特開2017-83113(P2017-83113A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社INUIの特許一覧 ▶ 愛知県の特許一覧

特開2017-83113耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物
<>
  • 特開2017083113-耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物 図000021
  • 特開2017083113-耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物 図000022
  • 特開2017083113-耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物 図000023
  • 特開2017083113-耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物 図000024
  • 特開2017083113-耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物 図000025
  • 特開2017083113-耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物 図000026
  • 特開2017083113-耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物 図000027
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-83113(P2017-83113A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/00 20060101AFI20170414BHJP
   C04B 35/66 20060101ALI20170414BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20170414BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20170414BHJP
   C04B 35/18 20060101ALI20170414BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
   F27D1/00 G
   C04B35/66 Q
   C04B35/80 A
   C04B38/00 303A
   C04B35/18 Z
   F27D1/00 N
   F27D1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-214037(P2015-214037)
(22)【出願日】2015年10月30日
(71)【出願人】
【識別番号】515093397
【氏名又は名称】株式会社INUI
(71)【出願人】
【識別番号】000116622
【氏名又は名称】愛知県
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】永縄 勇人
(72)【発明者】
【氏名】福原 徹
【テーマコード(参考)】
4G019
4G030
4G033
4K051
【Fターム(参考)】
4G019EA01
4G019EA03
4G019EA04
4G030AA36
4G030AA37
4G030AA66
4G030BA25
4G030GA13
4G030HA02
4G030HA05
4G033AA02
4G033AA06
4G033AA10
4G033AB02
4G033AB05
4G033AB12
4K051AB03
4K051BC01
4K051BC04
4K051BE00
4K051LC01
(57)【要約】
【課題】セラミックファイバーを用いて、焼成時の線収縮率が小さく、低嵩密度で強度を確保可能な耐火物、鋳込み成型可能な流動性を有する耐火物形成用組成物、これらを得るのに適した耐火繊維粉末を提供する。
【解決手段】耐火繊維粉末は、化学組成にAlおよびSiOを含むセラミックファイバー粉末より構成されており、平均繊維径が7μm以下、平均繊維長が平均繊維径よりも大きく、かつ、30μm以下である。耐火物形成用組成物は、水と、上記耐火繊維粉末と、アルミナセメントおよび/または水硬性アルミナと、を含んでいる。上記耐火物は、上記耐火物形成用組成物を用いて形成されている。上記セラミックファイバー粉末は、アルミナファイバー粉末であるとよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成にAlおよびSiOを含むセラミックファイバー粉末より構成されており、
平均繊維径が7μm以下、平均繊維長が上記平均繊維径よりも大きく、かつ、35μm以下である、耐火繊維粉末。
【請求項2】
キャスタブル耐火物用である、請求項1に記載の耐火繊維粉末。
【請求項3】
上記セラミックファイバー粉末は、アルミナファイバー粉末である、請求項1または2に記載の耐火繊維粉末。
【請求項4】
水と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火繊維粉末と、アルミナセメントおよび/または水硬性アルミナと、を含む、耐火物形成用組成物。
【請求項5】
上記水100質量部に対して、上記耐火繊維粉末を225〜450質量部含む、請求項4に記載の耐火物形成用組成物。
【請求項6】
膨潤性を有する粘土鉱物を含む、請求項4または5に記載の耐火物形成用組成物。
【請求項7】
上記水100質量部に対して、上記粘土鉱物を4質量部以下含む、請求項6に記載の耐火物形成用組成物。
【請求項8】
無機コロイドを含む、請求項4〜7のいずれか1項に記載の耐火物形成用組成物。
【請求項9】
上記水100質量部に対して、上記無機コロイドを60質量部以下含む、請求項8に記載の耐火物形成用組成物。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれか1項に記載の耐火物形成用組成物を用いて形成されている耐火物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、炉殻を高温から守り、炉内部の熱を遮断する等のために、キャスタブル耐火物等の耐火物が使用されている。この種の耐火物は、一般に、水、アルミナ粉末等の耐火粉末、アルミナセメント、セラミックファイバー等の添加物を配合してなる耐火物形成用組成物を、成型、焼成して製造される。
【0003】
先行する特許文献1には、水、アルミナ−石灰クリンカー、アルミナ微粉、アルミナセメントを配合してなる耐火物形成用組成物を、成型、焼成することによって得られたキャスタブル耐火物が開示されている。また、同文献には、耐火物形成用組成物中にセラミックファイバーをさらに配合できる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−72014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、以下の点で問題がある。すなわち、アルミナ粉末を骨材に用いた耐火物形成用組成物は、粘性が増大しやすい。また、アルミナ粉末を骨材に用いた耐火物形成用組成物を成型、焼成してなる耐火物は、焼成時の線収縮率が大きく、体積安定性に欠ける。また、上記耐火物は、焼し締めによって必要な強度を確保することが可能であるものの、内部の空隙が少なくなるため、嵩密度が大きくなりやすい。
【0006】
耐火物の嵩密度を低下させる方法としては、耐火物形成用組成物に所定の添加物を配合することが考えられる。例えば、上述したセラミックファイバーは、通常、数百μm程度の長繊維が互いに絡み合った綿状の形態を呈している。そのため、セラミックファイバーが添加された耐火物形成用組成物を成型、焼成してなる耐火物は、綿状のセラミックファイバーの間に形成された空隙が維持され、嵩密度を小さくすることができる。
【0007】
ところが、セラミックファイバーの添加量が多量になると、耐火物形成用組成物の粘性が増大し、鋳込み成型ができなくなる。そのため、耐火物形成用組成物に添加できるセラミックファイバーは、通常、水100質量部に対して10〜25質量部程度に限定される。それ故、セラミックファイバーを骨材として多量に用い、低嵩密度で強度を確保可能な耐火物を得ることは困難である。
【0008】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、セラミックファイバーを用いて、焼成時の線収縮率が小さく、低嵩密度で強度を確保可能な耐火物、鋳込み成型可能な流動性を有する耐火物形成用組成物、これらを得るのに適した耐火繊維粉末を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、化学組成にAlおよびSiOを含むセラミックファイバー粉末より構成されており、
平均繊維径が7μm以下、平均繊維長が上記平均繊維径よりも大きく、かつ、35μm以下である、耐火繊維粉末にある。
【0010】
本発明の他の態様は、水と、上記耐火繊維粉末と、アルミナセメントおよび/または水硬性アルミナと、を含む、耐火物形成用組成物にある。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、上記耐火物形成用組成物を用いて形成されている耐火物にある。
【発明の効果】
【0012】
上記耐火繊維粉末は、化学組成にAlおよびSiOを含むセラミックファイバー粉末より構成されており、平均繊維径および平均繊維長が特定の範囲内にある。そのため、上記耐火繊維粉末は、耐火物形成用組成物を調製する際に骨材として水に多量に添加した場合であっても、数百μm程度の繊維長を有する綿状のセラミックファイバーを用いる場合に比較して、耐火物形成用組成物の粘性の増大を抑制することができる。それ故、上記耐火繊維粉末を含む上記耐火物形成用組成物は、鋳込み成型可能な流動性を有する。また、上記耐火物形成用組成物によれば、焼成時の線収縮率が小さく、低嵩密度で強度を確保可能な上記耐火物を得ることができる。これは、難焼結性の綿状のセラミックファイバーを粉末とし、上記耐火繊維粉末の平均繊維径および平均繊維長を特定の範囲内とすることにより、焼結反応が生じ難くなるとともに、成型後の乾燥時に形成されたセラミックファイバー粒子間の隙間が焼成後も維持されることによって低嵩密度化が図られ、また、セラミックファイバー粒子による架橋等によって耐火物の強度が向上するためであると推察される。
【0013】
よって、本発明によれば、セラミックファイバーを用いて、焼成時の線収縮率が小さく、低嵩密度で強度を確保可能な耐火物、鋳込み成型可能な流動性を有する耐火物形成用組成物、これらを得るのに適した耐火繊維粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長35μmである耐火繊維粉末の走査型電子顕微鏡像である。
図2】アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長25μmである耐火繊維粉末の走査型電子顕微鏡像である。
図3】アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長10μmである耐火繊維粉末の走査型電子顕微鏡像である。
図4】アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長100μmである耐火繊維粉末の走査型電子顕微鏡像である。
図5】綿状のアルミナファイバー(粉砕前)の走査型電子顕微鏡像である。
図6】試料5(1300℃焼成品)の耐火物形成用組成物を鋳込み成型、乾燥してなる成型体の走査型電子顕微鏡像である。
図7】試料5(1300℃焼成品)の耐火物形成用組成物を鋳込み成型、乾燥、焼成してなる焼成体の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記耐火繊維粉末は、化学組成にAlおよびSiOを含むセラミックファイバー粉末より構成されている。なお、セラミックファイバーは、セラミックファイバー工業会で定義されるように、AlとSiOとを基本組成とする無機質の耐火性繊維である。セラミックファイバー粉末は、具体的には、セラミックファイバーが粉砕等されて粉末状にされた物であり、より具体的には、セラミックスファイバー粒子の集合体である。セラミックファイバー粉末は、化学組成において、SiOよりもAlを多く含んでいてもよいし、AlよりもSiOを多く含んでいてもよいし、SiOとAlとを等量含んでいてもよい。なお、化学組成中には、AlおよびSiO以外の成分が含まれていてもよい。セラミックファイバー粉末としては、具体的には、結晶質系のアルミナファイバー粉末、非晶質系のリフラクトリーセラミックファイバー粉末、焼成されたリフラクトリーセラミックファイバー粉末などを例示することができる。なお、本明細書において、「アルミナファイバー粉末」の語は、広義の意味で用い、アルミナ繊維のみならず、ムライト繊維も含む意味で用いる。
【0016】
上記耐火繊維粉末の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される耐火繊維粉末のSEM像において最表面に写るセラミックファイバー粒子のうち、端面が確認できるものをランダムに10個選択し、選択された各セラミックファイバー粒子の端面の直径を平均した値である。また、上記耐火繊維粉末の平均繊維長は、走査型電子顕微鏡により観察される耐火繊維粉末のSEM像において最表面に写るセラミックファイバー粒子のうち、両端が確認できるものをランダムに100個選択し、選択された各セラミックファイバー粒子の長さを平均した値である。
【0017】
上記耐火繊維粉末の平均繊維径は、原料となるセラミックファイバーの入手容易性、耐火物形成用組成物の流動性向上、成型体の嵩密度低減などの観点から、好ましくは6.5μm以下、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは5.5μm以下、さらにより好ましくは5μm以下とすることができる。なお、上記耐火繊維粉末の平均繊維径は、原料となるセラミックファイバーの入手容易性、耐火物の比強度向上などの観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、さらにより好ましくは2μm以上とすることができる。
【0018】
上記耐火繊維粉末の平均繊維長は、耐火物形成用組成物の流動性向上、硬化反応性の向上、耐火物の低嵩密度化などの観点から、好ましくは33μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは28μm以下、さらにより好ましくは25μm以下とすることができる。なお、上記耐火繊維粉末の平均繊維長は、セラミックファイバーの粉砕性、耐火繊維粉末の生産性などの観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上とすることができる。
【0019】
上記耐火繊維粉末は、具体的には、ロッド状(柱状)の形状を呈するセラミックファイバー粒子の集合体より構成することができる。この場合には、上述した作用効果を確実なものとすることができる。
【0020】
上記耐火繊維粉末は、キャスタブル耐火物用とすることができる。この場合には、焼成時の線収縮率が小さく、低嵩密度で強度を確保可能なキャスタブル耐火物、流動性に優れたキャスタブル耐火物形成用組成物が得られる。
【0021】
上記耐火繊維粉末において、セラミックファイバー粉末は、アルミナファイバー粉末であるとよい。この場合には、耐火繊維粉末の平均繊維長が35μm寄りの比較的大きな値であっても、耐火物形成用組成物の粘性の増大を抑制しやすい。また、この場合には、耐火物の線収縮率を小さくしやすく、また、耐火物の比強度も大きくしやすい。
【0022】
上記耐火繊維粉末は、具体的には、例えば、数百μm程度の繊維長を有する綿状のセラミックファイバーを、ボールミル等を用いて乾式あるいは湿式粉砕することなどによって製造することができる。
【0023】
上記耐火繊維粉末において、セラミックファイバー粉末は、綿状のセラミックファイバーの乾式粉砕物、湿式粉砕物のいずれであってもよい。セラミックファイバー粉末は、好ましくは、綿状のセラミックファイバーの乾式粉砕物であるとよい。この場合には、セラミックファイバー粉末が、綿状のセラミックファイバーの湿式粉砕物である場合に比べ、耐火物形成用組成物の粘性の増大を抑制しやすい。これは、セラミックファイバー粒子の表面におけるOH基が、乾式粉砕によって増加し難いためであると考えられる。
【0024】
上記耐火物形成用組成物において、上記耐火繊維粉末は骨材として機能し、耐火物としての基本的な特性を与える材料である。上記耐火物形成用組成物は、具体的には、例えば、流動性向上、硬化反応性の向上、耐火物の低嵩密度化などの観点から、水100質量部に対して、上記耐火繊維粉末を、好ましくは225〜450質量部、より好ましくは250〜430質量部、さらに好ましくは275〜420質量部、さらにより好ましくは、300〜410質量部含むことができる。
【0025】
上記耐火物形成用組成物において、アルミナセメントおよび/または水硬性アルミナは、耐火物形成用組成物を硬化させる硬化材としての役割がある。上記耐火物形成用組成物は、具体的には、例えば、常温での硬化反応促進、焼成時の線収縮率の低減などの観点から、水100質量部に対して、アルミナセメントおよび/または水硬性アルミナを、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは2.5〜25質量部、さらに好ましくは3〜20質量部、さらにより好ましくは4〜15質量部含むことができる。
【0026】
上記耐火物形成用組成物は、他にも、膨潤性を有する粘土鉱物を含むことができる。膨潤性を有する粘土鉱物は、骨材としての耐火繊維粉末を混ざりやすくし、上記耐火物形成用組成物の流動性向上に寄与することができる。膨潤性を有する粘土鉱物としては、具体的には、例えば、スメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、バーミキュライト、緑泥石、イモゴライト、アロフェン、セピオライト、バリギルスカイト、ギブサイトなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。
【0027】
上記耐火物形成用組成物は、具体的には、例えば、流動性、常温での硬化反応促進、焼成時の線収縮率の低減などの観点から、水100質量部に対して、膨潤性を有する粘土鉱物を、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらにより好ましくは2.5質量部以下含むことができる。なお、上記耐火物形成用組成物は、上記効果を得る観点から、水100質量部に対して、膨潤性を有する粘土鉱物を、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上、さらにより好ましくは0.4質量部以上含むことができる。
【0028】
上記耐火物形成用組成物は、他にも、無機コロイドを含むことができる。無機コロイドは、骨材としての耐火繊維粉末を混ざりやすくし、上記耐火物形成用組成物における硬化反応の補助剤などとして機能することができる。無機コロイドは、とりわけ、膨潤性を有する粘土鉱物と併用される場合に、耐火物形成用組成物の流動性を向上させやすく、また、耐火物の強度を向上させやすい。無機コロイドとしては、具体的には、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、コロイダルジルコニアなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。
【0029】
上記耐火物形成用組成物は、具体的には、例えば、流動性、常温での硬化反応促進、焼成時の線収縮率の低減、コストなどの観点から、水100質量部に対して、無機コロイドを、好ましくは60質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、さらにより好ましくは25質量部以下含むことができる。なお、上記耐火物形成用組成物は、上記効果を得る観点から、水100質量部に対して、無機コロイドを、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上、さらにより好ましくは10質量部以上含むことができる。
【0030】
上記耐火物形成用組成物は、他にも、各種の添加物を1種または2種以上含むことができる。添加物としては、具体的には、例えば、中空アルミナ、耐火骨材、シャモット、セラミックファイバー、炭化ケイ素、ガラス粉、活性炭、炭化物、発泡剤などを例示することができる。
【0031】
より具体的には、3〜5mm程度の中空アルミナは、耐火物の軽量化、体積安定性の向上、耐熱衝撃性の向上などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、3〜5mm程度の中空アルミナを、水100質量部に対して300質量部以下含むことができる。1〜3mm程度の中空アルミナは、耐火物の体積安定性の向上、耐熱衝撃性の向上、熱伝導性の低減などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、1〜3mm程度の中空アルミナを、水100質量部に対して300質量部以下含むことができる。3〜5mm程度の粗粒耐火骨材は、耐火物の体積安定性の向上、耐熱衝撃性の向上などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、3〜5mm程度の粗粒耐火骨材を、水100質量部に対して300質量部以下含むことができる。1〜3mm程度の粗粒耐火骨材は、耐火物の体積安定性の向上、耐熱衝撃性の向上などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、1〜3mm程度の粗粒耐火骨材を、水100質量部に対して300質量部以下含むことができる。0.1〜1mm程度の中粒耐火骨材は、1〜3mm程度の粗粒耐火骨材と同様に、耐火物の体積安定性の向上、耐熱衝撃性の向上などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、中粒耐火骨材を、水100質量部に対して350質量部以下含むことができる。シャモットは、1〜3mm程度の粗粒耐火骨材と同様に、耐火物の体積安定性の向上、耐熱衝撃性の向上などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、シャモットを、水100質量部に対して300質量部以下含むことができる。繊維長200〜1000μm程度のセラミックファイバーは、耐火物の体積安定性の向上、強度向上などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、セラミックファイバーを、水100質量部に対して25質量部以下含むことができる。平均粒径d50が3〜40μm程度の炭化ケイ素は、耐火物の強度向上、耐磨耗性向上などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、炭化ケイ素を、水100質量部に対して350質量部以下含むことができる。平均粒径d50が1〜40μm程度のガラス粉は、耐火物の強度向上などに効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、ガラス粉を、水100質量部に対して250質量部以下含むことができる。0.5〜3mm程度の活性炭は、耐火物の軽量化、体積安定性の向上、耐熱衝撃性の向上などの効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、0.5〜3mm程度の活性炭を、水100質量部に対して70質量部以下含むことができる。平均粒径d50が1〜50μm程度の活性炭は、耐火物の軽量化、熱伝導性の低減などの効果がある。なお、平均粒径が小さな活性炭を用いるほど、孔が小さくなり、熱伝導性を低減させやすくなる。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、平均粒径d50が1〜50μm程度の活性炭を、水100質量部に対して120質量部以下含むことができる。発泡剤は、耐火物の軽量化、熱伝導性の低減などの効果がある。これら効果を得るため、耐火物形成用組成物は、発泡剤を、水100質量部に対して5質量部以下含むことができる。なお、本明細書にいう「平均粒径d50」は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、「LA−500」)にて測定される、体積基準の累積度数分布が50%を示すときの粒子径(直径)である。また、上述した中空アルミナ、粗粒耐火骨材、中粒耐火骨材、シャモット、活性炭(0.5〜3mm)の粒径は、ふるい分けによる値である。
【0032】
上記耐火物形成用組成物は、具体的には、例えば、水に、必要に応じて膨潤性を有する粘土鉱物、無機コロイドを分散させた後、上記耐火繊維粉末、必要に応じて各種添加物を分散させ、その後、アルミナセメントおよび/または水硬性アルミナを分散させることなどによって製造することができる。
【0033】
上記耐火物は、上記耐火物形成用組成物を用いて形成されている。上記耐火物は、不定形耐火物、定形耐火物のいずれであってもよい。上記耐火物は、好ましくは、キャスタブル耐火物、耐火モルタル、プラスチック耐火物、吹き付け材等の不定形耐火物とすることができる。粘度の調整がしやすい、時間経過によって硬化させることができる、基体等への接着力が強い、硬化前でもだれなどの自重による経時変化を起こし難い、施工性が高い、硬化後の表面が滑らかである、などの利点があるからである。上記耐火物は、より具体的には、例えば、上記耐火物形成用組成物を用いて形成された成型体の焼成体、上記耐火物形成用組成物を用いて形成されたこて塗り体の焼成体などとすることができる。
【0034】
上記耐火物は、低嵩密度で強度を確保しやすいなどの観点から、好ましくは、嵩密度が1.4〜2.2g/cmの範囲内にあるとよく、また、曲げ強度が5〜22MPaの範囲内にあるとよい。嵩密度は、より好ましくは1.5〜2g/cmの範囲内とすることができる。
【0035】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0036】
上記耐火繊維粉末、耐火物形成用組成物及び耐火物について、実施例を用いて説明する。
【0037】
<耐火繊維粉末の作製>
原料として、以下の綿状のセラミックファイバー(市販品)を準備した。
・化学組成にAl:68質量%、SiO:32質量%を含むアルミナファイバー(平均繊維径5μm、平均繊維長500μm)(株式会社ITM製、「FMXバルクファイバー」)(走査型電子顕微鏡像:図5
・化学組成にAl:48質量%、SiO:52質量%を含むリフラクトリーセラミックファイバー(平均繊維径4μm、平均繊維長500μm)(株式会社ITM製、「FXLバルクファイバー」)
なお、上記化学組成は、蛍光X線分析装置(リガク社製、「リガク3270」)を用いて測定した。
【0038】
粉砕メディアとしてアルミナボールが入ったボールミルに、原料のアルミナファイバーまたはリフラクトリーセラミックファイバーを入れ、乾式粉砕法により粉砕した。この際、粉砕時間を調整することにより、以下の6種類のアルミナファイバー粉末より構成される耐火繊維粉末、4種類のリフラクトリーセラミックファイバー粉末より構成される耐火繊維粉末を作製した。
【0039】
・アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長100μmである耐火繊維粉末(走査型電子顕微鏡像:図4
・アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長35μmである耐火繊維粉末(走査型電子顕微鏡像:図1
・アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長30μmである耐火繊維粉末
・アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長25μmである耐火繊維粉末(走査型電子顕微鏡像:図2
・アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長20μmである耐火繊維粉末
・アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長10μmである耐火繊維粉末(走査型電子顕微鏡像:図3
・リフラクトリーセラミックファイバー粉末より構成されており、平均繊維径4μm、平均繊維長30μmである耐火繊維粉末
・リフラクトリーセラミックファイバー粉末より構成されており、平均繊維径4μm、平均繊維長25μmである耐火繊維粉末
・リフラクトリーセラミックファイバー粉末より構成されており、平均繊維径4μm、平均繊維長20μmである耐火繊維粉末
・リフラクトリーセラミックファイバー粉末より構成されており、平均繊維径4μm、平均繊維長10μmである耐火繊維粉末
【0040】
また、水を用いた湿式粉砕法により粉砕した以外は同様にして、1種類のアルミナファイバー粉末より構成される耐火繊維粉末を作製した。
・アルミナファイバー粉末より構成されており、平均繊維径5μm、平均繊維長25μmである耐火繊維粉末
【0041】
<耐火物形成用組成物の作製>
耐火物形成用組成物の原料として、以下のものを準備した。
−耐火繊維粉末−
・上記作製した各耐火繊維粉末
−耐火粉末−
・アルミナ粉末(平均粒径d50=90μm)(住友化学株式会社製、「A−210」)
・アルミナ粉末(平均粒径d50=40μm)(住友化学株式会社製、「A−21」)
・アルミナ粉末(平均粒径d50=15μm)(住友化学株式会社製、「AM−28B」)
・高アルミナ粉末(平均粒径d50=15μm)(カルデリス株式会社製、「焼長城85#325M」)
・低アルミナ粉末(平均粒径d50=15μm)(稲垣鉱業株式会社製、「ムライトフラワー」)
・アルミナ粉末(平均粒径d50=5μm)(住友化学株式会社製、「AM−21」)
−硬化材−
・アルミナセメント(電気化学工業株式会社製、「デンカアルミナセメント1号」)
−添加物−
・粘土鉱物(スメクタイト)(株式会社ホージュン製、「精製ベントナイト(水系)」)
・無機コロイド(コロイダルシリカ)(日揮触媒株式会社製、「Cataloid SI−40」)
・中空アルミナ(3〜5mm)(太平洋ランダム株式会社製、「中空球電融アルミナBL 3−5mmF」)
・中空アルミナ(1〜3mm)(太平洋ランダム株式会社製、「中空球電融アルミナBL 1−3mm」)
・粗粒耐火骨材(3〜5mm)(カルデリス株式会社製、「焼長城85(3−5mm)」)
・粗粒耐火骨材(1〜3mm)(カルデリス株式会社製、「焼長城85(1−3mm)」)
・中粒耐火骨材(0.1〜1mm)(カルデリス株式会社製、「焼長城85(0.1−1mm)」)
・シャモット(3〜4mm)
・シャモット(1〜3mm)
・シャモット(0.1〜1mm)
・アルミナファイバー(綿状)(平均繊維径5μm、平均繊維長500μm)(株式会社ITM社製、「FMXバルクファイバー」)
・炭化ケイ素(平均粒径d50=40μm)(信濃電気精錬株式会社製、「研磨微粉信濃ランダムGP#320」)
・炭化ケイ素(平均粒径d50=3μm)(信濃電気精錬株式会社製、「研磨微粉信濃ランダムGP#4000」)
・ガラス粉(平均粒径d50=10μm)(ビンガラスをボールミルで粉砕したもの)
・活性炭(0.5〜3mm)(株式会社ユー・イー・エス製、「KD−GA−X」)
・活性炭(平均粒径d50=40μm)(株式会社ユー・イー・エス製、「KD−PWSG」)
【0042】
後述の表1〜18に示される配合にて、水100質量部に対し、粘土鉱物、無機コロイドを所定量分散させた。なお、粘土鉱物および/または無機コロイドを分散させない場合もある。次いで、これに、所定の耐火繊維粉末または耐火粉末、必要に応じて所定の添加物を所定量分散させた。次いで、これに、アルミナセメントを所定量分散させた。なお、分散には、撹拌機を用いた。これにより、表1〜18に示される各成分が配合されてなる各耐火物形成用組成物を得た。
【0043】
<耐火物形成用組成物の粘度>
粘度計(リオン社製、「ビスコテスタVT−04E」)を用い、20℃における耐火物形成用組成物の粘度を測定した。なお、粘度の測定は、上記耐火物形成用組成物の調製後、直ちに実施した。粘度が150Pa・s以下の耐火物形成用組成物は、振動などの外的な刺激を必要とすることなく鋳込み成型が可能であり、鋳込み成型時の流動性に優れるといえる。粘度が150Pa・s超〜300Pa・s以下の耐火物形成用組成物は、振動などの外的な刺激が必要となるが、鋳込み成型に良好な流動性を有するといえる。粘度が300Pa・s超〜400Pa・s以下の耐火物形成用組成物は、主にこて塗りでの使用に適しているが、鋳込み成型に用いられることもあり、鋳込み成型可能な流動性を有するといえる。粘度が400Pa・sを超える耐火物形成用組成物は、流動性がなく、鋳込み成型に用いることが困難である。
【0044】
<耐火物形成用組成物の硬化反応性>
各耐火物形成用組成物を、直方体形状の空間部を有するステンレス製の型(空間部:長さ160mm×幅40mm×高さ40mm)に流し込み、室温で養生した。この際の硬化状況を目視にて観察し、硬化を確認した後、型から脱型し、各成型体を得た。また、脱型後の成形体について、ひび割れ等の状態を目視にて観察した。なお、上記硬化状況の確認は、6時間後、12時間後、18時間後に行った。硬化が進み、脱型が可能と判断した場合には、その時点で型から脱型したが、そのまま室温での養生を続けた。養生は、基本的に12時間以上行い、最長でも18時間とした。そして、各耐火物形成用組成物の硬化反応性を4段階で評価した。具体的には、12時間未満で硬化した場合を硬化反応性に優れるとして「(4)」、12時間以上18時間以下で硬化した場合を硬化反応性が良好であるとして「(3)」、脱型時にひびが確認されたが硬化した場合を、許容範囲の硬化反応性であるとして「(2)」、常温で硬化しなかった場合を、硬化反応性に劣るとして「(1)」とした。
【0045】
<耐火物の作製>
上記脱型後の各成形体を、110℃で6時間以上(最長12時間)乾燥させた。次いで、乾燥後の各成形体を、昇温速度100℃/hで最高温度まで昇温し、最高温度にて3時間保持するという焼成条件で焼成した。なお、最高温度は、1300℃、または、1500℃とした。
【0046】
<耐火物形成用組成物の施工使用量>
上記乾燥後の成型体の重量と型の体積から、耐火物形成用組成物の施工使用量を算出した。
【0047】
<耐火物の線収縮率>
上記焼成後の直方体形状の耐火物について、最長部をノギスにて5点測定して平均し、型の大きさから耐火物の線収縮率を算出した。
【0048】
<耐火物の嵩密度>
上記耐火物の重量を測定するとともに、上記耐火物について、長さ、幅、高さをそれぞれノギスにて5点測定して平均して上記耐火物の体積を求め、耐火物の嵩密度を算出した。
【0049】
<耐火物の曲げ強度>
万能曲げ試験機(A&D社製、「RTF−2325」)を用い、3点曲げ試験(N=3の平均値)により耐火物の曲げ強度を測定した。
【0050】
<耐火物の比強度>
上記曲げ強度の値を上記嵩密度の値で除すことにより耐火物の比強度を算出した。
【0051】
作製した耐火物形成用組成物の配合および各特性、耐火物の各特性などをまとめて、表1〜表18に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
【表8】
【0060】
【表9】
【0061】
【表10】
【0062】
【表11】
【0063】
【表12】
【0064】
【表13】
【0065】
【表14】
【0066】
【表15】
【0067】
【表16】
【0068】
【表17】
【0069】
【表18】
【0070】
表1〜表7によれば、以下のことがわかる。平均粒径d50が90μmのアルミナ粉末を230質量部配合した試料52は、流動性がない。試料52よりもアルミナ粉末の平均粒径を小さくした試料54(d50=40μm)は、アルミナ粉末の配合量が300質量部ですでに粘度が350Pa・sと高い値を示している。試料55に示されるように、これ以上アルミナ粉末の配合量が増加すると、粘性が急激に増加する。試料57、58は、試料54等よりもさらにアルミナ粉末の平均粒径を小さくすることによって、粘度の増大を抑制することができるものの、焼成時の線収縮率が極めて大きくなり、体積安定性に欠ける。試料60、61も、試料57、58と同様の傾向を示す。また、試料57に示さるように、焼し締めによって強度を確保することはできる。しかし、試料57の耐火物は、焼き締まることにより内部の空隙が少なくなるため、嵩密度が高くなっている。
【0071】
一方、試料21は、アルミナファイバー粉末より構成される耐火繊維粉末を用いている。しかしながら、当該耐火繊維粉末の平均繊維長は100μmであり、本発明で規定される範囲を大きく上回っている。そのため、試料21は、230質量部程度の配合量ですでに流動性がなく、鋳込み成型ができなった。この結果から、試料21では、セラミックスファイバーを骨材として多量に用い、低嵩密度で強度を確保可能な耐火物を得ることは困難であるといえる。
【0072】
これらに対し、表1〜表7に示されるその他の試料における耐火繊維粉末は、化学組成にAlおよびSiOを含むセラミックファイバー粉末より構成されており、平均繊維径および平均繊維長が本発明で規定される特定の範囲内にある。そのため、上記耐火繊維粉末は、耐火物形成用組成物を調製する際に骨材として水に多量に添加した場合であっても、耐火物形成用組成物の粘性の増大を抑制することができている。それ故、上記耐火繊維粉末を含む耐火物形成用組成物は、鋳込み成型時の流動性に優れるもの、良好な流動性を有するものを含めて、鋳込み成型可能な流動性を有していることがわかる。また、上記耐火繊維粉末を含む耐火物形成用組成物によれば、焼成時の線収縮率が小さく、低嵩密度で強度を確保可能な耐火物を得ることができることがわかる。
【0073】
なお、図6および図7によれば、成型後の乾燥時に形成されたセラミックファイバー粒子間の隙間が焼成後も維持されていることがわかる。また、焼成後も、ロッド状のセラミックファイバー粒子がその形状を維持しており、焼結反応がそれほど進行していないこともわかる。
【0074】
次に、表8〜表10によれば、以下のことがわかる。上記耐火繊維粉末を含む耐火物形成用組成物が、膨潤性を有する粘土鉱物を含む場合には、骨材としての耐火繊維粉末が混ざりやすくなり、耐火物形成用組成物の流動性向上に有利である。また、耐火物形成用組成物は、添加効果を得るとともに、流動性、常温での硬化反応促進、焼成時の線収縮率の低減などの観点から、水100質量部に対して、膨潤性を有する粘土鉱物を、0.1〜4質量以下の範囲で含有しているとよいことがわかる。
【0075】
また、上記耐火繊維粉末を含む耐火物形成用組成物が、無機コロイドを含む場合には、骨材としての耐火繊維粉末が混ざりやすくなり、耐火物形成用組成物における硬化反応の補助などに寄与することができる。また、耐火物形成用組成物は、添加効果を得るとともに、流動性、常温での硬化反応促進、焼成時の線収縮率の低減などの観点から、水100質量部に対して、無機コロイドを、3〜60質量以下の範囲で含有しているとよいことがわかる。
【0076】
次に、表11によれば、以下のことがわかる。試料57、58、63〜66に示されるように、アルミナ粉末より構成される耐火粉末におけるアルミナ含有量を変更しても、かかる耐火粉末を骨材に用いた耐火物の線収縮率を大幅に小さくすることは困難であることがわかる。また、試料48、62に示されるように、耐火繊維粉末として、アルミナファイバー粉末に代えて、リフラクトリーセラミックファイバー粉末を用いた場合であっても、アルミナファイバー粉末を用いた場合と同様の効果が得られることがわかる。もっとも、耐火繊維粉末として、アルミナファイバー粉末を用いた場合には、耐火物形成用組成物の粘度が許容範囲内で少し大きくなったものの、線収縮率が小さくなり、また、比強度も大きくしやすい傾向が見られた。
【0077】
次に、表12によれば、以下のことがわかる。表12は、嵩密度が曲げ強度に及ぼす影響を確認したものである。すわなち、表12に示されるように、ここでは、耐火物形成用組成物中に有機物である活性炭を添加し、これを焼成時に消失させることにより、耐火物を多孔質化した。同じ嵩密度で比較した場合、耐火繊維粉末を用いた試料5、48の耐火物は、従来の耐火粉末を用いたその他の試料の耐火物と同程度、またはそれ以上の比強度を有していることがわかる。
【0078】
次に、表13によれば、以下のことがわかる。表13に示されるように、耐火繊維粉末を構成するセラミックファイバー粉末が、綿状のセラミックファイバーの乾式粉砕物である場合には、セラミックファイバー粉末が、綿状のセラミックファイバーの湿式粉砕物である場合に比べ、耐火物形成用組成物の粘性の増大を抑制しやすいことがわかる。
【0079】
次に、表14〜表18によれば、以下のことがわかる。表14〜表18に示されるように、セラミックファイバー粉末より構成される耐火繊維粉末を骨材とする耐火物形成用組成物中に、各表記載の添加物を配合しても、耐火物形成用組成物の粘度や硬化反応性が大きく阻害されることがないことがわかる。したがって、耐火物形成用組成物中にこれら添加物を適量配合することにより、上述した添加物の効果を享受できる耐火物が得られることがわかる。
【0080】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7