【解決手段】中空管を所定の深度まで貫入する貫入工程と、該貫入工程後、中空管を適宜の長さ引き抜き、該引き抜き跡に中空管内の砂杭材料を排出する引き抜きと、中空管の打ち戻しを順次、地表に至るまで繰り返す造成工程とを行い軟弱地盤中に複数の締固め砂杭を打設する工法において、1本の砂杭の打設において、造成工程に要する時間が、貫入工程に要する時間の3倍以上となるように、貫入工程と造成工程を行う。
造成工程に要する時間(T2)が、貫入工程に要する時間(T1)の4倍以上となるように、貫入工程と造成工程を行うことを特徴とする請求項1記載の軟弱地盤の改良方法。
更に、引き抜きと打ち戻しの1サイクル中、打ち戻し時間(T4)が、引き抜き時間(T3)より大となるように造成工程を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の軟弱地盤の改良方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、特開2003−147756号公報などSCP工法に関する改良技術が種々提案されているものの、従来設計の施工で得られるN値はせいぜい30〜40程度であり、N値が50を超える技術は未だ知られていない。
【0006】
従って、本発明の目的は、効率的な改良効果が得られる軟弱地盤の改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況下、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、貫入工程より造成工程に時間をかけるなど造成工程で緩やかな締め固めを行えば、周辺地盤では締固めに寄与する応力が伝わり易く、密度上昇となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、中空管を所定の深度まで貫入する貫入工程と、
該貫入工程後、中空管を適宜の長さ引き抜き、該引き抜き跡に中空管内の砂杭材料を排出する引き抜きと、中空管の打ち戻しを順次、地表に至るまで繰り返す造成工程とを行い軟弱地盤中に複数の締固め砂杭を打設する工法において、
1本の砂杭の打設において、造成工程に要する時間(T2)が、貫入工程に要する時間(T1)の3倍以上となるように、貫入工程と造成工程を行うことを特徴とする軟弱地盤の改良方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、造成工程に要する時間(T2)が、貫入工程に要する時間(T1)の4倍以上となるように、貫入工程と造成工程を行うことを特徴とする前記軟弱地盤の改良方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、更に、引き抜きと打ち戻しの1サイクル中、打ち戻し時間(T4)が、引き抜き時間(T3)より大となるように造成工程を行うことを特徴とする前記軟弱地盤の改良方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、打ち戻し長を、引き抜き長の70%〜90%として造成工程を行うことを特徴とする前記軟弱地盤の改良方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定点(以下、「周辺地盤」とも言う。)のN値は50を超える高い改良効果が得られた。従来のSCP工法では、改良率が20%と高いものでも、N値はせいぜい30〜40程度であり、顕著な改良効果であった。これは、貫入工程より造成工程に時間をかけるなどの方法を採ったため、貫入工程に比べて造成工程の最大過剰間隙水圧が小となり、締固めに寄与する応力が伝わり易く、密度上昇につながったものである。このため、従来より広いパイル間隔で施工しても従来と同等の改良効果が得られる。また、パイル間隔を大きく採れるため、周辺に与える地盤変位を抑制することができ、従来施工が困難であった場所でも施工が可能となる。また、従来と同等のパイル間隔で施工した場合、より高い改良効果が得られるため、改良の要求が厳しい条件においても対応が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態における軟弱地盤の改良方法について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、軟弱地盤10に対して、正四角形a、c、i、gで形成される改良予定区域Xに、等ピッチpで砂杭1を9本打設しようとするものである。
【0015】
本発明の軟弱地盤の改良方法において、先ず、中空管11を所定の深度まで貫入する貫入工程(I)を行う(
図2(a)〜(c))。具体的には、中空管11を所定の位置(例えば、
図1中の符号aの位置)に据え、一定量の砂杭材料が投入される。次いで、中空管を回転させながら地中に所定の深度貫入する。従って、貫入工程の開始時間は、
図2(a)に示すように、中空管11が地面に押し込まれたスタート時であり、貫入工程の終了時間は、
図2(c)に示すように、中空管11が所定の深さD(最下位置)に到達した時間である。砂杭材料としては、砂、砕石などが挙げられる。
【0016】
貫入工程後、中空管11を適宜の長さ(
図2中、符号l
1)引き抜き、該引き抜き跡に中空管内の砂杭材料を排出する引き抜きと、中空管11の打ち戻し(
図2中、打ち戻し長さは符号l
2)を順次、地表に至るまで繰り返し、締固め砂杭1を造成する。引き抜き工程は、
図2中、(c)〜(d)の工程(符号II
1)であり、
図2の符号II
1は、最初の引き抜きである。打ち戻し工程は、
図2中、(d)〜(e)の工程(符号II
2)であり、
図2の符号II
2は、最初の打ち戻しである。
図2中、符号II
3は、引き抜きと打ち戻しを1サイクルとして、2サイクル以降の工程である。すなわち、造成工程の開始は、貫入工程後、最初の引く抜きの引き始めであり、造成工程の終了は、造成工程の最後の打ち戻しが終わり中空管が引き抜かれて地表の面と同一となる時点である。
【0017】
本発明において、1本の砂杭の打設において、造成工程に要する時間(T2)が、貫入工程に要する時間(T1)の3倍以上、好ましくは(T1)の4倍以上となるように、貫入工程と造成工程を行う(以下、「時間差造成方法1」とも言う。)。(T2)>(T1)×3とする方法としては、引き抜き時間を長くする方法、打ち戻し時間を長くする方法、造成工程中、待ち時間を長く採る方法及引き抜きと打ち戻しを1サイクルとするサイクル数を増加させる方法等が挙げられる。また、1本の砂杭の打設において、造成工程に要する時間(T2)が、貫入工程に要する時間(T1)の3倍より大とし、更に、引き抜きと打ち戻しの1サイクル中、打ち戻し時間(T4)が、引き抜き時間(T3)より大となるように行う方法(以下、「時間差造成方法2」とも言う。)、打ち戻し長を、引き抜き長の70%〜90%として造成工程を行う方法(以下、「サイクル数増加方法1」とも言う。)及び引き抜きと打ち戻しを1サイクルとするサイクル数を増加させて、造成工程を行う方法(以下、「サイクル数増加方法2」とも言う。)であってもよい。以下に詳細に説明する。
【0018】
時間差造成方法1は、1本の砂杭の打設において、造成工程に要する時間(T2)が、貫入工程に要する時間(T1)の3倍以上、好ましくは4×(T1)時間以上、9×(T1)時間以下となるように行うことが好ましい。余り長い時間を採っても、改良効果の割に施工時間が長くなり、却って施工コストを上昇させる。造成工程に要する時間(T2)には、次のサイクルに移る待ち時間や引き抜きから打ち戻しに移る待ち時間も含まれる。待ち時間であっても、周辺地盤への締固めに寄与する応力は伝わるからである。
【0019】
時間差造成方法2は、時間差造成方法1に加えて、更に、引き抜きと打ち戻しの1サイクル中、打ち戻し時間(T4)が、引き抜き時間(T3)より大となるように行う方法である。1サイクル中、打ち戻し時間(T4)は、好ましくは2×(T3)時間以上、特に3×(T3)時間以上、8×(T1)時間以下となるように行うことが好ましい。余り長い時間を採っても、改良効果の割に施工時間が長くなり、却って施工コストを上昇させる。時間差造成方法2は、造成工程に要する時間を長くする点では時間差造成方法1と同様であり、打ち戻し時間(T4)が引き抜き時間(T3)より大となる条件は、全サイクルに実施する必要はなく、一部のサイクルで満たせばよい。
【0020】
サイクル数増加方法1は、打ち戻し長を、引き抜き長の70%〜90%として造成工程を行う方法である。具体的には、引き抜き長が50cmの場合、打ち戻し長を35cm〜45cmとして造成する。打ち戻し長と引き抜き長を上記条件とし、引き抜き速度や打ち戻し速度など他の条件を従来通りとすれば、当然に造成工程におけるサイクル数は増加する。従来のSCP工法は、打ち戻し長を、引き抜き長の60%として造成するのが一般的である。
【0021】
サイクル数増加方法2は、引き抜きと打ち戻しを1サイクルとするサイクル数を増加させて、造成工程を行う方法である。具体的なサイクル数は、砂杭長や打ち戻し長により異なるため、一概には言えないが、10mの砂杭長で、70サイクル以上、特に100サイクル以上、200サイクル以下が好ましく、16mの砂杭長で、128サイクル以上、特に160サイクル以上、320サイクル以下が好ましい。従来のSCP工法は、16mの砂杭長で、80サイクルで造成するのが一般的である。
【0022】
貫入工程と造成工程を上記の条件で施工する方法によれば、造成工程にかかる時間が長くなるので、貫入工程に比べて造成工程の最大過剰間隙水圧が小となる。すなわち、造成工程では、締固めに寄与する応力が伝わり易く、密度上昇につながる。
【0023】
本発明の軟弱地盤の改良方法において、改良効果を確認する測定点は、打設しようとする砂杭の周辺地盤であり、例えば、測定対象となる砂杭から10m以内である。測定点4は、例えば、打設しようとする砂杭が2本の場合、その中間点又は砂杭2本からの当距離で改良が期待される位置であり、打設しようとする砂杭が3本又は4本の場合、その砂杭を結んで区画される領域の中心及び中心近傍である。本例における測定点4は、
図1に示すように、打設位置a、b、d及びeに砂杭を打設する場合、四角形の小区画31の中心及び中心近傍である。また、打設位置b、e、c及びfに砂杭を打設する場合、四角形の小区画32の中心及び中心近傍である。また、打設位置d、e、g及びhに砂杭を打設する場合、四角形の小区画33の中心及び中心近傍である。また、打設位置e、f、h及びiに砂杭を打設する場合、四角形の小区画34の中心及び中心近傍である。測定点は、概ね適宜定めるような地点で良い理由は、1本の砂杭打設における貫入工程時の所要時間と造成工程時の所要時間だからである。
【0024】
測定点は、隣接する造成予定の砂杭又は造成砂杭で区画される領域の中心に限定されず、例えば
図1中、位置g又は位置hで砂杭を打設する際、符号4aで示す位置であってもよい。また、測定点は、
図3に示すように、隣接する3本の造成予定の砂杭又は造成砂杭で区画される領域の中心であってもよい。すなわち、符号a、b及びeの位置で砂杭を打設する際の符号4bの地点であり、符号b、e及びfの位置で砂杭を打設する際の符号4cの地点であり、符号f、g及びjの位置で砂杭を打設する際の符号4dの地点である。また、測定点は、隣接する2本の造成予定の砂杭間又は造成予定の砂杭と造成砂杭間であってもよい。
【0025】
本発明において使用される締固め砂杭造成装置としては、公知のものが使用できる。すなわち、中空管の外周面には螺旋羽根があってもよく、中空管の先端には掘削ビットが設けられていてもよい。また、中空管昇降装置としては、特に制限されず、例えば、ラックとピニオンによるもの、チェーンとスプロケットによるもの、ワイヤロープの牽引によるものなど貫入時と引き抜き時にリーダーからの反力が得られるもの、あるいは、バイブロハンマーによるものなどが挙げられる。
【0026】
本発明において、周辺地盤、すなわち、測定点のN値は、従来の1.1倍以上、特に1.2倍以上、更に1.3倍以上の値を示す。また、深さ方向の特定の位置では、N値が50以上となってもよい。従来のSCP工法では、改良率が20%と高いものでも、N値はせいぜい30程度であり、N値50は、顕著に高いものである。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0028】
(実施例1)
外周面には螺旋羽根が付設されておらず、先端には掘削ビットが付設された中空管を使用した。中空管昇降装置は、ラックとピニオンによるものであった。改良地盤は、
図1のようなA地盤であった。
図1中、砂杭間隔は2m、砂杭径は700mmで改良率は10%であった。また、砂杭長は13mであった。貫入工程は、回転圧入であり、従来の標準条件である1本当たり平均貫入時間10分とした。また、造成工程は、貫入工程よりも長くとり、1本当たり平均造成時間55分(平均貫入時間の5.5倍)とした。また、
図1中の符号4の位置でN値を測定した。その結果を表1及び
図4の符号x3に示す。表1中、砂杭番号(1)〜(7)は、
図5中の符号a〜gにそれぞれ対応する。表1では、「造成工程所要時間/貫入工程所要時間」で表した。なお、
図4中、符号X1は施工前の地盤のN値であり、符号X2は改良後の予測された平均N値である。なお、予測されたN値とは、周知の設計値であり、圧入された補給砂の体積と同量だけ地盤が締まると仮定を置き、これと相対密度とN値の経験的な関係を用いて、圧入後のN値を決定するものであり、一般的には、SCP工法の標準的な施工時のN値のデータに基づいた予測式から算出されるものである。
図4より、改良後の平均N値は28.2であった。この改良後の平均N値28.2は、
図4の符号X2で示される予測平均N値23.8の1.18倍であった。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例2)
砂杭間隔2.0mに代えて1.4mとし、改良率10%に代えて20%とし、且つ下記の貫入時間及び造成時間とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、実施例2の平均貫入時間は10分、平均造成時間は73分(7.3倍)であった。その結果を表2及び
図5の符号Y3に示す。なお、
図5中、符号Y1は施工前の地盤のN値であり、符号Y2は改良後の予測された平均N値である。その結果、改良後の平均N値は42.7であり、予測平均N値29.6の1.44倍であった。
【0031】
【表2】
【0032】
(実施例3)
A地盤に代えてB地盤とし、砂杭間隔2.0mに代えて1.4mとし、改良率10%に代えて20%とし、砂杭長13mに代えて14mとし、測定対象砂杭(1)〜(7)に代えて砂杭(1)、(2)及び(4)とし、且つ平均造成時間55分に代えて45分とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、実施例3は、造成工程に要する平均時間を貫入工程に要する平均時間より4.5倍大としたものである。なお、本例では、砂杭の測定点4は、小四角形31の中心とした。測定点4のN値の結果を
図6中の符号Z3で示した。なお、Z1は施工前の地盤のN値であり、符号Z2は改良後の予測された平均N値である。
【0033】
実施例3の平均N値は40であり、
図6の符号Z2で示される予測平均N値35の1.14倍であった。また、実施例3は、
図6のZ3に示すように、深度8mにおけるN値は、50を超えるものであった。
【0034】
(比較例1)
造成工程における所要時間45分に代えて15分とした以外は、実施例3と同様の方向で行った。すなわち、比較例1の平均造成工程の所要時間は実施例3の1/3であり、貫入工程で要する時間の2.0倍である。その結果を表3に示した。測定点4のN値の結果は、
図6の符号Z21のものである。3本の打設砂杭の測定点のN値は34であり、予測平均N値の0.97倍と高くなかった。
【0035】
【表3】
【0036】
(比較例2)
平均造成工程の所要時間45分に代えて6分とした以外は、実施例3と同様の方法で行った。すなわち、比較例1の平均造成工程の所要時間は実施例3の0.13倍である。その結果、測定点4のN値の結果は、
図6の符号Z22のものである。
図6の結果から、比較例1の平均N値は32であり、予測平均N値の0.91倍と高くなかった。
【0037】
なお、実施例1〜3及び比較例1、2の結果を
図7にまとめて示した。
図7は、A地盤とB地盤について、横軸を「造成時間/貫入時間」とし、縦軸を「予測平均N値を1とした時の平均N値の比」としものである。この結果から、造成時間/貫入時間が3以上、好ましくは4以上で、顕著な改良効果が得られていることが判る。