特開2017-81018(P2017-81018A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キョーラク株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017081018-中空の一次成形品及びその製造方法 図000003
  • 特開2017081018-中空の一次成形品及びその製造方法 図000004
  • 特開2017081018-中空の一次成形品及びその製造方法 図000005
  • 特開2017081018-中空の一次成形品及びその製造方法 図000006
  • 特開2017081018-中空の一次成形品及びその製造方法 図000007
  • 特開2017081018-中空の一次成形品及びその製造方法 図000008
  • 特開2017081018-中空の一次成形品及びその製造方法 図000009
  • 特開2017081018-中空の一次成形品及びその製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-81018(P2017-81018A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】中空の一次成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/60 20060101AFI20170414BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20170414BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
   B29C49/60
   B29C49/48
   B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-212351(P2015-212351)
(22)【出願日】2015年10月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 浩平
【テーマコード(参考)】
4F202
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AG07
4F202AG25
4F202AG28
4F202AH17
4F202CA15
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK19
4F202CK23
4F202CK35
4F202CK90
4F208AG07
4F208AG25
4F208AG28
4F208AH17
4F208LA09
4F208LG04
4F208LG22
4F208LN05
4F208LN07
4F208LN09
(57)【要約】
【課題】成形性のみを念頭にエアブローを行っても、最終成形品部内に樹脂屑が進入しないように樹脂屑を物理的に止めるブロー成形による一次成形品を提供する。
【解決手段】筒状の一次成形品1は、最終成形品部10と、最終成形品部10と境界線111を挟んで気体流路112を形成するように連続し、エアブローのための吹込み口113を有する捨て袋部11と、を備え、捨て袋部11は、境界線111と吹込み口113との間において捨て袋部11の表面11a,11bの少なくとも一部から内部に向かって突出し、気体流路112を部分的に遮断するリブ114,115と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の一次成形品であって、
最終成形品部と、
前記最終成形品部と境界線を挟んで気体流路を形成するように連続し、エアブローのための吹込み口を有する捨て袋部と、を備え、
前記捨て袋部は、前記境界線と前記吹込み口との間において前記捨て袋部の表面の少なくとも一部から内部に向かって突出し、前記気体流路を部分的に遮断するリブと、を備えることを特徴とする一次成形品。
【請求項2】
前記リブは、その先端において、対向する部分と当接することを特徴とする請求項1に記載の一次成形品。
【請求項3】
前記リブは、前記捨て袋部の対向する面の双方から内部に向かって突出する一対のリブから構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の一次成形品。
【請求項4】
前記リブは、潰しリブであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の一次成形品。
【請求項5】
前記リブは、前記捨て袋部の幅方向の両端部を除く中間部にあって前記境界線に平行に延在することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の一次成形品。
【請求項6】
中空の樹脂成形品の製造方法であって、
最終成形品部と、前記最終成形品部と境界線を挟んで気体流路を形成するように連続する捨て袋部と、を含む一次成形品の形状に対応するようにキャビティが形成された成形金型を構成する第1の分割金型及び第2の分割金型を用意するステップAと、
前記第1の分割金型と前記第2の分割金型との間にパリソンを配置するステップBと、
前記第1の分割金型と前記第2の分割金型を型締めするステップCと、
前記成形金型内であって、前記捨て袋部へ吹込み針を差し込むステップDと、
前記吹込み針から気体を吹き込み、前記パリソンから前記一次成形品を成形するステップEと、
前記第1の分割金型と前記第2の分割金型とを型開きするステップFと、
前記捨て袋部を前記一次成形品から切除するステップGと、を備え、
前記捨て袋部は、その表面の少なくとも一部から内部に向かって突出し、前記気体流路を部分的に遮断するリブを備え、
前記ステップDにおいて、前記吹込み針は、前記リブを挟んで前記最終成形品部とは反対側に差し込まれることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記リブは、前記気体流路を遮断する方向に延在し、
前記ステップDにおいて、前記吹込み針は、前記リブの延在する方向に対して平行するように差し込まれることを特徴とする請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記吹込み針は、差込方向と吹込み方向が同一であるタケヤリ針であり、先端を斜めに切断して形成された開口部が前記リブとは反対側に向くように差し込まれることを特徴とする請求項7に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記リブは、前記気体流路を遮断する方向に延在し、
前記ステップDにおいて、前記吹込み針は、前記リブの延在する方向に対して直交するように差し込まれ、前記吹込み針の先端は、前記リブの近傍に配置されることを特徴とする請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空の一次成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形は、各種の樹脂製の中空製品を成形するにあたって、好適に用いられている。例えば、自動車用のインパネ内空調ダクト、天井内空調ダクト、ドアトリム内衝撃吸収パッド、シートベルトのベルトバックルカバーなどを始め、各種の食品容器や医療容器、ソーラパネルを載置するフロートなど、多岐の用途にわたって用いられている。
【0003】
ブロー成形は、押出し機によって樹脂材を溶融し、ヘッドを介して筒状に形成されたパリソンを金型内に挟み込み、その内側に気体を吹き込むことによって、その圧力で金型の内面にパリソンを押しつけて中空体を成形する成形方法である(例えば、特許文献1参照)。したがって、ブロー成形においては、樹脂材のパリソン内に気体を吹き込む、吹込み針によるエアブローが必須条件となる。このエアブロー時に、吹込み針の先端が樹脂を損傷させることで、成形品の内面に樹脂屑が飛散又は付着するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−14007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、成形性のみを念頭にエアブローを行っても、最終成形品部内に樹脂屑が進入しないように樹脂屑を物理的に止める一次成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、中空の一次成形品であって、最終成形品部と、前記最終成形品部と境界線を挟んで気体流路を形成するように連続し、エアブローのための吹込み口を有する捨て袋部と、を備え、前記捨て袋部は、前記境界線と前記吹込み口との間において前記捨て袋部の表面の少なくとも一部から内部に向かって突出し、前記気体流路を部分的に遮断するリブと、を備えることを特徴とする。
【0007】
(2)上記(1)の構成において、前記リブは、その先端において、対向する部分と当接してもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記リブは、前記捨て袋部の対向する面の双方から内部に向かって突出する一対のリブから構成されてもよい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの構成において、前記リブは、潰しリブであってもよい。
【0010】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記リブは、前記捨て袋部の幅方向の両端部を除く中間部にあって前記境界線に平行に延在してもよい。
【0011】
(6)本発明の第2の観点は、中空の樹脂成形品の製造方法であって、最終成形品部と、前記最終成形品部と境界線を挟んで気体流路を形成するように連続する捨て袋部と、を含む一次成形品の形状に対応するようにキャビティが形成された成形金型を構成する第1の分割金型及び第2の分割金型を用意するステップAと、前記第1の分割金型と前記第2の分割金型との間にパリソンを配置するステップBと、前記第1の分割金型と前記第2の分割金型を型締めするステップCと、前記成形金型内であって、前記捨て袋部へ吹込み針を差し込むステップDと、前記吹込み針から気体を吹き込み、前記パリソンから前記一次成形品を成形するステップEと、前記第1の分割金型と前記第2の分割金型とを型開きするステップFと、前記捨て袋部を前記一次成形品から切除するステップGと、を備え、前記捨て袋部は、その表面の少なくとも一部から内部に向かって突出し、前記気体流路を部分的に遮断するリブを備え、前記ステップDにおいて、前記吹込み針は、前記リブを挟んで前記最終成形品部とは反対側に差し込まれることを特徴とする。
【0012】
(7)上記(6)の構成において、前記リブは、前記気体流路を遮断する方向に延在し、前記ステップDにおいて、前記吹込み針は、前記リブの延在する方向に対して平行するように差し込まれてもよい。
【0013】
(8)上記(7)の構成において、前記吹込み針は、差込方向と吹込み方向が同一であるタケヤリ針であり、先端を斜めに切断して形成された開口部が前記リブとは反対側に向くように差し込まれてもよい。
【0014】
(9)上記(6)の構成において、前記リブは、前記気体流路を遮断する方向に延在し、前記ステップDにおいて、前記吹込み針は、前記リブの延在する方向に対して直交するように差し込まれ、前記吹込み針の先端は、前記リブの近傍に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形性のみを念頭にエアブローを行っても、最終成形品部内に樹脂屑が進入しないように樹脂屑を物理的に止める一次成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る一次成形品を示す斜視図である。
図2図1の一次成形品に含まれる最終成形品部を示す斜視図である。
図3図1の一次成形品にエアブロー成形用の吹込み針を挿入したときの正面図である。
図4図3を上方からみたときの平面図である。
図5図1のA−A線の切り欠いて示す図である。
図6図5の横断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る一次成形品において、気体の吹込み口の変形例を模式的に示す断面図である。
図8】最終成形品部を成形する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0018】
本発明は、例えば、自動車用のインパネ内空調ダクト、天井内空調ダクト、ドアトリム内衝撃吸収パッド、シートベルトのベルトバックルカバーなどを始め、各種の食品容器や医療容器、ソーラパネルを載置するフロートなど、様々な樹脂製の中空製品に適用できるが、ここでは、シートベルトのベルトバックルカバーを取り上げて、以下、説明する。
【0019】
(一次成形品10の全体構成)
図1は、本実施形態に係る一次成形品1を示している。一次成形品1は、最終成形品部10としてのベルトバックルカバー10と、ベルトバックルカバー10の両端に境界線111,121を挟んで連続する捨て袋部11,12とから構成される。捨て袋部11,12は、一次成形品1がブロー成形によって成形されて金型から取り出された後、境界線111,121を切断船として切断される。
【0020】
図2は、捨て袋部11,12を切断した後のベルトバックルカバー10を示している。ここでは、ベルトバックルカバー10は、自動車の特に後部座席において用いられ易いように、両端が90度捻回された例を示している。ベルトバックルカバー10の第1端側10aにはベルトバックルBBが差し込まれており、シートベルトSBのタングプレートTPが嵌入される。反対の第2端側10bからはベルトバックルBBから延在する別のシートベルトSBが車体に取り付けられている。
【0021】
このようにベルトバックルカバー10を90度捻回すると、車内側に露出する第1端10aが自動車の長手方向(すなわち進行方向)と平行となるため、座席に着席している搭乗者がシートベルトSBのタングプレートTPを差し込みやすいうえに、反対側の第2端10bは座席下などで車体の幅方向と平行となるため、第2端10bから引き出されたシートベルトSBの車体への取り付けが便宜となる。なお、ここでは、第1端10aは第2端10bに対し時計回りに捻回されている例を示しているが、逆に、半時計回りに捻回させても差し支えない。
【0022】
ベルトバックルカバー10は、シートベルトSB及びベルトバックルBBの形状に適合させるため、略矩形の断面を有する筒状となっている。第1端10aは、ベルトバックルBBを装着するに必要な空間を確保するため、第2端10bに対し相対的に厚みの大きい略矩形となっている。第2端10bは、シートベルトSBの厚みをカバーするに十分な空間があればよく、第1端10aに対し相対的に厚みの小さい略矩形となっている。
【0023】
(捨て袋部11の構成)
次に、捨て袋部11,12について、図3から図6を参照して説明する。前述のとおり、捨て袋部11,12は、ベルトバックルカバー10の両端に境界線111,121を挟んで連続しており、ベルトバックルカバー10との間で気体流路112,122を形成している。以下、捨て袋部11について、説明する。図3に示すように、捨て袋部11の表(おもて)面11aには、一次成形品1をエアブローするにあたって気体の吹込み針BNを挿通するための吹込み口113が設けられている。ここでは、吹込み口113は、捨て袋部11の側面11f端部であって捨て袋部11の背面11gと後述するリブ114と平行するように設けられている例を示している。また、吹込み針BNは、針の差込方向と吹込み方向が同一であるタケヤリ針の場合を示しており、先端を斜めに切断して形成されている開口部BN1は、リブ114とは反対側に向いている。
【0024】
吹込み口113及び吹込み針BNの方向を図3の上方からみると、図4に示すように、捨て袋部11の裏面11bの膨出部116に向かうようになっている。吹込み針BNから吹き込まれた気体は膨出部116の内面に吹き付けられた後、気体流路112の方向すなわち最終成形品部10へ流れていく。
【0025】
次に、捨て袋部11に設けられたリブ114及びリブ115について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、図3のA−A線を一部切り欠いて(一点鎖線で示した範囲)、捨て袋部11側から最終成形品部10側をみた図である。
【0026】
図1ほかに示すように、捨て袋部11の表面11aには、ベルトバックルカバー10との境界線111と、吹込み口113との間に、捨て袋部11の内部に向かって突出する(外観上は、内部に向かって凹む)リブ114が設けられている。図5及び図6に示すように、リブ114は、捨て袋部11の幅方向の両端部11c,11dを除く中間部11eにあって同方向に延在する。捨て袋部11の裏面11bには、リブ114に略対応する位置に、やはり捨て袋部11の内部に向かって突出するリブ115が設けられている。
【0027】
リブ114とリブ115は、互いに一対のリブとなっており、気体流路112を部分的に遮断している。このように気体流路112を部分的に遮断することにより、吹込み針BNを挿入したときに生ずる捨て袋部11の樹脂屑は、一対のリブ114,115によって遮られ、最終成形品部であるベルトバックルカバー10の内部への飛散、付着が防止される。
【0028】
具体的には、一対のリブ114,115は、捨て袋部11の幅方向の両端部11c,11dとは接しておらず、中間部11eのみを遮断している。したがって、吹込み針BNから吐出された気体は、一対のリブ114,115によって、捨て袋部11の気体流路112を直進することを遮られ、一対のリブ114,115を回り込むようにしてベルトバックルカバー10の内部に進入する。この過程で、捨て袋部11の樹脂屑は、一対のリブ114,115の吹込み口113側の前面に付着するほか、一対のリブ114,115周辺における気体の流速及び方向の分布とその変化、一対のリブ114,115からの気体の流れの剥離などの影響により、それらの側面や後面にも付着する。
【0029】
ここで、リブ114とリブ115はともに、捨て袋部11の幅方向の両端部11c,11dを除く中間部にあって同方向に延在しているが、幅方向に若干のずれをもって延在していてもよい。図6では、リブ114は、リブ115よりも、図中において左側に偏心している。このようにすると、捨て袋部11の幅方向の両端部11c,11dにおける気体流路112が左右で異形となり、気体の流れが左右で一様ではなくなり、樹脂屑が一対のリブ114,115の周辺により一層付着し易くなる。
【0030】
一対のリブ114,115はともに、図6に示すように、潰しリブとして構成することが好ましい。このようにすると、一対のリブ114,115の天面同士が隙間なく密着させることができ、気体流路112の中間部11eから気体がベルトバックルカバー10の内部へ直進することがない。一対のリブ114,115は、一次成形品1から捨て袋部11を境界線(切断線)111をもって切断して、最終成形品部であるベルトバックルカバー10を得る際、その切り口の変形を防止することにも効果がある。
【0031】
(リブ114,115の変形例)
以上の説明では、気体流路112の中間部11eを、捨て袋部11の表面11a、裏面11bの双方からを内部に向かって突出する一対のリブ114,115で遮断する場合を示したが、このほかにも、表面11aから裏面11bの内側に到達する1つの潰しリブ、又は、逆に、裏面11bから表面11aの内側に到達する1つの潰しリブとしてもよい。
【0032】
なお、以上では、吹込み口113が捨て袋部11の側面11f端部であって捨て袋部11の背面11gとリブ114,115と平行するように設けられている例を示しているが、図7に示すように、捨て袋部11の背面11g端部であって境界線111と直交するようにリブ114,115の略中央に向かって設けられていてもよい。この場合、吹込み口113に差し込まれる吹込み針BNの先端は、リブ114,115の近傍に配置される。
【0033】
(一次成形品1及びベルトバックルカバー10の材料)
ベルトバックルカバー10を含む一次成形品1は、ブロー成形により形成されたソリッドな樹脂材から構成されている。ブロー成形は、押出し機によって成形材料を溶融し、ヘッドを通り筒状に形成されたパリソンを金型内に挟み込みその内側に気体を吹き込み、その圧力で金型の内面にパリソンを押しつけて中空体を成形する成形方法である。このようにソリッドな樹脂材から構成されるベルトバックルカバー10は、捻回された状態でも所望の強度を得ることができる。
【0034】
一次成形品1は、ABS樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。捨て袋部11,12は、切断された後、原材料の樹脂材の中に戻してリサイクルされる。
【0035】
(一次成形品1及びベルトバックルカバー10の製造方法)
図8を参照して、樹脂成形品として一次成形品1及びベルトバックルカバー10の製造方法の例を説明する。
【0036】
成形装置20には、溶融樹脂の押出装置21と、押出装置21から押し出された筒状のパリソンPを型締めする一対の分割金型22A,22Bを有する型締装置22とから構成されている。押出装置21は、シリンダー内で溶融、混錬された樹脂をTダイ21Tに送入した後、パリソンPを下方へ連続的に押し出すようになっている。
【0037】
まず、最終成形品部10と、最終成形品部10と境界線111を挟んで気体流路を形成するように連続する捨て袋部11を含む一次成形品1の形状に加工された成形金型を構成する第1の分割金型22Aと第2の分割金型22Bを用意する(ステップA)(図8(a)参照)。一対の分割金型22A,22Bは、それらの対向する面にキャビティ23A,23Bが形成されており、各キャビティ23A,23Bの表面は、溶融状態のパリソンPによって成形される一次成形品1の表面形状に応じた凹凸を有する。一次成形品1は、最終成形品部としてのベルトバックルカバー10と、その両端に連続する捨て袋部11,12とから構成されている。この際、捨て袋部11が、その表面の少なくとも一部から内部に向かって突出し、最終成形品部10との境界線手前の気体流路を部分的に遮断するように対向する面と当接するリブ114,115を備えるように成形金型を加工する。
【0038】
次に、第1の分割金型22Aと第2の分割金型22Bの間に、溶融状態のパリソンPを配置し(ステップB)(図8(b)参照)、第1の分割金型22Aと第2の分割金型22Bをα’−α’方向に型締めする(ステップC)。一対の分割金型22A,22Bが型締めされた後、吹込み針BNが捨て袋部11の部分に第2の分割金型22bに設けられている挿入口26Bに差し込まれ(ステップD)、気体を吹き込み、一次成形品1を成形する(ステップE)(図8(c)参照)。その際、捨て袋部11の吹込み口113に差し込まれた吹込み針BNから吹き込まれる気体に混入する樹脂屑が、ベルトバックルカバー10との境界線111との間に設けられた一対のリブ114,115によって、ベルトバックルカバー10内部への進入を防止される。
【0039】
ここでは、吹込み針BNは、針の差込方向と吹込み方向が同一であるタケヤリ針である場合を示している。タケヤリ針は、その名のとおり、タケの先端を斜めに切断したタケヤリ状の吹込み針BNである。吹込み針BNは、捨て袋部11の裏面11bの膨出部116に向かうように差し込まれており、先端の開口部BN1は一対のリブ114,115とは反対側に向いている。吹込み針BNから吹き込まれた気体は膨出部116の内面に吹き付けられた後、気体流路112の方向すなわち最終成形品部10へ流れていく。
【0040】
吹込み針BNから気体を吹き込み成形し、所定の温度まで冷却した後、第1の分割金型22Aと第2の分割金型22Bを型開きして(ステップF)一対の分割金型22A,22Bを離型させる。そして、型開きした成形金型から一次成形品1を取り出し、捨て袋部11を切除した(ステップG)後、最終成形品部10を仕上げる。
【0041】
上述した実施形態では、最終成形品部として、自動車用のシートベルトSBのベルトバックルカバー10について説明したものである。しかし、これに限定されることはなく、本発明に係る捨て袋部11を含む一次成形品1は、最終成形品部として、自動車用のダクトなどの製品はもとより、自動車用以外の他の分野の製品にも適用できることはいうまでもない。
【0042】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、上記実施形態では、成形品の材料をソリッドな樹脂材として説明したが、発泡剤を添加した樹脂剤としてもよい。また、樹脂材料としては、筒状のパリソンに代えて、一対の樹脂シートをパリソンとして用いてもよい。さらにまた、吹込み針BNは、吹込み方向が針の差込方向と直交する方向にあるロケット針であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…一次成形品
10…ベルトバックルカバー(最終成形品部)
10a…第1端(ベルトバックルカバー10の)
10b…第2端(ベルトバックルカバー10の)
11…捨て袋部
11a…表面
11b…裏面
11c…両端部(の一部)
11d…両端部(の他方)
11e…中間部
11f…側面
11g…背面
111…境界線(切断線)
112…気体流路
113…吹込み口
114…リブ(一対のリブ)
115…リブ(一対のリブ)
116…膨出部
12…捨て袋部
121…境界線(切断線)
122…気体流路
20…成形装置
21…押出装置
21T…Tダイ
22…型締装置
22A,22B…分割金型
23A,23B…キャビティ
SB…シートベルト
BB…ベルトバックル
BN…吹込み針
P…パリソン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8