【解決手段】ケース部材に取り付けられたロックバーRを具備したステアリングロック装置において、モータ3と、モータ3の出力軸3aに取り付けられた駆動ギア部材4と、駆動ギア部材4の回転方向に応じた方向に回転し得るとともに、メネジが形成された従動ギア部材5と、ロックバーRと同軸に連結され、従動ギア部材5のメネジと螺合するオネジN2が形成されるとともに、従動ギア部材5が回転することによってロックバーRを軸方向に前進又は後退させ得る送りねじ部材6とを具備するとともに、モータ3と送りねじ部材6及びロックバーRとは、ケース部材内で並列に収容されたものである。
ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、前記ロックバーを後退させて没入状態とすることにより前記ステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、
出力軸を任意に正回転及び逆回転可能とされたモータと、
該モータの出力軸に取り付けられ、当該出力軸と共に回転可能とされた駆動ギア部材と、
該駆動ギア部材と噛み合った状態で組み付けられ、当該駆動ギア部材の回転方向に応じた方向に回転し得るとともに、メネジが形成された従動ギア部材と、
前記ロックバーと同軸に連結され、前記従動ギア部材の前記メネジと螺合するオネジが形成されるとともに、当該従動ギア部材が回転することによって前記ロックバーを軸方向に前進又は後退させ得る送りねじ部材と、
を具備するとともに、前記モータと前記送りねじ部材及びロックバーとは、前記ケース部材内で並列に収容されたことを特徴とするステアリングロック装置。
前記ロックバーが没入状態であることを検知する没入状態検知手段と、当該ロックバーが突出状態であることを検知する突出状態検知手段とを具備するとともに、当該没入状態検知手段又は突出状態検知手段が前記ロックバーの没入状態又は突出状態を検知したことを条件として前記モータの駆動が停止されることを特徴とする請求項1記載のステアリングロック装置。
前記送りねじ部材に磁石が取り付けられるとともに、前記没入状態検知手段及び突出状態検知手段は、当該磁石の磁気を検知して前記ロックバーの没入状態及び突出状態を検知可能な磁気センサから成ることを特徴とする請求項2記載のステアリングロック装置。
【背景技術】
【0002】
近年多発する車両の盗難防止を図るために、運転者が携帯しつつ車両固有のIDコードを発信し得る発信手段と、そのIDコードを受信し得る受信手段とを備え、当該受信手段にて受信したIDコードが正規のものであることを条件として、エンジン始動を含む車両の各種操作を可能とした所謂スマートエントリーシステムが提案されている。例えば、二輪車におけるスマートエントリーシステムの場合、発信手段(電子キー)を携帯した運転者がアクセスキーを操作すると、その発信手段から発信されたIDコードを車両側の受信手段が受信し、予め登録した正規のものであるか否かが判定される。
【0003】
そして、受信したIDコードが正規のIDコードであると判定されると、車両の電源がオンするとともに、スタートボタン等を押圧操作することによりエンジンが始動されるよう構成されている。これにより、イグニッションキーの如きメカキーを使用することなく、エンジン始動を含めた車両の種々操作を可能とすることができ、且つ、車両の盗難や車両に対する不正な操作等を確実に防止することができる。
【0004】
しかるに、二輪車等においては、通常、キー孔に挿通させたイグニッションキーを所定方向に回動操作することにより、ステアリング(ハンドルバーの回動軸等)にロックバーを係止させてロックするステアリングロックが配設されているが、上記の如きイグニッションキーによる操作を不要としたスマートエントリーシステムを具備したものにおいては、適用が困難であった。
【0005】
そこで、本出願人は、例えば特許文献1、2にて開示されているようなステアリングロック装置を提案している。かかる従来のステアリングロック装置によれば、押しボタンを押圧操作することによる手動操作にてステアリングロックを行わせるとともに当該ステアリングロックを電動で解除するので、ステアリングロック時及び解除時において、イグニッションキーなどのメカキーを不要とすることができ、スマートエントリーシステムに容易に適用させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のステアリングロック装置においては、モータの駆動力をカムやラッチ機構に伝達させてロックバーを突出状態から没入状態まで後退させ、ステアリングロックを解除するよう構成されていたので、カムやラッチ機構の作動スペースが必要となってしまい、装置全体が大型化してしまうという問題があった。また、従来のステアリングロック装置においては、ステアリングロックする場合、操作ボタンを押圧操作する必要があるため、ステアリングロック及びその解除の両方を電動にて行わせることができないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、電動にてステアリングロック及びその解除の両方を行わせることができるとともに、装置全体の小型化を図ることができるステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、前記ロックバーを後退させて没入状態とすることにより前記ステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、出力軸を任意に正回転及び逆回転可能とされたモータと、該モータの出力軸に取り付けられ、当該出力軸と共に回転可能とされた駆動ギア部材と、該駆動ギア部材と噛み合った状態で組み付けられ、当該駆動ギア部材の回転方向に応じた方向に回転し得るとともに、メネジが形成された従動ギア部材と、前記ロックバーと同軸に連結され、前記従動ギア部材の前記メネジと螺合するオネジが形成されるとともに、当該従動ギア部材が回転することによって前記ロックバーを軸方向に前進又は後退させ得る送りねじ部材とを具備するとともに、前記モータと前記送りねじ部材及びロックバーとは、前記ケース部材内で並列に収容されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置において、前記ロックバーが没入状態であることを検知する没入状態検知手段と、当該ロックバーが突出状態であることを検知する突出状態検知手段とを具備するとともに、当該没入状態検知手段又は突出状態検知手段が前記ロックバーの没入状態又は突出状態を検知したことを条件として前記モータの駆動が停止されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のステアリングロック装置において、前記送りねじ部材に磁石が取り付けられるとともに、前記没入状態検知手段及び突出状態検知手段は、当該磁石の磁気を検知して前記ロックバーの没入状態及び突出状態を検知可能な磁気センサから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、モータの出力軸の回転方向に応じてロックバーを前進及び後退させることができるので、電動にてステアリングロック及びその解除の両方を行わせることができるとともに、モータと送りねじ部材及びロックバーとは、ケース部材内で並列に収容されたので、装置全体の小型化を図ることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、ロックバーが没入状態であることを検知する没入状態検知手段と、当該ロックバーが突出状態であることを検知する突出状態検知手段とを具備するとともに、当該没入状態検知手段又は突出状態検知手段がロックバーの没入状態又は突出状態を検知したことを条件としてモータの駆動が停止されるので、確実にロックバーを没入状態又は突出状態とすることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、送りねじ部材に磁石が取り付けられるとともに、没入状態検知手段及び突出状態検知手段は、当該磁石の磁気を検知してロックバーの没入状態及び突出状態を検知可能な磁気センサから成るので、非接触にてロックバーの没入状態又は突出状態を検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るステアリングロック装置は、ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、ロックバーを後退させて没入状態とすることによりステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るもので、
図1〜9に示すように、ケース部材2と、モータ3と、駆動ギア部材4と、従動ギア部材5と、送りねじ部材6と、ロックバーRと、過負荷保護手段7と、基板10とを有するものである。
【0017】
ケース部材2は、本ステアリングロック装置1の筐体を構成するもので、基板10等が収容された上ケース部材2aと、モータ3や送りねじ部材6等が収容された下ケース部材2bとを合致させて箱状に形成されている。下ケース部材2bには、ロックバーRを挿通させる挿通孔2baが形成されており、当該ロックバーRが当該挿通孔2baから突出した状態(
図5、8(a)参照)と没入した状態(同図(b)参照)とで移動可能とされている。
【0018】
モータ3は、下ケース部材2bの所定位置に取り付けられて通電により正転駆動及び逆転駆動し得るアクチュエータであり、正転駆動時に出力軸3aを正回転させるとともに、逆転駆動時に出力軸3aを逆回転させ得るよう構成されている。すなわち、モータ3は、基板10に形成された制御回路にて制御され、任意タイミングで正転駆動及び逆転駆動が選択的に行われるのである。
【0019】
駆動ギア部材4は、モータ3の出力軸3aに取り付けられ、当該出力軸3aと共に回転可能とされたもので、その外周面にギアG1(歯面)が形成されている。しかして、モータ3が正転駆動すると、出力軸3aと共に駆動ギア部材4が正回転するとともに、モータ3が逆転駆動すると、出力軸3aと共に駆動ギア部材4が逆回転するようになっている。かかる駆動ギア部材4のギアG1は、従動ギア部材5のギアG2と噛み合って組み付けられている。
【0020】
従動ギア部材5は、駆動ギア部材4と噛み合った状態で組み付けられ、当該駆動ギア部材4の回転方向に応じた方向に回転し得るとともに、内周面には、送りねじ部材6のオネジN2と噛み合うメネジN1が形成されて構成されている。しかして、モータ3が正転駆動して駆動ギア部材4が正回転、又はモータ3が逆転駆動して駆動ギア部材4が逆回転すると、従動ギア部材5が連動して回転(駆動ギア部材4と反対方向に回転)するようになっている。
【0021】
送りねじ部材6は、ロックバーRと同軸に連結され、従動ギア部材5のメネジN1と螺合するオネジN2が形成されるとともに、当該従動ギア部材5が回転することによってロックバーRを軸方向に前進又は後退させ得るもので、
図12に示すように、オネジN2が形成された軸部6a及び磁石mが取り付けられた腕部6bを有して構成されている。すなわち、ロックバーRには、その基端部に連結部Ra(
図10参照)が形成されており、送りねじ部材6の軸部6aに連結部Raを嵌合させることにより、ロックバーRと送りねじ部材6とが同軸に連結されるのである。
【0022】
しかして、ロックバーRが没入状態(
図5、8(b)参照)のとき、モータ3を正転駆動させると、駆動ギア部材4が正回転し、従動ギア部材5が連動して反対方向に回転するので、メネジN1及びオネジN2の噛み合いによって送りねじ部材6及びロックバーRを前進させ、当該ロックバーRの先端部を車両のステアリングに形成された被係止穴Fに挿通させて係止させることができる。これにより、ステアリングのロックが行われることとなる。
【0023】
一方、ロックバーRが突出状態(
図5、8(a)参照)のとき、モータ3を逆転駆動させると、駆動ギア部材4が逆回転し、従動ギア部材5が連動して反対方向に回転するので、メネジN1及びオネジN2の噛み合いによって送りねじ部材6及びロックバーRを後退させ、当該ロックバーRの先端部を車両のステアリングに形成された被係止穴Fから引き抜くことができる。これにより、ステアリングのロックが解除されることとなる。
【0024】
また、本実施形態に係る基板10には、送りねじ部材6に取り付けられた磁石mの磁気を検知してオン、オフの電気信号を送信し得るホールIC11a、11b(磁気センサ)がそれぞれ取り付けられている。ホールIC11aは、ロックバーRが没入状態(すなわち、アンロック状態)であることを検知する没入状態検知手段を構成するもので、ロックバーRが没入状態のときに磁石mが位置する部位(基板10上の所定部位)に取り付けられている。また、ホールIC11bは、ロックバーRが突出状態(すなわち、ロック状態)であることを検知する突出状態検知手段を構成するもので、ロックバーRが突出状態のときに磁石mが位置する部位(基板10上の所定部位)に取り付けられている。
【0025】
そして、基板10に形成された制御回路によって、ホールIC11a(没入状態検知手段)又はホールIC11b(突出状態検知手段)がロックバーRの没入状態又は突出状態を検知したことを条件としてモータ3の駆動が停止されるよう制御される。すなわち、ロックバーRが後退する過程でホールIC11a(没入状態検知手段)が磁石mを検知すると、ロックバーRが没入状態になったと判断してモータ3の駆動を停止させるとともに、ロックバーRが前進する過程でホールIC11b(突出状態検知手段)が磁石mを検知すると、ロックバーRが突出状態になったと判断してモータ3の駆動を停止させることができるのである。
【0026】
ここで、本実施形態に係るステアリングロック装置1は、
図5、8に示すように、モータ3と送りねじ部材6及びロックバーRとが、ケース部材2内で並列に収容されている。具体的には、同図に示すように、軸L1に沿ってモータ3を配設する(軸L1にモータ3の出力軸3aを合致させて配設する)とともに、その軸L1と略平行な軸L2に沿って送りねじ部材6及びロックバーRが配設(軸L2に送りねじ部材6及びロックバーRの長手方向を合致させて配設)されているのである。
【0027】
また、本実施形態に係るステアリングロック装置1における下ケース部材2bの縁部には、
図1に示すように、上端が上ケース部材2aの近傍まで延びる壁部2bbが一体形成されている。かかる壁部2bbは、
図4に示すように、その内周面に上下に延びる溝Mが形成されており、その溝Mには、モータ3と接続されて電圧を付与し得る配線hが挿通されている。これにより、第三者がモータ3に対して不正に通電してステアリングロック又はその解除を行ってしまうのを防止することができる。
【0028】
さらに、本実施形態に係る従動ギア部材5は、外側の第1従動ギア部材5aと内側の第2従動ギア部材5bとを組み合わせて構成されている。すなわち、第1従動ギア部材5aの外周面には、駆動ギア部材4のギアG1と噛み合うギアG2が形成されるとともに、第2従動ギア部材5bの内周面には、送りねじ部材6のオネジN2と噛み合うメネジN1が形成されており、これら第1従動ギア部材5a及び第2従動ギア部材5bを組み合わせることにより従動ギア部材5が構成されているのである。
【0029】
より具体的に説明すると、第1従動ギア部材5aは、
図14、15に示すように、外周面にギアG2が形成された円筒状部材から成り、所定位置(本実施形態においては同心円上の4つの位置)には、嵌合穴5aaがそれぞれ形成されている。かかる嵌合穴5aaは、
図9、15に示すように、所定角度傾斜した傾斜面5abと、垂直な壁面5acとを有した凹形状から成る。また、第2従動ギア部材5bは、
図13に示すように、内周面にメネジN1が形成された円筒状部材から成り、嵌合穴5aaとそれぞれ対応した所定位置には、収容溝5baがそれぞれ形成されている。かかる収容溝5baは、同図に示すように、軸方向に延びた切欠き形状から成り、後述するスライダ8を摺動自在に収容し得るようになっている。
【0030】
しかるに、本実施形態においては、第1従動ギア部材5a及び第2従動ギア部材5bの間にトルクリミッタから成る過負荷保護手段7を介在して組み付けられている。かかる過負荷保護手段7は、ロックバーRが前進する過程(すなわち、没入状態から突出状態に移動する過程)で過負荷が生じた際、当該ロックバーRに対するモータ3の駆動力の伝達を遮断し得るもので、嵌合穴5aaに嵌合して組み付けられたスライダ8を有して構成されている。なお、過負荷が生じる原因としては、ロックバーRが被係止穴Fと合致しない位置にあるとき前進された場合やロックバーRの前進経路に異物がある場合等が想定される。
【0031】
過負荷保護手段7を構成するスライダ8は、
図11に示すように、嵌合穴5aaの傾斜面5abと対応した傾斜面8aと、嵌合穴5aaの壁面5acと対応した壁面8bと、スプリング9が取り付けられる軸部8cとを有した駒部材から成り、第2従動ギア部材5bの収容溝5baに収容された状態において、
図9に示すように、傾斜面8aが嵌合穴5aaの傾斜面5abに対峙しつつ壁面8bが嵌合穴5aaの壁面5acと対峙した状態でスプリング9にて常時付勢されつつ嵌合し得るようになっている。
【0032】
しかして、ロックバーRを没入状態から前進させる過程において、過負荷が生じていない場合、スプリング9の付勢力にてスライダ8が嵌合穴5aaに押圧されて嵌合状態が維持されるので、第1従動ギア部材5a及び第2従動ギア部材5bが一体となって、
図9中a方向に回転することとなる。一方、ロックバーRを没入状態から前進させる過程において、過負荷が生じた場合、第1従動ギア部材5aの傾斜面5abとスライダ8の傾斜面8aとがカムとして機能し、スプリング9の付勢力に抗してスライダ8を移動(
図9中下方に移動)させることとなる。
【0033】
これにより、嵌合穴5aaに対するスライダ8の嵌合が解かれることとなり、第1従動ギア部材5aは、同図中a方向の回転が継続して行われるものの、第2従動ギア部材5bは、モータ3の駆動力の伝達が解かれて停止した状態とされる。すなわち、ロックバーRが前進する過程で過負荷が生じた場合、第1従動ギア部材5aが第2従動ギア部材5bに対して空回りしてトルクリミッタとして機能するのである。なお、ロックバーRを突出状態から後退させる過程においては、
図9に示すように、第1従動ギア部材5aの壁面5acとスライダ8の壁面8bとが当接するので、カムの作用が生じず、第1従動ギア部材5a及び第2従動ギア部材5bは一体として同図中b方向に回転するようになっている。
【0034】
次に、本実施形態に係るステアリングロック装置1の作動について、
図16のブロック図に基づいて説明する。
車両側の任意部位には、運転者が任意に操作し得るアクセススイッチ12及びスタートスイッチ15が配設されるとともに、アンテナ等を具備した通信手段13、マイコン等から成る判定手段14及びエンジン18の駆動を制御するECU17等が配設されている。また、運転者が携帯し得る電子キー16には、車両側の通信手段13と通信可能な通信手段16aが形成されている。
【0035】
先ず、停車中、ステアリングロック装置1のロックバーRは、突出状態とされて被係合穴Fに係止しており、車両のステアリングがロックされた状態となっている。そして、運転者がアクセススイッチ12を操作すると、通信手段13から低周波で所定の信号を無線送信するとともに、その信号を電子キー16の通信手段16aで受信すると、その受信した信号を解析した後、高周波で車両固有のIDコードを無線送信する。
【0036】
しかして、通信手段16aから送信されたIDコードを通信手段13が受信すると、その受信したIDコードが正規のものであるか否かを判定手段14が判定し、正規のIDコードであると判定されると、ステアリングロック装置1にCAN通信にてアンロックのための信号を送信する。ステアリングロック装置1は、アンロックのための信号を受信すると、モータ3に通電して出力軸3aを逆回転させることにより、送りねじ6と共にロックバーRを後退させるとともに、ホールIC11a(没入状態検知手段)が所定時間内で磁石mを検知したことを条件としてモータ3の駆動を停止させる。
【0037】
しかして、所定時間内にホールIC11a(没入状態検知手段)が磁石mを検知することにより、ロックバーRが突出状態から没入状態に切り替わってステアリングロックが解除されたと判断できるので、アンロックの完了信号をCAN通信にて判定手段14に送信する。このように判定手段14がアンロックの完了信号を受信した後、運転者によってスタートスイッチ15が操作されると、車両のメイン電源がオンするとともに、ECU17を制御してエンジン18を始動させることができる。
【0038】
一方、上記のようにエンジン18を始動させた後、車両を停止させる際、運転者がアクセススイッチ12を操作すると、ECU17の情報を参照して車速が0であるか否かを判断する。そして、車速が0であると判定されると、車両のメイン電源をオフするとともに、エンジン18を停止させると、ECU17から判定手段14にエンジン停止信号が送信され、CAN通信にてステアリングロック装置1にロックのための信号が送信される。
【0039】
ステアリングロック装置1は、ロックのための信号を受信すると、モータ3に通電して出力軸3aを正回転させることにより、送りねじ部材6と共にロックバーRを前進させるとともに、ホールIC11b(突出状態検知手段)が所定時間内で磁石mを検知したことを条件としてモータ3の駆動を停止させる。ここで、ロックバーRの前進中に過負荷が生じると、過負荷保護手段7によってロックバーRに対するモータ3の駆動力の伝達を遮断が遮断されることとなる。
【0040】
しかして、所定時間内にホールIC11b(突出状態検知手段)が磁石mを検知することにより、ロックバーRが没入状態から突出状態に切り替わってステアリングがロックされたと判断できるので、ロックの完了信号をCAN通信にて判定手段14に送信する。このように判定手段14がロックの完了信号を受信した後、停車のための一連の制御及び動作が終了することとなる。
【0041】
本実施形態によれば、モータ3の出力軸3aの回転方向に応じてロックバーRを前進及び後退させることができるので、電動にてステアリングロック及びその解除の両方を行わせることができるとともに、モータ3と送りねじ部材6及びロックバーRとは、ケース部材2内で並列に収容されたので、カムやラッチ機構等を必要とするものに比べ、装置全体の小型化を図ることができる。
【0042】
また、ロックバーRが没入状態であることを検知するホールIC11a(没入状態検知手段)と、当該ロックバーRが突出状態であることを検知するホールIC11b(突出状態検知手段)とを具備するとともに、当該ホールIC(11a、11b)がロックバーRの没入状態又は突出状態を検知したことを条件としてモータ3の駆動が停止されるので、確実にロックバーRを没入状態又は突出状態とすることができる。
【0043】
特に、本実施形態においては、送りねじ部材6に磁石mが取り付けられるとともに、没入状態検知手段及び突出状態検知手段は、当該磁石mの磁気を検知してロックバーRの没入状態及び突出状態を検知可能な磁気センサであるホールIC(11a、11b)から成るので、非接触にてロックバーRの没入状態又は突出状態を検知することができる。なお、没入状態検知手段及び突出状態検知手段は、ホールICに限らず、他の磁気センサとしてもよく、更には、磁気センサに限らず非接触又は接触式の他の形態のセンサとしてもよい。
【0044】
加えて、本実施形態によれば、モータ3の出力軸3aの回転方向に応じてロックバーRを前進及び後退させることができるので、電動にてステアリングロック及びその解除の両方を行わせることができるとともに、ロックバーRが前進する過程で過負荷が生じた際、当該ロックバーRに対するモータ3の駆動力の伝達を遮断し得る過負荷保護手段7を具備したので、ロックバーRのステアリングに対する係止が良好に行われない場合が生じてもモータ3等に不具合が生じてしまうのを防止することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る過負荷保護手段7は、第1従動ギア部材5a及び第2従動ギア部材5bの間に介在したトルクリミッタ(スライダ8を有した過負荷クラッチ)から成り、ロックバーRに過負荷が生じた際、当該第2従動ギア部材5bに対して第1従動ギア部材5aを空回りさせるので、簡単な構造でより確実に過負荷からモータ3等を保護することができる。
【0046】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば過負荷保護手段7を具備しないものとしてもよい。また、本実施形態においては、ロックバーRが没入状態であることを検知する没入状態検知手段(本実施形態においては、ホールIC11a)と、当該ロックバーRが突出状態であることを検知する突出状態検知手段(本実施形態においては、ホールIC11b)を具備しているが、これら没入状態検知手段及び突出状態検知手段を具備せず、他の手段にてロックバーRが突出状態又は没入状態であるか検知してモータ3を停止させるものとしてもよい。なお、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、他の形態の車両に適用してもよい。