【課題】風力発電設備に落雷した場合に当該風力発電設備のブレードに着雷したか否かを判別することができると共にブレードに着雷したときには当該ブレードの何れの部位に着雷したのかを特定することができるようにする。
【解決手段】ブレード23の先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいてブレード内引下げ導体26aに流れる電流を検知すると共に、塔体21の下端側位置において当該塔体21に流れる電流を検知するようにした。
ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共に前記ブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷を検出する方法であり、前記ブレードの先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいて前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知すると共に、前記塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知することを特徴とする風力発電設備への落雷の検出方法。
前記塔体に流れる電流を検知するものとしてロゴスキーコイルが設置され、当該ロゴスキーコイルとともに内部積分回路を構成して当該内部積分回路の低域カット周波数が第一の周波数になるように選定された抵抗体を前記ロゴスキーコイルの両端に接続して得られる信号と、低域カット周波数が第二の周波数であると共に高域カット周波数が前記第一の周波数である外部積分回路で前記ロゴスキーコイルからの信号を積分して得られる信号とを加算することを特徴とする請求項1記載の風力発電設備への落雷の検出方法。
ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共に前記ブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する方法であり、前記ブレードの先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいて前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知すると共に、前記塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知し、さらに、分析対象期間内に前記ブレードの前記先端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流が検知された回数を、前記塔体に流れる電流が検知された回数で除することにより、前記風力発電設備への落雷の総回数に対する前記ブレードの前記レセプターへの着雷回数の比率を求めることを特徴とする風力発電設備への落雷状況の分析方法。
ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共に前記ブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する方法であり、前記ブレードの先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいて前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知すると共に、前記塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知し、さらに、分析対象期間内に前記ブレードの前記先端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流が検知されていない一方で前記ブレードの前記基端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流が検知された回数を、前記塔体に流れる電流が検知された回数で除することにより、前記風力発電設備への落雷の総回数に対する前記レセプターを除く前記ブレードへの着雷回数の比率を求めることを特徴とする風力発電設備への落雷状況の分析方法。
ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共に前記ブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する方法であり、前記ブレードの先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいて前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知すると共に、前記塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知し、さらに、分析対象期間内に前記ブレードの前記先端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流が検知されていない一方で前記ブレードの前記基端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流が検知された回数を、当該回数と前記ブレードの前記先端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流が検知された回数との合計回数で除することにより、前記ブレードへの着雷の合計回数に対する前記レセプターを除く前記ブレードへの着雷回数の比率を求めることを特徴とする風力発電設備への落雷状況の分析方法。
ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共に前記ブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷を検出する装置であり、前記ブレードの先端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部と、前記ブレードの基端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部と、前記塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知する落雷検知部とを備えることを特徴とする風力発電設備への落雷の検出装置。
前記落雷検知部が、前記塔体に対して設置されるロゴスキーコイルを含み、当該ロゴスキーコイルとともに内部積分回路を構成して当該内部積分回路の低域カット周波数が第一の周波数になるように選定された抵抗体を前記ロゴスキーコイルの両端に接続して得られる信号と、低域カット周波数が第二の周波数であると共に高域カット周波数が前記第一の周波数である外部積分回路で前記ロゴスキーコイルからの信号を積分して得られる信号とを加算することを特徴とする請求項6記載の風力発電設備への落雷の検出装置。
ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共に前記ブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する装置であり、前記ブレードの先端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部と、前記ブレードの基端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部と、前記塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知する落雷検知部と、分析対象期間内に前記ブレード先端側着雷検知部によって電流が検知された回数を、前記落雷検知部によって電流が検知された回数で除することにより、前記風力発電設備への落雷の総回数に対する前記ブレードの前記レセプターへの着雷回数の比率を算出する算出部とを備えることを特徴とする風力発電設備への落雷状況の分析装置。
ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共に前記ブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する装置であり、前記ブレードの先端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部と、前記ブレードの基端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部と、前記塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知する落雷検知部と、分析対象期間内に前記ブレード先端側着雷検知部によって電流が検知されていない一方で前記ブレード基端側着雷検知部によって電流が検知された回数を、前記落雷検知部によって電流が検知された回数で除することにより、前記風力発電設備への落雷の総回数に対する前記レセプターを除く前記ブレードへの着雷回数の比率を算出する算出部とを備えることを特徴とする風力発電設備への落雷状況の分析装置。
ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共に前記ブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する装置であり、前記ブレードの先端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部と、前記ブレードの基端側位置において前記ブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部と、前記塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知する落雷検知部と、分析対象期間内に前記ブレード先端側着雷検知部によって電流が検知されていない一方で前記ブレード基端側着雷検知部によって電流が検知された回数を、当該回数と前記ブレード先端側着雷検知部によって電流が検知された回数との合計回数で除することにより、前記ブレードへの着雷の合計回数に対する前記レセプターを除く前記ブレードへの着雷回数の比率を算出する算出部とを備えることを特徴とする風力発電設備への落雷状況の分析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の雷撃電流観測装置では、風力発電設備全体としての落雷電流(雷撃電流)の波高値及び波形を計測することはできても、風力発電設備のうちのブレードに着雷したか否かを判別することや更に具体的にブレードの何れの部位が雷撃されたのかを特定することはできない。このため、風力発電設備への落雷に関する分析及び評価や風力発電設備(特にブレード)の維持管理に必要とされるデータ収集のための手法として十全であるとは言い難い。
【0006】
具体的には、風力発電設備の落雷保護対策として、例えばアルミニウム等の金属によって形成されてブレード先端部に設けられるレセプター、及び、当該レセプターを接地させるための引下げ導体(ダウンコンダクターとも呼ばれる)などによって構成される仕組みがある。そして、この仕組みに関連し、着雷位置はブレードに設けられたレセプターであること、及び、落雷電流は引下げ導体のみに流れることが、風力発電設備の設計条件とされている。
【0007】
しかしながら、上記のレセプターを含む仕組みを備える風力発電設備においても、実際には落雷による損傷が多発し、特にブレードの折損や焼損が発生し、さらに、大規模な事故として風力発電設備全体の焼損なども発生している。このような事実から、必ずしも、設計条件の通りにレセプター及び引下げ導体が機能していないと考えられる。
【0008】
そして、上述のことに鑑みると、例えば以下のような分析及び評価が行われ、その分析及び評価の結果がブレード設計にフィードバックされてブレードを含む風力発電設備の落雷保護対策が定量的なデータに基づいて合理的に行われることが重要である。
1)ブレードのレセプターへの着雷は、風力発電設備への全落雷に対してどの程度の比率であるか。
2)ブレードのうちのレセプター以外の部位への着雷は、風力発電設備への全落雷に対して、また、ブレードへの着雷の合計に対して、どの程度の比率であるか。
3)ブレードのレセプターに着雷した場合に、引下げ導体に流れる電流はどの程度であるか。
4)ブレードのレセプター以外に着雷した場合に、アークが二次的放電でレセプターに転移してブレードに損傷を引き起こすことがあるか否か。
【0009】
しかしながら、特許文献1の雷撃電流観測装置では、風力発電設備への全落雷のみが計測対象であるため、例えば上記のような分析及び評価に必要とされるデータ収集のための手法として十全であるとは言い難い。
【0010】
そこで、本発明は、風力発電設備に落雷した場合に当該風力発電設備のブレードに着雷したか否かを判別することができると共にブレードに着雷したときには当該ブレードの何れの部位に着雷したのかを特定することができる風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置、並びに、風力発電設備への落雷状況の分析方法及び分析装置を提供することを目的とする。本発明は、また、必要に応じて落雷電流の大きさ(即ち、電流値、或いは、電流量)を定量的に計測することができる風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置、並びに、風力発電設備への落雷状況の分析方法及び分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明の風力発電設備への落雷の検出方法は、ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共にブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷を検出する方法であり、ブレードの先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知すると共に、塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知するようにしている。
【0012】
また、本発明の風力発電設備への落雷の検出装置は、ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共にブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷を検出する装置であり、ブレードの先端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部と、ブレードの基端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部と、塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知する落雷検知部とを備えるようにしている。
【0013】
したがって、これらの風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置によると、ブレードの先端側位置における電流が検知されると共に基端側位置における電流が検知され且つ塔体の下端側位置における電流が検知されるので、ブレード先端のレセプターから大地へと流れる電流の検知の有無,ブレード基端部を通って大地へと流れる電流の検知の有無,及び塔体を通って大地へと流れる電流の検知の有無の組み合わせに基づいて、ブレードのレセプター,ブレードのうちのレセプター以外の部位,及び風力発電設備のうちのブレード以外の部位のうちの何れに着雷したのかが特定される。
【0014】
また、本発明の風力発電設備への落雷の検出方法は、塔体に流れる電流を検知するものとしてロゴスキーコイルが設置され、当該ロゴスキーコイルとともに内部積分回路を構成して当該内部積分回路の低域カット周波数が第一の周波数になるように選定された抵抗体をロゴスキーコイルの両端に接続して得られる信号と、低域カット周波数が第二の周波数であると共に高域カット周波数が第一の周波数である外部積分回路でロゴスキーコイルからの信号を積分して得られる信号とを加算するようにしても良い。
【0015】
本発明の風力発電設備への落雷の検出装置は、落雷検知部が、塔体に対して設置されるロゴスキーコイルを含み、当該ロゴスキーコイルとともに内部積分回路を構成して当該内部積分回路の低域カット周波数が第一の周波数になるように選定された抵抗体をロゴスキーコイルの両端に接続して得られる信号と、低域カット周波数が第二の周波数であると共に高域カット周波数が第一の周波数である外部積分回路でロゴスキーコイルからの信号を積分して得られる信号とを加算するようにしても良い。
【0016】
これらの場合には、外部積分回路の垂下特性を積極的に利用して落雷電流のうちの限りなく直流に近い成分を含むテール部が高い精度で検知されると共に、外部積分回路はロゴスキーコイルの内部積分機能の低域カット周波数までの帯域を補正するだけで済むために広帯域の積分回路が不要となって安価に且つ高い性能(感度)で落雷電流が検知される。
【0017】
また、本発明の風力発電設備への落雷状況の分析方法は、ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共にブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する方法であり、ブレードの先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知すると共に、塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知し、さらに、分析対象期間内にブレードの先端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流が検知された回数を、塔体に流れる電流が検知された回数で除することにより、風力発電設備への落雷の総回数に対するブレードのレセプターへの着雷回数の比率を求めるようにしている。
【0018】
本発明の風力発電設備への落雷状況の分析装置は、ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共にブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する装置であり、ブレードの先端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部と、ブレードの基端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部と、塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知する落雷検知部と、分析対象期間内にブレード先端側着雷検知部によって電流が検知された回数を、落雷検知部によって電流が検知された回数で除することにより、風力発電設備への落雷の総回数に対するブレードのレセプターへの着雷回数の比率を算出する算出部とを備えるようにしている。
【0019】
したがって、これらの風力発電設備への落雷状況の分析方法及び分析装置によると、風力発電設備への落雷の総回数に対するブレードのレセプターへの着雷回数の比率が求められるので、ブレードを含む風力発電設備の落雷保護対策を合理的に行うために有用であると考えられる定量的なデータが提供される。
【0020】
また、本発明の風力発電設備への落雷状況の分析方法は、ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共にブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する方法であり、ブレードの先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知すると共に、塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知し、さらに、分析対象期間内にブレードの先端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流が検知されていない一方でブレードの基端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流が検知された回数を、塔体に流れる電流が検知された回数で除することにより、風力発電設備への落雷の総回数に対するレセプターを除くブレードへの着雷回数の比率を求めるようにしている。
【0021】
本発明の風力発電設備への落雷状況の分析装置は、ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共にブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する装置であり、ブレードの先端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部と、ブレードの基端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部と、塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知する落雷検知部と、分析対象期間内にブレード先端側着雷検知部によって電流が検知されていない一方でブレード基端側着雷検知部によって電流が検知された回数を、落雷検知部によって電流が検知された回数で除することにより、風力発電設備への落雷の総回数に対するレセプターを除くブレードへの着雷回数の比率を算出する算出部とを備えるようにしている。
【0022】
したがって、これらの風力発電設備への落雷状況の分析方法及び分析装置によると、風力発電設備への落雷の総回数に対するレセプターを除くブレードへの着雷回数の比率が求められるので、ブレードを含む風力発電設備の落雷保護対策を合理的に行うために有用であると考えられる定量的なデータが提供される。
【0023】
また、本発明の風力発電設備への落雷状況の分析方法は、ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共にブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する方法であり、ブレードの先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知すると共に、塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知し、さらに、分析対象期間内にブレードの先端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流が検知されていない一方でブレードの基端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流が検知された回数を、当該回数とブレードの先端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流が検知された回数との合計回数で除することにより、ブレードへの着雷の合計回数に対するレセプターを除くブレードへの着雷回数の比率を求めるようにしている。
【0024】
本発明の風力発電設備への落雷状況の分析装置は、ブレードの先端のレセプターと、当該レセプターと接続すると共にブレード内に配設されるブレード内引下げ導体と、当該ブレード内引下げ導体と接続すると共に塔体内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体とを有する風力発電設備への落雷状況を分析する装置であり、ブレードの先端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部と、ブレードの基端側位置においてブレード内引下げ導体に流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部と、塔体の下端側位置において当該塔体に流れる電流を検知する落雷検知部と、分析対象期間内にブレード先端側着雷検知部によって電流が検知されていない一方でブレード基端側着雷検知部によって電流が検知された回数を、当該回数とブレード先端側着雷検知部によって電流が検知された回数との合計回数で除することにより、ブレードへの着雷の合計回数に対するレセプターを除くブレードへの着雷回数の比率を算出する算出部とを備えるようにしている。
【0025】
したがって、これらの風力発電設備への落雷状況の分析方法及び分析装置によると、ブレードへの着雷の合計回数に対するレセプターを除くブレードへの着雷回数の比率が求められるので、ブレードを含む風力発電設備の落雷保護対策を合理的に行うために有用であると考えられる定量的なデータが提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置によれば、ブレードのレセプター,ブレードのうちのレセプター以外の部位,及び風力発電設備のうちのブレード以外の部位のうちの何れに着雷したのかを特定することができるので、ブレードを含む風力発電設備の落雷保護対策を合理的に行うために有用であると考えられる定量的なデータを提供することを可能にし、風力発電設備への落雷に関する分析及び評価や風力発電設備(特にブレード)の維持管理に必要とされるデータ収集のための手法としての有為性の向上を図ることが可能になる。
【0027】
さらに、本発明の風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置は、塔体に流れる電流を検知するものとしてロゴスキーコイルが用いられると共に内部積分回路の低域カット周波数と外部積分回路の高域カット周波数とが一致するように設定されたうえでそれぞれで積分された信号が加算されるようにした場合には、落雷電流のうちの限りなく直流に近い成分を含むテール部を高い精度で検知することができると共に外部積分回路は広帯域の積分回路が不要となって安価に且つ高い性能(感度)で落雷電流を検知することができるので、落雷電流の検出技術としての高性能化を図ると共に汎用性の向上を図ることが可能になる。
【0028】
また、本発明の風力発電設備への落雷状況の分析方法及び分析装置によれば、ブレードを含む風力発電設備の落雷保護対策を合理的に行うために有用であると考えられる定量的なデータを提供することができるので、当該定量的なデータをブレード設計にフィードバックすることにより、落雷保護対策の検討手法の合理性の向上を図り、延いては落雷保護対策の適確性及び信頼性の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0031】
なお、以下の説明において、単位であることを明確にするために単位としての記号や文字を[ ]で括って表記する場合がある。
【0032】
図1乃至
図4に、本発明の風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置並びに風力発電設備への落雷状況の分析方法及び分析装置の実施形態の一例を示す。なお、
図1は、本発明の構成を説明するためのあくまでも概念図・模式図であり、したがって各部の形態や相互の寸法関係などは厳密なものではない。
【0033】
本実施形態では、
図1に示す風力発電設備20に風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置並びに風力発電設備への落雷状況の分析方法及び分析装置が適用される場合を例に挙げて説明する。
【0034】
風力発電設備20は、塔体21と、当該塔体21の頂部に設置されるナセル22と、当該ナセル22に回転軸が軸回転可能に支持されるロータヘッド24を含む風車とを有する。
【0035】
なお、
図1に示す例では塔体21が基礎27を備えて風力発電設備20が地上に設置される場合を想定しているが、風力発電設備20は海上・水上に設置されるようにしても良い。
【0036】
ナセル22には、主軸が風車のロータヘッド24の回転軸と変速機を介して連結される発電機などが収容される。
【0037】
また、風車のロータヘッド24には、放射方向に延出する複数枚(
図1に示す例では三枚)のブレード23が取り付けられる。
【0038】
そして、各ブレード23に風が当たると、これらブレード23と共にロータヘッド24が回転し、当該ロータヘッド24の回転軸の軸回転が変速機を介して発電機の主軸に伝達されて発電が行われる。
【0039】
各ブレード23の先端部に、耐雷対策として、落雷電流(雷撃電流)を大地に流すためのレセプター25が設けられる。なお、ブレード23の、ロータヘッド24側の端のことを「基端」と呼び、当該基端と反対側の端のことを「先端」と呼ぶ。
【0040】
各レセプター25は、当該レセプター25と電気的に接続すると共に各ブレード23内に基端に向けて配設されるブレード内引下げ導体26aと、当該ブレード内引下げ導体26aと電気的に接続すると共に塔体21内に基礎27(即ち、下端;言い換えると、大地)に向けて配設される塔体内引下げ導体26bとにより、接地するように設けられる(なお、引下げ導体はダウンコンダクタとも呼ばれる)。
【0041】
そして、レセプター25に着雷した場合には、落雷電流はブレード内引下げ導体26a及び塔体内引下げ導体26bを経由して地絡する(言い換えると、大地へと流れる)、という条件で設計されている。
【0042】
そして、本実施形態の風力発電設備への落雷の検出方法は、ブレード23の先端のレセプター25と、当該レセプター25と接続すると共にブレード23内に配設されるブレード内引下げ導体26aと、当該ブレード内引下げ導体26aと接続すると共に塔体21内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体26bとを有する風力発電設備20への落雷を検出する方法であり、ブレード23の先端側位置と基端側位置とのそれぞれにおいてブレード内引下げ導体26aに流れる電流を検知すると共に、塔体21の下端側位置において塔体内引下げ導体26bを含む塔体21に流れる電流を検知するようにしている。
【0043】
また、本実施形態の風力発電設備への落雷の検出装置は、ブレード23の先端のレセプター25と、当該レセプター25と接続すると共にブレード23内に配設されるブレード内引下げ導体26aと、当該ブレード内引下げ導体26aと接続すると共に塔体21内に配設され且つ接地する塔体内引下げ導体26bとを有する風力発電設備20への落雷を検出する装置であり、ブレード23の先端側位置においてブレード内引下げ導体26aに流れる電流を検知するブレード先端側着雷検知部1と、ブレード23の基端側位置においてブレード内引下げ導体26aに流れる電流を検知するブレード基端側着雷検知部2と、塔体21の下端側位置において塔体内引下げ導体26bを含む塔体21に流れる電流を検知する落雷検知部7とを備えるようにしている。
【0044】
ブレード先端側着雷検知部1は、各ブレード23の先端寄りの位置における、各ブレード23の先端のレセプター25からロータヘッド24側へと向かってブレード内引下げ導体26aを流れる電流を検知するためのものである。
【0045】
ブレード基端側着雷検知部2は、各ブレード23の基端寄りの位置における、各ブレード23からロータヘッド24側へと向かってブレード内引下げ導体26aを流れる電流を検知するためのものである。
【0046】
なお、ブレード先端側着雷検知部1及びブレード基端側着雷検知部2は、ブレード内引下げ導体26aに電流が流れたこと(言い換えると、レセプター25を含むブレード23に着雷したこと)を少なくとも検知するものであり、ブレード内引下げ導体26aに流れる電流の大きさ(即ち、電流値、或いは、電流量)は計測しなくても良い。
【0047】
ブレード先端側着雷検知部1やブレード基端側着雷検知部2は、ブレード内引下げ導体26aを流れる電流を検知し得るもの、言い換えると、ブレード内引下げ導体26aに電流が流れたことを少なくとも検知し得るものであれば、特定の方式や仕組みに限定されない。
【0048】
ブレード先端側着雷検知部1やブレード基端側着雷検知部2としては、例えば、巻線CT(Current Transformer の略;変流器)や光ファイバCT、或いはロゴスキーコイル等の環状の電流センサが用いられ得る。なお、光ファイバCTは、シングルモード光ファイバを導体の周りに巻き付けてファラデー効果を利用して光によって電流を測定するセンサである。
【0049】
ブレード先端側着雷検知部1やブレード基端側着雷検知部2(これらを纏めて「着雷検知部1,2」と表記する)は、
図3に示す、カレントトランスを含む回路構造を備える装置として構成されるようにしても良い。なお、
図3において、符号Rは回路素子(部品)としての抵抗、符号Cはコンデンサ、さらに符号Lはインダクタをそれぞれ表す。
【0050】
図3に示す回路構造を備える装置は、具体的には以下のように動作する。
【0051】
レセプター25に着雷すると、着雷検知部1,2を構成するものとしてレセプター25の近傍位置に配設されたカレントトランス31に誘導電圧が誘起される。
【0052】
ダイオードブリッジ32で全波整流された落雷電流は、抵抗R1を通ってコンデンサC1に充電される。また、抵抗R2を経由してコンデンサC2にも充電される。ここで、コンデンサC1,C2に充電される電荷は、コンデンサC2の方が遅くて電荷量が大きい。
【0053】
PUT33(Programmable Unijunction Transistor の略)のゲートは、抵抗R4及び抵抗R5で決まる分圧比で設定される。
【0054】
そして、コンデンサC2の充電電圧がPUT33のゲート電圧を超えるとLED34に電流が流れて発光する。
【0055】
LED34は、光通信用の光ファイバケーブルと接続されており、以下に述べる第一の信号送出部3と信号中継部4との間の信号伝送の仕組みとして光ファイバが用いられる信号送受の仕組み(即ち、光通信)が用いられる場合に前記第一の信号送出部3の一部として機能する。
【0056】
着雷検知部1,2及び第一の信号送出部3(の一部)として上述の
図3に示す仕組みが用いられることにより、着雷による落雷電流からLED34を発光させるための電源が得られるので、着雷検知部1,2及び第一の信号送出部3を自立的に作動させることが可能になる。
【0057】
ブレード先端側着雷検知部1及びブレード基端側着雷検知部2のそれぞれに第一の信号送出部3が備えられる(言い換えると、信号の伝達が可能であるように接続される)。そして、当該第一の信号送出部3により、着雷検知部1,2によって検知された電流(言い換えると、電流が流れたこと)に対応する信号(具体的には、電気信号や光信号など)が取り込まれ、所定の処理が行われて検出電流データDCとして送出される。
【0058】
第一の信号送出部3の仕組みは、電流に対応する電気信号や光信号等を取り込むと共に当該信号を伝送可能なデータ・信号に変換して送出(出力)し得るものであれば、特定の方式や機序に限定されない。
【0059】
第一の信号送出部3としては、例えば、入力された電気信号を光信号に変換して出力(出射)する電気−光変換器(E/Oコンバータなどとも呼ばれる),入力された電気信号を無線信号に変換して出力する無線信号送信機,または入力(入射)された光信号を光信号として出力する光コネクタが用いられたり、或いは、これら種々の機器の組み合わせが用いられたりされ得る。
【0060】
第一の信号送出部3から送出された検出電流データDCは、ロータヘッド24やナセル22に設置される信号中継部4を経由し、例えば塔体21の基礎27やその近傍に設置される通信部8へと伝送される。
【0061】
第一の信号送出部3と信号中継部4との間の信号伝送の仕組みは、特定の方式や機序に限定されない。
【0062】
第一の信号送出部3と信号中継部4との間の信号伝送の仕組みとしては、例えば、第一の信号送出部3として電気−光変換器や光コネクタが用いられる場合には光ファイバが用いられる有線による信号送受の仕組み(即ち、光通信)や、第一の信号送出部3として無線信号送信機が用いられる場合には無線による信号送受の仕組み(即ち、無線通信)が用いられたり、或いは、これら種々の信号送受の仕組みが組み合わされて用いられたりされ得る。
【0063】
信号中継部4の仕組み、並びに、当該信号中継部4と通信部8との間の信号伝送の仕組みは、特定の方式や機序に限定されない。
【0064】
信号中継部4としては、例えば、入力(入射)された光信号を電気信号に変換して出力する光−電気変換器(O/Eコンバータなどとも呼ばれる),入力された無線信号を電気信号に変換して出力する無線信号受信機,入力された電気信号を光信号に変換して出力(出射)する電気−光変換器,または入力された電気信号を無線信号に変換して出力する無線信号送信機が用いられたり、或いは、これら種々の機器の組み合わせが用いられたりされ得る。
【0065】
なお、各ブレード23それぞれに設けられてこれらブレード23と一緒に回転する第一の信号送出部3から固定的に設置された通信部8へと信号を伝送するためには、信号中継部4において、回転する部位(具体的には、各ブレード23及びロータヘッド24)と回転しない部位(具体的には、ナセル22)との間での信号伝送を行う必要がある。このため、信号中継部4は、例えば、無線による信号送受の仕組みを含むものとして構成されたり、スリップリングを含むものとして構成されたりすることが考えられる。
【0066】
ここで、検出電流データDCが複数枚のブレード23のそれぞれに設けられたブレード先端側着雷検知部1及びブレード基端側着雷検知部2のうちの何れから出力されたもの(言い換えると、何れで検知された電流に関するもの)であるのかを識別できるようにする必要がある。着雷検知部1,2を識別するための仕組みは、特定の方式や機序に限定されるものではなく、例えば信号伝送の方式や信号伝送のために備えられる機器なども考慮された上で、適当なものが適宜選択される。
【0067】
着雷検知部1,2を識別するための仕組みとしては、例えば、第一の信号送出部3若しくは信号中継部4により、ブレード先端側着雷検知部1とブレード基端側着雷検知部2との各々に予め割り当てられた固有の識別子が識別子データIDとして付加された上で検出電流データDCが送出・伝送されるように構成されることが考えられる。
【0068】
また、信号中継部4と通信部8との間の信号伝送の仕組みとしては、例えば、各々に接続されて敷設された光ファイバが用いられる有線による信号送受の仕組み(即ち、光通信)や、各々に接続された無線信号送受信機が用いられる無線による信号送受の仕組み(即ち、無線通信)が用いられたり、或いは、これら種々の信号送受の仕組みが組み合わされて用いられたりされ得る。
【0069】
なお、第一の信号送出部3として電気−光変換器や光コネクタが用いられる場合には、信号中継部4が、各第一の信号送出部3に対応する(言い換えると、第一の信号送出部3毎に設けられる)光−電気変換器と、これら複数の光−電気変換器からの出力が入力される電気−光変換器とを含むものとして構成されるようにしても良い。そして、信号中継部4と通信部8とが光ファイバによって接続され、信号中継部4から通信部8へと検出電流データDCが光通信によって伝送されるようにしても良い。
【0070】
以上を踏まえ、あくまで一例として挙げると、ブレード先端側着雷検知部1やブレード基端側着雷検知部2として巻線CTが用いられる場合には、これら巻線CTで検知された電流に関する信号(具体的には、検出電流データDC,識別子データID)を通信部8へと伝送する仕組みが、
図2Aに示すように構成されることが考えられる。
【0071】
具体的には、以下のように構成される。
i)第一の信号送出部3として電気−光変換器(E/O)が用いられる。
ii)第一の信号送出部3と信号中継部4との間の信号伝送の仕組みとして光ファイバによる光通信が用いられる。
iii)信号中継部4が、光−電気変換器(O/E),スリップリング(SR),及び電気−光変換器(E/O)を有するものとして構成される。
iv)信号中継部4と通信部8との間の信号伝送の仕組みとして光ファイバによる光通信が用いられる。
v)通信部8が光−電気変換器(O/E)を含むものとして構成される。
【0072】
なお、
図2Aに示す例の場合には、回転する部位(具体的には、各ブレード23及びロータヘッド24)と回転しない部位(具体的には、ナセル22)との間での信号伝送が、信号中継部4のスリップリング(SR)によって行われる。
【0073】
また、ブレード先端側着雷検知部1やブレード基端側着雷検知部2として光ファイバCTが用いられる場合には、これら光ファイバCTで検知された電流に関する信号(具体的には、検出電流データDC,識別子データID)を通信部8へと伝送する仕組みが、
図2Bに示すように構成されることが考えられる。
【0074】
具体的には、以下のように構成される。
i)第一の信号送出部3として光コネクタ(OC)が用いられる。
ii)第一の信号送出部3と信号中継部4との間の信号伝送の仕組みとして光ファイバによる光通信が用いられる。
iii)信号中継部4が、光−電気変換器(O/E),無線信号送信機(RT),無線信号受信器(RR),及び電気−光変換器(E/O)を有するものとして構成される。
iv)信号中継部4と通信部8との間の信号伝送の仕組みとして光ファイバによる光通信が用いられる。
v)通信部8が光−電気変換器(O/E)を含むものとして構成される。
【0075】
なお、
図2Bに示す例の場合には、回転する部位(具体的には、各ブレード23及びロータヘッド24)と回転しない部位(具体的には、ナセル22)との間での信号伝送が、信号中継部4の無線信号送信機(RT)と無線信号受信器(RR)とによって行われる。
【0076】
ここで、特に第一の信号送出部3と信号中継部4との間並びに信号中継部4と通信部8との間における信号(具体的には、検出電流データDC,識別子データID)の伝送の仕組みとして電気的に絶縁された光ファイバによる光通信が用いられるようにすることにより、外部磁界の影響、具体的には落雷によるサージ電流や電気ノイズの影響を受け難くなるので、データ伝送の確実性を向上させることが可能であり、また、電流測定の精度を向上させると共にダイナミックレンジを十分に大きくすることが可能であり、延いては風力発電設備への落雷の検出手法や落雷状況の分析手法としての信頼性を向上させることが可能になる。
【0077】
また、ブレード先端側着雷検知部1やブレード基端側着雷検知部2として光ファイバCTが用いられるようにすることによっても、外部磁界の影響を受け難くなるので、上述と同様の作用効果が得られる。
【0078】
さらに、風力発電設備20の塔体21の基礎27寄り(即ち、下端寄り)の位置に落雷検知部7が設けられる。
【0079】
落雷検知部7は、塔体21の下端寄りの位置における、塔体内引下げ導体26bを含む塔体21から大地へと流れる電流を検知するためのものである。
【0080】
なお、落雷検知部7は、塔体内引下げ導体26bに電流が流れたことを少なくとも検知し得るものであれば良いものの、塔体内引下げ導体26bに流れる電流の大きさ(即ち、電流値、或いは、電流量)を計測し得るものであることが好ましい。
【0081】
落雷検知部7は、塔体内引下げ導体26bを含む塔体21を流れる電流を検知し得るもの、言い換えると、塔体内引下げ導体26bに電流が流れたことを少なくとも検知し得るものであれば、特定の方式や機序に限定されない。しかしながら、落雷検知部7は、塔体内引下げ導体26bに流れる電流の大きさを計測し得るものであることが好ましい。
【0082】
落雷検知部7としては、例えば、巻線CTや光ファイバCT、或いはロゴスキーコイル等の環状の電流センサが用いられ得る。
【0083】
落雷検知部7は、
図4に示す、ロゴスキーコイルを含む回路構造を備える装置として構成されるようにしても良い。なお、
図4において、符号Rは回路素子(部品)としての抵抗を表す。
【0084】
落雷検知部7の一例としての、
図4に示す回路構造を備える電流検出装置は、内部積分回路11と外部積分回路14とを有し、ロゴスキーコイル11aとともに内部積分回路11を構成して当該内部積分回路11の低域カット周波数が第一の周波数faになるように選定された抵抗体11bをロゴスキーコイル11aの両端に接続して得られる信号と、低域カット周波数が第二の周波数fbであると共に高域カット周波数が第一の周波数faである外部積分回路14でロゴスキーコイル11aからの信号を積分して得られる信号とを加算回路16によって加算するようにしている。
【0085】
内部積分回路11は、ロゴスキーコイル11aと、当該ロゴスキーコイル11aの両端に接続される抵抗体11bとを有する。
図4において、ロゴスキーコイル11aは、インダクタンスLとコイルの内部抵抗Rとを含むものとして表される。
【0086】
抵抗体11bとしては、ロゴスキーコイル11aのインダクタンスL及びコイルの内部抵抗Rとともに内部積分回路11を構成した場合に、低域カット周波数が第一の周波数fa[Hz]となるものが選定される。
【0087】
ロゴスキーコイル11aの電気的特性は、例えば、インダクタンスLが500[μH]であると共に、ロゴスキーコイル11aの内部抵抗Rとの合成抵抗値が1[Ω]になるように抵抗体11bが選定されることが考えられる。この場合には、内部積分回路11は、500〜700[Hz]程度から0.1[Hz]程度までの領域において−20[db/ディケード]の垂下特性を有するものとして構成される。
【0088】
ロゴスキーコイル11aと抵抗体11bとの接続点には起電力検知用の抵抗12が接続される。そして、当該抵抗12を介して内部積分回路11の起電力が内部積分回路バッファ13を介して加算回路16の一方の入力端子に入力される。
【0089】
抵抗12には外部積分回路14が接続される。そして、当該外部積分回路14から出力された積分出力信号は外部積分回路バッファ15を介して加算回路16の他方の入力端子に入力される。
【0090】
外部積分回路14は、高域カット周波数が、内部積分回路11の低域カット周波数(即ち、第一の周波数fa[Hz])に一致するように調整される。
【0091】
なお、外部積分回路14は、積分回路を構成する演算増幅器の利得が70〜80[db]程度に設定されることが考えられる。
【0092】
外部積分回路14は、また、低域カット周波数が、第一の周波数fa[Hz]よりも小さい第二の周波数fb[Hz](即ち、fa>fb)に設定される。
【0093】
上述の
図4に示す回路構造を備える装置として落雷検知部7が構成されるようにした場合には、ロゴスキーコイル11aとともに内部積分回路11を構成して当該内部積分回路11の低域カット周波数が第一の周波数fa[Hz]になるように選定された抵抗体11bをロゴスキーコイル11aの両端に接続して得られる信号と、低域カット周波数が第二の周波数fb[Hz]であると共に高域カット周波数が第一の周波数fa[Hz]である外部積分回路14でロゴスキーコイル11aからの信号を積分して得られる信号とが加算回路16によって加算されることにより、周波数に大きく依存するロゴスキーコイルからの信号の利得が安定的に補正されて出力される。したがって、加算回路16のゲイン−周波数特性を、直流成分がカットされ、且つ、第二の周波数fb[Hz]以上が平坦であるようにすることができる。
【0094】
そして、
図4に示す回路構造を備える装置として落雷検知部7が構成された場合、ロゴスキーコイル11aが風力発電設備の塔体21に装着された状態で当該の風力発電設備に落雷すると、ロゴスキーコイル11aの起電力として落雷電流が検知される。
【0095】
上記起電力は、ロゴスキーコイル11aのインダクタンスL及びコイルの内部抵抗Rと抵抗体11bとの合成抵抗により形成される内部積分回路11によって積分されて落雷電流値(言い換えると、落雷電流量)に比例した信号として抵抗12へと出力される。
【0096】
抵抗12を通過した信号は、内部積分回路バッファ13を経由して加算回路16の一方の入力端子に入力され、また、外部積分回路14で積分された信号は外部積分回路バッファ15を経由して加算回路16の他方の入力端子に入力される。
【0097】
ここで、落雷電流の低周波成分では、ロゴスキーコイル11aのリアクタンスがあまり大きくは作用しないので、電流はコイルの内部抵抗Rと抵抗体11bとで決まることになり、インダクタンスLの両端電圧が落雷電流を微分した電圧になる。
【0098】
また、落雷電流のテール部は、ロゴスキーコイル11aのインダクタンスL及びコイルの内部抵抗Rと抵抗体11bとの合成抵抗により形成される内部積分回路11の低域カット周波数(即ち、第一の周波数fa)よりも低い周波数の成分を多く含む。
【0099】
このため、内部積分回路11での積分利得は非常に小さく、実質的にはロゴスキーコイル11aで検知された落雷電流による起電力、つまり抵抗体11bに印加した信号だけが外部積分回路14に入力されることになる。
【0100】
そして、外部積分回路14は、低域カット周波数(即ち、第二の周波数fb)と高域カット周波数(即ち、第一の周波数fa;但し、fa>fb)とを有し、ロゴスキーコイル11aのインダクタンスL及びコイルの内部抵抗Rと抵抗体11bとの合成抵抗により形成される内部積分回路11の垂下特性とは相反する垂下特性を有する。これにより、外部積分回路14は、第二の周波数fbから第一の周波数faまでの範囲では平坦化した信号を出力する。
【0101】
一方、落雷電流の高周波成分では、ロゴスキーコイル11aのインダクタンスLが大きく作用するので、インダクタンスLの両端電圧は落雷電流の微分に比例したものが誘起されて入力とほぼ釣り合っているため、直列に繋いだ抵抗体11bの両端電圧が積分値になる。
【0102】
以上により、高い周波数成分の電流はロゴスキーコイル11aの内部積分機能によって電圧信号に変換され、また、継続時間が長く低い周波数成分の電流は外部積分回路14によって電圧信号に変換され、これらの信号成分が加算回路16によって合成され、結果として、落雷電流全体の波形パターンが正確に再現された電圧信号が得られる。
【0103】
ここで、第一の周波数fa[Hz]及び第二の周波数fb[Hz]は、特定の値に限定されるものではなく、落雷電流の特性などが考慮された上で適当な値にそれぞれ適宜設置される。
【0104】
第一の周波数faは、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、0.1[Hz]程度に設定され得る。
【0105】
また、第二の周波数fbは、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、500〜700[Hz]程度に設定され得る。
【0106】
落雷検知部7に第二の信号送出部5が備えられる(言い換えると、信号の伝達が可能であるように接続される)。そして、当該第二の信号送出部5により、落雷検知部7によって検知された電流に対応する信号(具体的には、電気信号や光信号など)が取り込まれ、所定の処理が行われて落雷電流データLCとして送出される。
【0107】
第二の信号送出部5の仕組みは、電流に対応する電気信号や光信号等を取り込むと共に当該信号を伝送可能なデータ・信号に変換して送出(出力)し得るものであれば、特定の方式や機序に限定されない。
【0108】
第二の信号送出部5としては、例えば、入力された電気信号を光信号に変換して出力(出射)する電気−光変換器,入力された電気信号を無線信号に変換して出力する無線信号送信機,または入力(入射)された光信号を光信号として出力する光コネクタが用いられたり、或いは、これら種々の機器の組み合わせが用いられたりされ得る。
【0109】
なお、落雷電流データLCが落雷検知部7から出力されたもの(言い換えると、落雷検知部7によって検知された電流に関するもの)であることを識別できるようにする必要がある場合には、例えば、第二の信号送出部5により、落雷検知部7に予め割り当てられた固有の識別子が識別子データIDとして付加された上で落雷電流データLCが送出されるように構成されても良い。
【0110】
第二の信号送出部5から送出された落雷電流データLC(及び、必要に応じ、識別子データID)は、通信部8へと伝送される。
【0111】
第二の信号送出部5と通信部8との間の信号伝送の仕組みは、特定の方式や機序に限定されない。
【0112】
第二の信号送出部5と通信部8との間の信号伝送の仕組みとしては、例えば、第二の信号送出部5として電気−光変換器や光コネクタが用いられる場合には光ファイバが用いられる有線による信号送受の仕組み(即ち、光通信)や、第二の信号送出部5として無線信号送信機が用いられる場合には無線による信号送受の仕組み(即ち、無線通信)が用いられたり、或いは、これら種々の信号送受の仕組みが組み合わされて用いられたりされ得る。
【0113】
以上を踏まえ、あくまで一例として挙げると、落雷検知部7としてロゴスキーコイルが用いられる場合には、当該ロゴスキーコイルで検知された電流に関する信号(具体的には、落雷電流データLC、及び、必要に応じ、識別子データID)を通信部8へと伝送する仕組みが、
図2Aや
図2Bに示すように構成されることが考えられる。
【0114】
具体的には、以下のように構成される。
i)第二の信号送出部5として電気−光変換器(E/O)が用いられる。
ii)第二の信号送出部5と通信部8との間の信号伝送の仕組みとして光ファイバによる光通信が用いられる。
iii)通信部8が光−電気変換器(O/E)を含むものとして構成される。
【0115】
通信部8は、ブレード先端側着雷検知部1やブレード基端側着雷検知部2から出力されて第一の信号送出部3及び信号中継部4を介して入力された検出電流データDC及び識別子データID、並びに、落雷検知部7から出力されて入力された落雷電流データLCを、例えば風力発電設備の運転制御所や風力発電設備に関するデータの管理センターなどに設置された、データを記録・保存するためのサーバ等(「記録装置9」と呼ぶ)へと伝送するためのものである。
【0116】
通信部8と記録装置9との間の信号伝送の仕組みとしては、例えば、種々の有線による信号送受の仕組みや無線による信号送受の仕組みが用いられたり、或いは、これら種々の信号送受の仕組みが組み合わされて用いられたりされ得る。
【0117】
あくまで一例として挙げると、
図2Aや
図2Bに示すように、通信部8が無線信号送信機(RT)を含むものとして構成されて記録装置9へと無線通信によって信号が伝送されるように構成されることが考えられる。
【0118】
上述した風力発電設備への落雷の検出装置の動作を以下に説明する。
【0119】
風力発電設備20に落雷すると、塔体21に設けられた落雷検知部7によって風力発電設備20への落雷が検知され、具体的には落雷検知部7によって検知された電流に対応する信号が出力され、当該信号が第二の信号送出部5によって処理されて落雷電流データLCとして通信部8へと伝送される。
【0120】
この際、必要に応じ、例えば第二の信号送出部5によって識別子データIDが付加された上で落雷電流データLCと識別子データIDの組み合わせデータとして通信部8へと伝送される。
【0121】
そして、通信部8へと伝送された落雷電流データLC(及び、必要に応じ、識別子データID)が通信部8によって記録装置9へと伝送される。
【0122】
また、風力発電設備20への落雷が複数枚のブレード23のうちの何れかに着雷したものである場合には、各ブレード23に設けられたブレード先端側着雷検知部1とブレード基端側着雷検知部2とのうちの一つ以上の着雷検知部1,2によってブレードへの着雷が検知され、具体的にはブレード先端側着雷検知部1やブレード基端側着雷検知部2によって検知された電流に対応する信号が出力され、当該信号が第一の信号送出部3によって処理されると共に信号中継部4を介して検出電流データDCとして通信部8へと伝送される。
【0123】
この際、例えば第一の信号送出部3若しくは信号中継部4によって識別子データIDが付加された上で検出電流データDCと識別子データIDの組み合わせデータとして通信部8へと伝送される。
【0124】
そして、通信部8へと伝送された検出電流データDCと識別子データIDとの組み合わせデータが通信部8によって記録装置9へと伝送される。
【0125】
記録装置9では、落雷電流データLC、及び、伝送されている場合には検出電流データDCと識別子データIDとの組み合わせデータが記録・保存される。
【0126】
この際、落雷電流データLCや検出電流データDCの日付及び時刻がこれらデータと対応づけられて落雷日時データとして記録される。なお、落雷日時データは、例えば、落雷電流データLCや検出電流データDCが通信部8によって伝送される時を基準として当該通信部8によって付加されて当該データと一緒に伝送されて記録されるようにしても良く、或いは、落雷電流データLCや検出電流データDCが記録装置9に入力された時を基準として当該記録装置9によって付加されて当該データと一緒に記録されるようにしても良い。
【0127】
以上のように構成された風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置によって取得されたデータによれば、例えば以下のような分析が可能になる。
【0128】
1)全落雷に対するブレードのレセプターへの着雷の比率
識別子データIDとして各ブレード先端側着雷検知部1の識別子のうちの何れかが付加された検出電流データDCが記録されている場合は、ブレード23の先端のレセプター25へと着雷したと考えられる。
【0129】
したがって、或る落雷日時データが付加された落雷電流データLCが記録されていると共に前記落雷日時データに対応するブレード先端側着雷検知部1の検出電流データDCが記録されている場合には、風力発電設備20への落雷があり且つ当該落雷はブレード23のレセプター25へと着雷したと考えられる。
【0130】
これに対し、或る落雷日時データが付加された落雷電流データLCが記録されているものの前記落雷日時データに対応するブレード先端側着雷検知部1の検出電流データDCが記録されていない場合には、風力発電設備20への落雷があり且つ当該落雷はブレード23のレセプター25以外(なお、ブレード23以外も含む)に着雷したと考えられる。
【0131】
なお、「前記落雷日時データに対応する検出電流データDC」とは、落雷電流データLCに付加されている或る落雷日時データと完全に一致している落雷日時データが付加されている検出電流データDC、若しくは、或る落雷日時データと完全には一致していないものの同一の落雷であると判断され得る程度には十分に近い落雷日時データが付加されている検出電流データDCという意味である。具体的には例えば、付加されている落雷日時データの差違が数ミリ秒程度であれば、これら落雷日時データが付加されている落雷電流データLCと検出電流データDCとは同一の落雷に関するデータであると判断され得る。
【0132】
したがって、風力発電設備20への落雷の総回数に対するブレード23のレセプター25への着雷の回数の比率が求められる。
【0133】
なお、風力発電設備20への落雷の総回数とは、分析対象期間内に、落雷検知部7によって電流が検知された回数であり、即ち落雷検知部7から信号が出力された回数であり、言い換えると、記録装置9に記録された落雷電流データLCの個数である。
【0134】
また、ブレード23のレセプター25への着雷の回数とは、分析対象期間内に、ブレード先端側着雷検知部1によって電流が検知された回数であり、即ちブレード先端側着雷検知部1から信号が出力された回数であり、言い換えると、記録装置9に記録された、各ブレード先端側着雷検知部1の識別子のうちの何れかが識別子データIDとして付加されている検出電流データDCの個数である。
【0135】
そして、上記1)の分析が、以下の処理を含む風力発電設備への落雷状況の分析方法として行われるようにしても良い。
【0136】
具体的には、風力発電設備への落雷状況の分析方法は、上述の風力発電設備への落雷を検出する方法としての処理に加え、分析対象期間内にブレード23の先端側位置においてブレード内引下げ導体26aに流れる電流が検知された回数を、塔体内引下げ導体26bを含む塔体21に流れる電流が検知された回数で除することにより、風力発電設備20への落雷の総回数に対するブレード23のレセプター25への着雷回数の比率を求める処理を含む。
【0137】
上記風力発電設備への落雷状況の分析方法は、風力発電設備への落雷状況の分析装置によって行われるようにしても良い。風力発電設備への落雷状況の分析装置は、具体的には、上述の風力発電設備への落雷を検出する装置としての構成に加え、分析対象期間内にブレード先端側着雷検知部1によって電流が検知された回数を、落雷検知部7によって電流が検知された回数で除することにより、風力発電設備20への落雷の総回数に対するブレード23のレセプター25への着雷回数の比率を算出する算出部10を有する。
【0138】
2)ブレードのうちのレセプター以外の部位への着雷の比率
識別子データIDとして各ブレード基端側着雷検知部2の識別子のうちの何れかが付加された検出電流データDCが記録されている一方で識別子データIDとして各ブレード先端側着雷検知部1の識別子のうちの何れかが付加された検出電流データDCが記録されていない場合は、ブレード23への着雷ではあるものの、レセプター25への着雷ではなく、レセプター25を除くブレード23の何れかの部位へと着雷したと考えられる。
【0139】
したがって、或る落雷日時データが付加されたブレード基端側着雷検知部2の検出電流データDCが記録されていると共に前記落雷日時データに対応する(言い換えると、同一の落雷に関するデータであると判断され得る)ブレード先端側着雷検知部1の検出電流データDCが記録されていない場合には、風力発電設備20への落雷があり且つ当該落雷はレセプター25を除くブレード23の何れかの部位へと着雷したと考えられる。
【0140】
一方、或る落雷日時データが付加された落雷電流データLCが記録されている場合には、風力発電設備20への落雷があったと考えられる。
【0141】
したがって、風力発電設備20への落雷の総回数に対するレセプター25を除くブレード23への着雷の回数の比率が求められる。
【0142】
なお、レセプター25を除くブレード23への着雷の回数とは、分析対象期間内に、ブレード先端側着雷検知部1によって電流が検知されていない一方でブレード基端側着雷検知部2によって電流が検知された回数であり、即ちブレード先端側着雷検知部1から信号が出力されていない一方でブレード基端側着雷検知部2から信号が出力された回数であり、言い換えると、記録装置9に記録された、各ブレード基端側着雷検知部2の識別子のうちの何れかが識別子データIDとして付加されている検出電流データDCのうち、対応する落雷日時に関する各ブレード先端側着雷検知部1の識別子のうちの何れかが識別子データIDとして付加されている検出電流データDCが存在しないものの個数である。
【0143】
そして、上記2)の分析が、以下の処理を含む風力発電設備への落雷状況の分析方法として行われるようにしても良い。
【0144】
具体的には、風力発電設備への落雷状況の分析方法は、上述の風力発電設備への落雷を検出する方法としての処理に加え、分析対象期間内にブレード23の先端側位置においてブレード内引下げ導体26aに流れる電流が検知されていない一方でブレード23の基端側位置においてブレード内引下げ導体26aに流れる電流が検知された回数を、塔体内引下げ導体26bを含む塔体21に流れる電流が検知された回数で除することにより、風力発電設備20への落雷の総回数に対するレセプター25を除くブレード23への着雷回数の比率を求める処理を含む。
【0145】
上記風力発電設備への落雷状況の分析方法は、風力発電設備への落雷状況の分析装置によって行われるようにしても良い。風力発電設備への落雷状況の分析装置は、具体的には、上述の風力発電設備への落雷を検出する装置としての構成に加え、分析対象期間内にブレード先端側着雷検知部1によって電流が検知されていない一方でブレード基端側着雷検知部2によって電流が検知された回数を、落雷検知部7によって電流が検知された回数で除することにより、風力発電設備20への落雷の総回数に対するレセプター25を除くブレード23への着雷回数の比率を算出する算出部10を有する。
【0146】
また、上記1)において述べた考え方によってブレード23のレセプター25への着雷の回数が求められる。これにより、ブレード23への着雷の合計回数に対するレセプター25を除くブレード23への着雷の回数の比率が求められる。
【0147】
この場合には、風力発電設備への落雷状況の分析方法は、上述の風力発電設備への落雷を検出する方法としての処理に加え、分析対象期間内にブレード23の先端側位置においてブレード内引下げ導体26aに流れる電流が検知されていない一方でブレード23の基端側位置においてブレード内引下げ導体26aに流れる電流が検知された回数を、当該回数とブレード23の先端側位置においてブレード内引下げ導体26aに流れる電流が検知された回数との合計回数で除することにより、ブレード23への着雷の合計回数に対するレセプター25を除くブレード23への着雷回数の比率を求める処理を含む。
【0148】
上記風力発電設備への落雷状況の分析方法は、風力発電設備への落雷状況の分析装置によって行われるようにしても良い。風力発電設備への落雷状況の分析装置は、具体的には、上述の風力発電設備への落雷を検出する装置としての構成に加え、分析対象期間内にブレード先端側着雷検知部1によって電流が検知されていない一方でブレード基端側着雷検知部2によって電流が検知された回数を、当該回数とブレード先端側着雷検知部1によって電流が検知された回数との合計回数で除することにより、ブレード23への着雷の合計回数に対するレセプター25を除くブレード23への着雷回数の比率を算出する算出部10を有する。
【0149】
3)着雷部位の把握と落雷電流の大きさ
【0150】
上記1),2)において述べた考え方により、レセプター25とレセプター25を除くブレード23の何れかの部位とのうちのどちらに着雷したのかが特定され得る。
【0151】
また、検出電流データDCに付加されている落雷日時データに対応する(言い換えると、同一の落雷に関するデータであると判断され得る)落雷電流データLCが演算処理されることにより、塔体内引下げ導体26bを含む塔体21を流れる電流の電流値(言い換えると、電流量)が算出される。
【0152】
したがって、着雷した部位が把握されると共に、落雷電流の大きさが求められる。
【0153】
特に、ロゴスキーコイルを含む回路構造を備える装置として落雷検知部7が構成されるようにした場合には、落雷電流の大きさが正確に把握されると共に、落雷電流全体の波形パターンやエネルギーの大きさなどが正確に把握される。
【0154】
以上のように構成された風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置によれば、ブレード23の先端のレセプター25から大地へと流れる電流の検知(即ち、ブレード先端側着雷検知部1による電流の検知)の有無,ブレード23の基端部を通って大地へと流れる電流の検知(即ち、ブレード基端側着雷検知部2による電流の検知)の有無,及び塔体21を通って大地へと流れる電流の検知(即ち、落雷検知部7による電流の検知)の有無の組み合わせに基づいて、風力発電設備20へと落雷した場合に、ブレード23のレセプター25,ブレード23のうちのレセプター25以外の部位,及び風力発電設備20のうちのブレード23以外の部位のうちの何れに着雷したのかを特定することができる。このため、ブレード23を含む風力発電設備20の落雷保護対策を合理的に行うために有用であると考えられる定量的なデータを提供することを可能にし、風力発電設備への落雷に関する分析及び評価や風力発電設備(特にブレード)の維持管理に必要とされるデータ収集のための手法としての有為性の向上を図ることが可能になる。
【0155】
以上のように構成された風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置によれば、また、ブレード23のレセプター25,ブレード23のうちのレセプター25以外の部位,及び風力発電設備20のうちのブレード23以外の部位という着雷部位別に落雷電流の累積を定量的に把握(計測)することができる。このため、落雷電流の累積値とブレード23の各部やその他部位の損傷の程度との関係を実績として整理することにより、着雷部位別の落雷電流の累積値に基づいて風力発電設備20の各部の損傷の程度を評価(推定)することができる。したがって、風力発電設備に関する管理・保守を定量的に行うことができ、例えば各部部品の最適な保守時期や交換時期などを見極めて決定することが可能になり、延いては風力発電設備の管理・保守の効率を向上させると共に信頼性を向上させることが可能になる。
【0156】
以上のように構成された風力発電設備への落雷の検出方法及び検出装置は、特に、塔体21に流れる電流を検知するものとしてロゴスキーコイル11aが用いられると共に内部積分回路11の低域カット周波数と外部積分回路14の高域カット周波数とが一致するように設定されたうえでそれぞれで積分された信号が加算されるようにした場合には、外部積分回路14の垂下特性を積極的に利用して落雷電流のうちの限りなく直流に近い成分を含むテール部を高い精度で検知することができると共に、外部積分回路14はロゴスキーコイル11aの内部積分機能の低域カット周波数までの帯域を補正するだけで済むために広帯域の積分回路が不要となって安価に且つ高い性能(感度)で落雷電流を検知することができる。このため、落雷電流の検出技術としての高性能化を図ると共に汎用性の向上を図ることが可能になる。
【0157】
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
【0158】
例えば、上述の実施形態では落雷検知部7がロゴスキーコイルを含む回路構造を備える装置として構成されるようにしているが、落雷検知部7の構成はこれに限られるものではなく、塔体内引下げ導体26bを含む塔体21を流れる電流を検知し得るものであればどのようなものであっても構わない。
【0159】
また、上述の実施形態では通信部8が設置されるようにしているが、通信部8が設置されることは本発明において必須の構成ではなく、例えば塔体21の基礎27やその近傍に通信部8に代わって記録装置9が設置されるようにし、各種データが記録装置9に一旦保存・記録されたうえで種々の記録媒体によって算出部10(具体的には、算出部10として機能する計算機や演算装置)へと移されたり分析処理に用いられたりするようにしても良い。
【0160】
また、上述の実施形態では記録装置9が設置されるようにしているが、記録装置9が設置されることは本発明において必須の構成ではなく、記録装置9が設置されないようにし、各種データが通信部8から算出部10(具体的には、算出部10として機能する計算機や演算装置)へと直接伝送されて算出部10に記録・保存されたり分析処理に用いられたりするようにしても良い。
【0161】
さらに言えば、上述の実施形態のように着雷検知部1,2及び第一の信号送出部3(の一部)として
図3に示す仕組みが用いられることが好ましいものの、信号中継部4,第二の信号送出部5,通信部8,記録装置9,及び算出部10がどのような態様のものであるかは、それぞれがそもそも設けられるか否かを含めて本発明として特定のものには限定されない。
【0162】
また、上述の実施形態では、レセプター及び着雷検知部が各ブレード23の先端部にそれぞれ一個ずつ設けられるようにしているが、各ブレード23に設けられるレセプター及び着雷検知部の個数は、一個ずつに限定されるものではなく、複数個ずつ設けられるようにしても良い。具体的には例えば、
図5に示すように、ブレード23の先端部のレセプター25及びブレード先端側着雷検知部1に加えてブレード23の幅方向における縁部に複数個の縁部レセプター25A乃至25D及びブレード縁部着雷検知部1A乃至1Dが設けられるようにしても良い。
【0163】
図5に示すようにレセプター及び着雷検知部が配設された場合には、先端部のレセプター25または縁部レセプター25A乃至25Dのうちの何れかに着雷(
図5に示す例では一例として縁部レセプター25Bに着雷;符号C−1)すると、落雷電流はブレード内引下げ導体26aへと直接誘導される。したがって、ブレード先端側着雷検知部1またはブレード縁部着雷検知部1A乃至1Dのうちの何れか(
図5に示す例ではブレード縁部着雷検知部1B)とブレード基端側着雷検知部2との両方において電流が検知される。
【0164】
一方、先端部のレセプター25および縁部レセプター25A乃至25Dを除くブレード23のいずれかの部位に着雷(
図5に示す例では符号C−2)すると、落雷電流は二次放電点29からブレード内引下げ導体26aへと誘導される。したがって、ブレード先端側着雷検知部1およびブレード縁部着雷検知部1A乃至1Dの何れにおいても電流は検知されず、ブレード基端側着雷検知部2のみにおいて電流が検知される。
【0165】
また、
図6に示すように、ブレード内引下げ導体26aのブレード先端側着雷検知部1とブレード基端側着雷検知部2との間にブレード中間着雷検知部が適宜設けられるようにしても良い(
図6に示す例では一例としてブレード中間着雷検知部1X,1Yの二個)。ブレード内引下げ導体26aに対してブレード中間着雷検知部1X,1Yが設けられることにより、特に先端部のレセプター25および縁部レセプター25A乃至25Dを除くブレード23のいずれかの部位に着雷した場合の着雷部位を一層詳細に特定することが可能になる。
【0166】
具体的には例えば
図6に示す例のように落雷電流が二次放電点29からブレード内引下げ導体26aへと誘導される場合には、ブレード中間着雷検知部1Xでは電流は検知されずにブレード中間着雷検知部1Yのみで電流が検知されるので、これらの情報に基づいて着雷部位を詳細に特定することが可能になる。そして、着雷部位を詳細に特定することにより、ブレード23の点検作業等において特に注意すべき箇所が予め把握されるので、点検作業等の効率化や確実性の向上を図ることなどが可能になる。