内で、又は分離能を高めるために複数のチャネル/チャンバ内で、可能であるという証拠を提供する。
【0038】
本発明の他の実施形態では、試料からDNAを抽出及び分画するために、代わりのフィルタ、構造、又は化学作用を使用することができる。試料溶解物又は全血試料からすべての他の細胞破片を結合することができる他のフィルタ、又は、マクロ、マイクロ、ナノ、ピコ構造を、これらの特徴又は化学作用と統合された他の標準的なクロマトグラフィーカラム、ゲル、又は電場によって提供される分画で展開することができる。
【0039】
さらにより多くの実施形態では、チャネル形状、寸法、及び経路が使用されてもよい。
図1〜
図12に示す例は、マイクロ寸法を有する蛇行するチャネルを示す。しかしながら、チャネル又はチャンバの寸法は、特に限定せず、チャネル又はチャンバが、溶解物からのDNA抽出及びDNAの分画の両方を容易にするのに十分なほど長い限り、変更してもよく、テーパ状であってもよく、又は、他の設計にしたがってもよい。チャネル寸法は、フィルタ又はクロマトグラフィー材料をそれらに充填することができる限り、マクロ、マイクロ、ナノ、ピコ範囲内であってもよい。
【0040】
一実施形態では、マイクロ流体チャンバは、より細い出口に向かってテーパ状の入口にて、球根状構造である(例えば、
図16参照)。球根状端部には、マクロ、マイクロ、ナノ、ピコ流体チャネルを介してロードされる試料の拡散を容易にする材料が充填される。これは、その後、同時に抽出及び分画フィルタ上に試料をロードすることを可能にし、したがってよりよい分画を可能にする。
【0041】
デバイスのいくつかの実施形態では、試薬リザーバがマイクロ流体デバイス内に設けられてもよく、これらは、活性化緩衝液用カートリッジリザーバ上に、溶出液の収集及び廃棄物用の試料リザーバを提供することができる。
【0042】
さらにより多くの実施形態では、効率的な分子量DNA抽出及び分画を容易にするために、異なる圧力及び流量が使用され、単一フロースルーチャネルに適用される。これらの圧力及び流量は、充填密度及びチャネル/チャンバ寸法と共に、異なる用途に適合するように変更されてもよい。
【0043】
マイクロ流体素子で高表面積を使用することによる問題の1つは、高い体積対表面積比であり、高い体積対表面積比は、この場合、DNAが表面に非特異的に結合し、溶出しない可能性を示す。当業者に既知の表面化学作用が、DNAのカセットへの吸収を防止するために用いられてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルの表面は、材料内への吸収及び材料上への吸着を防止するように処理されてもよい。このような表面処理は、チャネルを介して犠牲物質を流し、それにより、材料の損失を減らすこと、ウシ血清、ポリメラーゼ酵素、若しくは他のこのような材料のような生体物質で表面を処理すること、又は、損失を防ぐために表面を化学的に処理することを含むがこれらに限定されない方法を含んでもよい。処理は、よりスムーズな流れを可能にするように親水性又は疎水性表面を形成する材料の配置を含んでもよいが、これに限定されない。いくつかの他の実施形態では、フルオロカーボン及び同様の材料(疎水性障壁として作用する例としてテフロン(登録商標)、又はポリアクリレート)が、チャネルの表面上に形成されてもよい。UVコーティング、及び、表面から化学的に成長されるポリマーブラシのような他の手法も、本発明に含まれてもよい。さらに他の実施形態では、カートリッジが製造される材料は、表面上又は表面内への材料の損失を防止するために、その設計及び材料構成で選択又は適合される可能性がある。
【0045】
図1を参照すると、1a.緩衝液充填ポートが示され、ピペット先端、又はデバイスを緩衝液で満たすために使用される他のデバイスが、カートリッジを前処理緩衝液で満たすためのポート内に挿入される。1b.シリンジポンプ3ポート−ポートキャップは、緩衝液ポート(1a)を緩衝液ポート(1b)に接続する。このビアは、外部シリンジポンプ、又は流れ若しくは圧力を形成するための他のデバイスとインタフェースするようにカートリッジの厚さを進む(travels the thickness of cartridge)。1c.緩衝液リザーバ−緩衝液は、このリザーバ内に含まれ又は格納され、使用の時点まで、フィルタを活性化する又は濡らすために使用される。2a.試料(溶解物)充填ポート−ピペット先端、又は試料/溶解物を満たすために使用される他のデバイスが、マイクロ流体デバイスを試料/溶解物で満たすためのポート内に挿入される。2b.シリンジポンプ1ポート−ポートキャップは、試料ポート(2a)をシリンジポート(2b)に接続する。このビア(via)は、外部シリンジポンプとインタフェースするようにカートリッジの厚さを進む。2c.試料リザーバ−試料(溶解物)は、使用の時点までこのリザーバに含まれる。3a.フィルタ空洞1−吸着剤が充填されたチャンバの入口でフィルタを保持する。代わりに、マイクロ構造、及び、DNAを溶解物から分離するための他の材料が使用されてもよい。3b.フィルタ空洞2−吸着剤が充填されたチャンバの出口でフィルタを保持する。4.廃棄物チャネル及びポート−吸着剤チャンバの外から、及び、シリンジポンプ2を介してカートリッジからの、過剰前処理緩衝液用廃棄物経路。5a.収集リザーバ−吸着剤チャンバからの溶出液が、ピペットによる後の抽出のためにこのリザーバ内に集まる。5b.シリンジポンプ4ポート−溶出液を、吸着剤が充填されたチャンバを介して収集リザーバ内に引き出すための吸引力を提供する。6.フィルタ−Vyon(登録商標)親水性フィルタ。7.フィルタビア−緩衝液/試料溶出液、又は他の試料が、これらのビアを介してカートリッジ挿入物層からシェル層に流れる。8.シリンジポンプビア(テープ)−テープのこの端部のビアは、カートリッジ挿入物層からシェル層へのチャネルを形成し、そこでビアは外部シリンジポンプとインタフェースする。9.シリンジポンプビア(シェル)−外部シリンジポンプとのインタフェース。10.吸着剤が充填されたチャンバであり、吸着剤粉末、例えば、Nexttec吸着剤粉末を含む。
【0046】
図2を参照すると、組み立てられたマイクロ流体デバイスの上面図が示されている。
図3を参照すると、組み立てられたマイクロ流体デバイスの底面図が示されている。
【0047】
図4に示すマイクロ流体デバイスの挿入物は、ミリング、リソグラフィによる形成、又は他の製造プロセスによって形成されてもよい。挿入物は、ポリカーボネートのようなプラスチック、又は他の材料で作られてもよい。
【0048】
図5に示すシェルは、ミリング、リソグラフィによる形成、又は他の製造プロセスによって形成されてもよい。シェルは、ポリカーボネートのようなプラスチック、又は他の材料で作られてもよい。
【0049】
図6を参照すると、レーザ切断された両面テープ層が示されている。両面テープ60、又は当該技術分野で既知の他の接着剤は、挿入物(
図4;参照符号50)及びシェル(
図5;参照符号70)を互いに結合するために使用され、それによって、マイクロ流体デバイス80のマイクロ流体チャネルを形成することができる。
【0050】
図7を参照すると、流体リザーバを覆うように積層されたシェル70が示されている。流体リザーバを覆うための他の手段が他の実施形態で用いられてもよい。
【0051】
図8を参照すると、吸着剤材料が定位置に留まることを確実にするために、吸着剤が充填されたチャンバへの入口及び出口で、フィルタ6が挿入物50のフィルタ空洞(3a及び3b)内に配置されている。他の実施形態では、カセット設計(組み立てられた挿入物及びシェル構成要素)が、吸着剤材料の漏出を、例えば、吸着剤が充填されたチャンバの入口及び出口での管腔断面積を減少させることによって防ぐように構造的に変更され得る場合、これらのフィルタは使用されなくてもよい。
【0052】
図9を参照すると、カセットハーフ(挿入物及びシェル)を互いに保持して、マイクロ流体チャネルを形成するために挿入物に貼られている両面テープ層が示されている。もちろん、任意の他の当該技術分野で認められている結合テープ、接着剤、ポリマー層等が、両面接着テープの代わりに用いられてもよい。
【0053】
図10を参照すると、組み立てられたカセット80の、真空下で充填されている吸着剤チャンバが示されている。吸着剤は、吸着剤チャンバの一方の端部で、アプリケータ82、例えば、ピペットによって供給される。吸着剤充填は、図示の実施形態では、吸着剤チャンバの他方の端部に真空を適用することによって促進される。真空は、(真空源に接続された)真空配管84によって適用される。真空配管84の遠位端は、吸着剤チャンバへの開口部に負圧を適切に適用するために、エラストマー吸盤を含む、又はエラストマー吸盤とインタフェースすることによって、図示のように変更されてもよい。
【0054】
図11を参照すると、組み立てられた核酸抽出マイクロ流体デバイスの上面図が示されている。
【0055】
図12を参照すると、組み立てられた核酸抽出マイクロ流体デバイスの底面図が示されている。
【0056】
図13を参照すると、抽出カセットを使用する11.0μg/mlのサケの精子の80μlを抽出実験にかけ、NexttecクリーンカラムDNA抽出でベンチマークした結果が示されている。溶出液がカセットから出るにつれ、各フラクションが、Quant−IT(登録商標)システムを使用してDNA濃度について評価された。クリーンカラムからの抽出、及び、カセットからの溶出液フラクションの結果は、表にされ、フラクション濃度がこの隣に図表で示されている。最終的な合計のDNAは0,043μg抽出され、クリーンカラムでの0.46μg及び0.58μgと比較された。これらの結果は、マイクロ流体カセットを使用してDNAが抽出も分画もされたことを示す。抽出カセットからのDNAの量及び濃度はクリーンカラムよりもかなり低かったが、抽出カセットは、単一の増幅反応を行うためのサーマルサイクラーと統合されていなかった。増幅は、DNAの収量を大幅に増加させることが予想される。
【0057】
図14を参照すると、抽出マイクロ流体デバイスを通過した溶解したヒト血液からの溶出液フラクションからのPCRが行われた。
図14aは、レーン1内のマスラダー、及び、ランド2から12内の溶出液1から11を示す。最も強い強度帯は、予想されるように、gDNAを含むことになる最初の2つのフラクションである。
図14bは、レーン1内のマスラダー、及び、溶出液フラクション13から21を含むレーン2から10を示す。レーン11は水(ブランク)からのPCRを含み、レーン12aは、DNAの既知の濃度(21μl/mL)を有する抽出されたDNAサンプルからのPCRを含む。
【0058】
図15を参照すると、DNAをサイズに基づいて分離する溶出液フラクションのバイオアナライザ解析からのゲル画像が示されている。バイオアナライザキットに含まれるサイズラダーは、レーンL及び12で実行される。レーン1〜10は、「Quick−Load(登録商標)2−log DNA Ladder」(#N0469S、New England BioLabs)の20μlがロードされ、デバイスによって実行された後に、
図1から12に示されたマイクロ流体デバイスから出る最初の10μl溶出液フラクションを表す。
【0059】
図16を参照すると、DNA抽出及び分画デバイスの構造のための代わりのマイクロ流体設計の非限定的な設計が示されている。試料入口(161)が示されている。流体チャネル(162)は、マクロ、マイクロ、ナノ、又はピコスケールの流体チャネルであってもよい。試料がフィルタ(164)にロードされるように、流体チャネルを介してロードされる試料の拡散を促進させる吸着剤材料(163)が示されている。好適には、吸着剤材料(163)は、特定の他の溶解物成分と結合しそれを阻害するように設計されてもよいが、DNAに結合せず、又はDNAを分画しない。フィルタ(164)は、DNAの他の溶解物成分からの分離、及び、分子量に基づくDNAの分画の両方を行う。チャンバ/チャネルはテーパ状であり、フィルタの充填密度は、分画が分画の分解能を増加させるようになっている。マクロ、マイクロ、ナノ、ピコスケールの流体チャネル(165)が、溶出液フラクションを流出させる場所である。
【0060】
図17は、治療現場デバイス、及びカセット内にDNA抽出及び分画デバイスを含むマイクロ流体カセットの先端を示す斜視図である。
【0061】
図18は、いくつかの実施形態によるハンドヘルド診断のために設計されたマイクロ流体カセットの構成要素を示す概略図である。使い捨てカセットは、試料受け181領域及び試料溶解チャンバ182を含む。具体的な溶解緩衝液/条件は当該技術分野で既知である。試料調製は、マイクロ流体チャネル183内で、好適には吸着剤、例えば、Nexttecの吸着剤材料によって生じる。DNAの濃縮は、いくつかの実施形態では、DNA抽出に続いてチャンバ184内で起こってもよい。凍結乾燥された試薬(乾燥試薬を使用する場合)及び/又はPCR試薬の復元は、チャンバ184内で(又は、湿式試薬との混合で)起こってもよい。例えばPCT増幅のための熱サイクリングは、用いられるならば、チャンバ185内で起こることになる。処理された(及び、任意に増幅された)DNAは、本発明の後に又は本発明内で、マイクロ流体チャネル186を介して、例えば、ナノワイヤ又は他の配列されたバイオセンサを備える解析/センサアレイ187に進む。ナノワイヤ/バイオセンサからの信号をリーダデバイス(図示せず)にリンクするために、電子機器188が使用される。廃棄物(waste)は、単に空のマイクロ流体リザーバ189である。
【0062】
図19は、いくつかの実施形態でのハンドヘルド配列決定のために設計されたマイクロ流体カセットを示す。試料受け領域191は、例えば、血液バキュテイナー(vacutainer)(登録商標)上のゴムトップによく似て、漏れ出る試料に対する障壁として作用することができ、依然として試料を受けることができる。溶解チャンバ192は、細胞を破壊し、ゲノムDNAを遊離させるために溶解試薬を含む単純な微小反応チャンバであってもよい。この部分はまた、目標ヌクレオチドポリマーが血清中で遊離し得る場合、血液細胞を除去するためのフィルタに似ていてもよい。核酸試料調製チャンバ193は、試料のヌクレオチドポリマーフラクションを試料成分の残りの部分(タンパク質、炭水化物、脂質等)から分離及び抽出するために使用されてもよい。これを、当業者に周知のいくつかの方法によって達成することができる。例えば、このmaco流体チャンバは、Nexttecのフィルタ技術を含んでもよい。目標ヌクレオチドポリマーの増幅は、目標ヌクレオチドポリマーのPCR増幅のために構成されたサイクラー194内で起こってもよい。サイクラー194は、必要とされる熱サイクリング、又は、試料の加熱を必要としない可能性がある等熱増幅方法(例えば、LAMB、RPA等)を行うために、加熱素子、又は、PCRに必要な異なる温度を経て反応混合物を循環させる他の周知の手法を用いてもよい。試料処理は、採用される場合、少なくともいくつかの実施形態では、核酸を濃縮する、又は、配列決定前に、バックグラウンド信号を生じる可能性がある「オーバーハング」ヌクレオチド鎖を除去するために望まれる可能性がある。このような処理は、チャンバ195内で行われることになる。一般的なマイクロ流体196は、いくつかの実施形態で使用されるチャネル、流体流、バルブ及び制御、材料、並びにバルブの、サイズのような変数を含む。金属コネクタ197は、いくつかの実施形態では、高感度検出ナノ構造(好適な実施形態では、ナノワイヤ)を検出器デバイス(図示せず)に接続する。高感度検出ナノ構造アレイ198は、マイクロ流体チャネルに接触することができ、(ナノワイヤ又はカーボンナノチューブのような)密接に配列された高感度検出ナノ構造であってもよい。チャネル内のDNAを位置決めする方法は、例えば、DNAの長い範囲を、必要に応じて長い読み取り長を可能にすることができるチャネルにほどき、移動させ、引き伸ばすことを可能にする緊密なチャネルを含んでもよく、タイリングプローブ/プライマーが、ナノワイヤクラスタ上に配置されてもよく、短い複数の並列配列決定反応がチャネルを通じて行われてもよい。縫うように進む(weaving)マイクロ流体チャネル199に試薬を充填することができ、いくつかの実施形態では試薬は気泡によって分離される。このマイクロ流体チャネルはポンプで汲み上げることができ、又は、小さいアクチュエータが試薬を移動させるため、マイクロ流体チャネル内の試薬の配列は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2011−0165572A1、2011−0165563A1及びPCT/IB2009/005008に開示されるような合成反応による配列決定を実行することができる。代わりに、試薬貯蔵のこの方法は、リザーバ又はブリスターパック、及び、反応液自体によって復元される凍結乾燥試薬にも置き換えられてもよい。
【実施例】
【0063】
以下は、本開示のいくつかの実施形態のいくつかの例示的且つ非限定的な例である。
【0064】
(実施例1 PCRのための機械的に溶解した全血からのDNA抽出)
ヒト全血が、小径孔に強制的に通すことによって機械的に溶解され、これは、細胞壁を破壊させ、DNAを遊離させた(他の機械的溶解方法が使用されてもよい)。この溶解物は、DNA抽出マイクロ流体デバイスを通過させられ、溶出液フラクションが収集された。これらの溶出液フラクションは、ヒトゲノム上の短い領域を増幅するPCR反応でのテンプレートとして使用された。最初の2つの溶出されたフラクションは、それぞれ34μl及び32μlであり、次の18フラクションは20μlの容量であった。
図14に示すデータは、デバイスが、ポリメラーゼ反応に有害に影響する不純物を含まないDNAを抽出することができることを明らかに示す。
【0065】
(実施例2 DNA断片分画)
2Xログラダーの40μLが(
図1〜12に記載のような)例示的カセットにロードされ、DNA抽出及び分画カラム内にポンプで送り込まれた。次に、10μLフラクションが合計400μL収集された。各溶出液フラクションは、次に、バイオアナライザデバイス(Agilent)でサイズ分布及び存在量について解析された。
図15は、これに関する結果を示す。対照実験が、(
図1〜12に記載のような)DNA及び抽出カセットを通過した剪断されていないサケ精子DNAによる試料プロトコールで行われた。結果は
図13に示され、より小さいログラダーより先に、より大きいサケ精子がデバイスから溶出することを示しており、これは単純な分画能力を示す。
【0066】
(実施例3 DNA配列決定)
多くの配列決定手法、helicos、FLX(Roche(登録商標))、ゲノムシーケンサー(Illumina(登録商標))、ナノ細孔及びナノワイヤ(QuantuMDx、US61 094,006)は、抽出されたDNAの試料を、配列決定反応が行われる場所に供給するために、マイクロ流体を利用し、細胞を流す。しかしながら、現在までの技術のすべては、デバイスを離れての試料調製を採用し、デバイスを離れての試料調製では、試料は従来のベンチトップ手法(Qiagenのスピンカラム、InvitrogenのCharge Switch(登録商標)、Nexttecの吸着剤フィルタスピンカラム等)を使用して抽出されたそのDNA(又は、RNA/cDNA)を有し、従来のベンチトップ手法は、配列決定プロセスにかなりの時間を追加し、時間通りにかなりのオペレータの人手を要求する。このマイクロ流体解決法は、これらの技術を「前処理する(front−end)」することになり、各技術が試料から結果までの(sample to result)デバイスとなり、配列データを生成するために必要な処理されるもののすべてを自動化することを可能にする。
【0067】
(実施例4 ペアエンド配列決定のための自動及び統合されたDNA抽出及びサイズ選択)
ショットガン法を使用する標準的な次世代配列決定は、短い読み取り長によって制限される。この重要な制限に対する解決法は、ペアエンドタグ(PET)配列決定戦略であり、ペアエンドタグ(PET)配列決定戦略では、短いタグ及びペアタグが、超高スループット配列決定のために長いDNA断片の末端から抽出される。PET配列は、基準ゲノムに正確にマッピングすることができ、したがって、PETで表現されたDNA断片のゲノム境界を画定し、目標DNA要素の身元を明らかにする。この戦略を成功裏に実施することを可能にするために、このDNAの抽出を行うことに、特定のサイズの断片の選択を続ける。これは時間がかかり、高価である。
【0068】
例えば、IlluminaのHiSeq(登録商標)及びMiSeq(登録商標)プロトコールは、1つのZymoクリーンアップステップ(「タグメンテーション」の後)及び1つのAmpure(登録商標)XPサイズ選択ステップ(制限されたサイクルPCRの後)を含む。最終的なライブラリは、MiSeqシステム上の長いペアエンド2×150読み取り長をサポートするための約250〜300の中央値挿入サイズを有する。
【0069】
DNAの抽出及びサイズの選択の両方を行うオールインワンの統合されたデバイスを使用することは、この試料調製ボトルネックを低減し、本特許で提示されるデバイスで配列決定デバイスを前処理することによってそれを自動化する機会を提供する。
【0070】
(実施例4 診断法)
多くの分子診断手法、Cepheid(Smart Cycler(登録商標))、Light Cycler(登録商標)(Roche)、BeadXpress(登録商標)及びEco Real−Time PCRシステム(Illumina)、7500リアルタイムPCRシステム(ABI)、GeneChip(登録商標)システム(Affymetrix(登録商標))や、ナノポアデバイス、マイクロ流体デバイス、並びに、ナノワイヤ及びカーボンナノチューブデバイス(QuantuMDx)のような将来のデバイスは、DNA(又は、RNA/cDNA)をそれらの試験基質として利用する。しかしながら、現在までのすべてではないにしてもほとんどの技術は、「デバイスを離れての」試料調製を採用し、デバイスを離れての試料調製では、試料は従来のベンチトップ手法(Qiagenのスピンカラム、InvitrogenのCharge Switch、Nexttecの吸着剤フィルタスピンカラム等)を使用して抽出されたそのDNA(又は、RNA/cDNA)を有し、従来のベンチトップ手法は、分子診断プロセスにかなりの時間を追加し、時間通りにかなりのオペレータの人手を要求する。このマイクロ流体解決法は、これらの技術を「前処理する(front-end)」することになり、各技術が試料から結果までの(sample to result)デバイスとなり、分子診断データを発生するために必要な処理されるもののすべてを自動化することを可能にする。
【0071】
(実施例5 単一デバイス分子解析)
いくつかの実施形態では、特定の標的DNA配列は、単一フロースルーマイクロ流体カセット内のさらに下流のプロセスに通じるマイクロ流体チャネル内で抽出されてもよい。カセットは、溶解、抽出、試料濃縮、増幅、検出及び廃棄物処理、又は、これらのプロセスの任意の組み合わせを行うことになる。カセットは、完全に取り囲まれてもよく、使い捨てであってもよく、ハンドヘルドデバイス、ベンチトップデバイス、又は高スループットデバイスによって動作されてもよい。
【0072】
(実施例6 ハンドヘルド配列決定デバイス)
いくつかの実施形態では、特定の標的DNA配列は、DNAが配列決定される(
図13)単一フロースルーマイクロ流体カセット内のさらに下流のプロセスに通じるマイクロ流体チャネル内で抽出されてもよい。試料からのDNAの溶解及び抽出に必要なすべての試薬は、マイクロ流体チャネル内に格納されてもよく、各洗浄溶液及び溶解緩衝液は、気泡、若しくは試薬を分離する他の方法によって分離されてもよく、又は、試薬は、ブリスターパック、凍結乾燥、若しくは、マイクロチャネル内に試薬を格納する他の方法で格納されてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、標的となるウイルスDNA、細菌DNA、又はゲノムDNAの小さな特定領域が、配列決定するために抽出されてもよく、したがって、特定のウイルス、細菌、又は(SNPのような)遺伝子配列の有無について診断されてもよく、並びに、遺伝子型、突然変異(既知の又は未知の)、薬剤耐性状態等への付加価値情報を提供することができる。
【0074】
本開示に関連して使用した種々の実施形態は、配列決定反応前にDNAを抽出するために必要なかさばる機器を必要としないことがあるため、それ自体ハンドヘルド配列決定に適している。
【0075】
一実施形態では、プローブ配列が、高感度検出ナノ構造(この場合ではナノワイヤ)上に固定されてもよく、配列決定されるべきテンプレート一本鎖DNA分子は、プローブ配列にハイブリダイズすることができ、プローブ配列は、合成反応による配列決定のためのプライマーとして作用することができる。他の実施形態では、テンプレート一本鎖DNA分子は、高感度検出ナノ構造に固定されてもよく、遊離のプライマーオリゴヌクレオチドによって配列決定のためにプライミングされてもよい。
【0076】
(実施例7 高分解能マイクロ流体DNA抽出及び分画デバイスの設計)
試料を同様の密度のマイクロ流体チャネルからカラムに導入することによって試料を分画することによる問題の1つは、試料のすべてが同時に段階的に導入されるわけではないことである。異なる分子量の断片のDNA断片の混合物は、おそらく、マイクロ流体チャネルの全体に渡って、試料内に均一に分散され、したがって、分画は、ロードされる最初のDNAが最後に入るDNA分子と同調せずに移動するある期間に渡って、抽出及び分画フィルタに入る試料によって妨害されることになる。したがって、混合物は、同時に抽出及び分画カラム内に段階的に導入される必要がある。溶解物成分からのDNAの分離、及び、断片分子量に基づくDNAの分画の両方を行う材料が充填された(チャンバの寸法の点で)テーパ状のカラムが直後に続く、試料の分画に影響することなく試料の拡散を容易にする材料で満たされ、したがって、試料全体が同時に分画カラムに入ることを可能にする球根状の入口から成るマイクロ流体チャンバが、解決法である。DNA抽出及び分画デバイスのためのこのような可能なマイクロ流体設計の非限定的な設計が、
図16に示されている。