【解決手段】ボタン留め具100は、2つの略半円形状の平板110と、平面上に載置された第1の平板110Aおよび第2の平板110Bを互いの略半円の直径が対向させて所定の間隔T(0)を開けて接続する、側面視で略U字形状の接続部120とで形成され、平板110Aの表面110AFには、平板110Aに略垂直な上方立設部126が形成され、その側面126Sには第2の平板110Bの表面110BFに間隔T(1)を開けて棒先端面138が対向する逆L字形状を備えた直径D(1)の丸棒形状の係止棒130が突設されている。
前記第1の平板の端面と前記上方立設部における前記間隔側の側面とは略同一平面で形成されている、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の着脱可能なカバーのボタン留め具。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るボタン留め具100およびそのボタン留め具100を用いた取付構造を、図面に基づき詳しく説明する。このボタン留め具100およびそのボタン留め具100を用いた取付構造ならびにこのボタン留め具100を用いた着脱可能な生地カバーの取り付け方法および取り外し方法を説明する前に、このボタン留め具100が好適に使用される、カバーリング方式の椅子自体(本実施の形態においてはソファー10とする)またはカバーリング方式のクッション20(たとえばソファー10の背部または座部に付するクッション)について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0014】
このボタン留め具100が好適に使用されるソファー10の正面図を
図1(A)に、その背面図を
図1(B)にそれぞれ示す。このソファー10は、限定されるものではないが2人用のソファーであって、着座者の背中が当接する背部および臀部が当接する座部を含み、左右の肘掛け部、4本の脚等を含む構成を備える。
背部は、背部表生地カバー12Fおよび背部裏生地カバー12Bから構成される着脱可能な背部生地カバー12でクッション材が覆われている。座部は、座部表生地カバー14Fおよび座部裏生地カバー(図示しない)から構成される着脱可能な座部生地カバー14でクッション材が覆われている。ここで、クッション材は、生地カバーに覆われる充填材としてのクッション性を備えたウレタンフォーム等である。
【0015】
そして、背部生地カバー12は、背部表生地カバー12F側に脚付きボタン(裏側ボタン500に対する表側ボタン)200が表出して、背部裏生地カバー12B側に裏側ボタン500が表出して、脚付きボタン200と裏側ボタン500とが、後述するボタン留め具100および紐状物400により接続されている。このように数ヶ所(
図1の背部では12ヶ所)において表面と裏面とを接続した紐状物により中身のクッション材が保持されて、ソファー10の背部形状が保持できるようになっていたり、デザイン性が高められていたりする。
【0016】
なお、座部も背部と同じように、座部表生地カバー14F側に脚付きボタン200が表出して、座部裏生地カバー側に裏側ボタン500が表出して、脚付きボタン200と裏側ボタン500とが後述するボタン留め具100および紐状物400により接続されている。このように数ヶ所(
図1の座部では12ヶ所)において表面と裏面とを接続した紐状物により中身のクッション材が保持されて、ソファー10の座部形状が保持できるようになっている。
【0017】
さらに、このボタン留め具100が好適に使用されるクッション20の表面図およびその背面図を
図2に示す。このクッション20は、限定されるものではないが、1人用のクッションであって、使用者の背中または臀部が当接する。
クッション表生地カバー22Fおよびクッション裏生地カバー22Bから構成される袋状の着脱可能なクッション生地カバー22でクッション材が覆われている。ここで、クッション材は、生地カバーに覆われる充填材としてのクッション性を備えたウレタンフォーム、ポリエステル綿、羽毛等である。
【0018】
そして、クッション生地カバー22は、クッション表生地カバー22F側に脚付きボタン200が表出して、クッション裏生地カバー22B側に裏側ボタン500が表出して、脚付きボタン200と裏側ボタン500とが後述するボタン留め具100および紐状物400により接続されている。このように数ヶ所(
図2のクッション20では6ヶ所)において表面と裏面とを接続した紐状物により中身のクッション材が保持されて、クッション20の形状が保持できるようになっていたり、デザイン性が高められていたりする。
【0019】
なお、詳しくは後述するが、脚付きボタン200は一般的に衣類または家具に用いられる脚付きボタン(たとえばくるみボタン)であって、裏側ボタン500はボタン留め具1
00と類似する構成を備えた留め具である。
[ボタン留め具(専用品)の構成およびその他の汎用品の構成]
図3に示す本実施の形態に係るボタン留め具100の三面図、
図4に示すこのボタン留め具100の斜視図、
図5〜
図7に示すボタン留め具100を用いた着脱可能な生地カバー300の取付方法および取付構造を説明するための図を参照して、ボタン留め具100(専用品)の構成およびその他の汎用品の構成について説明する。なお、
図3および
図6においては、(A)に対して、(B)が90度、(C)が180度、ボタン留め具100が時計回りに回転している。
【0020】
まず、本実施の形態に係るボタン留め具100の構成について説明して、その後にこのボタン留め具100を用いて着脱可能な生地カバー300の取り付ける場合に使用する汎用品(脚付きボタン200、紐状物400および裏側ボタン500、ならびに、任意的な構成である沈み込み防止用リング700および取り外し治具800)の構成について説明する。
【0021】
・ボタン留め具100(専用品)
これらの図に示すように、このボタン留め具100は、大略的には、第1の平板110Aおよび第2の平板110Bと(纏めて平板110と記載する場合がある)、平面上に載置された第1の平板110Aの端面110ASおよび第2の平板110Bの端面110BSを互いに対向させて所定の間隔T(0)を開けて接続する、平面に平行な方向から見た側面視(
図4参照)で略U字形状の接続部120とで形成されている。そして、第1の平板110Aにおける接続部120が設けられていない表面110AFには、第1の平板110Aに略垂直な上方立設部126が形成され、上方立設部126における間隔T(0)側(第2の平板110B側でもある)の側面126Sには、第2の平板110Bに略平行になるように丸棒形状の係止棒130が突設されている。この係止棒130は、棒先端面138が第2の平板110Bの表面110BFに間隔T(1)を開けて対向するように略直角に曲がった逆L字形状を備えた直径D(1)の丸棒形状であって、水平接続部132(水平部長さL(4))、屈曲部134(略90度)および垂直対向部136(棒先端面138と表面110BFとの間隔T(1)を開けて対向)で構成されている。
【0022】
ここで、このボタン留め具100の素材は、特に限定されるものではないが、高分子化合物からなる合成樹脂製であって、たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等である。これらの樹脂でボタン留め具100を形成すると、樹脂が備える弾性により、好適な作用効果を発現することができる。たとえば、間隔T(1)へ脚付きボタン200の脚部210を挿入する際に上方立設部126を湾曲させて脚付きボタン200の脚部210の間隔T(1)への挿入を容易にしたり、間隔T(0)へ紐状物400を挿入する際に下方立設部124を湾曲させて紐状物400の間隔T(0)への挿入を容易にしたりすることができる。この点については、第1の変形例でさらに説明する。なお、このボタン留め具100の素材としては、樹脂よりも一般的に強度的に優れた金属等であっても構わない。
【0023】
さらに、これらの平板110(第1の平板110Aおよび第2の平板110B)は、略半円形状であって、略半円の直径が対向するように所定の間隔T(0)を開けて接続部120により接続されている。この接続部120は、略U字形状の開放側が第1の平板110Aの裏面110ABおよび第2の平板110Bの裏面110BBを接続するように形成されている。
【0024】
さらに、接続部120の直径方向長さL(2)は、これらの平板110の直径L(1)よりも短くなるように構成されている(L(1)>L(2))。
さらに、第1の平板110Aの端面110ASと上方立設部126における間隔T(0)側の側面126S(および下方立設部124の内面124S)とは略同一平面で形成されている。
【0025】
そして、詳しくは後述するが、このような特徴的な構造を備えたボタン留め具100を用いて生地カバー300を着脱自在に取り付ける取付構造は、脚付きボタン200の脚部210には穴部212が設けられ、その穴部212には係止棒130(より詳しくは水平
接続部132)が係止され、生地カバー300には係止棒130を含む上方立設部126の外形形状L(3)よりも、そのL(3)よりも大きな平板110の略半円の直径L(1)よりも、大きな内径T(3)を備えたハトメ310が設けられ(T(3)>L(1)>L(3))、穴部212に係止棒130(より詳しくは水平接続部132)が係止された上方立設部126の外周に、ハトメ310の内周が対向している。
【0026】
大略的にはこのような構成を備えた本実施の形態に係るボタン留め具100についてさらに詳しく説明する。なお、以下において大小関係を記載しない部分については、図面に記載の通りであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない場合がある。
図3(A)、
図3(B)および
図3(C)に示すように、このボタン留め具100を構成する2つの平板である第1の平板110Aおよび第2の平板110Bは、直径L(1)の略半円形状であって、略半円の直径が対向するように(第1の平板110Aの端面110ASと第2の平板110Bの端面110BSとが対向するように)所定の間隔T(0)を開けて、第1の平板110Aの裏面110ABと第2の平板110Bの裏面110BBとが、
図4に示す側面視で略U字形状の接続部120により接続されている。より詳しくは、接続部120の略U字形状の開放側と、第1の平板110Aの裏面110ABおよび第2の平板110Bの裏面110BBとが、それぞれ接続されることにより、2つの平板である第1の平板110Aと第2の平板110Bとが接続されている。
【0027】
この接続部120は、側面視において第1の平板110Aと第2の平板110Bの裏面どうしを接続する略U字形状であって、第1の平板110Aの裏面110ABおよび第2の平板110Bの裏面110BBに接続部120の下方立設部124が設けられることにより接続部120の略U字形状の底側120Dが第1の平板110Aの裏面110ABおよび第2の平板110Bの裏面110BBよりも突出している。2つの下方立設部124は底部122により接続されている。この場合において、接続部120の底部122により、2つの平板110が間隔T(0)を開けて接続されることになる。
【0028】
また、第1の平板110Aの表面110AFに上方立設部126が設けられることにより、
図4に示す側面視で、接続部120の略U字形状の開放側120Uが第1の平板110Aの表面110AFよりも突出して形成されていることにもなる。
ここで、この間隔T(0)は、係止棒130の水平接続部132における水平長さL(4)と略一致しているがこれに限定されるものではない。なお、係止棒130の垂直対向部136における棒先端面138と第2の平板110Bの表面110BFとは平行平面を形成しており、間隔T(1)を開けて対向している。また、係止棒130は、大略的には、90度曲げられた逆L字形状を備える直径D(1)の丸棒形状である。
【0029】
図3および
図5に示すように、間隔T(1)は脚付きボタン200の脚部210の厚みT(2)より若干大きく(T(1)>T(2))、水平接続部132の水平長さL(4)は脚付きボタン200の脚部210の厚みT(2)より若干大きく((L(4)(≒T(0))>T(2)、係止棒130の直径D(1)は脚付きボタン200の脚部210の穴部212の直径D(2)よりも若干小さい((D(2)>D(1))。このため、
図5(A)に示すように脚付きボタン200をその脚部210が水平方向になるように向けて(脚付きボタン200の本体部220が垂直状態になるように向けて)、係止棒130の垂直対向部136と第2の平板110Bの表面110BFとが対向している間隔T(1)へ脚部210を挿入して、穴部212を垂直対向部136へ嵌入して、
図5(B)に示すように屈曲部134で脚付きボタン200をその脚部210が垂直方向になるように回転させて(脚付きボタン200の本体部220が水平状態になるように回転させて)、穴部212を水平接続部132へ進行させることができる。これにより、脚付きボタン200の脚部210の穴部212を係止棒130の水平接続部132に嵌め込んで、本体部220が水平状態の脚付きボタン200をボタン留め具100に係止させることができる。
【0030】
さらに、このボタン留め具100の接続部120の直径方向長さL(2)は、平板110の略半円の直径L(1)よりも短い((L(1)>L(2))。なお、接続部120の直径方向長さL(2)は、接続位置での長さである(下方立設部124が位置する上端側であって底部122が位置する下端側でないことを意味する)。接続部120の直径方向
長さL(2)が短いと強度が低くなり、底部122が破損したり接続位置における平板110との接合が破損したりしてボタン留め具100が破損する場合がある。このため、ボタン留め具100自体の強度を考慮した場合には、接続部120の直径方向長さL(2)は長い方が好ましい。
【0031】
一方、後述するように、平板110の略半円の直径L(1)および接続部120の直径方向長さL(2)は、このボタン留め具100の取付構造において用いられるハトメ310の内径T(3)よりも小さく(T(3)>L(1)、T(3)>L(2))、平板110の略半円の直径L(1)は沈み込み防止用リング700の内径T(4)よりも大きく、かつ、接続部120の直径方向長さL(2)は沈み込み防止用リング700の内径T(4)よりも小さい(L(1)>T(4)>L(2))必要がある。このような点を考慮して、少なくとも、接続部120の直径方向長さL(2)は平板110の略半円の直径L(1)よりも短い必要がある。このため、このボタン留め具100においては、接続部120の直径方向長さL(2)は、平板110の略半円の直径L(1)よりも短くしている((L(1)>L(2))。さらに、限定されるものではないが、平板110の略半円の直径L(1)に対して接続部120の直径方向長さL(2)は1/2〜1/4であることが好ましく、1/3程度が特に好ましい。
【0032】
上方立設部126は、第1の平板110A側の側面は第1の平板110Aの表面110AFに垂直であって、第2の平板110B側の側面は上方へ進むに従い細くなる先細りのテーパ形状の断面が略半円の略円錐台形状(
図4に示すように底面直径が略D(4)で上面直径が略D(5)で高さ略Hの略円錐台)を備える。そして、2つの平板110よりも上方(接続部120の逆側)においては、上方立設部126の最上部で長さL(3)であって、上方立設部126の最下部で最大長さD(3)となっており、いずれも平板110の略半円の直径L(1)よりも小さい(L(1)>D(3)>L(3))。なお、上述したように、平板110の略半円の直径L(1)は、ハトメ310の内径T(3)よりも小さく(T(3)>L(1))ため、このボタン留め具100はハトメ310を貫通することができる。
【0033】
なお、平板110の略半円形状および上方立設部126の略半円の略円錐台形状とは、たとえば、
図3に示すように、全円形状の平板に全円の円錐台をその中心軸を一致させて重ねて中央部分を間隔T(0)分だけ削除した形状であって、削除した後のこれらの形状が(平板110の)略半円形状および(上方立設部126)の略半円の略円錐台形状を意味する場合を含む。
【0034】
以上のような構成を備えたボタン留め具100とともに使用される汎用品の構成について、
図5〜
図7を参照して説明する。
・汎用品(脚付きボタン200、紐状物400、裏側ボタン500)
脚付きボタン200は、特に限定されるものではなく、衣類や家具に使用される脚付きの一般的な(くるみ)ボタンである。この脚付きボタン200は、
図5〜
図7に示すように、本体部220の裏面中央近傍に立設された略平板状の脚部210を備え、その脚部210は穴部212が設けられている。上述したように、この穴部212が、ボタン留め具100の係止棒130の水平接続部132に係止されることにより、ボタン留め具100に脚付きボタン200が嵌め込まれる。
【0035】
裏側ボタン500は、特に限定されるものではなく、たとえば、ボタン留め具100の底側のみを備える構成を備える。この裏側ボタン500は、
図5に示すように、平面上に載置された2つの略半円形状の平板510を互いの端面を対向させて所定の間隔を開けて接続する、平面に平行な方向から見た側面視で略U字形状の接続部520とが、一体的に形成されている。ただし、この点でボタン留め具100と類似するが、裏側ボタン500はボタン留め具100の上方立設部126および係止棒130を備えない。
【0036】
紐状物400は、ボタン留め具100の接続部120の底側120Dの底部122と裏側ボタン500の接続部520の底部522とを、エンドレスループ状で接続する、一般的な伸縮性を備えない紐または伸縮性を備えた紐状物である。なお、このように紐状物400がボタン留め具100と裏側ボタン500とを接続するが、裏側ボタン500を脚付
きボタン200と同じように、穴部212を有する脚部210を備えたボタンであってもよく、この場合には、紐状物400をエンドレスループ状にする前に、紐状物400を脚部210の穴部212に通した後にエンドレスループ状にして、ボタン留め具100の接続部120の底側120Dの底部122に係止するようにしても構わない。このようにすると、
図2に示すクッション20の表裏で同じボタンを使用することができる。さらに、表裏で同じボタンを使用するという観点では、ボタン留め具100と脚付きボタン200との組合せを、表側および裏側で1組ずつ使用するようにしても構わない。
【0037】
なお、生地カバー300(背部生地カバー12、座部生地カバー14、クッション生地カバー22)は、ボタン留め具100と脚付きボタン200との組合せが設けられる位置およびこの位置に対応して紐状物400を介してボタン留め具100と接続される裏側ボタン500が設けられる位置には、生地穴部312を形成するハトメ310が設けられている。このハトメ310の内径(生地穴部312の直径T(3))は、ボタン留め具100の上方立設部126および脚付きボタン200の脚部210が少なくとも通る大きさであって、ハトメ310の外径は、好ましくは脚付きボタン200の本体部220の最大径よりも小さくして脚付きボタン200をボタン留め具100に係合させるとハトメ310が見えなくなる点で意匠上好ましい。
【0038】
ただし、生地カバー300に設ける穴部はハトメ310により形成されるものに限定されるものではなく、ボタンホールにより形成した穴部、熱加工により形成した穴部、テープ加工により形成した穴部であっても構わない。
・任意的汎用品(沈み込み防止用リング700、取り外し治具800)
次に、本発明に係る取付構造に必須の構成ではない任意的構成品である沈み込み防止用リング700および取り外し治具800を
図5〜
図7を参照して説明する。
【0039】
沈み込み防止用リング700は、このボタン留め具100がクッション材に沈み込んでしまうことを防止するための中空薄板円板(座金、ワッシャー)である。その内径T(4)については、上述したように、平板110の略半円の直径L(1)は沈み込み防止用リング700の内径T(4)よりも大きく、かつ、接続部120の直径方向長さL(2)は沈み込み防止用リング700の内径T(4)よりも小さい(L(1)>T(4)>L(2))。そして、この沈み込み防止用リング700の外径は、少なくともハトメ310の外径よりも小さいことが好ましい。これは、沈み込み防止用リング700の外径がハトメ310の外径よりも小さいと、脚付きボタン200の本体部220の最大径よりも必ず小さくなり、脚付きボタン200をボタン留め具100に係合させるとハトメ310に加えてこの沈み込み防止用リング700も見えなくなる点で意匠上好ましいためである。
【0040】
取り外し治具800は、先端に切欠部812(幅W(1)×長さL)を備えた平板を曲げた構成を備え、切欠部812を備えた進入部810と把持部820とで形成されており、切欠部812の幅Wおよび長さLはボタン留め具100および脚付きボタン200の形状に対応しており、ボタン留め具100が切欠部812に内包され、脚付きボタン200の本体部220の裏面が切欠部812の周囲814に支持される。より詳しくは、
図6および
図7に示すように、脚付きボタン200の本体部220の最大径W(3)>切欠部812の幅W(1)>上方立設部126の最下部における最大長さD(3)もしくは上方立設部126の最上部で長さL(3)、または、脚付きボタン200の本体部220の最大径W(3)>切欠部812の幅W(1)>脚付きボタン200の脚部210の幅W(2)となる
図5(C)に示すように、このボタン留め具100がクッション材に取り付けられている状態で、このボタン留め具100を取り外すに際して、このボタン留め具100をハトメ310よりも上方へ引き出す必要があるので、
図6および
図7に示すように、矢示X(1)方向へ進行させて、脚付きボタン200とボタン留め具100との間に切欠部812を係合して、矢示X(2)方向へ回動させることにより、または、矢示X(3)方向へ引き上げることにより、このボタン留め具100がハトメ310よりも上方になるように、引き上げる。
【0041】
なお、切欠部810により係止する場合において、脚付きボタン200の本体部220
の裏面を切欠部812の周囲814により支持するのではなく、ボタン留め具100の2つの平板110の裏面を切欠部812の周囲814により支持するようにしても構わない。この場合、
図6および
図7に示す取り外し治具850を用いることになり、より詳しくは、切欠部812の幅W(1)は、略T(4)程度になる。特に、上述した沈み込み防止用リング700を備える場合に、このようにすることが好ましい。
【0042】
[生地カバーの取り付け方法および取り外し方法]
以上のような、本実施の形態に係るボタン留め具100を用いたこのボタン留め具100を用いた着脱可能な生地カバーの取り付け方法および取り外し方法ならびに取付構造について、上述した
図1〜
図7を参照して説明する。なお、
図6に示すように、表側生地カバー300Fと裏側生地カバー300Bとの間には、充填材としてのクッション性を備えたウレタンフォーム600が設けられている。
【0043】
・取り付け方法
図5(A)および
図7に示すように、ボタン留め具100と脚付きボタン200とを、表側生地カバー300Fに予め設けられたハトメ310により形成された生地穴部312に近接させる。このとき、ボタン留め具100の接続部120の底部122には紐状物400が通されて、紐状物400はエンドレスループ状で、裏側ボタン500の接続部520の底部522に通されているものとする。
【0044】
このように、ボタン留め具100と脚付きボタン200とを近接させた状態から、作業者がウレタンフォーム600を押さえ込んでハトメ310よりも上方にボタン留め具100を摘み上げる。このとき、沈み込み防止用リング700、取り外し治具800、取り外し治具850を用いると、ハトメ310よりも上方にボタン留め具100を容易に引き上げることができて好ましい。
【0045】
脚付きボタン200をその脚部210が水平方向になるように向けて、係止棒130の垂直対向部136と第2の平板110Bの表面110BFとが対向している間隔T(1)へ脚部210を挿入する。そして、脚付きボタン200の脚部210に設けられた穴部212を垂直対向部136へ嵌入して、屈曲部134で脚付きボタン200をその脚部210が垂直方向になるように回転させて、穴部212を水平接続部132へ進行させる。これにより、脚付きボタン200の脚部210の穴部212を係止棒130の水平接続部132に嵌め込んで、本体部220が水平状態の脚付きボタン200をボタン留め具100に係止させる。これにより、
図5(A)に示す状態から
図5(B)に示す状態になり、穴部212に水平接続部132が係止(嵌合または係合により係止)しており、ボタン留め具100から脚付きボタン200が容易に外れない。
【0046】
この状態でボタン留め具100を作業者が離すと、
図5(C)に示すように、ウレタンフォーム600が膨張して、相対的にボタン留め具100が沈み込み、ハトメ310が上昇する。このように上昇したハトメ310の内周側に、脚付きボタン200の脚部210の穴部212に係止棒130(より詳しくは水平接続部132)が係止された上方立設部126が位置している。このため、脚付きボタン200の脚部210が水平接続部132から屈曲部134および垂直対向部の方向へ移動することができないので、脚付きボタン200とボタン留め具100とが分離することがない。このため、紐状物400を介してボタン留め具100と裏側ボタン500とが接続されているので、表側から裏側へ向けて、脚付きボタン200、ボタン留め具100、紐状物400および裏側ボタン500が接続されて、生地カバー300とウレタンフォーム600とを一体化することができる。
【0047】
・取付構造
図5(C)および
図6を参照して、ボタン留め具100を用いた取付構造について説明する。上述した取り付け方法によりボタン留め具100に脚付きボタン200が取り付けられ、本実施の形態に係る取付構造が実現する。
この取付構造においては、脚付きボタン200の脚部210には穴部212が設けられ、その穴部212には係止棒130(より詳しくは水平接続部132)が係止され、生地カバー300には係止棒130を含む上方立設部126の外形形状L(3)よりも、そのL(3)よりも大きな平板110の略半円の直径L(1)よりも、大きな内径T(3)を
備えたハトメ310が設けられる(T(3)>L(1)>L(3))。そして、ウレタンフォーム600が膨張して、相対的にボタン留め具100が沈み込むと、ハトメ310が上昇して、穴部212に係止棒130(より詳しくは水平接続部132)が係止された上方立設部126の外周に、ハトメ310の内周が対向している取付構造を実現する。
【0048】
なお、ハトメ310は、ハトメ310の断面中心線(
図6(C)に示すLH)が水平接続部132の中心線(
図3に示すLB)に略一致する位置であるように、ボタン留め具100、脚付きボタン200およびハトメ310の各部が設定される。
・取り外し方法
基本的には取り付け方法の逆の手順で、生地カバー300をウレタンフォーム600から取り外すことができる。
【0049】
図5(C)に示す状態から、作業者がウレタンフォーム600を押さえ込みつつ脚付きボタン200の本体部220を摘み上げてハトメ310よりも上方にボタン留め具100を引き上げて
図5(B)に示す状態に遷移させる。これにより、上述した取付構造である、穴部212に係止棒130(より詳しくは水平接続部132)が係止された上方立設部126の外周に、ハトメ310の内周が対向している取付構造、が開放される。このとき、沈み込み防止用リング700、取り外し治具800または取り外し治具850を用いると、ハトメ310よりも上方にボタン留め具100を容易に引き上げることができて好ましい。
【0050】
脚付きボタン200の脚部210(脚部210が垂直方向)の穴部212が水平接続部132から屈曲部134へ移動させて(わずかな移動)、屈曲部134で脚付きボタン200をその脚部210が水平方向になるように回転させて、穴部212を垂直対向部136へ進行させる。垂直対向部136と第2の平板110Bの表面110BFとが対向している間隔T(1)から脚部210を離脱させる。これにより、脚付きボタン200の脚部210に設けられた穴部212と係止棒130との係止(嵌合または係合により係止)が開放されて、
図5(A)および
図7に示す状態になる。
【0051】
次に、裏側ボタン500の接続部520の底部522にエンドレスループ状で通されている紐状物400を、底部522から取り外す。このとき、ウレタンフォーム600を押し付けると、紐状物400を裏側ボタン500から取り外しやすい。
これにより、クッション内部にはボタン留め具100、紐状物400およびウレタンフォーム600が残り、脚付きボタン200および裏側ボタン500がクッションから取り外され、生地カバー300をクッションから取り外すことができる。
【0052】
なお、生地カバー300を再度取り付ける際までに脚付きボタン200および裏側ボタン500を紛失することを防止するために、脚付きボタン200を生地カバー300が取り外されたクッションに残っているボタン留め具100に取り付けて(取り付け時と同じように接続部120の上方立設部126を広げて穴部212に係止棒130の略円形の突起を係合(嵌合)させて)、裏側ボタン500を生地カバー300が取り外されたクッションに残っている紐状物400に取り付ける(エンドレスループ状の紐状物400を裏側ボタン500の接続部520の底部522に通す)ことも好ましい。
【0053】
以上のようにして、本実施の形態に係るボタン留め具100およびそれを用いた取付構造によると、カバーリング方式の椅子自体または椅子に付ける、背部のクッション材または座部のクッション材を覆う生地カバーを着脱可能に保持する様々なボタンをクッション(充填材)にボタンを設ける必要なく、汎用性が高く、安価で、容易に着脱させることができる。
【0054】
上述したように本実施の形態に係るボタン留め具100によって特段の作用効果を発現し得るわけであるが、このような特段の作用効果を発現し得る2つの変形例について以下に説明する。以下における2つの変形例の説明においては、特に説明しない点は、上述した実施の形態と同じである。
・第1の変形例
図8を参照して、本実施の形態の第1の変形例に係るボタン留め具150について説明する。この
図8は
図3(B)中段の図に対応する。
【0055】
このボタン留め具150は、係止棒130の棒先端面138および第2の平板110Bの表面110BFの対向する位置に半球状の垂直突起152(脚付きボタン200の脚部210の厚みT(2)>垂直突起152の先端間距離T(11))を、下方立設部124の内面124Sの対向する位置に半球状の水平突起154を、それぞれ設けている。垂直突起152があるので、係止棒130から脚付きボタン200が間隔T(0)を通って離脱することを防止することができ、水平突起154があるので、ボタン留め具100から紐状物400が離脱することを防止することができる。
【0056】
特に、上述した実施の形態において記載した樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等)でこの垂直突起152を形成すると(ボタン留め具150の全体を樹脂製とすることが好ましい)、樹脂が備える弾性により、脚付きボタン200の脚部210を間隔T(0)を通すときには、脚付きボタン200の脚部210の厚みT(2)が垂直突起152の先端間距離T(11)よりも大きくても、間隔T(0)が弾性により広がり、係止棒130に脚付きボタン200が係止された後は脚付きボタン200の脚部210の厚みT(2)が垂直突起152の先端間距離T(11)よりも大きいので、間隔T(0)が弾性により元に戻ってボタン留め具100から脚付きボタン200が容易に外れない。なお、このような弾性による作用効果は、水平突起154においても同様である。
【0057】
このような構成を備えた第1の変形例に係るボタン留め具150であっても、ボタン留め具100と同様の作用効果を発現することができる。
・第2の変形例
図9を参照して、本実施の形態の第2の変形例に係るボタン留め具900について説明する。この
図9(A)は
図4に対応し、
図9(B)は
図3(B)にそれぞれ対応する。
【0058】
このボタン留め具900は、1本のワイヤ鋼線を曲げて構成したものであって、上述した実施の形態に係るボタン留め具100の各部の構成に対応する構成を備える。
大略的には、2つの平板110に対応して水平輪部910が形成され、接続部120に対応してU字部920が形成され、係止棒130に対応して逆U字部930が形成されている。
【0059】
さらに詳しくは、U字部920は、2つの下方立設部124に対応する下方部924と、底部122に対応する底U部922とにより形成されて、略U字形状の底側120Dに対応する底側920Dおよび略U字形状の開放側120Uに対応する開放側920Uが形成されている。また、上方立設部126に対応する上方部926を備える。また、逆U字部930は、水平接続部132および屈曲部134に対応する曲がり開始部932および曲がり終了部934と、垂直対向部136(棒先端面138と表面110BFとの間隔T(1)を開けて対向)に対応する垂直部936(先端端面部938と水平輪部910との間隔T(1)を開けて対向)とで形成されている。先端端面部938は抜け防止のために垂直部936から少し屈曲している。
【0060】
以上のように、ボタン留め具100の各部の構成に対応する構成を備えた本変形例に係るボタン留め具900においては、ボタン留め具900の各部の構成が、
上述したボタン留め具100において対応する各部の構成により発現する作用効果と同じ(同等の)作用効果、または、その作用効果に相当する作用効果、または、その作用効果に準じる作用効果を発現する。
【0061】
このため、このような構成を備えた第2の変形例に係るボタン留め具900であっても、ボタン留め具100と同様の作用効果を発現することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。