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特開2017-80063水溶性薬剤を微粒化させて放出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-80063(P2017-80063A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】水溶性薬剤を微粒化させて放出する装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/14 20060101AFI20170414BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
   A61L9/14
   B05B5/025 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-211471(P2015-211471)
(22)【出願日】2015年10月28日
(71)【出願人】
【識別番号】596171384
【氏名又は名称】株式会社 徳武製作所
(71)【出願人】
【識別番号】594095349
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也
(72)【発明者】
【氏名】徳武 利洋
(72)【発明者】
【氏名】田代 哲
(72)【発明者】
【氏名】久保田 強
【テーマコード(参考)】
4C080
4F034
【Fターム(参考)】
4C080AA03
4C080AA04
4C080BB02
4C080BB03
4C080BB05
4C080BB06
4C080CC01
4C080HH06
4C080JJ01
4C080KK06
4C080LL06
4C080NN22
4C080NN23
4C080QQ01
4C080QQ11
4F034AA07
4F034BA14
4F034BB04
4F034BB07
4F034BB16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゲル状薬剤中に含まれる薬剤の放出速度が速く、放出速度を変更できる装置の提供。
【解決手段】上部に放出口2を有する容器1内に、マイナスの高電圧が印加される針電極3を設け、針電極3の下方に第一の円筒電極4、上方に第二の円筒電極5を設ける。吸込み口6から第一の円筒電極4に通じるダクト7、第一の円筒電極4の下方にゲル状薬剤収納部9を設け、針電極3の下端32と第一の円筒電極4との間でコロナ放電がなされて、吸込み口6から第一の円筒電極4を通過しゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8表面へと向かう下向流のイオン風を生じさせ、針電極3の上端31と第二の円筒電極5との間でコロナ放電がなされて、上向流のイオン風を生じさせ、ゲル状薬剤収納部9に収納されるゲル状薬剤8中に含まれる水溶性薬剤を蒸散・微粒化させて、微粒化物を第二の円筒電極先端5の放出口2から外部へ放出させる水溶性薬剤を微粒化させる装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に放出口を有する容器内に;
針の両端が上下方向に向いた、マイナスの高電圧が印加される針電極を設け;
前記針電極の下方に第一の円筒電極を設け;
前記針電極の上方に、先端に前記放出口を備えた第二の円筒電極を設け;
前記容器の側面に吸込み口を開口させ;
前記吸込み口から前記第一の円筒電極に通じるダクトを設け;
前記ダクト内に前記針電極の下部を露出させ;
前記第一の円筒電極の下方にゲル状薬剤収納部を設け;
前記ダクト内において、前記針電極の下端と前記第一の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記吸込み口から前記第一の円筒電極を通過し前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤表面へと向かう下向流のイオン風を生じさせ、かつ;
前記針電極の上端と前記第二の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤表面から前記第二の円筒電極を通過し前記放出口へと向かう上向流のイオン風を生じさせ;
前記下向流のイオン風を利用して、前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤を蒸散させ微粒化させて微粒化物とし、;
前記上向流のイオン風を利用して、この微粒化物を上昇させて前記第二の円筒電極先端の前記放出口から外部へ放出させる;
ことを特徴とする、
ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤を微粒化させて放出する装置。
【請求項2】
前記第一の円筒電極の直径が、前記第二の円筒電極の直径より大きいものである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ゲル状薬剤が、ゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んでいるものである、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ゲル化剤が、高吸水性樹脂、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、及びキサンタンガムよりなる群から選ばれた1種以上のものである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ゲル状薬剤が、高吸水性樹脂に水溶性薬剤を取り込んでいるビーズ状のものである、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記水溶性薬剤が、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものである、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤の放出を制御するための制御手段を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記針電極へのマイナスの高電圧の印加を可変式とすることにより、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤の放出を制御させるものである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記針電極へのマイナスの高電圧の印加を間欠的に行うことにより、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤の放出を制御させるものである、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性薬剤を微粒化させて放出する装置に関し、詳しくは、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)を霧化、蒸散させ、微粒化させて微粒化物として放出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消臭剤、芳香剤、除菌剤などは、液状のものが多く用いられている。
しかしながら、例えば自動車用の消臭剤、芳香剤、除菌剤などの場合、液状のものであると、振動などにより、中身が漏れたりするおそれがあるなど、取り扱い性などの点で、液状よりも、ゲル状などのように固体乃至半固体状の方が望ましい場合がある(特許文献1参照)。
【0003】
ゲル状の芳香剤や消臭剤として、例えばカラギーナン、寒天などのゲル化剤に水溶性薬剤(芳香成分など)を染み込ませたゲル状薬剤からなる芳香剤や消臭剤が知られており、さらに近年、ゲル化剤として、高吸水性樹脂(高吸水性ポリマー)が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、このようなゲル状の芳香剤や消臭剤を収納した従来の芳香剤容器では、放出(拡散)速度が十分でなかったり、或いは、放出(拡散)速度を自由に変更したりすることはできず、その改善が望まれていた(例えば、特許文献3の従来技術参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−80681号公報
【特許文献2】特開平6−39023号公報
【特許文献3】特開平9−299469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度が十分に速く、しかもゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を自由に変更することのできる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(9)に関するものである。
(1):上部に放出口を有する容器内に;
針の両端が上下方向に向いた、マイナスの高電圧が印加される針電極を設け;
前記針電極の下方に第一の円筒電極を設け;
前記針電極の上方に、先端に前記放出口を備えた第二の円筒電極を設け;
前記容器の側面に吸込み口を開口させ;
前記吸込み口から前記第一の円筒電極に通じるダクトを設け;
前記ダクト内に前記針電極の下部を露出させ;
前記第一の円筒電極の下方にゲル状薬剤収納部を設け;
前記ダクト内において、前記針電極の下端と前記第一の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記吸込み口から前記第一の円筒電極を通過し前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤表面へと向かう下向流のイオン風を生じさせ、かつ;
前記針電極の上端と前記第二の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤表面から前記第二の円筒電極を通過し前記放出口へと向かう上向流のイオン風を生じさせ;
前記下向流のイオン風を利用して、前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤を蒸散させ微粒化させて微粒化物とし、;
前記上向流のイオン風を利用して、この微粒化物を上昇させて前記第二の円筒電極先端の前記放出口から外部へ放出させる;
ことを特徴とする、
ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤を微粒化させて放出する装置に関するものである。

(2):前記第一の円筒電極の直径が、前記第二の円筒電極の直径より大きいものである、前記(1)に記載の装置に関するものである。

(3):前記ゲル状薬剤が、ゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んでいるものである、前記(1)又は前記(2)に記載の装置に関するものである。

(4):前記ゲル化剤が、高吸水性樹脂、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、及びキサンタンガムよりなる群から選ばれた1種以上のものである、前記(3)に記載の装置に関するものである。

(5):前記ゲル状薬剤が、高吸水性樹脂に水溶性薬剤を染み込ませてこれに取り込まれているビーズ状のものである、前記(3)に記載の装置に関するものである。

(6):前記水溶性薬剤が、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものである、前記(1)〜前記(5)のいずれかに記載の装置に関するものである。

(7):ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤の放出を制御するための制御手段を有する、前記(1)〜前記(6)のいずれかに記載の装置に関するものである。

(8):前記制御手段は、前記針電極へのマイナスの高電圧の印加を可変式とすることにより、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤の放出を制御させるものである、前記(7)に記載の装置に関するものである。

(9):前記制御手段は、前記針電極へのマイナスの高電圧の印加を間欠的に行うことにより、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤の放出を制御させるものである、前記(7)に記載の装置に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る装置によれば、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度の速い放出装置が提供される。
従って、これを消臭装置や芳香拡散装置や除菌装置などとした場合に、消臭能力や芳香拡散能力や除菌能力などに優れたものとなる。

また、本発明に係る装置によれば、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を自由に変更したりすることのできる放出装置が提供される。

本発明に係る装置は、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いる必要がなく、よりシンプルで消費電力も著しく少なく、しかも消臭能力や芳香拡散能力や除菌能力などにも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る装置の原理を示す説明図である。
図2】本発明に係る装置の一実施形態を示す正面からみた説明図である。
図3】本発明に係る装置の一実施形態を示す背面からみた説明図である。
図4】本発明に係る装置の一実施形態を示す平面からみた説明図である。
図5】本発明に係る装置の一実施形態を示す底面からみた説明図である。
図6】本発明に係る装置の一実施形態を示す右側面からみた説明図である。
図7】本発明に係る装置の一実施形態を示す左側面からみた説明図である。
図8図3の中央部縦断面説明図である。
図9】本発明に係る装置の一実施形態を示す斜視説明図である。
図10図9に示される本発明に係る装置の一実施形態を示す斜視説明図において、その下部容器15を引き出し、この下部容器15内のゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8を取り出した状態を示す斜視説明図である。
図11図10において、下部容器15内のゲル状薬剤収納部9から取り出したゲル状薬剤8を、下部容器15内のゲル状薬剤収納部9に戻すと共に、この下部容器15を、本発明に係る装置に戻す様子を矢印にて示した斜視説明図である。
図12】本発明に係る装置を、これを構成する部品に分解したときの、吸込み口付近の部品(中間部容器14)の一例を示す斜視説明図である。
図13図12に示す部品を別の角度からみた斜視説明図である。
図14】試験例1における試験結果を示す写真像図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤を微粒化させて放出する装置に関し、
上部に放出口を有する容器内に;
針の両端が上下方向に向いた、マイナスの高電圧が印加される針電極を設け;
前記針電極の下方に第一の円筒電極を設け;
前記針電極の上方に、先端に前記放出口を備えた第二の円筒電極を設け;
前記容器の側面に吸込み口を開口させ;
前記吸込み口から前記第一の円筒電極に通じるダクトを設け;
前記ダクト内に前記針電極の下部を露出させ;
前記第一の円筒電極の下方にゲル状薬剤収納部を設け;
前記ダクト内において、前記針電極の下端と前記第一の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記吸込み口から前記第一の円筒電極を通過し前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤表面へと向かう下向流のイオン風を生じさせ、かつ;
前記針電極の上端と前記第二の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤表面から前記第二の円筒電極を通過し前記放出口へと向かう上向流のイオン風を生じさせ;
前記下向流のイオン風を利用して、前記ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤を蒸散させ微粒化させて微粒化物とし、;
前記上向流のイオン風を利用して、この微粒化物を上昇させて前記第二の円筒電極先端の前記放出口から外部へ放出させる;
ことを特徴とするものである。
【0011】
以下、本発明に係る装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る装置の原理を示す説明図である。図1中の矢印は、イオン風の流れを示している。
また、図2は本発明に係る装置の一実施形態を示す、正面からみた説明図であり、図3はこれを背面からみた説明図であり、図4は平面からみた説明図であり、図5は底面からみた説明図であり、図6は右側面からみた説明図であり、図7は左側面からみた説明図である。図8は、図3の中央部縦断面説明図(図5のA−A線断面説明図)である。図9は、本発明に係る装置の一実施形態を示す斜視説明図である。
但し、図面は、いずれも本発明の装置を示す概略図である。従って、製品化に際しては、必要に応じて、適宜より実用的な設計をなすことができる。
【0012】
図中、符号1は容器であり、この容器1の上部に放出口2が備えられている。
本実施形態において、容器1は管状を、より詳しくは円筒管状をなしているが、本発明の精神を逸脱しない限り、これに限定されるものではなく、例えば角筒型の管状のものとすることもできる。
【0013】
このような容器1内に、針の両端が上下方向に向いた針電極3が設けられている。
この針電極3には、高電圧、特にマイナスの高電圧が印加される。正放電よりも負放電のほうが高い流速のイオン風を得やすいからである。但し、必要に応じて、プラスの高電圧を印加できるようにしておくこともできる。
針電極3にマイナスの高電圧が印加されることで、針電極3の尖った先端(上端31と下端32のそれぞれ)からコロナ放電を生じさせることができる。
なお、針電極3に高電圧を印加するために、図示されていないが、別途高圧電源装置が備えられ、針電極3に接続されている。
【0014】
なお、高圧電源装置からは、−4,000V〜−15,000Vという、マイナスの高電圧の直流電流が印加される。但し、上記したように、必要に応じて、プラスの高電圧の直流電流を、特に4,000V〜15,000Vという、プラスの高電圧の直流電流を印加できるようにしておくこともできる。
【0015】
針電極3の下方には、詳しくは針電極3の下端32の下方には容器1の底面11よりも上方に、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)が設けられている。
【0016】
また、針電極3の上方には、詳しくは針電極3の上端31の上方であって、放出口2よりも下方には、先端に放出口2を備えた第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)が設けられている。
【0017】
このように本発明に係る装置では、針電極3を、上下の円筒電極、即ち第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)とに共通のものとし、無駄を防いでいる。
通常、マイナスの高電圧(−4,000〜−15,000V)を印加する場合、針電極3側をプラス側(陽極)に、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)側をマイナス側(陰極)とされる。
【0018】
このようにして針電極3と、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)との間に、高電圧の直流電流を印加することにより、針電極3と第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)との間でコロナ放電を行い、針電極3側から第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)側へ向かってと、針電極3側から第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)側へ向かって、それぞれイオン風が流れるようにしている。
【0019】
ここで第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)とは、円筒電極という点では同様であるが、図示するように、その直径や筒の長さが異なったものとされている。特に、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)の直径を、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)の直径より大きいものとしておくことが好ましく、これにより、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)から放出した電子(e-)を、液体表面により広角的に(広い範囲に)当てることができる。但し、必要に応じて、その直径や筒の長さを同様のものとすることも可能である。
【0020】
即ち、まず、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)は、放出した電子(e-)を、後記する、ゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8の表面に広角的に当てて、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤を霧化、蒸散させ微粒化させる反応を促進するため、直径を比較的大きく、筒の長さも比較的短くしている。
一方、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)は、上記のようにして霧化、蒸散させられて微粒化した水溶性薬剤について、確実にマイナスの電荷を帯びさせ、かつ、これを層流で噴出させるため、直径を第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)より小さくして、直径を比較的小さいものとし、しかも筒の長さは第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)より長くして、筒の長さを比較的長いものとしている。
【0021】
針電極3の下方と上方には、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)が、それぞれ円筒形状に設けられ、接地されて、それぞれ針電極3とこれら二つの電極間でコロナ放電がなされて、針電極3と第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)との間では下向流(下降流)のイオン風を、針電極3と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)との間では上向流(上昇流)のイオン風を、それぞれ生じさせている。いずれも円筒電極としていることにより、強いイオン風を生じさせることができる。
なお、コロナ放電は、火花が散るような放電ではなく、また、運転中、万一電極に触れたとしても、静電気程度のものであり、安全性についての心配はない。必要に応じて、適宜、既知の安全回路を組み込むことができる。
【0022】
さらに、容器1の側面12には、吸込み口6が開口している。
この吸込み口6付近の形状、構造は、図1図2図8図9図10図11図12図13などに詳しく示されている。
【0023】
容器1の側面12に開けられた吸込み口6から、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)に通じるダクト7が設けられ、一つの流路を形成している。
これにより、管状の容器1の内側に、ダクト7を出現せしめて、いわゆる二重管構造としている。
即ち、吸込み口6より内側のダクト7を通じて外気を取り込むようにすると共に、このダクト7の外側と管状の容器1の内側との間に、もう一つの流路を形成せしめている。
【0024】
このダクト7内には、針電極3の下端32を含む下部だけを露出させており、針電極3の上端31を含む上部は、このダクト7内には露出させられていない。
このため、上記のように二つの流路が形成されていることと相俟って、一つの針電極3だけで、その上下に存在する、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)と第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)との間のコロナ放電に対応し得るものとなっている。
【0025】
さらに、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)の下方には、ゲル状薬剤8を収納した、ゲル状薬剤収納部9が設けられている。
ゲル状薬剤は、ゲル化剤と水溶性薬剤とを組合せたものであって、ゲル化剤に水溶性薬剤を取り込むことにより、ゲル化剤に水溶性薬剤が取り込まれている形にして用いられるものである。
このゲル状薬剤8としては、例えばゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んだものを密封したものが用いられるが、これに限られることなく、ゲル化剤と水溶性薬剤が別々に配置されたものを開封して、ゲル化剤に水溶性薬剤を取り込むようにしたものであってもよい。
【0026】
ここで、ゲル化剤としては、高吸水性樹脂、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムなどを挙げることができ、本発明においては、これらのうちの1種を単独で、或いは、これらの2種以上を組合せて用いることができる。
【0027】
このうち高吸水性樹脂(Super AbsorbentPolymer;略称 SAP)は、高吸水性ポリマー或いは高吸水性高分子などとも呼ばれ、多量の水を吸水してゲル化し、吸水した水を保持する機能を有する高分子材料である。
この高吸水性樹脂(高吸水性ポリマー)としては、ポリアクリル酸系樹脂などの合成ポリマー系のものと;デンプン系、セルロース系などの天然物由来系のものと;が挙げられ、本発明においては、これらのいずれを用いることができる。
【0028】
高吸水性樹脂のうち、ポリアクリル酸系樹脂、なかでもポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩系樹脂は、非常に親水性が高く、さらに網目構造に架橋し、3次元に架橋した分子構造を有していることから、高い吸水性・保水性を持つゲルとなっている(自重の数百倍から約千倍までの吸水力・保水力がある)ので、本発明において好ましく用いられる。但し、ポリアクリル酸塩系樹脂は、吸水力・保水力が高いことから、一旦吸収した水などは、多少の圧力をかけてもほとんど放出しないという特質がある。
【0029】
ゲル状薬剤8は、上記した如きゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んでいるものである。
上記した如きゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んでいるゲル状薬剤とする態様としては、特に制限はない。
例えば、ゲル化剤として、高吸水性樹脂を用いた場合には、高吸水性樹脂に水溶性薬剤を染み込ませるなどして取り込んだ後に、ビーズ状に膨らませることで、「高吸水性樹脂に水溶性薬剤を染み込ませてこれに取り込まれているビーズ状のゲル状薬剤」を得ることができる。また、ビーズ状の他、粉状、短冊状などの各種形状のゲル状薬剤を得ることもできる。
このように、ゲル化剤として、高吸水性樹脂を用いたゲル状薬剤は、本来、ゲル状薬剤中に染み込ませるなどして、これに取り込まれている水溶性薬剤を少しずつ放出することができるものである。
【0030】
本発明に係る装置によれば、コロナ放電により発生した前記下向流のイオン風を利用して、前記ゲル状薬剤収納部9(載置部)に収納(載置)されているゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤を霧化、蒸散させ微粒化させて微粒化物とし、さらに、前記上向流(上昇流)のイオン風を利用して、この微粒化物を上昇させて前記第二の円筒電極5先端の前記放出口から外部へ放出させることから、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を速めることができる。従って、これを消臭装置や芳香拡散装置や除菌装置などとした場合に、消臭能力や芳香拡散能力や除菌能力などに優れたものとなる。さらに、本発明に係る装置によれば、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を自由に変更したりすることができる。
【0031】
また、例えば、ゲル化剤として、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムなどを用いた場合には、これらは水溶性薬剤と一緒にするとこれを吸収し、取り込んでゲル化することから、これらを混合することにより、このようなゲル化剤に、水溶性薬剤を取り込むことができる。
【0032】
ここで、水溶性薬剤は、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものである。
従って、ゲル状薬剤中には、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含む水溶性薬剤が取り込まれている。
それ故、このゲル状薬剤収納部9には、ゲル化剤に、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含む水溶性薬剤を取り込んでいるゲル状薬剤8が収納される。
【0033】
これら芳香成分、除菌成分、及び消臭成分としては、市販されているものなど、公知のものを用いることができる。
ここで、芳香成分としては、例えば植物に由来する天然香料、精油(エッセンシャルオイル)や、これらの他に合成香料を含むアロマオイルなどを挙げることができる。
また、除菌成分としては、例えば二酸化塩素、次亜塩素などを挙げることができる。
さらに、消臭成分としては、例えば重曹、クエン酸、カテキン、白金、植物系抽出液などを挙げることができる。
【0034】
本発明に係る装置は、図8図10図11などに示したように、これを幾つかの部品に分けて作製し、分解可能なものとしておくことができる。
【0035】
図8は、本発明に係る装置の一実施形態を示す、背面からみた説明図(図3)の中央部縦断面説明図(図5のA−A線断面説明図)であると共に、分解されたときの構成部品をも示す図でもある。
次に、図9は、本発明に係る装置の一実施形態を示す斜視説明図である。
また、図10は、図9に示される本発明に係る装置の一実施形態を示す斜視説明図において、その下部容器15を引き出し、この下部容器15内のゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8を取り出した状態を示す斜視説明図である。
また、図11は、図10において、下部容器15内のゲル状薬剤収納部9から取り出したゲル状薬剤8を、下部容器15内のゲル状薬剤収納部9に戻すと共に、この下部容器15を、本発明に係る装置に戻す様子を示す斜視説明図である。
【0036】
さらに、図12は、本発明に係る装置を、これを構成する部品に分解したときの、吸込み口付近の部品(中間部容器14)の一例を示す斜視説明図であり、図13は、図12に示す部品を別の角度からみた斜視説明図である。
また、図14は、試験例1における試験結果を示す写真像図である。
【0037】
本発明に係る装置は、上から順に、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)、上部容器13、吸込み口6が開口している中間部容器14、及び下部容器15と;に分けられており、下部容器15内には、前記したゲル状薬剤収納部9が設けられている。この下部容器15内のゲル状薬剤収納部9に、ゲル状薬剤8が収納されている。
なお、ゲル状薬剤収納部9の上部には、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)が備えられている。
【0038】
図10図11では、ゲル状薬剤8は、カートリッジ式のもの(カートリッジカップ)とされており、これを下部容器15内のゲル状薬剤収納部9に収納・装着して用いる。
なお、カートリッジ式のもの(カートリッジカップ)の場合、使用時には、カートリッジ式(カートリッジカップ)のゲル状薬剤8の表面に貼られている封鎖部材(シール部材)を除去して、ゲル状薬剤表面を露出させる。
【0039】
なお、上記カートリッジカップを複数、例えば2連のものとすることができ、この場合、ゲル状薬剤の種類や用途を異なるものとすることができる。
具体的には例えば、2連タイプとした場合には、朝夕などで、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤、例えば芳香成分の種類を換えることが、1連のものよりも容易となる。
【0040】
また、前記したように、このゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8は、前記ゲル化剤に、前記水溶性薬剤を、取り込んでいるものである。
【0041】
ゲル状薬剤収納部9の上部には、前記したように、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)が備えられている。
また、針電極3は、吸込み口6が開口している中間部容器14の針電極取付け部17に上下方向を向いて取り付けられており、針電極3の上端31は、上部容器13内に存在せしめられ、針電極3の下端32は、吸込み口6が開口している中間部容器14内に存在せしめられるようになっている。
【0042】
本発明に係る装置においては、ダクト7内において、針電極3の下端32と第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)との間でコロナ放電がなされて、吸込み口6から第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)を通過し前記ゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8表面へと向かう下向流(下降流)のイオン風を生じさせる。
【0043】
一方、本発明に係る装置においては、ダクト7外において、針電極3の上端と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)との間でコロナ放電がなされて、ゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8表面から、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)を通過し放出口2へと向かう上向流(上昇流)のイオン風を生じさせる。
【0044】
そして、本発明に係る装置においては、コロナ放電により発生した上記下向流(下降流)のイオン風を利用して、ゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤を霧化、蒸散させ微粒化させて微粒化物とする。
なお、このとき、この微粒化物にマイナスの電荷を帯びさせている。
即ち、コロナ放電により発生した上記下向流(下降流)のイオン風を、ゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤8に当てて、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤を霧化、蒸散させ微粒化させて微粒化物とすると共に、この微粒化物にマイナスの電荷を帯びさせている。
【0045】
次いで、コロナ放電により発生した上記上向流(上昇流)のイオン風を利用して、この微粒化物(マイナスの電荷を帯びている微粒化物)を上昇させて前記第二の円筒電極(上側の円筒電極5)先端の放出口2から外部へ放出させる。
このようにして、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤を霧化、蒸散させ微粒化させた微粒化物(マイナスの電荷を帯びている微粒化物)を放出するものである。
【0046】
本発明に係る装置においては、コロナ放電により発生したイオン風を用いていることから、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を速くすることができるものと考えられる。
特に、ゲル化剤として、高吸水性樹脂を用いた場合、一般的には、その網目構造の中に取り込んでいる水溶性薬剤を、簡単には放出せず、少しずつ放出するものであるが、本発明に係る装置においては、コロナ放電により発生したイオン風を用いていることから、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を速くすることができるものと考えられる。
また、本発明に係る装置においては、マイナスの高電圧を印加し、微粒化物にマイナスの電荷を帯びさせていることから、マイナス同士であるイオンの反発力によって高吸水性樹脂(特にポリアクリル酸塩系樹脂)の網目構造の中に取り込まれている水溶性薬剤をより速く放出することができるのではないかとも考えられる。
【0047】
本発明に係る装置は、基本的には、上記した如き構成を有するものであるが、さらに、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤の放出を制御するための制御手段を有するものとすることができる。
【0048】
このような制御手段としては、例えば前記針電極へのマイナスの高電圧の印加を可変式とした手段が挙げられる。このように電圧を変更可能とすることにより、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤の「放出」、より詳しくはその「放出速度」を自在に制御(変更)することができる。
【0049】
また、このような制御手段としては、例えば前記針電極へのマイナスの高電圧の印加を間欠的に行う手段(タイマースイッチなど)が挙げられる。
このように、前記針電極へのマイナスの高電圧の印加を間欠的に行うことができるようにすることにより、放出速度自体は変わらずとも、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤の放出、より詳しくはその放出量、を制御(変更)することができる。
【0050】
さらに、上記制御手段を組合せることにより、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤の放出速度を自在に制御(変更)すると共に、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤の放出量を制御(変更)することができる。
【0051】
以上の構成による本発明に係る装置によれば、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いていないにもかかわらず、ゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度が速く、しかもゲル状薬剤8中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を自由に変更したりすることのできる装置が提供される。
従って、本発明に係る装置は、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いるものに比べて、よりシンプルで消費電力も著しく少ない。しかも消臭能力や芳香拡散能力や除菌能力などにも優れたものである。
【0052】
本発明においては、固体乃至半固体状のゲル状薬剤を用いていることから、液体状の薬剤を用いた方法や、自然蒸散させた場合と比べて、温度・湿度の影響を受けづらく、安定した蒸散が期待できる。
また、本発明に係る装置は、液体状の薬剤を用いた場合と比べて、取り扱いを簡素化できる。
次に、例えば単なる消臭ビーズは、表層部より順番に蒸散するものと認められるのに対して、本発明に係る装置では、ゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤は、受け皿を構成している下部容器の表面積に応じて、安定した蒸散量で表層部が蒸散することで、深層部より安定して水溶性薬剤を供給し、蒸散させることができる。
本発明に係る装置によれば、最後まできれいにゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤を放出することができる。
【0053】
さらに、上記した本発明に係る装置を、加湿空気清浄装置などと組合せたものとすることができる。
ここで加湿空気清浄装置としては、市販されているものなど、公知のものを用いることができ、特に限定されない。
このように、本発明に係る装置と加湿空気清浄装置とを備えたものとした場合、両装置を一緒に運転させても、或いは、それぞれ別々に運転させてもよく、季節や時間など様々な条件に応じて、適宜選定することができる。
【0054】
上記した本発明に係る装置は、家庭内やオフィス内、工場内などの室内・屋内で用いられる他に、自動車用などとして、自動車やバスの車体などに備え付けることができる。
上記した本発明に係る装置を自動車の車体などに備え付ける場合には、上記した本発明に係る装置を、これを覆うようなケースなどに入れて取付ければよい。
【0055】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【実施例】
【0056】
以下に本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0057】
<試験例1>
高吸水性樹脂(ポリアクリル酸ナトリウム)に消臭剤を取り込んでいる消臭ビーズ(エステー株式会社製)の蒸散試験を行った。
具体的には、以下のようにして3通りの蒸散試験を行った。
【0058】
先ず第1に、図1〜13に示す装置を用いて、高吸水性樹脂(ポリアクリル酸ナトリウム)に消臭剤を取り込んでいる消臭ビーズの蒸散試験を24時間行い、24時間後の写真を撮影した(本発明品)。
当該装置の針電極3に印加される直流電流の電圧、電流、消費電力は、次のとおりであった。
・電圧:−7,000V
・電流:0.02mA
・消費電力:0.14Wh
【0059】
比較のために、未使用の消臭ビーズ(比較対照品1)と、これを24時間自然に蒸散させたもの(比較対照品2)とについても、それぞれ写真を撮影した。
【0060】
これらの結果を、図14に示す。図14(A、B、C)は、試験例1における試験結果を示す写真像図である。
図14Aは、未使用の消臭ビーズ(比較対照品1)の状態を示す写真像図であり、図14Bは、自然に蒸散させた24時間後の消臭ビーズ(比較対照品2)の状態を示す写真像図であり、図14Cは、図1〜13に示す装置で24時間運転後の消臭ビーズ(本発明品)の24時間後の状態を示す写真像図である。
【0061】
図14Cからは、図1〜13に示す装置によれば、24時間運転後には、未使用の消臭ビーズ(比較対照品1)と比べて、各消臭ビーズは著しく小さくなっており、本発明によれば、各消臭ビーズは、吸水していた水溶性薬剤を、ほぼ蒸散させることができたことが分かる。
即ち、本発明によれば、各消臭ビーズは、24時間で、各粒がそれぞれ吸水していた水溶性薬剤を、ほぼ蒸散させることができたと認められる。
なお、図1〜13に示す装置の放出口2からは、微粒化された水溶性薬剤(消臭剤)が、1.2m/sという、速い速度で放出されていた。
【0062】
一方、図14Bからは、自然に蒸散させた24時間後の消臭ビーズ(比較対照品2)は、大きさが未使用の消臭ビーズ(比較対照品1)の8〜9割程度であり、消臭ビーズが吸水していた水溶性薬剤は、まだ大半が残っているものと認められる。
【0063】
図14A、B、Cから明らかなように、図14Cに示す本発明品の消臭ビーズの大きさは著しく小さくなっている。
従って、本発明によれば、自然蒸散に比し、消臭ビーズ中に取り込まれている水溶性薬剤の放出(拡散)速度の速い放出装置が提供されることが分かる。
【0064】
なお、本発明の装置によれば、微粒化させた水溶性薬剤にマイナスの電荷を帯びさせ、空気中などの空間に効率よく放出することができる。
即ち、放出される微粒化させた水溶性薬剤は、マイナスに帯電しており、放出された後は、プラスに帯電している場所へと向かう。
一般的な室内においては、人、衣服、壁紙、カーテン等はプラスに帯電しやすくなっている。
従って、本発明の装置により放出された、マイナスの電荷を帯びた、微粒化させた水溶性薬剤は、プラスに帯電している人、衣服、絨毯、カーテン等へと向かうことになる。
このため、本発明の装置によれば、微粒化させた水溶性薬剤として、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものを用いると、これら成分を含む微粒化させた水溶性薬剤を、より芳香や除菌や消臭などが必要なところへと向かわせることができる。
従って、通常、空気中に放出される、微粒化させた水溶性薬剤が、単に空気中などの空間を浮遊しているだけであるのに比べると、本発明の装置によれば、人に芳香を与える効果をより強くすることができ、また除菌や消臭をより効果的なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
ここで本発明に係る装置を、例えば芳香成分を放出させる装置(芳香拡散装置)に適用した場合、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いる必要がなく、よりシンプルで消費電力も著しく少なくて効率が良い上に、芳香成分の放出(拡散)速度が速く、人に芳香を与える効果をより強くすることができることから、アロマテラピーをはじめ、認知症の予防など、幅広い分野で利用することが期待される。
また、本発明に係る装置を、例えば消臭成分を放出させる装置(消臭装置)に適用した場合、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いる必要がなく、よりシンプルで消費電力も著しく少なくて効率が良い上に、消臭成分の放出(拡散)速度が速く、消臭効果をより強くすることができる
【符号の説明】
【0066】
1 容器
2 放出口
3 針電極
4 第一の円筒電極(下側の円筒電極)
5 第二の円筒電極(上側の円筒電極)
6 吸込み口
7 ダクト
8 ゲル状薬剤
9 ゲル状薬剤収納部
11 容器1の底面
12 容器1の側面
13 上部容器
14 中間部容器
15 下部容器
17 針電極取付け部
31 針電極の上端
32 針電極の下端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14