【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る地中熱交換器設置用機材は、
地中に埋設され、熱媒体を流通させて周囲の地盤との間で熱交換を行うための地中熱交換器を設置するための地中熱交換器設置用機材であって、
ボーリングロッドと、
前記ボーリングロッドを用いて地表から地中に向けて設けられた掘削穴に挿入される外管と、
前記外管内に挿入される内管と、
前記外管の先端を閉塞して前記掘削穴の底に配置される先端部材と、
前記外管と前記掘削穴の内壁との間に充填されるセメントとを備え、
前記先端部材は、
前記掘削穴の底に貫入されることにより該先端部材が回転するのを阻止する回転阻止部材と、
前記外管の先端を閉塞している状態において前記ボーリングロッドの先端部が該外管に沿った方向で螺合可能な逆ねじとを有し、
前記外管、前記先端部材及び前記ボーリングロッドは、該先端部材が該外管の先端を閉塞し、かつ該ボーリングロッドが前記逆ねじに螺合した状態で前記掘削穴に挿入可能な径方向の寸法を有することを特徴とする。
【0009】
第1発明によれば、後述の第5発明の地中熱交換器設置方法により、容易に地中熱交換器を設置することができる。したがって、第5発明により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0010】
第2発明に係る地中熱交換器は、
地中に埋設され、熱媒体を流通させて周囲の地盤との間で熱交換を行うための地中熱交換器であって、
地表から地中に向けて設けられた掘削穴に挿入された外管と、
前記外管内に挿入された内管と、
第1発明中の先端部材であって、前記外管の先端を閉塞して前記掘削穴の底に配置されたものと、
前記外管及び前記先端部材と前記掘削穴の内壁との間に充填されたセメントとを備え、
前記外管と前記内管とで、前記熱媒体の流通路が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第2発明によれば、後述の第5発明の方法により、容易に地中熱交換器を設置することができる。したがって、第5発明により得られるのと同様の効果を得ることができる。
【0012】
第3発明に係る地中熱交換器は、第1又は第2発明において、
前記外管は、第1の熱伝導度を有するホースで構成され、
前記内管は、前記第1の熱伝導度よりも小さい第2の熱伝導度を有するホースで構成されることを特徴とする。
【0013】
第3発明によれば、地中熱交換器の設置時に、外管及び内管をリールに巻いた状態で掘削穴に供給することができる。したがって、地盤の状態に応じて決められる掘削穴の深さに応じ、容易に外管及び内管の長さを調整しながら、小規模な地中熱交換器を狭小地において容易に設置することができる。
【0014】
第4発明に係る地中熱交換器は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記外管の地表側の端部から所定の長さの範囲を覆う管状の断熱部材を有することを特徴とする。
【0015】
第4発明によれば、地表近傍とそれよりも深い地中との温度差が、該地中深部との熱交換の結果を希釈して地中熱交換器の性能が劣化するのを防止することができる。
【0016】
第5発明に係る地中熱交換器設置方法は、
地中に埋設され、熱媒体を流通させて周囲の地盤との間で熱交換を行うための地中熱交換器を設置する地中熱交換器設置方法であって、
先端に掘削ビットを取り付けたボーリングロッドを用いてボーリング水を供給しながら地盤に掘削穴を設ける掘削工程と、
前記掘削工程の後、前記掘削ビットを取り外したボーリングロッドの先端及び外管の先端に先端部材を取り付けて該外管の先端を閉塞する先端部材取付工程と、
前記先端部材取付工程の後、前記外管に液体を注入する液体注入工程と、
前記液体注入工程の後、前記外管及び前記ボーリングロッドを、前記先端部材が該掘削穴の底に達するまで前記掘削穴に挿入する外管・ロッド挿入工程と、
前記外管・ロッド挿入工程の後、前記ボーリングロッドを前記先端部材から取り外し、該ボーリングロッドの先端からセメントミルクを前記掘削穴内に供給しながら該ボーリングロッドを引き抜く供給・引抜工程と、
前記外管に内管を挿入する内管挿入工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
ここで、内管挿入工程は、外管・ロッド挿入工程の前又は後のいずれの時点で行われてもよい。第5発明によれば、外管・ロッド挿入工程の前に、内管を外管に挿入しておくことにより、供給・引抜工程で供給されたセメントミルクが固化すると、内管の内部及び外管と内管との間を経由する熱媒体の流通路が形成される。又は、外管への内管の挿入を、外管・ロッド挿入工程の後、又は供給・引抜工程により供給されたセメントミルクが固化した後に行うことにより、熱媒体の流通路を形成することもできる。
【0018】
これによれば、小規模な機材により狭小地においても低コストで地中熱交換器を設置することができる。また、掘削ビットを取り付けたボーリングロッドを用いてボーリング水を供給しながら地盤に掘削穴を設けるようにしたので、締まっていて掘削が困難な地盤でも掘削穴を容易に設けることができる。また、外管と掘削穴との間の空間がセメントで充填されるので、外管の腐食と漏水を防止することができる。
【0019】
また、外管内に外圧に対抗するための液体を供給してから、ボーリングロッドと共に外管を掘削穴に挿入するので、小口径の外管を、外圧によって潰されずに支障なく掘削穴の底まで挿入することができる。
【0020】
また、設置された地中熱交換器に形成された流通路に水等の熱媒体を流通させることにより、地盤の熱を内管より表面積の大きい外管の全表面で吸収して熱媒体に伝達できるので、小口径の外管により効率的に熱交換を行うことができる。また、外管を熱伝導率の高い部材で構成し、内管を熱伝導率の低い部材で構成することにより、熱交換の効率をさらに向上させることができる。
【0021】
第6発明に係る地中熱交換器の設置方法は、第5発明において、
前記外管・ロッド挿入工程で掘削穴に挿入される外管は、第1の熱伝導度を有するホースであり、
前記内管挿入工程で外管に挿入される内管は、前記第1の熱伝導度よりも小さい第2の熱伝導度を有するホースであることを特徴とする。
【0022】
第6発明によれば、市販の金属製ホース及び樹脂製ホースを用いて容易に熱伝導度の高い外管と熱伝導度の低い内管とで熱媒体の流通路を形成することができる。
【0023】
第7発明に係る地中熱交換器の設置方法は、第5又は第6発明において、前記外管・ロッド挿入工程で掘削穴に挿入される外管は、リールに巻かれた状態で供給されることを特徴とする。
【0024】
この設置方法は、外管がリールに巻かれた状態で供給されるので、小規模で狭小地での施工に適している。
【0025】
第8発明に係る地中熱交換器の設置方法は、第5〜第7のいずれかの発明において、前記内管挿入工程で外管に挿入される内管は、リールに巻かれた状態で供給されることを特徴とする。
【0026】
この設置方法は、内管がリールに巻かれた状態で供給されるので、小規模で狭小地での施工に適している。
【0027】
第9発明に係る地中熱交換器の設置方法は、第5〜第8のいずれかの発明において、
前記掘削ビットのボーリングロッドへの取付けは、該掘削ビットの正ねじに該ボーリングロッドの先端部を螺合させることにより行われ、
前記外管・ロッド挿入工程では、前記先端部材に設けられた回転阻止部材を前記掘削穴の底に貫入させて該先端部材の回転を阻止し、
前記ボーリングロッドの前記先端部材に対する取付け及び取外しは、該先端部材の逆ねじに該ボーリングロッドの先端部を螺合し及び該螺合を解除することにより行われることを特徴とする。
【0028】
第9発明によれば、ボーリングヘッドの先端部材からの取外しを、ボーリングマシンを正ねじが進む方向に回転させることにより、正ねじで構成されるボーリングマシンの継目を分離させることなく、容易に行うことができる。
【0029】
第10発明は、第5〜第9のいずれかの発明において、前記外管と該内管との間の間隔を維持するための間隔維持部材を該内管に取り付けながら該内管を該外管に挿入する内管挿入工程を備えることを特徴とする。
【0030】
第10発明によれば、外管に対する内管の挿入を間隔部材により円滑に行うとともに、外管と内管との間の空間の幅を一定にして外管と内管を同軸上に配置し、熱媒体の流れが一定の流通路を形成することができる。
【0031】
第11発明は、第5〜第10のいずれかの発明において、前記外管・ロッド挿入工程で挿入される前記外管の外側には、前記地中熱交換器の設置が完了した状態の該外管の上端部から所定の長さにわたる部分を覆う管状の断熱部材が予め装着されていることを特徴とする。
【0032】
第11発明によれば、地表近傍とそれよりも深い地中との温度差が、該地中深部との熱交換の結果を希釈して地中熱交換器の性能が劣化するのを防止することができる。