【解決手段】このガイドワイヤ10は、芯線20と、該芯線20の外周に装着されたコイル部材30とを有し、芯線20の先端部23とコイル部材30の先端部とが、先端固着部35を介して互いに固着されており、芯線20の先端側外周であってコイル部材30の内側には、変形させたときに元の形状に戻ろうとする形状復元性が、芯線20よりも劣る付形用線材40が配置されており、該付形用線材41は、その先端43のみが前記先端固着部35に固着されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明のガイドワイヤの一実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、この実施形態のガイドワイヤ10は、芯線20と、この芯線20の外周に装着されたコイル部材30とを有している。
【0016】
前記芯線20は、一定の外径A1にて所定長さで伸びる基部21と、この基部21の先端側に設けられ、該基部21よりも小径の先端部23とを有している。また、前記先端部23は、前記基部21の先端から芯線先端に向かって次第に縮径されつつ伸びるテーパ部24と、同テーパ部24の先端から一定径A2で直線状に伸びる細径部25とを有している。なお、前記先端部23としては、その全体が先端に向かって次第に縮径する先細テーパ形状としてもよく、先端に向かって段階的に縮径させて段状をなす構造としてもよく、特に限定されない。
【0017】
前記基部21の外径A1は、0.1〜0.9mmであることが好ましく、0.26〜0.46mmであることがより好ましい。また、先端部23の細径部25の外径A2は、0.01〜0.2mmであることが好ましく、0.075〜0.1mmであることがより好ましい。更に、芯線20の最先端からテーパ部先端までの長さA3(細径部25の長さ)は、10〜100mmであることが好ましく、30〜50mmであることがより好ましい。また、芯線20のテーパ部24の長さA4は、50〜1000mmであることが好ましく、150〜500mmであることがより好ましい。
【0018】
なお、上記芯線20としては、例えば、Ni−Ti系合金,Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co,Cr,Mn,Nb等)合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金等の超弾性合金や、ステンレス、ピアノ線材などを用いることができ、あるいは、W、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなるX線不透過性金属を用いることもできる。また、ステンレスとしては、所定温度(例えば、400〜500℃)で加工硬化処理を施した、高抗張力材を用いることもできる。
【0019】
また、この実施形態における前記コイル部材30は、線径B1の線材31を密着して巻回されて形成された密巻き構造をなしている。このコイル部材30は、前記芯線20の先端部23の外周に配置されており、該コイル部材30の先端部と、芯線20の先端部23の最先端とが、先端が丸みを帯びた先端固着部35を介して互いに固着されている。
【0020】
更に、この実施形態のコイル部材30は、先端部が先端固着部35に固着された状態で、芯線20のテーパ部24の途中に至る長さで形成されており、その基端部が芯線20に対して基端固着部37により固着されている(
図1参照)。また、コイル部材外側には、後述する樹脂層50が被覆されるが、コイル部材30が密巻きであるため、コイル部材30内に樹脂層50を形成する樹脂が充填されず、コイル部材30の内側に空隙が確保されるようになっている(
図1参照)。なお、コイル部材30の内側に、別途樹脂層が被覆されていたり、後述する付形用線材40の先端41以外に樹脂が被着して、該樹脂を介して付形用線材40が芯線20やコイル部材30に固着されていてもよいが、付形用線材40の付形時の動きや変形を妨げるものでなければよい。すなわち、コイル部材30を密巻きにすることで、その外側に被覆される樹脂層50の樹脂が、コイル部材30内へ入り込むことが規制され、付形用線材40の付形時の動きや変形が妨げられることのないように構成されている。
【0021】
前記コイル部材30を形成する線材31の外径B1は、0.02〜0.08mmであることが好ましく、0.04〜0.06mmであることがより好ましい。また、コイル部材30の内径B2は、0.1〜0.9mmであることが好ましく、0.1〜0.2mmであることがより好ましい。更に、コイル部材30の外径B3は、0.14〜1.06mmであることが好ましく、0.18〜0.32mmであることがより好ましい。
【0022】
また、コイル部材30の長さB4は、10〜200mmであることが好ましく、30〜50mmであることがより好ましく、後述する付形用線材40よりも長く、コイル部材内に付形用線材40を配置可能な長さであることが好ましい。
【0023】
コイル部材30の材質としては、例えばW、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなるX線不透過性金属や、Ni−Ti系合金,Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co,Cr,Mn,Nb等)合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金等の超弾性合金や、ステンレスなどを用いることができる。
【0024】
なお、上記の先端固着部35及び基端固着部37としては、例えば、紫外線硬化型のアクリレート樹脂や、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、アクリレート系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤等や、或いは、SnやAgロウ等のロウ材であってもよく、特に限定はされない。
【0025】
そして、このガイドワイヤ10は、芯線20の先端側外周であってコイル部材30の内側に、変形させたときに元の形状に戻ろうとする形状復元性が、芯線20よりも劣る付形用線材40が配置されており、この付形用線材40は、その先端41のみが前記先端固着部35に固着されていて、基端43は芯線20に対して遊離している。
【0026】
より具体的に説明すると、
図1に示すように、この実施形態における付形用線材40は、芯線20の外周とコイル部材30の内周との間の、樹脂層50の樹脂が入り込んでいない空隙に配置(すなわち、付形用線材40の付形時の変形が、樹脂によって規制されない状態)されるものであってその先端41が先端固着部35に固着されて、該先端固着部35を介して芯線20の先端部とコイル部材30の先端部に固定されていると共に、芯線20の細径部25に対してほぼ平行となるように芯線20の軸心に沿って延びて、その基端43が芯線20のテーパ部24の先端寄りの位置に配置されており、該基端43が芯線20及びコイル部材30に対して遊離した構造をなしている。なお、本発明において、「遊離」というのは、固着されていないことを意味し、空隙をもって離れている必要はなく、互いに当接している状態を含むものである。
【0027】
図3を参照して、本発明における「形状復元性」について説明する。すなわち、付形用線材40及び芯線20の外径を同一とし、外径D2の円形断面をなした付形用部材1を、各線40,20の先端から所定距離L1の位置に当接させ(
図3(a)参照)、この状態で、付形用部材1の外周に、各線40,20を最先端に至るまで巻き付けて変形させ(
図3(b)参照)、その後、各線40,20を解放したときに、元の形状に戻ろうとする性質を、付形用線材40及び芯線20の「形状復元性」とする(
図3(c)参照)。そして、
図3(c)に示すように、付形用線材40の方が芯線20よりも元の形状に戻りにくく、芯線20よりも付形用線材40の形状復元性が劣るようになっている。
【0028】
したがって、付形用部材1を用いてガイドワイヤ10の先端部を所定の曲げ形状に付形すると、形状復元性のよい芯線20が元の形状に戻ろうとするものの、芯線20よりも形状復元性の劣る付形用線材40が元の形状に戻ることを規制して、ガイドワイヤ10の先端部を所定の曲げ形状に付形した状態に保持することができる(
図2参照)。なお、
図2では、ガイドワイヤ10の先端部を略J字状に付形された状態が示されているが、略J字状のみならず、ループ状や、所定角度のアングル形状等に付形してもよく、特に限定はされない。
【0029】
また、
図2に示すように、ガイドワイヤ先端部を付形用部材1を用いて付形させる際には、付形用線材40が芯線20に接触する場合もあるが、この場合であっても、付形用線材40の基端が芯線20から遊離していて、芯線20の外周に対して摺接可能であるため、ガイドワイヤ先端部の柔軟性が損なわれることはない。
【0030】
上記実施形態の付形用線材40は、断面円形や、断面矩形状、断面楕円形等で所定長さC1で伸びた線状をなしている。この実施形態における付形用線材40は、その基端43が芯線20のテーパ部24の先端に至る位置まで伸びているが(
図1参照)、その長さC1は、10〜100mmであることが好ましく、20〜50mmであることがより好ましい。また、この付形用線材40の最大幅C2(断面円形の場合は外径)は、0.01〜0.4mmであることが好ましく、0.02〜0.1mmであることがより好ましい。
【0031】
なお、上記の付形用線材40の最大幅C2に関連して、この最大幅C2と、芯線20の細径部25の外径A2と、コイル部材30の内径B2との関係は、B2>A2+C2となるように構成されている。
【0032】
上記の付形用線材40としては、例えば、ステンレスや、ピアノ線材、焼きなましたNi−Ti系合金などを用いることができる。また、ステンレスとしては、所定温度(例えば、600〜700℃)で焼きなまし処理を施したなまし線を用いることが好ましい。
【0033】
更に、コイル部材30の外側には樹脂層50が被覆されており、密巻き構造をなしたコイル部材30の内側には、樹脂が充填されていない構造をなしている。この実施形態では、
図1に示すように、ガイドワイヤ全体、すなわち、先端固着部35の外側、コイル部材30の外側、基端固着部37の外側、及び、芯線20のコイル部材未装着部分の外側に、樹脂層50が被着されており、ガイドワイヤ先端から基端に至るまでほぼ同一外径となっている。なお、この樹脂層50は、例えば、溶剤で膨潤させた樹脂チューブや熱収縮チューブを、芯線20やコイル部材30の外周に配置後に溶剤の揮発や熱収縮で被せたり、芯線20やコイル部材30の外周に樹脂を押出し成形したりすることで形成することができる。
【0034】
また、樹脂層は、ガイドワイヤ全体に被着されていなくても、コイル部材30だけを覆う形状であってもよい。例えば、樹脂層を、コイル部材30の先端から基端部を覆うと共に、コイル部材30の基端部からガイドワイヤの基端に向かって縮径するようにテーパ部を設けた形状として(すなわち、コイル部材30全周と、該コイル部材30の基端部と芯線20との段部を覆うような形状)、ガイドワイヤの基端側を樹脂層で被覆しないようにしてもよい。
【0035】
また、上記樹脂層50の外周には、親水性樹脂膜55が被覆されている。なお、ガイドワイヤ10の外径D1は、最も外側に配置された親水性樹脂膜55を含めて、その外径D1が0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.36〜0.46mmであることがより好ましい。
【0036】
前記樹脂層50は、例えば、ポリウレタンや、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂などを採用することができる。
【0037】
また、前記親水性樹脂膜55は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体等の親水性樹脂などを採用することができる。この親水性樹脂膜55が、樹脂層50の外周に被覆されている場合には、ガイドワイヤ10の先端部における滑り性の更なる向上を図ることができる。
【0038】
次に、上記構造からなる本発明のガイドワイヤ10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0039】
この実施形態におけるガイドワイヤ10は、例えば、胆管や膵管、血管、尿管、気管等の各種の管状器官や、体腔等の人体組織の所定位置に、カテーテルを配置したりステントを留置したりする際に用いることができ、使用箇所については特に限定されない。
【0040】
使用に際しては、ガイドワイヤ先端部の外周に、付形用部材1を押し当てつつ、該付形用部材1をしごくように往復移動させることで、ガイドワイヤ10の先端部を、例えば、略J字状をなすように付形することができる。なお、ガイドワイヤ10の先端部は、ループ状や所定角度のアングル形状等に付形してもよく、特に限定はされない。
【0041】
このとき、このガイドワイヤ10においては、芯線20の先端側外周であってコイル部材30の内側に、付形用線材40の先端41が、先端固着部35に固着されて配置されており、付形用線材40がガイドワイヤ先端に至るまで存在しているので、ガイドワイヤ10の最先端に至るまで、所定形状に付形しやすくすることができる。
【0042】
なお、ガイドワイヤ先端部の付形時に、付形用線材40が芯線20の外周に当接しても、付形用線材40の基端部が芯線20に対して遊離しているので、同付形用線材40が芯線20の外周に摺接するようにして滑って動き、ガイドワイヤ先端部の付形がしにくくなることはない。
【0043】
上記のように付形したガイドワイヤ10は、例えば、次のようにして用いることができる。付形状態のガイドワイヤ先端部はカテーテルやシース等の医療用チューブ内に挿入しにくいことから、まず、ガイドワイヤ10の付形した先端部を少し真直ぐに伸ばして、その最先端を医療用チューブ内に挿入していく。そして、医療用チューブの先端開口からガイドワイヤ10の先端部を挿出させると、ガイドワイヤ10の先端部が付形形状に戻ろうとするため、先端部がやや曲がった形状になる。このため、ガイドワイヤ10の手元側(基端部側)を回転させることにより、先端部の方向を変えて、管状器官の分岐部等(例えば、胆管奥側の分岐部等)で、所定の管状器官を選択して挿入しやすくすることができる。
【0044】
このように、ガイドワイヤ10の手元側(基端部側)を回転操作して、ガイドワイヤ10の先端部を所望の分岐管に挿入可能な位置とするが(血管選択)、このガイドワイヤ10においては、芯線20の先端部23が先端固着部35を介してコイル部材30の先端部や付形用線材40の先端41に固着されていて、ガイドワイヤ基端からガイドワイヤ先端に至るまで芯線20が存在しているので、ガイドワイヤ10の手元側で回転操作をした場合の、トルク伝達性を向上させることができる。その結果、ガイドワイヤ手元側での回転操作を、ガイドワイヤ先端側にスムーズに伝達させて、手元側の回転操作に対するガイドワイヤ先端部側での回転動作の追随性を高めることができるので、所望の分岐管を選択してガイドワイヤ10を挿入しやすくすることができる。
【0045】
また、ガイドワイヤ10の先端部は、例えば、管状器官の内壁等に当接したときに、柔軟に曲がることが要求されている。すなわち、ガイドワイヤ先端が所定の壁等に突き当たるときの荷重(突き当て荷重)が低く、曲がりやすい性能であることが求められている。
【0046】
このとき、このガイドワイヤ10においては、付形用線材40は、その先端41のみが先端固着部35に固着されていて、基端43は芯線20に対して遊離しているので、ガイドワイヤ先端の突き当て荷重が高くなることを抑制することができ、ガイドワイヤ先端側の柔軟性を確保することができ、ガイドワイヤ先端が管状器官の内壁等に突き当たったりした場合に、ガイドワイヤ先端を曲がりやすくして、管状器官の内壁等を損傷しないようにすることができる。
【0047】
また、この実施形態のガイドワイヤ10においては、コイル部材30が密巻き構造をなしており、該コイル部材30の外側には樹脂層50が被覆され、コイル部材30の内側には樹脂が充填されていない構造をなしている(
図1参照)。
【0048】
このように、コイル部材30の外側に樹脂層50が被覆されているので、金属等からなるコイル部材30には、直接コーティングしにくい、親水性樹脂等を容易にコーティングすることができるという利点が得られる。
【0049】
また、コイル部材30が密巻き構造をなしているので、その外側に樹脂層50が被覆されても、コイル部材内周に樹脂が流入しづらく、コイル部材30の内側に樹脂が充填されず、付形用線材40の基端43が、芯線20及びコイル部材30に対して遊離した構造とすることができる。このため、ガイドワイヤ先端部の付形時に、付形用線材40の動きや変形が規制されることがなく、同付形用線材40をガイドワイヤ10の先端固着部35のみに固着された構造を維持することができ、ガイドワイヤ先端の突き当て荷重が高くなることを、より効果的に抑制することができる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0051】
1.試料の作製
(1)実施例の製造
図1に示す実施形態と同様の構造の、実施例のガイドワイヤを製造した。
芯線20は、Ni−Ti系合金で製造されており、細径部25の外径A2は0.075mm、同細径部25の長さA3は15mm、基部21の外径A1は0.34mmである。また、付形用線材40は、断面円形のステンレスからなり、その最大幅C2(外径)が0.03mmであり、その長さC1は40mmである。更に、コイル部材30は、線径B1が0.05mmで、その外径B3が0.28mmであり、長さB4が50mmである。また、先端固着部35及び基端固着部37は、紫外線硬化性樹脂からなっている。更に、樹脂層50はウレタン樹脂である。なお、親水性樹脂膜55は被覆されていない(そのため、ガイドワイヤの外径D1は、親水性樹脂膜55を含まない外径である)。また、ガイドワイヤの外径D1は0.36mmであり、全長は1500mmである。
【0052】
(2)比較例1の製造
図4(a)に示す構造の比較例1のガイドワイヤを製造した。この比較例1は、芯線20の細径部25が先端固着部35に固着されておらず、付形用線材40の基端43が、芯線20の細径部25に固着されている点を除いて、実施例1と同様である。また、付形用線材40の基端43と、芯線20の細径部25とは、接着層45を介して接着されており、その接着範囲は10mmである。
【0053】
(3)比較例2の製造
図4(b)に示す構造の比較例2のガイドワイヤを製造した。この比較例2は、付形用線材40の先端41が先端固着部35に固着されておらず、付形用線材40の全長40mmの範囲全てが接着層45を介して芯線20に固着されている点を除いて、実施例1と同様である。また、付形用線材40の先端41と先端固着部35との間の未接着部の長さは10mmである。
【0054】
(4)比較例3の製造
図4(c)に示す構造の比較例3のガイドワイヤを製造した。この比較例3は、付形用線材40が存在しない点を除いて、実施例1と同様である。
【0055】
2.付形性確認試験
(1)試験方法
図5(a)に示すように、実施例及び比較例1〜3のそれぞれ(以下、「各ガイドワイヤ」ともいう)を、最先端から80mmの部分が突出するように、高さが10mmの挟持ブロック3,3で挟み込んで固定する。すなわち、各ガイドワイヤの基端側の10mmの部分が挟持固定されている。そして、挟持ブロック3から10mm離れた位置に、外径が0.36mmの円形断面の付形用部材1を配置して、
図5(b)に示すように、付形用部材1の外周に、各ガイドワイヤを最先端まで巻き付ける。その後、付形用部材1から各ガイドワイヤを開放して、どの程度元の形状に戻ったかを確認した。その結果写真を、
図6〜9に示す。
【0056】
(2)試験結果
図6が実施例の試験結果、
図7が比較例1の試験結果、
図8が比較例2の試験結果、
図9が比較例3の試験結果である。また、下記表1は、試験結果をまとめた表である。
【0057】
【表1】
【0058】
図7に示すように、比較例1では、最先端から25mmまでは緩やかに屈曲して付形されているものの、25mmの位置で急角度で屈曲してキンクしている。これは、付形用線材40の基端43及び芯線20が重なって接着された部分と、その近傍の未接着部分との剛性変化が大きく、キンクしたと考えられる。
【0059】
図8に示すように、比較例2では、最先端から12mmの位置から40mmの範囲では付形されたものの、最先端から12mmの範囲は付形されていない。これは付形用線材40が存在していない位置と、ほぼ重なっている。
【0060】
図9に示すように、比較例3では、最線端から15mmまでは付形している。すなわち、最先端から5mmまでは先端固着部35により付形され、最先端から5mmの位置から15mmの範囲は、芯線20が細いため塑性変形により付形したものと考えられる。
【0061】
上記の比較例1〜3の結果に対して、実施例1は、
図6に示すように、最先端から40mmの位置まで、キンクを生じることなく連続して付形可能であることが分かった。これは付形用線材40の長さとほぼ一致しており、その結果、付形用線材40によって、ガイドワイヤ最先端からしっかりと付形できることが分かり、本発明の有用性を確認できた。
【0062】
3.トルク伝達性試験
(1)試験方法
実施例及び比較例1〜3を、上記の付形性確認試験のものとすべて同じ条件で製造した。また、筒所のチューブホルダ6を、
図10に示すように、二重のループ形状(直径がr及び2r)となるように緩く巻回した状態として、市販のトルク伝達装置の台座5に固定する。そして、各ガイドワイヤを、
図10に示すように、前記チューブホルダ6の内部に挿入して、その両端開口から、各ガイドワイヤの基端側(手元側)、及び、先端側を所定長さずつそれぞれ突出させておく。そして、各ガイドワイヤの手元側を、所定角度となるように所定時間で回転させたときに、ガイドワイヤの先端側に伝わる角度を、上記トルク伝達装置によって測定した。その結果を
図11に示す。
【0063】
(2)試験結果
図11において、斜めに伸びる線分である「負荷トルク」が、ガイドワイヤの手元側に負荷された角度を示しており、他の線分が、手元側の負荷によって回転した先端側の角度を示している。すなわち、負荷トルク線に近いほど、手元側に負荷した回転力が、先端側まで伝達されて、トルク伝達性が高いといえる。なお、各ガイドワイヤの試験結果を示す線分が、減衰した波形状をなすのは、トルク伝達性が低い場合、ホルダ内周との摩擦力等の影響によってチューブホルダ6内に回転力が溜まり、回転力がある一定以上溜まると、その回転力が一気に開放されるため、波打ったような線となると考えられる。
【0064】
そして、
図11の図表により、トルク伝達性の大小関係は、以下の式(1)のようになる。
実施例≧比較例2=比較例3>>比較例1・・・・・・・(1)
上記のように、実施例のガイドワイヤは、比較例1や比較例3に比べて、トルク伝達性がよく、また、比較例2に対しても同等かそれ以上のトルク伝達性が得られることが分かった。なお、比較例1の挙動が、他のガイドワイヤと異なるものとなった理由は、付形用線材の先端が先端固着部に固定され基端が芯線に固定された構造であるため、この付形用線材の構造によってトルク伝達性が損なったためであると考えられる。また、芯線が細く剛性が低くなるガイドワイヤ先端部では、トルク伝達性が損なわれやすいが、実施例は、付形用線材40が、芯線20の剛性のサポートとしても作用するため、比較例2や比較例3よりも、ガイドワイヤ先端部におけるトルク伝達性が向上したと考えられる。