【実施例1】
【0021】
以下、本発明の第1実施形態について複数の実施例に基づいて詳細に説明する。まず、
図2を参照して、実施例で使用した各材料について説明する。
【0022】
(A)エポキシ樹脂は、2種類のエポキシ樹脂A1,A2と、エポキシ反応性希釈剤A´を用いた。エポキシ樹脂A1は、三菱化学株式会社製の製品名jER806を用いた。このjER806は、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂であり、エポキシ当量は160〜170(実施例では167)である。エポキシ樹脂A2は、三菱化学株式会社製の製品名jER828を用いた。このjER828は、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂であり、エポキシ当量は184〜194(実施例では188)である。エポキシ反応性希釈剤A´は、阪本薬品工業株式会社製の製品名SY−OCGを用いた。このSY−OCGは、オルソクレジルグリシジルエーテルであり、エポキシ当量は180である。
【0023】
(B)多官能のアクリレートモノマーは、3種類のアクリレートモノマーB1〜B3を用いた。アクリレートモノマーB1は、ダイセル・オルネクス株式会社製の製品名IRR214−Kを用いた。このIRR214−Kは、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートである。また、アクリロイル基1個あたりの分子量は152である。アクリレートモノマーB2は、新中村化学工業株式会社製の製品名A−BPE−10を用いた。このA−BPE−10は、オキシエチレンの繰り返し数が10のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートである。また、アクリロイル基1個あたりの分子量は388である。アクリレートモノマーB3は、新中村化学工業株式会社製の製品名A−BPE−4を用いた。このA−BPE−4は、オキシエチレンの繰り返し数が4のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートである。また、アクリロイル基1個あたりの分子量は256である。
【0024】
(C)ポリアミンは、脂肪系ポリアミン及び芳香族系ポリアミン等があるが本実施例では2種類のポリアミンC1,C2を用いた。脂肪系ポリアミンであるポリアミンC1は、東ソー株式会社製のTETA(トリエチレンテトラミン)を用いた。このTETAのアミン当量は37であり、分子量は146.2である。芳香族系ポリアミンであるポリアミンC2は、三菱ガス化学株式会社製のMXDA(メタキシレンジアミン)を用いた。このMXDAのアミン当量は63であり、分子量は136.1である。
【0025】
(D)細骨材は、1種類の細骨材D1を用いた。細骨材D1は、セメント硬さ試験用標準砂を用いた。この標準砂は、主成分がSiO
2のけい砂であり、粒径1mm以下の砂粒子が大半を占めている。
【0026】
図3及び
図4に示すように、実施例では、サンプル1〜19まで19種類のサンプルを作製し、硬化体の圧縮強度の測定と水中硬化特性の評価を行った。
【0027】
各サンプルの概略を説明すると、サンプル1、13〜16、18は、硬化型樹脂組成物のサンプルである。一方、サンプル2〜12、17、19は、硬化型樹脂組成物に骨材(細骨材D1)を混合した硬化型樹脂建設資材のサンプルである。硬化体の圧縮強度の測定に際し、サンプル1〜9、13〜19は、樹脂に水を添加せずに硬化させている。一方、サンプル10〜12は樹脂に水を添加した状態で硬化させている。また、水中硬化特性の評価に際し、樹脂質量の6倍の水に硬化前の樹脂を添加及び撹拌した。
【0028】
また、サンプル2,3は、第1液としてエポキシ樹脂を用い、第2液として多官能のアクリレートモノマーとポリエチレンポリアミンのプレポリマーを用いている。一方、サンプル1,4〜17は、第1液としてエポキシ樹脂と多官能のアクリレートモノマーを用い、第2液として多官能のアクリレートモノマーとポリエチレンポリアミンのプレポリマーを用いている。また、サンプル18,19は、第1液としてエポキシ樹脂と多官能のアクリレートモノマーを用い、第2液として多官能のアクリレートモノマーとポリアミン(MXDA)のプレポリマーを用いている。
【0029】
以下、各サンプルについて詳細に説明する。
【0030】
サンプル1は、第1液として、A1(JER806)を76.7質量%、A2(JER828)を13.8質量%、B1(IRR214−K)を9.5質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1(TETA)を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を769%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0031】
サンプル1において、エポキシ質量比率は80.1%、アクリル質量比率は11.9%、ポリアミン質量比率は8.1%である。なお、演算上の誤差により、エポキシ質量比率、アクリル質量比率、ポリアミン質量比率の合計値が100.1%となっている。後述する他のサンプルでも合計値が100.1%や99.9%になっているものがあるが、これも演算上の誤差であり、実際は100.0%である。また、サンプル1におけるプレポリマーのアクリレートモノマーとポリエチレンポリアミンのモル比(アクリル/アミンモル比)は、0.10である。
【0032】
なお、アクリル/アミンモル比は、第1液(主剤)と第2液(硬化剤)における反応速度の指標であり、数値が小さいほど両者の反応速度が高くなる。
【0033】
サンプル2は、第1液として、A1を42.7質量%、A2を57.3質量%含有するエポキシ樹脂の混合液を用いた。第2液として、B1を29.9質量%、C1を70.1質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液質量比率)を192%とし、かつ、ポリマー(第1液と第2液の反応物)と細骨材D1の質量比率(ポリマー砂質量比率)を17.1%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0034】
サンプル2において、エポキシ質量比率は65.8%、アクリル質量比率は10.2%、ポリアミン質量比率は24.0%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0035】
サンプル3は、第1液として、A1を38.8質量%、A2を51.7質量%、A´(SY−OCG)を9.5質量%含有するエポキシ樹脂の混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を197%とし、ポリマー砂質量比率を17.3%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0036】
サンプル3において、エポキシ質量比率は66.3%、アクリル質量比率は10.1%、ポリアミン質量比率は23.6%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0037】
サンプル4は、第1液として、A1を29.2質量%、A2を39.3質量%、B1を31.5質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を292%とし、ポリマー砂質量比率を22.2%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0038】
サンプル4において、エポキシ質量比率は51.0%、アクリル質量比率は31.1%、ポリアミン質量比率は17.9%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0039】
サンプル5は、第1液として、A1を29.4質量%、A2を38.8質量%、B1を31.8質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を265%とし、ポリマー砂質量比率を21.1%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0040】
サンプル5において、エポキシ質量比率は49.5%、アクリル質量比率は31.3%、ポリアミン質量比率は19.2%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0041】
サンプル6は、第1液として、A1を43.2質量%、A2を25.1質量%、B1を31.6質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を277%とし、ポリマー砂質量比率を22.1%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0042】
サンプル6において、エポキシ質量比率は50.2%、アクリル質量比率は31.2%、ポリアミン質量比率は18.6%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0043】
サンプル7は、第1液として、A1を35.5質量%、A2を31.5質量%、B1を33.0質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を292%とし、ポリマー砂質量比率を22.3%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0044】
サンプル7において、エポキシ質量比率は49.9%、アクリル質量比率は32.2%、ポリアミン質量比率は17.8%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0045】
サンプル8は、第1液として、A1を13.2質量%、A2を47.9質量%、A´を9.2質量%、B1を29.7質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を293%とし、ポリマー砂質量比率を21.8%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0046】
サンプル8において、エポキシ質量比率は52.5%、アクリル質量比率は29.7%、ポリアミン質量比率は17.8%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0047】
サンプル9は、第1液として、A1を33.0質量%、A2を44.1質量%、A´を8.4質量%、B2(A−BPE−10)を14.6質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を330%とし、ポリマー砂質量比率を21.4%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0048】
サンプル9において、エポキシ質量比率は65.5%、アクリル質量比率は18.2%、ポリアミン質量比率は16.3%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0049】
サンプル10は、第1液として、A1を32.9質量%、A2を45.1質量%、A´を7.8質量%、B2を14.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B1を30.0質量%、C1を70.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を316%、ポリマー砂質量比率を13.9%とし、水とポリマーの質量比率(水ポリマー質量比率)を31.9%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0050】
サンプル10において、エポキシ質量比率は65.2%、アクリル質量比率は17.9%、ポリアミン質量比率は16.8%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.10である。
【0051】
サンプル11は、第1液として、A1を55.9質量%、A2を37.5質量%、B3(A−BPE−4)を6.6質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を39.2質量%、C1を60.8質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を482%、ポリマー砂質量比率を7.4%、水ポリマー質量比率を599.0%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0052】
サンプル11において、エポキシ質量比率は77.4%、アクリル質量比率は12.2%、ポリアミン質量比率は10.4%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.09である。
【0053】
サンプル12は、第1液として、A1を52.2質量%、A2を34.8質量%、B3を13.0質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を39.2質量%、C1を60.8質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を474%、ポリマー砂質量比率を7.4%、水ポリマー質量比率を597.9%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0054】
サンプル12において、エポキシ質量比率は71.9%、アクリル質量比率は17.6%、ポリアミン質量比率は10.6%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.09である。
【0055】
サンプル13は、第1液として、A1を25.0質量%、A2を58.3質量%、B3を16.7質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を39.2質量%、C1を60.8質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を632%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0056】
サンプル13において、エポキシ質量比率は72.0%、アクリル質量比率は19.7%、ポリアミン質量比率は8.3%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.09である。
【0057】
サンプル14は、第1液として、A1を25.0質量%、A2を58.3質量%、B3を16.7質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を39.2質量%、C1を60.8質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を496%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0058】
サンプル14において、エポキシ質量比率は69.3%、アクリル質量比率は20.5%、ポリアミン質量比率は10.2%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.09である。
【0059】
サンプル15は、第1液として、A1を25.0質量%、A2を58.3質量%、B3を16.7質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を39.2質量%、C1を60.8質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を407%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0060】
サンプル15において、エポキシ質量比率は66.9%、アクリル質量比率は21.1%、ポリアミン質量比率は12.0%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.09である。
【0061】
サンプル16は、第1液として、A1を25.0質量%、A2を58.3質量%、B3を16.7質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を39.2質量%、C1を60.8質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を284%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0062】
サンプル16において、エポキシ質量比率は61.6%、アクリル質量比率は22.5%、ポリアミン質量比率は15.8%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.09である。
【0063】
サンプル17は、第1液として、A1を25.0質量%、A2を58.3質量%、B3を16.7質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を39.2質量%、C1を60.8質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を496%、ポリマー砂質量比率を7.4%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0064】
サンプル17において、エポキシ質量比率は69.3%、アクリル質量比率は20.5%、ポリアミン質量比率は10.2%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.09である。
【0065】
サンプル18は、第1液として、A1を25.0質量%、A2を58.3質量%、B3を16.7質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を35.0質量%、C2(MXDA)を65.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を182%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0066】
サンプル18において、エポキシ質量比率は53.8%、アクリル質量比率は23.2%、ポリアミン質量比率は23.0%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.13である。
【0067】
サンプル19は、第1液として、A1を25.0質量%、A2を58.3質量%、B3を16.7質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を35.0質量%、C2を65.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液/第2液質量比率を183%、ポリマー砂質量比率を25.3%として、各材料を反応させて硬化物を得た。
【0068】
サンプル19において、エポキシ質量比率は53.9%、アクリル質量比率は23.2%、ポリアミン質量比率は23.0%である。また、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.13である。
【0069】
上述の各サンプルに対し、圧縮強度の測定と水中硬化特性の評価を行った。圧縮強度の測定は、JIS A 1108に準拠して行った。各サンプルを、温度20℃、湿度60%の環境下で14日間養生し、測定に供した。試験体の大きさは、直径50mm、高さ100mmとした。圧縮速度は、毎秒0.6±0.4N/mm
2とした。水中硬化特性の評価は、樹脂質量の6倍の水に硬化前の樹脂を撹拌し、水との密度差によって沈降した樹脂に対して目視によって行った。全てのサンプルが水中でも硬化したため、特に硬化性に優れるサンプルを符号◎で表し、水中で硬化したサンプルを符号○で表した。
【0070】
また、第1液をエポキシ樹脂のみで作製したサンプル2、第1液をエポキシ樹脂とエポキシ反応性希釈剤で作製したサンプル3、及び、第1液をエポキシ樹脂とエポキシ反応性希釈剤と多官能のアクリレートモノマーで作製したサンプル8について、第1液の粘度を測定した。粘度の測定には回転式粘度計(ビスコテック株式会社製の商品名「ビスコリード・ワン」)を使用した。粘度測定時の回転数は、測定粘度値が粘度測定範囲の最大値の半分程度となるように選定した。具体的には、サンプル2は12rpm、サンプル3は30rpm、サンプル8は60rpmに選定した。なお、粘度測定範囲の最大値に関し、サンプル2は10000mPa・s、サンプル3は4000mPa・s、サンプル8は2000mPa・sであった。
【0071】
以下、各サンプルの評価結果について説明する。まず、硬化型樹脂組成物のサンプル1、13〜16、18の評価結果について説明する。
【0072】
圧縮強度に関し、サンプル1は86.4MPa、サンプル13は74.1MPa、サンプル14は100.4MPa、サンプル15は88.3MPa、サンプル16は74.5MPa、サンプル18は82.9MPaであった。何れのサンプルも圧縮強度が70MPa(=70N/mm
2)を越えていることから、建設資材として使用可能な強度を備えていることが判る。特に、サンプル14では、圧縮強度が100MPaを越えていることから、非常に高い強度を備えていることが確認された。
【0073】
これらの中でサンプル13〜16は、第1液と第2液が同じであって第1液と第2液の比率を変えて作製したものである。すなわち、第1液/第2液質量比率に関し、サンプル13は632%、サンプル14は496%、サンプル15は407%、サンプル16は284%である。そして、上述の圧縮強度に関し、サンプル14が最も高く、サンプル13やサンプル15,16の圧縮強度はサンプル14の圧縮強度よりも低い。このことから、第1液/第2液質量比率について最適値があることが理解でき、本実施例ではサンプル14の496%が最適であることが確認された。
【0074】
水中硬化特性に関し、何れのサンプルについても、水中で硬化することが確認された。特に、サンプル18では、ポリアミンにメタキシレンアミンを用いることにより水中での硬化性に優れることが確認された。
【0075】
次に、硬化型樹脂建設資材のサンプル2〜9、17、19の評価結果について説明する。
【0076】
圧縮強度に関し、サンプル2は108.4MPa、サンプル3は113.8MPa、サンプル4は100.6MPa、サンプル5は104.5MPa、サンプル6は98.5MPa、サンプル7は103.5MPa、サンプル8は109.4MPa、サンプル9は114.5MPa、サンプル17は107.1MPa、サンプル19は101.7MPaであった。
【0077】
このように、硬化型樹脂組成物に細骨材を混合することで硬化型樹脂建設資材が製造できることが確認された。そして、サンプル6が98.5MPaであったものの、その他の各サンプルで圧縮強度が100MPaを越えていることから、建設資材として非常に高い強度を備えていることが確認された。特に、サンプル3、9では、圧縮強度が110MPaを越えていることから、非常に高い強度を備えていることが確認された。
【0078】
そして、骨材を混合することにより、硬化型樹脂建設資材に占める硬化型樹脂組成物(主剤及び硬化剤)の比率を下げることができ、高強度かつ経済性に優れた建設資材を提供できる。
【0079】
水中硬化特性に関し、何れのサンプルについても、水中で硬化することが確認された。特に、サンプル9、19では、細骨材を添加することで硬化型樹脂組成物は水との接触が妨げられるため水中での硬化性に優れることが確認された。
【0080】
第1液の粘度に関し、サンプル2は7110mPa・s、サンプル3は2410mPa・s、サンプル8は930mPa・sであった。サンプル3の粘度がサンプル2の粘度よりも低いことから、エポキシ反応性希釈剤の使用により第1液の粘度を下げられることが確認された。さらに、サンプル8の粘度がサンプル3の粘度よりも低いことから、多官能のアクリレートモノマーの使用により第1液の粘度を一層効果的に下げられることが確認された。第1液の粘度を低下させると、第1液と第2液の混合時における作業性が向上され、第1液と第2液の混合液の型枠等への充填性が向上される。
【0081】
なお、サンプル2,3,8について、硬化までの時間は60〜120分程度であった。
【0082】
次に、樹脂に水を添加した状態で硬化させたサンプル10〜12について説明する。
【0083】
圧縮強度に関し、サンプル10は107.9MPa、サンプル11は15.2MPa、サンプル12は25.5MPaであった。サンプル10では、硬化樹脂の質量に対して約1/3倍の水を添加して硬化させても100MPaを越える非常に高い圧縮強度が得られることが確認された。サンプル11及び12では、硬化樹脂の質量に対して約6倍の水を主剤と硬化剤の混合時に添加しても、水中での硬化性が良好であることが確認された。また、これらのサンプルでも所定の圧縮強度が得られることが確認された。すなわち、サンプル11では15MPaを越える圧縮強度が得られ、サンプル12では25MPaを越える圧縮強度が得られることが確認された。
【0084】
水中硬化特性に関し、何れのサンプルについても、水中において硬化性に優れることが確認された。
【0085】
以上の第1実施形態に係る試験結果を総括すると、次のことが確認された。
【0086】
まず、多官能アクリレートモノマーとポリアミンのプレポリマーを硬化剤として用い、エポキシ樹脂、又は、エポキシ樹脂と多官能アクリレートモノマーを含有する主剤と反応させることにより、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の中間的な性質を備えた熱硬化性樹脂が得られることが確認された。
【0087】
プレポリマーの基となる多官能アクリレートモノマーとしては、架橋構造のトリシクロデカンを備えるもの(B1:IRR214−K)やベンゼン環を備えるもの(B3:A−BPE−4)が使用できることが確認された。同じくポリアミンとしては、TETA(C1)とMXDA(C2)の何れも使用できることが確認された。プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.09〜0.13の範囲が好適であることが確認された。
【0088】
主剤としては、エポキシ樹脂のみ(サンプル2、3)であってもよく、エポキシ樹脂と多官能アクリレートモノマーの混合液(サンプル1、4〜19)であってもよいことが確認された。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールF型(jER806)やビスフェノールA型(jER828)の液状エポキシ樹脂が使用できることが確認された。また、必要に応じてエポキシ反応性希釈剤(SY−OCG)を使用してもよいことが確認された。多官能アクリレートモノマーとしては、プレポリマーと同じく、架橋構造のトリシクロデカンを備えるもの(IRR214−K)やベンゼン環を備えるもの(A−BPE−10、4)が使用できることが確認された。
【0089】
また、主剤として、エポキシ樹脂と多官能アクリレートモノマーの混合液(サンプル1、4〜19)を用いることで、作業性の向上(例えば型枠への充填性の向上)が図れることが確認された。これは、多官能アクリレートモノマーの方がエポキシ樹脂よりも粘度が低く、主剤と硬化剤の混合物の粘性をエポキシ樹脂のみを用いた場合よりも下げることができるためである。更に多官能アクリレートモノマーの混合によって硬化型樹脂組成物の弾性強度の向上も期待できるからである。
【0090】
主剤と硬化剤(プレポリマー)の混合比(第1液/第2液)は、7.7:1(サンプル1)〜1.8:1(サンプル18,19)の範囲で定められることが確認された。細骨材(標準砂)は、樹脂よりも弾性率が高く添加によって硬化体の圧縮強度が向上することが確認された。
【0091】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図5(a)に示すように、第2実施形態の硬化型樹脂組成物は、第1液(主剤)と第2液(硬化剤)を反応させることで製造される。そして、第1液は、(A)エポキシ樹脂、又は、(A)エポキシ樹脂と(B)多官能のアクリレートモノマーの混合物が使用される。第2液は、(B)多官能のアクリレートモノマーと、(C)ポリアミンのプレポリマーと、(E)シランカップリング剤とが用いられる。プレポリマー中のアクリル/アミンモル比は、0.011〜0.23であってよい。
【0092】
図5(b)に示すように、エポキシ樹脂は、常温で液体であって、1分子中に1個以上のエポキシ基を有している。このエポキシ樹脂は、1種類であっても、複数種類であってもよい。そして、エポキシ当量は、100以上500以下であってもよい。
【0093】
多官能のアクリレートモノマーは、1分子中に1官能よりも大きいアクリロイル基を有する熱硬化性のアクリル樹脂である。具体的には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタアクリル酸、ビニルトルエン等の基本モノマーに、共重合によって官能基を導入したものであり、スピラン環やシクロン環とベンゼン核の少なくとも1つを有する。このアクリレートモノマーは、1種類であっても、複数種類であってもよい。そして、アクリロイル基1個あたりの分子量は、100以上1000以下であってもよい。
【0094】
ポリアミンは、1種類であっても、複数種類であってもよい。そして、ポリアミンの分子量は、60以上5000以下であってもよい。
【0095】
硬化型樹脂組成物におけるエポキシ樹脂、アクリレートモノマー、ポリアミンの含有比率について説明する。エポキシ樹脂の含有比率は5質量%以上98質量%以下、アクリレートモノマーの含有比率は1質量%以上60質量%以下、ポリアミンの含有比率は1質量%以上50質量%以下であり、合計が100質量%である。硬化型樹脂組成物において、シランカップリング剤の含有比率は1.0質量%以上10質量%以下である。そして、エポキシ樹脂の含有比率は30質量%以上85質量%以下、アクリレートモノマーの含有比率は1質量%以上40質量%以下、ポリアミンの含有比率は1質量%以上35質量%以下、シランカップリング剤の含有比率は1.0質量%以上10質量%以下であれば、得られる硬化型樹脂組成物は水中でも硬化し、高い圧縮強度及び高い弾性強度を有するとともに、水中で接着し、高い引張接着強さ及び下地に対する高い接着性を有する高強度の硬化型樹脂組成物を提供することができる。
【0096】
そして、硬化型樹脂組成物は、多官能アクリレートモノマーとポリアミンとシランカップリング剤とを反応させてプレポリマーを生成する第1ステップと、この第1ステップで生成されたプレポリマーを硬化剤として、エポキシ樹脂を含有する主剤と反応させる第2ステップとを行うことで製造される。
【0097】
この硬化型樹脂組成物は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の中間的な性質を備えた熱硬化性樹脂であり、硬化体の圧縮強度を低強度から70MPa(=70N/mm
2)を越える高強度の範囲で調整でき、高い弾性を有する。また、基礎や構造物といった大型の注型が可能であり、硬化物はアミン臭を生じない。
【0098】
また、硬化型樹脂組成物は、常温で硬化可能であり、水中に分散しても樹脂に水を含んでいても硬化する。第2液(硬化剤)のアクリレートモノマーは、スピラン環やシクロン環と、且つ/またはベンゼン核を持つ樹脂であり、アミンと前駆体を生成することで非水系のプレポリマーとなる。このため、水と接触しても失活せず、樹脂を硬化させることができる。また、プレポリマーの基となるアクリレートモノマーとポリアミンの比率、及び、第1液(主剤)と第2液(硬化剤)の比率に応じて、反応速度の調整が可能である。加えて、硬化剤に過酸化物を使用していないので、現場での管理が可能となる。
【0099】
また、硬化型樹脂組成物は、水中において、下地部材(下地コンクリート)に対して接着可能である。
【実施例2】
【0100】
以下、本発明の第2実施形態について複数の実施例に基づいて詳細に説明する。まず、
図6を参照して、実施例で使用した各材料について説明する。
【0101】
(A)エポキシ樹脂は、2種類のエポキシ樹脂A3,A4と、エポキシ反応性希釈剤A´2を用いた。エポキシ樹脂A3は、新日鉄住金化学株式会社の製品名エポトートYDF−170(以下、YDF−170)を用いた。このYDF−170は、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂であり、エポキシ当量は160〜170(実施例では167)である。なお、エポキシ樹脂A3は、第1実施形態で利用したエポキシ樹脂A1と略同一のものと考えることができる。エポキシ樹脂A4は、新日鉄住金化学株式会社の製品名エポトートYD−128(以下、YD−128)を用いた。このYD−128は、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂であり、エポキシ当量は184〜194(実施例では188)である。エポキシ反応性希釈剤A´2は、阪本薬品工業株式会社製の製品名mp−CGEを用いた。このmp−CGEは、メタパラクレジルグリシジルエーテルであり、エポキシ当量は166である。
【0102】
(B)多官能のアクリレートモノマーは、アクリレートモノマーB3を用いた。アクリレートモノマーB3は、新中村化学工業株式会社製の製品名A−BPE−4を用いた。このA−BPE−4は、オキシエチレンの繰り返し数が4のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートである。また、このA−BPE−4のアクリロイル基1個あたりの分子量は256である。
【0103】
(C)ポリアミンは、脂肪系ポリアミン、芳香族系ポリアミン等があるが本実施例では2種類のポリアミンC1,C3を用いた。脂肪系ポリアミンであるポリアミンC1は、東ソー株式会社製のTETA(トリエチレンテトラミン)を用いた。このTETAのアミン当量は37であり、分子量は146.2である。なお、TETAのアミン当量は、実験に用いたTETAのアミン当量であり、使用するTETAによっては、この当量から少しずれたものとなる可能性がある。脂肪系ポリアミンであるポリアミンC3は、大都産業株式会社製のダイトクラールX−6016を用いた。X−6016は、キシリレンジアミン・フェニル(又はトリル)グリシジルエーテル付加物であり、アミン当量は135である。
【0104】
(E)シランカップリング剤は、例えば、アミノ基を有する1種類のシランカップリング剤E1を用いた。シランカップリング剤E1は、東レ・ダウコーニング株式会社の製品名DOW CORNINGZ−6020(R)SILAN(以下、Z−6020)を用いた。Z−6020は、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランであり、アミン当量は、74である。
【0105】
図7に示すように、実施例2では、サンプル20〜29まで10種類のサンプルを作製し、硬化体の圧縮強度の測定、水中硬化特性の評価、水中での引張接着強さ及び下地コンクリートの凝集破断割合の測定、水中接着性の評価を行った。
【0106】
各サンプルの概略を説明すると、サンプル20〜26は、シランカップリング剤の質量比を変えて得られたサンプルである。サンプル27〜29は、プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比を変えて得られたサンプルである。
【0107】
以下、各サンプルについて詳細に説明する。
【0108】
サンプル20は、第1液として、A3(YDF−170)を22.6質量%、A4(YD−128)を48.7質量%、A’2(mp−CGE)を10.6質量%、B3(A−BPE−4)を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を10.2質量%、C1(TETA)を15.0質量%、C3(X−6016)を74.8質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を185%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0109】
サンプル20において、エポキシ質量比率は53.2%、アクリル質量比率は15.3%、ポリアミン質量比率は31.5%である。また、サンプル20において、シランカップリング剤質量比率は、0%である。また、サンプル20におけるプレポリマーのアクリレートモノマーとポリエチレンポリアミンのモル比(アクリル/アミンモル比)は、0.042である。
【0110】
なお、アクリル/アミンモル比は、第1液(主剤)と第2液(硬化剤)における反応速度の指標であり、数値が小さいほど両者の反応速度が高くなる。
【0111】
サンプル21は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を10.2質量%、C1を14.9質量%、C3を74.5質量%、E1(Z−6020)を0.4質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を185%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0112】
サンプル21において、エポキシ質量比率は53.1%、アクリル質量比率は15.3%、ポリアミン質量比率は31.5%である。なお、エポキシ質量比率、アクリル質量比率、ポリアミン質量比率の合計値が100%となっていないが、これは演算上の誤差(四捨五入等による誤差)であり、実際は、100%である。なお、後述する他のサンプルでも合計値が100%になっていないものがあるが、これも演算上の誤差であり、実際は100.0%である。また、サンプル21において、シランカップリング剤質量比率は、0.15%である。また、サンプル21におけるアクリル/アミンモル比は、0.042である。
【0113】
サンプル22は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を10.2質量%、C1を14.9質量%、C3を74.3質量%、E1を0.7質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を184%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0114】
サンプル22において、エポキシ質量比率は53.1%、アクリル質量比率は15.3%、ポリアミン質量比率は31.6%である。また、サンプル22において、シランカップリング剤質量比率は、0.25%である。また、サンプル22におけるアクリル/アミンモル比は、0.042である。
【0115】
サンプル23は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を10.1質量%、C1を14.7質量%、C3を73.6質量%、E1を1.5質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を183%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0116】
サンプル23において、エポキシ質量比率は53.0%、アクリル質量比率は15.3%、ポリアミン質量比率は31.7%である。また、サンプル23において、シランカップリング剤質量比率は、0.55%である。また、サンプル23におけるアクリル/アミンモル比は、0.042である。
【0117】
サンプル24は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を9.7質量%、C1を14.6質量%、C3を72.7質量%、E1を3.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を190%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0118】
サンプル24において、エポキシ質量比率は53.7%、アクリル質量比率は15.2%、ポリアミン質量比率は31.1%である。また、サンプル24において、シランカップリング剤質量比率は、1.03%である。また、サンプル24におけるアクリル/アミンモル比は、0.041である。
【0119】
サンプル25は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を9.2質量%、C1を13.8質量%、C3を69.0質量%、E1を8.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を184%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0120】
サンプル25において、エポキシ質量比率は53.1%、アクリル質量比率は15.0%、ポリアミン質量比率は31.9%である。また、サンプル25において、シランカップリング剤質量比率は、2.81%である。また、サンプル25におけるアクリル/アミンモル比は、0.041である。
【0121】
サンプル26は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を8.6質量%、C1を12.9質量%、C3を64.5質量%、E1を14.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を179%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0122】
サンプル26において、エポキシ質量比率は52.6%、アクリル質量比率は14.7%、ポリアミン質量比率は32.7%である。また、サンプル26において、シランカップリング剤質量比率は、5.02%である。また、サンプル26におけるアクリル/アミンモル比は、0.041である。
【0123】
サンプル27は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を2.9質量%、C1を15.7質量%、C3を78.4質量%、E1を3.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を225%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0124】
サンプル27において、エポキシ質量比率は56.7%、アクリル質量比率は13.4%、ポリアミン質量比率は29.9%である。また、サンプル27において、シランカップリング剤質量比率は、0.93%である。また、サンプル27におけるアクリル/アミンモル比は、0.011である。
【0125】
サンプル28は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を5.7質量%、C1を15.2質量%、C3を76.0質量%、E1を3.0質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を216%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0126】
サンプル28において、エポキシ質量比率は56.0%、アクリル質量比率は14.2%、ポリアミン質量比率は29.8%である。また、サンプル28において、シランカップリング剤質量比率は、0.96%である。また、サンプル28におけるアクリル/アミンモル比は、0.023である。
【0127】
サンプル29は、第1液として、A3を22.6質量%、A4を48.7質量%、A’2を10.6質量%、B3を18.1質量%含有するエポキシ樹脂とアクリレートモノマーの混合液を用いた。第2液として、B3を37.7質量%、C1を10.1質量%、C3を50.0質量%、E1を2.3質量%含有するプレポリマーを用いた。そして、第1液と第2液の質量比率(第1液/第2液)を119%とし、両者を反応させて硬化物を得た。
【0128】
サンプル29において、エポキシ質量比率は44.5%、アクリル質量比率は27.0%、ポリアミン質量比率は28.5%である。また、サンプル28において、シランカップリング剤質量比率は、1.03%である。また、サンプル29におけるアクリル/アミンモル比は、0.229である。
【0129】
上述の各サンプルに対し、水中硬化特性の評価、引張接着強さの測定、下地コンクリートの凝集破断割合の測定、水中接着性の評価を行った。また、一部のサンプル(サンプル25,27,28,29)については、圧縮強度の測定を行った。
【0130】
水中硬化特性の評価は、樹脂質量の6倍の水に硬化前の樹脂を撹拌し、水との密度差によって沈降した樹脂に対して目視によって行った。水中硬化特性の評価では、特に硬化性に優れるサンプルを符号◎で表し、水中で硬化したサンプルを符号○で表した。また、水中での引張接着強さの測定は、次に示す方法により行った。試験用の下地として、水中に7日以上浸漬させた30cm×30cm×厚さ4cmのコンクリートを用い、これを水中に沈めたまま、上方からサンプルの硬化前の樹脂を垂らして4cm×4cmの鋼製アタッチメントを押し付け、温度20℃の水中で7日間養生して試験体を作製した。その後、試験体を水中に浸漬させたまま、引張試験器(テクノテスターRT−2000LD:サンコーテクノ株式会社製)を用いて、硬化した樹脂を下地コンクリートから引き剥がした際における引張接着強さ、及び接着面積に対する下地コンクリートの凝集破断が発生している面積の割合(凝集破断割合)を実際に測定するようにした。水中接着性の評価では、凝集破断割合が所定割合以上(例えば、50%以上)のものを優秀として、符号◎で表し、凝集破断割合が所定割合よりも少ないものを符号△で表した。圧縮強度の測定は、JIS A 1108に準拠して行った。各サンプルを、温度20℃、湿度60%の環境下で14日間養生し、測定に供した。試験体の大きさは、直径50mm、高さ100mmとした。圧縮速度は、毎秒0.6±0.4N/mm
2とした。
【0131】
以下、各サンプル(サンプル20〜サンプル29)の評価結果について説明する。
【0132】
水中硬化特性に関し、何れのサンプルについても、水中での硬化性に優れることが確認された。
【0133】
引張接着強さに関し、サンプル20は、0.53N/mm
2であり、サンプル21は、1.69N/mm
2であり、サンプル22は、1.31N/mm
2であり、サンプル23は、1.23N/mm
2であり、サンプル24は、2.54N/mm
2であり、サンプル25は、2.67N/mm
2であり、サンプル26は、2.43N/mm
2であり、サンプル27は、2.21N/mm
2であり、サンプル28は、1.36N/mm
2であり、サンプル29は、3.51N/mm
2であった。サンプル24,25,26,27,29については、2N/mm
2以上であり、引張接着強さが大きいことが判った。また、サンプル20〜サンプル26に着目すると、これらサンプルは、アクリル/アミンモル比をほぼ一定(0.041近傍)とした場合において、シランカップリング剤質量比率を変えたサンプルであり、サンプル24,25,26のように、シランカップリング剤質量比率が1%(例では、1.03%)を超えると、引張接着強さが2N/mm
2以上となることが判った。
【0134】
下地コンクリートの凝集破断割合の測定に関して、サンプル20は、0%であり、サンプル21は、5%あり、サンプル22は、5%であり、サンプル23は、5%であり、サンプル24は、70%であり、サンプル25は、67%であり、サンプル26は、72%であり、サンプル27は、13%であり、サンプル28は、3%であり、サンプル29は、93%であった。この結果から、サンプル24,25,26,29の凝集破断割合が高く、水中接着性に関して、特に優れていることが判った。サンプル24,25,26,29に着目すると、シランカップリング剤質量比率は、1%以上である場合に、水中接着性が優れていることが判った。また、アクリル/アミンモル比が0.04以上0.23以下の範囲内にある場合に、水中接着性が優れていることが判った。
【0135】
圧縮強度に関し、サンプル25は81.0MPa、サンプル27は91.4MPa、サンプル28は93.3MPa、サンプル29は33.7MPaであった。これらサンプルは、圧縮強度が30MPaを超えていることから、建築資材として使用可能な強度を備えていることが判り、特に、サンプル25,27,28については、圧縮強度が70MPa(=70N/mm
2)を越えていることから、建設資材として広範に使用可能であることが判った。このことから、アクリル/アミンモル比が0.011以上のように0.5よりも小さい範囲であっても圧縮強度が高いことが判った。
【0136】
以上の第2実施形態に係る試験結果を総括すると、次のことが確認された。
【0137】
まず、多官能アクリレートモノマーとポリアミンのプレポリマーとシランカップリング剤と混合した硬化剤として用い、エポキシ樹脂、又は、エポキシ樹脂と多官能アクリレートモノマーを含有する主剤と反応させることにより、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の中間的な性質を備えた硬化型樹脂組成物が得られることが確認された。
【0138】
プレポリマーにおけるアクリル/アミンモル比は、0.011〜0.23の範囲とすることにより、水中硬化特性に優れ、高い圧縮強度の硬化型樹脂組成物が得られることが確認された。
【0139】
硬化型樹脂組成物の全体に対するシランカップリング剤の質量比率を、1.0%以上とすることにより、水中接着性が優れている硬化型樹脂組成物が得られることが確認された。また、硬化型樹脂組成物におけるアクリル/アミンモル比が0.04以上0.23以下の範囲内にある場合に、水中接着性が優れている硬化型樹脂組成物が得られることが確認された。
【0140】
以上の実施形態及び実施例の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0141】
本発明は、多官能のアクリレートモノマーとポリアミンのプレポリマーを硬化剤として用い、エポキシ樹脂、又は、エポキシ樹脂と多官能のアクリレートモノマーを含有する主剤と反応させることで得られる硬化型樹脂組成物、及び、その製造方法を要旨とする。このため、エポキシ樹脂、多官能のアクリレートモノマー、ポリアミンは、実施例で用いたものに限定されない。また、配合も実施例のものに限定されない。
【0142】
例えば、
図1(b)で説明したように、エポキシ樹脂は、(1)常温で液体であること、(2)1分子中に1個以上のエポキシ基を有すること、(3)少なくとも1種類であること、(4)エポキシ当量が100以上500以下であることを満たすようにしてもよい。
【0143】
多官能のアクリレートモノマーは、(1)1分子中に1官能よりも大きいアクリロイル基を有すること、(2)熱硬化性であること、(3)少なくとも1種類であること、(4)アクリロイル基1個あたりの分子量が100以上1000以下であることを満たすようにしてもよい。さらに、硬化型樹脂組成物として強度を得たい場合は、非水系のアクリレートモノマーを使用すればよい。
【0144】
ポリアミンは、(1)少なくとも1種類であること、(2)分子量が60以上5000以下であることを満たすようにしてもよい。
【0145】
プレポリマーに関し、アクリル/アミンモル比は、0.011〜0.23であってもよい。
【0146】
骨材に関し、細骨材(D1)としてセメント標準砂を例示したが、山砂や海砂などを用いることができる。また、砕石などの粗骨材を併用してもよい。骨材を硬化型樹脂組成物に混合する場合、主剤と硬化剤とを反応させるために混合する際に骨材を併せて混合してもよいし、主剤と硬化剤を混合した後、未硬化の混合物に対して骨材を混合してもよい。後者の場合には、主剤と硬化剤が十分に混合された状態で骨材を混合できるので、より均質な硬化型樹脂建設資材を容易に製造できる。また、骨材を硬化型樹脂組成物に混合する場合において、硬化剤にシランカップリング剤を更に混合するようにしてもよく、これにより、上記同様な効果を有する硬化型樹脂建設資材を製造することができる。