(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-82916(P2017-82916A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/10 20060101AFI20170414BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20170414BHJP
F16K 15/18 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
F16K11/10 Z
F16K31/122
F16K15/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-212084(P2015-212084)
(22)【出願日】2015年10月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 博介
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 賢司
【テーマコード(参考)】
3H056
3H058
3H067
【Fターム(参考)】
3H056AA02
3H056BB33
3H056CA02
3H056CD04
3H058AA02
3H058BB22
3H058CA32
3H058CD05
3H058DD11
3H058DD17
3H058EE04
3H067AA01
3H067AA27
3H067AA33
3H067BB08
3H067BB12
3H067CC32
3H067DD13
3H067DD33
3H067FF11
3H067GG03
(57)【要約】
【課題】流体圧アクチュエータの圧力室に接続することにより、該圧力室からの排気を取り出して再利用するのに適した構造を有する流体制御弁を提供する。
【解決手段】第1ポート11と第2ポート12との間を連通させる給気流路14と、第2ポート12と第3ポート13との間を連通させる排気流路15と、給気流路15に設けられる第1チェック弁20と、排気流路15に設けられる第2チェック弁21と、第2ポート12から第3ポート13への連通を開閉する弁体30と、弁体30がその軸方向に摺動自在に挿入された弁孔22とを有し、排気流路15は、弁孔22と弁体30との間に形成された間隙15bによって形成され、弁体30には、第1ポート11の流体圧を弁体30の閉方向に作用させる第1受圧面と、第2ポート12の流体圧を弁体30の開方向に作用させる第2受圧面とが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧源に繋がれた切換弁とヘッド側の第1及圧力室及びロッド側の第2圧力室を備えた複動式の流体圧シリンダとの間に配設するためのもので、上記切換弁の切換えによる流体圧シリンダの駆動に伴って、流体圧シリンダの上記第2圧力室から排出される圧縮流体を上記第1圧力室へと還流させるための流体制御弁であって、
上記切換弁に接続するための第1ポートと、
上記2圧力室に接続するための第2ポートと、
上記1圧力室に接続するための第3ポートと、
上記第1ポートと第2ポートとの間を連通させる給気流路と、
上記第2ポートと第3ポートとの間を連通させる排気流路と、
上記給気流路に設けられ、圧縮流体が上記第1ポート側から第2ポート側へと流れるのを許容し、上記第2ポート側から第1ポート側へと流れるのを阻止する第1チェック弁と、
上記排気流路に設けられ、圧縮流体が上記第2ポート側から第3ポート側へと流れるのを許容し、上記第3ポート側から第2ポート側へと流れるのを阻止する第2チェック弁と、
上記第2ポートから上記第3ポートへの連通を開閉する弁体と、
該弁体がその軸方向に摺動自在に挿入された弁孔と、
を有しており、
上記排気流路は、上記弁孔と上記弁体との間に形成された間隙によって形成され、
上記弁体には、上記第1ポートの流体圧を該弁体の閉方向に作用させる第1受圧面と、上記第2ポートの流体圧を該弁体の開方向に作用させる第2受圧面とが形成されている、
ことを特徴とするもの。
【請求項2】
流体制御弁であって、
圧縮流体が通る第1ポート、第2ポート及び第3ポートと、
上記第1ポートと第2ポートとの間を連通させる給気流路と、
上記第2ポートと第3ポートとの間を連通させる排気流路と、
上記給気流路に設けられ、上記圧縮流体が上記第1ポート側から第2ポート側へと流れるのを許容し、上記第2ポート側から第1ポート側へと流れるのを阻止する第1チェック弁と、
上記排気流路に設けられ、上記圧縮流体が上記第2ポート側から第3ポート側へと流れるのを許容し、上記第3ポート側から第2ポート側へと流れるのを阻止する第2チェック弁と、
上記第2ポートから上記第3ポートへの連通を開閉する弁体と、
該弁体を開閉する開閉操作部と、
を有し、
該開閉操作部が、上記弁体に設けられて上記第1ポートの流体圧を該弁体の閉方向に作用させる第1受圧面と、同じく該弁体に設けられて上記第2ポートの流体圧を該弁体の開方向に作用させる第2受圧面とを有している、
ことを特徴とするもの。
【請求項3】
請求項2に記載の流体制御弁であって、
該流体制御弁は、上記弁体がその軸方向に摺動自在に挿入された弁孔を有していて、上記排気流路が、上記弁孔と上記弁体との間に形成された間隙によって形成されている、
ことを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の流体制御弁であって、
上記弁体は、断面略円形のロッド状に形成されていて、その軸方向の両端に基端側の第1端と先端側の第2端とをそれぞれ有しており、上記第1端側のシャフト部と、該シャフト部の上記第2端側に連接された弁部とにより形成され、該弁部に上記第2受圧面が形成されている、
ことを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項4に記載の流体制御弁であって、
上記弁体のシャフト部がピストンを有していて、その上記第1端側に位置する上記第1受圧面によって区画されたピストン圧力室に、上記第1ポートからの圧縮流体を供給するパイロット流路が接続されている、
ことを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項4に記載の流体制御弁であって、
上記弁部は、上記シャフト部に連接された大径部と、該大径部の上記第2端側に連接され該大径部よりも最大径が小さい小径部とにより構成されていて、該大径部と小径部との間にシール部材を有し、
上記弁孔には、上記第2ポートと排気流路との間に、上記弁部の小径部が挿入される絞り部が形成されていて、
該絞り部には、上記シール部材を接離させる弁座が形成されている、
ことを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項6に記載の流体制御弁であって、
該流体制御弁は、上記弁部の開放時に上記第2ポートから上記排出流路へと流入する排気の流量を調節するための流量調節部を有しており、
該流量調節部が、該弁体のシャフト部の周囲に螺旋状に配された傾斜カム面と、同じく該弁体のシャフト部の周囲に配され、上記弁部が開放されたときに、上記傾斜カム面に当接して上記弁体の第1端方向への移動を阻止するストッパ片とを有し、
上記傾斜カム面とストッパ片とは、上記弁体の軸廻りに相対的に回動可能となっており、
上記弁部の小径部は、上記第2端に向けて除々に径が小径化する先細り状に形成されている、
ことを特徴とするもの。
【請求項8】
請求項7に記載の流体制御弁であって、
上記弁体のシャフト部がピストンを有していて、その上記第1端側に位置する上記第1受圧面によって区画されたピストン圧力室に、上記第1ポートからの圧縮流体を供給するパイロット流路が接続され、
上記傾斜カム面が、上記ピストンの第1端側において該ピストンに対向させて設けられ、
上記弁体が、上記弁孔に対して周方向に回動自在に挿入されていて、上記ストッパ片が、上記シャフト部の外周から上記ピストン圧力室内に突設されている、
ことを特徴とするもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁、例えば、流体圧源に繋がれた切換弁と第1及び第2圧力室を備えた複動式シリンダとの間に配設するための流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピストンで区画された双方の圧力室に給排気ポートをそれぞれ設け、流体圧源に繋がれた電磁弁を切り換えるなどして、給排気ポートを相互に流体圧源に接続することにより、ピストンを流体圧で往復動させる複動式の流体圧シリンダは、従来から一般的に知られている。
ところで、このような複動式の流体圧シリンダにおいては、通常、ピストンを流体圧で往復動させたとき、排気側の圧力室に充填された圧縮流体は、ピストンの移動に伴う圧力室の縮小に伴って大気に排出されてしまう。
しかしながら、省エネルギーの観点からすれば、そのような流体圧アクチュエータの動作に伴って圧力室から排出される圧縮空気は、できるだけ再利用することが望ましい。
【0003】
そこで、特許文献1においては、複動式シリンダのロッドを進出させるにあたって、ロッド側圧力室の排気をヘッド側圧力室に還流させて再利用する空気圧シリンダ装置が提案されているが、空圧源に繋ぐ切換弁として、上記シリンダに対して圧縮空気を給排する機能と、排気を還流させる機能とを兼ね備えた4ポート2位置切換弁を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−42511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、流体圧アクチュエータの圧力室に接続することにより、該圧力室からの排気を取り出して再利用するのに適した構造を有する流体制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る流体制御弁は、流体圧源に繋がれた切換弁とヘッド側の第1及圧力室及びロッド側の第2圧力室を備えた複動式の流体圧シリンダとの間に配設するためのもので、上記切換弁の切換えによる流体圧シリンダの駆動に伴って、流体圧シリンダの上記第2圧力室から排出される圧縮流体を上記第1圧力室へと還流させるための流体制御弁であって、上記切換弁に接続するための第1ポートと、上記2圧力室に接続するための第2ポートと、上記1圧力室に接続するための第3ポートと、上記第1ポートと第2ポートとの間を連通させる給気流路と、上記第2ポートと第3ポートとの間を連通させる排気流路と、上記給気流路に設けられ、圧縮流体が上記第1ポート側から第2ポート側へと流れるのを許容し、上記第2ポート側から第1ポート側へと流れるのを阻止する第1チェック弁と、上記排気流路に設けられ、圧縮流体が上記第2ポート側から第3ポート側へと流れるのを許容し、上記第3ポート側から第2ポート側へと流れるのを阻止する第2チェック弁と、上記第2ポートから上記第3ポートへの連通を開閉する弁体と、該弁体がその軸方向に摺動自在に挿入された弁孔と、を有しており、上記排気流路は、上記弁孔と上記弁体との間に形成された間隙によって形成され、上記弁体には、上記第1ポートの流体圧を該弁体の閉方向に作用させる第1受圧面と、上記第2ポートの流体圧を該弁体の開方向に作用させる第2受圧面とが形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る流体制御弁は、圧縮流体が通る第1ポート、第2ポート及び第3ポートと、上記第1ポートと第2ポートとの間を連通させる給気流路と、上記第2ポートと第3ポートとの間を連通させる排気流路と、上記給気流路に設けられ、上記圧縮流体が上記第1ポート側から第2ポート側へと流れるのを許容し、上記第2ポート側から第1ポート側へと流れるのを阻止する第1チェック弁と、上記排気流路に設けられ、上記圧縮流体が上記第2ポート側から第3ポート側へと流れるのを許容し、上記第3ポート側から第2ポート側へと流れるのを阻止する第2チェック弁と、上記第2ポートから上記第3ポートへの連通を開閉する弁体と、該弁体を開閉する開閉操作部と、を有し、該開閉操作部が、上記弁体に設けられて上記第1ポートの流体圧を該弁体の閉方向に作用させる第1受圧面と、同じく該弁体に設けられて上記第2ポートの流体圧を該弁体の開方向に作用させる第2受圧面とを有していることを特徴とする。
この場合において、該流体制御弁は、上記弁体がその軸方向に摺動自在に挿入された弁孔を有していて、上記排気流路が、上記弁孔と上記弁体との間に形成された間隙によって形成されているものが好ましい。
【0008】
また、この場合において、上記弁体は、断面略円形のロッド状に形成されていて、その軸方向の両端に基端側の第1端と先端側の第2端とをそれぞれ有しており、上記第1端側のシャフト部と、該シャフト部の上記第2端側に連接された弁部とにより形成され、該弁部に上記第2受圧面が形成されていることが好ましい。
このとき、上記弁体のシャフト部がピストンを有していて、その上記第1端側に位置する上記第1受圧面によって区画されたピストン圧力室に、上記第1ポートからの圧縮流体を供給するパイロット流路が接続されていることがさらに好ましい。
【0009】
また、上記弁部は、上記シャフト部に連接された大径部と、該大径部の上記第2端側に連接され該大径部よりも最大径が小さい小径部とにより構成されていて、該大径部と小径部との間にシール部材を有し、上記弁孔には、上記第2ポートと排気流路との間に、上記弁部の小径部が挿入される絞り部が形成されていて、該絞り部には、上記シール部材を接離させる弁座が形成されていることが好ましい。
このとき、該流体制御弁は、上記弁部の開放時に上記第2ポートから上記排出流路へと流入する排気の流量を調節するための流量調節部を有しており、該流量調節部が、該弁体のシャフト部の周囲に螺旋状に配された傾斜カム面と、同じく該弁体のシャフト部の周囲に配され、上記弁部が開放されたときに、上記傾斜カム面に当接して上記弁体の第1端方向への移動を阻止するストッパ片とを有し、上記傾斜カム面とストッパ片とは、上記弁体の軸廻りに相対的に回動可能となっており、上記弁部の小径部は、上記第2端に向けて除々に径が小径化する先細り状に形成されていることが好ましい。
そして、上記弁体のシャフト部がピストンを有していて、その上記第1端側に位置する上記第1受圧面によって区画されたピストン圧力室に、上記第1ポートからの圧縮流体を供給するパイロット流路が接続され、上記傾斜カム面が、上記ピストンの第1端側において該ピストンに対向させて設けられ、上記弁体が、上記弁孔に対して周方向に回動自在に挿入されていて、上記ストッパ片が、上記シャフト部の外周から上記ピストン圧力室内に突設されていることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2ポートを流体圧アクチュエータの圧力室に接続することにより、第1ポートから第2ポートを通じて上記圧力室に圧縮流体を供給することができ、また、該圧力室からの排気を、第2ポートを通じて第3ポートから取り出し、再利用に供することができる。例えば、第2ポートを複動式の流体シリンダのロッド側の圧力室に接続し、第3ポートをヘッド側の圧力室に接続することにより、ロッドの進出時に、ロッド側の圧力室からの排気をヘッド側の圧力室に還流させて、圧縮流体の消費を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の流量制御弁の弁体を開いた状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の流量制御弁の弁体を閉じた状態を示す断面図である。
【
図4】流量調節部及びその周辺の構造を示す正面図である。
【
図5】本発明の流体制御弁を使用して複動式の流体圧シリンダを制御する制御回路の一例を示す回路図である。
【
図6】ヘッド側圧力室からロッド側圧力室に圧縮流体を還流する際の各圧力室の流体圧とピストンのストローク量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る流体制御弁の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。本発明の流体制御弁は、流体圧アクチュエータの圧力室に接続することにより、該圧力室からの排気を取り出して再利用するのに用いられるものである。そこで、ここでは、本発明の一実施形態に係る流体制御弁10を、
図5に示すように、ピストン1cとロッド1dを有する複動式の流体圧シリンダ1に接続し、ピストン1cの進出時に、この流体圧シリンダ1のロッド側の第2圧力室1bから排出される排気を、ヘッド側の第1圧力室1aに還流させて再利用する場合を例に挙げて説明することとする。
【0013】
図1〜
図5に示すように、この流体制御弁10は、切換弁3に接続するための第1ポート11と、第2圧力室1bに接続するための第2ポート12と、第1圧力室1aに接続するための第3ポート13と、第1ポート11と第2ポート12との間を連通させる給気流路14と、第2ポート12と第3ポート13との間を連通させる排気流路15とを有している。
【0014】
これらの第1〜第3ポート11〜13、給気流路14、及び排気流路15は、バルブハウジング50内に形成されている。このバルブハウジング50は、軸L(
図1、
図3における上下方向に延びる軸であり、上側を第1端側、下側を第2端側とする)を有する筒状の幹部51aと、この幹部51aの側壁から延びている筒状の第1及び第2枝部51b、51cとからなる主ブロック51を有している。また、バルブハウジング50は、第1枝部51bに対して気密に外嵌し上記第1ポート11を有する第1ポートブロック52と、幹部51aの第2端側に対して気密に外嵌し上記第2ポート12を有する第2ポートブロック53とを有している。また、上記第3ポート13は、上記第2枝部51cに設けられている。さらに、幹部51aの第1端側には、エンドキャップ54が軸Lを中心として回転可能に設けられている。
【0015】
上記給気流路14は、第1ポートブロック52内を貫通する第1給気流路14aと、第1枝部51bを貫通する第2給気流路14bと、幹部51aの第2端側に形成される第3給気流路14cとから形成されている。また、第3給気流路14cには、流体圧源2から供給される圧縮流体について、第1ポート11側から第2ポート12側へと流れるのを許容し、第2ポート12側から第1ポート11側へと流れるのを阻止する第1チェック弁20が設けられている。
【0016】
一方で、上記排気流路15は、第2枝部51c内を貫通する第1排気流路15aと、後述するロッド挿通孔22の第2端側に形成される第2排気流路15bとから形成されている。また、第2排気流路15bには、第2ポート12側から第3ポート13側へと流れるのを許容し、第3ポート13側から第2ポート12側へと流れるのを阻止する第2チェック弁21が設けられている。
【0017】
上記幹部51aの内部には、この幹部51aの内周壁51dによって区画され、この幹部51aを長手方向(軸線L方向)に貫通する弁孔としてのロッド挿通孔22と、このロッド挿通孔22内を軸線L方向に摺動自在な弁体30が設けられている。この弁体30は、上記第2ポート12から排気流路15bへの連通、すなわち、第2ポート12から第3ポート13への連通を開閉するためのものであり、上記ロッド挿通孔22内を軸線L廻りに回動自在な断面略円形のロッド状に形成されている。また、この弁体30は、その軸線L方向の第1端側すなわち基端側に設けられたシャフト部32と、第2端側すなわち先端側に設けられた弁部31とから構成されている。そして、シャフト部32には、上記第1ポート11の流体圧を弁体30の閉方向(第2端方向)に作用させる第1受圧面が形成され、弁部31には、上記第2ポート12の流体圧を弁体30の開方向(第1端方向)に作用させる第2受圧面が形成されている。このとき、弁体30の開閉時にかかわらず、常時、上記第1受圧面の軸線L方向の受圧面積は、上記第2受圧面における軸線L方向の受圧面積よりも大きく形成されている。
【0018】
上記ロッド挿通孔22は、第1端側に設けられ上記シャフト部32を挿通するシャフト挿入部22aと、第2端側に設けられ上記弁部31を挿通する弁挿入部22bとから構成されており、これらシャフト挿入部22aと弁挿入部22bとは、両者間を仕切る区画壁23に設けられたシール部材60によって気密に仕切られている。そして、この弁挿入部22bは、その孔径が上記弁部31の最大径(後述する大径部33の径)よりも大きくなるように形成されていて、この弁挿入部22bの内周壁51dと弁部31の外周面(すなわち、大径部33の外周面)との間に形成された間隙により、上記第2排気流路15bが構成されている。
【0019】
上記幹部51aの第2端側の外周面には溝57が設けられており、この溝57に上記第1チェック弁20が取り付けられている。また、上記ロッド挿通孔22の弁挿入部22bにおける、上記第2チェック弁21よりも第2端側(すなわち、第2ポート12側)の位置には、内周壁51dから内向き(径方向)に環状の突部48が突設されている。そして、この突部48の第1端側を向く面によって上記弁部31が接離する弁座44が形成されており、さらに、この突部48の内周により、後述する弁部31の小径部34を挿通することが可能な絞り部46が形成されている。
【0020】
一方で、上記弁部31は、上記シャフト部32に連接された円柱状の大径部33と、大径部33の第2端側に連接されこの大径部33よりも最大径の小さい小径部34とにより構成されている。この大径部33の外周面には溝58が設けられており、この溝58に上述した第2チェック弁21が取り付けられている。また、小径部34は、第2端に向けて除々に径が小径化する先細り状に形成されており、その先端に弁体30の軸線L方向を法線方向とする先端面36aが形成されている。また、大径部33と小径部34との境界である連接部には、段部を成す溝36bが形成されて、この溝36bにシール部材35が取り付けられている。
【0021】
このシール部材35は、弁体30を第2端側に移動させた状態で弁座44に当接され、弁体30を第1端側に移動させた状態で弁座44から離れるように、弁部31に配されている。このため、シール部材35と弁座44とが当接した状態と離間した状態、すなわち、弁部31の閉塞状態と開放状態とでは、弁部31の開放状態の方が、弁部31の上記第2受圧面において流体圧が第1端方向に作用する面積(受圧面積)が大きくなる。その結果、弁体30に作用する第1端方向の付勢力が大きくなり、弁部31が開いてからの応答性が向上する。
【0022】
一方、シャフト部32は、上記大径部33の第1端側に連接され、この大径部33よりも大径に形成された胴体部38と、胴体部38の第1端側に連接され、幹部51aの第1端側の開口から突出した軸部39とから構成されている。この胴体部38には、外周にシール部材62を有するピストン37が設けられていて、このピストン37により、上述したロッド挿入孔22のシャフト挿入部22aが、第1端側の第1区画室70aと第2端側の第2区画室70bとに区画されている。なお、本実施形態においては、上記ピストン37のシール部材62は、第2区画室70b側から第1区画室70a側への流体の流れは許容するが、第1区画室70a側から第2区画室70b側への流体の流れは阻止するチェック弁によって構成されている。このように、上記第1区画室70aは、上記ピストン37を第2端方向へ駆動するためのピストン圧力室を形成しており、その一方で、上記第2区画室70bは大気に開放されている。
【0023】
上記軸部39は上記エンドキャップ54の取付孔59に嵌合されていて、エンドキャップ54は軸部39に対して軸線L廻りに固定的に設けられている。すなわち、エンドキャップ54を軸線L廻りに回転させると軸部39も同時に回転するようになっている。
上記シャフト挿入部22aにおける上記ピストン37よりも第1端側の位置には、環状のステータ41(螺旋状に傾斜するカム面41aを有するカムリング)が嵌合により固定されており、上記弁体30のシャフト部32が、このステータ41に対して、軸線L方向に摺動自在かつ軸線L廻りに回動自在に内挿されている。このステータ41の第2端側の面には、
図4に示すように、上記ピストン37に対向し、上記軸線Lを中心として螺旋状に配された傾斜カム面41aが、シャフト部32の周囲に設けられている。一方で、上記シャフト部32における胴体部38の外周壁からは、このピストン37の第1端側の面37aからステータ41側に延びるストッパ片43が突設されている。
【0024】
そして、上記エンドキャップ54を回動させると、ステータ41が幹部51aに固定されている状態で、胴体部38がエンドキャップ54と共に回動する。そのため、胴体部38に突設されているストッパ片43はステータ41に対して軸線L回りに回動する。このとき、ステータ41の傾斜カム面41aは螺旋状に配されて傾斜面を形成しているため、エンドキャップ54の回動位置を調節することで、傾斜カム面41aに対するストッパ片43の当接位置、すなわち、上記ピストン37の第1端方向へのストローク量を調節することができる。その結果、弁体30が第1端側の開放位置に移動した時における上記絞り部46の絞り量、すなわち、第2ポート12から絞り部46を通って排気流路15に流れる流体の流量を調節することができる。このように、上記傾斜カム面41aとストッパ片43は、本発明における流量調節部47を構成している。
なお、上記シャフト挿入部22aには、ステータ41の第1端側に隣接して環状のキャップ部材42が気密に嵌合されており、上記弁体30のシャフト部32が、このキャップ部材42に対して、気密で軸線L方向に摺動自在かつ軸線L廻りに回動自在に内挿されている。
【0025】
上記第1区画室70aと第2給気流路14bとの間には、第1ポート11からの圧縮流体を供給するパイロット流路71が接続されている。そのため、第1ポート11に供給される圧縮流体は、給気流路14を通じて第2ポート12に流通する際に、その一部がパイロット流路71を通じて第1区画室70aに供給される。そして、第1区画室70aに供給された圧縮流体の流体圧が、上記ピストン37の第1端側に位置する上記第1受圧面に作用することで、ピストン37が第2端方向、すなわち、弁体30を閉じる方向に移動する。
【0026】
一方で、上記第2区画室70bには、このピストン37に対して第1端方向(すなわち、弁体30の開方向)の付勢力を付与する圧縮ばね25が設けられている。この圧縮ばね25は、シャフト挿入部22aと弁挿入部22bとの連接部分(すなわち、上記区画壁23)に取り付けられているばね受け部24と、ピストン37の第2端側の面37bとの間に縮設されている。
このように、上記シャフト部32の第1受圧面、上記弁部31の第2受圧面及びこの圧縮ばね25は、本発明における開閉操作部を構成している。
ここで、上記圧縮ばね25の弾性係数は、適用する圧縮流体の圧力や、接続する流体圧アクチュエータの必要な特性等に基づいて適宜決定されるべきものである。ただし、上記弁部31が着座して閉じた状態において、圧縮ばね25と第2受圧面に作用する流体圧とによる第1端方向への付勢力の和が、第1受圧面に作用する流体圧による第2端方向への付勢力よりも小さくなるように設定されている。
なお、この圧縮ばね25は必ずしも設ける必要性はなく、それを省略して、上記第2受圧面に作用する第2ポート12の流体圧のみにより、上記弁体30を開方向に動作させることも可能である。
【0027】
次に、
図5のように、上記流体制御弁10を、ピストン1cとロッド1dを有する複動式の流体圧シリンダ1に接続することにより、ピストン1cの進出時に、この流体圧シリンダ1のロッド側の第2圧力室1bから排出される排気を、ヘッド側の第1圧力室1aに還流させる場合における、上記複流体制御弁10の具体的な動作について説明する。
ここでは、上記流体制御弁10は、流体圧源2に繋がれた切換弁3とヘッド側の第1圧力室1a及びロッド側の第2圧力室1bを有する流体圧シリンダ1との間に接続されている。そして、この切換弁3と流体圧シリンダ1との間には、切換弁3と流体制御弁10の第1ポート11とを接続する第1流路4aと、第2圧力室1bと流体制御弁10の第2ポート12とを接続する第2流路4bと、第1圧力室1aと切換弁3とを接続する第3流路4cと、この第3流路4cと流体制御弁10の第3ポートとを接続する第4流路4dとが設けられている。また、第3流路4cと第4流路4dとの接続部と第1圧力室1aとの間の第3流路4cには、第1圧力室1aから排出される圧縮流体の流量を調節するためのメータアウト制御式の絞り弁5が設けられている。
【0028】
上記切換弁3は、第2圧力室1bに流体圧源2からの圧縮流体を供給する第1位置、又は第1圧力室1aに流体圧源2からの圧縮流体を供給する第2位置に選択的に切り換えることができる。
そこで、まず、切換弁3を上記第1位置に切り換えた場合、すなわち、流体圧シリンダ1のロッド1dを後退させる場合について説明する。
【0029】
流体圧源2から供給される圧縮流体は、第1流路4aを通じて上述した流体制御弁10の第1ポート11に供給される。第1ポート11に供給された圧縮流体は、上記第1給気流路14a、第2給気流路14bを順次流れ、その一部が上述したパイロット流路71に供給されると共に、その残りが上記第3給気流路14cに供給される。第3給気流路14cに供給された圧縮流体は、上記第1チェック弁20を通過し第2ポート12から出力されて流体圧シリンダ1の第2圧力室1bに供給される。その一方で、流体圧シリンダ1の第1圧力室1bの圧縮空気は、絞り弁5及び切換弁3を通じて大気に放出される。
【0030】
そして、パイロット流路71に流入した圧縮流体は、上述したピストン圧力室としての第1区画室70aに供給される。このとき、第1区画室70aに供給されている圧縮流体の圧力と第2ポート12から出力されている圧縮流体の流体圧は実質的に同じである。しかしながら、受圧面積の差により、シャフト部32の第1受圧面に作用する流体圧による第2端方向(弁体30の閉方向)への付勢力よりも、弁部31の第2受圧面に作用する流体圧による第1端方向(弁体30の開方向)への付勢力の方が小さくなっている。しかも、これら流体圧による付勢力の差が、上記弁部31が着座して閉じた状態おける、上記圧縮ばね25による第1端方向への付勢力よりも常に大きくなるように設定されている。そのため、
図3に示すように、弁体30は弁座44に着座した状態で、上記第2ポート12と排気流路15との間の連通、すなわち、第2ポート12から第3ポート13への連通は閉じられている。
【0031】
次に、
図5に示すように切換弁3を上記第2位置に切り換えた場合、すなわち、流体圧シリンダ1のロッド1dを進出させる場合について説明する。
この場合には、第1流路4aは切換弁3を通じて大気に開放されるため、上記流体制御弁10における、第1ポート11から第1チェック弁20までの給気流路14、パイロット流路71及び第1区画室70aも同様にして大気に開放される。それに対して、第1チェック弁20から流体圧シリンダ1の第2圧力室1bまでの圧縮流体は、上記第1チェック弁20により第1ポート11側へ流れるのを阻止され、その流体圧が上記弁部31の第2受圧面に作用し弁体30を開方向に付勢する。また同時に、上記圧縮ばね25により弁体30は開方向に付勢されている。そのため、
図1に示すように、弁体30は弁座44から離間して、上記第2ポート12と排気流路15との間の連通、すなわち、第2ポート12から第3ポート13への連通が開かれる。
【0032】
一方で、第1圧力室1aは流体圧源2に連通されるため、ヘッド側の第1圧力室1aに圧縮流体が供給される。そうすると、
図6に示すように、ヘッド側の第1圧力室1a内の圧力は所定値まで急激に上昇し、流体圧シリンダ1のピストン1cはロッド側(
図5における右側)に移動を開始する。
そして、このピストン1cのロッド側への移動に伴って、第2圧力室1bの体積が減少し、第2圧力室1b内の圧力が若干上昇するが、第1圧力室1a側におけるピストン1cの受圧面積が、第2圧力室1b側におけるピストン1cの受圧面積よりも、ロッド1dの横断面の面積分大きいため、ピストン1cはロッド側へ移動し続ける。この間、第2圧力室1bから排出された圧縮流体は、上記排気流路15から第3ポート13を通じて第4流路4dに流入するが、上述のように、第2圧力室1b内から排出される圧縮流体の圧力は、第1圧力室1a内の圧力よりも若干高いため、第4流路4d内の圧縮流体が第3流路4cを通じて第1圧力室1aに還流される。なお、上記ロッド1dの進出速度を調整する場合には、上記エンドキャップ54を回して上記絞り部46の絞り量、すなわち、絞り部46を通って流れる第2圧力室1bからの排気の流量を調節すれば良い。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の流量制御弁10は、第2ポート12を流体圧アクチュエータである流体圧シリンダ1の第2圧力室1bに接続することにより、第1ポート11から第2ポート12を通じて第2圧力室1bに圧縮流体を供給することができ、また、この第2圧力室1bからの排気を、第2ポート12を通じて第3ポート13から取り出すことができる。そのため、この排気を効率良く再利用に供することができる。特に、上述のような複動式の流体圧シリンダ1においては、第2ポート12を第2圧力室1bに接続し、第3ポート13を第1圧力室1aに接続することにより、ロッド1dの進出時に第2圧力室1bからの排気を第1圧力室1aに還流させて、圧縮流体の消費を抑制することが可能となる。
また、流体圧シリンダ1を駆動する圧縮空気を利用して弁体30を開閉するように構成したため、製造コストやランニングコストを抑制することが可能である。
【0034】
そして、本実施形態の流量制御弁10によれば、ロッド状の弁部31に大径部33と小径部34を設け、それらの境界に弁座44に接離させるシール部材35を配したため、シール部材35と弁座44とが当接した状態と離間した状態、すなわち、弁部31の閉塞状態と開放状態とでは、後者の方が、弁部31の上記第2受圧面において流体圧が第1端方向に作用する面積(受圧面積)が大きくなる。その結果、弁体30に作用する第1端方向の付勢力が大きくなり、弁部31が開いてからの応答性が向上する。
さらに、本実施形態の流量制御弁10においては、上記弁部31をニードル弁とし、螺旋状に配された上記ステータ41の傾斜カム面41aと、それに当接するストッパ片43とを軸線L廻りに相対的に回動可能としたため、弁体30を回動させて傾斜カム面41aとストッパ片43との当接位置を調節することにより、上記弁体30を開いたときの絞り部46における排気の流量を容易に制御することができる。
【0035】
以上、本発明に係る流量制御弁10の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な設計変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、弁部31をニードル弁としたが、必ずしもそれに限られるものではなく、ポペット弁など他の形態の弁であっても良い。
また、本実施形態では、傾斜カム面41aをロッド挿通孔22に対して固定し、それに当接させるストッパ片43を弁体30に固定しているが、逆に、傾斜カム面41aを弁体30に対して固定し、ストッパ片43をロッド挿通孔に固定しても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 流体圧シリンダ
1a 第1圧力室
1b 第2圧力室
2 流体圧源
3 切換弁
10 流体制御弁
11 第1ポート
12 第2ポート
13 第3ポート
14 給気流路
15 排気流路
15b 第2排気流路(間隙)
20 第1チェック弁
21 第2チェック弁
22 ロッド挿通孔(弁孔)
30 弁体
31 弁部
32 シャフト部
33 大径部
34 小径部
35 シール部材
37 ピストン
41 ステータ
41a 傾斜カム面
43 ストッパ片
44 弁座
46 絞り部
47 流量調節部
70a 第1区画室(ピストン圧力室)
71 パイロット流路