(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-80962(P2017-80962A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】二重構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/12 20060101AFI20170414BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20170414BHJP
B29C 49/20 20060101ALI20170414BHJP
B29C 51/02 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
B29C51/12
B29C49/04
B29C49/20
B29C51/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-210067(P2015-210067)
(22)【出願日】2015年10月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】谷 奈央人
(72)【発明者】
【氏名】玉田 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】横田 健
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AD12
4F208AD25
4F208AG08
4F208AG24
4F208AG27
4F208LA08
4F208LB12
4F208LG05
4F208LG08
4F208LG22
4F208LJ05
4F208LJ29
4F208MA01
4F208MA10
4F208MB11
4F208MG07
4F208MJ05
4F208MJ09
4F208MJ29
(57)【要約】
【課題】 量産性に優れ、製造コストを抑えることが可能で、設計の自由度の高い二重構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】 一対の樹脂シートを金型のキャビティ面から真空吸引することによりそれぞれ賦形し、予め成形された内側成形体を前記一対の樹脂シートの間に配置した状態で前記金型を型締めすることにより、賦形された前記一対の樹脂シートを一体化し外側成形体を成形するとともに、外側成形体の内側に所定の間隙をもって前記内側成形体を配置する。例えば、前記内側成形体を成形する際に前記内側成形体から延出するリブを形成し、このリブを外側成形体と一体化することで、外側成形体の内側に所定の間隙をもって内側成形体を配置し一体化する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の樹脂シートを金型のキャビティ面から真空吸引することによりそれぞれ賦形し、
予め成形された内側成形体を前記一対の樹脂シートの間に配置した状態で前記金型を型締めすることにより、賦形された前記一対の樹脂シートを一体化し外側成形体を成形するとともに、外側成形体の内側に所定の間隙をもって前記内側成形体を配置することを特徴とする二重構造体の製造方法。
【請求項2】
前記内側成形体を成形する際に前記内側成形体から延出するリブを形成し、このリブを外側成形体と一体化することで、外側成形体の内側に所定の間隙をもって内側成形体を配置し一体化することを特徴とする請求項1記載の二重構造体の製造方法。
【請求項3】
前記リブは、前記内側成形体のパーティングラインに沿って形成され、
前記金型を型締めする際に、前記リブが前記外側成形体を形成するための樹脂シートに挟み込まれるように成形することを特徴とする請求項2記載の二重構造体の製造方法。
【請求項4】
前記内側成形体は、一対の樹脂シートを金型のキャビティ面から真空吸引することによりそれぞれ賦形した後、金型を型締めして賦形された樹脂シートを一体化することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の二重構造体の製造方法。
【請求項5】
前記内側成形体の成形と、前記外側成形体の成形及び内側成形体との一体化を、同じ金型を用いて行うことを特徴とする請求項4記載の二重構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側成形体の中に内側成形体を所定の間隙をもって配置した二重構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用ダクトの分野においては、管本体における開口部近傍に、他の管状部材と接続するためのフランジ部が設けられた発泡成形体が広く用いられている。 特に、エアコンからの空気を通風させるためのダクトでは、管状の発泡成形体を用いることにより、断熱性に優れ、軽量なダクトを実現することができる。さらに、こうしたダクトでは、製造時の発泡倍率を上げて発泡体内部の気泡を多くすることにより、断熱性、軽量さをさらに向上させることができるため、より効果的である。
【0003】
こうした発泡成形体の製造方法としては、溶融樹脂を分割金型で型締めして成形する方法が広く知られている。近年では、成形技術の向上に伴い、管状発泡体の発泡倍率を向上させた量産化が可能となりつつある。
【0004】
ただし、発泡倍率を上げることには自ずと限度があり、発泡倍率の向上だけで断熱性や軽量化をこれ以上飛躍的に向上させることは難しいのが実情である。また、発泡倍率の向上は、剛性不足の要因となるおそれもあり、この点においても問題が生ずることが想定される。
【0005】
このような状況から、ブロー成形により2重壁ブロー成形体を成形する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。2重壁ブロー成形体では、外側ブロー成形体と内側ブロー成形体が所定の間隔でつながった構成を有しているため、各成形体の発泡倍率を上げなくても断熱性を確保することができるという効果が得られるものと考えられる。
【0006】
具体的には、特許文献1記載の発明には、開いたブロー成形金型の間に予めブロー成形された内側ブロー成形体を配置し、内側ブロー成形体の外側に筒状のパリソンを降下させ、ブロー成形金型を閉じて型締めし、このときパリソンの一部を前記ブロー成形金型により内側ブロー成形体に向けて押し付けて内側ブロー成形体の表面に複数箇所で溶着させ、続いてパリソンと内側ブロー成形体の間、及び内側ブロー成形体の内側に加圧エアを吹き込み、パリソンをブロー成形して、内外ブロー成形体が複数個のリブで接続された2重壁ブロー成形体を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4871686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載される製造方法は、外側ブロー成形体を円筒状のパリソンを用いてブロー成形しているため、成形自体が難しく、様々な課題を残している。例えば、円筒状のパリソン内に内側ブロー成形体を挿入する場合、円筒状のパリソンが内側ブロー成形体に接触してしまうと不良品になってしまう。したがって、生産性を向上しようとすると不良品が多発するおそれがあり、量産性の点で問題が多い。
【0009】
また、これを避けるために円筒状のパリソンの内径を大きくすると、外側ブロー成形品の成形の際にバリが多くなり、製造コストの点で不利である。さらに、ブロー成形による外側ブロー成形体と内側ブロー成形体の一体化では、外側ブロー成形体と内側ブロー成形体の間の間隙を狭くすることが難しい等、設計の自由度が低いという問題もある。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、量産性に優れ、製造コストを抑えることが可能で、しかも設計の自由度の高い新規な二重構造体(例えば二重構造ダクト)の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために、本発明の二重構造体(例えば二重構造ダクト)の製造方法は、一対の樹脂シートを金型のキャビティ面から真空吸引することによりそれぞれ賦形し、予め成形された内側成形体を前記一対の樹脂シートの間に配置した状態で前記金型を型締めすることにより、賦形された前記一対の樹脂シートを一体化し外側成形体を成形するとともに、外側成形体の内側に所定の間隙をもって前記内側成形体を配置することを特徴とする。
【0012】
本発明の製造方法では、外側成形体を金型で予め賦形した後、間に内側成形体を挿入するようにしているので、パリソンが内側成形体に接触することによる不良の発生がない。したがって、量産性の点で有利である。また、外側成形体は、適正なサイズの樹脂シートにより成形することができるので、バリの発生が必要最小限に抑えられ、製造コストの削減に繋がる。さらに、内側成形体の挿入の際に、内側成形体と外側成形体の間隔を任意に設定することができるので、設計の自由度が高い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発泡倍率を上げずに優れた断熱性を有し、且つ剛性の高い二重構造体(例えば二重構造ダクト)を製造することが可能である。また、本発明によれば、量産性に優れ、製造コストを抑えることが可能で、設計の自由度の高い二重構造体の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】二重構造ダクトの製造工程を示すものであり、内側成形体形成用の溶融樹脂シートを配置する工程を示す図である。
【
図2】内側成形体形成用の樹脂シートの賦形工程を示す図である。
【
図3】型締めによる内側成形体の成形工程を示す図である。
【
図4】成形される内側成形体を一部破断して示す概略斜視図である。
【
図5】外側成形体形成用の樹脂シートの配置工程を示す図である。
【
図6】外側成形体形成用の樹脂シートの賦形工程を示す図である。
【
図8】型締めによる二重構造ダクトの成形工程を示す図である。
【
図9】成形される二重構造ダクトを一部破断して示す概略斜視図である。
【
図11】内側成形体と二重構造ダクトを同時成形可能とした金型の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を二重構造ダクトの製造に適用した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
本実施形態で製造される二重構造ダクトは、例えば自動車用ダクトであり、エアコンユニットから供給される冷暖風を所望の部位へ流通させるための軽量な管状成形体である。
【0017】
本実施形態の製造方法において二重構造ダクトを製造するには、先ず内側成形体の成形を行い、その後、外側成形体の成形と、外側成形体と内側成形体の一体化を行う。内側成形体は、外側成形体よりもサイズの小さいダクト形状に成形されるものであり、成形方法は任意である。例えばブロー成形や、2枚の樹脂シートを金型に真空吸引して賦形した後、型締めすることにより形成することができる。
【0018】
図1〜
図4は、内側成形体の成形工程の一例を示すものである(一次成形工程)。本例では、2枚の樹脂シートを金型に真空吸引して賦形した後、型締めすることにより内側成形体を成形している。すなわち、
図1に示すように、内側成形体の半体形状のキャビティ1,2を有する金型3,4を対向して配置し、熱可塑性樹脂等からなる2枚の溶融樹脂シート5,6をTダイから押し出し、前記金型3,4間に垂下させる。
【0019】
溶融樹脂シート5,6を垂下させた後、金型3,4を溶融樹脂シート5,6に向かって前方に移動させる。金型3,4と溶融樹脂シート5,6が接した後、金型3,4のキャビティ面に設けられた真空ベントから空気を吸引し、
図2に示すように、溶融樹脂シート5,6を金型3,4のキャビティ面に密着させる。
【0020】
このように溶融樹脂シート5,6を金型3,4のキャビティ面に密着させ、樹脂シート5,6を金型3,4のキャビティ面の表面に沿った形状に賦形した後、
図3に示すように、金型3,4をさらに前進させ、型締めを行う。
【0021】
型締めにより金型3,4のピンチオフ部が突き当たって2つの金型3,4のキャビティ1,2が閉鎖空間とされるとともに、樹脂シート5,6の周縁部同士が溶着される。これにより、2枚の樹脂シート5,6の接合面にパーティングラインが形成されるとともに、2枚の樹脂シート5,6の内部に中空部が形成され、ダクト形状とされる。
【0022】
次いで、金型3,4を互いに遠ざかるように移動させて型開きを行い、内側成形体10を取り出し、外周部のバリを除去する。これにより、内側成形体10を成形することができる。
【0023】
内側成形体10は、
図4に示すように、ダクト状の形態を有するものであるが、後述の外側成形体との一体化のためのリブ11を有している。リブ11の形成方法は任意であるが、樹脂シート5,6をコンプレッション(溶着)した部分を利用することで、簡単に形成することができる。この場合、内側成形体10のパーティングラインPLに沿ってリブ11が形成されることになる。
【0024】
リブ11の形状や形成位置、形成数等も任意であり、内側成形体10外側成形体に対して所定の間隙をもって支持可能であれば、リブ11の形状や形成位置、形成数等も任意である。例えば内側成形体10のパーティングラインPLに沿ってリブ11を形成する場合、所定の間隔で複数のリブ11を配列してもよいし、パーティングラインPLに沿って内側成形体10の長手方向に沿って連続的に形成してもよい。なお、内側成形体10の取り付け状態を安定化するためには、内側成形体10の両側のパーティングラインPLに沿ってそれぞれリブ11を形成することが好ましい。
【0025】
内側成形体10の成形材料(すなわち、樹脂シート5,6の材料)としては、主に熱可塑性樹脂を用いることができ、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、230℃におけるメルトテンションが30〜350mNの範囲内のポリプロピレンを用いることができる。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、およびその混合物を用いることができる。また、ポリオレフィン系樹脂に対して40質量%未満の範囲でスチレン系エラストマーまたは低密度のポリエチレンを添加することが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体等の水素添加ポリマーを用い、スチレン系エラストマーのスチレン含有量は30質量%未満であることが好ましい。また、低密度のポリエチレンとしては、密度0.91g/cm
3以下のものが用いられ、特にメタロセン系触媒により重合された直鎖状超低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0026】
内側成形体10は、発泡剤により樹脂を発泡させて成形した発泡成形体であってもよいし、発泡させていない非発泡体であってもよい。発泡発泡成形体とする場合、発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤およびその混合物のいずれを用いてもよい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。
【0027】
一方、外側成形体については、2枚の樹脂シートを金型に真空吸引して賦形した後、型締めすることにより成形する。
図5〜
図10は、外側成形体の成形、及び内側成形体の一体化による二重構造ダクトの成形工程(二次成形工程)を示すものである。
【0028】
外側成形体を成形するには、先の内側成形体10の成形と同様、
図5に示すように、外側成形体の半体形状のキャビティ21,22を有する金型23,24を対向して配置し、熱可塑性樹脂等からなる2枚の溶融樹脂シート25,26をTダイから押し出し、前記金型23,24間に垂下させる。この時、外側成形体の内径寸法が内側成形体の外径寸法よりも大きくなるようにキャビティ21,22の形状を設定する。成形される二重構造ダクトにおいては、外側成形体の内径寸法と内側成形体の外径寸法の差が外側成形体と内側成形体の間隙寸法となる。
【0029】
外側成形体を形成するための樹脂シート25,26には、先の内側成形体10の成形において使用される熱可塑性樹脂がいずれも使用可能である。内側成形体10と外側成形体の材質は、同じであっても良いし、異なっても良いが、熱融着による固定を考慮すると、同じ材質であることが好ましい。また、外側成形体も、発泡剤により樹脂を発泡させて成形した発泡成形体であってもよいし、発泡させていない非発泡体であってもよい。
【0030】
次に、金型23,24を溶融樹脂シート25,26に向かって前方に移動させる。金型23,24と溶融樹脂シート25,26が接した後、金型23,24のキャビティ面に設けられた真空ベントから空気を吸引し、
図6に示すように、溶融樹脂シート25,26を金型23,24のキャビティ面に密着させる。
【0031】
このように溶融樹脂シート25,26を金型23,24のキャビティ面に密着させ、樹脂シート25,26を金型23,24のキャビティ面の表面に沿った形状に賦形した後、
図7に示すように、金型23,24間に先に成形した内側成形体10を挿入する。内側成形体10の挿入は、樹脂シート25,26を金型23,24により賦形した後に行うので、不用意な接触による不良が発生することはない。したがって、内側成形体10と賦形した樹脂シート25,26の距離(間隔)は、任意に設定することができ、自由度が高い。
【0032】
前記内側成形体10の挿入の後、
図8に示すように、金型23,24を前進させ、型締めを行う。型締めにより金型23,24のピンチオフ部が突き当たって2つの金型23,24のキャビティ21,22が閉鎖空間とされるとともに、樹脂シート25,26の周縁部同士が溶着される。これにより、2枚の樹脂シート25,26の接合面にパーティングラインが形成されて外側成形体30が形成される。
【0033】
また、前記型締めにより、前記外側成形体30が成形されると同時に、外側成形体30と内側成形体10の一体化が行われる。具体的には、型締めにより外側成形体30を構成する樹脂シート25,26の周縁部が熱融着される際に、これら樹脂シート25,26間に内側成形体10のリブ11が挟み込まれ、熱融着される。これにより、内側成形体10がインモールド成形された形となり、内側成形体10は外側成形体30の内側に所定の間隙(中間空気層SP)をもって固定一体化される。
【0034】
なお、前記型締めに際しては、樹脂シート25,26の成形の仕上げのために、ブローを行うことも可能である。挿入された内側成形体10と賦形された樹脂シート25,26の間の空間にエアー吹き込みを行うことにより、外側成形体30の形状をキャビティ21,22の形状に正確に合致するように仕上げることができる。
【0035】
図9は、以上の工程を経て作製される二重構造ダクト40の形態を示すものである。前記の通り、成形された二重構造ダクト40では、外側成形体30のパーティングラインにおいて、内側成形体10のリブ11が外側成形体30のコンプレッション部31に挟み込まれた状態で支持され、所定の間隙をもって内側成形体10が配置され固定一体化されている。ここで、所定の間隙をもって内側成形体10が配置される状態とは、内側成形体10と外側成形体30の間に断熱のための中間空気層SPが形成された状態を言い、したがって間隙の寸法としては、数mm〜数cm程度である。
【0036】
二次成形後は、
図10に示すように、端部を切断する等の後処理が必要となるが、後処理工程は通常の加工工程にて対応が可能である。すなわち、二次成形後の二重構造ダクト40は、開口部が閉塞された形態で成形されるが、不要部の切断工程や、仕上げのプレス工程等は、内側成形体10と外側成形体30を同時に加工することが可能であり、工程数が増えることはない。
【0037】
以上により成形される二重構造ダクト40は、発泡倍率を上げなくても、外側成形体30と内側成形体10の間に中間空気層を有することから、いわゆるみなし発泡倍率を高めることができるので、優れた断熱性を有し、且つ剛性の高いダクトを実現することが可能である。
【0038】
また、前述の成形方法では、外側成形体30を金型23,24で予め賦形した後、間に内側成形体10を挿入するようにしているので、パリソンが内側成形体10に接触することによる不良の発生がない。したがって、量産性を高めることが可能である。さらに、外側成形体30の成形に際しては、接触を回避するために過大に大きなサイズのパリソンを使用する必要がなく、適正なサイズの樹脂シート25,26により成形することができるので、バリの発生が必要最小限に抑えられ、製造コストを削減することが可能である。さらにまた、内側成形体の挿入の際に、内側成形体と外側成形体の間隔を任意に設定することができるので、設計の自由度が高い。
【0039】
前述の製造方法では、一次成形(内側成形体10の成形)と二次成形(外側成形体の成形、及び内側成形内のインモールド)を別々の金型で別工程として行っているが、これら工程を1つの金型で行うことも可能である。
【0040】
図11は、一次成形と二次成形を同時に行う金型の一例を示すものである。使用する金型は、2つの分割金型51,52から構成され、内側成形体を成形するためのキャビティ53,54と、外側成形体を成形するためのキャビティ55,56がそれぞれ並列に形成されている。キャビティ53,54及びキャビティ55,56に対応して、それぞれ溶融樹脂シートを供給し、内側成形体及び外側成形体の成形を行う。一次成形と二次成形は、通常、2ショットで行うが、図中、左側部分で成形した内側成形体を、図中右側の外側成形体の成形の際に挿入する、という操作を繰り返し行えば、内側成形体の成形(一次成形)と二次成形(外側成形体の成形、及び内側成形内のインモールド)を1ショットで行うことができる。
【0041】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、先の実施形態では、二重構造ダクトに適用した実施形態について説明したが、二重構造体としてはダクトに限らず、種々の成形体に適用することが可能である。その場合、内側成形体10や外側成形体30の形状等は任意に設定することができ、場合によっては、内側成形体10は中空でなくてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1,2 キャビティ
3,4 金型
5,6 樹脂シート
10 内側成形体
11 リブ
21,22 キャビティ
23,24 金型
25,26 樹脂シート
30 外側成形体
31 コンプレッション部
40 二重構造ダクト
51,52 分割金型
53,54 キャビティ(内側成形体成形用)
55,56 キャビティ(外側成形体成形用)