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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-82510(P2017-82510A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】円形水路の撤去工法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/04 20060101AFI20170414BHJP
   E03F 7/00 20060101ALN20170414BHJP
【FI】
   E03F5/04 Z
   E03F7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-212933(P2015-212933)
(22)【出願日】2015年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】594018876
【氏名又は名称】ナガタ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109966
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】福島 秀則
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳顕
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA09
2D063CA41
2D063EA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不具合の生じた円形水路部分の区画全体を、残存させる円形水路に損傷を与えることなく撤去することを可能とする円形水路の撤去工法を提供する。
【解決手段】不具合の生じた既設の円形水路1を回転刃切断機によるブレードにより所定区間の前後位置を垂直切断して第1の撤去コンクリートユニット14を形成し、第1の撤去コンクリートユニット14を吊り上げ撤去し、その撤去後、それに続く円形水路の所定区間後方位置を垂直切断し、且つ、左右に分割して半割円形水路とした第2、第3の撤去コンクリートユニットを形成して吊り上げ撤去し、この第2、第3の撤去コンクリートユニットの撤去方法を長手方向にわたって繰り返すことにより所定長の既設円形水路を撤去することから構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の円形水路の短手方向において、その上面部よりベース部底に至るまでを回転刃切断機によるブレードにより垂直切断し、所定寸法離れた後方位置の円形水路を上記と同様の方法により垂直切断し、第1の撤去コンクリートユニットを形成し、該第1の撤去コンクリートユニット上に吊り上げ装置が位置するように架け渡し、該第1の撤去コンクリートユニットに取着した連結具を該吊り上げ装置に固定して該第1の撤去コンクリートユニットを上記所定寸法間の切断された円形水路の長手方向両側壁面を設置面との縁切りをしながら吊り上げ撤去し、その撤去後の長手方向所定寸法離れた後方位置の円形水路の短手方向を該回転刃切断機のブレードによりベース部底に至るまで垂直切断し、該円形水路の水路内側底面の中央部をベース部底に至るまで長手方向にわたって垂直切断し、円形水路の長手方向両側壁面と設置面との間に上方より楔を打ち込んで該両側壁面と該設置面との縁切りをして中央部で切断された半割円形水路とした第2、第3の撤去コンクリートユニットを形成し、該第2、第3の撤去コンクリートユニットの各々に取着した連結具と昇降機とを固定し、該第2、第3の撤去コンクリートユニットを各々吊り上げ撤去し、上記第2、第3の撤去コンクリートユニットと同様のユニットの形成及びその撤去を長手方向にわたって繰り返すことにより所定長の既設円形水路を撤去することを特徴とする円形水路の撤去工法。
【請求項2】
既設の円形水路の短手方向において、その上面部よりベース部底に至るまでを回転刃切断機によるブレードにより垂直切断し、所定寸法離れた後方位置の円形水路を上記と同様の方法により垂直切断し、上記所定寸法間の切断された円形水路の長手方向両側壁面を設置面との縁切りをし、第1の撤去コンクリートユニットを形成し、該第1の撤去コンクリートユニット上に吊り上げ装置が位置するように架け渡し、該第1の撤去コンクリートユニットに取着した連結具を該吊り上げ装置に固定して該第1の撤去コンクリートユニットを吊り上げ撤去し、その撤去後の長手方向所定寸法離れた後方位置の円形水路の短手方向を該回転刃切断機のブレードによりベース部底に至るまで垂直切断し、該円形水路の水路内側底面の中央部をベース部底に至るまで長手方向にわたって垂直切断し、円形水路の長手方向両側壁面と設置面との間に上方より楔を打ち込んで該両側壁面と該設置面との縁切りをして中央部で切断された半割円形水路とした第2、第3の撤去コンクリートユニットを形成し、該第2、第3の撤去コンクリートユニットの各々に取着した連結具と昇降機とを固定し、該第2、第3の撤去コンクリートユニットを各々吊り上げ撤去し、上記第2、第3の撤去コンクリートユニットと同様のユニットの形成及びその撤去を長手方向にわたって繰り返すことにより所定長の既設円形水路を撤去することを特徴とする円形水路の撤去工法。
【請求項3】
回転刃切断機は、円形水路の垂直切断の前工程として垂直切断部に近接した位置にパイロット孔を形成し、該パイロット孔に該回転刃切断機本体の回転装置支柱を挿入し、該回転装置支柱に沿ってブレードの回転軸を降下させることで円形水路を垂直切断してなることを特徴とする請求項1又は2記載の円形水路の撤去工法。
【請求項4】
回転刃切断機のブレードは、少なくとも円形水路の底部側耐力筋を切断する位置まで回転降下させてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の円形水路の撤去工法。
【請求項5】
円形水路の水路内側底面の中央部をベース部底に至るまで長手方向にわたって垂直切断する前工程として、取水口の側壁の除去又は水路部上面側を破壊して該取水口の開口部を拡開し、上記底面中央部を垂直切断する切断機の水路内側への導入を容易とする工程を採用することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の円形水路の撤去工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向において連続延設された円形水路において損傷が生じた特定区間のみの円形水路を分離して上方から撤去する円形水路の撤去工法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の側溝等に使用する円形水路は、昭和45年にフランスより技術導入され、その施工延長は現在に至るまでに3,000kmを超えている。当初のものも継続使用されているので、施工完成後40年を経過し経年劣化しているもの、また、周辺部の不具合や衝撃等の何等かの外部要因により様々な損傷が生じているものがある。
【0003】
例えば、円形水路の表面側には取水口の開口部が露出しているが、該取水口を形成する上部の左右側壁は片持ち部となっており構造的に弱い部分で、当該部分が損傷又は崩落し、通常60mm前後の開口幅が200mm幅程度に至るまで拡開する現象が生じている。
【0004】
開口幅が上記のように拡開すると、二輪車や軽自動車のタイヤ脱輪の危険性が生じることになる。この不具合は、もともと構造的に強度の弱い箇所であることに加え、経年使用による表面側のコンクリートの劣化や鉄筋腐食等も一因とされている。
【0005】
また、長手方向に連続する円形水路の所定区間において円形水路全体が沈下し、道路面との間に段差が生じたり、水路の下方側に損傷が生じているケースも発生している。この一因として、盛土路盤の沈下や円形水路を支持する基盤等の沈下に伴うものと考えられている。
【0006】
上記表面側の取水口や取水口周りの不具合に対しては、損傷又は崩落した箇所に別体の蓋を被せる補修工法が行われている。そのために円形水路の上部の一定厚をはつり取り、所定厚のグレーチング蓋を取り付けたり、また、排水がスムーズに行われることを考慮して縞鋼板蓋を取り付けることが行われている。
【0007】
前者のグレーチング蓋にあっては、一般的な材料を利用できる利点があり、後者の縞鋼板蓋にあっては、既存の円形水路に縞鋼板をアンカーボルトで取り付けるだけですみ、いずれも緊急を要する不具合箇所の対処としての施工性に優れており、また、縞鋼板蓋に設置している呑み口は十分な排水能力を持っており、同様の開口部を持つ矩形水路と同様の360mm/時間の降雨量にも排水可能であることが実験によって確認されている。
【0008】
しかし、前者にあっては、円形水路上部のはつり取りに時間と労力と精確性を要し、施工能力と経済性に難点があり、はつりに際して円形水路本体を傷める危険性を伴うものであった。
【0009】
また、後者にあっては、水路の短手方向となる縦断勾配が変化して水が溜まることが想定されるし、また、円形水路の内側が損傷を受けている場合は、漏水を起こし、円形水路の沈下、路盤への悪影響等が懸念されている。
【0010】
更に、円形水路の下方部が損傷を受けている場合や円形水路全体が陥没した場合等には、該円形水路を破壊して全体を取り替える必要があるが、正常な区間との境い目の対応が難しく、はつりによって撤去区画の分離確定を行うと正常な円形水路にも影響を与えてしまうおそれが多分にあった。
【0011】
下記する特許文献1は、図10に示すように、取水口部分のコンクリートの一部破損した場合の補修工法を示している。円形水路Aにおける取水口Bの開口部を塞ぐ金属製蓋板Cと、該円形水路Aの曲面にほぼ沿った円弧状で該取水口の幅より狭い幅の金属製固定金具Dと、該金属製固定金具Dと金属製蓋板Cの中央部同士を繋ぐ締付ボルトEとナットFとで構成した円形水路補修金具を使用し、該円形水路Aにおける取水口B部分のコンクリートが破損して欠けた部分を塞いだ状態で該金属製蓋板Cを固定することができ、取水口における破損した部分の開口部に蓋板を被せるだけで簡単に補修できるようにしている。
【0012】
しかし、上記したように、円形水路の内側や下方部に損傷が生じた場合や本体全体が陥没した場合等には、この補修工法では対応することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実用新案登録第3194020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記欠点を解決したもので、不具合の生じた円形水路部分の区画全体を、残存させる円形水路に損傷を与えることなく撤去することを可能としたものである。撤去した区間にはその後に別途新設のプレキャスト円形水路を設けて連続させることで既設の円形水路と一体となった水路を完成させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、既設の円形水路の短手方向において、その上面部よりベース部底に至るまでを回転刃切断機によるブレードにより垂直切断し、所定寸法離れた後方位置の円形水路を上記と同様の方法により垂直切断し、第1の撤去コンクリートユニットを形成し、該第1の撤去コンクリートユニット上に吊り上げ装置が位置するように架け渡し、該第1の撤去コンクリートユニットに取着した連結具を該吊り上げ装置に固定して該第1の撤去コンクリートユニットを上記所定寸法間の切断された円形水路の長手方向両側壁面を設置面との縁切りをしながら吊り上げ撤去し、その撤去後の長手方向所定寸法離れた後方位置の円形水路の短手方向を該回転刃切断機のブレードによりベース部底に至るまで垂直切断し、該円形水路の水路内側底面の中央部をベース部底に至るまで長手方向にわたって垂直切断し、円形水路の長手方向両側壁面と設置面との間に上方より楔を打ち込んで該両側壁面と該設置面との縁切りをして中央部で切断された半割円形水路とした第2、第3の撤去コンクリートユニットを形成し、該第2、第3の撤去コンクリートユニットの各々に取着した連結具と昇降機とを固定し、該第2、第3の撤去コンクリートユニットを各々吊り上げ撤去し、上記第2、第3の撤去コンクリートユニットと同様のユニットの形成及びその撤去を長手方向にわたって繰り返すことにより所定長の既設円形水路を撤去する円形水路の撤去工法を特徴とする。
【0016】
また、既設の円形水路の短手方向において、その上面部よりベース部底に至るまでを回転刃切断機によるブレードにより垂直切断し、所定寸法離れた後方位置の円形水路を上記と同様の方法により垂直切断し、上記所定寸法間の切断された円形水路の長手方向両側壁面を設置面との縁切りをし、第1の撤去コンクリートユニットを形成し、該第1の撤去コンクリートユニット上に吊り上げ装置が位置するように架け渡し、該第1の撤去コンクリートユニットに取着した連結具を該吊り上げ装置に固定して該第1の撤去コンクリートユニットを吊り上げ撤去し、その撤去後の長手方向所定寸法離れた後方位置の円形水路の短手方向を該回転刃切断機のブレードによりベース部底に至るまで垂直切断し、該円形水路の水路内側底面の中央部をベース部底に至るまで長手方向にわたって垂直切断し、円形水路の長手方向両側壁面と設置面との間に上方より楔を打ち込んで該両側壁面と該設置面との縁切りをして中央部で切断された半割円形水路とした第2、第3の撤去コンクリートユニットを形成し、該第2、第3の撤去コンクリートユニットの各々に取着した連結具と昇降機とを固定し、該第2、第3の撤去コンクリートユニットを各々吊り上げ撤去し、上記第2、第3の撤去コンクリートユニットと同様のユニットの形成及びその撤去を長手方向にわたって繰り返すことにより所定長の既設円形水路を撤去する円形水路の撤去工法を特徴とする。
【0017】
更に、上記回転刃切断機は、円形水路の垂直切断の前工程として垂直切断部に近接した位置にパイロット孔を形成し、該パイロット孔に該回転刃切断機本体の回転装置支柱を挿入し、該回転装置支柱に沿ってブレードの回転軸を降下させることで円形水路を垂直切断してなる円形水路の撤去工法を特徴とする。
【0018】
また、上記回転刃切断機のブレードは、少なくとも円形水路の底部側耐力筋を切断する位置まで回転降下させてなる円形水路の撤去工法を特徴とする。
【0019】
更に、上記円形水路の水路内側底面の中央部をベース部底に至るまで長手方向にわたって垂直切断する前工程として、取水口の側壁の除去又は水路部上面側を破壊して該取水口の開口部を拡開し、上記底面中央部を垂直切断する切断機の水路内側への導入を容易とする工程を採用する円形水路の撤去工法を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の円形水路の撤去工法により、不具合の生じた円形水路の所定区間のみを残存させる円形水路に振動や衝撃を与えることなく撤去でき、且つ、残存円形水路の短手方向端部面を垂直状態とすることができ、新しいプレキャスト円形水路を上方からそのまま設置して残存円形水路と連結することを可能とし、不具合の生じた部分のみを新設のプレキャスト円形水路に置き換えることが簡単にできるようになった。
【0021】
上記撤去工法により、不具合部分の撤去を短時間ででき、且つ、その後の新設も短時間で行うことができるようになり、不具合に伴う修理を速やかに行うことができ、車両の交通規制等の時間を極めて短くすることが可能となった。
【0022】
また、部分的な補修ではなく不具合の生じた円形水路全体を撤去することができる工法としたので、この撤去の後に設置された円形水路は全て新設となり、当該部分において不具合が再発することを極めて少なくすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】円形水路を垂直切断する状態を示す長手方向側面図。
図2】(a)、(b)短手方向における円形水路とブレードとの関係を示す断面図。
図3】本工法に使用する回転刃切断機を示す斜視図。
図4】円形水路にパイロット孔を形成した状態を示す平面図。
図5】(a)所定長の円形水路を撤去する吊り上げ装置を示す斜視図、(b)同A−A断面図。
図6】(a)円形水路上に吊り上げ装置を設置した状態を示す側面図、(b)同吊り上げ装置により円形水路を上昇させている状態を示す側面図。
図7】後方位置の円形水路を撤去する工程を示す斜視図。
図8】円形水路を撤去する工程の他の実施例を示す短手方向断面図。
図9】円形水路を左右半割状態とする工程を示す斜視図。
図10】円形水路補修の従来例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、不具合の生じた既設の円形水路1の所定区間を撤去する工法を示す側面図で、まず、不具合の生じた既設の円形水路1の長手方向前方位置の短手方向に、回転刃切断機2によるブレード3の回転降下により該円形水路1の上面4よりベース部5の底6に至るまで切断して第1の垂直切断部7を形成する。該ベース部5は、円形水路1を設置するにあたり、それを支持するために先行して形成したものである。
【0026】
図2(a)、(b)の断面図に示すように、該ベース部5の底6に至るまでブレード3を回転降下させることにより、該円形水路1全体を短手方向で切断することができる。該ブレード3が水路部8の下方となるベース部5の底6に到達することにより円形水路1下方の左右側壁側に配筋した耐力筋9を切断することが可能となる。上記のように、耐力筋9を切断する位置まで円盤状のブレード3を回転降下させることでベース部5の底6或いはそれ以下にまで刃先を到達させることができる。
【0027】
該回転刃切断機2は、図3に示すように、支柱10に沿って上下動する軸11に回転自在に固定されたブレード3を有し、図4に示すように、撤去する円形水路1の第1垂直切断部7の予定位置に接した位置に、パイロット孔12を先行して形成し、該ブレード3の回転降下に従って該パイロット孔12内に該支柱10が入り込むことで該ブレード3の下降を可能とし、円形水路1を垂直方向において奥深くまで切断することができ、第1垂直切断部7を形成することができる。
【0028】
該第1垂直切断部7の切断終了後、所定寸法離れた後方位置の円形水路1を上記と同様、ブレード3の回転降下により第2垂直切断部13となる切断箇所を形成することになる。回転刃切断機2の設置方法は、第1垂直切断部7の切断時と同様、パイロット孔12を設けて行うことになる。
【0029】
後方位置となる第2垂直切断部13までの長手方向の寸法は、該第1、第2垂直切断部7、13によって形成された円形水路1のコンクリートブロック塊となる矩形状第1撤去コンクリートユニット14を吊り上げることができる重量によって決定され、例えば、約1m程の位置等の寸法が適宜選択される。
【0030】
第1撤去コンクリートユニット14を撤去するには、図5(a)、(b)に示す吊り上げ装置15を使用する。該吊り上げ装置15の一実施例として図5(a)、(b)に示す円形水路1上に載置する形状のものを使用する。該吊り上げ装置15は、切断された第1撤去コンクリートユニット14の前方及び後方の上面4位置に掛け渡すことのできる長さの平行した2列の左右一対のH形鋼よりなる架構体16a、16b、該架構体16a、16bの両端部の上下のウェブ間を覆う断面略コ字型形状の連結板17a、17b、該連結板17a、17bの下方受板18a、18bを延出させて先端部を直交方向へ折り曲げた突出板19a、19b、該下方受板18a、18bの下方位置で該突出板19a、19bの前方及び後方位置となる円形水路1の上面4に載置する両端部を立ち上げた載置板20a、20b、該下方受板18a、18bと該載置板20a、20bとの間に配置したジャッキ21a、21b、左右の架構体16a、16bの中央側の各々の下フランジに所定寸法離して等間隔に設けた吊り上げUボルト等の掛け止め手段となる連結具22a、22b、22c、22dより構成されている。
【0031】
上記連結板17a、17bと載置板20a、20bとは別体として形成しているので、所定長のチェーン等により予め両者を連結しておくことによりセットとしての組み合わせ及び所定位置への設置等が容易となる。
【0032】
図6(a)に示すように、該載置板20a、20bを第1撤去コンクリートユニット14の前方及び後方位置の円形水路1の上面4に載置し、該架構体16a、16bを該第1撤去コンクリートユニット14上方に跨ぐように配置する。
【0033】
該第1撤去コンクリートユニット14の上面4には、該架構体16a、16bに固定した連結具22a乃至22dの位置と合致する位置にアンカー等の撤去コンクリートユニット側連結具23a、23b、23c、23dを予め固定しておく。
【0034】
該架構体16a、16b側の連結具22a乃至22dと第1撤去コンクリートユニット14側の連結具23a乃至23dを各々連結し、その後、前方及び後方位置のジャッキ21a、21bを均等に上昇させることで架構体16a、16bを水平状態を維持させて上昇させることができる。該ジャッキ21a、21bとしては、エアバッグ式、機械式又は油圧式等の適宜のものが使用され、少なくとも3t程度のものを吊り上げるのに有効なものを使用する。エアージャッキが持ち運び及び取り扱いが簡単なため最良のものである。
【0035】
エアージャッキの場合は、図6(b)に示すように、蛇腹状の強度の有る袋体にエアーを吹き込むことで膨出させ、その膨出によって架構体16a、16bを上昇させることができる。
【0036】
第1撤去コンクリートユニット14のベース部5や左右の側壁部25a、25bと設置面とのつながり等との縁切りは、該ジャッキ21a、21bの上昇力、又は該ジャッキ21a、21bと昇降機24との併用による上昇力で行うことができる。
【0037】
ジャッキ21a、21bの上昇力のみで第1撤去コンクリートユニット14の縁切りを行う場合は、予め別途手段により設置面との縁切りを先行させておく場合や設置面との繋がりが少ない場合に可能である。上記のように、設置面とのつながりは有るが少ない場合、昇降機24の上昇力をジャッキの上昇力に加えることで上昇力を高め、必要に応じて、昇降機24を上下左右に揺動させることで第1撤去コンクリートユニット14をベース部5、第1、第2垂直切断部7、13及び左右の側壁部25a、25bと設置部との縁切りを確実なものとすることができる。
【0038】
第1撤去コンクリートユニット14を上昇させて撤去するには、該架構体16a、16bの所定位置に予め吊り手段26a乃至26dを設け或いはチェーンやワイヤー等よりなる紐状体27を該架構体16a、16bに巻き付けて連結し、昇降機24と一体化しておく必要がある。
【0039】
上記のように、ジャッキ21a、21bにより設置部と分離し或いは昇降機24の力を伴なって分離した第1撤去コンクリートユニット14を吊り手段26a、26b及び紐状体27を介して該昇降機24によって吊り上げ装置15全体とともに上昇させ、図6(a)の状態から図6(b)の状態を経て、第1撤去コンクリートユニット14を撤去させることができる。
【0040】
上記ジャッキ21a、21b及び昇降機24並びに必要によっては該昇降機24を上下左右に揺動させながらの上昇力により第1撤去コンクリートユニット14の左右の両側壁面25a、25bをコンクリート舗装やアスファルト舗装等の道路面や法面等の設置面と縁切りすることが可能である。他方、現場打ちで円形水路を施工した場合のように、設置面との一体化がより一層強い場合等には、予め両側壁部25a、25bと設置面との縁切りをする別途施工をしてから該第1撤去コンクリートユニット14をジャッキ21a、21bの上昇力等により上昇撤去させることになる。
【0041】
上記縁切りは、前記同様、回転刃切断機2により行うことができるし、他の一般的な装置を使用することもできる。その縁切りも本体の側壁部25a、25b全体にわたる場合も有るが、必要に応じて一部のみにおいて行うことも可能であり、ジャッキ21a、21b及び昇降機24の上昇力との兼ね合いで決定されることになる。
【0042】
第1撤去コンクリートユニット14の吊り上げ撤去後、吊り上げ装置15を上記設置位置から撤去することになる。
【実施例2】
【0043】
第1撤去コンクリートユニット14の撤去後、図7に示すように、円形水路1の長手方向所定寸法離れた後方位置の短手方向に、回転刃切断機2によるブレード3の回転降下により該円形水路1の上面4よりベース部5の底6に至るまで第3垂直切断部28を形成する。
【0044】
該第3垂直切断部28の形成は、上記第1、第2垂直切断部7、13と同様、先行してパイロット孔12を形成し、該パイロット孔12を利用したブレード3の回転降下により行うことになる。
【0045】
その後、上記と同様の回転刃切断機2又は一般的なコンクリート切削機により水路部8の底面側の中央部をベース部5の底6に至るまで長手方向にわたって垂直切断し中央切断部29を形成する。切断幅は6mm前後とする。
【0046】
該中央切断部29の形成にあっては、取水口30よりブレード3等の切断機を挿入することになるが、該取水口30の幅は60mm程で、切断具が挿入できない可能性がある。その場合は、図8に示すように、取水口30の両側壁を形成する取水口側壁31a、31bを除去又は水路上面側を破壊し、大きな開口部が得られるようにする。
【0047】
上記中央切断部29は円形水路1の長手方向に沿って少なくとも第3垂直切断部28の位置までベース部5の底6に至る垂直切断をし、その後、図9に示すように、第3垂直切断部28に至るまでの間の円形水路1の長手方向両側壁部25a、25bと設置面との間に、上方より楔32を打ち込み、該円形水路1と設置面との縁切りをする。楔32を打ち込んで縁切りをすることにより円形水路1は左右に切断された半割の円形水路が各々取水口30側の中心方向へベース部5を含み、又はベース部5と分離された状態で傾倒させることができ、独立したコンクリート塊とすることができる。これにより第2、第3撤去コンクリートユニット33、34が各々個々に形成されることになる。
【0048】
該第2、第3撤去コンクリートユニット33、34の上面に各々予めアンカー等の連結具を打ち込み固定しておくことにより、該連結具とクレーン等の昇降機とを連結し、該第2、第3撤去コンクリートユニット33、34を上昇させて撤去することができる。
【0049】
上記のように、円形水路1を左右の半割状態として上昇撤去することになるので、第1撤去コンクリートユニット14の撤去時と同じような能力の昇降機を使用すれば、第3垂直切断部28の切断位置は、例えば、第1撤去コンクリートユニットの2倍以上の位置となる2m以上の位置等が適宜選択されることになる。
【0050】
上記第2、第3撤去コンクリートユニット33、34の撤去後、上記第2、第3撤去コンクリートユニット33、34の撤去と同様の施工を繰り返すことによって不具合の生じている円形水路1の所定区間の全てを撤去することができる。従って、前方位置の端部切り口面と同様、最終の撤去コンクリートユニットが撤去された残存円形水路の端部切り口面は垂直切断部として残ることになる。
【符号の説明】
【0051】
1 円形水路
2 回転刃切断機
3 ブレード
4 上面
5 ベース部
6 底
7 第1垂直切断部
8 水路部
9 耐力筋
10 支柱
11 軸
12 パイロット孔
13 第2垂直切断部
14 第1撤去コンクリートユニット
15 吊り上げ装置
16 架構体
17 連結板
18 下方受板
19 突出板
20 載置板
21 ジャッキ
22 連結具
23 撤去コンクリート側連結具
24 昇降機
25 側壁部
26 吊り手段
27 紐状体
28 第3垂直切断部
29 中央切断部
30 取水口
31 取水口側壁
32 楔
33 第2撤去コンクリートユニット
34 第3撤去コンクリートユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10