【実施例】
【0014】
水素吸脱着装置が付属された水素供給設備に関し、水素吸脱着装置部(水素吸脱着ユニット)の詳細と全体構成とに分けて説明する。
【0015】
(水素吸脱着ユニットが付属された水素供給設備の導管配置)
図1には水素供給設備の概略導管配置を示す。水素供給ユニット201から水素製造ユニット水素導管101が導き出され、水素圧力調節ユニット導管102からストップバルブV101を経て、その先の圧力調節ユニット水素第1導管103および圧力調節ユニット水素第2導管104に設置されたストップバルブV105およびストップバルブV106を経て圧力調節ユニット202に導入される。
【0016】
圧力調節ユニット202では圧力調節ユニット水素第1導管103の上流側からラインフィルタF101、水素圧力指示調圧バルブVpc101、およびストップバルブV107の順に配され、同様に圧力調節ユニット水素第2導管104の上流側からラインフィルタF102、水素圧力指示調圧バルブVpc102、およびストップバルブV108が配される。
【0017】
(水素供給ユニットと供給設備の緊急時における遮断)
水素供給ユニット201から導き出される水素製造ユニット水素導管101には緊急遮断バルブEV101が設置されその下流側に緊急遮断弁作動時ベント配管101Eが分岐している。該配管101Eには水素ベント系ノーマルクローズストップバルブV102さらにその先で分岐してノーマルクローズベント弁V103が設置される。圧力調節ユニット202以下への水素供給を緊急遮断しようとする際には、緊急遮断バルブEV101、ストップバルブV101、ストップバルブV104を閉塞し水素ベント系ノーマルクローズストップバルブV102およびノーマルクローズベント弁V103を開放することにより水素を供給設備系外に緊急放出できる。
【0018】
圧力調節ユニット202の下流側でストップバルブV107とストップバルブV108は水素流量調節ユニット導管105に接続され、接続点の下流側に配置された流量メータM101を経て流量調節ユニット203に入る。
【0019】
(流量調節ユニット)
水素流量調節ユニット導管105には接続された流量メータM101を経てから分岐配管された、その一方に導かれた水素は水素主導管107に設置された上流側からストップバルブV111、水素流量調整バルブVfc101、およびストップバルブV112を経て水素主導管107から水素導管108に入り、リザーバR101を通ってさらに下流側に導かれる。なお、流量調節ユニット203では水素流量調節ユニット導管105に接続された流量メータM101を経てから分岐配管された、その他方は水素副導管106が設置されており、上流側からノーマルクローズストップバルブV109、ノーマルクローズボールバルブV110の順に設置され、水素副導管106のさらに下流は水素導管108に接続される。通常の運転時はこれらのノーマルクローズバルブ類は閉塞されており、水素主導管107に設置された水素流量調整バルブVfc101などに不具合が生じた場合に、ストップバルブV111、ストップバルブV112を閉塞し、ノーマルクローズストップバルブV109およびノーマルクローズボールバルブV110マニュアル(手動)もしくはセミマニュアルで操作して一時的に流量調節されて、リザーバR101を通ってさらに下流側に導かれる。
【0020】
(水素貯蔵タンク、水素吸脱着ユニット、および水素供給所の配置)
流量調節ユニット203から出た水素導管108の下流側にはストップバルブV113、ストップバルブV114、および緊急遮断バルブEV102が設置され、その後段に水素吸脱着ユニット204への脱着水素導管7、吸着水素導管12への分岐、および水素貯蔵タンクR1が設けられる。これらの分岐の後段には、ストップバルブV117、ストップバルブ118、および緊急遮断バルブEV105の順にバルブ類が配され、最終的に水素供給所205に接続される。
【0021】
(水素吸脱着ユニットの詳細)
(水素導管への接続)
水素吸脱着ユニット204への水素の供給は吸着水素導管12から行われ、緊急遮断バルブEV104およびストップバルブV116をへて該ユニットに入る。また、水素吸脱着ユニット204からの脱着水素の供給は脱着水素導管7から行われ、該ユニット側からストップバルブV115および緊急遮断バルブEV103を経て水素導管108に戻す構成になっている。
【0022】
(吸脱着塔数)
水素吸脱着ユニット204の吸脱着塔は少なくとも2塔以上の吸脱着塔からなる。
図2は吸脱着塔を説明するための最低限の構成の吸脱着塔数が2の例である。従って、実際には設備の状況、水素の貯蔵容量などの種々要因を勘案して、吸脱着塔は2塔以上の最適な塔数を選択できる。
【0023】
(吸着剤の活性化運転例)
水素吸脱着ユニット204は最初の起動時に全ての吸脱着塔内に加熱された還元用ガスを送り、吸着剤を活性化する。
図2には全塔内に充填された吸着剤を還元する際の運転状況を示し、吸着剤の活性化運転時に使用される配管構成について説明する。
【0024】
第1吸脱着塔ADS1と第2吸脱着塔ADS2の塔頂部には、塔内に充填された水素吸着剤の活性化に資するための還元用ガスを供給するための破線で示すライン1が接続され上流側から還元用ガス圧力指示調圧バルブVpc1および還元用ガス流量調整バルブVfc1の順に配されている。さらにその先には第1吸脱着塔ADS1および第2吸脱着塔ADS2に分配するために第1吸脱着塔還元用ガス導管5aおよび第2吸脱着塔還元ガス導管5bが接続されている。第1吸脱着塔還元用ガス導管5aの下流側には第1吸脱着塔還元用ガス塔頂バルブV3が配され、第1吸脱着塔塔頂導管2を経由して第1吸脱着塔ADS1に至る。第2吸脱着塔還元用ガス導管5bの下流側には第2吸脱着塔還元用ガス塔頂バルブV4が配され、第2吸脱着塔塔頂導管4を経由して第2吸脱着塔ADS2に至る。この時、第1吸脱着塔塔頂導管2および第2吸脱着塔塔頂導管4の先に設置されている第1吸脱着塔水素塔頂バルブV1および第2吸脱着塔水素塔頂バルブV2は閉塞される。
【0025】
吸脱着塔内に充填された吸着剤の還元が完了するまでの間。還元用ガスは第1吸脱着塔塔頂導管2および第2吸脱着塔塔頂導管4から第1吸脱着塔ADS1および第2吸脱着塔ADS2の塔頂から導かれダウンフローされる。各吸着塔塔底からアウトガスがベントされるが、第1吸脱着塔ADS1と第2吸脱着等の各塔底に設置された第1吸脱着塔塔底導管10および第2吸脱着塔塔底導管6に導かれる。第1吸脱着塔塔底導管10および第2吸脱着塔塔底導管6にはそれぞれ第1吸脱着塔還元用ガスベント導管8aおよび第2吸脱着塔還元用ガスベント導管8bが接続されている。第1吸脱着塔ADS1の還元用ガスは第1吸脱着塔還元用ガスベント導管8aと第1吸脱着塔還元用ガスベント塔底バルブV6を経由して還元用ガスベント導管11(破線で示される)に入り、還元用ガスチェックバルブCH2を通ってベントされる。同様に、第2吸脱着塔ADS2の還元用ガスは第2吸脱着塔還元用ガスベント導管8bと第2吸脱着塔還元用ガスベント塔底バルブV5を経由して還元用ガスベント導管11(破線で示される)に入り、還元用ガスチェックバルブCH2を通ってベントされる。
この時、第1吸脱着塔吸着水素塔底バルブV8および第2吸脱着塔吸着水素塔底バルブV7は閉塞される。
【0026】
(還元用ガス)
還元用ガスとしては、水素、水素と水蒸気の混合ガス、一酸化炭素、一酸化炭素と水蒸気の混合ガス、および一酸化炭素と水素の混合ガスを好ましく用いることができ、水素、水素と水蒸気の混合ガス、および一酸化炭素と水蒸気の混合ガスをより好ましく用いることができ、水素、および水蒸気の混合ガスを最も好ましく使用できる。還元用ガスは還元用ガス流量調整バルブVfc1の直後で加熱して導入できる。
【0027】
熱交換後の還元用ガスの温度は210℃以上380℃以下が好ましく、220℃以上360℃以下がより好ましく、240℃以上350℃以下が最も好ましい。還元ガスの通気時間は第1吸脱着塔ADS1および第2吸脱着塔ADS2に充填される吸着剤の充填量などによって一概に決まらないが、初期立ち上げ時では6時間以上が望ましい。通気時間の上限は特に限定されるものではないが、運転効率などの観点から12時間以下が実質的な上限と考えられる。
【0028】
(水素吸脱着運転例)
図3にはすべての吸着塔を使用して、水素貯蔵タンクR1の吸着容量を増加させるための運転例を示す。水素吸脱着ユニット204の吸脱着塔数に関する説明で述べたように、本発明における吸脱着塔は少なくとも2塔以上の吸脱着塔からなり、これは最低限の吸脱着塔数構成である2塔の例である。よって、設備の状況、水素の貯蔵容量などの種々要因を勘案して、吸脱着塔は2塔以上の最適な塔数を選択すれば良い。
【0029】
(吸着操作)
吸着水素導管12は緊急遮断バルブEV104とストップバルブV116を介してR1が接続されている水素導管108(
図1および
図3参照)につながっている。水素は吸着水素導管12を通り、水素導入ポンプCpで送り込まれながら吸着水素チェックバルブCH1経て、吸着水素流量調整バルブVfc2を経て第1吸脱着塔吸着水素導管9aおよび第2吸脱着塔吸着水素導管9bに導かれる。水素は第1吸脱着塔吸着水素導管9aおよび第2吸脱着塔吸着水素導管9bに配されている第1吸脱着塔吸着水素塔底バルブV8および第2吸脱着塔水素塔底バルブV7は開放され、第1吸脱着塔塔底導管10、および第2吸脱着塔塔底導管6を通ってそれぞれ、第1吸脱着塔ADS1および第2吸脱着塔ADS2に導入され、先に述べた活性化運転で水素吸着能を発揮できる状態になっている吸着剤に吸着される。このように、吸着剤に水素が物理吸着および化学吸着することによって、分子運動が束縛されるため、限られた容積の吸脱着塔内により多くの水素を収容することができ、結果として供給設備全体の収容量(キャパシティー)が増える。
【0030】
(通常の脱着操作)
脱着に関しては所定圧に到達した段階で
図4に示す水素導入ポンプCpを停止させ吸着水素流量調整バルブVfc2、第1吸脱着塔水素塔底バルブV8、および第2吸脱着塔水素塔底バルブV7を閉塞する。水素供給に伴って主に水素貯蔵タンクR1内圧が減少することによって第1吸脱着塔ADS1および第2吸脱着塔ADS2から水素の脱着が起こるようになる。
【0031】
(連続運転時の水素吸着剤の再活性化運転例)
通常の吸着運転は上述のように全塔が吸着工程に与る格好で行われる。しかしながら、吸着剤は運転時間の経過とともに徐々に性能が低下する。この原因は水素中に含まれる酸素等の酸化性能を有する成分が、吸着剤に担持されているニッケル、コバルト、銅、モリブデン、およびタングステンなどの金属成分の酸化状態を徐々に高めるためと考えられる。従って、定期的に還元ガスを用いて吸着剤の再活性化を行うことが好ましい。
【0032】
しかしながら、吸脱着操作を停止し最初の起動時に行ったような全塔内に充填された吸着剤の還元を定期的に行うことは、日常的な水素供給(水素燃料供給)に不都合が生じる。以下に、一旦運転を開始した後の再活性化運転例を記す。
図5は第1吸脱着塔ADS1を再活性化運転しながら、第2吸脱着塔ADS2では水素の吸着を継続する例である。
【0033】
第1吸脱着塔ADS1の塔頂に位置する第1吸脱着塔脱着水素塔頂バルブV1と塔底に位置する第1吸脱着塔吸着水素塔底バルブV8を閉塞し、水素貯蔵タンクR1が接続される導管系統である水素導管108から遮断される。そして、該吸脱着塔の塔頂に位置する第1吸脱着塔還元用ガス塔頂バルブV3と該吸脱着塔の塔底に位置する第1吸脱着塔還元用ガスベント塔底バルブV6が開放され還元用ガス導管1から還元用ガス圧力指示調圧バルブVpc1および還元用ガス流量調整バルブVfc1を経て塔頂から還元用ガスが導入される。第1吸脱着塔ADS1の塔底に位置する第1吸脱着塔還元用ガスベント塔底バルブV6を経て還元用ガスベント導管11からベントされる。なお、還元用ガスは還元用ガス流量調整バルブVfc1の直後で加熱して導入できる。
【0034】
第1吸脱着塔ADS1に充填された吸着剤の再活性化運転を行っている際には、もう片方の第2吸脱着塔ADS2では、吸脱着運転が継続される。その間、第2吸脱着塔ADS2では該吸脱着塔の塔頂に位置する第2吸脱着塔還元用ガス塔頂バルブV4と第2吸脱着塔還元用ガスベント塔底バルブV5は閉塞され還元用ガスの供給導管系統と遮断され、塔頂に位置する第2吸脱着塔脱着水素塔頂バルブV2と塔底に位置する第2吸脱着塔吸着水素塔底バルブV7が開放され水素貯蔵タンクR1が接続されている導管系統の水素導管108に接続され続ける。このように、第1吸脱着塔ADS1に充填された吸着剤の再活性化運転を行いながら第2吸脱着塔ADS2では水素吸着容量を増加させるための吸着運転が継続されることになる。ここでは、最低限の吸脱着塔数構成である2塔を例に示しているが、吸脱着塔数がより多い構成にすることで、再活性化運転中のシステム全体の吸着容量変動を平滑化することが可能である。
【0035】
(水素吸着剤の再活性化運転時における脱着操作)
通常運転と同様に所定圧に到達した段階で脱着操作に移る。
図6に示す水素導入ポンプCpを停止させる。吸脱着塔の塔底部のバルブ類は第1吸脱着塔還元用ガスベント塔底バルブV6以外の第1吸脱着塔吸着水素塔底バルブV8、第2吸脱着塔還元用ガスベント塔底バルブV5、第2吸脱着塔吸着水素塔底バルブV7および吸着水素流量調整バルブVfc2は閉塞される。吸脱着塔の塔頂部のバルブ類は第1吸脱着塔還元用ガス塔頂バルブV3および第2吸脱着塔還元用ガス塔頂バルブV4は閉塞されており、第1吸脱着塔還元用ガス塔頂バルブV3および第2吸脱着塔脱着水素塔頂バルブV2は開放される。このような操作を行うことによって、第1吸脱着塔における吸着剤の再活性化運転と第2吸脱着塔における脱着操作を同時に行うことができる。従って、第1吸脱着塔ADS1で吸脱着を、第2吸脱着塔ADS2で再活性化運転を行うときにおいても同様な考え方で所定のバルブ操作を行えばよい。
【0036】
(好ましい吸脱着塔の容積)
吸脱着塔1塔の塔内体積V
Aと、水素貯蔵タンクR1の容量V
H(Nm
3)と、吸着剤による体積減少ファクターfと、吸脱着塔数nとは式1の関係を満たすことが好ましい。
【0037】
(式1)
V
A=V
H・f(2.3)/n
【0038】
メタン以外のガス貯蔵設備を利活用した水素供給設備を考えた場合には、吸脱着塔1塔の塔内体積V
Aと、水素貯蔵タンクの容量V
H(Nm
3)と、吸着剤による体積減少ファクターfと、水素貯蔵タンクとして利用する前に使用されていた気体の低位発熱量ΔLH1(MJ/Nm
3)と、水素の低位発熱量ΔLH2(MJ/Nm
3)と、吸脱着塔数nとが式2の関係を満たすことが望ましい。
【0039】
(式2)
V
A=V
H・f(ΔLH1/ΔLH2−1)/n
【0040】
水素貯蔵タンクとして利用する前に使用されていた気体とは、単一組成の気体だけでなく、混合気体も含む。よってΔLH1は混合気体の低位発熱量をいう。該混合気体としては高カロリー都市ガス、液化石油ガスなどを指す。例えば、熱量調節した高カロリー都市ガスにあっては、天然ガスと増熱ガスの混合気体、メタンと増熱ガスの混合気体、プロパンと空気の混合気体、ブタンと空気の混合気体などをいう。ここでいう天然ガス、メタン、プロパン、およびブタンはこれらが主成分であることを指し、ブタンを例に挙げて説明すれば、ブタンにブテン、ブタジエン、エタン、プロパン、プロピレンなどが含まれることも包括される。
【0041】
(体積減少ファクターの好適な範囲)
ここで吸着剤による体積減少ファクターfの好ましい範囲は2.0以上4.0以下、より好ましい範囲は2.5以上4.0以下、最も好ましい範囲は2.5以上3.5以下である。この範囲未満では吸脱着塔1塔の容積または吸脱着塔数が過大になる傾向が著しく、この範囲を超えた場合では、吸着塔内で吸着時の発熱が過大になり運転管理が煩雑になる虞があり、技術的な意義が希薄になるため好ましくない。
【0042】
(水素貯蔵タンク容量と内圧の好適な範囲)
水素貯蔵タンクの容量は1000m
3以上6500m
3以下が好ましく、1200m
3以上6200m
3以下がより好ましく、3500m
3以上4300m
3以下が最も好ましい。この範囲未満では水素貯蔵量が少なく供給時の安定性の観点から、この範囲を超過すると設備が過大になるなど操作性や経済性などの観点から好ましくない。水素満充填時のタンク内圧力は0.49MPa以上0.97MPa以下が好ましい。これ未満では、供給時の安定性の観点から、この範囲を超過すると付帯機器コストが過大になるなど、操作性や経済性などの観点から優位性が希薄になる虞がある。
【0043】
(吸着剤)
(好ましい金属種と酸化状態)
多孔質の無機酸化物上に銅、コバルト、モリブデン、ニッケルおよびタングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上が無機酸化物担体上に分散担持されてなる吸着剤を好ましくしようすることが出来る。この中ではモリブデン、ニッケル、銅が好ましく、モリブデンおよびニッケルがより好ましい。金属種の酸化状態に関しては充分還元された状態が好ましいが、モリブデンおよびタングステンにあっては、部分酸化状態も好ましく使用できる。モリブデンおよびタングステンの部分酸化状態に関しての好ましい条件は、MO
X(ここでMはモリブデン(Mo)およびタングステン(W)を示しXは酸素原子(O)の数を意味する)の示すXが2.4以下である。
【0044】
(好ましい無機酸化物)
吸着剤の担体としてはシリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−セリア、シリカ−イットリア、シリカ−ランタニア、およびシリカ−マグネシアからなる群が好ましく、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、およびシリカ−マグネシアからなる群がより好ましく、シリカ、シリカ−アルミナ、およびシリカ−チタニアからなる群が最も好ましい。これらの群から選ばれる1種類を無機酸化物として選択できる。シリカとの複合体に関しては、複合体中のシリカの含有量が25wt.%以上65wt.%以下が好ましく、35wt.%以上60wt.%以下がより好ましく、45wt.%以上55wt.%以下が最も好ましい。
【0045】
(金属種の含有量)
上述の金属種の含有量に関しては、銅、コバルト、およびニッケルに関しては金属換算吸着剤全重量基準で8wt.%以上25wt.%以下が好ましい。タングステンおよびモリブデンに関しては金属酸化物換算(MoO
3およびWO
3)吸着剤全重量基準で5wt.%以上15wt.%以下が好ましい。これらの範囲未満では金属種上の吸着点数が不足する傾向が見られ、逆に、これらの範囲を超過すると担体の表面露出が不足し担体が示す吸着点数が不足する傾向が見られるため好ましくない。
【0046】
(吸着材の形状と物性)
吸着剤は成形体が好ましい。粉体に関しては吸脱着塔から移送される可能性があり、バルブ類、制御機器類に不具合を生ずる場合が考えられるため使用は避けるか、ラインフィルタを適宜設置するなど粉体の移送に伴う現象に対する考慮が必要になる。好ましい成形体の形状は、球状、円柱状、中空円柱状、角柱状、四葉状、三つ葉状、リング状、および紡錘状を好ましく選択できる。
【0047】
(吸脱剤の設置方法)
図7には第1吸脱着塔ADS1を例に内部の詳細を示す。なお、内部の詳細は第1吸脱着塔ADS1も第2吸脱着塔ADS2も同じである。第1吸脱着塔の内部には塔頂と塔底に整風機構301が設置され、その間に吸着剤トレー302が設置される。吸着剤は吸着剤トレー302上になるべく平坦になるように設置され吸脱着時に吸着剤が上下に移動しないように吸着剤トレー302の間隔は適宜調整される。吸着剤トレー302の形状は特に限定されるものではないが、
図8に示す網目状吸着剤トレー302a、穿孔状吸着剤トレー302b、および長円穿孔状吸着剤トレー202cが好ましい。メッシュ間隔は吸着剤の大きさにあわせて調整される。