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特開2017-80872低インピーダンス抵抗型変換器を備えたマイクロエレクトロメカニカルデバイス及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-80872(P2017-80872A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】低インピーダンス抵抗型変換器を備えたマイクロエレクトロメカニカルデバイス及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B81B 3/00 20060101AFI20170414BHJP
【FI】
   B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-203283(P2016-203283)
(22)【出願日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】1560144
(32)【優先日】2015年10月23日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】516311009
【氏名又は名称】ベミクロ
(71)【出願人】
【識別番号】502205846
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・ワルテール
(72)【発明者】
【氏名】マルク・フォシェ
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081BA32
3C081BA43
3C081BA44
3C081BA46
3C081BA48
3C081BA57
3C081CA02
3C081CA40
3C081DA02
3C081DA04
3C081DA27
3C081DA30
3C081DA31
3C081EA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低インピーダンス抵抗型変換器を備えたマイクロエレクトロメカニカルデバイス及びシステムを提供する。
【解決手段】自らの端部の1つに位置する少なくとも1つの固着部APLM1、APLM2によって平面基板に連結された長手方向xに沿って主として延びる基板と平行な平面において屈曲できる機械的構造P1を含むマイクロエレクトロメカニカルデバイスであって、接合部が固着部に機械的構造を連結し且つ抵抗型変換器を形成するために電流を注入するための第1(PL1M1)及び第2(I2)のゾーンを呈し固着部から主として長手方向に延びる抵抗領域R1を含み、基板に平行な平面における機械的構造の屈曲が抵抗領域において非ゼロの平均歪みを引き起こすようにまた逆も同様であるように配置され、第1の注入ゾーンは固着部で担持され、第2の注入ゾーンは基板に固定されず且つ長手方向にほぼ直角な横方向に延びる導電要素で担持される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と名付けられた方向(x)に沿って主として延びる、且つ前記長手方向に沿って自らの端部の1つに位置する少なくとも1つの固着部(APLM1、APLM2)によって、平面基板(S)に連結された機械的構造(P1)であって、基板と平行な平面において屈曲できる機械的構造(P1)を含むマイクロエレクトロメカニカルデバイスであって、前記機械的構造が、接合部と名付けられた部分を含み、接合部が、前記又は各前記固着部に機械的構造を連結し、且つ抵抗型変換器を形成するために、電流を注入するための第1(PLM1)及び第2(I2)のゾーンを呈する抵抗領域(R1)を含み、前記抵抗領域が、前記又は1つの前記固着部から前記長手方向に主として延び、且つ基板に平行な前記平面における前記機械的構造の屈曲が前記抵抗領域における非ゼロの平均歪みを誘起するように、および逆も同様であるように、配置され、
− 前記第1の注入ゾーン(PLM1)が、前記固着部(APLM1)によって担持されることと、
− 前記第2の注入ゾーン(I2)が、前記基板に固定されない、且つ前記長手方向にほぼ直角な、横方向(y)と名付けられた方向に延びる導電要素によって担持されることと、
基板(S)が、長手方向(x)及び横方向(y)によって画定された平面と平行であることと、
を特徴とするマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項2】
前記抵抗領域がまた、前記基板に固定されない、前記横方向に延びる導電要素であって、第1の注入ゾーンと第3の注入ゾーンとの間に配置される前記第2の注入ゾーンを担持する導電要素とは別個の導電要素によって担持される、電流を注入するための少なくとも1つの第3のゾーン(I1)を呈する、請求項1に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項3】
前記機械的構造が、半導体材料で作製され、前記注入ゾーンが、この半導体材料のそれぞれの部分の上に堆積された、オーミックコンタクトを形成する金属層を含む、請求項1又は2に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの前記注入ゾーン(I1、I1int)が、前記抵抗領域の範囲を超えて、前記接合部の幅全体にわたって延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項5】
少なくとも前記第2の注入ゾーンが、前記基板に固定されず、且つ前記横方向において可撓性を示す梁状要素(PAI1)によって前記基板に固定されたコンタクトパッド(PLM3)に連結される、請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項6】
前記梁状要素が、機械的構造の可撓性より大きい、前記横方向における可撓性を示す、請求項5に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項7】
機械的構造の前記接合部が、前記長手方向に沿って向けられた、且つ接合部の中立ファイバの両側に配置された少なくとも2つの平行梁(P1a、P1b)を含み、前記抵抗領域が、前記梁の1つに含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項8】
機械的構造の前記接合部が、前記長手方向に沿って向けられた単一の梁(P1)を含み、前記抵抗領域が、前記梁の側部に配置され、梁の残りが、より高い電気抵抗率を示す材料で作製される、項請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項9】
前記注入ゾーンの2つの間における前記抵抗領域の時変電気抵抗を測定するように構成された電気検出回路(CMR)もまた含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項10】
前記注入ゾーンを通って前記抵抗領域に交流電気信号を注入するように構成された電気作動回路(CX)もまた含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項11】
前記機械的構造が、前記接合部に含まれる2つの抵抗領域(R10、R20)であって、基板に平行な平面における前記接合部の屈曲が、前記抵抗領域における反対符号の非ゼロの平均歪みを誘起するような方法で配置された2つの抵抗領域(R10、R20)を含み、各前記抵抗領域が、電流を注入するための前記第1(PLS1、PLS2)及び前記第2(I10)のゾーンを呈し、電流を注入するための前記第1のゾーンが分離される、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項12】
電流を注入するための第1の2つのゾーンの抵抗間における、経時的に変化する差を測定するように構成された電気検出回路(CADD)もまた含む、請求項11に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項13】
作動周波数と名付けられた同一周波数で、又は前記作動周波数とは異なる周波数で、直流電気信号に重畳された交流電気信号と逆位相の交流電流とを、前記注入ゾーンを通して前記抵抗領域に注入するように構成された電気作動回路(CADD)もまた含む、請求項11に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項14】
作動周波数と名付けられた同一周波数で、又は前記作動周波数とは異なる周波数で、直流電気信号に重畳されない交流電気信号と逆位相の交流電流とを、前記注入ゾーンを通して前記抵抗領域に注入するように構成された電気作動回路(CADD)もまた含む、請求項11に記載のマイクロエレクトロメカニカルデバイス。
【請求項15】
請求項9に記載の第1のマイクロエレクトロメカニカルデバイス(D)、及び請求項10に記載の第2のマイクロエレクトロメカニカルデバイス(D’)を含むマイクロエレクトロメカニカルシステムであって、第1及び第2のデバイスの機械的構造(P1、P1’)が、機械的に結合され、第1のデバイスの作動回路(CX)が、作動周波数と名付けられた周波数の、又は作動周波数とは異なる周波数の、直流電気信号に重畳された交流電気信号を注入するように構成され、第2のデバイスの検出回路(CMR)が、同じ周波数における抵抗の変動を測定するように構成されるマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項16】
請求項14に記載の第1のマイクロエレクトロメカニカルデバイス、及び請求項12に記載の第2のマイクロエレクトロメカニカルデバイスを含むマイクロエレクトロメカニカルシステムであって、第1及び第2のデバイスの機械的構造が、機械的に結合され、第1のデバイスの作動回路が、第1の周波数の交流電流を注入するように構成され、第2のデバイスの検出回路が、第1の周波数の2倍の第2の周波数における抵抗の変動を測定するように構成されるマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項17】
請求項9に記載の第1のマイクロエレクトロメカニカルデバイス(D)、及び請求項10に記載の第2のマイクロエレクトロメカニカルデバイス(D’)を含むマイクロエレクトロメカニカルシステムであって、第1及び第2のデバイスの機械的構造(P1、P1’)が、機械的に結合され、第1のデバイスの作動回路(CX)が、直流電気信号との重畳なしに、第1の周波数の交流電気信号を注入するように構成され、第2のデバイスの検出回路(CMR)が、第1の周波数の2倍の第2の周波数における抵抗の変動を測定するように構成されるマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロメカニカルデバイス及びシステムに関する。特に、本発明は、長尺状の機械的構造の「面内」屈曲運動を作動(アクチュエート)及び/又は検出可能にする抵抗型の変換器を含むマイクロエレクトロメカニカルデバイスと同様に、かかるデバイスを含むマイクロエレクトロメカニカルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
平面基板のエッジから延びる、且つ基板のエッジに直角な平面において屈曲できる固定梁(「片持ち梁」)型の機械的構造を含むマイクロエレクトロメカニカルシステム(Micro Electro Mechanical Systemsを表すMEMS)を作製することは周知である。かかる構造は、特に原子間力顕微鏡プローブを作製するために用いられてきた。それらは、真空中又は空気中においてよく動作するが、しかし液体媒体ではそうではない。何故なら、そのとき、梁の振動が、媒体の粘性によってひどく減衰されるからである。この問題を解決するために、基板の平面において屈曲するか、又はこの同じ平面において並進運動を示す梁型の機械的構造を呈するMEMSを開発することが必要だった。並進運動の場合に、梁は、剛性にすることができ、その並進運動は、1つ又は複数の横方向筋交いアームの(同様に平面における)屈曲によって誘起することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.H.Comtois,V.M.Bright and M.W.Phipps“Thermal microactuators for surface−micromachining processes”,Proc.SPIE 2642,Micromachined Devices and Components,10(15 September 1995)
【非特許文献2】L.A.Beardslee,A.M.Addous,S.Heinrich,F.Josse,I.Dufour and O.Brand“Thermal Excitation and Piezoresistive Detection of Cantilever In−Plane Resonance Modes for Sensing Applications”Journal of Microelectromechanical Systems,Vol.19,No.4,August 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、梁型(又はより一般的には長尺状を示す)の構造の平面における屈曲運動を作動(及び検出)可能にするマイクロエレクトロメカニカルシステムの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
或る量の研究作業は、この必要性が、熱型アクチュエータ及びピエゾ抵抗検出器を用いることによって取り組まれる必要があることを提案した。かかる解決法は、例えば圧電変換とは反対に多くの材料の使用に適合するという利点を示す。更に全く同一の構造は、熱アクチュエータ(熱はジュール効果を通して発生される)及びピエゾ抵抗検出器の両方として働くことができる。
【0006】
論文 J.H.Comtois,V.M.Bright and M.W.Phipps“Thermal microactuators for surface−micromachining processes”,Proc.SPIE 2642,Micromachined Devices and Components,10(15 September 1995)は、(固着部の反対側の)2つのアームの先端部で共に連結された2つの平行アームで構成された、且つ2つの固着部間の電流の通過を可能にする「U」を形成する抵抗トラックを担持するシリコン屈曲構造を説明する。この電流は、ジュール効果を通して熱を生じる。アームの1つ(「コールドアーム」)は、外部との対流交換を促進するために、且つシリコンにおける電力密度を低減させるために、意図的に拡大される。従って、このアームは、(「ホットアーム」と名付けられた)もう一方のアームほど熱くならない。次に、ホットアームのより著しい熱膨張は、平面において構造の屈曲を引き起こる。この構造は、静的な動作用に設計される。いずれにしても、コールドアームの比較的大きい質量は、周波数のどんな上昇も不利にするであろう。更に、抵抗トラックは、著しい長さ(構造の長さの約2倍)及び従って高い抵抗を必然的に示す。さて、変換器と外部電子装置(電源、信号発生器、測定回路等)との間の効率的な電力伝達を達成するために、変換器のインピーダンスは、できるだけ50Ω(オーム)の近くにすべきである。
【0007】
論文 L.A.Beardslee,A.M.Addous,S.Heinrich,F.Josse,I.Dufour and O.Brand“Thermal Excitation and Piezoresistive Detection of Cantilever In−Plane Resonance Modes for Sensing Applications”Journal of Microelectromechanical Systems,Vol.19,No.4,August 2010は、一端部で固定されたシリコン梁であって、その固着部近くで且つ対向端部において、ドーピングによって得られた2つの抵抗を担持するシリコン梁を含む構造を説明する。金属トラックは、抵抗の端部を接続し、且つその中に電流を注入できるようにする。右側における抵抗への電流の注入は、ジュール効果を介して熱を生じさせ、それが、今度は、梁の右側の熱膨張及び従って左側への屈曲を誘起する。電流が左側の抵抗に注入される場合には相反的である。(同様にドーピングによって作製され、金属トラックによって相互接続された抵抗領域によって得られる)ホイートストンブリッジを形成する構造は、ピエゾ抵抗効果を介した屈曲の測定を可能にする。梁の幅は、45〜90マイクロメートルに達し、その長さは、200〜1000マイクロメートルに達する。従って、比較的著しいサイズの構造を扱う。(例えば5μmの幅を取ることによる)高度の小型化は、幾つかの問題に遭遇することになろう。特に、非常に微細で、極めて近くに離間配置された導電トラックを用いることが必要になり、それは、絶縁の困難さ及び高インピーダンスにつながるであろう。
【0008】
より一般的に、先行技術は、小型化できる((1MHz以上の)高周波での動作を可能にするために必要である)抵抗型(熱アクチュエータ及び/又はピエゾ抵抗センサ)の、且つ低インピーダンス(100Ω以下、好ましくは50Ωにほぼ等しい)の(それによって効率的な電力伝達を可能にする)変換器を取得できるようにはしない。
【0009】
本発明は、先行技術のこれらの欠点を克服することを目指す。
【0010】
この目標を達成できるようにする本発明の主題は、長手方向と名付けられた方向に沿って主として延びる、且つ前記長手方向に沿って自らの端部の1つに位置する少なくとも1つの固着部によって、前記長手方向と平行な平面基板に連結された機械的構造であって、基板と平行な平面において屈曲できる機械的構造を含むマイクロエレクトロメカニカルデバイスであって、前記機械的構造が、接合部と名付けられた部分を含み、接合部が、前記又は各前記固着部に機械的構造を連結し、且つ抵抗型変換器を形成するために、電流を注入するための第1及び第2のゾーンを呈する抵抗領域を含み、前記抵抗領域が、前記又は1つの前記固着部から前記長手方向に主として延び、且つ基板に平行な前記平面における前記機械的構造の屈曲が前記抵抗領域における非ゼロの平均歪みを誘起するように、および逆も同様であるように、配置され、
− 前記第1の注入ゾーンが、前記固着部によって担持されることと、
− 前記第2の注入ゾーンが、前記基板に固定されない、且つ前記長手方向にほぼ直角な、横方向と名付けられた方向に延びる導電要素によって担持されることと、
を特徴とするマイクロエレクトロメカニカルデバイスである。
【0011】
本発明の別の主題は、電気作動回路を含むタイプの、本発明の実施形態による第1のマイクロエレクトロメカニカルデバイス、及び電気検出回路を含むタイプの、本発明の実施形態による第2のマイクロエレクトロメカニカルデバイスを含むマイクロエレクトロメカニカルシステムであって、第1及び第2のデバイスの機械的構造が、機械的に結合され、第1のデバイスの作動回路が、作動周波数と名付けられた周波数の、又は作動周波数とは異なる周波数の、直流電気信号に重畳された交流電気信号を注入するように構成され、第2のデバイスの検出回路が、同じ周波数における抵抗の変動を測定するように構成されるマイクロエレクトロメカニカルシステムである。
【0012】
本発明の更に別の主題は、周波数f/2の差動作動を伴うタイプの、本発明の実施形態による第1のマイクロエレクトロメカニカルデバイス、及び差動検出を伴うタイプの、本発明の実施形態による第2のマイクロエレクトロメカニカルデバイスを含むマイクロエレクトロメカニカルシステムであって、第1及び第2のデバイスの機械的構造が、機械的に結合され、第1のデバイスの作動回路が、第1の周波数における交流電流を注入するように構成され、第2のデバイスの検出回路が、第1の周波数の2倍の第2の周波数における抵抗の変動を測定するように構成されるマイクロエレクトロメカニカルシステムである。
【0013】
本発明の更に別の主題は、検出を伴うタイプの、本発明の実施形態による第1のデバイス、及び作動を伴うタイプの、本発明の実施形態による第2のマイクロエレクトロメカニカルデバイスを含むマイクロエレクトロメカニカルシステムであって、第1及び第2のデバイスの機械的構造が、機械的に結合され、第1のデバイスの作動回路が、直流電気信号との重畳なしに、第1の周波数における交流電気信号を注入するように構成され、第2のデバイスの検出回路が、第1の周波数の2倍の第2の周波数における抵抗の変動を測定するように構成されるマイクロエレクトロメカニカルシステムである。
【0014】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、例として提供される添付の図面に関連して説明を読めば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a】熱アクチュエータ又はピエゾ抵抗センサのインピーダンスの計算を示す。
図1b】熱アクチュエータ又はピエゾ抵抗センサのインピーダンスの計算を示す。
図2】本発明に従って、このインピーダンスを低減する横方向インジェクタの使用を示す。
図3a】本発明の第1の実施形態の変形によるデバイスを示す。
図3b】本発明の第1の実施形態の変形によるデバイスを示す。
図4a】本発明の第2の実施形態の変形によるデバイスを示す。
図4b】本発明の第2の実施形態の変形によるデバイスを示す。
図4c】本発明の第2の実施形態の変形によるデバイスを示す。
図5】本発明の第4の実施形態によるデバイスを示す。
図6】本発明の第5の実施形態によるシステムを示す。
図7】本発明の第6の実施形態によるシステムを示す。
図8】本発明の第7の実施形態によるシステムを示す。
図9a図6に概略的に表されたタイプのシステムの、電子顕微鏡検査によって得られた画像を示す。
図9b図6に概略的に表されたタイプのシステムの、電子顕微鏡検査によって得られた画像を示す。
図10図9a及び9bのシステムにおいて実行された測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
マイクロエレクトロメカニカル梁(又は一般的には長尺状を示す機械的構造)は、ジュール効果及び熱膨張を利用する熱アクチュエータによって、屈曲を引き起こされ得る。熱アクチュエータは、典型的には、例えば中立ファイバの一側において歪みがただ1つの符号をもつ(より一般的には、抵抗素子における平均歪みが非ゼロであることで十分である)梁のゾーンに位置する抵抗素子からなる。アクチュエータが十分に小型化された場合に、それは、数MHz又は実に数百MHzの動作周波数を達成することができる。より正確には、長さL、熱伝導率κ、密度ρ及び比熱Cのワイヤにおける熱輸送が考慮される場合に、次の式に従って、遮断周波数ωthを計算することが可能である。
【数1】
【0017】
例えば、シリコンワイヤの場合に、遮断周波数は、L=10μmに対して約2.5MHz、L=5μmに対して10MHz、及びL=1μmに対して250MHzである。
【0018】
図1aは、シリコン技術で半導体に作製された(熱アクチュエータ又はピエゾ抵抗センサとして働くことができる)抵抗型変換器の(上部及び側部からの)2つの図を示す。変換器は、厚さT及び抵抗率ρのドープされたシリコン平面構造からなり、その上において平面構造の端部に2つの金属コンタクトパッドPC1、PC2が配置される。平面構造は、5つの別個のゾーンを含む。即ち、コンタクトパッドPC1よって覆われ、それとオーミックコンタクトを形成する第1のコンタクトゾーンZ1と、次第に狭くなる長さL2の第1の接合領域Z2と、一定の幅W(コンタクトゾーンの幅よりはるかに小さい)及び長さLのゾーンと、Z2と対称の第2の接合領域Z2’と、コンタクトパッドPC2よって覆われ、それとオーミックコンタクトを形成する第2のコンタクトゾーンZ1’と、を含む。これらの様々な領域は、抵抗Rc1、Ra1、R、Ra2、Rc2をそれぞれ示し、全体的な抵抗は、
R=Rc1+Ra1+R+Ra2+Rc2
と等しい。
【0019】
「固有」項Rは、
【数2】
と等しい。その値を低下させるために、抵抗率を低下させるように高ドーピングを用いることが可能であるが、しかし単にあるポイントまでである。シリコンにおいて、例えば、数1021at/cmの限界ドーピングが、実際には用いられる。これを超えては、アモルファス化問題又は溶解限度問題が発生する。
【0020】
アクセス抵抗Raccは、各金属コンタクトから「固有」領域Ziまでの電流経路を考慮する。第1の近似のために、それが、変換器の一端部においてRc1+Ra1からなり、反対端部においてRc2+Ra2からなると考えてもよい。寄与Ra1、Ra2は、各コンタクトと固有ゾーンとの間の電流経路を考慮し、且つ可能な最小長さL2、L2’を取ることによって、低減させることができる。
【0021】
コンタクト抵抗Rc1=Rc2=Rは、公式によって計算することができる:
【数3】
式中、
・ Rsq:ドープされた半導体層の抵抗(オーム/□)
・ ρ:特定のコンタクト抵抗
・ W:コンタクトの幅
・ d:コンタクトの長さ
・ coth:双曲線余接関数
である。
【0022】
図1bは、シリコンで作製された単一固定梁Pの平面において屈曲を可能にするように配置された抵抗型変換器TRを示す。上記のように、変換器は、ここでは梁の長手方向軸に対応する中立ファイバの一側に配置されなければならない。梁が基板と出会う接合ゾーンは、それに「H」形構造を与える2つの開口部を示す。「H」の半脚は、変換器を作製するために用いられる。
【0023】
基板の上に作製され、且つ梁が中へと組み込まれるコンタクトパッドPC2は、かなりの表面積及び従って低いコンタクト抵抗を示し得るが、コンタクトパッドPC1の寸法(長さd1及び特に幅W1)は、アクチュエータの寸法によって抑制され、アクチュエータの寸法は、今度は、所望の遮断周波数によって決定される。例えば、我々は、次のものを取る。
・ W1=d1=0.5μm:コンタクトの幅
・ Rsq=20Ω(3・1014at/cmの密度で、ホウ素でドープされた400nmと等しい厚さのシリコン層に対応する)
・ ρ=3・10−7Ω・cm(ホウ素でドープされたシリコン上のアルミニウムコンタクトに典型的である)
【0024】
これらの条件下で、パッドPC1のコンタクト抵抗は、208Ωと等しく、約40Ωと等しい固有抵抗を支配する。
【0025】
これらの条件下で、変換器の抵抗は、ほぼ50Ωを超えるだけにでき、それによって、一般に、この値のインピーダンスを示す負荷又は信号源とインターフェースするように定められる外部電子機器との電力伝達の効率を妥協して解決することができる。
【0026】
式(2)は、コンタクト抵抗が、コンタクトの寸法d、W図1bの場合のd1、W1)を増加させることによって、低下され得ることを示す。幅Wは、特に重要であり、一方で長さdの寄与は、
【数4】
である場合に、それほど重要ではなくなる。本発明の基礎となる概念は、オーミックコンタクトの幅が、注入ゾーン又は「横方向インジェクタ」によって増加され得、注入ゾーン又は「横方向インジェクタ」が、梁の導電性横方向延長部であり、その上にコンタクトパッドが配置されるということである。
【0027】
図2は、ドープされたシリコンで作製されて梁Pの長手方向軸に直角に延び、且つ図1bの場合よりもはるかに大きい寸法の金属コンタクトパッドPC1を担持する注入ゾーン又は横方向インジェクタILの追加によって修正された図1bの構造を示す。W1=5μm及びd1=4μmを取ることによって、我々は、Rc=5Ωを得られる。更に、横方向注入ゾーンは、変換器からの熱の排出を容易にする。明白に、原則として、その質量は、共振周波数を低下させるという望ましくない効果を有し得るが、しかしそれが、梁Pが組み入れられる場所の近くに配置されるので、実際上それは、デバイスの機械的な挙動にほとんど影響しない。
【0028】
図2が、基礎的な図を実質的に構成する一方で、図3a〜5は、本発明の様々な有利な実施形態によるデバイスを示す。図6〜8は、このタイプの2つのデバイスを含むマイクロエレクトロメカニカルシステムと同様に、関連する作動及び検出電子装置を示す。
【0029】
本発明によるデバイスは、シリコンオンインシュレータ(SOI)技術で作製することができる。この場合に、デバイスは、比較的厚い(典型的には350〜600μmの厚さ)シリコン平面基板を含み、その上に、「埋め込み酸化物」(又は「埋め込み酸化物」を表す「BOX」)と名付けられた酸化物層SiOが堆積され、次にデバイス層(DL)を名付けられた非常に微細なシリコン層(5nm〜100μm、好ましくは100nm〜1μm)が堆積され、その上に、コンタクト及び導電トラックを作製するために金属層を堆積することができる。用語「金属」は、例えば縮退半導体を含む、金属型の導電性を示す材料の広い意味で理解されるべきである。デバイス層は、固有のほぼ絶縁領域、及びより高いか又は低い抵抗を備えたドープされた導電領域を含むことができる。デバイス層のドープ領域上の金属層の堆積は、オーミックコンタクトの形成につながることができる。
【0030】
デバイス層の或る領域は、下にある埋め込み酸化物を除去することによって解放することができる。特に、本発明によるデバイスは、その端部の1つにおいて基板に固定された、長手方向に延びる解放された構造(例えば梁)を含む。横方向インジェクタもまた、デバイス層のドープされ解放された領域に基づいて得られる。変形として、梁型の構造及び/又は横方向インジェクタ(単複)は、部分的にデバイス層において、且つ部分的に他の材料において作製することができる。
【0031】
変換器の抵抗は、異なる方法で得ることができる。
− デバイス層のドープ領域に基づいて、ドーパント濃度は、インピーダンスを調整するように選択される(典型的には、1017〜1021at/cm、好ましくは1019〜5・1020at/cmの密度で)。
− 例えばPt又はTiNの金属薄層の堆積によって。
− SiPt、AlSi、TiSi、NiSi、WSiなどのシリサイドにおいて。
− 上記の手順を組み合わせることによって。
【0032】
前述のように、これらの抵抗は、解放された機械構造ゾーンに配置され、そこにおいて、平面における屈曲歪みは、熱膨張によって発生された機械的な歪みが、かかる屈曲(作動において変換器を使用するために)を引き起こすために、基板に平行な平面における前記構造の屈曲が(検出において変換器を使用するために)抵抗において非ゼロの平均歪みを誘起するように、ただ1つの符号をもち、逆も同様である。
【0033】
本発明によるデバイスは、一般にまた電流注入ゾーン、接続線、コンタクトパッドなどの他の要素を含む。検討される実施形態によれば、ゾーンは、全体的に解放されるか又は部分的に解放されてもよい。
【0034】
SOIの使用は、単に非限定的な例である。別の材料、例えば二次元電子ガスを含むヘテロ構造又は電流経路を画定できる任意の他の構造から本発明によるデバイスを作製することがまた可能であろう。例えばノーマリーパス又はノーマリーブロック型のMOS(金属―酸化物―半導体)構造を用いることが可能である。後者の場合に、キャリアのチャネルを生成するために、静電気グリッドを用いることが可能である。実際に、解放することができる、且つ所望の共振周波数を生成するのに十分に優れた機械的特性を有する任意の導電材料を用いることが可能である。
【0035】
以下において図は、本発明によるデバイスの全ての作製詳細を示すわけではなく、変換器を形成する横方向インジェクタ及び抵抗ゾーンの形状及び配置、電気相互接続部、コンタクトパッド、並びに作動及び検出電気回路などの或る態様を主として示す。
【0036】
図3aのデバイスは、SOIスタックのデバイス層の内部に作製され、埋め込み酸化物のエッチングによって基板から解放され、且つxと名付けられた長手方向に延びる機械的構造P1を含む。この場合に、構造P1は、単純な梁でなく、より複雑な複合構造を示し、それは、横材によって連結された2つの平行な長手方向梁P1a、P1bを含む。
【0037】
領域ZI1内の全てのシリコンは、「n+」にドープされ、従って金属層の堆積によってオーミックコンタクトの形成を可能にする。基板に固定されたデバイス層の領域において、P1の横寸法(y軸)に対して大きな寸法(例えば少なくとも5μm×5μm)の、且つP1a及びP1bの固着部の近くに位置する2つの金属堆積物PLM1、PLM2が、2つのコンタクトパッドを形成する。図3aの例において、コンタクトパッドPLM1、PLM2を担持するドープされたシリコン領域は、基板に固定された(固着された)中央部APLM1、APLM2と、解放できる周辺領域と、を含む。検討される実施形態において、中央部APLM1、APLM2は、実際には、機械的構造P1が組み入れられるか又は固着される場所である。
【0038】
2つのインジェクタI1及びI2が、構造P1に固定された、且つオーミックコンタクトを形成する金属層で覆われた、デバイス層のドープされ解放された部分に作製される。これらのインジェクタは、梁P1aの部分R1及びR3によって形成された抵抗型変換器のコンタクト抵抗を低減する働きをする。より正確には、第1のインジェクタI1及び第2のインジェクタI2は、梁I2に対して横断又は横方向yに延び、第2のインジェクタI2は、第1のインジェクタI1とコンタクトパッドPLM1との間で位置している。インジェクタI1は、金属で覆われドープされたシリコンで同様に作製された要素I1intによって延長され、要素I1intは、2つの梁P1a及びP1bの上に延びる。構造P1の機械的特性に過度に影響しないように、インジェクタの慣性を最小化するために、インジェクタは、前記構造の固着部にできるだけ近くにあるべきである。理想的には、固着部から最も離れたインジェクタまで延びる接合領域は、長手方向xにおける構造P1の大きさの5分の1、又は更に言えば10分の1を超えるべきではない。
【0039】
インジェクタI1、I2は、梁によって担持された金属トラックPAI1、PAI2によって、それぞれのコンタクトパッドPLM3、PLS1に連結される。金属トラックPAI1、PAI2は、SOI構造のデバイス層に形成され、完全に解放され、且つy方向において高い可撓性(恐らく構造P1より大きい)を示す。図3aの例において、この可撓性は、yに沿って向けられた「L」のアームの長さL1、L2に対して小さい幅W1、W2の「L」形の梁を取ることによって得られる。例えば、好ましくは、比率L2/W2は、梁P1aの幅に対する抵抗領域R1の長さの比率の2倍を超えなければならず、比率L1/W1は、梁P1aの幅に対する抵抗領域R1及びR3の総計長さの比率の2倍を超えなければならない。例えば蛇行を伴う異なる形状を用いることがもちろん可能である。多くの場合に、それは、高い可撓性及び低い慣性の両方を得るという問題である。他の場合に、デバイスの共振周波数を増加させるために、金属トラックを支持する梁の剛性を利用することが可能であろう。他方で、コンタクトパッドPLS1、PLM3は、PLM1、PLM2の構造に似た構造を示し、従って少なくともそれらの中央部において基板に固定される。
【0040】
他の実施形態において、横方向注入ゾーンの数が、2を超え得ることが理解される。これらの横方向注入ゾーンは、長手方向構造P1が組み入れられる場所にできるだけ接近して配置される必要は必ずしもないが、これは、有利であると考えられることが多々ある。
【0041】
図3aのデバイスは、直流タイプの信号に一般に重畳される、好ましくは長手方向構造P1の共振に対応する(又はより一般的にはこの共振に近い)周波数f=2πωの交流電気信号をパッドPLS1に印加することによって作動することができ、一方でパッドPLM1及びPLM3並びにまた任意選択的にPLM2は、接地される。図3aの例において、これらの信号は、DC電圧発生器GTCに直列に接続されたAC電圧発生器GTAによってそれぞれ生成され、これらの2つの発生器は、励起回路CXを形成する。従って、電流I+i(「I」は直流を示し、「i」は交流を示す)は、金属トラックPAI1を通過し、インジェクタI2を介して梁P1aの接合部に注入され、且つ2つの成分に分かれる。第1の成分I+iは、梁P1aの抵抗領域R1を通過し、且つパッドPLM1(「横方向」ではないが、低インピーダンスによって特徴付けられた注入ゾーン又はインジェクタを構成する)を介してグランドに戻る。成分I+iは、梁P1aの抵抗領域R3を通過し、且つインジェクタI1、解放された梁PAI1に堆積される導電トラック、及びパッドPLM3を介してグランドに戻る。これらの電流は、抵抗領域R1及びR3の発熱、並びに従ってこれらの2つの抵抗領域及びインジェクタI1、I2を含む梁P1aの接合部の熱膨張をもたらす。他方で、電流は、梁P1bの抵抗領域R2はほとんど通過せず、従ってそれは、膨張しない。
【0042】
構造P1の屈曲は、R1及びR3において消費される熱パワーPthに比例し、それは次の式と等しい。
【数5】
この式で、R=R//R(他の抵抗が、無視できると仮定する)であり、Uは、GTCによって発生されるDC電圧であり、uは、GTAによって発生される周波数f=ω/2πで交番するAC電圧の振幅である。関心のない直流項、周波数2fの項と周波数fの項との間の区別がなされる。我々が、U>>u(例えばU≧10u)を選択する場合に、周波数2fの項は、無視することができ、構造P1は、周波数fにおける振動にセットされる。実際に、DC電圧の機能は、いわばAC電圧の影響を「増幅する」ことである。
【0043】
本発明の重要な態様は、抵抗領域R1及びR3が、比較的低い長さ/幅比率(典型的には1〜5)を示し、それによって、10オームのシート抵抗を仮定すると、10Ω〜50Ωの抵抗に対応し、更に平行に接続されるということである。従って、抵抗R=R1//R3は、上記の式で分かるように、熱アクチュエータにおいて消費されるパワーを増加させる低い値を示すことができる。
【0044】
図3aの例において、抵抗領域R2は、受動的である。変形として、それは、図3bの場合におけるように、構造P1の振動を検出するピエゾ抵抗センサとして使用されるか、又はもっと先で説明される図4a及び4bの場合におけるように、I1intをコンタクトパッドPLM1に連結する導電トラックを担持することが可能である。
【0045】
インジェクタI1intに堆積された金属層は、接地面又は少なくとも非常に低い電位の平面を画定し、それは、構造P1において作動信号が接合部を超えて伝搬するのを防ぐ。(I2、PAI2、PLS1)に類似しているが、しかしI1の反対側に位置する構造によって、必要ならば別の接地面を追加することがまた可能である。
【0046】
DC電圧発生器GTCは、DC電流発生器と取り替えるか又は無いことが可能である(その場合に、式(3)の二次項を介して、機械的構造P1共振周波数fに近いか又は同一の周波数fにおいて機械的構造P1の励起を得るために、周波数f/2で交番するAC励起電流を用いることが適切であろう)。AC電圧発生器は、AC電流発生器又は無線周波数発生器と取り替えることが可能である。AC発生器を用いない準静的な動作を想定することさえも可能である。
【0047】
変形として、励起回路CXは、抵抗測定回路と取り替えられ、ピエゾ抵抗効果によりR1//R3の抵抗における変動によって明らかにされる構造P1の振動の検出を可能にし得る。この場合は、図3bに関連してより詳細に説明される。熱作動による構造P1の振動の励起及びピエゾ抵抗効果によるこの振動の検出の両方を可能にする回路を用いることがまた可能である。特に、これは、前に言及したように、周波数f/2で交番するAC電流を用いて励起が得られる場合に可能である。この場合に、励起信号(f/2)及び測定信号(f)は、電気フィルタによって分離することができる。しかしながら、これは、好ましい実施形態ではない。
【0048】
図3bのデバイスは、図3aのデバイスの変形を構成する。主な差は、次の通りである。
− 抵抗R1、R3は、エッチングによってではなく、もっぱらドーピング領域ZI1の形状によって画定される。従って、抵抗領域R2は存在しない。
− コンタクトパッドPLM2は無く、一方でパッドPLM1は、より幅が広く、構造P1の固着領域全体にわたって延びる。
− 電圧発生器GTC、GTAは、抵抗を測定するために回路CMRと取り替えられ、抵抗領域R1、R3をピエゾ抵抗センサとして用いることを可能にする。
【0049】
回路CMRは、直列の抵抗RM及びインダクタンスLMを通ってパッドPLS1に連結される、連続的又はゆっくり変化する(f/10を超えない周波数)電圧(又は電流)発生器GMを含む(抵抗RMは、単に発生器の内部抵抗であってもよい)。かかるトポロジは、「バイアスT」(又は「バイアスティー」)なる名称で知られている。アセンブリR1//R3の抵抗における周期的な変動によって誘起された、周波数fにおける電圧変動は、リンクコンデンサCMを通って出力SMRから出力される。変形として、高周波数測定発生器(10f以上の周波数F)を用いること、及び後で復調されるF+f又はF−fにおける測定信号を検出することが可能であろう。
【0050】
図4aのデバイスにおいて、インジェクタI2だけが、可撓性梁PAI1により担持された金属線によって接続パッド(PLS1)に接続され、一方でインジェクタI1は、このように短絡された抵抗領域R2の上に延びる金属線LM1(又はいずれにせよ強い導電性の線)によって、構造P1の固着部を覆うパッドAPLM1に連結される。変形として、図3aの場合におけるように、P1が、組み入れられる場所に対応して2つの別個のコンタクトパッドを有することが可能であろう。この場合に、LM1の存在によって、2つのパッドは、接地パッド機能を有するであろう。
【0051】
パッドPLM1は接地され、一方でパッドPLS1は、例えば図3a及び3bに関連して上記で説明した方法で動作できる作動及び/又は検出回路に連結される。
【0052】
R2の上の金属線の使用は、反直観的である。何故なら、それは、R1及びR3に作用する歪みに対して反対符号の歪みにさらされるからである。実際に、層LM1は、R1、R3よりはるかに低いゲージ率を有する。層LM1が、金属又は高い導電性の層を含むので、それは、R2を短絡させる。従って、R1及びR3における電流は、ピエゾ抵抗応答を支配する。
【0053】
アクチュエータとして使用される場合に、R1、R3だけを加熱することが望まれるのに対して、R2の側面を通過するジュール電力が、梁の上部アームの加熱に寄与することが嫌われる可能性がある。しかし実際には、LM1が金属で作製されるので、I1int上の電位は、ゼロに近い。従って、積U*Iは、I2の非ゼロ電位を介して供給されるR3及びR1における積U*Iと比較して、極めて小さい。
【0054】
図4aのデバイスにおいて、インジェクタI1が、I2の方向と反対の横方向に延び、これが、P1の平衡を保つ効果を有することが注目される。かかる配置は、任意選択であるが、同様に他の実施形態において用いることができる。
【0055】
図4bは、図4aのデバイスの変形を示し、そこでは、例えばシリコン酸化物(SiO)又はパリレンで作製された誘電体層CDが、インジェクタI2及びこのインジェクタを信号コンタクトパッドPLS1に連結する信号線、並びに任意選択的にパッド自体の一部を覆う。金属層CMMは、この誘電体層の上に堆積され、且つコンタクトパッドPLM2(又は変形としてパッドPLM1)を介して接地される。これは、電磁妨害から信号線を分離できるようにする。層CMM及びCDは、線A−A’に沿って構造の断面図を示す挿入図上で特にはっきりと見える。
【0056】
可撓性梁PAI2の二重に曲げられた形状もまた注目される。
【0057】
図4cは、変形を示し、そこでは、もはやどんな注入ゾーンZI1も存在せず、抵抗R1及びR3は、シリサイド(シリコンと、プラチナ、アルミニウムなどの金属との合金)によって又は極めて局所的な注入によって、例えば、プラチナなどの堆積金属で作製された導電性薄層CMCからなる。
【0058】
図5のデバイスは、差動モードにおける動作を可能にする。このデバイスにおいて、長手方向構造P1は、図3aの場合におけるような同じ複合構造を示す。それは、別々に組み入れられた2つの平行な長手方向梁P1a、P1bを含む。2つの金属化が、これらの梁の固着部APLS1、APLS2の上にコンタクトパッドPLS1、PLS2を形成する。単一のインジェクタI10は、梁P1a、P1bのドープされた接合部の上に延び、且つ可撓性の解放された梁PAI1上に堆積された導電線によって、接地コンタクトパッドPLM1に連結される。2つの抵抗領域R10、R20は、P1a及びP1bの接合部においてそれぞれ画定される。検出モードでデバイスを用いる場合に、平面における構造P1の屈曲が、反対の方法でR10及びR20の抵抗に影響することが分かる。従って、向上した感度でP1の振動を検出するために、差動抵抗測定を実行することが可能である。
【0059】
相反的に、DC電圧に重畳された、逆位相で交番する電圧(又は実際には、DC成分がない状態で、求められるP1の振動周波数の半分と等しい周波数における直行する位相のAC電圧)をPLS1及びPLS2に印加することによって、差動作動をもたらすことが可能である。
【0060】
図5において、参照符号CADDは、差動作動及び/又は検出回路を示す。
【0061】
今度は、屈曲において作動される長手方向構造P1は、その運動又はその変形を引き起こすおよび/又は検出することによって、より複雑なシステムの別の微小機械部材に作用することができる。かかるシステムの例が、図6〜10に示されている。
【0062】
図6は、本発明による2つのデバイスを実装した複合的マイクロエレクトロメカニカルシステム(原子間力顕微鏡(AFM)プローブ)を表す。原子間力顕微鏡プローブは、基板Sのエッジから突き出る梁PLによって担持されたAFM先端、PAFMを含む。梁PLは、基板の平面と平行な、その長手方向(x)において振動することができる。従って、それは、図4aのタイプのデバイスに属する2つの横方向アームP1、P1’の支持でつり下げられる。参照符号PLM1、PLS1、I1、I2は、第1のデバイスDのコンタクトパッド及びインジェクタを示し、参照符号PLM1’、PLS1’、I1’、I2’は、第2のデバイスD’の対応する要素を示す。
【0063】
第1のデバイスDは、励起回路CXに連結され、且つ梁PLの作動のために働く。第2のデバイスD’は、前記梁の振動を検出するために、測定回路CMRに連結される。
【0064】
このタイプのシステムは、SOI技術で作製された。図9aは、電子顕微鏡検査によって得られたシステムの画像を示す(本発明の理解のために関心のない画像の或る部分は隠された)。図9bは、インジェクタI1、I2を示す詳細図である。図10は、振幅2dBmの電気信号を注入することによりシステムの振動を励起することによって実行された測定の結果を示し、その周波数は、範囲2〜6.5MHzを走査する。励起信号の周波数の2倍の周波数におけるシステムの機械的な振動は、0.2VのDCバイアス電圧を検出回路に印加することによって検出される。図に再現された測定曲線は、8.78MHzの共振周波数でローレンツ型のスパイクを示す。
【0065】
図7は、図6のマイクロエレクトロメカニカルシステムと類似したマイクロエレクトロメカニカルシステムを示すが、しかし差動型の作動及び検出を可能にする図5のタイプの2つのデバイスを用いる。
【0066】
参照符号PLM2、PLS1、PLS2、I10は、第1のデバイスDのコンタクトパッド及びインジェクタを示し、参照符号PLM2’、PLS1’、PLS2’、I10’は、第2のデバイスD’の対応する要素を示す。デバイスDは、作動において用いられる。そのパッドPLS1、PLS2は、DC成分に重畳された、共通の発生器及び180°移相器を用いることによって得られた、同じ周波数で逆位相の2つの交流電気信号を受信するために、差動作動回路CADに連結される。デバイスD’は、検出において用いられる。そのパッドPLS1’、PLS2’は、差動検出回路CDDの入力部に連結される。
【0067】
図8は、図3bのタイプの2つのデバイスD、D’を用いる加速度計型のマイクロエレクトロメカニカルシステムを示す。参照符号I1、I2、PLM1、PLM2、PLS1、PLS2は、デバイスDのインジェクタ及びコンタクトパッドを表し、参照符号I1’I2’、PLM1’、PLM2’、PLS1’、PLS2’は、デバイスD’の同じ要素を示す。
【0068】
システムは、梁型要素PLであって、直角の方向xに延びる別の梁PMMによって可動質量MMに接続される、方向yに延びる梁型要素PLを含む。この可動質量は、AMM1及びAMM2において固着される。2つのデバイスの1つ、例えばDは、梁PMMを振動に設定できるようにし、一方で第2のシステム、例えばD’は、前記梁の共振周波数を測定する。加速中に、可動質量は移動し、梁PMMを圧縮するか又は伸ばし、且つその共振周波数の検出可能な変化を誘起する。
【符号の説明】
【0069】
AFM 原子間力顕微鏡
APLM1、APLM2 中央部
APLS1、APLS2 固着部
CAD 差動作動回路
CADD 差動作動及び/又は検出回路
CD 誘電体層
CDD 差動検出回路
CM リンクコンデンサ
CMC 導電性薄層
CMM 金属層
CMR 電気検出回路
CX 電気作動回路
D 第1のデバイス
D’ 第2のデバイス
DL デバイス層
GTA AC電圧発生器
GTC DC電圧発生器
I1、I2 インジェクタ
I1int 要素
IL 横方向インジェクタ
LM1 金属線
P 固定梁
P1 機械的構造
P1a、P1b 長手方向梁
PAFM AFM先端
PAI1、PAI2 PL PMM 梁
PC1、PC2 PLM1、PLM2、PLM3、PLS1、PLM1’、PLS1’、I1’、I2’ コンタクトパッド
MM 可動質量
R1、R2、R3、R10、R20 抵抗領域
S 基板
SMR 出力
TR 抵抗型変換器
Z1 第1のコンタクトゾーン
Z1’ 第2のコンタクトゾーン
Z2 第1の接合領域
Z2’ 第2の接合領域
Zi 固有領域
ZI1 ドーピング領域
c1、Ra1、R、Ra2、Rc2、Rsq 抵抗
acc アクセス抵抗
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
【外国語明細書】
2017080872000001.pdf