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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-80277(P2017-80277A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】貴金属装飾品及びその加工方法
(51)【国際特許分類】
   A44C 27/00 20060101AFI20170414BHJP
   C23C 24/04 20060101ALI20170414BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20170414BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20170414BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
   A44C27/00
   C23C24/04
   B32B15/04 B
   B05D7/14 P
   B05D7/24 302A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-214350(P2015-214350)
(22)【出願日】2015年10月30日
(71)【出願人】
【識別番号】509277877
【氏名又は名称】株式会社アトリエミラネーゼ
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 俊行
【テーマコード(参考)】
3B114
4D075
4F100
4K044
【Fターム(参考)】
3B114AA02
3B114AA14
3B114BB11
4D075AB01
4D075AB52
4D075BB83Y
4D075BB92
4D075CA02
4D075CA13
4D075CA33
4D075CA38
4D075CA44
4D075CB04
4D075DA23
4D075DB01
4D075DC38
4D075EA05
4D075EB05
4F100AA19
4F100AA19B
4F100AA27
4F100AA27B
4F100AB12
4F100AB16
4F100AB17
4F100AB18
4F100AB24
4F100AB24A
4F100AB31
4F100AB31A
4F100AD00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10B
4F100DA20
4F100EH46
4F100EH66
4F100EJ85
4F100GB90
4F100HB00
4F100JB03
4F100JB07
4F100JK06
4F100JK12
4F100JL00
4F100JN21
4F100JN21B
4K044AA06
4K044AB06
4K044BA13
4K044BA14
4K044BC09
4K044CA23
4K044CA29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】密着性に優れ、機械的強度、特に金属表面の硬度が高い貴金属装飾品及びその加工方法を提供する。
【解決手段】貴金属装飾品が貴金属本体10と、貴金属本体の表面にセラミックス材料を用いて被覆した透明なセラミックコーティング層20と、を備え、セラミックコーティング層が0.5μm以上10μm以下の範囲の厚度を有する。貴金属装飾品の加工方法であって、貴金属装飾品の貴金属本体を洗浄する工程と、セラミックス材料を準備する工程と、貴金属本体にディップコーティング及びエアロゾルデポジション法の少なくとも1つによりセラミックス材料を用いてコーティングする工程と、を含む貴金属装飾品の加工方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属装飾品であって、
貴金属本体と、
前記貴金属本体の表面にセラミックス材料を用いて被覆した透明なセラミックコーティング層と、を備え、
前記セラミックコーティング層が0.5μm以上10μm以下の範囲の厚度を有することを特徴とする貴金属装飾品。
【請求項2】
前記貴金属本体が、40質量%以上100質量%以下のプラチナ、金及び銀のいずれかを含有することを特徴とする請求項1に記載の貴金属装飾品。
【請求項3】
前記セラミックス材料がアルミナとジルコニアとを含有するアルミナ・ジルコニア系セラミックス材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貴金属装飾品。
【請求項4】
前記セラミックス材料が、50〜90質量%のアルミナと、10〜50質量%のジルコニアを含有することを特徴とする請求項3に記載の貴金属装飾品。
【請求項5】
貴金属装飾品の加工方法であって、
前記貴金属装飾品の貴金属本体を洗浄する工程と、
セラミックス材料を準備する工程と、
前記貴金属本体にディップコーティング及びエアロゾルデポジション法の少なくとも1つにより前記セラミックス材料を用いてコーティングする工程と、
を含むことを特徴とする貴金属装飾品の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属装飾品及びその加工方法に関し、より詳しくは、セラミックス材料でコーティングされた貴金属装飾品及び当該貴金属装飾品の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中で熱しても酸化されにくく、化学変化をほとんど受けない、産出量の少ない金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt:プラチナ)及びパラジウム(Pd)がジュエリー用貴金属と呼ばれている。前述貴金属は光の反射率が可視領域にわたって高いことから美しい金属光沢を有し、化学的に安定で大気中における耐食性を有するうえに材料が高価なために資産価値を有することから装飾品に最適である。
【0003】
貴金属装飾品、例えばブロ−チ、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、コサ−ジュ及び指輪等の装飾品は、主として金、プラチナあるいは銀の貴金属からなり、また上述貴金属と宝飾石からなるものであり、そして、従来の貴金属装飾品は一般に貴金属材料をそのまま加工し、表面は金属光沢を活かすために何の施しも行われていない。
【0004】
しかしながら、空気中には硫化水素(HS)が存在しており、硫化水素は卵の腐ったような臭いがするガスで、火山や温泉から出ている。また、石油には硫黄が含まれていて、その燃焼で硫化水素が発生するので、工場の排ガスや自動車の排ガスにも含まれている。銀は空気中に存在する硫化水素と化学反応して、銀の表面に黒い硫化銀が生成してしまう。また、ネックレスチェーン等の皮膚に触れている所が黒ずんでしまったりもする。これは、皮膚や髪の毛を構成しているたんぱく質の成分である「シスチン」というアミノ酸にも硫黄が含まれているためである。黒くなった装飾品は本来の美しい光沢を失ってしまう。これらの欠点を解決するために、従来は、一般的な銀無垢材及び銀メッキ皮膜の上にアクリル系樹脂の塗布、ロジウムフラッシュメッキ、クロメート浸漬又は有機系変色防止剤浸漬等を施し、銀の表面変色防止が施されていた。
【0005】
また、金、プラチナは、優れた光学的性質、電気化学的性質を有しており、貴金属として古くから装飾品、貨幣又は歯科用材料として利用されている。金又はプラチナからなる装飾品は、純度が高ければ高いほど価値がある。しかしながら、純銀(Ag1000)のモース硬度が2であり、純金(k24)のモース硬度が2.5〜3であり、純プラチナ(Pt1000)のモース硬度が4〜4.5であり、ガラスのモース硬度が4.5〜7であり、すなわち、銀、金及びプラチナの硬度がガラスより低いので、日常生活中疵つきやすい、又は形が変形しやすい。したがって、純粋の銀、金又はプラチナが装飾品に好適ではない。これを解決するために、装飾品に用いられる金又はプラチナに他の金属を添加して硬度を高める(特許文献1)。例えば、装飾品においてよく使われている金がk22(91.7%)、k20(83.5%)又はk18(75%)等の合金であり、よく使われているプラチナはPt950(95%)、Pt900(90%)、Pt850(85%)又はPt750(75%)等の合金であり、よく使われている銀はAg950(95%)、Ag925(92.5%)、Ag900(90%)等の合金である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−100573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、装飾品に対して、上記のアクリル系樹脂の塗布でもって後処理すると、銀の価値観が落ち、ロジウムメッキは単価が非常に高いため実用的ではなく、クロメート液は六価クロームを使用していることから、RoHS指令(有害物質使用制限指令)により使用禁止になり、また有機系変色防止法は長期的に銀変色を防止することが不可能であった。
【0008】
また、特許文献2に記載の金又はプラチナの合金を用いて加工した装飾品は、高い硬度を得られたが、金属本来の美しい光沢、装飾品としての高級感及びジュエリーとする資産価値が落ちる問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の貴金属装飾品は、かかる従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、密着性に優れ、機械的強度、特に金属表面の硬度が高い貴金属装飾品及びその加工方法を提供することにある。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明に係る第1の態様は、貴金属装飾品であって、貴金属本体と、貴金属本体の表面にセラミックス材料を用いて被覆した透明なセラミックコーティング層と、を備え、セラミックコーティング層が0、5μm以上10μm以下の範囲の厚度を有することを特徴とする。
【0011】
(2)上記(1)の構成において、貴金属本体は、40質量%以上100質量%以下のプラチナ、金及び銀のいずれかを含有してもよい。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、セラミックス材料は、アルミナとジルコニアとを含有するアルミナ・ジルコニア系セラミックス材料であってもよい。
【0013】
(4)上記(3)の構成において、セラミックス材料は、50〜90質量%のアルミナと、10〜50質量%のジルコニアを含有してもよい。
【0014】
(5)本発明に係る第2の態様は、貴金属装飾品の加工方法であって、貴金属装飾品の貴金属本体を洗浄する工程と、セラミックス材料を準備する工程と、貴金属本体にディップコーティング法及びエアロゾルデポジション法の少なくとも1つによりセラミックス材料を用いてコーティングする工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、装飾品における貴金属本体の表面が透光性のセラミックコーティング層で保持されていることを特徴とする。従って、本発明によれば、貴金属本体への光の入射、及び貴金属本体からの光の出射が妨げられることがなく、密着性に優れ、機械的強度、特に高硬度の金属表面を有する貴金属装飾品及びその加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の実施形態に係る貴金属装飾品である指輪を示す概略図、(b)は本発明の実施形態に係る指輪の貴金属本体をコーティングする前の断面構成を示す拡大図、(c)は本発明の実施形態に係る指輪の貴金属本体をコーティングした後の断面構成を示す拡大図である。
図2】本発明の実施形態に係る指輪の貴金属本体の加工方法でディップコーティング法を採用した場合の各工程の説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る指輪の貴金属本体の加工方法でエアロゾルデポジション法を採用した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい実施形態に基づき、図面と共に詳細に説明する。これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。なお、実施例中の「%」は特に断りのない限り、「質量%」を示す。また、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0018】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る貴金属装飾品である指輪を示す概略図であり、図1(b)は、本発明の実施形態に係る指輪の貴金属本体をコーティングする前の断面構成を示す拡大図であり、図1(c)は、本発明の実施形態に係る指輪の貴金属本体をコーティングした後の断面構成を示す拡大図である。図2(a)〜(e)は、本発明の実施形態に係る指輪の貴金属本体をディップコーティング法で加工する各工程を示す説明図である。図3は、本発明の実施形態に係る指輪の貴金属本体をエアロゾルデポジション法で加工する過程を示す説明図である。
【0019】
図1に示す貴金属装飾品は、貴金属本体10(宝飾石を除く部分、以下同様)と、貴金属本体10の表面にセラミックス材料を用いて被覆した透明なセラミックコーティング層20と、宝飾石30と、を備える指輪1である。
【0020】
本発明の貴金属装飾品はブロ−チ、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、コサ−ジュ、時計、指輪等であり、好ましくは指輪、ブレスレット及び時計である。それは指輪、ブレスレット及び時計の皮膚と接する面の反対面の擦れる箇所が、図1(b)に示すように、時間や使用頻度とともに疵ついて疵痕40を残したり、変形して凹凸50になったりしてしまうからである。
【0021】
宝飾石30としては、例えば、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、アレキサンドライト、トパーズ、ジルコン、アクアマリン、キャッツアイ、トルマリン、ガーネット、ペリドット、アイボリー(象牙)、アゲート(瑪瑙)、アメシスト(紫水晶)、コハク(琥珀)、サンゴ(珊瑚)、シンジュ(真珠)、スイショウ(水晶)、ネフライト(軟玉)及びヒスイ(翡翠)等が挙げられる。好ましくはダイヤモンド、ルビー、サファイアであり、これらの宝飾石が高い硬度を有するので、疵つきにくく、コーティング加工する必要がない。
【0022】
貴金属本体10は、40質量%以上100質量%以下のプラチナ、金及び銀のいずれかであり、前述の貴金属における他金属としては、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)又は錫(Sn)等である。好ましくは前述の貴金属の含有量が90%以上の合金であり、例えばK24、Pt950又はAg925であり、高い含有量を有する貴金属装飾品をコーティング加工する場合は、その価値及び見栄えを損なわないとともに硬度が低いという欠点を克服することができる。貴金属の含有量が低い場合は、貴金属の表面硬度が高くなっているので疵つきにくく、また装飾品として本来の価値も高くないので、さらにセラミックス材料でコーティングするとコストが高くなるので好ましくない。
【0023】
本発明に用いるセラミックス材料は、アルミナとジルコニアを含むセラミックス材料である。本発明において、コーティング剤としてアルミナとジルコニアを含むセラミックス材料を選択するのは、以下に記載する理由による。装飾品に求められるセラミックス材料に用いるセラミックス材料の要求特性は、表面における光の反射性、光の透過性、光の屈折性、素材への接着強度、衝撃に対する強度、硬い物質に接触した時に疵がつきにくい硬度、耐水性、耐酸・アルカリ性、耐溶剤性、耐紫外線性及び塗装性と、これらの性質が長期にわたって維持できるという点である。図1(c)に示すように、セラミックス材料で被覆した金属本体10は疵付きにくく、変形しないようになった。
【0024】
上記セラミックス材料は、50〜90質量%のアルミナと、10〜50質量%のジルコニアを含有する。好ましくは、70〜85質量%のアルミナと、15〜30質量%のジルコニアを含有する。セラミックス材料には、乾燥硬化したセラミックコーティング層の透明性を妨げない範囲で、他のセラミックス材料を含有してもよい、例えば、AlN、SiO、Si等が挙げられる。
【0025】
また、セラミックス材料としては、顧客のニ−ズによって、例えばTiN、ZrN、CrN、TiCN、TiAlN、DLC、Y等、焼却後いろいろなカラーを有するセラミックコーティング層を加工することができる。
【0026】
透明なセラミックコーティング層20は0、5μm以上10μm以下の範囲の厚度を有する。好ましくは、1μm以上5μm以下の範囲の厚度を有し、より好ましくは1.5μm以上3μm以下の範囲の厚度を有する。セラミックコーティング層の厚度が0.5μm未満の場合は、貴金属本体を保護することが不十分であり、セラミックコーティング層の厚度が10μmを超えると、透光性の貴金属本体の輝き、また装飾品としての高級感を損なう問題が生じる。
【0027】
本発明の貴金属装飾品の加工方法は、装飾品の貴金属本体10を洗浄する工程と、セラミックス材料を準備する工程と、貴金属本体10にディップコーティング法及びエアロゾルデポジション法の少なくとも1つにより上記セラミックス材料を用いてコーティングする工程と、を含む貴金属装飾品の加工方法である。
【0028】
上記装飾品の貴金属本体10をコーティングする際に、コーティング対象物である指輪1の貴金属本体10が汚染されている場合は、濡れ性、密着性等の膜特性が著しく低下するので、洗浄工程を欠かすことはできない。洗浄工程としては、例えばドライ洗浄又はウェット洗浄等公知な洗浄方法で洗浄を行う。
【0029】
本発明におけるセラミックス材料を準備する工程とは、ディップコーティング法で指輪1の貴金属本体10を加工する場合、本発明に用いるアルミナとジルコニアとを含有するアルミナ・ジルコニア系セラミックス材料を、電気炉を用い、2000℃〜3000℃にて30分〜1時間加熱して溶解させ、その後500℃〜350℃に冷却する工程である。エアロゾルデポジション法で指輪1の貴金属本体10を加工する場合、セラミックス材料をサブミクロンレベルの微粒子状に加工して常温のガスに混ぜてエアロゾル状態にする工程である。
【0030】
本発明におけるコーティング層の加工方法としては、ディップコーティング法(浸漬引き上げ法)及びエアロゾルデポジション法の少なくとも1つである。それ以外の公知の方法例えば真空蒸着法、アークプラズマ方式イオンプレーティング法、スパッタリング法等で加工してもよい。
【0031】
図2に示すように、ディップコーティング法で指輪1をコーティング加工する場合は、コーティング対象物である指輪1の貴金属本体10をコーティング剤21の溶液に浸漬させ引上げる方法であり、上記コーティング剤21の溶液は、アルミナとジルコニアとを含有するアルミナ・ジルコニア系セラミックス材料が溶解した溶液である。具体的には、コーティング対象物である洗浄した指輪1の貴金属本体10をコーティング剤21の溶液に垂直に浸漬する工程と、コーティング剤21の溶液中の粘性力、表面張力及び重力による力と速度を調整して引上げる工程と、コーティング対象物である指輪1の貴金属本体10の引上げ速度と、コーティング剤21の溶液中の粘性と、付着液の流下する重力との関係性よりセラミックコーティング層20の厚度を制御する工程と、セラミックコーティング層20を乾燥硬化処理する工程と、を有する。ディップコーティング法は、毛細管現象により対象物上に均一にコーティング層を形成することができ、複雑な形状のコーティング対象物に対してもコーティングすることができる。
【0032】
ディップコーティング法によるセラミックコーティング層20は、溶液の流れ落ちと溶媒蒸発に伴う増粘とのバランスに依存し、一般的に引上げ速度が速いと厚いセラミックコーティング層20になり、遅いと薄いセラミックコーティング層20になる。引上げ速度が速く、粘度が高い場合、セラミックコーティング層20の厚度は粘性抵抗と重力のバランスで決定され、次の式より計算する。
【数1】
上記式において、Cは係数(Newton流体では0.8)、Uは引上げ速度であり、ηは動粘度であり、gは重力加速度であり、ρはコーティング溶液の密度である。
【0033】
上記セラミックコーティング層20の厚度を制御する工程において、引上げ速度Uが0.1〜1cm/sであり、動粘度ηは2.1〜5.8cpであり、コーティング溶液の密度ρは2.7である。この引上げ作業を約2〜20回を繰返して0.5μm〜10μmのコーティングを施した後、熱で硬化させる工程に進む。上記引上げ速度Uを制御することにより、本発明の好適な厚度を得ることができる。
【0034】
上記セラミックコーティング層20が本発明の好適な厚度範囲に至った後、セラミックコーティング層20の乾燥硬化処理を施す。乾燥硬化処理とは、熱風乾燥処理で約150℃〜200℃で30分行い、透明なセラミックコーティング層20を完成する。熱風乾燥処理以外は、UV硬化処理でセラミックコーティング層20を硬化させることができる。
【0035】
図3に示すように、エアロゾルデポジション法で加工する場合は、サブミクロンレベル(100nm〜1.0μm)のセラミックス微粒子31を常温のガスに混ぜてエアロゾル状態にし、ノズル32を通して音速に近い秒速150〜400メートルのスピードで高速噴射して貴金属本体10に衝突させることで、貴金属本体10の表面に高緻密・高密着な透明なセラミックコーティング層20が形成する。エアロゾルデポジション法で高い密着力を有する緻密なナノ結晶構造を形成することができる。
【0036】
尚、上記実施形態は本発明の貴金属装飾品を指輪に適用したものであるが、本発明は指輪に限らず、貴金属からなる装飾品一般に適用することができる。
【0037】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0038】
1 指輪
10 貴金属本体
20 セラミックコーティング層
30 宝飾石
40 疵痕
50 凹凸
21 コーティング剤
31 セラミックス微粒子
32 ノズル
図1
図2
図3