(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-82571(P2017-82571A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】塗膜の採取用具および塗膜の採取方法。
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20170414BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20170414BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20170414BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20170414BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20170414BHJP
B05B 15/00 20060101ALI20170414BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
B05D3/00 A
B05D3/12 E
B05D3/10 N
B05C11/00
B05B15/00
G01N1/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-142047(P2016-142047)
(22)【出願日】2016年7月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-223458(P2015-223458)
(32)【優先日】2015年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514218780
【氏名又は名称】黒田 清一
(74)【代理人】
【識別番号】100106954
【弁理士】
【氏名又は名称】岩城 全紀
(72)【発明者】
【氏名】黒田 清一
【テーマコード(参考)】
2E176
2G052
4D073
4D075
4F042
【Fターム(参考)】
2E176BB04
2E176BB36
2E176BB38
2G052AB22
2G052AC11
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD42
2G052BA02
2G052BA17
2G052BA19
2G052DA13
2G052DA14
2G052DA22
2G052DA27
2G052JA04
2G052JA16
2G052JA24
4D073CA30
4D075BB20Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DC05
4F042AA16
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】 既存の塗膜に有害物質が含まれているか否かの判定を行うための分析試験を実施するために、既存の塗膜を安全で簡易的に採取する採取する塗膜の採取用具を提供する。
【解決手段】 塗膜の採取用具10は、透明でかつ塗膜剥離剤に溶解しない、単層あるいは複層のプラスチックフィルムからなる袋状体11で構成する。前記袋状体11の一端に、塗装面に正対させるための開口部12を備える。前記開口部12の反対側に位置する前記袋状体11の他端側に、手袋の代用となるように手の幅程度の2つの分離部13a,13bを備える。前記袋状体11において前記開口部12の近くに、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を出し入れするための少なくとも一つの開閉部15を備えている。これにより、所望の塗装面50から分析用途の塗膜を安全で簡易的に採取することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明でかつ塗膜剥離剤に溶解しない、単層あるいは複層のプラスチックフィルムからなる袋状体で構成する塗膜の採取用具であって、
前記袋状体の一端に、塗装面に正対させるための開口部を備え、
前記開口部の反対側に位置する前記袋状体の他端側に、手袋の代用となるように手の幅程度の2つの分離部を備え、
前記袋状体において前記開口部の近くに、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を出し入れするための少なくとも一つの開閉部を備えていることを特徴とする塗膜の採取用具。
【請求項2】
前記の開閉部は、前記袋状体に開通して外側に突出するように形成した筒状をなす筒状開通部に設けていることを特徴とする請求項1に記載の塗膜の採取用具。
【請求項3】
前記の開閉部は、採取した塗膜を回収するために、前記袋状体に開通して外側に突出するように形成した筒状をなす塗膜回収部に設け、
前記の塗膜回収部は、前記袋状体の開口部を塗装面に固定した状態で、前記開口部の下方側に位置するように形成していることを特徴とする請求項1に記載の塗膜の採取用具。
【請求項4】
前記の開閉部は、少なくとも一つのファスナーで開閉自在に形成していることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の塗膜の採取用具。
【請求項5】
前記の2つの各分離部は、保護手袋の代用となるように腕を挿入可能な直径を有する筒状部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の塗膜の採取用具。
【請求項6】
前記の各分離部は、前記筒状部の先端に保護手袋を備えていることを特徴とする請求項5に記載の塗膜の採取用具。
【請求項7】
請求項1に記載の塗膜の採取用具を用いて塗装面の塗膜を採取する塗膜の採取方法であって、
塗膜採取作業に必要な所定面積を確保するように前記袋状体の開口部を開口した状態で塗装面に押し当て、前記開口部を前記塗装面に接着テープで固定する開口部取付け工程と、
2つの前記分離部を手袋として用いて、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を前記開閉部から出し入れ、塗膜掻き落し作業あるいは塗膜剥離作業を実施して塗膜を採取する塗膜採取工程と、
採取した塗膜を、2つの前記分離部のどちらか一方の端部に集め、その端部を外側から接着テープで封印し、前記接着テープをほぼ中央から切断して前記塗膜を回収する塗膜回収工程と、
を有することを特徴とする塗膜の採取方法。
【請求項8】
請求項3に記載の塗膜の採取用具を用いて塗装面の塗膜を採取する塗膜の採取方法であって、
塗膜採取作業に必要な所定面積を確保するように前記袋状体の開口部を開口した状態で塗装面に押し当て、前記開口部を前記塗装面に接着テープで固定する開口部取付け工程と、
2つの前記分離部を手袋として用いて、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を前記開閉部から出し入れ、塗膜掻き落し作業あるいは塗膜剥離作業を実施して塗膜を採取する塗膜採取工程と、
採取した塗膜を、前記袋状体に開通して外側に突出するように形成した袋状をなす塗膜回収部に集め、その塗膜回収部の開閉部の外側に被せた塗膜回収用袋へ堆積し、前記塗膜回収用袋の端部を外側から接着テープで封印し、前記接着テープをほぼ中央から切断して前記塗膜を回収する塗膜回収工程と、
を有することを特徴とする塗膜の採取方法。
【請求項9】
前記の塗膜採取工程は、2つの前記各分離部に、保護手袋の代用となるように腕を挿入可能な直径を有する筒状部を備え、前記筒状部を手袋として用いて、前記開閉部から入れた塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤にて塗膜掻き落し作業あるいは塗膜剥離作業を実施して塗膜を採取することを特徴とする請求項7又は8に記載の塗膜の採取方法。
【請求項10】
前記の開口部取付け工程は、前記袋状体の開口部の全周の長さに合わせた両面接着テープを塗装面に貼り付けた後に、前記両面接着テープの表側の接着面に、前記袋状体の開口部の端縁部を貼り付け、この開口部の端縁部と塗装面に跨るように接着テープを重ねて貼り付けることを特徴とする請求項7又は8に記載の塗膜の採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼構造物の維持管理のために実施する防食塗装や老朽化対策に寄与する塗膜の採取用具および塗膜の採取方法を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼構造物や建築物鉄部の防食機能を付与するために、鉛防食顔料を主体とした鉛丹ペイントや鉛系さび止めペイントが多く使用されてきた。しかし、鉛顔料のさび止め下塗塗料としては、2008年のJIS改訂によって、JISK5622(鉛丹ペイント)、JISK5624(塩基性クロム酸塩さび止めペイント)、JIS5627(ジンククロメートさび止めペイント)及びJIS5627(鉛丹ジンククロメートさび止めペイント)が廃止された。
【0003】
それでも、JIS規格としては、JISK5623(亜酸化鉛さび止めペイント)とJISK5625(シアナミド鉛さび止めペイント)、JISK5629(鉛酸カルシュウムさび止めペイント)のみが鉄鋼構造物の防食用下塗り塗料として使用されていた。しかし、2014年4月には、これらもJIS規格から削除された。
以上のように、鉛、クロムの顔料を主体とした防食用下塗り塗料と中・上塗り塗料は、すべて廃止されている。
【0004】
これまで使用された防食塗装系のうち、製造年が昭和42年(1967年)から昭和47年(1972年)までに製造された塩化ゴム系塗料は、有害物質として認定されているPCB(ポリ塩化ビフェニル)が添加された。この塩化ゴム系塗料を使用した防食塗装系は、道路橋をはじめ、多くの鋼構造物に使用されてきた経緯がある。
【0005】
現在では、PCBを含有している塩化ゴム系塗料は、関係法令によって製造、使用、輸入が禁止されている。また、国内では、ストックホルム条約(POPs条約)に準拠し、平成37年までに使用を全廃し、平成40年までに適正な処理を実施することが求められている。
【0006】
PCBや鉛、クロム等を含有する塗装膜(以下、「塗膜」という)の劣化は、経時変化や構造物の老朽化によって、塗膜ふくれやはがれ、および塗膜われなどの塗膜変状を発生する。また、鋼材表面に発生するさびによって、有害物質を含む劣化塗膜が脱落するので、周辺環境への保全対策を必要としている。
【0007】
塗膜劣化時の対処方法としては、その多くが局部的な塗膜の除去による塗替え塗装に留まっている。そこで、今後の鋼構造物の老朽対策方法としては、長期間の耐用年数が期待される長期防食塗装へ移行することである。その長期の防食塗替え塗装の対応方法としては、長期防食性の下塗り塗料および耐候性の高い上塗り塗料などの塗装系を適用することと、有害物質を含む既存の塗膜を完全に除去して清浄な鋼材素地面を調整することが、必要条件とされている。
【0008】
近年では、道路構造物の老朽化が進み、構造部位の補修、補強、点検などの頻度が高くなっている。また、部分的または局部的な老朽化対策による改修工事では、長期的老朽化対策として塗膜を除去し、長期防食塗装系への変更や改修による補修工事の必要性が増加している。
【0009】
このような状況においては、PCBや鉛、クロムを含有する既存の塗膜が存在する状態で、塗替え塗装のための下地処理や、道路を含む鋼構造物の補修維持工事等を実施することになる。この既存の塗膜に係る改修・補修作業を行うには、周辺作業環境に排出される廃塗膜中に含まれる有害物質の有無の確認や、廃塗膜の適正な保管及び処分が必要となる。さらに、安全なインフラ整備策定のための現況の把握、特に既存の塗膜の有害物質の含有の有無や濃度および種別の把握が必要である。そのために、既存の塗膜に有害物質が含まれているか否かの判定を行うための分析試験が必須となっている。
【0010】
塗膜中に含まれる有害物質の有無や種別及び含有濃度などによって、塗替え塗装や維持改修工事作業の安全対策の方法や、排出される汚染廃棄物の保管や処分方法は異なってくる。もし、有害物質の内容が把握されないで、これらの作業が実施されることになれば、その時に発生する塗膜片や塗膜ダストは、それを吸引することによる健康障害や、その拡散による周辺への環境汚染の発生が懸念される。また、排出される有害物質を含む塗膜は、産業廃棄物の関係法令に準拠して適切に処理されなければ、生活環境圏の汚染につながることも危惧されている。
【0011】
そのため、既存の鋼構造物の老朽化対策や維持管理には、構造物の履歴や、鋼材を保護している塗装系履歴を確認するとともに、既存の塗膜から採取した検体を化学分析し、鉛やクロム、PCBなどの有害物質の濃度や種別を評価判定することが義務づけられるようになってきた。
【0012】
従来では、種々の塗装塗膜の除去装置及び除去方法がある。これを利用して分析試験用の塗膜を採取することが考えられる。例えば、特許文献1では、構造物に塗装された塗装塗膜を加熱して炭化させる加熱装置と、前記加熱装置によって炭化させた塗膜を掻き取って除去する掻取り装置を備えている。これにより、炭化させた塗装塗膜は構造物から剥離させ易くなるので、容易に掻き取って除去することができる。作業環境の向上を図り、作業効率を向上できる効果があるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−334799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、塗膜を分析する場合は、塗膜に有害物質が含有していることを想定して、採取した塗膜の飛散や拡散および吸引による事故防止のための安全対策が必要となる。
従来の塗膜の採取方法では、有害塗膜が仮設備へ付着する汚れや拡散を防止するための飛散対策工の設置など、大掛かりで安全な仮設備が必要となる。しかも、その仮設備に付着した有害塗膜屑による二次汚染の産業廃棄物の発生量も多いので、そのための処理時間と費用も多大となっている。
【0015】
すなわち、従来の塗膜の採取方法および回収方法には、次のような解決すべき課題がある。
1.塗膜の採取作業中に発生する既存の塗膜片やダスト状塗膜の拡散や飛散による周辺環境の汚染を防止するには、仮設備を設けるなどの、有害物質を含有する塗膜片の飛散対策が必要である。
2. 塗膜の採取作業は、天候に左右されやすく、採取した塗膜が風雨の影響によって拡散や流失の恐れもあり、塗膜の採取作業の工程に安定性がない。
3. 仮設備と飛散対策が必要な作業環境では、分析用途の塗膜を採取する塗装面は広範囲となり、採取した塗膜の回収作業時に不純物が混入しやすく、不適品質の分析試料になりやすい。
4.有害物質が含まれる塗膜を採取する場合、作業者は安全保護衣や有害物質に適合した防塵マスクや保護手袋、および保護メガネ等の安全保護具を装着する必要がある。また、狭隘で封鎖作業場内では、換気等の機材を設置するなどの、吸引による健康障害を防止する対策が必要となる。
5.仮設備を設けるなどの、塗膜飛散対策を実施するには、所定の手続きが必要となる。しかも、仮設備の設置や撤去などを含む作業日数が多くなり、飛散対策の範囲も広く、有害物質を含む塗膜の付着や染込みによる二次汚染廃棄物の発生も多くなる。
6. 有害物質が含まれる塗膜を採取して取り扱うには、塗装系履歴に対する知識と、安全保護具や工具などを取扱う知識や実務経験などを有する専門的技能工が必要とされる。
【0016】
特許文献1の塗装塗膜の除去装置及び除去方法は、従来例として示したが、上記の課題を解決するものではない。また、その課題を解決する従来公報を他に見いだすことができなかった。
【0017】
したがって、分析試験用の塗膜を採取する際に、塗膜を安全に採取し、塗膜を効率良く回収し、不純物が混入せず、しかも作業中に発生する二次的な汚染廃棄物を極力少なくできる塗膜の採取用具の開発と、これを用いた塗膜の採取方法の確立と普及が望まれている。
【0018】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、既存の塗膜に有害物質が含まれているか否かの判定を行うための分析試験を実施するために、既存の塗膜を安全で簡易的に採取する塗膜の採取用具および塗膜の採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の発明は、透明でかつ塗膜剥離剤に溶解しない、単層あるいは複層のプラスチックフィルムからなる袋状体で構成する塗膜の採取用具であって、
前記袋状体の一端に、塗装面に正対させるための開口部を備え、前記開口部の反対側に位置する前記袋状体の他端側に、手袋の代用となるように手の幅程度の2つの分離部を備え、前記袋状体において前記開口部の近くに、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を出し入れするための少なくとも一つの開閉部を備えていることを特徴としている。
【0020】
請求項2記載の発明は、前記の開閉部は、前記袋状体に開通して外側に突出するように形成した筒状をなす筒状開通部に設けていることを特徴としている。
【0021】
請求項3記載の発明は、前記の開閉部は、採取した塗膜を回収するために、前記袋状体に開通して外側に突出するように形成した筒状をなす塗膜回収部に設け、前記の塗膜回収部は、前記袋状体の開口部を塗装面に固定した状態で、前記開口部の下方側に位置するように形成していることを特徴としている。
【0022】
請求項4記載の発明は、前記の開閉部は、少なくとも一つのファスナーで開閉自在に形成していることを特徴としている。
【0023】
請求項5記載の発明は、前記の2つの各分離部は、保護手袋の代用となるように腕を挿入可能な直径を有する筒状部を備えていることを特徴としている。
【0024】
請求項6記載の発明は、前記の各分離部は、前記筒状部の先端に保護手袋を備えていることを特徴としている。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項1に記載の塗膜の採取用具を用いて塗装面の塗膜を採取する塗膜の採取方法であって、
塗膜採取作業に必要な所定面積を確保するように前記袋状体の開口部を開口した状態で塗装面に押し当て、前記開口部を前記塗装面に接着テープで固定する開口部取付け工程と、 2つの前記分離部を手袋として用いて、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を前記開閉部から出し入れ、塗膜掻き落し作業あるいは塗膜剥離作業を実施して塗膜を採取する塗膜採取工程と、採取した塗膜を、2つの前記分離部のどちらか一方の端部に集め、その端部を外側から接着テープで封印し、前記接着テープをほぼ中央から切断して前記塗膜を回収する塗膜回収工程と、を有することを特徴としている。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項3に記載の塗膜の採取用具を用いて塗装面の塗膜を採取する塗膜の採取方法であって、
塗膜採取作業に必要な所定面積を確保するように前記袋状体の開口部を開口した状態で塗装面に押し当て、前記開口部を前記塗装面に接着テープで固定する開口部取付け工程と、 2つの前記分離部を手袋として用いて、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を前記開閉部から出し入れ、塗膜掻き落し作業あるいは塗膜剥離作業を実施して塗膜を採取する塗膜採取工程と、採取した塗膜を、前記袋状体に開通して外側に突出するように形成した袋状をなす塗膜回収部に集め、その塗膜回収部の開閉部の外側に被せた塗膜回収用袋へ堆積し、前記塗膜回収用袋の端部を外側から接着テープで封印し、前記接着テープをほぼ中央から切断して前記塗膜を回収する塗膜回収工程と、を有することを特徴としている。
【0027】
請求項9記載の発明は、前記の塗膜採取工程は、2つの前記各分離部に、保護手袋の代用となるように腕を挿入可能な直径を有する筒状部を備え、前記筒状部を手袋として用いて、前記開閉部から入れた塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤にて塗膜掻き落し作業あるいは塗膜剥離作業を実施して塗膜を採取することを特徴としている。
【0028】
請求項10記載の発明は、前記の開口部取付け工程は、前記袋状体の開口部の全周の長さに合わせた両面接着テープを塗装面に貼り付けた後に、前記両面接着テープの表側の接着面に、前記袋状体の開口部の端縁部を貼り付け、この開口部の端縁部と塗装面に跨るように接着テープを重ねて貼り付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、塗膜の採取用具を用いることで、所望の塗装面から分析用途の塗膜を安全で簡易的に採取することができる。
また、塗膜の採取用具における袋状体が透明のプラスチックフィルムであるので、塗膜掻き落し作業を目視できる。そのために、よりいっそう安全に塗膜掻き落し作業することができる。さらに、採取する塗膜の量を確認でき、採取する時の塗装面の膜層から塗装系履歴を確認することができる。
【0030】
プラスチックフィルムは、作業中の視認性を確保するために単層であることが望ましい。しかし、プラスチックフィルムが破損すると、採取した塗膜の飛散や拡散の恐れがあるので、フィルム強度を上げるために、視認性を確保できる複層のプラスチックフィルムであってもよい。
【0031】
袋状体が透明のプラスチックフィルムであるので、袋状体の外側から作業状況を記録撮影することができる。また、前記の記録撮影は開閉部を利用することもできる。例えば、開放した開閉部から作業状況を記録撮影する。
【0032】
塗膜の採取作業で使用する塗膜剥離剤としては、塩素系剥離剤、溶剤・エマルジョン系剥離剤、水性系剥離剤、高級アルコール系剥離剤など、多種類の剥離剤がある。袋状体のプラスチックフィルムは、前述の多種類の塗膜剥離剤のいずれかを用いる場合であっても、溶解しない素材のポリエチレン樹脂及びその類似樹脂で構成することができる。
【0033】
開閉部は、塗膜を採取するための工具や塗膜剥離剤の出し入れや、採取した塗膜の回収を容易に行うことができる。これにより、塗膜剥離作業中に、塗装面に取付けた開口部を外すことなく、袋状体の内部を完全な密閉状態に維持することができるので、採取した塗膜の飛散や拡散を防止することができる。
【0034】
開閉部は、袋状体に開通して外側に突出するように形成した筒状をなす筒状開通部に設けることで、袋状体の内部を完全な密閉状態に維持する点で効果的である。
【0035】
開閉部は、ファスナーで開閉自在に形成したので、作業時に強風やその他の外力によって意図せずに開閉部が開放されることを防止できる。
【0036】
開閉部におけるファスナーの取付け位置や取付け形状を工夫することで、開閉部は塗膜採取時の作業安全性が向上し、塗膜の回収効率化を図ることができる。例えば、前述の筒状開通部において当該筒状開通部内を開閉する複数のファスナーを、袋状体から外側方向に対してほぼ垂直方向に並列して設けた場合、筒状開通部を確実に閉めることができるので、作業の安全性の向上を図ることができる。
【0037】
開閉部は、袋状体に開通して外側に突出する袋状をなす塗膜回収部を形成した場合、採取した塗膜を塗膜回収部に容易に回収することができる。
また、塗膜回収部は、袋状体の開口部を塗装面に固定した状態で、袋状体の下側に位置するように形成することで、採取した塗膜を塗膜回収部によりいっそう容易に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る塗膜の採取用具を示すほぼ平面図である。
【
図2】
図1の塗膜の採取用具を塗装面に取付けた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2の状態の塗膜の採取用具の上側に形成した開閉部を示すもので、(a)は断面図で、(b)は斜視図である。
【
図4】
図1の塗膜の採取用具の袋状体の開口部を塗装面に固定する工程を示す斜視図である。
【
図6】
図1の塗膜の採取用具を用いて採取した塗膜を回収する状態を示す斜視図である。
【
図7】採取した塗膜を回収する状態を示す部分的な斜視図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る塗膜の採取用具を示すほぼ平面図である。
【
図9】
図8の塗膜の採取用具を塗装面に取付けた状態を示す斜視図である。
【
図10】
図9の状態の塗膜の採取用具の下側に形成した開閉部の断面図である。
【
図11】
図9の状態の塗膜の採取用具にて塗膜を回収する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の第一の実施形態に係る塗膜の採取用具について図面を参照して説明する。
図1は、塗膜の採取用具のほぼ平面を示す。
図2は、塗膜の採取用具を塗装面に取付けた状態を示す。
【0040】
第一の実施形態の塗膜の採取用具10は、透明でかつ塗膜剥離剤に溶解しない、単層あるいは複層のプラスチックフィルムからなる袋状体11で構成する。
塗膜剥離剤は、塗膜の採取作業で使用するもので、例えば、塩素系剥離剤、溶剤・エマルジョン系剥離剤、水性系剥離剤、高級アルコール系剥離剤など、多種類の剥離剤がある。袋状体11のプラスチックフィルムは、前述の多種類の塗膜剥離剤のいずれかを用いる場合であっても、溶解しない素材のポリエチレン樹脂及びその類似樹脂で構成することができる。
【0041】
また、袋状体11のプラスチックフィルムが透明であるのは、塗膜掻き落し作業を目視できるようにするためである。その視認性を確保するには、単層のプラスチックフィルムであることが望ましい。しかし、プラスチックフィルムが破損すると、採取した塗膜の飛散や拡散の恐れがあるので、フィルム強度を上げるために、視認性を確保できる複層のプラスチックフィルムであってもよい。
【0042】
袋状体11は、
図1において上側の一端に開口部12を備えている。開口部12は、
図2に示す塗装面50に正対させるためのもので、基本的には塗膜採取作業に必要な所定面積を確保する大きさを有している。開口部12は、開口した状態で塗装面50に押し当ててから、塗装面50に接着テープなどの固定用具40で固定するものである。
【0043】
また、袋状体11は、開口部12の反対側に位置する他端側に、
図1に示すように、手袋の代用となるように手の幅程度の2つの分離部13a,13bを備えている。より詳しくは、各分離部13a,13bは、保護手袋の代用となるように腕を挿入可能な直径を有する筒状部14,14を備えている。
【0044】
2つの分離部13a,13bとなる筒状部14,14は、
図2に示すように、筒状部14の先端側を筒内へ折り返して袋状体11の内部へ突き出るように形成する。これらの各筒状部14,14へ左右の腕を挿入して袋状体11の中で塗膜掻き落とし作業を実施することになる。
【0045】
袋状体11は、開口部12の近くに、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を出し入れするための少なくとも一つの開閉部15を備えている。開閉部15は、基本的にはプラスチックフィルムに開口を形成し、この開口を開閉するための蓋部材を形成したものであるが、形状や大きさ、袋状体11における配置位置などに関して、特に限定されない。
例えば、開閉部15は、袋状体11に形成した開口と、この開口を塞ぐためのフィルム片(蓋部材)とすることができる。あるいは、
図2及び
図3(a),(b)に示すように、袋状体11に形成した開口15aの外側に突出する筒状をなす筒状開通部16を形成し、筒状開通部16に開閉部15を設けることができる。なお、筒状開通部16は開口15aを介して袋状体11の内部に開通している。
【0046】
開閉部15は、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を出し入れするためには、
図2に示すように、袋状体11の開口部12を塗装面50に固定した状態で、その袋状体11の上側に位置して形成することが望ましい。
【0047】
開閉部15は、少なくとも一つのファスナー15bで開閉自在に形成することができる。例えば、開閉部15を前述の筒状開通部16に形成する場合、
図3(a),(b)に示すように、筒状開通部16の中に一つのファスナー15bを形成することができる。あるいは、筒状開通部16に複数のファスナー15b,15b・・・を形成することができる。
【0048】
なお、ファスナー15bは、
図3(a),(b)に示すように、着脱可能に嵌合する雄部と雌部で構成することができる。しかし、ファスナー15bの構造や形状などの形態は、特に限定されず、ジッパーや面ファスナーなどの他の形態であってもよい。
【0049】
次に、本発明の第一の実施形態に係る塗膜の採取用具10を用いて、塗装面50の塗膜を採取する塗膜の採取方法について説明する。
塗膜の採取方法は、基本的に、開口部取付け工程と、塗膜採取工程と、塗膜回収工程を有している。
【0050】
開口部取付け工程は、
図2に示すように、袋状体11の開口部12を、塗膜採取作業に必要な所定面積を確保するように開口した状態で塗装面50に押し当て、塗装面50と開口部12を接着テープなどの固定用具40で固定する。
【0051】
より詳しく説明すると、
図4に示すように、まず、両面接着テープ41aを袋状体11の開口部12の大きさに合わせて塗装面50に貼り付ける。次に、両面接着テープ41aの表側の保護紙を剥離した後に、袋状体11の開口部12の端縁部12aを両面接着テープ41aの表側の接着剤に貼り付ける。袋状体11の開口部12は、
図5に示すように、塗膜採取作業に必要な所定面積を確保するように塗装面50に固定される。
その後、
図5に示すように、両面接着テープ41aに貼り付けられた開口部12の端縁部12aと、塗装面50に跨るように、片面接着テープ41bを重ねて貼り付けて、開口部12の端縁部12aと塗装面50に隙間が生じないように二重に固定する。
【0052】
上記のように、袋状体11の開口部12を両面接着テープ41aを介して塗装面50に貼り付ける方法は、必要な所定面積のエリヤが、
図4に示すように四角形状の場合でも、三角形状やその他の不定型な形状の場合でも、袋状体11の開口部12を容易に貼り付けることができる。
【0053】
塗膜採取工程は、塗膜採取作業者が手に手袋をはめてから、2つの分離部13a,13bに腕を挿入して袋状体11の内部へ手を出す。塗膜掻き落し用工具や塗膜剥離剤を開閉部15から出し入れすることで、塗膜掻き落し作業や塗膜剥離作業を実施する。塗膜51は、塗装面50から掻き落とされて落下して袋状体11の内部にたまることによって採取される。なお、塗膜掻き落し用工具としては、超硬刃ケレン棒あるいはその他の工具を使用することができる。
【0054】
塗膜回収工程は、袋状体11の内部に採取した塗膜51を、
図6に示すように、2つの分離部13a,13bのどちらか一方の端部に集める。前記の端部を外側から接着テープ41で封印する。その後、接着テープ41をほぼ中央から切断して塗膜51を回収する。
なお、塗膜51を回収する際に、
図7に示すように、回収する側の分離部13a(又は13b)の端部に塗膜回収袋30を取り付けてから、前記の端部に集めた塗膜51を塗膜回収袋30へ堆積させることができる。この塗膜回収袋30の端部を外側から接着テープ31で封印し、接着テープ31をほぼ中央から切断して塗膜51を回収する。
したがって、塗膜51の有害成分の有無を調べるために、必要な塗膜量を、安全でかつ不純物を混入することなく採取できる。
【0055】
以上のことから、第一の実施形態の塗膜の採取用具10を用いることで、所望の塗装面50から分析用途の塗膜51を安全で簡易的に採取することができる。
【0056】
また、塗膜の採取用具10における袋状体11が透明のプラスチックフィルムであるので、塗膜掻き落し作業を目視できる。そのため、よりいっそう安全に塗膜掻き落し作業することができる。さらに、採取する塗膜の量を確認でき、採取する時の塗装面50の膜層から塗装系履歴を確認することができる。
また、袋状体11が透明のプラスチックフィルムであるので、袋状体11の外側から作業状況を記録撮影することができる。なお、前記の記録撮影は開閉部15を利用することもできる。例えば、開放した開閉部15から作業状況を記録撮影する。
【0057】
開閉部15は、塗膜を採取するための工具や塗膜剥離剤の出し入れや、採取した塗膜51の回収を容易に行うことができる。これにより、塗膜剥離作業中に、塗装面50に取付けた開口部12を外すことなく、袋状体11の内部を完全な密閉状態に維持することができるので、採取した塗膜51の飛散や拡散を防止することができる。
また、開閉部15は、袋状体11に開通して外側に突出するように形成した筒状をなす筒状開通部16に設けることで、袋状体11の内部を完全な密閉状態に維持する点で効果的である。
【0058】
また、開閉部15は、ファスナー15bで開閉自在に形成することで、作業時に強風やその他の外力によって意図せずに開放されないように防止できる。
【0059】
さらに、開閉部15におけるファスナー15bの取付け位置や取付け形状を工夫することで、塗膜採取時の作業安全性を向上し、塗膜の回収効率化を図ることができる。例えば、前述の筒状開通部16において、複数のファスナー15b,15b・・・を、袋状体11から外側方向に対してほぼ垂直方向に並列して設けた場合、筒状開通部16を確実に閉めることができるので、作業の安全性の向上を図ることができる。
【0060】
次に、本発明の第二の実施形態に係る塗膜の採取用具20について図面を参照して説明する。なお、第一の実施形態の塗膜の採取用具10と同様の部材は同じ符号を付し、同様の部材に関する詳しい説明は省略する。
図8は、塗膜の採取用具20のほぼ平面を示す。
図9は、塗膜の採取用具20を塗装面50に取付けた状態を示す。
【0061】
第二の実施形態の塗膜の採取用具20は、第一の実施形態と同様に、透明でかつ塗膜剥離剤に溶解しない、単層あるいは複層のプラスチックフィルムからなる袋状体11で構成する。
【0062】
袋状体11は、
図8において上側の一端に開口部12を備えている。この開口部12は、第一の実施形態と同様である。
また、袋状体11は、開口部12の反対側に位置する他端側に、
図8に示すように、手袋の代用となるように手の幅程度の2つの分離部13a,13bを備えている。より詳しくは、各分離部13a,13bは、保護手袋の代用となるように腕を挿入可能な直径を有する筒状部14,14を備えている。第一の実施形態と異なる点は、各筒状部14,14の先端に、プラスチックフィルムからなる保護手袋21a,21bを取り付けていることである。左右の保護手袋21a,21bの一方は左手用であり、他方は右手用である。
【0063】
図8の塗膜の採取用具20は、開口部12を袋状体11の外側へ折り返し、
図8において下方に向けて折り返してゆくと、2つの分離部13a,13bとなる筒状部14,14は、
図9に示すように、袋状体11の内部へ突き出るように形成する。これらの各筒状部14,14へ左右の腕を挿入して袋状体11の中で塗膜掻き落とし作業を実施することになる。
【0064】
袋状体11は、開口部12の近くに、塗膜掻き落し用工具あるいは塗膜剥離剤を出し入れするための少なくとも一つの開閉部15を備えている。開閉部15は、前述の第一の実施形態と同様である。
図8の塗膜の採取用具20では、開閉部15が、
図9に示すように、袋状体11の開口部12を塗装面50に固定した状態で、その袋状体11の上側に位置して形成している。この開閉部15は、
図1および
図3(a),(b)と同様であり、プラスチックフィルムに単なる開口15aを形成し、この開口15aの外側に突出する筒状をなす筒状開通部16を形成し、筒状開通部16に一つのファスナー15bを設けている。なお、開閉部15におけるファスナー15bについても前述の第一の実施形態と同様である。
【0065】
第二の実施形態の開閉部15において第一の実施形態と異なる点は、開閉部15が採取した塗膜51の回収に用いられることである。
開閉部15の一例としては、
図9及び
図10に示すように、採取した塗膜51を回収するために袋状体11に開通して外側に突出する袋状をなす塗膜回収部22を形成し、かつ塗膜回収部22の突出した端部に開閉部15を設けている。
塗膜回収部22は、袋状体11の開口部12を塗装面50に固定した状態で、開口部12の下方側に位置するように形成することが望ましい。また、開閉部15としては、塗膜回収部22の下部に一つのファスナー15bを設けている。なお、開閉部15におけるファスナー15bについては、
図9および
図10に示すものに限定されず、前述の第一の実施形態と同様である。
【0066】
これによって、塗膜剥離作業中に、塗装面50に取付けた開口部12を外すことなく、塗膜の回収を容易に行うことができる。袋状体11に開通して外側に突出する袋状をなす塗膜回収部22を形成した場合は、採取した塗膜51を塗膜回収部22へ集めて、塗膜回収部22に形成した開閉部15から容易に回収することができる。
また、塗膜回収部22は、袋状体11の開口部12を塗装面50に固定した状態で、袋状体11の下側に位置するように形成することで、採取した塗膜51を塗膜回収部22によりいっそう容易に回収することができる。
【0067】
なお、上記の塗膜回収部22を形成した場合、塗膜掻き落し用工具や塗膜剥離剤は、塗膜回収部22に設けた開閉部15を用いて袋状体11の内部へ出し入れすることも兼用できる。したがって、前述の
図9で示した袋状体11の上側に位置する開閉部15は、必ずしも設けなくてもよい。
【0068】
次に、本発明の第二の実施形態に係る塗膜の採取用具20を用いて、塗装面50の塗膜を採取する塗膜の採取方法について説明する。なお、第一の実施形態の塗膜の採取用具10を用いた塗膜の採取方法と同様の工程は、詳しい説明を省略する。
第二の実施形態の塗膜の採取方法は、基本的に、開口部取付け工程と、塗膜採取工程と、塗膜回収工程を有している。
【0069】
開口部取付け工程は、第一の実施形態の塗膜の採取用具10を用いた塗膜の採取方法と同様である。つまり、
図9に示すように、袋状体11の開口部12を、塗膜採取作業に必要な所定面積を確保するように開口した状態で塗装面50に押し当て、塗装面50と開口部12を接着テープなどの固定用具40で固定する。なお、詳しくは、
図4及び
図5にて説明した手順と同様である。
【0070】
塗膜採取工程は、塗膜採取作業者が、2つの分離部13a,13bである筒状部14,14に左右の腕を挿入して左右の保護手袋21a,21bを左右の手に装着し、袋状体11の内部へ左右の手を出す。作業用手袋(軍手など)を上側の開閉部15から袋状体11の内部へ入れる。その後、保護手袋21a,21bを装着した左右の手に前記の作業用手袋(軍手)を装着する。
【0071】
塗膜掻き落し用工具や塗膜剥離剤を開閉部15から袋状体11の内部へ出し入れすることで、塗膜掻き落し作業や塗膜剥離作業を実施する。塗膜51は、塗装面50から掻き落とされて落下して袋状体11の内部にたまることによって採取される。
【0072】
塗膜回収工程は、袋状体11の内部に採取した塗膜51は、
図11に示すように、袋状体11の下側に開通して下方外側に突出するように形成した袋状をなす塗膜回収部22に集められる。さらに、塗膜回収部22の開閉部15の外側に被せた塗膜回収袋30へ堆積させる。
図7に示すように、塗膜回収袋30の端部を外側から接着テープ31で封印し、接着テープ31をほぼ中央から切断して塗膜51を回収する。
【0073】
以上のことから、塗膜剥離作業中に、塗装面50に取付けた開口部12を外すことなく、塗膜51の回収を容易に行うことができる。開閉部15は、袋状体11に開通して外側に突出する袋状をなす塗膜回収部22に形成したので、採取した塗膜51を塗膜回収部22に集めて、塗膜回収部22の開閉部15からに容易に回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、土木建築業およびその関連事業、あるいは鋼構造物の塗装業関連、塗装研究所、有害廃棄物の保管および運搬に関わる他の業務などにおいて、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0075】
10 塗膜の採取用具(第一の実施形態の)
11 袋状体 12 開口部
12a 端縁部 13a,13b 分離部
14 筒状部 15 開閉部
15a 開口 15b ファスナー
16 筒状開通部
20 塗膜の採取用具(第二の実施形態の)
21a,21b 保護手袋 22 塗膜回収部
30 塗膜回収袋 31 接着テープ
40 固定用具 41 接着テープ
41a 両面接着テープ 41b 片面接着テープ
50 塗装面 51 塗膜