【解決手段】排気熱回収装置1は、エンジン(内燃機関)10からの排ガス(排気)Gを流通させる排気流路21に配置され、排ガスGを浄化するための触媒を有する1つ以上の触媒部3と、排気流路21に配置され、排ガスGから熱を回収するための熱交換器を有し、かつ、熱交換器を通過した排ガスGをエンジン10の吸気系に還流させることができるよう構成された熱交換部4と、を備えている。触媒部3は、排気流路21において、熱交換部4の上流側にのみ配置されている。
【背景技術】
【0002】
車両等において、内燃機関の排気流路には、排気を浄化するための触媒を有する触媒部(例えば、触媒と触媒を担持する担体とを含む触媒装置等)が配置されている。また、排気再循環冷却機能(以下、EGRクーラ機能という。EGR:Exaust Gas Recirculation)を有する内燃機関の排気流路には、排気から排気熱を回収するための熱交換器が配置されている。熱交換器を通過して排気熱が回収され、冷却された排気の一部は、内燃機関の吸気系に還流される。
【0003】
例えば、特許文献1には、内燃機関の排気流路において、排気熱回収機能及びEGRクーラ機能の両機能を有する熱交換器、熱交換器の上流側に配置された上流側触媒部(上流触媒)、熱交換器の下流側に配置された下流側触媒部(下流触媒)等を備えた内燃機関の制御装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の内燃機関の制御装置では、熱交換器の下流側に下流側触媒部が配置されている。そのため、内燃機関の始動時、上流側触媒部及び下流側触媒部における触媒の早期活性が要求されるが、下流側触媒部が熱交換器の下流側(内燃機関から遠い位置)にあることから、熱交換器を通過して熱回収された低温の排気が下流側触媒部に流入する。これにより、熱交換器にて回収した排気熱を内燃機関の暖機等に利用することができるものの、下流側触媒部における触媒の早期活性が困難となり、触媒の暖機時間が長くなる。一方、下流側触媒部における触媒の早期活性を実現しようとすると、高温の排気が下流側触媒部に流入するように、例えば、熱交換器を通過する排気量を減らす等、熱交換器の排気熱回収機能の発揮を抑制しなければならない。
【0006】
また、内燃機関の高負荷時(高回転時)、熱交換器のEGRクーラ機能を発揮させる場合、熱交換器が下流側触媒部の上流側(内燃機関に近い位置)にあることから、熱交換器に到達するまでの排気の放熱量が少なく、高温の排気が熱交換器に流入することになる。これにより、熱交換器にて排気熱を回収し、冷却した排気を内燃機関の吸気系に還流させる際、排気との間での熱交換量が多くなるため、ラジエータ等の車両の冷却装置に対する負荷が大きくなる。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、触媒の早期活性を実現しながら、排気熱回収機能及びEGRクーラ機能を十分に発揮することができる排気熱回収装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様である排気熱回収装置は、内燃機関からの排気を流通させる排気流路に配置され、排気を浄化するための触媒を有する1つ以上の触媒部と、排気流路に配置され、排気から熱を回収するための熱交換器を有し、かつ、熱交換器を通過した排気を内燃機関の吸気系に還流させることができるよう構成された熱交換部と、を備えている。触媒部は、排気流路において、熱交換部の上流側にのみ配置されている。
【0009】
上記排気熱回収装置によれば、触媒部は、排気流路において、熱交換器を有する熱交換部の上流側にのみ配置されている。例えば、触媒部が複数の場合、全ての触媒部が熱交換器を有する熱交換部の上流側に配置されている。言い換えれば、熱交換器を有する熱交換部の下流側に、触媒部が配置されていない。
【0010】
そのため、内燃機関の始動時、触媒部における触媒の早期活性が要求されるが、触媒部が熱交換部よりも上流側(内燃機関に近い位置)にあることから、高温の排気を触媒部に流入させることができ、触媒部における触媒の早期活性を実現することができる。また、触媒部を通過した排気を熱交換部に流入させ、熱交換部の熱交換器において排気熱の回収を行い、回収した排気熱を内燃機関の暖機等に利用することができる。よって、触媒の早期活性を実現しながら、排気熱回収機能を十分に発揮することができる。
【0011】
また、内燃機関の高負荷時(高回転時)、熱交換部のEGRクーラ機能を発揮させる場合、熱交換部が触媒部よりも下流側(内燃機関から遠い位置)にあることから、熱交換部の熱交換器に到達するまでの排気の放熱量が多くなり、低温の排気が熱交換器に流入することになる。これにより、熱交換器にて排気熱を回収し、冷却した排気を内燃機関の吸気系に還流させる際、排気との間での熱交換量が少なくなり、EGRクーラ機能を十分に発揮することができる。さらに、ラジエータ等の車両の冷却装置に対する負荷を小さくすることができる。
【0012】
なお、上記排気熱回収装置において、触媒部としては、例えば、触媒と触媒を担持する担体とを含む触媒装置等が挙げられる。触媒部は、1つ以上である。すなわち、触媒部は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、内燃機関の吸気系とは、内燃機関に吸気するための部分、例えば、内燃機関に供給する空気を流通させる吸気流路等をいう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(実施形態1)
図1〜
図3に示すように、本実施形態の排気熱回収装置1は、エンジン(内燃機関)10からの排ガス(排気)Gを流通させる排気流路21に配置され、排ガスGを浄化するための触媒を有する1つ以上の触媒部3と、排気流路21に配置され、排ガスGから熱を回収するための熱交換器41を有し、かつ、熱交換器41を通過した排ガスGをエンジン10の吸気系に還流させることができるよう構成された熱交換部4と、を備えている。触媒部3は、排気流路21において、熱交換部4の上流側にのみ配置されている。以下、この排気熱回収装置1を詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、排気熱回収装置1は、自動車等の車両のエンジン10に設けられている。エンジン10は、ガソリンエンジンである。エンジン10には、エンジン10からの排ガスGを流通させ、排ガスGを外部に排出するための排気管2が接続されている。排気管2内には、排気流路21が形成されている。
【0016】
排気熱回収装置1は、排気流路21の途中に配置された2つの触媒部3を備えている。2つの触媒部3は、第1触媒部3A及び第2触媒部3Bである。また、排気熱回収装置1は、同じく排気流路21の途中に配置された熱交換部4を備えている。熱交換部4は、熱交換器41(後述する
図2、
図3参照)を有する。
【0017】
第1触媒部3Aは、排気流路21において、エンジン10と熱交換部4との間に配置されている。第1触媒部3Aは、排ガスGを浄化するための触媒(図示略)と、触媒を担持する担体31Aとを含む三元触媒装置である。触媒は、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属である。担体31Aは、円柱状のセラミック製フィルタであり、上流側端面に流入した排ガスGが下流側端面から流出するように構成されている。排ガスG中のHC、CO、NOx等は、第1触媒部3Aを通過する際に、酸化・還元反応により浄化される。
【0018】
第2触媒部3Bは、排気流路21において、エンジン10と熱交換部4との間であり、かつ、第1触媒部3Aの下流側に配置されている。第2触媒部3Bは、排ガスGを浄化するための触媒(図示略)と、触媒を担持する担体31Bとを含む三元触媒装置である。触媒は、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属である。担体31Bは、円柱状のセラミック製フィルタであり、上流側端面に流入した排ガスGが下流側端面から流出するように構成されている。排ガスG中のHC、CO、NOx等は、第2触媒部3Bを通過する際に、酸化・還元反応により浄化される。
【0019】
2つの触媒部3(第1触媒部3A、第2触媒部3B)は、排気流路21において、熱交換部4の上流側(熱交換器41の上流側)に配置されている。したがって、触媒部3は、排気流路21において、熱交換部4の上流側(熱交換器41の上流側)にのみ配置されている。すなわち、熱交換部4の下流側(熱交換器41の下流側)に、触媒部3が配置されていない。
【0020】
図2、
図3に示すように、熱交換部4は、主流路211を有する。また、熱交換部4は、主流路211から分岐され、主流路211と熱交換器41との接続する第1副流路212と、熱交換器41と主流路211とを接続し、主流路211に合流する第2副流路213とを有する。すなわち、熱交換器41の上流側に第1副流路212が、熱交換器41の下流側に第2副流路213が配置されている。主流路211、第1副流路212及び第2副流路213は、いずれも排気流路21の一部を構成している。
【0021】
熱交換部4の主流路211の途中には、排気バルブ42が配置されている。排気バルブ42は、熱交換部4内における排ガスGの流れ、主流路211及び第1副流路212を流通する排ガスGの量等を制御するためのバルブ(弁)である。排気バルブ42は、車両に搭載されたECU(図示略)からの制御信号等により、排気バルブ42の開閉、開度等を制御できるよう構成されている。なお、排気バルブ42は、サーモスタット等の電子制御しないバルブであってもよい。
【0022】
熱交換器41は、排ガスGから排気熱を回収可能に構成されている。具体的には、熱交換器41は、熱交換器41を通過する排ガスGと、熱交換器41内を流通する熱交換媒体(例えば水等)との間で熱交換を行い、熱交換器41を通過する排ガスGから排気熱を回収し、排ガスGを冷却する。
【0023】
また、熱交換部4の第2副流路213は、第2副流路213から分岐されたEGR流路51を介して、エンジン10の吸気系に接続されている。具体的には、第2副流路213は、EGR流路51を介して、エンジン10に空気を供給するための吸気流路(図示略)に接続されている。なお、EGR流路51は、EGR管5によって形成されている。EGR流路51の途中には、EGRバルブ52が配置されている。EGRバルブ52は、エンジン10の吸気系に還流させる排ガスGの量を制御するためのバルブ(弁)である。EGRバルブ52は、車両に搭載されたECU(図示略)からの制御信号等により、EGRバルブ52の開閉、開度等を制御できるよう構成されている。
【0024】
次に、本実施形態の排気熱回収装置1の制御について説明する。
図2は、エンジン10の始動時における熱交換部4の状態を示している。このとき、排ガスGが主流路211を流通しないように、つまり排ガスGが第1副流路212から熱交換器41に流入するように、主流路211の排気バルブ42が閉じた状態となっている。また、熱交換器41を通過した排ガスGがEGR流路51を流通しないように、つまり熱交換器41を通過した排ガスGが第2副流路213を流通するように、EGR流路51のEGRバルブ52が閉じた状態となっている。
【0025】
図2に示す状態では、エンジン10から第1触媒部3A及び第2触媒部3Bを通過して熱交換部4に流入した排ガスGは、第1副流路212から熱交換器41に流入する。熱交換器41に流入した排ガスGは、熱交換器41内を流通する熱交換媒体(例えば水等)との間で熱交換が行われる。これにより、排ガスGから排気熱が回収され、排ガスGが冷却される。排気熱の回収によって暖められた熱交換媒体は、エンジン10の暖機等に利用される。熱交換器41を通過した排ガスGは、第2副流路213から熱交換部4の下流側へと流通する。
【0026】
また、
図2に示す状態において、さらに、熱交換器41を通過した排ガスGの一部がEGR流路51を流通するように、EGR流路51のEGRバルブ52を開いた状態(後述の
図3参照)にすることもできる。この場合、熱交換器41を通過して冷却された排ガスGは、その一部がEGR流路51を流通し、エンジン10の吸気系(吸気流路)に還流され、残りが第2副流路213から熱交換部4の下流側へと流通する。
【0027】
図3は、エンジン10の高負荷時(高回転時)における熱交換部4の状態を示している。このとき、排ガスGの一部が主流路211を流通し、残りが第1副流路212から熱交換器41に流入するように、主流路211の排気バルブ42が開いた状態となっている。排気バルブ42の開度を調整することにより、主流路211を流通する排ガスGの量、言い換えれば第1副流路212から熱交換器41に流入する排ガスGの量を制御することができる。また、熱交換器41を通過した排ガスGの一部がEGR流路51を流通するように、EGR流路51のEGRバルブ52が開いた状態となっている。
【0028】
図3の状態では、エンジン10から第1触媒部3A及び第2触媒部3Bを通過して熱交換部4に流入した排ガスGは、その一部が主流路211から熱交換部4の下流側へと流通し、残りが第1副流路212から熱交換器41に流入する。熱交換器41に流入した排ガスGは、熱交換器41内を流通する熱交換媒体(例えば水等)との間で熱交換が行われる。これにより、排ガスGから排気熱が回収され、排ガスGが冷却される。熱交換器41を通過して冷却された排ガスGは、その一部がEGR流路51を流通し、エンジン10の吸気系(吸気流路)に還流され、残りが第2副流路213から熱交換部4の下流側へと流通する。
【0029】
次に、本実施形態の排気熱回収装置1の作用効果について説明する。
本実施形態の排気熱回収装置1によれば、触媒部3(3A、3B)は、排気流路21において、熱交換器41を有する熱交換部4の上流側にのみ配置されている。本実施形態では、全ての触媒部3(3A、3B)が熱交換器41を有する熱交換部4の上流側に配置されている。言い換えれば、熱交換器41を有する熱交換部4の下流側に、触媒部3(3A、3B)が配置されていない。
【0030】
そのため、エンジン10の始動時、触媒部3(3A、3B)における触媒の早期活性が要求されるが、触媒部3(3A、3B)が熱交換部4よりも上流側(エンジン10に近い位置)にあることから、高温の排ガスGを触媒部3(3A、3B)に流入させることができ、触媒の早期活性を実現することができる。また、触媒部3(3A、3B)を通過した排ガスGを熱交換部4に流入させ、熱交換部4の熱交換器41において排気熱の回収を行い、回収した排気熱をエンジン10の暖機等に利用することができる。よって、触媒の早期活性を実現しながら、排気熱回収機能を十分に発揮することができる。さらに、熱交換器41を通過した排ガスGの一部をエンジン10の吸気系(吸気流路)に還流させれば、EGRクーラ機能をも発揮することができる。
【0031】
また、本実施形態では、エンジン10の始動時、熱交換部4の主流路211の排気バルブ42を閉じた状態としている。そのため、熱交換部4(熱交換器41)よりも上流側の圧力が上昇し、熱交換部4(熱交換器41)よりも上流側にある触媒部3(3A、3B)の温度を効果的に上昇させることができる。これにより、触媒の早期活性をより効果的に実現することができる。
【0032】
また、エンジン10の高負荷時(高回転時)、熱交換部4のEGRクーラ機能を発揮させる場合、熱交換部4が触媒部3(3A、3B)よりも下流側(エンジン10から遠い位置)にあることから、熱交換部4の熱交換器41に到達するまでの排ガスGの放熱量が多くなり、低温の排ガスGが熱交換器41に流入することになる。これにより、熱交換器41にて排気熱を回収し、冷却した排ガスGをエンジン10の吸気系に還流させる際、排ガスGとの間での熱交換量が少なくなり、EGRクーラ機能を十分に発揮することができる。さらに、ラジエータ等の車両の冷却装置に対する負荷を小さくすることができる。
【0033】
このように、本実施形態の排気熱回収装置1によれば、触媒の早期活性を実現しながら、熱交換器41を含む熱交換部4における排気熱回収機能及びEGRクーラ機能を十分に発揮することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0035】
(1)上述の実施形態において、エンジン(内燃機関)は、ガソリンエンジンであったが、ディーゼルエンジンであってもよい。
(2)上述の実施形態において、触媒部の数が2つであったが、これに限定されるものではなく、触媒部の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0036】
(3)上述の実施形態において、触媒部の触媒としては、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を用いたが、これに限定されるものではなく、他の触媒材料を用いてもよい。例えば、エンジン(内燃機関)の種類に合わせて最適な触媒材料を選択してもよい。
【0037】
(4)上述の実施形態において、触媒を担持する担体としては、円柱状のセラミック製フィルタを用いたが、これに限定されるものではなく、担体の形状、材料等を種々変更してもよい。
【0038】
(5)上述の実施形態において、熱交換部4は、熱交換器41、排気流路21を構成する主流路211、第1副流路212及び第2副流路213等を備える構成であったが、熱交換部の構成は、これに限定されるものではなく、熱交換器を有し、かつ、熱交換器を通過した排ガス(排気)をエンジン(内燃機関)の吸気系に還流させることができるよう構成されていれば、種々様々な構成とすることができる。
【0039】
(6)本発明の各構成要素は概念的なものであり、上述の実施形態に限定されない。例えば、1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上述の実施形態の構成の少なくとも一部を同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。