【課題】使用前における塩素含有化合物の分解を防止することができるとともに、水に対する徐溶性を有し、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度を適切にコントロールでき、成形性、保存安定性に優れる活性塩素剤を提供すること。
【解決手段】(A)塩素含有化合物、(B)賦形剤、(C)滑剤、及び、(D)結合助剤、を含有し、所定形状に成形された固形体又は粒状体からなり、水に溶かすことで自動食器洗浄機内に活性塩素を導入するために用いられる活性塩素剤。
前記塩素含有化合物(A)が、ジクロロイソシアヌル酸塩、その水和物、トリクロロイソシアヌル酸、及び、次亜塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の活性塩素剤。
自動食器洗浄機内に水不溶性のケースを取り付け、前記活性塩素剤を該ケース内に収容し、該ケース内に前記洗浄剤組成物を溶かした水溶液を噴射すること、及び/又は、該水溶液を噴射して該ケース内に流れ込ませることで収容された活性塩素剤を溶かして混合する請求項13に記載の被洗浄物の洗浄方法。
内容物の供給口部を有する水不溶性の容器を、前記供給口部を下向きに設置し、前記供給口部へ水が噴射されて内容物を溶かしながら供給する方式の自動食器洗浄機用のカートリッジ洗浄剤であって、
前記容器は、容器本体と中蓋体と外蓋体とからなり、
前記内容物は、請求項1〜12のいずれかに記載の活性塩素剤と、所定形状に成形された固形体、粒状体又は粉状体からなり、界面活性剤を含有する洗浄剤組成物とからなり、
前記容器本体には、前記洗浄剤組成物が収容されており、
前記中蓋体には、前記活性塩素剤が収容されており、前記容器本体と前記中蓋体との間には、前記活性塩素剤又は前記洗浄剤組成物の移動を防止する仕切りが設けられていることを特徴とするカートリッジ洗浄剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1又は特許文献2に記載の実施例のように、塩素系漂白剤を予め配合した洗浄剤を使用する場合、供給水の浸透により、塩素含有化合物とその他の洗浄剤成分とが使用前に相互反応してしまい、活性塩素や洗浄剤成分の一部が損なわれるため、これらを無駄にしないための工夫の余地があった。
【0009】
また自動食器洗浄機内の有効塩素濃度は、低すぎるとバイオフィルムを除去できず、高すぎると作業環境の安全性が低下するので、適切な濃度範囲に維持する必要がある。適切な有効塩素濃度が長く続くほどバイオフィルムを除去できる。すなわち、自動食器洗浄機用洗浄剤には、水と接触しても即時に全体が溶解することなく、少しずつ活性塩素を放出することが求められていた。よって、この用途に用いる剤だが、水に溶かした際に適度な徐溶性を有する必要がある。この観点から、上記特許文献3に記載の発泡性洗浄剤(排水口洗浄剤)のように、剤としての速溶性に過ぎる場合は、自動食器洗浄機内の洗浄には適さない。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、使用前における塩素含有化合物の分解を防止することができるとともに、水に対する徐溶性を有し、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度を適切にコントロールでき、成形性、保存安定性に優れる活性塩素剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を行った結果、塩素含有化合物を配合し、かつ賦形剤と、滑剤と、結合助剤を配合した活性塩素剤とすることで、水に対する徐溶性を有し、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度を適切にコントロールできる、成形性、保存安定性に優れる組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の活性塩素剤は、
(A)塩素含有化合物、
(B)賦形剤、
(C)滑剤、及び、
(D)結合助剤、を含有し、
所定形状に成形された固形体又は粒状体からなり、
水に溶かすことで自動食器洗浄機内に活性塩素を導入するために用いられることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明の活性塩素剤において、固形体とは、直径5mm以上の球状又はそれと同等の体積のものを80質量%以上含むものをいう。また、粒状体とは、上記した固形体の条件に該当せず、直径0.1mm以上の球状又はそれと同等の体積のものを80質量%以上含むものをいう。
【0013】
本発明の活性塩素剤は、水に溶かすことで自動食器洗浄機内に活性塩素を導入するために用いられるものであり、このように洗浄剤成分とは分離して、使用時に洗浄剤成分と混合することにより、使用前に塩素含有化合物と洗浄剤成分が相互に反応して活性塩素や洗浄剤成分の一部が損なわれてしまうことを防止できる。
また本発明の活性塩素剤は、塩素含有化合物とともに、賦形剤と、滑剤と、結合助剤を含有する。これにより、本発明の活性塩素剤は水に対する徐溶性を有するものとなり、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度を適切にコントロールすることができ、洗浄力が向上する。また、本発明の活性塩素剤は、成形性、保存安定性にも優れる。
【0014】
水に対する徐溶性とは、活性塩素剤5gを40℃の水に15分浸漬後、重量を測定し、減少重量が1g以上、2.5g未満であることをいう。該減少重量は、1.5g以上、2g以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の活性塩素剤は、上記塩素含有化合物(A)を、35〜90質量%含有することが好ましい。
塩素含有化合物(A)を35質量%以上含有することで、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度を適切な濃度範囲に維持することができる。また、塩素含有化合物(A)を90質量%以下含有することで、本発明の活性塩素剤の水に対する徐溶性及び成形性をより優れたものとすることができる。
【0016】
本発明の活性塩素剤は、界面活性剤を含有しないことが好ましい。
このように本発明の活性塩素剤を界面活性剤とは分離して、使用時に界面活性剤と混合することにより、使用前に塩素含有化合物と界面活性剤とが相互に反応して活性塩素や界面活性剤成分が損なわれてしまうことを防止でき、保存安定性をより優れたものとすることができる。
【0017】
本発明の活性塩素剤は、キレート剤を含有しないことが好ましい。
このように本発明の活性塩素剤をキレート剤とは分離して、使用時にキレート剤と混合することにより、使用前に塩素含有化合物とキレート剤とが相互に反応して活性塩素やキレート剤が損なわれてしまうことを防止でき、保存安定性をより優れたものとすることができる。
【0018】
本発明の活性塩素剤においては、上記賦形剤(B)が、有機酸及び炭酸塩の組み合わせからなるガス発生成分であることが好ましい。
上記賦形剤(B)が、有機酸及び炭酸塩の組み合わせからなるガス発生成分であることにより、本発明の活性塩素剤が水に対する適度な徐溶性を有するものとなり、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度が低くなりすぎることを防止することができる。
【0019】
本発明の活性塩素剤は、上記炭酸塩として炭酸ナトリウムのみを含有することが好ましい。
炭酸塩として炭酸ナトリウムのみを含有することにより、本発明の活性塩素剤の保存安定性をより優れたものとすることができる。
【0020】
本発明の活性塩素剤は、炭酸カリウム、重炭酸塩のいずれも含有しないことが好ましい。
炭酸カリウム、重炭酸塩のいずれも含有しないことにより、本発明の活性塩素剤の保存安定性を向上することができる。
重炭酸塩とは、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩をいう。
【0021】
本発明の活性塩素剤は、上記滑剤(C)を、0.05〜3質量%含有することが好ましい。
上記滑剤(C)を、0.05質量%以上含有することにより、本発明の活性塩素剤の成形性をより優れたものとすることができる。また、上記滑剤(C)を、3質量%以下含有することにより、本発明の活性塩素剤の水に対する徐溶性及び成形性をより優れたものとすることができる。
【0022】
本発明の活性塩素剤においては、上記塩素含有化合物(A)が、ジクロロイソシアヌル酸塩、その水和物、トリクロロイソシアヌル酸、及び、次亜塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
上記塩素含有化合物(A)が、ジクロロイソシアヌル酸塩、その水和物、トリクロロイソシアヌル酸、及び、次亜塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種であることにより、本発明の効果をより充分に発揮することができる。
【0023】
本発明の活性塩素剤においては、上記塩素含有化合物(A)が、ジクロロイソシアヌル酸塩及び/又はその水和物であることが好ましい。
上記塩素含有化合物(A)が、ジクロロイソシアヌル酸塩及び/又はその水和物であることにより、本発明の活性塩素剤が水分を含んだときの臭気を低減することができる。
【0024】
本発明の活性塩素剤は、上記結合助剤(D)を、1〜10質量%含有することが好ましい。
上記結合助剤(D)を、1〜10質量%含有することにより、本発明の活性塩素剤の成形性をより優れたものとすることができる。
【0025】
本発明の活性塩素剤は、錠剤であることが好ましい。
本発明の活性塩素剤が錠剤であることにより、より扱いやすいものとなり、水に対する徐溶性もより優れたものとなる。
【0026】
本発明の被洗浄物の洗浄方法は、本発明の活性塩素剤を用いた被洗浄物の洗浄方法であって、上記活性塩素剤と、所定形状に成形された固形体、粒状体又は粉状体からなる洗浄剤組成物とを水に溶かして混合することで希釈液体洗剤を調製し、該希釈液体洗剤を用いて被洗浄物の洗浄を行うことを特徴とする。
【0027】
なお、本発明に係る洗浄剤組成物において、固形体とは、直径5cm以上の球状又はそれと同等の体積のものを80質量%以上含むものをいう。また、粒状体とは、上記した固形体の条件に該当せず、直径0.1mm以上の球状又はそれと同等の体積のものを80質量%以上含むものをいい、粉状体とは、直径0.1mm以上の球状又はそれと同等の体積のものが80質量%未満であるものをいう。
【0028】
本発明の被洗浄物の洗浄方法は、被洗浄物の洗浄を行う際に、洗浄のために用いる希釈液体洗剤を、本発明の活性塩素剤と、所定形状に成形された固形体、粒状体又は粉状体からなる洗浄剤組成物とを水に溶かして混合することで調製する。これにより、被洗浄物の洗浄前に塩素含有化合物と洗浄剤組成物とが相互に反応して活性塩素や洗浄剤組成物の一部が損なわれてしまうことを防止できる。
【0029】
本発明の被洗浄物の洗浄方法においては、上記活性塩素剤を洗浄槽中に吊り下げて水に溶かして混合することが好ましい。
上記活性塩素剤を洗浄槽中に吊り下げて水に溶かして混合することにより、洗浄前まで活性塩素剤を洗浄剤組成物から好適に分離することができ、本発明の効果を得ることができる。
上記活性塩素剤を洗浄槽中に吊り下げるには、種々の方法を用いることができ、例えば、活性塩素剤が落下しない程度の粗さの網状部材で活性塩素剤を包み、洗浄槽の天井等から吊り下げることができる。
【0030】
本発明の被洗浄物の洗浄方法においては、自動食器洗浄機内に水不溶性のケースを取り付け、上記活性塩素剤を該ケース内に収容し、該ケース内に上記洗浄剤組成物を溶かした水溶液を噴射すること、及び/又は、該水溶液を噴射して該ケース内に流れ込ませることで収容された活性塩素剤を溶かして混合することが好ましい。
自動食器洗浄機内に水不溶性のケースを取り付け、上記活性塩素剤を該ケース内に収容し、該ケース内に上記洗浄剤組成物を溶かした水溶液を噴射すること、及び/又は、該水溶液を噴射して該ケース内に流れ込ませることで収容された活性塩素剤を溶かして混合することにより、洗浄前まで活性塩素剤を洗浄剤組成物から好適に分離することができ、本発明の効果を得ることができる。
上記水不溶性のケース内に上記洗浄剤組成物を溶かした水溶液を噴射するとは、例えば自動食器洗浄機がその内部に備えるノズル等から、該洗浄剤組成物を溶かした水溶液を該ケース内に直接噴射することを言う。また、該水溶液を噴射して該ケース内に流れ込ませるとは、該ケース内に直接噴射されなかった該水溶液を、例えば自動食器洗浄機の内壁を伝わせる等して、間接的に該ケース内に流れ込ませることを言う。
なお、上記水不溶性のケースは、ケース内に洗浄剤組成物を溶かした水溶液を噴射したり、流れ込ませたりすることで収容された活性塩素剤を溶かすことができるように、通常は非密閉型のケースである。該ケースは、ケース本体から構成され、蓋体があってもなくてもよい。また、上記水不溶性のケースの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックが挙げられる。
【0031】
本発明の被洗浄物の洗浄方法においては、上記活性塩素剤を洗浄槽中に直に収容して水に溶かして混合することが好ましい。
上記活性塩素剤を洗浄槽中に直に収容して水に溶かして混合することにより、本発明の被洗浄物の洗浄方法を簡易に実施することができ、本発明の効果を発揮できる。
【0032】
本発明の被洗浄物の洗浄方法においては、上記活性塩素剤を自動食器洗浄機用のカートリッジ洗浄剤内に収容し、上記カートリッジ洗浄剤内に水を噴射して溶かして混合することが好ましい。
上記活性塩素剤を自動食器洗浄機用のカートリッジ洗浄剤内に収容し、上記カートリッジ洗浄剤内に水を噴射して溶かして混合することにより、洗浄前まで活性塩素剤を洗浄剤組成物から好適に分離することができ、本発明の効果を得ることができる。
【0033】
本発明の自動食器洗浄機用のカートリッジ洗浄剤は、内容物の供給口部を有する水不溶性の容器を、上記供給口部を下向きに設置し、上記供給口部へ水が噴射されて内容物を溶かしながら供給する方式の自動食器洗浄機用のカートリッジ洗浄剤であって、上記容器は、容器本体と中蓋体と外蓋体とからなり、上記内容物は、本発明の活性塩素剤と、所定形状に成形された固形体、粒状体又は粉状体からなり、界面活性剤を含有する洗浄剤組成物とからなり、上記容器本体には、上記洗浄剤組成物が収容されており、上記中蓋体には、上記活性塩素剤が収容されており、上記容器本体と上記中蓋体との間には、上記活性塩素剤又は上記洗浄剤組成物の移動を防止する仕切りが設けられていることを特徴とする。
【0034】
本発明のカートリッジ洗浄剤では、活性塩素剤は、容器本体の内部には配設されておらず、中蓋体に収容されており、洗浄剤組成物は、容器本体の内部に収容されており、容器本体と中蓋体との間には、活性塩素剤又は洗浄剤組成物の移動を防止する仕切りが設けられているので、カートリッジ洗浄剤の製造時には洗浄剤組成物と活性塩素剤とが全く接触しない状態で製造することができ、塩素含有化合物や洗浄剤組成物の一部の分解を防止することができる。
さらに、活性塩素剤と洗浄剤組成物とは仕切りにより分離された状態で、上記容器内の上記所定領域の外側に配置されているので、簡易に製造することができ、安価かつ安全に製造が可能である。
【0035】
本発明のカートリッジ洗浄剤では、本体容器の内部に収容する洗浄剤組成物や中蓋体に収容する活性塩素剤の量を調節することにより、噴射水の温度が低くても、容易に活性塩素剤の供給量を適量の範囲に制御することができる。従って、洗浄中に活性塩素剤を充分に自動食器洗浄機内に供給することができるとともに、過剰に活性塩素剤が供給されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の活性塩素剤は、塩素含有化合物の分解を防止できるとともに、洗浄中に適量の活性塩素剤を自動食器洗浄機内に供給することができ、成形性、保存安定性にも優れるものである。本発明の被洗浄物の洗浄方法は、塩素含有化合物や洗浄剤組成物の一部の分解を防止することができるとともに、洗浄中に適量の活性塩素剤を自動食器洗浄機内に供給することができる。本発明のカートリッジ洗浄剤は、塩素含有化合物や洗浄剤組成物の一部の分解を防止することができるとともに、洗浄中に適量の活性塩素剤を自動食器洗浄機内に供給することができる。また、本発明のカートリッジ洗浄剤では、カートリッジ洗浄剤を簡易に製造することができ、かつ、安全かつ安価に製造が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0039】
本発明の活性塩素剤は、
(A)塩素含有化合物、
(B)賦形剤、
(C)滑剤、及び、
(D)結合助剤、を含有し、
所定形状に成形された固形体又は粒状体からなり、
水に溶かすことで自動食器洗浄機内に活性塩素を導入するために用いられることを特徴とする。
【0040】
塩素含有化合物(A)としては、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸塩、ジクロロイソシアヌル酸塩の水和物、トリクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸の水和物、及び、次亜塩素酸塩が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
塩素含有化合物(A)は、ジクロロイソシアヌル酸塩、ジクロロイソシアヌル酸塩の水和物、トリクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸の水和物、及び、次亜塩素酸塩からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、ジクロロイソシアヌル酸塩及び/又はその水和物であることが特に好ましい。
ジクロロイソシアヌル酸塩の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
次亜塩素酸塩の塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩が好ましい。
【0041】
塩素含有化合物(A)の含有量は、活性塩素剤100質量%中、本発明の活性塩素剤の成形性を更に向上する観点からは、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。また、塩素含有化合物(A)の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
賦形剤(B)としては、乳糖、でんぷん、トレハロース、無水リン酸水素塩、有機酸、炭酸塩、重炭酸塩(炭酸水素塩)等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。賦形剤(B)としては、有機酸、炭酸塩が好ましく、中でも、有機酸と炭酸塩の組み合わせからなるガス発生成分がより好ましい。
有機酸としては、例えば、安息香酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、乳酸、マロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、イタコン酸、メサコン酸、サリチル酸等が挙げられ、安息香酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、乳酸、マロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、イタコン酸、メサコン酸、サリチル酸が好ましく、安息香酸がより好ましい。
炭酸塩、重炭酸塩の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、中でもナトリウム塩が好ましい。
有機酸と炭酸塩の組み合わせにおいて、有機酸と炭酸塩との質量比は、5:1〜1:50であることが好ましく、1:1〜1:30であることがより好ましく、1:3〜1:20であることが更に好ましい。
賦形剤(B)は、炭酸カリウム、重炭酸塩のいずれも含有しないことが好ましい。炭酸カリウム、重炭酸塩のいずれかを含有すると、本発明の活性塩素剤の保存安定性が劣化するおそれがある。
賦形剤(B)は、炭酸ナトリウムを含有することがより好ましく、炭酸塩として炭酸ナトリウムのみを含有することが更に好ましい。また、賦形剤(B)は、アルカリ剤(アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であるもの)として炭酸ナトリウムのみを含有することもまた好ましい。
【0043】
賦形剤(B)の含有量は、本発明の活性塩素剤の水に対する徐溶性を優れたものとする観点からは、活性塩素剤100質量%中、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、賦形剤(B)の含有量は、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
【0044】
滑剤(C)としては、脂肪酸系滑剤、金属石鹸系滑剤、エステル系滑剤が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。滑剤(C)としては、中でも金属石鹸系滑剤が好ましい。
脂肪酸系滑剤としては、ステアリン酸、ステアリルアルコール等が挙げられる。
金属石鹸系滑剤としては、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等が挙げられ、ステアリン酸塩が好ましい。
エステル系滑剤としては、ステアリン酸モノグリセリドやステアリルステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油等が挙げられる。
滑剤(C)の塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好ましく、マグネシウム塩がより好ましい。
【0045】
滑剤(C)の含有量は、活性塩素剤100質量%中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.06質量%以上であることがより好ましく、0.08質量%以上であることが更に好ましい。また、滑剤(C)の含有量は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0046】
結合助剤(D)としては、ポリアルキレングリコール、その他の水酸基含有ポリマー、カルボキシル基含有ポリマー等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。
水酸基含有ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、アラビアゴムなどが挙げられる。
カルボキシル基含有ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸などが挙げられる。
【0047】
結合助剤(D)の含有量は、活性塩素剤100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。また、結合助剤(D)の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましい。
【0048】
本発明の活性塩素剤は、上記(A)〜(D)成分の他にその他の任意成分(E)として、水、シリカ、セルロースエーテル、工程剤としての芒硝(硫酸ナトリウム)、エタノール等のアルコール類、シリコン等の抑泡剤、消臭剤、帯電防止剤、アルコールアルコキシレート等の界面活性剤、エチレンジアミン四酢酸塩等のキレート剤等を補助成分として、活性塩素剤の水に対する徐溶性、成形性、保存安定性に支障のない範囲で適宜に配合することができる。
セルロースエーテルとは、セルロースのヒドロキシル基をエーテル化した化合物の総称である。
セルロースエーテルとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低密度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられ、中でもヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
なお、本発明の活性塩素剤の保存安定性を向上する観点からは、本発明の活性塩素剤は界面活性剤を含有しないことが好ましい。また、同様に本発明の活性塩素剤の保存安定性を向上する観点からは、本発明の活性塩素剤はキレート剤を含有しないことが好ましい。
【0049】
本発明の活性塩素剤は、錠剤であることが好ましい。
錠剤は、直径2mm以上、高さ1mm以上の円柱形状又はそれと同等の体積のものをいう。
錠剤の形状は、例えば、円柱形状、楕円柱形状、三角柱形状、四角柱形状、その他の多角柱形状、球状等が挙げられる。
【0050】
続いて、本発明の被洗浄物の洗浄方法について説明する。
本発明の被洗浄物の洗浄方法は、本発明の活性塩素剤を用いた被洗浄物の洗浄方法であって、上記活性塩素剤と、所定形状に成形された固形体、粒状体又は粉状体からなる洗浄剤組成物とを水に溶かして混合することで希釈液体洗剤を調製し、該希釈液体洗剤を用いて被洗浄物の洗浄を行うことを特徴とする。
【0051】
このように、希釈液体洗剤の調製時に活性塩素剤と、洗浄剤組成物とを水に溶かして混合することにより、活性塩素剤の使用前に塩素含有化合物と洗浄剤組成物とが相互作用して塩素含有化合物や洗浄剤組成物の一部が分解することを防止することができる。
本発明の被洗浄物の洗浄方法は、活性塩素剤を予め洗浄剤組成物に配合せず、使用時(希釈液体洗剤の調製時)に、特定の活性塩素剤と、洗浄剤組成物とを水に溶かして混合するものであればよく、これにより使用前における塩素含有化合物の分解を防止できるとともに、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度を適切にコントロールでき、本発明の作用効果を発揮できる。本発明の被洗浄物の洗浄方法は、希釈液体洗剤の調製時に、本発明の活性塩素剤と洗浄剤組成物とを水に溶かして混合して本発明の作用効果を発揮できる限り、種々の形態が挙げられる。
例えば、本発明の被洗浄物の洗浄方法は、上記活性塩素剤を洗浄槽中に吊り下げて水に溶かして混合するものであってもよく、自動食器洗浄機内に水不溶性のケースを取り付け、上記活性塩素剤を該ケース内に収容し、該ケース内に上記洗浄剤組成物を溶かした水溶液を噴射すること、及び/又は、該水溶液を噴射して該ケース内に流れ込ませることで収容された活性塩素剤を溶かして混合するものであってもよく、上記活性塩素剤を洗浄槽中に直に収容して水に溶かして混合するものであってもよく、上記活性塩素剤を自動食器洗浄機用のカートリッジ洗浄剤内に収容し、上記カートリッジ洗浄剤内に水を噴射して溶かして混合するものであってもよい。
【0052】
図1は、本発明の被洗浄物の洗浄方法の一実施例を模式的に示す説明図である。
図1では、自動食器洗浄機9内に水不溶性のケースCを取り付け、本発明の活性塩素剤5を該ケースC内に収容し、洗浄用ノズル3A、3Bから該ケースC内に洗浄剤組成物を溶かした水溶液を噴射したり、該水溶液を噴射して該ケースC内に該水溶液を流れ込ませたりして該水溶液を該ケースC内に導入している。このようにして該水溶液により該ケースC内に収容された活性塩素剤5を溶かして活性塩素剤と洗浄剤組成物とを含む洗浄剤溶液を調製し、該洗浄剤溶液を用いて被洗浄物Dの洗浄を行っている。また、該洗浄剤溶液を用いて自動食器洗浄機9内のバイオフィルム(図示せず)を除去することも可能である。本発明の活性塩素剤を収容した水不溶性のケースは、自動食器洗浄機内に1個だけ取り付けられていてもよく、複数個取り付けられていてもよい。
【0053】
なお、
図1では、自動食器洗浄機9の外側に配置された自動供給装置1から、洗浄剤組成物を溶かした水溶液が供給用ホース2を介して洗浄剤溶液タンク3に供給される。洗浄時において、洗浄剤溶液タンク3内の該水溶液をポンプ(図示せず)により洗浄用ノズル3A、3Bに送り出して噴射する。噴射された水溶液は再度洗浄剤溶液タンク3内に流入する。この操作が一定時間繰り返された後、すすぎ操作がなされる。このすすぎ操作においては、すすぎタンク4内の水をポンプ(図示せず)によりすすぎ用ノズル4A、4Bに送り出して被洗浄物Dに噴射する。ここで噴射された水も洗浄剤溶液タンク3内に流入する。すすぎタンク4内において水は常に一定量が確保されるように外部から補給される。
【0054】
続いて、本発明のカートリッジ洗浄剤について説明する。
本発明のカートリッジ洗浄剤は、内容物の供給口部を有する水不溶性の容器を、上記供給口部を下向きに設置し、上記供給口部へ水が噴射されて内容物を溶かしながら供給する方式の自動食器洗浄機用のカートリッジ洗浄剤であって、上記容器は、容器本体と中蓋体と外蓋体とからなり、上記内容物は、本発明の活性塩素剤と、所定形状に成形された固形体、粒状体又は粉状体からなり、界面活性剤を含有する洗浄剤組成物とからなり、上記容器本体には、上記洗浄剤組成物が収容されており、上記中蓋体には、上記活性塩素剤が収容されており、上記容器本体と上記中蓋体との間には、上記活性塩素剤又は上記洗浄剤組成物の移動を防止する仕切りが設けられていることを特徴とする。
【0055】
本発明のカートリッジ洗浄剤は、ホテル又はレストラン等で用いられている自動食器洗浄機用のカートリッジ洗浄剤であることが好ましい。
本発明のカートリッジ洗浄剤では、洗浄剤組成物は容器本体に収容されており、活性塩素剤は中蓋体に収容されており、上記容器本体と上記中蓋体との間には、上記活性塩素剤又は洗浄剤組成物の移動を防止する仕切りが設けられているが、その実施形態として次のものが考えられる。
【0056】
以下、本発明のカートリッジ洗浄剤の実施形態について説明する。
本発明のカートリッジ洗浄剤では、活性塩素剤は、所定形状に成形された固形体又は粒状体からなり、洗浄剤組成物は、所定形状に成形された固形体、粒状体、又は、粉状体からなり、上記中蓋体に上記活性塩素剤が収容されるとともに、上記容器本体に上記洗浄剤組成物が収容されている。
【0057】
図2は、本発明の実施形態に係るカートリッジ洗浄剤を構成する容器の一実施例を模式的に示す説明図である。
図3は、
図2に示すカートリッジ洗浄剤を構成する中蓋体を模式的に示す概念図である。
【0058】
図2に示したように、本実施形態に係るカートリッジ洗浄剤10を構成する容器は、容器本体11と中蓋体12と外蓋体13とからなる。
容器本体11は、円筒容器の下部が次第に縮径していく、所謂、ロート形状となっており、最下部の径の小さい筒部材11aには、中蓋体12をねじ込むためのねじ110aが形成されている。図示はしていないが、本発明では、筒部材11aは、ねじ込みでなく爪構造によるはめ込み式で中蓋体を固定するようになっていてもよい。
【0059】
中蓋体12は、有底円筒形状であり、底部12bには、噴射水を通過させるための円筒部材12dと、洗浄剤組成物20及び活性塩素剤23(
図4参照)が溶解した洗浄液を通過させるための開口部12aが2個設けられており、中蓋体12の円筒部分12cの内壁には、容器本体11の筒部材11aにねじ込むためのねじ120aが設けられている。
開口部12a及び底部12bを含む、活性塩素剤を載置するための部分が中蓋体12における載置部である。
なお、
図3には開口部12aは2個示しているが、開口部12aの数は1個ないし2個以上であってもよい。
中蓋体12は、筒部材11aに嵌め込むことにより固定されればよいので、容器本体11の筒部材11aや中蓋体12にねじ110aや120aが設けられていなくてもよい。その場合には、中蓋体12に爪部を形成し、筒部材11aの方に爪の受け構造が形成されていれば中蓋体12を嵌め込んだ後、固定することができる。
【0060】
また、この中蓋体12は、さらに内筒12eが設けられており、内筒12eの内部に活性塩素剤23を収容できるように構成されており、活性塩素剤23を内筒12eの内部に収容した状態で保持するために円環形状のカバー部14が設けられている。
中蓋体12を構成するカバー部14は、円筒部材12dと重なる部分を除いて、水が通過することができるように網状または板状で開口部を有する部材14aにより構成されており、縁部には、網状または板状で開口部を有する部材14aを支持、固定するための支持部材14bが配設されている。そして、図示はしていないが、中蓋体12の内部に活性塩素剤23が収容された状態で、支持部材14bが内筒12eの上面周囲に接着剤を介して貼り付けられるか、爪状の構造などで固定され、中蓋体12の内部(内筒12eの内部)に活性塩素剤23が保持され、上部に存在する洗浄剤組成物20と分離状態とすることができる。
【0061】
なお、中蓋体は活性塩素剤が保持され、噴射水が通過する構造となっていれば、上記構造に限定されない。従って、カバー部14に円筒部材12dや内筒12eが結合していてもよく、円筒部材12dや内筒12eが他の部材から独立した部材であってもよく、内筒12eが無い構造でもよい。
また、活性塩素剤が粒状体又は固形体であるところ、カバー部14は、それに対応した活性塩素剤が漏れない程度の粗さの網状体であればよく、活性塩素剤が漏れなければ、円筒部材12dや内筒12eに、スリットが形成されていてもよく、メッシュ状であってもよく、適度の間隔でフレームが形成されたものであってもよい。また、内筒12eの代わりに棒状のものが設けられていてもよい。
また、容器本体と中蓋体と外蓋体は、2つ以上の部材が一体成形されたものであってもよい。具体的には、例えば、中蓋とカバー部、中蓋と外蓋部をヒンジで結合した構造であってもよい。
【0062】
外蓋体13は、使用時まで容器内外の空間を遮断する役割を果たすものであり、使用時には、取り外すように構成されている。
図2では、外蓋体13にも、ねじ130aが設けられ、中蓋体12にねじ込むように構成されているが、中蓋体と同様に、ねじ130aは設けず、中蓋体12に爪受け構造を形成し、外蓋体13に浅い爪を形成し嵌め込むようにしてもよい。
【0063】
容器本体11と中蓋体12と外蓋体13とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのプラスチックからなるが、特に、外蓋体13は、嵌め込む形式のものが好ましく、そのためには、硬質部材が好ましい。
なお、外蓋体13は、フィルム状部材により構成され、使用時にはがすことが可能な接着剤により中蓋体12に接着されていてもよい。
【0064】
図4は、本発明のカートリッジ洗浄剤の一実施例を模式的に示す概念図である。
この実施例では、洗浄剤組成物20は、容器本体11の形状で固化した固形体であり、一方、活性塩素剤23は、固形体からなり、固形体からなる活性塩素剤23は、中蓋体12の内部に載置されており、カバー部14により中蓋体12の外に移動しない構成となっている。なお、活性塩素剤23は、固形体であるところ、底部12bに設けられた開口部12aから落下しないよう、必要に応じて、開口部12aにもそれに対応した活性塩素剤が落下しない程度の粗さの網状部材が設けられている。
図4に示すカートリッジ洗浄剤10では、洗浄剤組成物20と活性塩素剤23とは、カバー部14で分離されており、直接接触することはないため、活性塩素剤23と洗浄剤組成物20とが反応することはなく、水に溶解した活性塩素剤23と洗浄剤組成物20とを良好に洗浄液中に供給することができる。なお、
図4では、わかりにくいが、洗浄剤組成物20は、当然、円筒部材12dの内部には、収容されていない。
図5〜
図9のカートリッジ洗浄剤でも同様である。
【0065】
図5は、本発明のカートリッジ洗浄剤の別の実施例を模式的に示す概念図である。
この実施例では、洗浄剤組成物20は、固形体であり、一方、活性塩素剤24は、粒状体であり、粒状体からなる活性塩素剤24は、中蓋体12の内部に載置されており、カバー部14によりその内部に保持されている。
図5に示すカートリッジ洗浄剤10aでも、洗浄剤組成物20と活性塩素剤24とは、カバー部14で分離されており、直接接触することはない。
【0066】
図6は、本発明のカートリッジ洗浄剤のさらに別の実施例を模式的に示す概念図である。
この実施例では、洗浄剤組成物22は、粒状体であり、一方、活性塩素剤23は、所定形状に成形された固形体からなり、固形体からなる活性塩素剤23は、中蓋体12の内部に載置されており、カバー部14によりその内部に保持されている。
図6に示すカートリッジ洗浄剤15でも、洗浄剤組成物22と活性塩素剤23とは、カバー部14で分離されており、直接接触することはない。
【0067】
図7は、本発明のカートリッジ洗浄剤のさらに別の実施例を模式的に示す概念図である。
この実施例では、洗浄剤組成物22及び活性塩素剤24は、ともに粒状体であるが、粒状体からなる活性塩素剤24は、中蓋体12の内部に載置されており、カバー部14によりその内部に保持されている。
図7に示すカートリッジ洗浄剤16でも、洗浄剤組成物22と活性塩素剤24とはカバー部14で分離されており、直接接触することはない。
【0068】
図8は、本発明のカートリッジ洗浄剤のさらに別の実施例を模式的に示す概念図である。
この実施例では、洗浄剤組成物25は、粉状体であり、一方、活性塩素剤23は、所定形状に成形された固形体からなり、固形体からなる活性塩素剤23は、中蓋体12の内部に載置されており、カバー部14によりその内部に保持されている。
図8に示すカートリッジ洗浄剤17でも、洗浄剤組成物25と活性塩素剤23とはカバー部14で分離されており、直接接触することはない。
【0069】
図9は、本発明のカートリッジ洗浄剤のさらに別の実施例を模式的に示す概念図である。
この実施例では、洗浄剤組成物25は、粉状体であり、一方、活性塩素剤24は、粒状体であり、粒状体からなる活性塩素剤24は、中蓋体12の内部に載置されており、カバー部14によりその内部に保持されている。
図9に示すカートリッジ洗浄剤18でも、洗浄剤組成物25と活性塩素剤24とはカバー部14で分離されており、直接接触することはない。
【0070】
図10(a)は、本発明のカートリッジ洗浄剤を構成する中蓋体の別の実施例を模式的に示す概念図であり、
図10(b)は、
図10(a)に示す中蓋体に固形体の活性塩素剤を収容した状態を模式的に示す概念図であり、
図10(c)は、
図10(a)に示す中蓋体の裏面に外蓋体としてのフィルム部材を接着した状態を模式的に示す概念図である。
【0071】
図10(a)に示す中蓋体32は、有底円筒形状であり、底部32bには、噴射水を通過させるための円筒部材32dと、洗浄剤組成物20(
図11参照)及び活性塩素剤23(
図10(b)参照)が溶解した洗浄液を通過させるための開口部32aが設けられており、中蓋体32の円筒部分32cの内壁には、容器本体11の筒部材11aにねじ込むためのねじ320aが設けられている。
開口部32a及び底部32bを含む、活性塩素剤を載置するための部分が中蓋体32における載置部である。
底部32bは網目形状となっており、多数の開口部32aが形成されている。底部32bが網目形状であり多数の開口部32aが形成されていると、洗浄液が中蓋体の底部を通過しやすく、均一に排出されるという利点がある。
【0072】
また、この中蓋体32には、さらに内筒32eが設けられており、内筒32eの内部に活性塩素剤23を収容できるように構成されている(
図10(b)参照)。
この中蓋体32に収容する活性塩素剤としては、底部32bの網目形状の開口部32aから落下することのない大きさの固形体の活性塩素剤23であることが望ましい。
また、中蓋体32の内筒32e内には、固形体の活性塩素剤23の移動を規制するための区画部材32fが複数箇所に設けられていて、内筒32e内の空間が区画されている。区画部材32fの間隔は、区画部材32fの間に固形体の活性塩素剤が入るように定めることが望ましい。このように固形体の活性塩素剤23の移動を規制することにより、各活性塩素剤を均一に溶解させることができる。
【0073】
また、区画部材32fによる区画は、内筒32e内の空間を完全に区画するのではなく、緩く区画することが望ましい。「緩く」というのは、区画部材32fにより固形体の活性塩素剤23の移動が規制される程度に内筒32e内の空間が区画されている一方、区画部材32fと内筒32eの内壁の間、及び/又は、区画部材32fと円筒部材32dの外壁の間に空間を設けて、水や洗浄液等の液体が内筒32eの間で自由に移動できる状態のことを意味する。このような状態であると、水、洗浄液等の液体が特定の部位に噴射されたとしても、液体が内筒32eの中で偏ることがないので、特定の活性塩素剤23のみが溶解することが防止される。
【0074】
また、
図10(b)に示すように、活性塩素剤23を内筒32eの内部に収容した状態で保持するために円環形状のカバー部34が設けられている。
カバー部34の役割は
図3に示すカバー部14と同様であるが、
図10(b)にはカバー部の形態として開口部34aの形状が異なるカバー部を示している。また、カバー部34には
図3に示すカバー部14の支持部材に相当する部位は存在していない。
また、図示していないが、円筒部材32dの上面に段付きを設け、段付きとカバー部34の中央の貫通孔34cがかみ合うようにしてカバー部34の位置ずれを防止するようにしてもよい。
また、中蓋体32に設けていた区画部材32fに代えてカバー部34の中蓋体側になる面に区画部材を設けて、カバー部34を被せた際に内筒32e内の空間を区画できるようにしてもよい。
【0075】
図10(c)には
図10(a)に示す中蓋体32の裏面に外蓋体としてのフィルム部材33を接着した状態を示している。
フィルム部材33は、カートリッジ洗浄剤の使用時に剥がすことが可能な接着剤により中蓋体32に接着されていてもよい。フィルム部材33は、接着剤が塗布されていない突出部33aを手で掴んで剥がすことができる。また、フィルム部材を水溶性フィルムとしておき、水が触れることによってフィルム部材が溶解してなくなるようにしておいてもよい。
【0076】
図11は、本発明のカートリッジ洗浄剤のさらに別の実施例を模式的に示す概念図である。
図11には、
図4に示すカートリッジ洗浄剤において中蓋体及びカバー部として
図10(b)に示す中蓋体32及びカバー部34を使用し、固形体の活性塩素剤23を中蓋体32の内部に載置している。また、中蓋体32の裏面には外蓋体としてのフィルム部材33を接着している。
この実施形態でも活性塩素剤と洗浄剤組成物とは、中蓋体を構成するカバー部により分離されており、活性塩素剤と洗浄剤組成物とが直接接触することはなく、塩素含有化合物や洗浄剤組成物の一部の分解を防止することができる。また、外蓋体としてのフィルム部材により、使用時まで容器内外の空間が遮断されている。
【0077】
洗浄剤組成物は、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸アルカリ金属塩、水溶性ポリマー及びキレート剤からなる群から選択された少なくとも一種と、界面活性剤とを含有していることが望ましい。
【0078】
本発明のカートリッジ洗浄剤を構成する洗浄剤組成物に含まれるアルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、重炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられ、ケイ酸アルカリ金属塩としては、例えば、オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムの5水塩又は9水塩等が挙げられ、キレート剤としては、例えば、アミノカルボン酸塩(メチルグリシン二酢酸塩、グルタミン酸二酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩)、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸)等が挙げられる。塩としてのキレート剤は、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。水溶性ポリマーとしては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸またはマレイン酸の単独あるいはコポリマー、さらにはそれらとオレフィンとのポリマー、さらに側鎖にスルホン基を有するものといったものが挙げられる。それらが塩である場合は、ナトリウム塩、カリウム塩、エタノールアミン塩が特に好適に用いられる。
【0079】
これらアルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸アルカリ金属塩、水溶性ポリマー、キレート剤は、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
キレート剤としてのリン酸塩は、配合しないか少量にとどめ、上記非リン酸塩系のキレート剤を主とすることで環境負荷の低減を図ることが望ましい。
【0080】
上記界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が好ましく用いられるが、両性界面活性剤やカチオン界面活性剤を用いてもよい。非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンのポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加体等が挙げられる。
【0081】
洗浄剤組成物と活性塩素剤との合計量に対する活性塩素剤の割合は、0.1〜8.0質量%であることが望ましく、0.5〜5.0質量%であることがより望ましい。
活性塩素剤の割合がこのような範囲内であることにより、効率的な活性塩素剤の量で、自動食器洗浄機内を充分に除菌できる。
なお、上記活性塩素剤の割合が0.1質量%未満であると、活性塩素剤の量が少なすぎて、自動食器洗浄機内を充分に除菌できない場合がある。上記活性塩素剤の割合が8.0質量%を超えると、活性塩素剤の量が多すぎて、コストが高くなる場合や、噴射水の温度が高い場合に活性塩素剤の供給量が多すぎて使用環境中に刺激臭を生じることがある。
【0082】
本実施形態に係るカートリッジ洗浄剤は、上記成分のほか、カートリッジ洗浄剤の殺菌力、安定性に支障のない範囲で他の任意成分を配合することができる。任意成分としては、例えば、無機塩類等が挙げられる。
【0083】
無機塩類としては、例えば、無水硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム・10水和物、硫酸カリウム等が挙げられる。
【0084】
洗浄剤組成物を製造する際には、まず、水及び水以外の洗浄剤組成物の原料を撹拌混合し、スラリー液を調製した後、上記スラリー液を、カートリッジ洗浄剤を構成する容器本体に投入し、冷却して固化させる。
【0085】
具体的には、まず、水に水以外の洗浄剤組成物の原料を加えた後、30〜90℃に維持し、攪拌することにより、水及び洗浄剤組成物を含むスラリー液を調製する。
水以外の洗浄剤組成物の原料の投入量は、上記スラリー液の全量に対して50〜95質量%が望ましい。これにより、洗浄力が充分に高い洗浄剤組成物が得られる。
水以外の洗浄剤組成物の原料の投入量が50質量%未満であると、洗浄剤組成物の原料の投入量が少なすぎて、得られた洗浄剤組成物の洗浄力が充分でない場合がある。
水以外の洗浄剤組成物の原料の投入量が95質量%を超えると、洗浄剤組成物の原料の投入量が多すぎて、水と充分に混ざらない場合がある。
【0086】
次に、上記スラリー液を容器本体に投入し、その後、上記スラリー液を常温で1〜24時間放置して固化させ、容器本体の形状に固化された固形体からなる洗浄剤組成物を製造する。上記スラリーを別の所定形状の容器に投入して固化させれば、その容器の形状の固形体となる。
粒状体からなる洗浄剤組成物を作製する際には、洗浄剤組成物の原料となるアルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸アルカリ金属塩、水溶性ポリマー、キレート剤等の粒状原料を混合すればよい。混合にはリボンミキサー、ナウタ―ミキサー、ドラムミキサーが好適に用いられる。
また、粉状体からなる洗浄剤組成物を作製する際には、洗浄剤組成物の原料となるアルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸アルカリ金属塩、水溶性ポリマー、キレート剤等の粉状原料を混合すればよい。混合にはリボンミキサー、ナウタ―ミキサー、ドラムミキサーが好適に用いられる。
上記のようにして作製した所定形状に成形された固形体、粒状体又は粉状体からなる洗浄剤組成物を容器本体に収容し、その後、所定形状に成形された固形体又は粒状体からなる活性塩素剤を中蓋体の内部に収容し、カバー部を設けた後、容器本体と中蓋体と外蓋体とを組み合わせることにより本発明のカートリッジ洗浄剤を製造することができる。
【0087】
本発明に係るカートリッジ洗浄剤を用いて、食器等を洗浄する際には、供給口部を下向きにして自動食器洗浄機の洗浄剤固定部に固定する。洗浄剤固定部には、噴射器が中蓋体の直ぐ下に配置されており、噴射器より噴射された水が中蓋体の円筒部材内の貫通孔を通過して、容器本体に収容された洗浄剤組成物に到達し、洗浄剤組成物を少しずつ、溶かしていくように構成されている。
【0088】
洗浄剤組成物と接触し、洗浄剤組成物を溶解させた水溶液は、活性塩素剤と接触し、活性塩素剤も溶かしていく。これにより、活性塩素剤と洗浄剤組成物とを含む洗浄剤溶液は、中蓋体底部の開口部から下に落ちて自動食器洗浄機の洗浄タンク内へ流れ、この洗浄剤溶液により食器等を洗浄することができる。
【実施例】
【0089】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム2水和物60質量%、炭酸ナトリウム24.5質量%、安息香酸5質量%、ステアリン酸マグネシウム0.5質量%、ポリエチレングリコール5質量%、シリカ1質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース4質量%を混合した後、20トン門型油圧プレス機によって4トン10秒の圧縮打錠をすることにより、重量5gの円柱形状(直径20mm×高さ10mm)に成形された塩素剤タブレットである固形成形物(活性塩素剤)を調製した。
【0091】
(実施例2〜16)
活性塩素剤として、表1に示したように組成を変更した以外は、実施例1と同様に活性塩素剤を調製した。
【0092】
(比較例1〜7)
活性塩素剤として、表2に示したように組成を変更した以外は、実施例1と同様に活性塩素剤を調製した。
【0093】
(活性塩素剤の水に対する徐溶性)
活性塩素剤5gを40℃の水に15分浸漬後、重量を測定し、減少重量を求めた。
以下の評価基準で評価した。
◎:1.5〜2g
○:1g以上1.5g未満または2gを超え2.5g未満
×:1g未満または2.5g以上
【0094】
(成形性)
固形成形物を得る際の成形性を以下の評価基準で評価した。
◎:問題ない
○:表面の荒れがみられる
×:著しい表面の荒れや割れがみられる、または成形が不可能
【0095】
(水分を含んだときの臭気)
固形成形物を35℃湿度70%の雰囲気に1時間晒し、200mLの容器に密閉し、1時間後の臭気を以下の評価基準で官能評価した。
◎:ごく軽微な臭気
○:中程度の臭気
×:強い臭気
【0096】
(保存安定性)
固形成形物を35℃、湿度70%の雰囲気に1時間晒し、外観を確認し、以下の評価基準で評価した。
◎:とくに変化はない
○:軽微な膨らみ、ひび
×:著しい変形、崩壊
【0097】
なお、下記表1及び下記表2中、「アルコールアルコキシレート」は界面活性剤であり、「EDTA−4Na」はエチレンジアミン四酢酸、四ナトリウム塩であり、キレート剤である。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
(バイオフィルム除去)
活性塩素剤として、上記(実施例1)に示した、重量5g、直径20mm、高さ10mmの錠剤16錠を、
図10に示す形状のカートリッジの区画部材32fで区画される空間毎に2錠ずつ重ね合わせてとりつけ、
図11のように固形化してなる洗浄剤組成物と一体化したカートリッジ洗浄剤とした。洗浄剤組成物としては、株式会社ニイタカ製固形洗浄剤「ハイソリッドPWH」を用いた。食器の洗浄に日常的に用いているコンベア洗浄機(クレヴァー電機社製2槽コンベア)を試験対象とした。この内部には、バイオフィルムが大量に付着していた。本コンベア洗浄機の洗浄槽に、本洗浄剤組成物を投入し、洗浄液中の洗浄剤組成物濃度が0.04質量%に維持されるようにした。この洗浄液には、洗浄剤組成物と、同時に溶解供給された活性塩素剤が含まれる。上記濃度制御条件で3週間食器の洗浄に使用し、その後内部を目視確認したところ、活性塩素剤と洗浄剤組成物とが溶解混合している洗浄液が当たる部分のバイオフィルムが除去できていた。
【0101】
なお、バイオフィルムは、微生物の塊であり、微生物そのものと、そのエサである食品由来の汚れと、微生物が産生した多糖類から構成されている。自動食器洗浄機の洗浄液は、循環使用されるため、食器、調理器具から落ちた汚れも洗浄液に混ざり、洗浄液と一緒に噴射されて自動食器洗浄機の隅々までいきわたる。この汚れ上で微生物が増殖することで、バイオフィルムが形成される。内部にバイオフィルムが存在する自動食器洗浄機を用いて食器を洗うことは、微生物を含む汚れた液で食器を洗うことを意味する。洗浄対象は見た目にはきれいでも、微生物が付着しているおそれがある。
【0102】
以上の結果から、実施例1〜16に係る活性塩素剤は、水に対する徐溶性を有し、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度を適切にコントロールできると考えられる。また、実施例1〜16に係る活性塩素剤は、成形性、保存安定性に優れることが分かった。このような実施例1〜16に係る活性塩素剤は、洗浄剤組成物とともに水に溶かして使用して、自動食器洗浄機内のバイオフィルムを充分に除去できる。
【0103】
なお、塩素含有化合物(A)が、ジクロロイソシアヌル酸塩又はその水和物である場合は、水分を含んだときの臭気をごく軽微なものとすることができた。一方、比較例1〜7に係る活性塩素剤は、水に対する徐溶性を有さず、自動食器洗浄機内の有効塩素濃度を適切にコントロールできないか、または、成形性が充分なものではなかった。
【0104】
また実施例1〜14、実施例16に係る活性塩素剤のように、界面活性剤を含まない活性塩素剤とすることにより、塩素含有化合物と界面活性剤とが反応して活性塩素や界面活性剤が損なわれることを防止することができる。
更に、実施例1〜15に係る活性塩素剤のように、キレート剤を含まない活性塩素剤とすることにより、塩素含有化合物とキレート剤とが反応して活性塩素やキレート剤が損なわれることを防止することができる。