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特開2017-82238フッ化ビニリデン/2,3,3,3−テトラフルオロプロペンコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-82238(P2017-82238A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】フッ化ビニリデン/2,3,3,3−テトラフルオロプロペンコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/22 20060101AFI20170414BHJP
   C08J 5/00 20060101ALN20170414BHJP
【FI】
   C08F214/22
   C08J5/00CEW
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-1331(P2017-1331)
(22)【出願日】2017年1月6日
(62)【分割の表示】特願2014-27868(P2014-27868)の分割
【原出願日】2009年6月18日
(31)【優先権主張番号】61/078,497
(32)【優先日】2008年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】メディ・デュラリ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エイ・マウンツ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA26X
4F071AA89
4F071AF30
4F071AF36
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4J100AC22Q
4J100AC24P
4J100CA04
4J100DA41
4J100DA62
4J100FA03
4J100FA20
4J100JA32
4J100JA33
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた光学特性を有するコポリマー組成物を目的とする。
【解決手段】本発明は、ポリ(フッ化ビニリデン−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)コポリマーのコポリマー組成物に関する。形成されたコポリマーは、非常に低いヘイズレベルで、優れた光学特性、耐食性及び電気特性を有する。テトラフルオロプロペンモノマー単位は、コポリマーの0.5〜60重量%の割合で存在可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5〜60重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(TetFP)モノマー単位と40〜99.5重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含むコポリマー組成物。
【請求項2】
2〜40重量%のTetFPモノマー単位を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
ヘイズレベルが30%未満であり、合計白色光透過率が85%を超える、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記コポリマーが、分岐状であって、少なくとも5%の分岐を有する、請求項1〜3いずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項5】
レンズ及びその他の光学装置のための被覆物としてのフィルム;高温で可撓性のある透明チューブ;透明で透視性のある産業用窓、ガラス、パイプ、及び液面表示装置;ソーラーパネル用途、圧電用途、及びコンデンサー用途のための特殊フィルム;燃料電池膜、透明で強靱なコーティング、ならびに大型ブロー成形物体;からなる群より選択される構造を有する、請求項1〜4いずれか1項に記載のコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(フッ化ビニリデン−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)コポリマーのコポリマー組成物に関する。形成されたコポリマーは、非常に低いヘイズ(ヘイズ)で、優れた光学特性、耐食性及び電気特性を有する。テトラフルオロプロペンモノマー単位は、コポリマーの0.5〜60重量%の割合で存在可能である。
【背景技術】
【0002】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、耐薬品性を有するエンジニアリングプラスチックである。PVDF及びそのコポリマーは数多くの高性能用途において使用されてきた。PVDFフィルムは透明に製造することができるものの、それでもなお幾分かのヘイズを有し、光学的な透明度には至らない製品を生成する。PVDFの耐薬品性を保持する光学的に透明なPVDF又はPVDFコポリマーに対する必要性が存在する。
【0003】
米国特許第5,140,082号明細書は、フッ化ビニリデン/トリフルオロメチルエチレンコポリマー(3,3,3−トリフルオロプロペン)(TFP)を開示している。初期投入物中に全てのTFPを入れた状態で、溶液、懸濁液及び乳化重合による合成が記載されている。コポリマーは、優れた耐候性、耐食性及び電気特性を有する。この参考文献は、光学透明度に関して言及していない。
【0004】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンコポリマーは、特開平10−310712号公報、特開平9−288915号公報、特開昭63−284250号公報及び特開昭58−164609号公報などに記載されている通り、その他のモノマーを用いて形成された。
【0005】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとフッ化ビニリデンのコポリマーを形成してこれらのモノマーのポリマーによりもたらされ得る特性を利用したいという願望が存在する。
【0006】
意外にも、広範囲の3,3,3−トリフルオロプロペンレベルを有するフッ化ビニリデンと3,3,3−トリフルオロプロペンのコポリマーを合成して優れた光学特性を有するコポリマーを生産できることが今回見出された。更に、このコポリマーのフィルムは、可撓性及び靭性がきわめて高く、融点も高い。
【0007】
興味深いことに、フッ化ビニリデンと(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)のコポリマーが、フッ化ビニリデン−3,3,3−トリフルオロプロペンのコポリマーよりもはるかに容易に形成することが見出された。いかなる特定の理論によっても束縛されないが、3,3,3−トリフルオロプロペン構造上に第三級水素が存在すると共重合反応が阻害されてプロセス遅延及び開始剤使用量の増加がひき起こされ、これが製品の品質に不利な影響を及ぼすと考えられる。一方2,3,3,3−テトラフルオロプロペン構造においては、第三級水素はフッ素原子と置換されており、反応阻害はなくなる。匹敵する共重合反応は、フッ化ビニリデン−3,3,3−トリフルオロプロペンの反応に比べて、フッ化ビニリデン−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン重合についての反応時間及び開始剤使用量の大幅な減少を示す。更に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンコポリマーの場合、製品の色(熱プレス板(heat pressed plaque)による)に著しい改善がみられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,140,082号明細書
【特許文献2】特開平10−310712号公報
【特許文献3】特開平9−288915号公報
【特許文献4】特開昭63−284250号公報
【特許文献5】特開昭58−164609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた光学特性を有するコポリマー組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、0.5〜60重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンモノマー単位と40〜99.5重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含むコポリマー組成物に関する。コポリマー組成物は光学的に透明である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、0.5〜60重量%好ましくは2.0〜40重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(TetFP)を含むフッ化ビニリデン−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンコポリマーに関する。このコポリマーは光学的に透明である。
【0012】
本明細書中で使用する「光学的に透明」という用語は、透明プラスチックのヘイズ及び視感透過率についてのASTM D1003−07標準試験によって測定された場合30%未満のヘイズレベルと、ASTM D1003−07により測定された場合に85%を超え、好ましくは90%を超える光透過率を有する材料を意味する。
【0013】
本明細書で使用される「コポリマー」という用語は、0.5〜60重量%のTetFPモノマー単位と40〜99.5重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位とを含むポリマーを意味する。好ましくは、TetFPのレベルは2〜36重量%である。TetFP及びVDFのみを含むコポリマーが好ましい。しかしながら、低レベル(20重量%まで、好ましくは10重量%まで)の1つ以上のその他の共重合可能なモノマーが存在可能である。これらの共重合可能なモノマーとしては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、部分的又は全体的にフッ素化されたアルファーオレフィン、例えば3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン及びヘキサフルオロプロペンの、1つ以上、部分的にフッ素化されたオレフィンヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロビニルエーテル類、例えばペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロ−n−プロピルビニルエーテル、及びペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル、フッ素化ジオキソール類、例えばペルフルオロ(1,3−ジオキソール)及びペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロメチルビニルエーテル、及びペルフルオロプロピルビニルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。形成されたコポリマーは不均質又は均質であってよく、その構造は星状、分岐ランダム又はブロックでもよい。
【0014】
VDF/TetFPコポリマーは、バッチ法又はセミバッチ法を含む任意の重合方法によって製造することができ、乳化、逆乳化、懸濁液又は溶液重合により形成されてよい。好ましくは、コポリマーは乳化プロセスによって製造される。
【0015】
乳化重合プロセスでは、脱イオン水、重合中に反応物質質量を乳化させることのできる水溶性界面活性剤、そしてパラフィン防汚剤が反応装置に投入される。混合物は撹拌され、脱酸素化される。
【0016】
次に、既定量の連鎖移動剤を反応装置内に導入し、反応装置の温度を所望のレベルまで上昇させ、フッ化ビニリデン(VDF)又はその他のフルオロモノマーと組合せたVDFが反応装置内に補給される。1つ又は複数のモノマーの初期投入物がひとたび導入され、反応装置内の圧力が所望のレベルに達した時点で、開始剤エマルジョン/溶液を導入して重合反応を開始させる。反応温度は、使用される開始剤の特性に応じて変動させることができ、当業者であればそれを行なう方法を知っている。典型的には、温度は約60℃〜120℃、好ましくは約70℃〜110℃である。
【0017】
同様にして、重合圧力も変動してよいが、典型的にはそれは40〜50気圧の範囲内である。反応の開始後、1つ又は複数のモノマーは、付加的な開始剤と共に連続的に補給され、所望の圧力を維持する。次に全ての補給を停止する。残留気体(未反応のモノマーを含むもの)が放出され、反応装置からラテックスが回収される。その後、ポリマーは、酸凝固、凍結融解又は高せん断等の標準的方法によりラテックスから単離できる。
【0018】
選択された反応温度で活性ラジカルを生成することのできるあらゆる化合物を、本発明における開始剤として使用することができる。選択される開始剤は、例えば過硫酸ナトリウム、カリウム又はアンモニウムなどを含む無機過酸化物塩;例えばジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を含むジアルキルペルオキシド類;ジアルキルペルオキシジカルボネート類、例えばジイソプロピル−ペルオキシジカルボネート(IPP)、ジ−N−プロピル−ペルオキシジカルボネート(NPP)、ジ−sec−ブチル−ペルオキシジカルボネート(DBP);t−アルキルペルオキシベンゾエート類;例えばt−ブチル及びt−アミルペルピバレートを含むt−アルキルペルオキシピバレート類;アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジクミルペルオキシドから選択され得る。酸化還元系には、任意にはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタビスルファイト又はアスコルビン酸等の活性剤と組合せた、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クミンヒドロペルオキシド又は過硫酸塩等の酸化剤、及び還元金属塩(鉄(II)塩が詳細例である)等の還元剤の組合せが含まれる。
【0019】
界面活性剤及び乳化剤は典型的に、合計モノマーに対し約0.02〜約1.0重量%の量で使用される。好ましくは、これらは合計モノマーに対して約0.05〜約0.5重量%の量で使用される。界面活性剤は、取扱いの便宜上水溶液中等の溶液中で使用されてよい。本発明において有用な界面活性剤には、式X(CF2nCOOMの酸の塩等のフッ素系界面活性剤〔なお式中、Xは水素又はフッ素、Mはアルカリ金属、アンモニウム、置換アンモニウム(例えば炭素原子1〜4個のアルカリアミン)、又は第四アンモニウムイオンであり、nは6〜20の整数である〕;式X(CF2nCH2OSO3Mのポリフルオロアルカノールの硫酸エステル(なお式中、X及びMは上述の通りである);及び例えばペルフルオロオクチルスルホン酸カリウム中の式CF3(CF2n(CX2mSO3Mの酸の塩(なお式中X及びMは上述の通りであり、nは3〜7の整数、mは0〜2の整数である)が含まれる。フッ化ビニリデン重合における中性ペルフルオロポリエーテルと組合せたペルフルオロポリエーテルカルボキシレートのマイクロエマルジョンの使用は、欧州特許第0816397A1号明細書及び欧州特許第722882号明細書中に見出すことができる。本発明に関して有用な界面活性剤は同様に、例えば3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸類、ポリビニルスルホン酸及びそれらの塩、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール及びそれらのブロックコポリマー、アルキルホスホン酸塩又はシロキサン系界面活性剤を含む非フッ素化界面活性剤に由来するものでもよい。
【0020】
製品の分子量を調節するために、重合に対して連鎖移動剤が添加される。連鎖移動剤の量及び添加様式は、利用される特定の連鎖移動剤の活性及びポリマー製品の所望の分子量によって左右される。重合反応に添加される連鎖移動剤の量は、好ましくは、反応混合物に添加されるモノマーの合計重量に基づいて約0.05〜約5重量%、より好ましくは約0.1〜約2重量%である。本発明において有用な連鎖移動剤の例としては、含酸素化合物例えばアルコール、カーボネート、ケトン、エステル、連鎖移動剤として作用するエーテルが挙げられる。エタン、プロパン及びハロカーボンそしてハイドロハロカーボン例えばクロロカーボン、ハイドロクロロカーボン、クロロフルオロカーボン及びハイドロクロロフルオロカーボンも連鎖移動剤として使用可能である。
【0021】
パラフィン防汚剤が任意であり、あらゆる長鎖、飽和炭化水素ろう又は油を使用可能である。パラフィンの反応装置装入量は、使用される合計モノマー重量に対し0.01〜0.3重量%である。
【0022】
一般に、エマルジョンラテックスは、約10〜約50重量%のコポリマー固体を含む。ラテックス中のコポリマーは、約30nm〜約500nmのサイズ範囲を有する小粒子の形をしている。
【0023】
本発明のコポリマーは、50,000〜1,000,000個の重量平均分子量を有する。
【0024】
本発明のVDF/TetFPコポリマーは、数多くの用途に応用できる独特の特性を有する。本発明のコポリマーは優れた光学透明度、電気特性、耐食性及び耐候性を有し、典型的な溶融加工設備での容易な取扱いが可能である。
【0025】
これらの特性のためVDF/TetFPコポリマーは、数多くの用途のための優れた候補となっている。当業者であれば、本出願中で提供されている特性及び実施例の一覧に基づき、数多くの用途を想像することができると思われる。有用な一部の用途としては、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない:
1. 高透明度フィルム。これらのフィルムは、レンズ及びその他の光学機器全体に設置されて優れた化学的防護及び汚れ脱落性を提供する。
2. 高温で可撓性のある透明チューブ。
3. 同様に、高い融点、光学透明度及び耐薬品性のため、これらのコポリマーは、透明で透視性のあるの工業用窓、ガラス(glasses)、パイプ及び液面表示装置(level indicator)にとって理想的なものとなっている。
4. ソーラーパネル、圧電用途及びコンデンサ用等の特殊フィルム。
5.燃料電池膜。それらは、VDF−HFPコポリマーに類似の機械的性質を有しながらも、電極アセンブリにおける耐クリープ性に有用な、更に高い融点を保持している。
6. 透明で強靱なコーティング。
7. コポリマーの高い溶融強度に起因する、強靭なフィルム及び大型ブロー成形体(blown objects)。
【実施例】
【0026】
比較例1
この例は、フッ化ビニリデン−3,3,3−トリフルオロプロペンコポリマーの調製方法を教示する。
【0027】
1リットル入りのステンレス鋼製反応装置内に、700gの脱イオン水、1gのペルフルオロオクタン酸アンモニウムを含む界面活性剤水溶液100g及び0.5gの顆粒状パラフィンろうを投入した。反応装置をヘリウムを用いて40psiまで加圧し減圧するサイクルを4回行なった後、90rpmで撹拌を始め、反応装置を100℃まで加熱した。反応装置の温度が所望の設定点に達した後、約106gのフッ化ビニリデン及び14.8gの3,3,3−トリフルオロプロペンを反応装置内に投入することによって、反応装置の圧力を650psiまで上昇させた。反応装置の圧力が安定化した後、反応装置に177.9gの過硫酸カリウム/酢酸ナトリウム溶液を添加して重合を開始した。開始剤溶液は、脱イオン水中の2.0重量%の過硫酸カリウムと2.0重量%の酢酸ナトリウムであった。反応量中に所望の量のモノマーが導入されるまで、フッ化ビニリデン−3,3,3−トリフルオロプロペン共重合を続行した。66分後にモノマーの補給を停止し、この時点で合計397gのフッ化ビニリデン及び56.8gの3,3,3−トリフルオロプロペンが反応装置内に投入された。開始剤の補給を、更に20分間続行した。開始剤の合計使用量は206.4gであった。この時点で、開始剤の補給を停止し、反応装置を更に10分間90rpm及び100℃での撹拌下に保った。その後反応装置を50℃まで冷却し、余剰のモノマーを放出した。更に10分間、反応装置をこの温度で保持した。温度を25℃まで降下させ、ラテックスを回収した。重量測定法で測定したラテックスの固体含有量は31.6重量%であった。オーブン乾燥により、ポリマーを単離した。フッ素NMRにより3,3,3−トリフルオロプロペン含有量を11.3重量%と測定した。DSCにより測定されたコポリマーの結晶化度は31.5%であった。
【0028】
実施例2
2リットル入りのステンレス鋼製反応装置内に、700gの脱イオン水及び4gのペルフルオロオクタン酸アンモニウムを投入した。反応装置をヘリウムを用いて40psiまで加圧し減圧するサイクルを5回行なった後、83rpmで撹拌を始め、反応装置を110℃まで加熱した。反応装置の温度が所望の設定点に達した後、約123gの(フッ化ビニリデン)VDF及び25gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを反応装置内に投入することによって、反応装置の圧力を650psiまで上昇させた。反応装置の圧力が安定化した後、反応装置に15.6gの過硫酸カリウム/酢酸ナトリウム溶液を添加して重合を開始した。開始剤溶液は、脱イオン水中の2.0重量%の過硫酸カリウムと2.0重量%の酢酸ナトリウムであった。反応質量中に所望の量のモノマーが導入されるまで、VDF−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合を続行した。15分後にモノマーの補給を停止し、この時点で合計241gのVDF及び43gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが反応装置内に投入された。開始剤の補給を、更に15分間続行した。開始剤の合計使用量は38.6gであった。この時点で、開始剤の補給を停止し、反応装置を更に15分間83rpm及び110℃での撹拌下に保った。その後反応装置を35℃まで冷却し、余剰のモノマーを放出して、ラテックスを回収した。重量測定法で測定したラテックスの固体含有量は27.5重量%であった。オーブン乾燥により、ポリマーを単離した。フッ素NMRにより2,3,3,3−テトラフルオロプロペン含有量を11.5重量%と測定した。DSCにより測定されたコポリマーの結晶化度は33.9%であった。
【0029】
実施例3
2リットル入りのステンレス鋼製反応装置内に、700gの脱イオン水及び4gのペルフルオロオクタン酸アンモニウムを投入した。反応装置をヘリウムを用いて40psiまで加圧し減圧するサイクルを5回行なった後、83rpmで撹拌を始め、反応装置を110℃まで加熱した。反応装置の温度が所望の設定点に達した後、約107gのVDF及び36gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを反応装置内に投入することによって、反応装置の圧力を650psiまで上昇させた。反応装置の圧力が安定化した後、反応装置に8.5gの過硫酸カリウム/酢酸ナトリウム溶液を添加して重合を開始した。開始剤溶液は、脱イオン水中の2.0重量%の過硫酸カリウムと2.0重量%の酢酸ナトリウムであった。反応質量中に所望の量のモノマーが導入されるまで、VDF−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合を続行した。40分後にモノマーの補給を停止し、この時点で合計239gのVDF及び80gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが反応装置内に投入された。開始剤の補給を、更に15分間続行した。開始剤溶液の合計使用量は30.5gであった。この時点で、開始剤の補給を停止し、反応装置を更に15分間83rpm及び110℃での撹拌下に保った。その後反応装置を35℃まで冷却し、余剰のモノマーを放出し、ラテックスを回収した。重量測定法で測定したラテックスの固体含有量は27.5重量%であった。オーブン乾燥により、ポリマーを単離した。フッ素NMRにより2,3,3,3−テトラフルオロプロペン含有量を24.4重量%と測定した。DSCにより測定されたコポリマーの結晶化度は15.9%であった。
【0030】
実施例4
2リットル入りのステンレス鋼製反応装置内に、700gの脱イオン水及び4gのペルフルオロオクタン酸アンモニウムを投入した。反応装置をヘリウムを用いて40psiまで加圧し減圧するサイクルを5回行なった後、83rpmで撹拌を始め、反応装置を83℃まで加熱した。反応装置の温度が所望の設定点に達した後、約140gのVDF及び28gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを反応装置内に投入することによって、反応装置の圧力を650psiまで上昇させた。反応装置の圧力が安定化した後、反応装置に10gの過硫酸カリウム/酢酸ナトリウム溶液を添加して重合を開始した。開始剤溶液は、脱イオン水中の0.5重量%の過硫酸カリウムと0.5重量%の酢酸ナトリウムであった。反応質量中に所望の量のモノマーが導入されるまで、VDF−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合を続行した。164分後にモノマーの補給を停止し、この時点で合計260gのVDF及び47gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが反応装置内に投入された。開始剤の補給を、更に15分間続行した。開始剤溶液の合計使用量は28gであった。この時点で、開始剤の補給を停止し、反応装置を更に15分間83rpm及び83℃での撹拌下に保った。その後反応装置を35℃まで冷却し、余剰のモノマーを放出し、ラテックスを回収した。重量測定法で測定したラテックスの固体含有量は11.1重量%であった。
【0031】
実施例5
2リットル入りのステンレス鋼製反応装置内に、700gの脱イオン水及び4gのペルフルオロオクタン酸アンモニウムを投入した。反応装置をヘリウムを用いて40psiまで加圧し減圧するサイクルを5回行なった後、83rpmで撹拌を始め、反応装置を83℃まで加熱した。反応装置の温度が所望の設定点に達した後、約151gのVDF及び23gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを反応装置内に投入することによって、反応装置の圧力を650psiまで上昇させた。反応装置の圧力が安定化した後、反応装置に46.3gのジ−N−プロピルペルオキシジカーボネート(NPP)開始剤エマルジョンを添加して重合を開始した。開始剤エマルジョンは、NPPが3.2重量%そしてペルフルオロオクタン酸アンモニウムが0.06重量%であった。反応質量中に所望の量のモノマーが導入されるまで、VDF−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合を続行した。120分後にモノマーの補給を停止し、この時点で合計275gのVDF及び43gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが反応装置内に投入された。開始剤の補給を、更に30分間続行した。合計開始剤エマルジョン使用量は128gであった。この時点で、開始剤の補給を停止し、反応装置を更に10分間83rpm及び83℃での撹拌下に保った。その後反応装置を35℃まで冷却し、余剰のモノマーを放出し、ラテックスを回収した。重量測定法で測定したラテックスの固体含有量は19.6重量%であった。
【0032】
実施例6
2リットル入りのステンレス鋼製反応装置内に、1000gの脱イオン水及び5gのペルフルオロオクタン酸アンモニウムを投入した。反応装置をヘリウムを用いて40psiまで加圧し減圧するサイクルを5回行なった後、94rpmで撹拌を始め、反応装置を110℃まで加熱した。反応装置の温度が所望の設定点に達した後、約80gのVDFを投入することによって、反応装置の圧力を650psiまで上昇させた。反応装置の圧力が安定化した後、反応装置に8.7gの過硫酸カリウム/酢酸ナトリウム溶液を添加して重合を開始した。開始剤溶液は、脱イオン水中の0.5重量%の過硫酸カリウムと0.5重量%の酢酸ナトリウムであった。開始直後にVDFと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含むモノマー混合物を反応装置内に補給した。反応質量中に所望の量のモノマーが導入されるまで、VDF−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合を続行した。120分後にモノマーの補給を停止し、この時点で合計273gのVDF及び22gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが反応装置内に投入された。開始剤の補給を、更に20分間続行した。開始剤の合計使用量は22.2gであった。この時点で、開始剤の補給を停止し、反応装置を更に10分間94rpm及び110℃での撹拌下に保った。その後反応装置を35℃まで冷却し、余剰のモノマーを放出し、ラテックスを回収した。重量測定法で測定したラテックスの固体含有量は17.6重量%であった。
【0033】
実施例7
2リットル入りのステンレス鋼製反応装置内に、1000gの脱イオン水及び5gのペルフルオロオクタン酸アンモニウムそして3.5gの純粋酢酸エチルを投入した。反応装置をヘリウムを用いて40psiまで加圧し減圧するサイクルを5回行なった後、96rpmで撹拌を始め、反応装置を110℃まで加熱した。反応装置の温度が所望の設定点に達した後、約106gのVDFを投入することによって、反応装置の圧力を650psiまで上昇させた。反応装置の圧力が安定化した後、反応装置に6.7gの過硫酸カリウム/酢酸ナトリウム溶液を添加して重合を開始した。開始剤溶液は、脱イオン水中の0.5重量%の過硫酸カリウムと0.5重量%の酢酸ナトリウムであった。開始直後にVDFと2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含むモノマー混合物を反応装置内に補給した。反応質量中に所望の量のモノマーが導入されるまで、VDF−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合を続行した。210分後にモノマーの補給を停止し、この時点で合計305gのVDF及び25.1gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが反応装置内に投入された。開始剤の補給を、更に20分間続行した。開始剤の合計使用量は44.6gであった。この時点で、開始剤の補給を停止し、反応装置を更に15分間94rpm及び110℃での撹拌下に保った。その後反応装置を35℃まで冷却し、余剰のモノマーを放出し、ラテックスを回収した。重量測定法で測定したラテックスの固体含有量は17.0重量%であった。
【0034】
実施例8(比較例)
ポリ(1−ビニルフェニル−2,4−ジスルホン酸−コ−ビニルベンジルアルコール)多価電解質及びKYNAR2801(商品名、10w%のHFPを含むHFPとVDFのコポリマー)の配合物から膜を作製した。多価電解質は米国特許出願第61/179128号明細書に記載されている通りに製造した。多価電解質は、スルホン酸化したポリスチレン標準から構築された汎用較正曲線を用いて35℃で0.10MのNaNO3を伴う水の移動相を使用してGPCにより決定されるように、200kg/moleの重量平均分子量と2.7の多分散性とを有していた。多価電解質は、プロトンNMRにより決定されるように、78mole%の1−ビニルフェニル−2,4−ジスルホン酸及び22mole%のビニルベンジルアルコールを含んでいた。
【0035】
7.12重量%の多価電解質水溶液160gを54.8重量%の水酸化テトラブチルアンモニウム(Sachem Inc製)27.74gと組合せた。溶液をおよそ30分間撹拌し、その後102.26gの1−メチル−2−ピロリジノン(バイオ合成グレード溶媒、EMD Chemicals製)を添加した。ロータリーエバポレータを用いて溶液中の水を除去して、1−メチル−2−ピロリドン中の多価電解質溶液を生成した(溶液は20重量%の多価電解質を含んでいた)。
【0036】
多価電解質/1−メチル−2−ピロリジノン溶液10.95gを15重量%のKYNAR2801/1−メチル−2−ピロリジノン溶液27.16gと組合せた。0.6631gのTRIXENE BL7982(商品名)及び0.0434gのFASCAT4202(商品名)もこの溶液に添加した。TRIXENE BL7982は、Baxenden Chemicals Co.Ltd製の3,5−ジメチルピラゾールでブロック化されたイソシアネートである。FASCAT4202は、Arkema Inc製のオルガノチン触媒である。およそ60分間溶液をオーバーヘッド撹拌器を用いて混合して、均質な溶液を生成した。
【0037】
Mathis LTE Labdryer(商品名)を用いて、その溶液をキャストして膜を作製した。おおよそ15×12インチの寸法をもつ厚み2ミルのアルミホイルをキャスト用基材として使用した。ホイル上に約15gのポリマー溶液を広げ、ドクターブレードを用いて約300ミクロンの湿潤フィルム厚まで薄くした。結果として得た湿潤フィルムを次に6分間210℃に加熱した。オーブンブロワを2000RPMに設定した。その後乾燥膜をオーブンから取出し、室温まで冷却した。乾燥した膜の厚みは25〜30ミクロンであった。
【0038】
温かい脱イオン水に浸漬することによってアルミホイル基板から膜を剥離した。その後、膜を1Mの塩酸水溶液3000g中でプロトン化した。18MΩの脱イオン水及びEMD Chemicals製の濃塩酸(OminiTraceグレード)を用いて酸性溶液を調製した。酸浴は、周囲温度から86℃までおよそ75分間にわたって加熱した。その後、およそ45分間、浴をこの温度範囲内に保った。その後、18MΩの脱イオン水中で膜を洗浄し、1Mの硫酸3000gの中に浸漬した。18MΩの脱イオン水及びEMD Chemicals製の濃硫酸(OminiTraceグレード)を用いて酸性溶液を調製した。酸浴は、周囲温度から82℃までおよそ75分間にわたって加熱した。その後、およそ45分間、浴をこの温度範囲内に保った。硫酸浴から膜を取り出し、18MΩの脱イオン水で洗浄して残留酸を除去した。その後室温で酸性型膜を乾燥させた。膜はDSCにより128℃のピーク融点温度を有していた。
【0039】
実施例9
実施例8に類似の膜を、ポリ(1−ビニルフェニル−2,4−ジスルホン酸−コ−ビニルベンジルアルコール)多価電解質及び約15重量%のテトラフルオロプロペンを含むVDFとTFPのコポリマーの配合物から作ることができる。多価電解質は実施例11で記述されたものと同じ材料である。実施例8中で調製された多価電解質/1−メチル−2−ピロリジノン溶液をこの実施例において使用することもできる。
【0040】
多価電解質/1−メチル−2−ピロリジノン溶液10.95gを15重量%のKYNAR2801/1−メチル−2−ピロリジノン溶液27.18gと組合せる。溶液には0.6897gのTRIXENE BL7982及び0.0461gのFASCAT4202も添加する。60分間オーバーヘッド撹拌器を用いて溶液を混合し、均質な溶液を生成する。
【0041】
実施例8に記述されている方法を用いて、溶液をキャストして膜を得る。乾燥した膜の厚みは約25〜30ミクロンである。
【0042】
温かい脱イオン水中に浸漬することによってアルミホイル基板から膜を剥離し、実施例8に記述されているものと同じ手順を用いて酸性化させる。
本発明は一側面において以下の発明を包含する。
(発明1)
0.5〜60重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(TetFP)モノマー単位と40〜99.5重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を含むコポリマー組成物。
(発明2)
2〜40重量%のTetFPモノマー単位を含む、発明1に記載のコポリマー。
(発明3)
ヘイズレベルが30%未満であり、合計白色光透過率が85%を超える、発明1又は2に記載のコポリマー。
(発明4)
前記コポリマーが、分岐状であって、少なくとも5%の分岐を有する、発明1〜3いずれか1つに記載のコポリマー。
(発明5)
レンズ及びその他の光学装置のための被覆物としてのフィルム;高温で可撓性のある透明チューブ;透明で透視性のある産業用窓、ガラス、パイプ、及び液面表示装置;ソーラーパネル用途、圧電用途、及びコンデンサー用途のための特殊フィルム;燃料電池膜、透明で強靱なコーティング、ならびに大型ブロー成形物体;からなる群より選択される構造を有する、発明1〜4いずれか1つに記載のコポリマー。
【手続補正書】
【提出日】2017年1月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均質なコポリマーを形成するための方法であって、
前記コポリマーは2.036重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(TetFP)モノマー単位と6498重量%のフッ化ビニリデン(VDF)モノマー単位とを含み、更に任意で最大10重量%のTetFP及びVDF以外のモノマー単位とを含み、
前記コポリマーの熱プレス板は、光学的に透明であり、ASTM D1003−07によって測定されたヘイズレベルが30%未満であり、
前記方法は、VDFモノマーからなるモノマー組成物を反応装置内に投入し、その後、VDF及びTetFPモノマーを連続的に補給して不均質なコポリマーを形成するステップを含む該方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記コポリマーは、TetFP及びVDFモノマーからなる該方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記コポリマーは、乳化重合方法で形成される該方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の方法であって、重合反応の温度が60〜120℃である該方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の方法であって、重合圧力が40〜50気圧の範囲内である該方法。