【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム、「エネルギー効率化社会構築に向けての省エネ列車運行制御システムの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】き電回路網のシミュレーション装置は、き電回路網の構成を示すき電線情報を受け付ける入力部と、き電線情報に含まれる変電所の位置を示す第一のノードと他のき電線と同電位となる位置を示す第二のノードと、を少なくとも記憶するノード記憶部と、き電線情報に基づく電位差を伴わないノード間接続を示す第一の接続態様と電位差を伴うノード間接続を示す第二の接続態様とを記憶する接続態様記憶部と、第一のノードと第二のノードと第一の接続態様と第二の接続態様とを用いて電位状態が固定された静的なき電回路網モデルを構築する構築部と、を備える。
前記取得部は、前記ノード記憶部から読み出したノードにそれぞれノード番号を付し、そのノード番号の数を列数とし、前記第一の接続態様の部位の存在数を行数とした行列式を前記同電位接続情報として取得し、
前記演算部は、前記行列式に基づき前記計算式を算出する請求項4に記載のき電回路網のシミュレーション装置。
前記取得部は、前記行列式の行ごとに、前記第一の接続態様で接続される前記ノードの前記ノード番号と前記第一の接続態様で接続されない前記ノードの前記ノード番号とを区別した前記行列式を取得する請求項5に記載のき電回路網のシミュレーション装置。
前記演算部は、前記第三のノード情報と前記同電位接続情報に基づき各ノードにおける電流則計算式を取得するとともに前記第一の接続態様に基づく電圧計算式を取得し、前記電流則計算式と前記電圧計算式の二乗和を最小化することで各ノードの電圧値を演算する請求項5または請求項6に記載のき電回路網のシミュレーション装置。
前記取得部は、前記き電線情報に基づき前記ノード記憶部から読み出した前記第一のノードと前記第二のノードを所定の優先順位にしたがって配列し、前記第二のノードを前記第一の接続態様で電位差を伴わない他のノードに接続し、前記移動体の存在位置に応じて前記第三のノードを前記優先順位にしたがって配列したノード間に挿入した後、前記ノード番号を昇順に付与する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のき電回路網のシミュレーション装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の例示的な実施形態や変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が省略される。
【0008】
本実施形態のシミュレータは、一例として、上下分割き電、もしくは、上下一括き電の電気鉄道向けき電システムに適用できる。そして、本実施形態のシミュレータは、単線、複線、複々線、支線など、様々なき電回路網構成について、新たな構成(線区の増減やき電線の増減)が必要とされた場合でも、プログラム(後述する変電所ノード等)の追加開発が不要もしくは最小限に抑えることができるものである。
【0009】
図1は、実施形態にかかるシミュレータ10(き電回路網のシミュレーション装置)の機能ブロック図である。シミュレータ10は、入力部12、ノード記憶部14、接続態様記憶部16、構築部18、取得部20、演算部22、出力部24等を含む。
【0010】
入力部12は、き電回路網の構成を示すき電線情報等を受け付ける。入力部12は、例えばシミュレータ10に接続されたキーボードやタッチパネル等の操作により入力値を受け付ける。入力部12は、例えば、ユーザが入力するき電線が「下り用き電線」か「上り用き電線」等のように線区内でのき電線の分類や、線区内での「き電線名」やき電線名ごとの「始端位置」、「終端位置」(線区の始端からの距離)、き電線ごとの「単位抵抗値」等を受け付ける。そのほか、シミュレーションを行う際の各種設定値等の入力も入力部12で受け付ける。例えば、シミュレーションを行う間隔(例えば、1秒間隔のシミュレーション等)の設定やシミュレーションを行う際の演算に必要な初期値の設定等も入力部12を介して行うことができる。
【0011】
ノード記憶部14は入力部12が受け付けたき電線情報に含まれる変電所の位置を示す第一のノード(以下、「変電所ノード」ともいう)と他のき電線と同電位となる位置を示す第二のノード(以下、「タイノード」ともいう)と、を少なくとも記憶する。また、ノード記憶部14は、き電回路網上に存在する移動体の位置を示す第三のノード(以下、「列車ノード」ともいう)を記憶する。ノード記憶部14は、例えば、シミュレータ10に接続された外部記憶装置(例えばHDD;Hard Disk Drive)等でもよいし、シミュレータ10に内蔵されたROM(Read Only Memory)等でもよい。また、接続態様記憶部16もシミュレータ10に接続された外部記憶装置(例えばHDD)等でもよいし、シミュレータ10に内蔵されたROM等でもよい。接続態様記憶部16は、き電線情報に基づく電位差を伴わないノード間接続を示す第一の接続態様(以下、「タイ接続」ともいう)と電位差を伴うノード間接続を示す第二の接続態様(以下、「非タイ接続」ともいう)とを示すリンク(ブランチ)を記憶する。なお、別の実施例においては、ノード記憶部14と接続態様記憶部16とは同一の記憶装置でもよい。
【0012】
構築部18は、変電所ノード(第一のノード)とタイノード(第二のノード)とタイ接続(第一の接続態様)と非タイ接続(第二の接続態様)とを用いて電位状態が固定された静的なき電回路網モデルを構築する。例えば、き電回路網上を列車が移動する場合、その移動(列車の位置)にしたがって、き電回路網上の電流値や電圧値が変化する。したがって、まず、列車のような電力計算結果を変化させる変動要素が含まれない状態のモデルを構築する。そして、構築部18は、構築した静的なき電回路網モデルに、列車の存在位置を示す列車ノード(第三のノード)を挿入することで、列車ノードの位置にしたがって電位状態が変動する動的なき電回路網モデル(列車運行中のモデル)を構築することができる。構築部18は、ハードウエアで構成してもよいし、シミュレータ10のCPU上で、記憶装置等に記憶したシミュレーション用のプログラムを実行することで実現してもよい。なお、入力部12は、き電線情報の修正情報を受け付けが可能であり、構築部18は、修正情報として入力されるノードおよびノード間の接続態様の増減により、既に構築されている静的なき電回路網モデルの拡縮を実行することができる。
【0013】
取得部20は、タイ接続(第一の接続態様)の位置とタイ接続された部位の存在数とを示す同電位接続情報(以下、「タイ行列」ともいう)を取得する(
図7参照)。タイ行列は、ノード記憶部14から読み出したノードのそれぞれにノード番号を付与し、そのノード番号の数を列数とし、タイ接続された部位の存在数を行数とした行列式を取得する。取得部20が取得するタイ行列は、行列式の行ごとに、タイ接続で接続されるノードのノード番号と、非タイ接続される(タイ接続で接続されない)ノードのノード番号とを区別する。例えば、「タイ接続」は、「1」で表現し、「非タイ接続」は「0」で表現する。このような行列式を生成することで、行列式の形(行数、列数)を確認するのみで、き電回路網モデルを構成するノードの数やタイ接続の部位の存在数等を容易に確認することができる。また、き電回路の接続関係を簡易的に表現することができる。
【0014】
演算部22は、列車ノードとタイ行列(同電位接続情報)に基づき各ノードの電圧値を演算する計算式を取得して演算を実行する。演算部22は、列車ノードの電流則(キルヒホッフの第一法則)の式(電流計算式)を作成し、さらに、タイ行列を参照してタイ接続されている部分のノードの電流則(キルヒホッフの第一法則)の式(電流計算式)と電圧計算式を作成する。そして、電流則計算式と電圧計算式との両方を満たす最適解を算出することで各ノードの電圧値を算出する。取得部20や演算部22は、ハードウエアで構成してもよいし、シミュレータ10のCPU上で、記憶装置等に記憶したシミュレーション用のプログラムを実行することで実現してもよい。
【0015】
出力部24は、演算部22による計算の結果を出力する。例えば、各ノードの電圧値およびその電圧値に基づく各ノード間を流れる電流値を出力する。出力部24は、例えば表示装置に結果を出力してもよいし、印刷物として結果を出力してもよい。
【0016】
続いて、本実施形態のシミュレータ10で構築するき電回路網モデルの一例を説明する。
図2には、本実施形態のシミュレータ10で構築されるき電回路網モデルと比較するために従来のシミュレータで構築されるき電回路網モデルを示している。
図2のモデルは、線区Aとこの線区Aに接続された線区Bからなるき電回路網モデルである。線区Aには、下りき電線26aと上りき電線26bとが存在する。また、線区Bには、上りき電線26cが存在する。そして、一例として線区Aには3つの変電所28(変電所28a,28b,28c)が存在する。き電回路の場合、変電所28の部分で下りき電線26aと上りき電線26bとが接続され、同一の変電所28から両方のき電線に電力の供給を行っている。したがって、変電所28の位置を示す変電所ノード30(30a,30b,30c)には、それぞれき電線構成に従う下りき電線26a、上りき電線26b、上りき電線26c等が接続されている。例えば、変電所ノード30aおよび変電所ノード30cでは、下りき電線26a用の入力側リンクと出力側リンクおよび上りき電線26b用の入力側リンクと出力側リンクが接続されている。つまり、変電所ノード30a,30cは、4本のリンクを有するノードである。一方、変電所ノード30bでは、下りき電線26a用の入力側リンクと出力側リンクと上りき電線26b用の入力側リンクと出力側リンクが接続されているとともに、線区Bの上りき電線26c用の出力側リンクが接続されている。つまり、変電所ノード30bは、5本のリンクを有するノードである。このように、従来のき電回路網モデルの場合、変電所28におけるき電線の接続の態様によって変電所ノード30の態様が異なり、別種類のノードとして表現される。このように、従来のき電回路網モデルの場合、物理的に存在するき電線構成(システム)に対応したノード態様で回路網を表現している。その結果、新たな線区を追加しようとした場合、いずれかの変電所から電力供給が必要になるので、変電所ノードの態様を変更する必要がある。例えば、変電所ノード30aを別の変電所ノードと入れ替える必要が生じる場合がある。この場合、き電回路網モデル全体の構成を新たに作り直すことになる。なお、
図2のき電回路網モデルには、列車の位置を示す列車ノード32が挿入されている。
図2の場合、6つの列車ノード32が挿入されている例である。同様に、線区を削除する場合も変電所ノードの変更が必要になる。
【0017】
一方、
図3は、本実施形態のシミュレータ10を利用した場合に構築されるき電回路網モデルであり、
図2に示すき電回路網モデルと等価である。前述したように、シミュレータ10は、変電所ノード、タイノード、列車ノード、タイ接続、非タイ接続を用いてき電回路網モデルを構築する。
図3の場合も
図2と同様に、線区Aとこの線区Aに接続された線区Bからなるき電回路網モデルである。線区Aには、下りき電線26aと上りき電線26bとが存在する。また、線区Bには、上りき電線26cが存在する。そして、一例として線区Aには3つの変電所28(変電所28a,28b,28c)が存在する。ここで、変電所28の位置を示す変電所ノード34の態様としては、下りき電線26aのみが接続されたノードであり、この変電所ノード34は、点線で示されるタイ接続36を介して上りき電線26bに接続されている。そして、タイ接続36と上りき電線26bの接続部分が、他のき電線と同電位となる位置を示すタイノード38で示されている。したがって、下りき電線26a、上りき電線26b、上りき電線26cにおいて、タイ接続36で接続されていない部分は、電位差を伴う接続状態(非タイ接続、第二の接続態様)である。なお、
図3に示すようなき電回路網モデルは、列車ノード32が挿入された列車の位置によって各部の電流値や電圧値が変化する「動的なき電回路網モデル」と称する。「動的なき電回路網モデル」は、実際に列車がき電回路網内に存在(停車または走行)している場合のシミュレーションに用いるものであり、入力部12から設定値を入力することで、例えば「1秒」ごとの車両の位置(列車が走行中の場合、列車ノード32の位置が変化する)に応じたき電回路網計算を実行することができる。一方、列車ノード32が挿入されていないき電回路網モデルは、「静的なき電回路網モデル」と称する。
【0018】
このような変電所ノード34、タイ接続36、タイノード38を用いることで、
図2の例では、異なる変電所ノードとして扱われた変電所ノード30a(30c)と変電所ノード30bとを同じ構成で表現することができる。つまり、変電所28bの位置を示す変電所ノード34は、下りき電線26aのみが接続されたノードである。そして、この変電所ノード34にタイ接続36を介して上りき電線26bが接続され、タイ接続36と上りき電線26bの接続部分がタイノード38(38a)で示される。ここまでの構成は、変電所28aに対応する変電所ノード34と同じである。さらに、変電所28bは、線区Bの上りき電線26cが同電位で接続されているので、タイノード38(38a)に、タイ接続36(36a)を介してタイノード38(38b)を接続することで上りき電線26cを変電所ノード34に接続できる。つまり、同電位となるき電線を増減する場合、タイノードとタイ接続を増減するのみでよい。したがって、基本となるき電回路網モデルに対してタイノード38やタイ接続36を増減させる修正を行うだけで、様々な態様のき電回路網モデルに変化させる(対応する)ことができる。例えば、すでに構築されたき電回路網モデルがある場合、入力部12から変電所ノード34やタイノード38、タイ接続36等を増減する修正情報を入力することで、異なる変電所ノード(異なるリンクの接続態様の変電所ノード)に容易に変更して、異なるき電回路網モデルに変化させることができる。このように、変電所ノード34とタイノード38とタイ接続36の組み合わせにより変電所におけるき電線の接続態様、例えば変電所に対するき電線の接続方向やき電線の接続本数のバリエーションを容易に得ることができる。その結果、限定された要素の組み合わせにより複数種類の静的なき電回路網モデルを容易に構築可能となる。すなわち、モデル全体の見直し(作り直し)を行うことなく、一部の修正、変更によってき電回路網モデルの拡縮が容易にできる。
【0019】
図4は従来のノード構成(左の欄)と本実施形態のノード構成(右の欄)の対応関係を説明する対比例である。なお、
図4において、四角形のマークは、変電所ノードを示し、付された数字はノードの種類を示している。なお、
図4の場合、変電所ノードにリンクを介して丸のマークで示す列車ノードが接続されている例を示している。したがって、リンクの接続数を変化させること、または接続方向を変化させることで、異なる構成のノードであることを示している。また、実施形態のノード構成(右の欄)に含まれる菱形のマークはタイノードを示し、そのマークに付された数字は、タイノードに接続されるリンクの数の違い、または接続方向の違いにより異なる種類のノードであることを示している。なお、実施形態のノード構成(右の欄)で変電所ノードとタイノードを接続する点線は、タイ接続を示している。
【0020】
図4に示すように、構成(a)〜(c)において、従来のノード構成(1)〜(3)と実施形態のノード構成(1)〜(3)は同じである。一方、構成(d)における実施形態のノード構成は、実施形態のノード構成(c)の変電所ノード(3)にタイ接続を介して下り方単線のタイノード(4)を追加することで、従来のノード構成の下り方複線・上り方単線のノード構成(4)と等価になっている。構成(e)における実施形態のノード構成は、実施形態のノード構成(c)の変電所ノード(3)にタイ接続を介して上り方単線のタイノード(5)を追加することで、従来のノード構成の下り方単線・上り方複線のノード構成(5)と等価になっている。同様に、構成(f)における実施形態のノード構成は、実施形態のノード構成(c)の変電所ノード(3)にタイ接続を介して下り方単線・上り方単線のタイノード(6)を追加することで、従来のノード構成の下り方複線・上り方複線のノード構成(6)と等価になっている。構成(g)以下は、図示されるように、実施形態のノード構成(c)の変電所ノード(3)にタイ接続を介してタイノード(4),(5),(6)のいずれかまたはそれらを組み合わせて追加することで、従来のノード構成(7)以降と等価の構成を作ることができる。つまり、本実施形態の変電所ノードを3種類、タイノードを3種類、およびタイ接続を用いることにより、従来のノード構成(7)以降のいずれでも構成することができる。なお、
図4は一例として、構成(a)〜構成(k)を示しているが、さらに多くの構成が存在し、それらの構成も3種類の変電所ノード、3種類のタイノードおよびタイ接続の組み合わせにより構成することができる。
【0021】
このように、本実施形態のシミュレータ10の場合、変電所ノード34とタイノード38、およびタイ接続36の組み合わせにより、様々な種類の変電所を示すノードが表現可能となる。つまり、従来に比べて、少ない種類のノードでき電回路網モデルが構築できる。言い換えれば、タイノード38とタイ接続36との増減によりき電回路網モデルの拡縮が容易にできる。つまり、き電回路網モデルの複雑化が抑制される。その結果、プログラム実装時のヒューマンエラー発生率低下による実装漏れバグの発生リスク低減、プログラム検証の際の検証項目立案時の網羅率向上による検証漏れリスク低減、上下線にそれぞれタイノードを配置してタイノード同士を接続することで任意の位置でのタイ(同電位)化が容易になる。つまり、き電回路網モデルの作成およびそれを用いたき電回路網計算の効率化に寄与できる。ここでの効率化とは、一例として処理の簡略化による効率化を意味する。例えば、本実施形態の場合、上り線と下り線とでそれぞれ独立して電流則計算式を立ててから両者を加算するだけで処理対象部分の電流則計算式を求めることができる。一方、従来は上り線で電流則計算式を立てる際に下り線との接続を考慮して処理中に条件分岐が必要になる場合があり処理が煩雑になる場合があった。本実施形態の場合、このような効率の悪い処理が削除できるので、き電回路網計算の効率化が実現できる。
【0022】
次に、
図5〜
図7を用いて、作成したき電回路網モデルを用いたき電回路網計算の概念を説明する。なお、
図5に示すき電回路網モデルは、
図3に示すき電回路網モデルと同じであり、詳細な説明は省略する。
【0023】
本実施形態のき電回路網モデルのき電回路網計算を行う際は、各ノードの流入電流、流出電流とノード間の電流を計算し、キルヒホッフの第一法則の式(キルヒホッフの電流則)を立てるとともに、タイ接続されている2つのノード間の電圧差が「0」という条件も同時に解く。
【0024】
本実施形態の場合、き電回路網計算を容易に行うために、き電回路網モデルを構成する各ノードに識別のためのノード番号を付与して、そのノード番号の数を列数とし、タイ接続の部位の存在数を行数とした行列式、すなわちタイ行列を作成する。
【0025】
図6は、
図5のき電回路網モデルを簡略化するとともに、各ノードにノード番号を付与した等価図である。各ノードに対するノード番号の付与の手順の一例を示す。ノード番号は、各ノードを所定の優先順位にしたがってソート(配列)してから付与する。まず、ノード番号は、線区ごとに付与する。本実施形態の場合、線区Aと線区Bが存在するので、線区Aに属するノードで構成される大グループAが優先され、線区Bに属するノードで構成される大グループBが次グループとなる。次に、各大グループ内で下りき電線26aに属するノードを中グループCとして優先グループとし、上りき電線26bに属するノードを中グループDとして次グループとする。さらに、各中グループの中で、それぞれのノードの位置(キロ程)にしたがって昇順に並べる。つまり、
図6の場合、線区Aの下りき電線の始端に近いノードからノード番号が付与される。次に、線区Aの上りき電線の始端に近いノードから後続のノード番号が付与され、最後の線区Bの上りき電線の始端に近いノードからさらに後続のノード番号が付与される。
図6の場合、ノード番号(1)〜ノード番号(13)が付与される例である。なお、この処理は、シミュレータ10における取得部20で実行される(
図1参照)。また、ノード番号の付与の優先順位は一例であり、一定の規則が成立していれば、優先順位の付け方は適宜変更できる。
【0026】
続いて、取得部20は、タイ接続の位置とタイ接続の部位の存在数とを示す同電位接続情報(タイ行列)を作成する。タイ行列は、ノード番号の数を列数とし、タイ接続の部位の存在数を行数とした行列式とする。
図6、
図7に示す例の場合、ノード番号の数は、「13」である。また、タイ接続の部位の存在数は、ノード(2)とノード(8)を接続する部分、ノード(5)とノード(10)とノード(12)を接続する部分、ノード(7)とノード(11)を接続する部分の3パターンであり、存在数は「3」である。したがって、
図5または
図6に示すき電回路網モデルの場合、「3×13」のタイ行列が作られる。また、タイ行列において、「行」ごとに、タイ接続で接続されるノードのノード番号と、タイ接続で接続されない(非タイ接続で接続された)ノードのノード番号とを区別している。例えば、タイ接続の部分は「1」、非タイ接続の部分は「0」を付与して区別する。このようにして作成したタイ行列を
図7に示す。つまり、タイ行列を参照すれば、「電位差を伴うノード接続」の情報と「電位差を伴わないノード接続=タイ接続」の情報を分離することができる。また、「タイ接続」は、たとえタイノードの接続数が増えても、タイノードの種類を追加するのではなくタイ行列の情報を変更するだけで済む。したがって、新たなノードの種類の追加は不要となる。
【0027】
次に、タイ行列を参照して、演算部22が実行するき電回路網計算の概念を説明する。なお、
図7のタイ行列を参照すれば、タイ接続されているノード、つまり電位差のない部分を容易に特定できる。例えば、ノード(2)とノード(8)がタイ接続されているので、この部分では電位差がないので、ノード(2)とノード(8)との間の電圧差が「0」という条件の式が成立する。そこで、まず便宜上タイ接続の部分は未接続であると見なして各ノードに対するキルヒホッフの第一法則の式(キルヒホッフの電流則)を算出する。例えば、
図5の変電所28aの変電所ノード34に着目すると、変電所ノード34に対応するノード番号(2)において、電流の流れ込む向きを正(または負)と統一するとき、各線の電流の総和は「0」になるので、
図5を参照すれば、電流則計算式として以下の(式1−1)が成立する。
【数1】
同様に、タイノード38に対応するノード番号(8)の場合、電流則計算式として以下の(式1−2)が成立する。
【数2】
そして、ノード(2)とノード(8)との間は実際には電位差がないので、(式1−1)と(式1−2)を加算して、電流則計算式として以下の(式1)を得ることができる。
【数3】
【0028】
また、タイ接続間が電圧「0」であるので、電圧計算式として以下の(式2)が成立する。
【数4】
そして、同様な計算式の算出を各列車ノードの部分と各タイ接続の部分に関して生成する。この場合、タイ行列を参照すればどのノードに対して電流則計算式同士の加算と電圧計算式の算出を行えばよいかが容易に抽出できる。
【0029】
続いて、算出した(式1)と(式2)を同時に満たす解を算出するが、(式1)は電流計算式であり、(式2)は電圧計算式であるので、き電回路網計算の結果を得る上で、各ノードにおける電流値の精度を重視するか電圧値の精度を重視するかに応じて重み付けを行う。そして、(式1)と(式2)の重み付き二乗和を求め、最小化対象の評価値とする。この評価値が「0」であれば、完全な解が求まったといえるが、実際「0」になることは困難であり、「0」になるべく近い近似解を求める。この方法(解法)は、き電回路網の構成の変化に依存しない。つまり、き電回路網モデルの構成が変化した場合(線区等が増減した場合)、算出する(式1)および(式2)の数が変化するのみで、き電回路網の構成が変更されても、新たな解法を追加開発する必要がないというメリットがある。
【0030】
なお、上述したき電回路網計算を行う場合に付与するノード番号は連続しているが、物理的に分離しているノード間のコンダクタンスは「0」とする。例えば、(
図6において、ノード番号(7)の変電所ノード34とノード番号(8)のタイノード38とは、物理的に分離しているため、コンダクタンス「0」である。また、き電回路網計算を行う場合、列車長は考慮せず、各列車とも1点でき電線に接続されていると見なす。抵抗は、き電線、トロリ線、レールなどをまとめ、変電所、列車ともに0Vに接地しているとする。そして、実際にシミュレーションを行う場合は、運行中の列車移動に合わせ、列車ノード32を在線位置に置いたき電回路網モデルを構築し、き電回路網計算を実行することになる。
【0031】
続いて、
図8のフローチャートを用いて、シミュレータ10における「タイ行列」の作成手順を詳細に説明する。なお、以下の説明では、一例として
図9に示すき電線構成に関するシミュレーションを行う場合を説明する。
図9において、「下りd1」、「下りd2」等は下りき電線の名称であり、「上りu1」、「上りu2」等は上りき電線の名称である。また、「タイ接続t1」、「タイ接続t2」等は、タイ接続の名称である。
【0032】
まず、ユーザは、シミュレータ10の入力部12から実際のき電線構成に従う入力設定を行う。構築部18は、入力設定が完了したことを示す信号を受け取ると(S100)、入力された各入力設定を予め定めた配列順になるようにソートする(S102)。例えば、線区順にソートする。次に、各線区の中で「下りき電線」、「上りき電線」の順にソートする。さらに、「下りき電線」および「上りき電線」のそれぞれの中で、始端位置の小さい順にソートする。このとき同じ始端位置のき電線はさらに終端位置の小さい(近い)順にソートする。ソートした結果を
図10に示す。
【0033】
続いて、構築部18では、ソートされた入力設定に対してノードを生成して、それをリスト化する(S104)。例えば、き電線の始端位置と終端位置をノードに割り当てる。
図11は、
図10のソート結果を用いてノードを生成することを説明する図であり、
図10のソート結果のリスト上でノードを示している。構築部18がノードを生成する場合、
図11に示すように、同じ線区で下り/上りが同じき電線群の中で、連続する終端位置と始端位置が同じ2つのき電線は終端位置と始端位置を1つのノードとする。
図12は、生成したノード(六角形のマーク)を抽出した図(ノードリスト)である。なお、この時点ではノード番号は付与しなくてもよいが、
図12は便宜上ノード番号(例えば、N1、N2等)を付与した状態を示している。
【0034】
続いて、構築部18は、ノードリストに変電所とタイノードを挿入するとともに、タイ接続を形成する(S106)。変電所の位置は、
図9に示すき電線構成に基づいて提供されてもよいし、
図14に示すようなリストで提供されてもよい。この場合、変電所は、挿入の対象となる線区の上下のき電線の両方で利用されるように設置される。そして、上下のき電線の一方、例えば下りき電線側に変電所ノードが挿入され、他方、例えば上りき電線側にタイノードが挿入され、変電所ノードとタイノードとの間がタイ接続とされる。
図15は、変電所ノード(四角形のマーク)およびタイノード(菱形のマーク)が挿入された状態でノードを抽出した図(ノードリスト)である。なお、
図15は、ノードの種類ごとにノード番号を付与した状態が示されている。
図15の場合、変電所ノードは「Sn1」、「Sn2」等で表し、タイノードは「An1」、「An2」等で表している。
【0035】
さらに、構築部18は、S100で入力した入力設定に基づいて、ノード間のタイ接続を行う(S108)。つまり、き電線構成において、同電位となるノード間をタイ接続とする。
図16は、き電線構成において、同電位となる位置を示すリストであり、タイ接続の名称を「タイ接続t1」等で示されているとともに、対象となるき電線名と接続位置等が示されている。さらに、構築部18は、
図16に示すリストを参照して、タイ接続されたノードについて、変電所ノード以外のノードをタイノードに置き換える。
図17は、
図13のき電線構成上でタイ接続の位置を明示した図である。また、
図18は、ノードのみを抽出した図(ノードリスト)である。
図18の場合もノード番号(例えば、N1、An1,Sn1等)を付与した状態を示している。
【0036】
続いて、構築部18は、シミュレーションを行う場合に列車が存在する部分に列車ノードを挿入する(S110)。
図19は、「列車1」を線区Aの下りき電線d4の位置に挿入し、「列車2」を線区Aの上りき電線u4の位置の挿入した例を示している。つまり、列車1および列車2がき電線上のこの位置に存在する場合のき電回路網計算を行うことになる。
図20は、丸のマークで示される列車ノードTr1、Tr2を挿入した後にノードのみを抽出した図(ノードリスト)である。この後、構築部18は、不要なノードの削除を行う(S112)。具体的には、変電所ノード、列車ノード、タイノード以外のノードを削除する。
【0037】
構築部18は、不要ノードを削除したノードリスト(
図21)の先頭のノードから昇順にノード番号を付与する(S114)。この例の場合、ノード番号N1〜N21が付与される。
図22は、ノード番号N1〜N21が昇順に付与された後にノードのみを抽出した図(ノードリスト)であり、
図23は、き電線構成にノード番号N1〜N21を付与した例である。
【0038】
そして、取得部20は、付与したノード番号の数を列数とし、タイ接続の部位の存在数を行数とするタイ行列を作成して(S116)、このフローを終了する。本実施形態の場合、付与したノード番号の数は
図22に示すように「21」である。また、タイ接続の部位は、
図23に示すように、「N1−N10」、「N3−N5」、「N7−N17」、「N12−N15」、「N4−N18」、「N14−N20」、「N2−N11」、「N6−N16」、「N19−N21」の9カ所になる。したがって、
図24に示すように、タイ行列は「9×21」となる。タイ行列は、前述したようにタイ接続されているノードが「1」で示され、それ以外のノード(非タイ接続)が「0」で示されている。
【0039】
取得部20において、タイ行列が取得されると、演算部22は
図25のフローチャートに従う処理を実行してき電回路網計算を開始する。前述したように、演算部22は、キルヒホッフの電流則計算式である(式1)と電圧計算式である(式2)の重み付き二乗和を求め、評価値が「0」になるような解(実際は、評価値が「0」に近くなる近似解)を求める最適化処理を実行する。演算部22は、まず、最適化処理を実行する前に、各ノードに対し仮のノード電圧値(初期値)を入力部12から設定する(S200)。なお、この初期値は、シミュレータ10が自動的に設定するものでもよい。続いて、生成したタイ行列を参照してタイ接続間の電位差が「0」であることを表す電圧計算式(式2)を算出する(S202)。また、演算部22は、タイ接続されている部分の電流則計算式(式1)を算出するが、それに先立ち、列車と変電所の電流値を算出する(S204)。例えば、変電所の電流は変電所ノードの電圧(S200で設定した初期値)が決まれば、そこに流れる電流値I
kが決まる。また、列車に流れる電流は変電所ノードの電圧と列車の速度とノッチが決まれば、電流I
k+1や電流I
k+2等が決定する(実際は空気調和装置等の補機電流も加算される)。そして、タイ接続部分を未接続と見なして各ノードの電流則計算式を算出する(S206)。なお、ノード間電流は、オームの法則から以下の(式3)が成立する。
【数5】
ここで、G
23は、ノード番号(2)とノード番号(3)の間のコンダクタンスである。コンダクタンスは、ノード間の距離と予め定めておいた単位長さ当たりのコンダクタンスから求めることができる。そして、タイ行列を参照し、タイ接続されている部分は電流則計算式(式1−1)と電流則計算式(式1−2)を加算して電流則計算式(式1)を算出する(S208)。さらに、演算部22は、算出される電流値精度を重視するか電圧値精度を重視するかに応じて、予め定めた値で電流則計算式(式1−1)と電流則計算式(式1−2)の両方またはいずれか一方に重み付けを行う。そして、電流則計算式である(式1)と電圧計算式である(式2)の重み付き二乗和を求め(S210)、評価値を「0」に近づけるための最適化処理を実行する(S212)。この最適化処理は、例えば既知の非線形最小二乗法を用いて実行することができる。
【0040】
演算部22は、最適化処理において、評価値が予め決めた閾値以下になり「0」に近づいたと判定するか、仮のノード電圧値を変更しながら予め決めた回数の演算(最適化処理)が行われたか(繰り返し行われたか(ループしたか))、または前回のループの時の評価値と今回のループ時の評価値との差分が小さくなったか、のいずれかの場合に、最適化処理が完了したと判定する(S214)。演算部22は、前述の条件を満たしていないと判定した場合、つまり、まだ最適化処理が完了していないと判定した場合(S214のNo)、今回の最適化処理で算出した計算結果(ノード電圧と評価値)をシミュレータ10の記憶装置(例えばHDDやRAM等)に一時的に保存する(S218)。そして、演算部22は、仮のノード電圧値を更新して(S220)、再度S212の最適化処理を実行する。なお、S220で仮のノード電圧を更新する場合、S218で保存した計算結果に基づき評価値をより「0」に近づけるためには前回の最適化処理で利用したノード電圧より更新値を高くするか低く決定するようにしてもよい。なお、S214の処理で予め決めた回数の演算が行われたか、または、差分が小さくなったことにより最適化処理が完了したと判定して最適化処理が完了したとしても、実際には、評価値が「0」に近づいていない(評価値が「0」に向かって更新されていない)こともある。その場合は、所定の電圧値を最適化処理の結果として置き換えるか、または、シミュレーションの離散時間Δ秒前(例えば1秒前)の最適化処理の結果を今回の結果として置き換えてもよい。
【0041】
演算部22は、最適化処理が完了したと判定した場合(S214のYes)、最適化処理により算出された各ノード電圧値をシミュレータ10の記憶装置(例えばHDDやRAM等)に記憶する(S216)。そして、算出されたノード電圧から各ノード間の電流値、列車と変電所の電流値を算出して、出力部24を介して出力する(S222)。この場合、算出結果は、表示装置等に表示したり、印刷して提示したりしてもよい。また、算出した各電流値や、記憶装置(例えばHDDやRAM等)に記憶してもよい。なお、演算部22は、最適化処理の過程で、今回の結果が前回の最適化処理のときの結果より劣ると判定した場合は、今回の処理の結果を破棄して、一時記憶しておいた前回の処理の結果を有効としてもよい。
【0042】
上述したような演算を行うシミュレータ10は、列車の位置(列車ノードの挿入位置)を適宜変化させながら列車が存在する場合の動的なき電回路網モデルを次々に作成して、ノード電圧の計算を繰り返す。この場合、き電構成自体が確定した後のシミュレーションになるので、
図19、
図20で示す列車ノードを挿入する部分、つまり、
図8のS110からの処理を繰り返し行うことで、列車が移動する場合のき電回路網モデルの構築を実行する。すなわち、離散時間Δ秒ごと、例えば「1秒」ごとに列車ノードの位置に応じたタイ行列が更新され、
図25に示すき電回路網計算を実行する。なお、き電構成は変化しないので、き電構成上でタイ接続されている数やタイノードの数は変化しない。しかし、列車ノードの位置を列車の位置に応じて変化させた後に、
図8のS114でノード番号を付与するので、列車ノードの位置の影響を受け、タイノードの位置を示す「1」の位置が変化する。つまり、タイ行列の内容(「1」で表現される位置)が列車の位置にしたがって、変化する。このように、時々刻々と更新されるタイ行列にしたがい、
図25のき電回路網計算を実行し、各ノード間の電流値や列車や変電所の電流値を算出することで、き電回路網のシミュレーションを実施する。なお、離散時間は適宜変更可能で短いほど詳細なシミュレーションが可能になる。
【0043】
このように、本実施形態のシミュレータ10は、変電所ノード34、タイ接続36、タイノード38を用いることで、き電回路網モデルの拡縮が容易に可能であるとともに、タイ行列を用いて電流則計算式(式1)と電圧計算式(式2)を容易に算出し、重み付き二乗和を用いた最適化処理が効率的にできる。その結果、き電回路網モデルのシミュレーション(き電回路網計算)を効率的に行うことができる。
【0044】
上述したように、本実施形態のき電回路網のシミュレーション装置は、き電回路網の構成を示すき電線情報を受け付ける入力部と、上記き電線情報に含まれる変電所の位置を示す第一のノード(変電所ノード)と他のき電線と同電位となる位置を示す第二のノード(タイノード)と、を少なくとも記憶するノード記憶部と、上記き電線情報に基づく電位差を伴わないノード間接続を示す第一の接続態様(タイ接続)と電位差を伴うノード間接続を示す第二の接続態様(非タイ接続)とを記憶する接続態様記憶部と、上記第一のノードと上記第二のノードと上記第一の接続態様と上記第二の接続態様とを用いて電位状態が固定された静的なき電回路網モデルを構築する構築部と、を備える。この構成によれば、例えば、第一のノードと第二のノードと第一の接続態様の組み合わせにより変電所におけるき電線の接続態様、例えば変電所に対するき電線の接続方向やき電線の接続本数が異なるバリエーションを容易に得ることできる。その結果、限定された要素(第一のノードと第二のノードと第一の接続態様と第二の接続態様)の組み合わせにより静的なき電回路網モデルを容易に構築できる。
【0045】
また、本実施形態のき電回路網のシミュレーション装置において、例えば、上記入力部は、上記き電線情報の修正情報を受け付け可能であり、上記構築部は、上記修正情報に基づくノードおよびノード間の接続態様の増減により上記静的なき電回路網モデルの拡縮を実行してもよい。この構成によれば、例えば、基本となる静的なき電回路網モデルが構築されていれば、その後のモデルの拡縮を容易に行うことができる。
【0046】
また、本実施形態のき電回路網のシミュレーション装置において、例えば、上記ノード記憶部は、さらに上記静的なき電回路網モデルに移動体が存在する場合の当該移動体の位置を示す第三のノード(列車ノード)を、記憶し、上記構築部は、上記静的なき電回路網モデルに上記第三のノードを挿入して、当該第三のノードの位置にしたがって電位状態が変動する動的なき電回路網モデルを構築するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、き電回路網上での列車の存在状態に応じたき電回路網モデルの構築が容易にできる。
【0047】
また、本実施形態のき電回路網のシミュレーション装置において、例えば、上記第一の接続態様の位置と上記第一の接続態様の部位の存在数とを示す同電位接続情報(タイ行列)を取得する取得部と、上記同電位接続情報に基づき各ノードの電圧値を演算する計算式を取得する演算部と、上記各ノードの電圧値およびその電圧値に基づく各ノード間を流れる電流値を出力する出力部と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、例えば、同電位接続情報に基づき電位差を伴わないで接続されているノードの位置やそのような接続の存在数を容易に抽出し、各ノードの電圧値の算出を効率的に行うことができる。
【0048】
また、本実施形態のき電回路網のシミュレーション装置において、例えば、上記取得部は、上記ノード記憶部から読み出したノードにそれぞれノード番号を付し、そのノード番号の数を列数とし、上記第一の接続態様の部位の存在数を行数とした行列式を上記同電位接続情報として取得し、上記演算部は、上記行列式に基づき上記計算式を算出するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、行列式の形を確認するのみで、き電回路網モデルを構成するノードの数や第一の接続態様の部位の存在数等を容易に抽出することができる。
【0049】
また、本実施形態のき電回路網のシミュレーション装置において、例えば、上記取得部は、上記行列式の行ごとに、上記第一の接続態様で接続される上記ノードの上記ノード番号と上記第一の接続態様で接続されない上記ノードの上記ノード番号とを区別した上記行列式を取得してもよい。この構成によれば、例えば、第一の接続態様で接続されているノードと第一の接続態様で接続されていないノードの区別(分離)が容易になり、各ノードの電圧値の算出を効率的に行うことができる。
【0050】
また、本実施形態のき電回路網のシミュレーション装置において、例えば、上記演算部は、上記第三のノードの情報と上記同電位接続情報に基づき各ノードにおける電流則計算式を取得するとともに上記第一の接続態様に基づく電圧計算式を取得し、上記電流則計算式と上記電圧計算式の二乗和を最小化することで各ノードの電圧値を演算してもよい。この構成によれば、各ノードの電圧値の演算を効率的に行うことができる。
【0051】
また、本実施形態のき電回路網のシミュレーション装置において、例えば、上記取得部は、上記き電線情報に基づき上記ノード記憶部から読み出した上記第一のノードと上記第二のノードを所定の優先順位にしたがって配列し、上記第二のノードを上記第一の接続態様で電位差を伴わない他のノードに接続し、上記移動体の存在位置に応じて上記第三のノードを上記優先順位にしたがって配列したノード間に挿入した後、上記ノード番号を昇順に付与するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、各ノードが一定の優先順位でソートされ、き電回路網モデルごとのノード配列のばらつきが抑制されたり、昇順にソートしておくことでノード間の電流を計算する際の処理を効率化することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態や変形例を例示したが、上記実施形態や変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、各実施形態や変形例の構成は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。