(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-80763(P2017-80763A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】棒材加工方法
(51)【国際特許分類】
B21J 5/00 20060101AFI20170414BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20170414BHJP
B21J 1/04 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
B21J5/00 Z
B21J5/06 F
B21J1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-210560(P2015-210560)
(22)【出願日】2015年10月27日
(71)【出願人】
【識別番号】595114355
【氏名又は名称】株式会社カシワセ
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(72)【発明者】
【氏名】柏瀬 幸弘
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA10
4E087BA17
4E087CA17
4E087CA46
4E087CB11
(57)【要約】
【課題】比較的簡素な工程で、充分な仕上がり形状に加工する棒材加工方法を提供する。
【解決手段】横断面形状が四角形の棒材10にスリット加工を施す工程と、前記スリット加工によって前記棒材10に成形された角部をプレスする工程とを有し、前記スリット加工を施す工程は、プレス機により前記棒材10の延設方向の所定範囲をプレスして、前記プレス機のプレス金型20が当接した前記棒材10の部位に、所定の曲率半径の曲面を有するくびれ部12を前記棒材10の延設方向に沿って成形し、前記角部をプレスする工程は、前記スリット加工を施す工程でプレスした前記棒材10の所定範囲で、前記棒材10の延設方向に沿って生じる縁角部を潰すようにプレスすることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が四角形の棒材にスリット加工を施す工程と、
前記スリット加工によって前記棒材に成形された角部をプレスする工程と、
を有し、
前記スリット加工を施す工程は、
プレス機により前記棒材の延設方向の所定範囲をプレスして、前記プレス機のプレス金型が当接した前記棒材の部位に、所定の曲率半径の曲面を有するくびれ部を前記棒材の延設方向に沿って成形し、
前記角部をプレスする工程は、
前記スリット加工を施す工程でプレスした前記棒材の所定範囲で、前記棒材の延設方向に沿って生じる縁角部を潰すようにプレスする、
ことを特徴とする棒材加工方法。
【請求項2】
前記角部をプレスする工程は、
先回の前記縁角部を潰すプレスによって生じた縁角部を潰すプレスを繰り返し、前記棒材の所定範囲の横断面を円状に成形する、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒材加工方法。
【請求項3】
前記角部をプレスする工程は、
前記縁角部を潰すプレスを繰り返すとき、該プレスによって生じる歪を前記くびれ部が変形して吸収し、前記棒材の所定範囲が円柱状となるようにプレスする、
ことを特徴とする請求項2に記載の棒材加工方法。
【請求項4】
前記スリット加工を施す工程は、
前記プレスした棒材の所定範囲に、全体に亘って前記曲面を有するくびれ部を成形する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の棒材加工方法。
【請求項5】
前記スリット加工を施す工程は、
前記曲面を両端に各々有するくびれ部を、前記プレスした棒材の所定範囲に成形する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の棒材加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒材の断面形状をプレス加工によって変形させ、四角柱状の棒材を丸棒状に成形する棒材加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、断面形状が四辺形の金属棒材、即ち、四角柱状の棒材を部分的に円柱状の棒材に加工するときには、旋盤などを用いて棒材を回転させながら切削加工が行われている。
上記の加工に使用する装置は、棒材の一端部を旋盤のチャックなどに固定し、当該棒材の他端部にバイト部を当接するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、カシメ付けによって配線接続を行う端子金具を、プレス加工によって所望の形状に形成する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
この方法は、金属板材から所定の形状の端子金具を切り出し、金属板材である端子金具を一次プレス金型によってプレス加工を行い、所定部位の横断面形状を概ね正方形となるように変形させる。また、二次プレス加工において、溝部を備えた二次プレス金型を使用して端子金具を全長に亘って挟み込み、正方形の横断面形状を真円形に変形させている。この後、三次プレス金型を使用して複数の溝を有するカシメ部を成形し、端子金具を完成させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−328802号公報
【特許文献2】特開2007−220484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように旋盤等を使用して四角柱状の棒材を丸棒等に加工する場合、棒材の長さは旋回によって軸がぶれないサイズに限定されるため、横断面が小さく長尺であるものや、撓みやすい材質は加工に不向きである。
また、安定して旋回させることが可能な棒材を加工する場合であっても、プレス機等によって棒材に所定の加工を行った後、当該棒材を旋盤等に移動して確実に固定する作業が必須となり、棒材を完成させるまでの工程が複雑になる。
また、各製造(加工)装置を設置して各々の工程を実施するためには、加工場所を相当広く設ける必要があり、加工に要するコストが高くなる。
【0006】
また、前述の端子金具をプレス加工によって成形する方法は、カシメ付けが可能な程度の柔軟性を有する金属板材に施すものである。即ち、ステンレス鋼などの比較的硬質の棒材について、プレス加工によって丸棒等に成形することは容易ではないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑み提案されたもので、比較的簡素な工程で充分な仕上がり形状に加工する棒材加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る棒材加工方法は、横断面形状が四角形の棒材にスリット加工を施す工程と、前記スリット加工によって前記棒材に成形された角部をプレスする工程とを有し、前記スリット加工を施す工程は、プレス機により前記棒材の延設方向の所定範囲をプレスして、前記プレス機のプレス金型が当接した前記棒材の部位に、所定の曲率半径の曲面を有するくびれ部を前記棒材の延設方向に沿って成形し、前記角部をプレスする工程は、前記スリット加工を施す工程でプレスした前記棒材の所定範囲で、前記棒材の延設方向に沿って生じる縁角部を潰すようにプレスすることを特徴とする。
【0009】
また、前記角部をプレスする工程は、先回の前記縁角部を潰すプレスによって生じた縁角部を潰すプレスを繰り返し、前記棒材の所定範囲の横断面を円状に成形することを特徴とする。
【0010】
また、前記角部をプレスする工程は、前記縁角部を潰すプレスを繰り返すとき、該プレスによって生じる歪を前記くびれ部が変形して吸収し、前記棒材の所定範囲が円柱状となるようにプレスすることを特徴とする。
【0011】
また、前記スリット加工を施す工程は、前記プレスした棒材の所定範囲に、全体に亘って前記曲面を有するくびれ部を成形することを特徴とする。
【0012】
また、前記スリット加工を施す工程は、前記曲面を両端に各々有するくびれ部を、前記プレスした棒材の所定範囲に成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、四角柱状の棒材を丸棒状に成形する工程を簡素にすることが可能になり、加工場所を効率良くまとめることが容易になることから、棒材の成形を完了するまでの時間、および製造(加工)コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の棒材加工方法による実施例のプレス加工を示す説明図である。
【
図2】
図1のプレス加工を施した棒材の形状を示す説明図である。
【
図3】
図2の棒材の先端部の形状を示す説明図である。
【
図4】
図2の棒材の先端部を丸棒状に加工した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
[実施例]
図1は、本発明の棒材加工方法による実施例のプレス加工を示す説明図である。プレス加工を行う棒材10は、断面が四角形をしている四角柱状の棒材であり、断面サイズが一様となるように形成されたもので、いわゆる均一な太さの棒材である。
また、棒材10は、プレス加工が可能な材質からなり、例えばSUS304などのステンレス鋼によって形成されたものである。なお、棒材10の材質は、前述のステンレス鋼に限定されない。
【0016】
棒材10は、例えばプレス機などによって適当な長さにカットされ、必要に応じて所定の位置にポンチ加工や穴あけ加工などが施される。
この後、棒材10の丸棒状に加工する先端部11が、プレス機のプレス金型20と当接するように、図示されないプレス機の固定手段等に当該棒材10を固定する。次に当該プレス機を稼動させて
図1の矢印Sが示す方向にプレスし、棒材10の先端にスリット加工を施し、先端部11の成形を開始する。
【0017】
図2は、
図1のプレス加工を施した棒材の形状を示す説明図である。
図2(a)は、スリット加工を施した棒材10の先端部11を側方視したもので、
図2(b)は、当該先端部11の先端面13を正面視したものである。
例えば
図1に示したように、上下方向からプレス金型20に挟み込まれることによって、棒材10の先端部11は、横断面形状が
図2(b)に示したように水平方向が長手となる四辺形(長方形)に変形する。
【0018】
また、先端部11は、上記のスリット加工において、棒材10の延設方向に沿って
図2(a)に示したようにくびれ部12が形成されている。
換言すると、くびれ部12は、先端部11のプレス金型20が当接した側面に、所定の曲率半径をもって形成されており、棒材10の延設方向において、先端部11の厚みが中央部近傍で最も薄くなるように形成されている。
【0019】
図2(c)に示した棒材10は、
図2(b)に示したように図中上下方向からプレスし、さらに図中左右方向からもプレスしたもので、先端部11の全ての側面、即ち、先端面13の四辺となる部分に、棒材10の延設方向に沿って成形されたくびれ部12を有している。
本発明の棒材加工方法は、先端部11の少なくとも対抗する2つの側面にくびれ部12を設けるもので、また、上記のように先端部11の全ての側面(4つの側面)にくびれ部12を設けるようにしてもよい。
【0020】
図3は、
図2の棒材の先端部の形状を示す説明図である。この図は、
図2等に示した先端部11の成形例を示したもので、
図3(a)は第1成形例を表し、
図3(b)は第2成形例を表しており、いずれも棒材10を側方視したときの形状を表している。
なお、
図3に示した各先端部11は、例えば、横断面サイズが5×5[mm]の棒材10に形成したものである。
【0021】
図3(a)に示した第1成形例の先端部11は、くびれ部12の端部を曲率半径R1となる曲面で構成されている。第1成形例の先端部11は、スリット加工(プレス加工)を行う範囲が、先端面13から当該棒材10の延設方向の長さaが10.019[mm]の範囲であり、プレス加工(スリット加工)によって圧縮された先端面13の幅員bが4.54[mm]となるように成形されている。
また、第1成形例の先端部11は、曲率半径R1が199.95[mm]の曲面となるようにくびれ部12を成形しており、最もくびれた部分の幅員c、即ち先端部11の最も狭い幅員cが4.415[mm]となるようにプレス加工されている。
【0022】
この第1成形例の先端部11は、曲率半径R1の大きなくびれ部12を有していることから、スリット加工においてプレスした、先端部11の一側面全体に亘って曲率半径R1の曲面が成形されている。即ち、第1成形例の先端部11は、曲率半径R1の曲面によって形成されたくびれ部12を有している。
【0023】
図3(b)に示した第2成形例の先端部11は、スリット加工(プレス加工)を行う範囲が、先端面13から当該棒材10の延設方向の長さdが19.508[mm]の範囲であり、プレス加工(スリット加工)によって圧縮された先端面13の幅員eが4.28[mm]となるように成形されている。
また、第2成形例の先端部11は、最もくびれた部分の幅員f、即ち先端部11の最も狭い幅員fが4.08[mm]となるようにプレス加工されている。
【0024】
第2成形例のくびれ部12は、先端部11の幅員eを有する部位と幅員fを有する部位との間が曲率半径R2の曲面となるように成形されている。ここで、曲率半径R2は5.01[mm]であり、先端部11をプレス金型20でプレスしたとき、先端部11の対向する2つの側面において、各々2箇所に曲率半径R2の曲面部位を形成させている。換言すると、第2成形例の先端部11は、所定のプレス量によって当該先端部11の幅員が前述のfとなるまでプレスされた部位の両端に、各々曲率半径R2の曲面を有するくびれ部12を成形したものである。
【0025】
ここで、幅員b、幅員c、幅員e、幅員fは、プレス方向に沿った先端部11の幅員であり、詳しくは、プレス金型20が当接した先端部11の側面に対して鉛直に配置される側面の幅員である。
前述の先端部11の形状等を示す各数値は一例であり、第1成形例の先端部11は、例えば、長さaが概ね10±0.1[mm]程度の場合、プレスされた幅員bが概ね4.5±0.1[mm]程度、曲率半径R1が概ね200±0.1[mm]程度となるように、また、幅員cが概ね4.4±0.1[mm]程度となるように加工する。また、第2成形例の先端部11は、例えば、長さdが概ね19.5±0.1[mm]程度の場合、プレスされた幅員eが概ね4.2±0.1[mm]程度、曲率半径R2が概ね5.0±0.1[mm]程度となるように、また、幅員fが概ね4.0±0.1[mm]程度となるように加工する。
【0026】
図4は、
図2の棒材の先端部を丸棒状に加工した状態を示す説明図である。くびれ部12を設けて先端部11を成形した棒材10は、当該棒材10の延設方向に沿って形成されている先端部11の縁角部(先端部11の側面の縁辺部分)を、プレス機によって潰す加工を施す。
ここで、先端部11の縁角部を潰すとき、プレス金型を当該縁角部の延設方向において全体的に当接させてプレスする。
【0027】
この縁角部を潰すプレス加工は、一回のプレス加工において、対向配置となる2箇所の縁角部に施される。また、先回の縁角部潰しによって新たに生じた縁角部についても同様にプレス加工を施し、
図4(b)に示したように先端面13、即ち先端部11の横断面が円状となるまでプレス加工を繰り返す。
なお、当該プレス加工は、先端部11の横断面が所望の直径を有する円状となる程度のプレス量で当該先端部11をプレスする。また、各縁角部を潰すプレス加工を繰り返すとき、各プレス量等を調整制御することにより、先端部11の横断面を真円状、あるいは楕円状などに成形することが可能になる。
【0028】
前述のように先端部11の横断面を円状に変形させると、このときのプレスによって歪が生じる。この歪を、くびれ部12が当該先端部11の幅員方向に変形することによって吸収し、
図4(a)に示したように先端部11を円柱状に成形する。換言すると、くびれ部12は、先端部11の縁角部を潰すときに生じる歪を、変形して吸収するように形成されている。
【0029】
プレス加工によって円柱状に成形した先端部11は、端部あるいは縁部分等から突出するバリなどが生じている。これらバリなどは、例えばプレス加工によって除去する。バリなどを除去した後、例えば先端部11あるいは棒材10全体にバレル加工等を施し、所定水準の仕上がりとなるように当該先端部11あるいは棒材10の表面を処理する。
【0030】
以上のように、本実施例によれば、四角柱状の棒材10にプレス(スリット)加工を施し、先端部11を成形して、先端部11に生じる縁角部をプレス加工によって潰すことにより当該先端部11の横断面を円状に成形するようにしたので、プレス加工のみによって四角柱状の棒材10を丸棒状に成形することができる。
また、スリット加工を施すとき、先端部11の側面にくびれ部12を形成するようにしたので、先端部の縁角部を潰すようにプレスすることにより、先端部11を円柱状に成形することが容易になり、仕上げ加工等を簡略化することが可能になる。
【符号の説明】
【0031】
10棒材
11先端部
12くびれ部
13先端面
20プレス金型