(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-8001(P2017-8001A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】網膜保護組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/015 20060101AFI20161216BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20161216BHJP
A61K 31/055 20060101ALI20161216BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20161216BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20161216BHJP
A61K 31/59 20060101ALI20161216BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20161216BHJP
A61K 33/32 20060101ALI20161216BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20161216BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20161216BHJP
A61K 33/28 20060101ALI20161216BHJP
A61K 33/24 20060101ALI20161216BHJP
A61K 36/89 20060101ALI20161216BHJP
A61K 36/488 20060101ALI20161216BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20161216BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
A61K31/015
A61K31/198
A61K31/055
A61K31/216
A61K31/4415
A61K31/59
A61K31/4188
A61K33/32
A61K33/06
A61K33/26
A61K33/28
A61K33/24
A61K36/89
A61K36/488
A61K36/899
A61P27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-127861(P2015-127861)
(22)【出願日】2015年6月25日
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】長崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC18
4C086CB28
4C086DA14
4C086HA03
4C086HA04
4C086HA08
4C086HA09
4C086HA11
4C086MA02
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4C086MA16
4C086MA35
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4C086MA41
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4C088MA35
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4C088MA58
4C088NA05
4C088ZA33
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA04
4C206CA19
4C206DB21
4C206DB56
4C206FA53
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
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4C206MA30
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4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA78
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA33
(57)【要約】
【課題】 網膜色素上皮細胞を活性酸素のダメージからより有効に保護し、網膜障害を抑制することが可能な網膜保護組成物を提供すること。
【解決手段】 ルテインと、葛、稲、及びココヤシから選ばれる少なくとも1種の植物素材などの特定の成分とを有効成分として含有することを特徴とする網膜保護組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテインと、下記(a)〜(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを有効成分として含有することを特徴とする網膜保護組成物。
(a)葛、稲、及びココヤシから選ばれる少なくとも1種の植物素材
(b)アルギニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、及びチロシンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸
(c)没食子酸、及びクロロゲン酸から選ばれる少なくとも1種のポリフェノール
(d)ビタミンB1、ビタミンD3、ビオチン、ビタミンK、カルシウム、マンガン、亜鉛、鉄、モリブデン、及びクロムから選ばれる少なくとも1種のビタミン・ミネラル類
【請求項2】
網膜保護作用を有する眼機能維持剤であることを特徴とする請求項1記載の網膜保護組成物。
【請求項3】
ルテインと(a)〜(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とからなる有効成分を添加して得たことを特徴とする請求項1又は2記載の網膜保護組成物。
【請求項4】
経口用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の網膜保護組成物。
【請求項5】
錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、又は液剤であることを特徴とする請求項4記載の網膜保護組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の網膜保護組成物を摂取させることを特徴とする眼機能維持方法(ただし、医療行為を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網膜保護組成物に係り、詳しくは、ルテイン及び特定の他の成分を有効成分とする網膜保護組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
視細胞の修復や再生に関与している網膜色素上皮の機能は、加齢とともに低下していくことが知られている。若い頃は、体内に、細胞内に発生した活性酸素を分解するSOD酵素が十分にあり、活性酸素による悪影響を防いでいるが、加齢とともにSOD酵素の働きが低下し、網膜色素上皮の機能も低下することになる。
【0003】
一方、ルテインは、網膜の黄斑部や水晶体にゼアキサンチンと共に存在し、SOD様作用を有し、眼の中に生成した活性酸素を除去するといわれており、眼の機能維持や、白内障、加齢黄斑変性等の予防・治療に効果があることが知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−238442号公報
【特許文献2】特開2005−287376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、網膜色素上皮細胞を活性酸素のダメージから有効に保護し、網膜障害を抑制することが可能な網膜保護組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、網膜において重要な役割を果たす網膜色素上皮細胞の活性酸素からの保護について鋭意調査・研究した結果、ルテインと特定の他の成分とを組み合わせることにより、高い網膜色素上皮細胞保護効果が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、ルテインと、網膜色素上皮細胞保護能がほとんどないか、その能力が小さい特定の他の成分を組み合わせることにより、網膜色素上皮細胞の活性酸素によるダメージをより有効に抑制することができることを見いだした。
【0007】
すなわち、本発明は、ルテインと、下記(a)〜(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを有効成分として含有することを特徴とする網膜保護組成物に関する。
(a)葛、稲、及びココヤシから選ばれる少なくとも1種の植物素材
(b)アルギニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、及びチロシンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸
(c)没食子酸、及びクロロゲン酸から選ばれる少なくとも1種のポリフェノール
(d)ビタミンB1、ビタミンD3、ビオチン、ビタミンK、カルシウム、マンガン、亜鉛、鉄、モリブデン、及びクロムから選ばれる少なくとも1種のビタミン・ミネラル類
【0008】
本発明の網膜保護組成物は、網膜保護作用を有する眼機能維持剤として用いることができる。
【0009】
本発明の網膜保護組成物は、ルテインと(a)〜(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とからなる有効成分を添加して得たものであってもよい。
【0010】
また、本発明の網膜保護組成物は、経口用であることが好ましく、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、又は液剤であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の網膜保護組成物を摂取させることを特徴とする眼機能維持方法(ただし、医療行為を除く)に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の網膜保護組成物によれば、網膜色素上皮細胞を活性酸素のダメージから有効に保護し、網膜障害を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の網膜保護組成物(ルテイン+植物素材)をヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)に適用した場合の酸化ストレスマーカーであるTGFβ1の発現量を示す図であり、左上図が植物素材として葛を用いたものを示し、右上図が植物素材として稲(米ぬか)を用いたものを示し、左下図が植物素材としてココヤシ(ココナッツ)を用いたものを示す。
【
図2】本発明の網膜保護組成物(ルテイン+アミノ酸)をヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)に適用した場合の酸化ストレスマーカーであるTGFβ1の発現量を示す図であり、左上図がアミノ酸としてアルギニンを用いたものを示し、右上図がアミノ酸としてフェニルアラニンを用いたものを示し、左下図がアミノ酸としてセリンを用いたものを示し、右下図がアミノ酸としてトレオニンを用いたものを示す。
【
図3】本発明の網膜保護組成物(ルテイン+アミノ酸)をヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)に適用した場合の酸化ストレスマーカーであるTGFβ1の発現量を示す図であり、左図がアミノ酸としてトリプトファンを用いたものを示し、右図がアミノ酸としてチロシンを用いたものを示す。
【
図4】本発明の網膜保護組成物(ルテイン+ポリフェノール)をヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)に適用した場合の酸化ストレスマーカーであるTGFβ1の発現量を示す図であり、左図がポリフェノールとして没食子酸を用いたものを示し、右図がポリフェノールとしてクロロゲン酸を用いたものを示す。
【
図5】本発明の網膜保護組成物(ルテイン+ビタミン類)をヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)に適用した場合の酸化ストレスマーカーであるTGFβ1の発現量を示す図であり、左上図がビタミン類としてビタミンB1を用いたものを示し、右上図がビタミン類としてビタミンD3を用いたものを示し、左下図がビタミン類としてビオチンを用いたものを示し、右下図がビタミン類としてビタミンKを用いたものを示す。
【
図6】本発明の網膜保護組成物(ルテイン+ミネラル類)をヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)に適用した場合の酸化ストレスマーカーであるTGFβ1の発現量を示す図であり、左上図がミネラル類としてカルシウムを用いたものを示し、右上図がミネラル類としてマンガンを用いたものを示し、左下図がミネラル類として亜鉛を用いたものを示し、右下図がミネラル類として鉄を用いたものを示す。
【
図7】本発明の網膜保護組成物(ルテイン+ミネラル類)をヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)に適用した場合の酸化ストレスマーカーであるTGFβ1の発現量を示す図であり、左図がミネラル類としてモリブデンを用いたものを示し、右図がミネラル類としてクロムを用いたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の網膜保護組成物は、ルテインと、下記(a)〜(d)からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(以下、他成分ということがある)とを有効成分として含有することを特徴とする。ルテインと共に用いられる下記(a)〜(d)の成分は、1種単独(例えば(a)成分)で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。他成分を2種以上組み合せて用いる場合、ルテインと相乗効果の高い他成分同士を組み合わせることが好ましい。
【0015】
本発明の網膜保護組成物は、網膜色素上皮細胞を活性酸素のダメージからより有効に保護し、網膜障害を抑制することができ、眼の加齢を遅延させ、眼の機能維持を図ることができる。また、加齢黄斑変性、網膜色素変性症、中心性網脈絡膜症、黄斑部網膜上皮形成症、黄斑円孔等の網膜疾患の発生を抑制することができる。したがって、本発明の網膜保護組成物は、眼機能維持剤、網膜保護剤、網膜障害抑制剤、網膜疾患予防剤等として用いることができる。
【0016】
[ルテイン]
本発明に用いられるルテインは、植物の葉、花、果実等に存在するカロテノイドの一種であり、植物由来のものを用いることができる。例えば、ルテインを多く含むマリーゴールド由来のものを使用することができる。また、合成により製造されたものを用いることもできる。
【0017】
[他成分]
(a)植物素材
本発明の網膜保護組成物においては、ルテインと共に、有効成分として、葛、稲、及びココヤシから選ばれる少なくとも1種の植物素材を用いることが好ましい。
【0018】
これらの植物素材は、葉、茎、根、花、実、幹、枝等、植物のいずれの部位であってもよく、植物素材そのもの(乾燥物を含む)の他、その粉砕物、搾汁、抽出物等の植物素材処理物を用いることができる。粉砕物としては、粉末、顆粒等が挙げられる。絞汁や抽出物は、液状であってもよいが、ペースト状や乾燥粉末として用いることもできる。抽出物は、適当な溶媒を用いて抽出することに得ることができ、溶媒としては、例えば、水(熱水)、エタノール、含水エタノールを用いることができる。これらの植物素材は、市販されているものを使用することができる。
【0019】
葛は、マメ科クズ属のつる性の多年草植物である。本発明の植物素材として用いる部位としては、花、根が好ましく、花が特に好ましい。葛花としては、蕾から全開した花までのいずれの過程で採取したものを用いてもよく、各過程で採取したものを混合して用いることもできる。葛の種類としては、特に制限はないが、プエラリア・トムソニイ(Pueraria thomsonii)、プエラリア・ロバータ(Pueraria lobata)、プエラリア・スンバーギアナ(Pueraria thunbergiana)等を例示することができる。
【0020】
稲は、イネ科イネ属の植物である。本発明の植物素材として用いる部位としては、玄米の外皮や胚が好ましく、具体的には、玄米を精白する際に副産物として得られる米ぬかを用いることが好ましい。稲の種類としては、特に制限はなく、ジャポニカ種、インディカ種等を挙げることができる。
【0021】
ココヤシは、ヤシ科の植物であり、本発明の植物素材として用いる部位としては、果実(胚乳)が好ましい。
【0022】
(b)アミノ酸
本発明の網膜保護組成物においては、ルテインと共に、有効成分として、アルギニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、及びチロシンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸(塩を含む)を用いることが好ましい。塩としては、例えば、ナトリウム塩、塩酸塩等を挙げることができる。
【0023】
(c)ポリフェノール
本発明の網膜保護組成物においては、ルテインと共に、有効成分として、没食子酸、及びクロロゲン酸から選ばれる少なくとも1種のポリフェノールを用いることが好ましい。
【0024】
(d)ビタミン・ミネラル類
本発明の網膜保護組成物においては、ルテインと共に、有効成分として、ビタミンB1、ビタミンD3、ビオチン、ビタミンK、カルシウム、マンガン、亜鉛、鉄、モリブデン、及びクロムから選ばれる少なくとも1種のビタミン・ミネラル類を用いることが好ましい。なお、本発明のミネラル類としてのカルシウム、マンガン、亜鉛、鉄、モリブデン、及びクロムは、これらの金属を含む化合物の形態を含む。
【0025】
本発明の網膜保護組成物は、網膜保護作用を有する眼機能維持剤として用いることができ、かかる眼機能維持剤は、ルテイン及び所定の他成分を含有し、眼機能維持に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではない。例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに網膜保護効果、網膜障害抑制効果、網膜疾患予防効果等の眼の機能維持効果の機能がある旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、化粧品や、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品等を挙げることができる。いわゆる健康食品においては、「眼(目)の黄斑部の色素量を維持する」、「加齢による眼(目)の悩みに」、「光の刺激から眼(目)を保護する」、「ブルーライト対策に」、「液晶ライト対策に」、「読書、パソコン、スマホに疲れたら」、「ぼんやりが気になる方に」、「コントラスト感度の改善に」、「疲れ眼(目)に」、「眼(目)の調子を整える」、「眼(目)の疲れを取る」等を表示したものを例示することができる。本発明の網膜保護組成物は、上記の効果が気になる人であれば性別や年齢に関係なく摂取することができるが、本発明の網膜保護組成物の効果をより有効に享受することができることから、疾病者を除く健常者が摂取することが望ましい。また、眼を長時間酷使する作業を行う者が摂取することが望ましく、特にパソコンなどで長時間作業を行うデスクワーク者が摂取することが望ましい。
【0026】
また、本発明の網膜保護組成物の形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、粒状剤、棒状剤、板状剤、ブロック状剤、固形状剤、丸状剤、ペースト状剤、クリーム状剤、カプレット状剤、ゲル状剤、チュアブル状剤、スティック状剤等を挙げることができる。これらの中でも、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤の形態が特に好ましい。具体的には、サプリメントや、ペットボトル、缶、瓶等に充填された容器詰飲料や、水(湯)、牛乳、果汁、青汁等に溶解して飲むためのインスタント粉末飲料、インスタント顆粒飲料を例示することができる。これらは食事の際などに手軽に飲用しやすく、また嗜好性を高めることができるという点で好ましい。
【0027】
本発明の網膜保護組成物におけるルテイン及び他成分(有効成分)の含有量としては、その効果の奏する範囲で適宜含有させればよい。
【0028】
一般的には、本発明の網膜保護組成物が医薬品やサプリメント(錠剤,カプセル剤)の場合には、有効成分が乾燥質量換算で全体の0.01〜100質量%含まれていることが好ましく、0.1〜85質量%含まれていることがより好ましく、0.5〜70質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の網膜保護組成物が容器詰飲料(液剤)である場合には、有効成分が乾燥質量換算で全体の0.01〜15質量%含まれていることが好ましく、0.03〜12.5質量%含まれていることがより好ましく、0.05〜10質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0030】
また、本発明の網膜保護組成物がインスタント粉末飲料(粉末剤)、インスタント顆粒飲料(顆粒剤)である場合には、有効成分が乾燥質量換算で全体の0.1〜80質量%含まれていることが好ましく、0.5〜70質量%含まれていることがより好ましく、1〜60質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の効果をより有効に発揮させるためには、有効成分が乾燥質量換算で本発明の網膜保護組成物全体(水分を除く)の80質量%以上含まれていることが好ましく、90質量%以上含まれていることがより好ましく、95質量%以上含まれていることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。さらに、本発明の網膜保護組成物が成分(a)〜(d)のいずれかを含有する場合、その含有される成分は、本発明における有効成分のみで構成されることが好ましい。すなわち、本発明の網膜保護組成物が例えば成分(a)(植物素材)を含む場合には、葛、稲、及びココヤシ以外の植物素材を含まないように構成することが好ましい。
【0032】
本発明の網膜保護組成物の摂取量としては特に制限はないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、1日当たりの有効成分の摂取量が、1mg/日以上となるように摂取することが好ましく、5mg/日以上となるように摂取することがより好ましく、10mg/日以上となるように摂取することが特に好ましい。その上限は特に制限されないが、例えば、4g/日であり、好ましくは2g/日である。
【0033】
本発明の網膜保護組成物は、1日の摂取量が前記摂取量となるように、1つの容器に、又は例えば2〜3の複数の容器に分けて、1日分として収容することができる。
【0034】
ルテイン及び他成分の配合質量比としては、乾燥質量換算で、0.5:1〜70:1の範囲であることが好ましく、0.75:1〜60:1の範囲であることがより好ましく、1:1〜60:1の範囲であることがさらに好ましく、1:1〜50:1の範囲であることが特に好ましい。ルテイン及び他成分の配合比が、上記範囲であることにより、本発明の効果をより有効に発揮することができる。
【0035】
本発明の網膜保護組成物は、必要に応じて、経口剤として許容される有効成分以外の成分を添加して、公知の方法によって製造することができる。
【0036】
また、本発明の経口剤としての網膜保護組成物としては、有効成分を含有する網膜保護組成物の他、食品に対して有効成分を添加して得た網膜保護組成物(網膜保護食品)を挙げることができ、例えば、通常の食品(天然の食品を含む)に比して本発明の有効成分含有量を増加させた食品や、本発明の有効成分を通常含まない食品に対して有効成分を添加した食品を挙げることができる。有効成分の添加は、それぞれの成分を別々に添加してもよいし、同時に添加してもよく、また、有効成分以外の他の成分と共に添加してもよい。
【0037】
本発明の網膜保護食品としては、例えば、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、スムージー、青汁等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及びその加工食品;ソース、醤油等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、牛丼、ハヤシライス、オムライス、おでん、マーボドーフ、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール、各種ソース、各種スープ等のレトルトパウチ食品などを挙げることができる。
【0038】
本発明の眼機能維持方法としては、上記説明した本発明の網膜保護組成物を摂取させることを特徴とするが、医療行為は含まれない。本発明の網膜保護組成物は、上記の効果が気になる人であれば性別や年齢に関係なく摂取させことができるが、本発明の網膜保護組成物の効果をより有効に享受することができることから、疾病者を除く健常者に摂取させることが望ましい。また、眼を長時間酷使する作業を行う者に摂取させることが望ましく、特にパソコンなどで長時間作業を行うデスクワーク者に摂取させることが望ましい。発明の方法としては、例えば、レストラン等の飲食店において、本発明の網膜保護食品を提供することにより、眼機能維持効果を得る方法を挙げることができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
[実施例1]
1.細胞培養
(1)37℃、5%CO
2インキュベーター内で、75cm
2フラスコを用いて、ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)を培養した。培地はDMEM培地とF−12HAM培地を1:1で混合し、FBSが10%となるように調製したものを用いた。
(2)トリプシン処理により浮遊させた細胞を、75cm
2フラスコから96well plateの各wellに1.0×10
4cells/wellの細胞密度で播種した。
(3)37℃、5%CO
2インキュベーター内で72時間前培養した。
(4)各wellより培地を除去後、所定濃度に調製した被験物質含有培地を200μLずつ添加し、CO
2インキュベーター内で20時間培養した。
【0040】
なお、ルテインと他成分との併用サンプルについては、それぞれ2倍濃度の被験物質含有培地を調製し、100μLずつ添加することで目的の濃度とした。また、controlは、被験物質をDMSOに溶解したものに対しては0.5%DMSO含有培地を用いて調製し、その他の被験物質に対しては0.25%DMSO培地を用いて調製した。
【0041】
ルテインについては、市販のルテインを用いた。ルテインと共に用いる他成分としては、表1〜表4に示す物質を用いた。
【0042】
(5)20時間培養後、無血清培地で1.5mMまたは2.5mMに調製した過酸化水素水を50μL添加し20時間培養した。他成分が、植物素材、ビタミン類のものについては、過酸化水素水終濃度300μMとし、他成分が、アミノ酸、ミネラル類、ポリフェノールのものについては、過酸化水素水終濃度500μMとした。controlについては、試験区と過酸化水素水終濃度を合わせた。
【0043】
2.TGFβ1の発現解析
(1)20時間培養後、培養した細胞から培地を除去し、CellAmp
TM Direct RNA Prep Kit for RT−PCR(Real Time)(Takara製)を用いて、RNAを回収し、N=3のサンプルを混合して1つのRNAサンプルとした。
(2)検量線を作成するため、1つのサンプルを3倍、9倍希釈した。One Step SYBR(登録商標) PrimeScript
TM RT−PCR Kit II(Perfect Real Time)(Takara製)を用いてPCRを実施した。プライマーはTGFβ1(QIAGEN製)とRPLP0(QIAGEN製)を使用した。
(3)1倍、3倍、9倍希釈したサンプルから作成した検量線を用いて、各サンプルにおける遺伝子発現量を算出した。解析は相対定量により行い、RPLP0(ハウスキーピング遺伝子)を内部標準として mRNA量を補正した。
【0044】
その結果を表1〜表4、及び
図1〜
図7に示す。
【0045】
各図は、左から、「コントロール(過酸化水素添加)」、「ルテインの単独添加」、「他成分の単独添加」、「ルテイン+他成分添加」の結果を表す。また、グラフ下部の説明における数値は、サンプル濃度を示し、例えば、
図1の左上のグラフの「ルテイン_0.62」は、ルテイン0.62(μg/mL)を示す。添加成分の濃度単位は、すべてのグラフにおいて、μg/mLである。縦軸は「% of control」を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
葛については、花の熱水抽出物(乾燥粉末)を用いた。
米ぬかについては、市販品を用いた。
ココナッツについては、市販のココナッツミルクを乾燥後、油分を除いたものを用いた。
ヨモギについては、生葉の微粉砕末を用いた。
マキベリーについては、市販品の果実の乾燥粉末を用いた。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
表1〜表4、及び
図1〜
図7に示すように、ルテインと、本発明の特定の他成分を組み合わせることにより、ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)の酸化ストレスによるTGFβ1の発現量が相乗的に低下した。したがって、本発明の網膜保護組成物によれば、網膜色素上皮細胞を有効に保護することができる。
【0052】
[実施例2](錠剤の製造)
下記成分からなるタブレット(200mg)を製造した。
【0053】
ルテイン(マリーゴールド抽出物) 10mg
ビルベリー抽出物 60mg
ブルーベリー抽出物 50mg
ステアリン酸カルシウム 5mg
アルギニン 1.5mg
フェニルアラニン 1.5mg
トリプトファン 1mg
クロロゲン酸 1mg
ビタミンB1 0.5mg
ビタミンK 0.5mg
塩化カルシウム 0.5mg
グルコン酸亜鉛 0.5mg
セルロース 残部
【0054】
上記錠剤は一日に2粒を噛まずに水と共に服用する。
【0055】
[実施例3](カプセル剤の製造)
下記混合物をソフトカプセルに封入し、カプセル剤を製造した。
【0056】
重量比
ルテイン(マリーゴールド抽出物) 30%(ルテインとして20mg)
紅花油 50%
ミツロウ 10%
葛の花エキス 2%
ブルーベリーエキス 1%
水溶性β−カロテン末 0.2%
ヘマトコッカス藻色素 0.2%
ビタミンB12 0.01%
ビオチン 0.01%
没食子酸 0.01%
ビタミンE 0.01%
塩化鉄 0.01%
【0057】
上記カプセル剤は、一日に1粒を噛まずに水と共に服用する。
【0058】
[実施例4](顆粒剤の製造)
下記成分を混合して常法により顆粒剤(3000mg)を製造した。
【0059】
ルテイン(マリーゴールド抽出物) 15mg
松樹皮抽出物 50mg
ココナッツミルク 200mg
アスパルテーム 500mg
チロシン 50mg
トレオニン 50mg
トリプトファン 30mg
クロロゲン酸 20mg
ビタミンB1 5mg
ビタミンK 5mg
塩化カルシウム 2mg
グルコン酸銅 1mg
デキストリン 残部
【0060】
上記顆粒剤は一日に1包を水と共に服用する。
【0061】
[実施例6](液剤の製造)
下記成分からなる液剤(125mL)を製造した。
【0062】
ルテイン(マリーゴールド抽出物) 18mg
ビルベリー抽出物 150mg
カシス抽出物 50mg
米ぬか抽出物 25mg
ビタミンC 10mg
クエン酸 5mg
アルギニン 1.5mg
フェニルアラニン 1.5mg
トリプトファン 1mg
ビタミンB1 0.5mg
ビタミンK 0.5mg
塩化カルシウム 0.5mg
グルコン酸亜鉛 0.5mg
水 残部
【0063】
上記液剤は一日1パックを飲用する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の網膜保護組成物は、高い網膜保護効果を有し、経口剤として用いることができることから、本発明の産業上の有用性は高い。