(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-83093(P2017-83093A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】高湿度食品貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20170414BHJP
【FI】
F25D23/00 302D
F25D23/00 301L
F25D23/00 302M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-212954(P2015-212954)
(22)【出願日】2015年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】513267903
【氏名又は名称】株式会社ユナイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100148437
【弁理士】
【氏名又は名称】中出 朝夫
(72)【発明者】
【氏名】村田 敬治
【テーマコード(参考)】
3L345
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA14
3L345AA16
3L345AA17
3L345AA25
3L345AA26
3L345DD21
3L345DD41
3L345EE04
3L345EE32
3L345EE51
3L345GG12
3L345GG17
3L345GG25
3L345GG33
3L345HH23
3L345JJ27
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】 管理負担が少なく庫内を均一に加湿することができ、肉や野菜などの食品を高品質に加工することができる高湿度食品貯蔵庫を提供すること。
【解決手段】 食品を収容可能な貯蔵庫であって、
庫内温度を昇降する温調装置1と;
1〜10ナノメートルの微細空気を含むミストが発生可能な加湿装置2と;
庫内に気流を循環させる送風装置3とを少なくとも具備して構成されており、
前記温調装置1、加湿装置2、送風装置3をコントローラー4により制御できるようにするという技術的手段を採用した。
【効果】 ミストにより水分が食品にベッタリと付着せずに柔らかく包み込むため、これら温調装置、加湿装置、送風装置の設置位置や強弱制御の精度を低くすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容可能な貯蔵庫であって、
庫内温度を昇降する温調装置(1)と;
1〜10ナノメートルの微細空気を含むミストが発生可能な加湿装置(2)と;
庫内に気流を循環させる送風装置(3)とを少なくとも具備して構成されており、
前記温調装置(1)、加湿装置(2)、送風装置(3)をコントローラー(4)により制御可能であることを特徴とする高湿度食品貯蔵庫。
【請求項2】
加湿装置(2)は、複数の超音波振動子によってミストが発生可能であることを特徴とする請求項1記載の高湿度食品貯蔵庫。
【請求項3】
庫内のアンモニア濃度を検知するアンモニアセンサー(5)が配設されており、庫内のアンモニア濃度がシキイ値を越えたときに、腐敗警告表示が可能であることを特徴とする請求項1または2記載の高湿度食品貯蔵庫。
【請求項4】
庫内の壁面に、木質基材菌床が配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の高湿度食品貯蔵庫。
【請求項5】
庫内の温度および湿度の経過を記録可能なメモリ装置が配設されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の高湿度食品貯蔵庫。
【請求項6】
貯蔵庫の天井、壁面、床面が組立式のプレハブ構造であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の高湿度食品貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品貯蔵庫の改良、更に詳しくは、管理負担が少なく庫内を均一に加湿することができ、肉や野菜などの食品を高品質に加工することができる高湿度食品貯蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食材を放置すると腐敗してしまうが、この腐敗プロセスを人為的に制御して「熟成」を行うことによって、食材の風味を向上させる方法が知られており、特に、生肉を低温かつ高湿度の雰囲気で数10日間保つことによって「熟成肉」を製造するドライエイジング(Dry−Aging)法がある。
【0003】
従来、かかるドライエイジング法を行うためには、温度および湿度を一定に保つことができる高湿度冷蔵庫が使用されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
しかしながら、この従来の冷蔵庫にあっては、庫内を加湿する際の水蒸気の粒が大きいため、食材の表面に付着する水分にムラができてしまうおそれがあり、庫内の気流を高精度に制御しないと熟成の進行にバラツキが出てしまうという問題があった。
【0005】
また、熟成の過程において、収容した食材の個体によっては過度に熟成が進行してしまって腐敗状態となる場合があり、エチレンガスやアンモニア、カビなどの発生により他の食材にまで腐敗が転移してしまうおそれがあるため、高精度な管理が必要であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−6820号公報
【特許文献2】特開2015−31499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の食品貯蔵庫に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、管理負担が少なく庫内を均一に加湿することができ、肉や野菜などの食品を高品質に加工することができる高湿度食品貯蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、食品を収容可能な貯蔵庫であって、
庫内温度を昇降する温調装置1と;
1〜10ナノメートルの微細空気を含むミストが発生可能な加湿装置2と;
庫内に気流を循環させる送風装置3とを少なくとも具備して構成されており、
前記温調装置1、加湿装置2、送風装置3をコントローラー4により制御できるようにするという技術的手段を採用したことによって、高湿度食品貯蔵庫を完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、加湿装置2を、複数の超音波振動子によってミストを発生可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、庫内のアンモニア濃度を検知するアンモニアセンサー5を配設して、庫内のアンモニア濃度がシキイ値を越えたときに、腐敗警告表示を可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、庫内の壁面に、木質基材菌床を配設するという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、庫内の温度および湿度の経過を記録可能なメモリ装置を配設するという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、貯蔵庫の天井、壁面、床面を組立式のプレハブ構造にするという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、食品を収容可能な貯蔵庫であって、庫内温度を昇降する温調装置と;1〜10ナノメートルの微細空気を含むミストが発生可能な加湿装置と;庫内に気流を循環させる送風装置とを少なくとも具備して構成し、前記温調装置、加湿装置、送風装置をコントローラーにより制御できるようしたことによって、このミストにより水分が食品にベッタリと付着せずに柔らかく包み込むため、これら温調装置、加湿装置、送風装置の設置位置や強弱制御の精度を低くすることができ、管理負担が少なく庫内を均一に加湿することができ、肉や野菜などの食品を高品質に加工することができる。
【0016】
また、必要に応じて、庫内にアンモニアセンサーを配設することによって、腐敗個体を検知して転移を防止することができることから、産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の高湿度食品貯蔵庫を表わす概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を
図1に基づいて説明する。
図1中、符号1で指示するものは温調設備であり、符号2で指示するものは加湿装置である。また、符号3で指示するものは送風装置であり、符号4で指示するものはコントローラーである。
【0019】
しかして、本発明の高湿度食品貯蔵庫は、食品を収容可能な貯蔵庫であって、構成について以下に説明する。
【0020】
温調装置1は、庫内温度を昇降することができる装置であり、本実施形態では、特に、常温から氷点下にかけての冷却性能を有するものを採用する。本実施形態では、最も冷却効率を高めるため、この温調装置1を、庫内の中央天井部分に配設する。
【0021】
次に、加湿装置2を配設する。本実施形態では、1〜10ナノメートルの微細な空気が水中に溶け込んだミストを発生することができる。このミストは、溶存酸素量が高い水である。
【0022】
また、この加湿装置2は、複数の超音波振動子によってミストを発生することができる。例えば、この超音波振動子を3つ配設して、各超音波振動子のON/OFFおよび強度をそれぞれ設定することにより、細やかな加湿条件設定を行うことができる。
【0023】
次いで、庫内に気流を循環させる送風装置3を配設する。本実施形態では、ファン式のものを採用し、天井の4箇所に配設する。なお、この送風装置3は、庫外からダクトで送入する形態のものであっても良い。
【0024】
そして、前記温調装置1、加湿装置2、送風装置3は、コントローラー4により制御することができる。本実施形態では、タッチパネル式のものを採用して、電磁的に制御することができる。なお、ツマミ等によるアナログ的制御にすることも可能である。
【0025】
また、本実施形態では、必要に応じて、庫内のアンモニア濃度を検知するアンモニアセンサー5を配設することができ、庫内のアンモニア濃度がシキイ値を越えたときに、腐敗警告表示を行うことができる。この腐敗警告表示は、モニター上に表示させるものや、ブザーやアラームなどの音声で告知するものを採用することができる。アンモニアは腐敗の際に発生する代表的なガスであり、こうすることによって、庫内の腐敗個体を検知して、他の食品への腐敗の転移を防止することができる。
【0026】
更にまた、本実施形態では、庫内の壁面に、木質基材菌床を配設することができ、この木質基材菌床に庫内に存在する雑菌を付着させることによって、収容した食品(特に肉)に雑菌が付着するのを防止することができる。この木質基材菌床の材料としては、スギが好ましく、ブナ、コナラ、クヌギなどであっても良い。
【0027】
更にまた、本実施形態では、庫内の温度および湿度の経過を記録可能なメモリ装置を配設することができ、適正な庫内管理を継続的に行うことによって、高品質な食品の加工を行うことができる。このメモリ装置には、庫内への食品の個体の入出庫を記録することもできる。
【0028】
更にまた、本実施形態では、貯蔵庫の天井、壁面、床面を組立式のプレハブ構造にすることができ、食品の収容量に応じて自由にレイアウトを行うことができ、更に、設置や移動も容易となる。
【0029】
また、本実施形態では、庫内に除霜装置を配設することができる。この除霜装置は、霜を蒸発させて一気に庫外へ排出することによって、短時間で除去することができ、庫内の温度変化を最小限に抑えることができる。
【0030】
『食品加工例』
次に、本発明の高湿度食品貯蔵庫を使用した食品加工例を示す。
<生肉>
牛肉等の生肉を温度0〜1℃、湿度80〜90%の雰囲気を一定に維持して、28日間貯蔵する。熟成の進行は「遊離アミノ酸」の増加により評価できる。遊離アミノ酸には、アスパラギン酸、グルタミン酸等のうまみ系、グリシン、セリン、スレオニン、プロリン等の甘味系、ヒスチジン、アルギニン、チロシン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン等の風味・苦味系といった味を呈するものがある。生肉から熟成肉の完成に至るまでに、この遊離アミノ酸の量(μmol/g)は1.5〜2倍に増加する。
【0031】
<サツマイモ>
収穫後に土が付いた状態で温度35℃、湿度95%以上の雰囲気で一定に維持して、約50時間貯蔵する。こうすることにより、皮下組織にコルク層ができ、収穫時に付いたキズを自然治癒することができる(キュアリング処理)。次に、温度12℃、湿度85%の雰囲気で一定に維持して貯蔵する。こうすることにより、おいしさ、水分を閉じ込め、病原菌への抵抗力を増した状態が長時間維持する(キュアリング貯蔵)。こうして長時間貯蔵されたサツマイモは、デンプンが糖に変わり更においしさを増す。また、このキュアリング処理されたサツマイモは腐敗しにくくなるため、年間を通して安定した出荷が可能になる。
【0032】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、温調装置1、加湿装置2、送風装置3、コントローラー4の設置位置および数量は、レイアウトや食品収納量に応じて、適宜変更することができる。
【0033】
また、本発明の高湿度食品貯蔵庫には、必要に応じて、UV・LEDランプを配設することができ、庫内の細菌を紫外線照射によって滅菌することができる。またLEDとの組み合わせにより長期的に安定した紫外線を供給でき、レジオネラ菌などの発生を食い止めることができる。
【0034】
更にまた、必要に応じて、庫内の二酸化炭素濃度を検知するセンサーや、監視カメラ、Wi−fiネットワーク、コールセンターとのオンライン保守接続設備、パーツエラー表示、気圧調整弁などを配設することができ、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0035】
1 温調装置
2 加湿装置
3 送風装置
4 コントローラー
5 アンモニアセンサー