(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-82499(P2017-82499A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】合成樹脂製プール用床材とそれを使用したプール床
(51)【国際特許分類】
E04H 4/04 20060101AFI20170414BHJP
【FI】
E04H4/04 B
E04H4/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-212543(P2015-212543)
(22)【出願日】2015年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】515300859
【氏名又は名称】株式会社KEN
(74)【代理人】
【識別番号】100080595
【弁理士】
【氏名又は名称】西垣 康雄
(72)【発明者】
【氏名】服部 賢治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プール床面の清掃、補修そして全面替えなどが迅速に行ない得る上に、季節ごとにあるいは催しに合わせて模様替えが簡単に実現できる合成樹脂製プール用床材とそれを使用したプール床を提供する。
【解決手段】複数の孔枠を備える合成樹脂材製ケーシングに、複数の合成樹脂製プール用床材をそれぞれ嵌め込み配置するとともに、合成樹脂材製ケーシングと合成樹脂製プール用床材を合わせた比重が水より重く構成されてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔枠を備える合成樹脂材製ケーシングの前記孔枠に嵌め込み可能であるとともに、比重を水より重く構成してなる合成樹脂製プール用床材。
【請求項2】
複数の孔枠を備える合成樹脂材製ケーシングに、複数の合成樹脂製プール用床材をそれぞれ嵌め込み配置するとともに、合成樹脂材製ケーシングと合成樹脂製プール用床材を合わせた比重は水より重く構成されてなることを特徴とするプール床。
【請求項3】
合成樹脂材製ケーシングの孔枠内側面に凸部が、また合成樹脂製プール用床材の外側面の前記孔枠凸部に対応する位置に凸部がそれぞれ設けられ、合成樹脂材製ケーシングに合成樹脂製プール用床材を、互いに対応する凸部を介して圧入嵌め込み可能としてなるプール床。
【請求項4】
合成樹脂製プール用床材は中空形状とするとともに、側面の適所に空気や水
を抜くための開口部を設けてなることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製
プール用床材。
【請求項5】
表面部は、鏡面素材により鏡面処理されてなることを特徴とする請求項1〜4
記載の合成樹脂製プール用床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製プール用床材とそれを使用したプール床に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前からプールの床面に陶磁器製タイル張りしたものは知られているが、床面に陶磁器製タイルを接着剤で固着するという、熟練した施工技術も求められ、面倒でコストも手間もかかる工事となる上に、陶磁器製タイル材そのものに重量があるため、それにプールの水の量が加わるとプールの全量が大きくなり、例えば、二階以上の上層階にプールを設けたり、あるいはプール下に施設などを設けたりする場合、プールの階下への負荷が問題となることも少なからずあった。
また、プール床面の清掃や補修でプールの水抜きを行なう場合、プールの使用を停止し、ケースによっては数日から数週間の休館を余儀なくさせられ、経済的な損失を蒙ることも珍しくはなかった。
【0003】
例えば、プールの床面を陶磁器製タイル材で張った場合、破損や模様替えのため、プールの水抜きをしてから全面工事するとなると、二週間の工期は必要となり、高額な工事費用はもちろんのこと、スイミングクラブなどではその間の営業収入がゼロとなるなど負担が大きかったものであり、迅速にプール床面を補修あるいは模様替えをしたい、という要望はあったものの、既存の技術で対応できないという不満がこれまであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−328804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、プール床面の清掃、補修そして全面替えなどが迅速に行ない得る上に、季節ごとにあるいは催しに合わせて模様替えが簡単に実現できる合成樹脂製プール用床材とそれを使用したプール床を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の孔枠を備える合成樹脂材製ケーシングに、このケーシングの孔枠に合成樹脂製プール用床材を嵌め込んで配置するとともに、合成樹脂材製ケーシングと合成樹脂製プール用床材を合わせた比重が水より重く構成されてなることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の合成樹脂製プール用床材とそれを使用したプール床は、必要な面積のプール床を用意すれば、そのプール床の孔枠に合成樹脂製プール用床材を嵌め込むだけで、それをプールに持ち込めば、全体の比重が水より重くしているため(この実施例では比重1.1)、水中に沈んでプール底面に着地し完成するので、プールの水を抜く必要もなく、したがってたとえばプールの利用時間終了後に作業を始め翌日の利用開始時間までに作業を終えることも可能となり、高い利便性がある。また、プール床面の清掃においては、合成樹脂材で構成されているため軽量であるから引き上げも容易で、引き上げて清掃することができる。さらにまた、補修においては、破損した合成樹脂製プール用床材だけを新しい合成樹脂製プール用床材に簡単に水中で交換できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の合成樹脂製プール用床材の斜視図である。
【
図2】
図2は本発明の合成樹脂製プール用床材平面図である。
【
図3】
図3は本発明の合成樹脂製プール用床材の底面図である。
【
図4】
図4は本発明の合成樹脂製プール用床材の側面図である。
【
図5】
図5はケーシングの孔枠に床材を嵌め込んだ一部切欠き斜視図である。
【
図6】
図6は孔枠10に床材凸部5が嵌め込まれた状態を示す組立平面図である。
【
図10】
図10はケーシングのオス型レールとメス型レールの組付前を示す部分拡大概略斜視図である。
【
図11】
図11はケーシングのオス型レールとメス型レールの組付後を示す部分拡大斜視図である。
【
図12】
図12は本発明に係る合成樹脂製プール用床材に鏡面処理をした別の実施例を示す要部概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
複数の孔枠を備える合成樹脂材製ケーシングに、このケーシングの孔枠に合成樹脂製プール用床材を嵌め込んで配置するとともに、合成樹脂材製ケーシングと合成樹脂製プール用床材を合わせた比重を水より重く構成している。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明に係る合成樹脂製プール用床材1であり、この実施例ではPP(ポリプロピレン)を主成分としてタルクなどを加えて剛性と弾性を併せ持ち、比重1.1になるよう成型されている。そして、床面となるほぼ正方形の表面部2を備え、この表面部2の内側は中空部3とした形状とし、中空部3を囲む側面部4には、床材凸部5が設けられている。この実施例では、床材凸部5は、
図7の向かって右側の嵌め込み部分で説明すると、ゴム性を高めるため、床材側面部4の外側に斜めに突成し、途中で折り曲がって床材側面部4の内側に先端部5aが向かう、ちょうど断面がカタカナ「ヘ」を90°時計方向に回転させた形状に似たものとしている。この実施例では1個の合成樹脂製プール用床材に8か所の床材凸部5が設けられている。また、プールに沈める際に、スムーズに沈むよう、空気をのがし、水をきるための開口部6が複数設けられている。
一方、ケーシング7はこの実施例では、PP(ポリプロピレン)を主成分としてタルクなどを加えて剛性と弾性を併せ持ち、比重が1.1になるよう成型されている。ケーシングは必要に応じて継ぎ足しできる構成としている。そして、このケーシングには前記合成樹脂製プール用床材1がおさまる空間のある孔枠8が桝目状に設けられ、かつ個々の孔枠内側面9には凸部10が設けられている。この実施例では、孔枠凸部10は、
図7の向かって右側の嵌め込み部分で説明すると、断面がちょうど数字「7」を垂直方向・水平方向に反転させた形状に似たものとし、ひと枠の孔枠8に8か所設けられている。これにより、
図6〜
図8に示すように、前記合成樹脂製プール用床材1のケーシングの孔枠8への取り付けにあたっては、合成樹脂材製ケーシング孔枠8に合成樹脂製プール用床材1を上から圧入すれば、床材凸部5は先端部5aから孔枠凸部10の斜めの突成部に沿って容易に入り、床材1と孔枠8はいずれも弾性材であることもあって、そのまま圧入を続ければ床材凸部5の突成部は孔枠凸部10の段部10aに嵌め込まれ、合成樹脂製プール用床材1のケーシングの孔枠8への取り付けは簡単に完了する。この作業を繰り返す。
また、床材2をケーシングの孔枠8から取り外す際には、へら11を用い、先端部を床材1と孔枠8の間に差し込んで床材1を孔枠6から起こすようにして取り外せばよい。
【0011】
この実施例では、合成樹脂製プール用床材とケーシングのいずれも比重を1.
1としているが、全体として比重1.1であればよい。比重1.1前後にする
理由は、プールに自重で沈み底面に安定して定置できること、また軽量である
ため、プール底から引き上げやすいというメリットがあるからである。さらに
また、軽量であることは、プールを上層階に設置しても階下への負荷が少ない
という利点も有している。
【0012】
ケーシング7の組み立ては、この実施例では、外側部に凸部12を有するオス
型レール13と内側部に凸部14を有するメス型レール15を交差して嵌め合わせて構成している。設置対象となるプール底面の面積に応じて適宜に継ぎ足してサイズを合わせればよい。もちろん、ケーシングの形状や組み立て手段はこの実施例に限らず、種々の形状や組み立て手段が適用可能である。
【実施例2】
【0013】
図12は、本発明に係る合成樹脂製プール用床材の別の実施例を示し、鏡面仕様のアルミフィルム16を床材表面部2に被膜させることにより、プール床面が鏡となり、たとえば泳ぎながら自己のフォームをプール床面の鏡で確認し矯正することができる効果が得られるなど、プール床を鏡面とすることによる様々な利用方法が期待できる。この実施例では、鏡面仕様のアルミフィルムを用いたが、プールの使用に耐える剛性を維持する限り、どのような鏡面素材を用いてもよいし、また鏡面処理手段も任意に選択できる。
【0014】
尚、合成樹脂製プール用床材そしてケーシングの合成樹脂材としては実施例に限定されず、プール床面として必要な剛性と弾性を併せ持ち、水より比重が重ければどのような合成樹脂材を選んでも支障ない。合成樹脂製プール用床材もこの実施例ではほぼ正方形としたが、円形、楕円形、矩形など、様々な形状から選べばよく、この実施例に限定されない。さらにまた、合成樹脂製プール用床材のケーシングの孔枠への取り付けに、実施例では床材凸部と孔枠凸部は組立(嵌め込み)容易にするための形状としたが、合成樹脂製プール用床材がケーシングの孔枠へ嵌め込むことができる限り、実施例に限定されることなくどのような嵌め込み手段を用いても構わない。この実施例では着脱自在としているが、固着しても構わない。また、空気をのがし、水をきるための開口部の形状や取り付け個所や取り付け数についても無論、実施例に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0015】
プール床面の清掃、部分補修そして全面替えなどが迅速に行ない得る上に、季節ごとにあるいは催しに合わせて、色とりどりのプール用床材を用意すれば多種多様な模様替えが簡単に実現できる。また、プール床を鏡面とすることにより、泳ぎながらみずからのフォームをプール床面の鏡で確認し矯正することができるなどの効果が得られる。
【符号の説明】
【0016】
1 合成樹脂製プール用床材
2 床材表面部
3 床材中空部
4 床材側面部
5 床材凸部
6 床材開口部
7 ケーシング
8 ケーシング孔枠
9 孔枠内側面画
10 孔枠凸部
11 へら
12 オス型レール凸部
13 オス型レール
14 メス型凸部
15 メス型レール
16 アルミフィルム