【解決手段】本発明は、桁橋が配置されてなる高架橋における制振構造であって、前記桁橋が橋軸直交方向に所定間隔をあけて配置された複数の主桁と、前記複数の主桁の間に橋軸方向に間隔をあけて複数配置された横桁と、前記複数の主桁の上に載置された床版を備えてなり、前記床版の底部側にスペーサーと前記主桁ならびに前記横桁に接合された補強部材が配置されたことを特徴とする高架橋の制振構造に関する。
前記補強部材が前記主桁に支持された支持横桁と前記横桁ならびに前記支持横桁に支持された補強縦桁、補強支柱、補強横梁、補強斜材の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の高架橋の制振構造。
前記補強部材の上面と前記床版下面との間に充填されるスペーサーが、樹脂充填材、モルタル充填材、ジャッキ構造体の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高架橋の制振構造。
前記複数の主桁間の中央部に橋軸方向に延在してその上部で前記床版に接合し、その下部を前記補強部材で支持された補強縦桁が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の高架橋の制振構造。
前記補強部材に可動質量体と弾性部材と減衰機能を備えたダイナミックマス型の制振装置が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の高架橋の制振構造。
前記主桁がその長さ方向に間隔をあけて配置された複数の橋脚により支持されるとともに、前記主桁の両端部に位置する橋脚から隣接する他の橋脚の間に10〜20Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置が設置され、他の橋脚間に2.5〜5Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置が設置されたことを特徴とする請求項5に記載の高架橋の制振構造。
前記10〜20Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置が、前記主桁端部の橋脚とそれに隣接する橋脚との間の距離を概ね4等分する3箇所の位置にそれぞれ配置され、
前記2.5〜5Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置が、前記以外の隣接する橋脚間の中間位置に配置されたことを特徴とする請求項6に記載の高架橋の制振構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている衝撃ダンパは、ハウジングの内面に複数のレベル調整機構を設け、各レベル調整機構の高さを調整することで可動質量体とそれに対向する接触材料との隙間を適正間隔に調整し、良好な制振効果を得ることができる。
特許文献1に記載されている衝撃ダンパは、制振対象物の振動に合わせて可動質量体が上下方向に振動し、可動質量体に設けた接触材料がハウジングの一部に衝突して制振対象物の振動を打ち消す構成となっている。
【0006】
特許文献1に記載されている衝撃ダンパは、振動対象物の振動を別の可動質量体の衝撃力で打ち消す作用を奏するが、高架橋における床版の低周波音に対し一例の調査事例しかなく、低周波音を抑制できるか否かは未知数であり、また、現状において高架橋などの低周波音を効果的に抑制できる手段が提供されていない実情がある。
制振装置として、可変質量体を備え、制振対象物の振動に応じて可変質量体が反作用を生じさせる形式のダイナミックマス型の制振装置が知られているが、この制振装置は、高架橋の床版の低周波音に対する効果は未知数である。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高架橋の低周波音を抑制して高架橋付近の建物への低周波音の影響を抑制することができる高架橋の制振構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、桁橋が配置されてなる高架橋における制振構造であって、前記桁橋が橋軸直交方向に所定間隔をあけて配置された複数の主桁と、前記複数の主桁の間に橋軸方向に間隔をあけて複数配置された横桁と、前記複数の主桁の上に載置された床版を備えてなり、前記主桁ならびに横桁に接合させて設けた補強部材に床版底部を支持させ、前記補強部材と床版との間にスペーサーを設けたことを特徴とする。
主桁によって床版を支持する構造の高架橋において、床版の底部側に補強部材を設けて補強部材と床版との間にスペーサーを配置し、これらを主桁ならびに横桁で支持することで、施工時に生じる隙間を少なくして床版の支持構造を強化することで床版の剛性を高めることができ、車両走行時に生じる低周波音を抑制することができ、低周波音による近隣への悪影響を抑制できる。
【0009】
(2)本発明において、前記補強部材が前記主桁に支持された支持横桁と前記横桁ならびに前記支持横桁に支持された補強縦桁、補強支柱、補強横梁、補強斜材の少なくとも1つであることが好ましい。
補強部材は支持横桁、補強縦桁、補強支柱、補強横梁、補強斜材の少なくとも1つを用いることができ、これらのいずれかによって主桁による床版の支持構造を補強し、低周波音を抑制することができる。
補強部材を設けることで主桁で床版を支持することに加え補強部材によって更に床版を安定支持することができる。
(3)本発明において、前記補強部材の上面と前記床版下面との間に充填されるスペーサーが、樹脂充填材、モルタル充填材、ジャッキ構造体の少なくとも1つであることが好ましい。
(4)本発明において、前記複数の主桁間の中央部に橋軸方向に延在してその上部で前記床版に接合し、その下部を前記補強部材で支持された補強縦桁が設けられた構成を採用できる。
【0010】
(5)本発明において、前記補強部材に可動質量体と弾性部材と減衰機能を備えたダイナミックマス型の制振装置を設けることができる。
主桁と床版の間に補強部材とスペーサーを配置し、床版の支持構造を強化した上で補強部材に設けた制振装置に床版からの振動伝達を良好に行って制振装置を動作させることができ、制振装置の制振効果により車両走行時の低周波音の発生を抑制できる。
(6)本発明において、前記主桁が橋軸方向に間隔をあけて配置された複数の橋脚により支持されるとともに、前記主桁の両端部に位置する橋脚から隣接する他の橋脚の間に10〜20Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置が設置され、前記以外の橋脚間に2.5〜5Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置が設置された構成を採用することができる。
床版の継ぎ目の部分を車両が走行する際の衝撃により振動が発生するとともに、走行中の車両により床版から振動が発生する。10〜20Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置を両端部に位置する橋脚から隣接する他の橋脚の間に配置することで、主桁端部側の床版から発生する低周波音を抑制できるとともに、前記以外の橋脚間に2.5〜5Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置を設けることで、前記以外の床版から発生する低周波音を効率良く抑制できる。
【0011】
(7)本発明において、前記10〜20Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置が、前記主桁端部の橋脚とそれに隣接する橋脚との間の距離を概ね4等分する3箇所の位置にそれぞれ配置され、前記2.5〜5Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置が、前記以外の橋脚間の中間位置に配置された構成を採用できる。
主桁端部側の橋脚間の前記3箇所の位置に10〜20Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置を設け、橋脚間の中間位置に2.5〜5Hz帯域減衰用のダイナミックマス型の制振装置を設けることで低周波音を効率良く制振できる。
このため、高架橋の近隣に設置されている建築物に対し、低周波音の影響を抑制することができ、建築物の窓ガラスや障子のガタツキを無くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る高架橋の制振構造によれば、主桁に接合させて設けた補強部材に床版を支持させた構造としたので、床版上を走行する車両によって発生される低周波音を抑制することができる。
このため、車両走行時に生じる低周波音を抑制することができ、高架橋近隣への低周波音の悪影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用した高架橋の第1実施形態を示すもので、(A)は高架橋の側面略図、(B)は高架橋の平面略図。
【
図2】同高架橋の支持横桁とその他補強部材並びに制振装置とその周囲部分を示す構成図。
【
図3】同高架橋の横桁と補強部材並びにその周囲部分を示す構成図。
【
図4】同高架橋の主桁端部側の支持横桁とその他補強部材並びに制振装置とその周囲部分を示す構成図。
【
図5】同高架橋の主桁端部側以外の横桁間に設けた支持横桁及び制振装置の取付状態の一例を示す平面図。
【
図6】2.5〜5Hz用ダイナミックマス型制振装置の取付構造の一例を示す構成図。
【
図7】同高架橋の主桁端部側の橋脚間の支持横桁及び制振装置の取付状態の一例を示す平面図。
【
図8】10〜20Hz用ダイナミックマス型制振装置の取付構造の一例を示す構成図。
【
図9】同高架橋の補強部材と床版との間に注入されたスペーサーの一例を示す部分断面図。
【
図10】同高架橋に備えられるダイナミックマス型制振装置の一例に振動が付加された状態を示す構成図。
【
図11】同ダイナミックマス型制振装置の一例を示す構成図。
【
図12】本発明を適用した高架橋の第2実施形態において支持横桁とその周囲構造を示す構成図。
【
図13】本発明を適用した高架橋の第3実施形態において支持横桁とその周囲構造を示す構成図。
【
図14】本発明を適用した高架橋の第4実施形態において支持横桁とその周囲構造を示す構成図。
【
図15】本発明を適用した高架橋において床版と補強縦桁の間にスペーサーとして注入樹脂層を設けた構造の一例を示す構成図。
【
図16】本発明を適用した高架橋において床版と補強縦桁の間にスペーサーとしてモルタル充填層を設けた構造の一例を示す構成図。
【
図17】本発明を適用した高架橋において床版と補強縦桁の間にスペーサーとしてジャッキ装置を設けた構造の一例を示す構成図。
【
図18】本発明に係る高架橋に適用される制振装置の他の例を示す略図。
【
図19】本発明の効果を実証するために行った振動解析シミュレーションに用いた高架橋の構造を示す平面図。
【
図20】本発明の効果を実証するために行った振動解析シミュレーションに用いた高架橋において支持横桁と制振装置取付部分の構造を示す平面図。
【
図21】本発明の効果を実証するために行った振動解析シミュレーションに用いた高架橋において支持横桁と制振装置取付部分の構造を示す平面図。
【
図22】本発明の効果を実証するために行った振動解析シミュレーションに用いた高架橋において支持横桁とその他補強部材並びに制振装置取付部分の一例を示す構成図。
【
図23】本発明の効果を実証するために行った振動解析シミュレーションに用いた高架橋において支持横桁とその他補強部材並びに制振装置取付部分の一例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る高架橋の制振構造の一実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。また、以下の各図に示す構造は、本発明の特徴をわかりやすくするため、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際の構成と同じであるとは限らない。
図1〜
図8は本発明に係る高架橋の制振構造の第1実施形態を示すもので、本実施形態で用いる高架橋Aは、
図1に示すように複数の桁橋1が直列配置されてなる。
桁橋1は橋軸直交方向(高架橋の幅方向)に所定間隔をあけて配置された一対の主桁2と、前記一対の主桁2の間に橋軸方向(高架橋の長さ方向)に間隔をあけて複数配置された横桁3と、前記一対の主桁2の上面に載置された床版5を備えてなる。また、主桁2、2は、
図1(A)に示すように高架橋Aの橋軸方向に沿って所定の間隔で立設された橋脚部9により支持されている。
図1(A)に示す構造では主桁2の長さ方向に8つの橋脚9が設置された構造を一例として示している。
【0015】
主桁2と横桁3はいずれもI形に鋼材を組み付けて構成されている。
床版5は一例としてコンクリート床版からなり、その上面側に舗装が施されて車両が走行可能となっている。床版5は
図2、
図3等に示すように左右の主桁2によって支持されている。なお、主桁2は3本以上設けられる場合があり、主桁2は箱桁の構造を採用することもある。
主桁2、2の橋軸方向には
図1(B)に示すように所定の間隔で
図3に示すように主桁2、2に両端を接合した横桁3が複数架設されている。横桁3は、床版5の下方に所定の間隔をあけて床版5と離間し、橋軸直角方向に架設されている。また、橋軸方向に離間配置された横桁3、3の間に橋軸方向に沿って所定の間隔をあけて一対の支持横桁6が橋軸直角方向に架設されている。一対の支持横桁6は、それらの両端部を主桁2、2に接合し横桁3と平行に架設されている。
この実施形態の高架橋Aでは一対の支持横桁6を設ける位置が以下に説明する位置に限定されている。まず、高架橋Aの橋軸方向端部側に位置する橋脚9とそれに隣接する他の橋脚9との間においては、橋脚9、9間を概ね4等分する3箇所の位置をそれぞれ挟むように一対の支持横桁6が設置されている。
また、高架橋Aの橋軸方向両端側の橋脚9を除く他の橋脚9、9間では、これら橋脚9、9間の橋軸方向中間位置に対応するように一対の支持横桁6が架設されている。
従ってこの実施形態の高架橋Aでは、
図1(B)に示すように高架橋Aの端部側の橋脚9、9間に3組、合計6本の支持横桁6が架設され、他の橋脚9、9間ではそれらの中間位置にそれぞれ(1組)2本の支持横桁6が架設されている。
【0016】
次に、高架橋Aの橋軸方向端部側に位置する橋脚9、9間に設けられている一対の支持横桁6の間に、橋軸直角方向に沿って10〜20Hz対応の2基のダイナミックマス型の制振装置7が設けられ、高架橋Aの橋軸方向に沿う他の橋脚9、9間に設けられている一対の支持横桁6の間に、橋軸直角方向に沿って2.5〜5Hz対応の6基のダイナミックマス型の制振装置7が設けられている。
10〜20Hz対応のダイナミックマス型の制振装置7と2.5〜5Hz対応の6基のダイナミックマス型の制振装置7は基本構造は同等であるが、それぞれに設ける可動質量体の重量と数、コイルばねのばね定数と数を調整し、制振装置7としての固有振動数の範囲を10〜20Hz対応とするか、2.5〜5Hz対応のいずれかとしたものである。例えば、制振装置7は固有振動数を12.5Hz程度に設定すると12.5Hzを中心とする振動を抑制することができ、制振装置7は固有振動数を4Hzに設定すると4Hzを中心とする振動を抑制することができる。
一対の主桁2に対し設ける支持横桁6、6の数、制振装置7の数は任意の数を選択できる。
図2または
図4に示す制振装置7の配置個数はそれぞれ1つの例であってこれらに図示する配置例には限らない。
【0017】
制振装置7は一例として
図10、
図11に示すようにH型鋼材などを組み付けて枠状に構成した矩形ブロック状の金属製のベース基台10の上に立設された4つの支持軸11によって上下移動自在に矩形板状の可動質量体12が支持されている。可動質量体12の中央部側には錘体12Aが一体化され、平面視矩形状の可動質量体12の各コーナー部分を貫通するように支持軸11が設けられている。なお、この例の可動質量体12は積み重ね型の錘体として構成され、積み重ねる錘体の個数を調整することで、高架橋Aの質量に応じて適切な制振力を発揮できるように構成されている。一例として制振するべき対象とする橋脚9、9間の高架橋質量の1%程度の重量を選択することができる。
各支持軸11において可動質量体12の下側には下部コイルばね(弾性部材)13が設けられ、各支持軸11において可動質量体12の上側には抜け止め板15により抜け止めされて上部コイルばね(弾性部材)16が設けられている。可動質量体12はその上下をコイルばね13、16により弾性支持されているので、可動質量体12に高架橋Aの振動が伝達されると可動質量体12は上下のコイルばねのばね反力に抗しつつ支持軸11に沿って上下に振動できるように構成されている。
【0018】
可動質量体12の外側であってベース架台10のコーナー部分にオイルダンパー(減衰機構)18が設けられている。このオイルダンパー18は、オイルを収容したシリンダー18Aに対しピストン18Bが摺動自在に挿入され、シリンダー18Aの内部にオリフィスを伴うオイルの流路が構成されている。シリンダー18Aに対しピストン18Bが相対摺動する際、オリフィスを通過するオイルの粘性抵抗により減衰作用が発揮され、可動質量体12を移動させるエネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて吸収される。
【0019】
制振装置7において、錘体12Aを備えた可動質量体12に作用した上下方向への振動エネルギーにより、可動質量体12はコイルばね13、16のばね反力に抗して上下に振動するが、可動質量体12は高架橋Aの固有振動と同期して振動するので高架橋Aの振動を減衰できるとともに、オイルダンパー18の作用によって前記振動エネルギーの一部は熱エネルギーに変換されて消費される。なお、
図10、
図11に符号19で示すものは、可動質量体12の上下移動量を規制するストッパー部材である。このストッパー部材19には第1の可動質量体12の上方に間隔をあけて位置する上部規制板19aと第1の可動質量体12の下方に間隔をあけて位置する下部規制板19bが設けられている。
【0020】
制振装置7は、隣接する一対の支持横桁6、6の間にH型鋼材等の支持鋼材(支持部材)20をボルト止めなどの接合方法により橋渡し状に接合し、この支持鋼材20の上にベース架台10をボルト止めするなどの手段により取り付けられている。
図2、
図5、
図6に示す構造は制振装置7を橋軸直角方向に6基設置した例であるため、支持鋼材20は制振装置7を6基支持できるように12本架設され、この例では主桁2の中心線Sから橋軸直角方向に等間隔で3基ずつ制振装置7が設置されている。
図4、
図7、
図8に示す構造は制振装置7を橋軸直角方向に2基設置した例であるため、支持鋼材21は制振装置7を2基支持できるように4本架設され、この例では一対の主桁2の中心線Sから橋軸直角方向に等間隔位置で1基ずつ制振装置7が設置されている。
【0021】
本実施形態において制振装置7を設ける個数は制振対象物である高架橋Aの規模や交通量、制振しようとする低周波音の強さなどに応じて適宜設定するので、任意の数で良い。また、支持鋼材20の長さ、幅、厚さ、一対の支持横桁6、6の間隔なども制振しようとする低周波音の周波数に応じて適宜設定するので、任意に設定することができる。また、制振装置7を支持する支持鋼材20、21の周囲にはメンテナンスエリア確保などのために簡単な構造の床材20A、21Aを配置しておくことが好ましい。
【0022】
本実施形態の高架橋Aにおいて、一対の主桁2、2の中央位置であって、床版5の下面側に橋軸方向に補強縦桁22が設けられている。この補強縦桁22は、主桁2と同等長さに形成され、床版5の下面側に配置されている。また、横桁3の長さ方向中央部と支持横桁6の長さ方向中央部にそれぞれ補強支柱(補強部材)23が立設され、これらの補強支柱23により補強縦桁22が支持されている。これらの補強支柱23は補強縦桁22を介し床版5を支持し、床版5からの振動を伝達する。この例においては補強縦桁22と補強支柱23が第1補強部材とされている。この例では、床版5からの振動の伝達をさらに向上するため、ガセットプレート34aを介して主桁2、横桁3、支持横桁6あるいは補強支柱23に接続された補強斜材34を設けている。
床版5の下面は上に凸型のアーチ形状に形成されており、さらに施工誤差による不陸があるので補強縦桁22の上面と床版5の下面との間には若干の隙間が生じるが、この隙間は一例として
図9に示すようにエポキシ樹脂などの注入材からなる樹脂充填材(第1スペーサー)29により埋められ、樹脂充填材29によって補強縦桁22と床版5が密着されている。
【0023】
補強縦桁22は、
図2、
図3に示すように補強支柱23により支持されているが、
図9に示すように補強縦桁の上フランジ22Aの幅方向両側(橋軸直角方向両側)部分にくさび型の樹脂スペーサー27が配置され、樹脂シール材28により床版5との隙間が塞がれ、補強縦桁22と床版5と樹脂スペーサー27と樹脂シール材28によって囲まれた領域に樹脂などを充填硬化して樹脂層26が形成され、これらにより樹脂充填材29が形成されている。樹脂充填材29は、この例では樹脂層26と樹脂スペーサー27と樹脂シール材28とからなる。
この構造により補強縦桁22は床版5の振動を受けて振動し、該振動を補強支柱23と横桁3,3と支持横桁6、6を介して主桁に伝達できるようになっている。さらに、支持鋼材20を介し制振装置7に確実に伝達できるようになっている。
なお、床版5の振動は主桁2を介しても支持横桁6に伝達され、該振動が支持横桁6、支持鋼材20を介し制振装置7に伝達される。
なお、先の制振装置7の振動抑制効果が固有振動数対応であるのに対し、横桁3と支持横桁6を補強支柱23と補強縦桁22で支持した構造では、上述の固有振動数に対応した振動数よりも広い範囲の振動数に対して制振効果を示す。例えば、固有振動数4Hzの制振装置7では4Hzを中心とする振動数に制振効果を奏するが、補強支柱23と補強縦桁22で床版5を支持した構造では4Hz以上の幅広い範囲の振動数に対して効き目がある。
【0024】
制振装置7を設けた高架橋Aにおいて、車両走行により振動を生じる場合、高架橋Aに特有の振動数と振動モードが発生する。そこで、この振動モードと振動数に応じてこれらを効果的に減少させることができるように制振装置7の設置位置、コイルばね13、15のばね定数、オイルダンパー18の減衰力、錘体12の質量などを予め調整し、制振装置7を設置する。
【0025】
以上説明した高架橋Aの構造において、補強縦桁22は床版5の振動を受けて振動し、該振動を補強支柱23と横桁3、3と支持横桁6、6を介して主桁に伝達できるようになっている。さらに、支持鋼材20を介し確実に制振装置7に伝達できるようになっている。なお、床版5の振動は主桁2を介しても伝達され、該振動が支持横桁6、支持鋼材20を介し確実に制振装置7に伝達される。
【0026】
高架橋Aにおいて床版5の上を車両が走行すると床版5が振動する。この振動は主桁2、2を介し支持横桁6に伝達される。また、床版5の振動はスペーサーである樹脂充填材29と補強縦桁22と補強支柱23を介するルートによっても支持横桁6に伝達される。
支持横桁6に伝達された振動は、支持鋼材20を介し制振装置7に伝達される。制振装置7に伝達された振動により可動質量体12がコイルばね13、16のばね反力の作用を受けて上下に振動し、高架橋Aの固有周期と同調し、それによって生じた反力により高架橋Aの振動を抑制する。また、オイルダンパー18が作動して可動質量体12の振動エネルギーを熱エネルギーに変換して振動エネルギーを一部吸収し、床版5を制振する。このため、高架橋Aを効率良く制振することができ、特に2.5〜5Hzと10〜20Hzの低周波音を低減できる。
従って高架橋Aの近隣の建築物に対する低周波音の伝達を抑制することができ、近隣建築物の窓枠や障子のガタツキを無くすることができ、近隣住民に対し低周波音による不快感の発生を抑制することができる。
【0027】
ところで、高架橋Aにおいて床版5は、床版5、5の継ぎ目の部分を車両が通過する際、車両が継ぎ目を乗り越えることで衝撃音が発生する。この衝撃音は特に主桁2の端部側の橋脚9、9の間の床版で大きい、この衝撃音は、10〜20Hzの帯域の成分が多い。ここで、主桁2の端部側の橋脚9、9の間には、固有振動周波数帯を10〜20Hzに調整した制振装置7を橋軸直角方向に2基、橋軸方向に3箇所で合計6基備えているので、車両が継ぎ目を乗り越えることで発生する衝撃音を効率良く制振できる。また、車両の走行に伴い床版5が振動する場合、隣接する橋脚9、9間の床版5を概ね4等分する3箇所の位置に制振装置7を設置したため、継ぎ目部分で発生する衝撃に伴う床版5の振動を効率良く抑制できる。
また、高架橋Aにおいて、その他の橋脚9、9間の床版5の上を車両が走行する場合、床版5と主桁2、2から発せられる振動において2〜5Hzの低周波成分が多いことを本発明者は知見しているとともに、橋脚9、9間の床版5の中央部の振動成分が多いことも知見している。この振動を抑制することが望ましい。このため、その他の橋脚9、9間では中央部に2.5〜5Hz対応の振動抑制装置7を設けることで、効率良く制振することができる。
【0028】
以上説明した高架橋Aの制振構造において、床版5を横桁3、支持横桁6と補強支柱23、補強縦桁22で補強支持する構造に替えて以下に説明する構造を採用することができる。
図12は支持横桁6にその長さ方向に沿って所定の間隔で3本の補強支柱24を立設し、補強支柱24の上方の床版5の底面に沿って補強横梁(補強部材)25を設けた第2実施形態の構造である。
補強横梁25と床版5の底面との間に隙間が生じる場合は、先に説明した構造と同等の樹脂充填材29をスペーサーとして設けることができる。
図12では略しているが、横桁3の上にも
図12で示す補強支柱24と同等の補強支柱24を設け、補強横梁25を設け、樹脂充填材29を設けて床版5を補強支持する構造とする。
【0029】
図13は支持横桁6にその長さ方向に沿って所定の間隔で補強支柱24、23、24を立設し、補強支柱23、24の上方の床版5の底面に沿って補強横梁25を設けるとともに、床版底面に沿って橋軸方向に補強縦桁22を設け、補強縦桁22を補強支柱23で支持した第3実施形態の構造である。
補強横梁25ならびに補強縦桁22と床版5の底面との間に隙間が生じる場合は、先に説明した構造と同等の樹脂充填材29を設けることができる。
図13では略しているが、横桁3の上にも
図13で示す補強支柱23、24と同等の補強支柱23、24を設け、補強横梁25と補強縦桁22を設け、樹脂充填材29を設けて床版5を補強支持する構造とする。
【0030】
図14は主桁2の側部に張出ブラケット2A、補強縦桁2Bを設け、床版5の両端部を支持した第4実施形の構造であるが、横桁3、支持横桁6にその長さ方向に沿って所定の間隔で補強支柱24、23、24を立設し、補強支柱23、24の上方の床版5の底面に沿って補強横梁25を設けるとともに、床版底面に沿って橋軸方向に補強縦桁22を設けた構造である。補強横梁25、補強縦桁22ならびに補強縦桁2Bと床版5の底面との間に隙間が生じる場合は、先に説明した構造と同等の樹脂充填材29をスペーサーとして設けることができる。
図14では略しているが、横桁3の上にも
図14で示す補強支柱23、24と同等の補強支柱23、24を設け、補強横梁25と補強縦桁22、張出ブラケット2A、補強縦桁2Bを設け、樹脂充填材29を設けて床版5を補強支持する構造とする。
【0031】
また、先に説明した第1実施形態の構造において、補強縦桁22と床版5の間の接続部分の構造について、以下に説明する種々の構造を採用することができる。
図15は補強縦桁22と床版5の接続部分の構造において樹脂注入による樹脂充填材29を形成した構造を側面側から見た図であり、先に
図9に基づいて説明した構造の側面図である。
図16は、先の例の樹脂の樹脂充填材29に替えてモルタル充填材35に変更し、床版5を支持した例である。この例においてモルタル充填材35は、先の例と類似構造であり、モルタル層と樹脂スペーサー27と樹脂シール材28とからなる。
図17は、先の例の樹脂の樹脂充填材29をジャッキ30に替えて床版5を支持した例である。
図15〜
図17に示す構造のように床版5を支持する構造はいずれの構造を採用しても良い。
【0032】
図18は制振装置の他の構造例(特許文献1に記載されている衝撃ダンパ)を示すもので、この例の制振装置40は、支持横桁6に固定される鋼製の箱型のハウジング41と、このハウジング41内に上下移動自在に配置された可動質量体42と、可動質量体42を弾性支持する圧縮コイルばね43と、オイルダンパーなどからなる減衰機構45を備えている。また、制振装置40は、可動質量体42の表面中央部に配置された上側レベル調整機構46と、この上側レベル調整機構46の表面に固定された上側接触部材47と、可動質量体42の裏面左右両側に固定された下側レベル調整機構48と、この下側レベル調整機構48の下面に固定された下側接触部材49と、ハウジング41の内底面に形成された突起部50を備えている。
【0033】
図18に示す構成の制振装置40では、車両の通行等によって床版5が振動するとその振動が支持横桁6を介し制振装置40に伝達され、これに呼応して可動質量体42が上下に振動し、可動質量体42が上昇した場合に上側接触部材47が床版5の底面に設けられた受け板5Aに衝突する。この結果、高架橋の振動を打ち消す方向に力を作用させる。
また、可動質量体42が下方に移動した場合に突起部50に衝突し、この結果、支持横桁6を介し高架橋の振動を打ち消す方向に力を作用させる。
以上の動作を繰り返すことにより、高架橋の床版5の振動を徐々に低減し制振することができる。
【0034】
図18に示す構成の制振装置40による制振効果を最大限に引き出すためには、高架橋において発生する振動の振幅に合わせて可動質量体42とハウジング内面との隙間を最適化すればよい。即ち、振幅が大きい場合は隙間を大きく設定し、振幅が小さい場合は隙間を小さく設定することにより対応することができる。
【0035】
図18に示す構成の制振装置40を先の例の制振装置7に代えて支持横桁6に設けることで高架橋Aの制振を行うことができる。
また、先の形態において高架橋Aにそれぞれ設けた複数の制振装置7の一部を制振装置40で代用することができ、制振装置7と制振装置40を混合して用いることもできる。
制振装置40は10〜20Hz対応のダイナミックマス型の制振装置40に調整することができ、適所に設置することで先の高架橋Aにおいて効率的な制振効果を発揮できる。
【0036】
ところで、これまで説明した実施形態においては、桁が繋がっている橋梁について説明したが、本発明は桁が繋がっていない橋梁(単純桁)に適用することもできる。
この場合、橋軸方向の1/4点と3/4点に10〜20Hz対策の制振装置を設け、中央位置に2.5〜5Hz対策の制振装置を設けることができる。
【実施例】
【0037】
図1に示す構造の高架橋をモデルとして振動解析シミュレーションを行った。
図19にシミュレーション解析に用いた高架橋の平面構造を示し、
図20、
図21に同高架橋の制振装置取付部分の拡大構造を示し、
図22に同高架橋の支持横桁とその周囲部分の構造(4Hz対策構造)を示し、
図23に同高架橋の支持横桁とその周囲部分の構造(12.5Hz対策構造)を示す。
一例として、
図19に示すように第1番目の橋脚間の長さ41100mm、第2番目〜第6番目の橋脚間の長さ42300mm、第7番目の橋脚間の長さ41100mm、床版の全幅18050mm、
図19〜
図23に詳細寸法を示す高架橋を想定し、伊藤忠テクノソリューションズ(株)製の計算ソフト、soilplus2014を用いて振動シミュレーション解析を行った。なお、
図19では第1番目〜第4番目の橋脚間の床版を示しているが
図1(B)に示す第7番目の橋脚間までを解析モデルに設定し、第5番目〜第7番目の各部の大きさは
図19に示す構造と対称にしている。
【0038】
図19に示す第1番目の橋脚間の床版下方には、制振装置を取り付ける支持横桁を橋軸方向に3組設け、第2番目〜第6番目の橋脚間にはそれぞれ橋軸方向中央部に支持横桁を1組設け、第7番目の橋脚間の床版下方には制振装置を取り付ける支持横桁を橋軸方向に3組設けた第1実施形態と同等構造としている。
第1番目の桁橋には3組の支持横桁を設けているが、対になる支持横桁に2基ずつ、
図10、
図11に示す構造の制振装置を設けた。
第1番目と第7番目の橋脚間に合計6個の制振装置(12.5Hz対策品:固有振動数対応)を設けた。この制振装置を設けた位置の構造は
図22に示す構造となる。
第2番目〜第6番目の橋脚間にはそれぞれ1組ずつの支持横桁を設けているが、対になる支持横桁に6基ずつ
図10、
図11に示す構成の制振装置(4Hz対策品:固有振動数対応)を設けた構造は
図23に示す構造となる。
制振装置は4Hz対策品としてダイナミックマス2000kg、減衰比8%、振幅±10mm、最大振幅±30mm、総質量3000kgの構造を採用した。
12.5Hz対策品としてダイナミックマス2000kg、減衰比8%、振幅±5mm、最大振幅±10mm、総質量3200kgの構造を採用した。
4Hzと12.5Hzのいずれの対策品の制振装置であっても、錘体の重量は各桁橋の主桁と床版の総重量の1%に相当する重量を設定している。
また、制振装置を支持する支持横桁と床版の接合は、
図1〜
図9に示す第1実施形態の構造を採用したとして解析した。この結果は、支持横桁とその他補強部材からなる架台で床版を支持し、制振装置を設けているので架台+制振装置と表記した。
【0039】
比較のために、支持横桁とその他補強部材と制振装置を略した従来構造の高架橋を設定し、同等の振動解析シミュレーションを行った。
比較のために、支持横桁とその他補強部材を設け、制振装置を略した構造の高架橋を設定し、同等の振動解析シミュレーションを行った。この例は制振装置を略して支持横桁とその他補強部材を設けているので架台のみと表記した。
【0040】
以上の条件で解析を行った結果について4Hz帯の解析結果を以下の表1に示す。本発明者は床版の振動加速度の低減率がおおよそ低周波音の低減率となることを知見しているため、いずれも基準は、従来構造の高架橋に対し、振動入力して得た振動加速度を基準として、減衰率を%とdBで表示した。
また、以下の表に示す(1)〜(5)は床版における測定位置を示す。
図19に符号P1で示す位置が橋脚間中央の支持横桁中間位置の床版下面、P2で示す位置が支持横桁の長さ方向一端側の床版下面、P3で示す位置が支持横桁に隣接する横桁の長さ方向中央位置の床版下面、P4で示す位置が隣接する横桁間の中間位置より主桁側に移動した位置の床版下面、P5で示す位置がP4位置の側方の張出床版下面に設定している。他の床版においても等価位置にて振動解析した。それぞれの位置におけるシミュレーション結果を以下の表1〜表4に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1、表2に示す結果から、以下の効果が判明した。
主桁によって床版を支持し、主桁に対し複数の横桁を設けた高架橋の構造において、横桁間に支持横桁を設け、横桁と支持横桁によって補強支柱と補強縦桁と充填材を介し床版を直接支持した構造とすることにより、4Hz帯域の振動を1〜10dB程度抑制でき、12.5Hz帯域の振動を2〜29dB程度抑制できることがわかった。
高架橋は主桁によって床版を支持し、主桁を横桁で補強することで土木構造物として充分な構造強度と剛性を有するが、それのみでは低周波音などの対策には不充分な場合がある。このような場合に、横桁と支持横桁によって補強支柱と補強縦桁と充填材を介し床版を直接支持した構造とすることにより、低周波音対策をある程度進めることができた。
【0044】
その上で、支持横桁にダイナミックマス型の制振装置を設けて制振することで、高架橋における低周波音帯域の振動を更に大幅に抑制できることがわかった。例えば、前記架台のみを設けた構造に対比し、更に5〜10dBの追加効果、位置によっては数10dBの効果を見込むことができる。また、一例として、低周波音対策をとっていない従来の高架橋に対比すると、測定位置によっては4Hz帯域において10〜34dB、12.5Hz帯域において10〜26dBもの大幅な振動抑制効果を得られることがわかった。また、架台のみの場合は、位置に応じて逆に振動が増幅される現象が生じた。表1、表2において−の値は振動が増加することを意味する。これに対し、架台+制振装置の構造を採用することで振動が増加する位置が無くなり、全ての位置において制振効果を発揮できることがわかった。
【0045】
次に、先の実施例において用いた
図10、
図11に示す制振装置7の一部を
図18に示す制振装置40に交換して振動解析シミュレーションを行い、低周波音帯域の抑制効果についてシミュレーション解析した。
図19に示す第1番目の桁橋に設けた3組の支持横桁に
図18に示す構成の制振装置40をそれぞれ2基ずつ、合計6基設け、第2番目〜第6番目の桁橋には先の実施例と同様の
図10、
図11に示す制振装置7を設け、第7番目の橋脚には第1番目の桁橋と同様に制振装置40を高架橋の橋軸方向に3組、合計6基設けた構造を採用し、同等の振動解析シミュレーションを行った。また、床版を支持する構造は
図22、
図23に示す構造として解析した。
その結果を以下の表3、表4に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
図10、
図11に示す構造の制振装置7を
図18に示す構造制振装置40に入れ替えて備えた高架橋であっても先の第1実施形態の構造シミュレーションと同様に優れた振動抑制効果が得られることがわかった。