(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-81799(P2017-81799A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】多孔質炭素、及びそれを用いた有機ハロゲン化合物除去装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/336 20170101AFI20170414BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20170414BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20170414BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
C01B31/10
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
C02F1/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-213673(P2015-213673)
(22)【出願日】2015年10月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 心一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 和浩
(72)【発明者】
【氏名】武隈 宏史
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D624AA02
4D624AB11
4D624BA02
4D624BB01
4D624BC01
4D624CA11
4G066AA05B
4G066AC07A
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA24
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA33
4G066DA07
4G146AA06
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC07A
4G146AC08A
4G146AC09A
4G146AC09B
4G146AC10A
4G146AC28A
4G146AC28B
4G146AD33
4G146BA31
4G146BC03
4G146BC33B
4G146BD02
(57)【要約】
【課題】 有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物の吸着性能に優れ、かつ通液倍率が大きい場合でも吸着性能の低下が生じにくい多孔質炭素の提供。
【解決手段】 メソ孔容積が0.07(cm
3/g)以上で、細孔径0.4nm〜0.6nmの最大微分容積値が1.6以上であることを特徴とする多孔質炭素である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ孔容積が0.07(cm3/g)以上で、細孔径0.4nm〜0.6nmの最大微分容積値が1.6以上であることを特徴とする多孔質炭素。
【請求項2】
前記多孔質炭素の窒素BET法による比表面積が10(m2/g)以上である請求項1に記載の多孔質炭素。
【請求項3】
前記多孔質炭素の全細孔容積が0.5(cm3/g)以上である請求項1から2のいずれかに記載の多孔質炭素。
【請求項4】
前記多孔質炭素の一次粒子の粒子径が0.425(mm)以下である請求項1から3のいずれかに記載の多孔質炭素。
【請求項5】
前記多孔質炭素のマイクロ孔容積が0.5(cm3/g)以上である請求項1から4のいずれかに記載の多孔質炭素。
【請求項6】
前記多孔質炭素の一次粒子の粒子径が0.1(mm)以下である請求項4から5のいずれかに記載の多孔質炭素。
【請求項7】
前記多孔質炭素の原材料が植物由来の材料からなる請求項1から6のいずれかに記載の多孔質炭素。
【請求項8】
前記植物由来の材料がイネ科タケ類由来の材料である請求項7に記載の多孔質炭素。
【請求項9】
前記イネ科タケ類が孟宗竹である請求項8に記載の多孔質炭素。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の多孔質炭素からなるフィルターを有することを特徴とする、有機ハロゲン化合物除去装置。
【請求項11】
有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率1,000倍で有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が90%以上である請求項10に記載の有機ハロゲン化合物除去装置。
【請求項12】
有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率3,000倍での有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が65%以上である請求項10から11のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置。
【請求項13】
有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率6,000倍での有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が50%以上である請求項10から12のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置。
【請求項14】
前記有機ハロゲン化合物がクロロホルムである請求項11から13のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素、及びそれを用いた有機ハロゲン化合物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭に代表される多孔質炭素は、吸着性能に優れているため従来から悪臭の除去、液中の不純物除去、溶剤蒸気の回収、除去などの各種用途に広く使用されている。特に、水を浄化するための浄水器には、活性炭が使用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかし、一般的に使用されるヤシ殻活性炭では、有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物を十分に吸着させることは困難であった。
また、このような従来の浄水器にあっては、通液倍率が大きいと、即ち、浄水器中を流れる水の総量が大きくなると、浄水機能を十分に発揮できない場合があるといった問題があった。
そこで、有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物の吸着性能に優れ、かつ通液倍率が大きい場合でも吸着性能の低下が生じにくい浄水器に使用可能な多孔質炭素の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−205253号公報
【特許文献2】特開平06−106161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物の吸着性能に優れ、かつ通液倍率が大きい場合でも吸着性能の低下が生じにくい多孔質炭素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> メソ孔容積が0.07(cm
3/g)以上で、細孔径0.4nm〜0.6nmの最大微分容積値が1.6以上であることを特徴とする多孔質炭素である。
<2> 前記多孔質炭素の窒素BET法による比表面積が10(m
2/g)以上である前記<1>に記載の多孔質炭素である。
<3> 前記多孔質炭素の全細孔容積が0.5(cm
3/g)以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の多孔質炭素である。
<4> 前記多孔質炭素の一次粒子の粒子径が0.425(mm)以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の多孔質炭素である。
<5> 前記多孔質炭素のマイクロ孔容積が0.5(cm
3/g)以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載の多孔質炭素である。
<6> 前記多孔質炭素の一次粒子の粒子径が0.1(mm)以下である前記<4>から<5>のいずれかに記載の多孔質炭素である。
<7> 前記多孔質炭素の原材料が植物由来の材料からなる前記<1>から<6>のいずれかに記載の多孔質炭素である。
<8> 前記植物由来の材料がイネ科タケ類由来の材料である前記<7>に記載の多孔質炭素である。
<9> 前記イネ科タケ類が孟宗竹である前記<8>に記載の多孔質炭素である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の多孔質炭素からなるフィルターを有することを特徴とする、有機ハロゲン化合物除去装置である。
<11> 有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率1,000倍で有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が90%以上である前記<10>に記載の有機ハロゲン化合物除去装置。
<12> 有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率3,000倍で有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が65%以上である前記<10>から<11>のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置である。
<13> 有機ハロゲン化合物が濃度0.06mg/Lで含有された水に対し、通液倍率6,000倍での有機ハロゲン化合物を除去した場合、有機ハロゲン化合物の除去率が50%以上である前記<10>から<12>のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置である。
<14> 前記有機ハロゲン化合物がクロロホルムである前記<11>から<13>のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物除去装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物の吸着性能に優れ、かつ通液倍率が大きい場合でも吸着性能の低下が生じにくい多孔質炭素を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(多孔質炭素)
本発明の多孔質炭素は、メソ孔容積が0.07(cm
3/g)以上で、細孔径0.4nm〜0.6nmの最大微分容積値が1.6以上である。
本発明者らは、上記特性を有する多孔質炭素が、有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物の吸着性能に優れ、かつ通液倍率が大きい場合でも吸着性能の低下が生じにくいことを見出した。
本発明の多孔質炭素は、細孔(ポア)を多く有している。細孔は、メソ孔、マイクロ孔、マクロ孔に分類される。ここで、メソ孔は孔径が2nm〜50nmの細孔をいい、マイクロ孔は孔径が2nmよりも小さい細孔をいい、マクロ孔は孔径が50nmよりも大きい細孔をいう。
マクロ孔は、不純物を含む水や空気等の通り道となってメソ孔・マイクロ孔へ導き、吸着させる機能があるため、ある程度の容積があったほうがよい。しかし多過ぎると低分子量物質の吸着には不利となる。マイクロ孔は、低分子量物質の吸着には有効であるが、特に通液倍率が大きいときには、吸着性能が低下する傾向がある。一方、メソ孔容積が大きいと低分子量物質を効率良く吸着可能であり、かつ通液倍率がある程度大きくても吸着性能力が低下しにくい。さらに、細孔径0.4nm〜0.6nmの最大微分容積値が1.6以上であると、特に低分子量物質を効率良く吸着可能となる。そこで、上記特性を有する多孔質炭素は、有機ハロゲン化合物等の低分子量化合物の吸着性能に優れ、通液倍率が大きい場合でも吸着性能が低下せず、いずれの効果も満足することができる。
【0008】
<本発明の多孔質炭素の特性>
さらに良好な吸着性能を確保するため、前記多孔質炭素は以下の特性を有することが好ましい。
前記多孔質炭素における窒素BET法による比表面積は、10(m
2/g)以上であることが好ましい。
前記多孔質炭素における全細孔容積は、0.5(cm
3/g)以上であることが好ましい。
前記多孔質炭素の一次粒子の粒子径は、0.425(mm)以下であることが好ましく、0.1(mm)以下であることがより好ましい。細孔と不純物を含む水や空気等とが接触しやすくするためには、一次粒子の粒子径が0.425(mm)以下であることが望ましい。尚、前記多孔質炭素の一次粒子は、二次凝集されていてもよく、さらに性能を低下させない程度であれば、前記多孔質炭素は顆粒状やチップ状に成型されていてもよい。
さらにマイクロ孔容積が大きいほうが本発明の目的とする低分子物質の吸着には有効であることから、前記多孔質炭素のマイクロ孔容積は、0.5(cm
3/g)以上であることが好ましい。
【0009】
<特性の測定方法>
前記多孔質炭素の特性は、例えば、以下の装置を使用して測定することができる。
マイクロメリテックスジャパン合同会社製の3FLEXを使用して、窒素吸着等温線を測定し、比表面積はBET法で、全細孔容積は一点吸着法で、メソ孔容積はBJH法で、マイクロ孔容積はHK法で、マイクロ孔領域の細孔分布はDFT法で、それぞれ算出することができる。またDFT法によりマイクロ孔領域の細孔分布を求め、細孔径0.4nm〜0.6nmの最大微分容積値を算出することができる。
[具体的な測定方法]
炭化処理及び賦活処理をした多孔質炭素を30mg用意し、相対圧(P/P0)0.0000001から0.995の範囲を測定する条件に設定した3FLEXを使用して、比表面積、全細孔容積、メソ孔容積、マイクロ孔容積、マイクロ孔領域の細孔分布を測定することができる。
また、前記多孔質炭素の一次粒子の粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950(HORIBA社製)を使用することにより求めることができる。LA−950を用いて、湿式法により粒子径0.01μm〜3,000μmの範囲で粒子径分布を測定する。前記多孔質炭素の一次粒子の粒子径とは、横軸を粒子径、縦軸を個数頻度でプロットした粒子径分布において、分布の中央値に対応した粒子径(メジアン径)をいう。
【0010】
<多孔質炭素の材料>
前記多孔質炭素の原材料は、植物由来の材料であることが好ましい。植物由来であると、メソ孔やマイクロ孔の容積値を上記所望の値に調整することが容易となる。また、環境負荷が少ない点でも、植物由来とする利点がある。
前記植物由来の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イネ科タケ類由来の材料であることがより好ましい。
前記イネ科タケ類としては、具体的に、マダケ属(モウソウチク)、オカメザサ属、シホウチク属、ナリヒラダケ属(リクチュウダケ、ナリヒラダケ、クマナリヒラ、メダラナリヒラ、ヒメヤシャダケ、ビゼンナリヒラ、ケナシナリヒラ、ヤシャダケ、ニッコウナリヒラ、アオナリヒラ)、トウチク属(トウチク)、ヤダケ属(ヤクシマダケ、ヤダケ、メンヤダケ、ラッキョウヤダケ)、アズマザサ属(レイコシノ、ジョウボウザサ、ゲンケイチク、ナンブシノ、マエザワザサ、スエコザサ)、クマザサ属(キタミコザサ、ミヤマスズ、ゲイビクマザサ、ロッコウミヤマザサ、ヤマトザサ、ヨナイザサ、クザカイザサ、キンタイザサ、シャコタンチク、フシブトザサ、タナハシザサ、ヤリクマソザサ、ゴテンバザサ、ハツロウザサ、オオシダザサ、ヒメカミザサ、ナンブスズ、フシゲヒメカミザサ、カンサイザサ、ミヤマクマザサ、タンザワザサ、アリマコスズイヌスズ、スズダケ、クマスズハンゲスズ、ケスズ、キンタイチシマ、ネマガリダケ)、カンチク属、メダケ属(リュウキュチク、カンザンチク、タイミンチク、メダケハガワリメダケ、スダレヨシゴキダケ、ボウシュウネザサ、アズマネザサ、ジョウホウジダケ、オロシマチク、ケネザサ)、バンブーサー属(ソルニー・バンブー)、シチク属、ホウライチク属(ホウライチク、シュチク、ダウサンチク)などが挙げられる。
中でも、前記イネ科タケ類がマダケ属のモウソウチク(孟宗竹)であるとより好ましい。
モウソウチクを原材料に使用した多孔質炭素は、特にメソ孔の調整が容易である。
【0011】
<多孔質炭素の製造方法>
本発明の多孔質炭素は、炭化処理や賦活処理を経ることにより製造される。
炭化処理は、中温(300℃から1000℃)且つ無酸素状態で蒸焼き(乾留)にすることをいい、賦活処理は、炭素材料の細孔構造を発達させ、細孔を付加することをいう。賦活処理は、水蒸気や二酸化炭素等を用いて炭化物を高温(800℃から1,400℃)で一定時間乾留することにより、単位質量あたりの表面積を大きくする。
上記炭化処理条件や上記賦活処理条件を適宜調整することにより、所望のメソ孔容積及び細孔径0.4nm〜0.6nmの最大微分容積値を示す多孔質炭素を得ることができる。
材料が、例えばイネ科タケ類由来の材料である場合、炭化処理に供する竹の粉末の粒径を調整することも、所望の多孔質炭素を得るうえで有効な手段となる。具体的には、粒径が5μmから30mm、より好ましくは5μmから5mmの竹の微粉末に対し、炭化処理を施すのが好ましい。また、その際の炭化処理及び賦活処理の条件としては、具体的には、400℃から1000℃の炭化温度で1時間から10時間、炭化処理を行うことが好ましい。また、800℃から1000℃の賦活温度で0.5時間から10時間、より好ましくは0.5時間から5時間、さらに好ましくは0.5時間から2時間、水蒸気のよる賦活処理を行うことが好ましい。
【0012】
(有機ハロゲン化合物除去装置)
本発明の有機ハロゲン化合物除去装置は、前記多孔質炭素からなるフィルターを有する。
本発明の有機ハロゲン化合物除去方法は、前記有機ハロゲン化合物除去装置用いて有機ハロゲン化合物を前記多孔質炭素に吸着させて除去する方法である。
より具体的には、水浄化用フィルターとして前記多孔質炭素材料を用い、フィルター中に有機ハロゲン化合物の不純物を含む水を通液することにより、有機ハロゲン化合物を除去する。
この際、フィルター内に充填する前記多孔質炭素材料の充填密度としては、0.2g/cm
3以上であることが好ましい。
本発明の有機ハロゲン化合物除去装置によれば、有機ハロゲン化合物の効果的な除去が可能となるため、通液倍率が大きい場合でも高い吸着性能を維持することができる。本発明の有機ハロゲン化合物除去装置を用いると、通液倍率が1,000倍、より好ましくは通液倍率が3,000倍、さらに好ましくは通液倍率が6,000倍の条件下でも有機ハロゲン化合物を高い除去率で除去することができる。
具体的には、本発明の有機ハロゲン化合物除去装置を用いて、有機ハロゲン化合物を濃度0.06mg/Lで含有する水に対し、通液倍率1,000倍の条件で有機ハロゲン化合物を除去すると、除去率は90%以上を示す。通液倍率3,000倍の条件では、除去率は65%以上、より好ましくは70%以上を示す。また、通液倍率6,000倍の条件では、除去率は50%以上、より好ましくは65%以上を示す。
本発明では、除去し得る対象の化合物として、前記有機ハロゲン化合物がクロロホルムであることがより好ましい。本発明の有機ハロゲン化合物除去装置は、クロロホルムの除去効果に優れている。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0014】
(実施例1)
原材料として籾殻を用いた。炭素化した籾殻(エコー商会製)に対し、酸又はアルカリ処理し、その後、960℃で1時間、水蒸気による賦活処理を行ない活性炭1を得た。
活性炭1の製造条件を下記表1に示す。また、3FLEX(マイクロメリテックスジャパン合同会社製)の装置を使用し、上述した測定方法により、活性炭1の各種特性を計測した。その結果を下記表2−1に示す。
<クロロホルム除去試験>
試料水は、クロロホルムを0.06±0.006mg/Lの濃度に調製した。そして、内径4mmのチューブに活性炭1を1mL(長さ80mm)充填した。試料水を温度20℃で、通液倍率1,000倍の条件で活性炭充填カラムに通水した。活性炭充填カラムから流出した試料水を採取し、クロロホルム濃度をガスクロマトグラフィーを用いて定量測定した。カラム通過前の試料水とカラムの活性炭層を通過した試料水を比較し、除去率を求めた。
ここで、通液倍率(倍)とは、一定時間において、活性炭の体積に対し通過した試料水の体積の割合をいう。通液倍率1,000倍時のクロロホルム除去率とは、空間速度SV=2,000(単位:1/h)で、クロロホルム水溶液を通液倍率(通液体積/活性炭体積)1,000倍で通過させた時、つまり、活性炭1mLに対し、クロロホルム水溶液を1,000mL流した時の除去率をいう。
さらに、通液倍率1,000倍と同様の方法で、通液倍率3,000倍、及び6,000倍における除去率も求めた。結果を下記表2に示す。
【0015】
(実施例2)
原材料として中国産の竹を用いた。炭素化した竹のチップ(有限会社綜合製)に対し、900℃で1時間、水蒸気による賦活処理を行ない活性炭2を得た。
活性炭2の製造条件を下記表1に示す。実施例1と同様の方法により、活性炭2の各種特性を計測した。また、クロロホルムの除去率を求めた。結果を下記表2−1に示す。
【0016】
(実施例3)
原材料として九州産の孟宗竹を用いた。竹の微粉末(粒径(公称):5μm〜500μm、バンブーテクノ社製)に対し、600℃で6時間炭化処理を行ない、その後、900℃で3時間、水蒸気による賦活処理を行ない活性炭3を得た。
活性炭3の製造条件を下記表1に示す。実施例1と同様の方法により、活性炭3の各種特性を計測した。また、クロロホルムの除去率を求めた。結果を下記表2−1に示す。
【0017】
(実施例4)
原材料として九州産の孟宗竹を用いた。竹の粉末(粒径(公称):0.1mm〜0.4mm、バンブーテクノ社製)に対し、600℃で6時間炭化処理を行ない、その後、900℃で3時間、水蒸気による賦活処理を行ない活性炭4を得た。
活性炭4の製造条件を下記表1に示す。実施例1と同様の方法により、活性炭4の各種特性を計測した。また、クロロホルムの除去率を求めた。結果を下記表2−1に示す。
【0018】
(実施例5)
原材料として九州産の孟宗竹を用いた。竹の粉末(粒径(公称):0.1mm〜0.4mm、バンブーテクノ社製)に対し、600℃で6時間炭化処理を行ない、その後、900℃で1時間、水蒸気による賦活処理を行ない活性炭5を得た。
活性炭5の製造条件を下記表1に示す。実施例1と同様の方法により、活性炭5の各種特性を計測した。また、クロロホルムの除去率を求めた。結果を下記表2−2に示す。
【0019】
(実施例6)
原材料として九州産の孟宗竹を用いた。竹の微粉末(粒径(公称):5μm〜500μm、バンブーテクノ社製)に対し、600℃で6時間炭化処理を行ない、その後、900℃で1時間、水蒸気による賦活処理を行ない活性炭6を得た。
活性炭6の製造条件を下記表1に示す。実施例1と同様の方法により、活性炭6の各種特性を計測した。また、クロロホルムの除去率を求めた。結果を下記表2−2に示す。
【0020】
(比較例1)
原材料としてヤシ殻を用いた。ヤシ殻の比較用活性炭1(CN240G、フタムラ化学社製)を用い、実施例1と同様の方法により、比較用活性炭1の各種特性を計測した。また、クロロホルムの除去率を求めた。結果を下記表2−2に示す。
【0021】
(比較例2)
原材料としてヤシ殻を用いた。ヤシ殻の比較用活性炭2(クラレコールGW、クラレケミカル株式会社製)を用い、実施例1と同様の方法により、比較用活性炭2の各種特性を計測した。また、クロロホルムの除去率を求めた。結果を下記表2−2に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2-1】
【0024】
【表2-2】
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の多孔質炭素は、その高い吸着性能ゆえ、キャパシタの電極材料、各種吸着剤、マスク、吸着シート、触媒用の担体等に使用することができる。