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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-83212(P2017-83212A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】測位システム及び測位方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/43 20100101AFI20170414BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20170414BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20170414BHJP
   G01S 19/07 20100101ALI20170414BHJP
   G01S 19/14 20100101ALI20170414BHJP
【FI】
   G01S19/43
   G01C21/28
   B60R16/02 640J
   G01S19/07
   G01S19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-209314(P2015-209314)
(22)【出願日】2015年10月23日
(71)【出願人】
【識別番号】500539929
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・データ・カスタマサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 武史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】川原 政範
【テーマコード(参考)】
2F129
5J062
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB02
2F129BB03
2F129BB04
2F129BB08
2F129BB09
2F129BB11
2F129BB33
2F129BB46
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF62
2F129FF69
5J062AA04
5J062BB01
5J062CC07
5J062EE04
5J062FF01
(57)【要約】
【課題】広い地域をカバーし、低コストで高精度の位置計測を行える測位システムを提供する。
【解決手段】走行移動物体11の周辺には、複数の固定基地局16が設けられる。システム端末(位置補正情報生成装置)15は、複数の固定基地局16からの位置補正情報を受信し、複数の固定基地局16からの位置補正情報から、走行移動物体11上で、高精度位置補正情報を抽出・生成する。ガイダンス装置12及び移動衛星受信機13(位置計測装置)は、衛星からの情報を受信して走行移動物体の位置を測位する。システム端末15は、抽出・生成した高精度位置補正情報をガイダンス装置12に供給し、ガイダンス装置12は、システム端末15からの高精度位置補正情報により走行移動物体11の位置を補正して高精度位置情報を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行移動物体の周辺に設けられた複数の固定基地局と、
前記複数の固定基地局からの位置補正情報を受信し、前記複数の固定基地局からの位置補正情報から、走行移動物体上で、高精度位置補正情報を抽出・生成する位置補正情報生成装置と、
衛星からの情報を受信して走行移動物体の位置を測位する位置計測装置と、
を備え、
前記位置補正情報生成装置は、抽出・生成した高精度位置補正情報を前記位置計測装置に供給し、
前記位置計測装置は、前記位置補正情報生成装置からの高精度位置補正情報により前記走行移動物体の位置を補正して高精度位置情報を生成する
ことを特徴とする測位システム。
【請求項2】
前記位置補正情報生成装置は、前記複数の固定基地局からの位置補正情報から精度が最も高くなるものを適宜選択して、高精度位置補正情報として出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記位置補正情報生成装置は、前記複数の固定基地局からの位置補正情報から前記走行移動物体上で仮想基地局を生成し、前記仮想基地局の位置補正情報を高精度位置補正情報として出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項4】
前記位置補正情報生成装置は、前記位置計測装置により生成された高精度位置情報と、同時刻帯のセンサ情報とを統合・編集して蓄積部に蓄積する
ことを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項5】
位置補正情報生成装置が、走行移動物体の周辺に設けられた複数の固定基地局からの位置補正情報を受信し、前記複数の固定基地局からの位置補正情報から、走行移動物体上で、高精度位置補正情報を抽出・生成するステップと、
前記位置補正情報生成装置からの高精度位置補正情報を位置計測装置に供給するステップと、
位置計測装置が、衛星からの情報を受信して走行移動物体の位置を測位するとともに、前記位置補正情報生成装置からの高精度位置補正情報により前記走行移動物体の位置を補正して高精度位置情報を生成するステップと
を含むことを特徴とする測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動物体の位置特定、走行精度の向上においてはGPS(Global Positioning System;全地球測位システム)測位技術の利用が一般化している。カーナビゲーションにあってはGPS測位と道路等市街地地図の相互補完技術により実用精度が得られるため普及している。しかしながら、GPS測位では、道路や建築構造物等の目印が無い農地や原野等では、適切な位置を表示することが困難である。
測量分野においては精度の向上が図れるRTK(Real Time Kinematic;リアルタイムキネマティック)方式が認められ、ネットワークにより随時の場所、時刻において活用することができる。しかしながら、この測量用RTK方式によって移動物体の位置特定、走行精度の向上を図るにはコストがかかり、日常に用いることは困難である。
【0003】
農耕機械、建設機械等の走行移動物体の位置特定及び走行経路の精度向上においてもGPS測位技術が用いられ、ガイダンス装置、自動操舵装置との連動により一定の精度で利用されており、今後の普及可能性が高くなっている。しかしながら、現時点で農耕用機材等の移動物体に長時間適用するには、上記何れの方法を用いてもコスト及び精度の点で十分ではない。
【0004】
そこで、コスト及び高精度に対する課題を解決するために、走行移動物体を運行させる目的の農耕等対象地域内において、適切な位置に建設する任意の複数RTK方式の固定基地局とネットワーク回線網と、移動物体上に搭載するシステム端末と、中央制御装置及び高精度位置・センサ統合情報蓄積装置とからなるシステムを構築し、走行移動物体上で高精度の位置補正情報を抽出・生成することが考えられる。この方式により、測位目標走行移動物体の位置特定及び走行経路の高精度化においてコスト及び高精度化の双方課題を実現できると共に、高精度位置情報とセンサ情報を統合して蓄積し、更に活用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−127665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、日本国内では人口の減のため、例えば農業分野等では高齢化の傾向が強く農業の担い手が減少し、並行して一耕作単位当たりの面積が拡大すると共に国際競争力向上のために農業等の作業対象面積が益々大規模化している。一方、農耕機材等を用いた耕作等の作業機材の運行に当たっては、大規模農場を高精度で農耕機材を走行させる必要があり、熟練運転者が逼迫する傾向は著しく、対策として自動操舵の導入により大規模・省力化を図る試みが始められている。
【0007】
農地等での自動操舵走行にはGPS等の測位技術利用が必須である。通常、自動車に搭載されているナビゲーションシステムは基本精度が10mであるところを道路地図との連動により実用に供している。しかしながら、農耕等に必要な精度は、畝と畝間の走行経路を逸脱しないよう、cm(センチメートル)クラスの精度が必要である。この必要基本精度から、また、農業地域では道路又は位置の特定に用いられる建築構造物が極めて少ないことからも、従来のナビゲーションシステムを適用することは実用精度の観点から困難である。
【0008】
GPSを利用する高精度化実現方法の一つとしては、RTK方式が広く用いられている。RTK方式は、理論的にも測量用位置情報サービスの面からもcmクラスの精度の測位が可能である。RTK方式は、国土地理院にも認められ、全国で利用可能な測量用位置情報サービスにも適用されている。この測量用位置情報サービスの測量以外の利用分野として、農耕機材等の高精度位置特定及び走行経路の高精度化がある。しかしながら、測量と異なり、農耕等は農業繁忙期等の24時間稼動を始め、年間の利用時間も多く、利用コスト面から測量用位置情報サービスを農業等に継続的に利用することは現実的ではない課題がある。
【0009】
cmクラスの高精度を要求する分野例として、農耕等の対象地域においてRTK技術を用い、更にコストを下げる方法としては、RTK基地局方式がある。これは、農耕等の対象地域をカバーする領域単位にRTK方式の固定基地局を建設し、基地局で測位される衛星情報によるRTK位置補正情報を地域内で稼動する農耕機材等の走行移動物体に無線等で配信し、走行移動物体において衛星受信機材等を搭載することにより得られる衛星測位情報とRTK位置補正情報を用いることにより、位置情報を高精度化し、cmクラスの高精度の位置情報を検出可能とするものである。
【0010】
RTK方式の固定基地局を農業用等に地域に建設することで、測量用位置情報サービスを継続利用することに比べ、コストが改善される。しかし、このRTK基地局方式は、RTK方式の特徴として固定基地局とRTK位置補正情報を受信する走行移動物体との距離(基線距離)が長距離になるに従い、誤差が拡大し精度が悪化する。地域の環境により精度の悪化状況は異なるが、約5km(キロメートル)内外の範囲内で十分なcmクラス精度が得られ、10km以上の距離では必要な精度が得られ難くなる。特に走行データを蓄積し、そのデータを復元して次の農耕等工程に用いる場合は、誤差が積み重なり、精度は更に悪化する課題がある。
【0011】
RTK基地局方式では、従来、測位対象の走行移動物体は、1局のRTK方式の固定基地局からの位置補正信号を取得して、走行移動物体の位置精度を高精度化させている。走行移動物体が取得する位置補正信号が1局の固定基地局である理由は、一例として建設分野においては、建設機械が測位される対象走行移動物体となり、この建設機械等の走行移動物体は、建設工事地域内に限定して移動し、かつ移動期間は工事期間中に特定されているからである。したがって、工事対象地域を網羅するに適した位置を選び、その場所に臨時にRTK方式の固定基地局を1局設置すれば、必要十分なRTK位置補正情報を利用できる。
【0012】
また、一例として農業分野では、トラクタ等農業機械が測位対象走行移動物体となり、トラクタ等は農地に直接関係付けられて対象農地内で移動するため、1つのRTK方式の固定基地局からのRTK位置補正情報により、必要十分な位置情報を取得できるからである。農地等を保有する自治体の地域全域でRTK位置情報を活用する場合でも同様であり、トラクタ等の走行移動物体は、1局のRTK方式の固定基地局を利用可能であれば、必要十分な位置情報を得ることができる。
【0013】
しかしながら、農地等が大規模になるに連れ、一農業経営単位毎に大型農業機械を個々に備えることの経済性の問題から、個々の農業経営体で農業耕作工程毎に異なる大型農業機械を保有、効率的に使用し続けることが困難となっている。そのため、コントラクタと称する組織体が発生しつつある。
【0014】
コントラクタは大型農業機械を多数保有し、各農業経営体から要請される農業耕作工程を請負、要請に応じて保有農業機械を割り当て、広範囲を移動しつつ要請された耕作を行なう。コントラクタでも熟練者確保が困難なことから高精度位置情報を用いた自動操舵走行を試みようとの動きがある。コントラクタでは次の二つの観点から農耕機材等測位対象走行移動物体が1基地局を用いて位置精度を生成することに問題が生じる。
【0015】
その第一の理由は、コントラクタが請け負う農耕地域は1農業経営体が保有する農地面積を複数集合させるため農耕面積が広大で、かつ、農耕工程を請負、農業機械等を走行させる操舵者が、その都度変化する。そのために、操舵者にとっては熟練した操舵技量を要求されるか、自動操舵走行精度が頼りとなり、遠距離を移動しつつ位置精度を1基地局から得て走行させる場合には、精度の問題が発生する。特に春の走行データを復元し、夏の除草等に用いる場合に、精度の誤差が二重に重なり、誤差が大きくなるという問題が生じる。
【0016】
第二の理由は、コントラクタ組織は請負であるため、代価を明確にする必要があり、そのためには、請け負った地域の位置特定と畝単位等の耕作等、作業内容・作業量の明確な計数化が必要である。計数化のためには位置情報の記録と精度が重要であり、1つのRTK固定基地局と農機等測位対象走行移動物体の距離が長距離となる場合に発生するRTK状態からの逸脱、精度の悪化が問題となる。
【0017】
農業等では大規模・省力化の推進のために農耕等の精緻な実績データを蓄積し、次期の収量拡大のために分析・活用しようとする機運がある。有用な実績データを蓄積するためには、農業等の実施状況と高精度の位置情報、センサ情報等と連動した統合情報を自動的に測定、収集しビッグデータとして効率的に蓄積することを可能とする方式が必要である。
【0018】
この方式実現の課題の一つは、時間・センサ情報等と連動した高精度位置情報の自動収集である。現時点では、位置情報を獲得するために空撮・衛星画像利用等により画像情報を別途個別に収集し、その後に位置情報と結合させる多段階の処理が必要であり、かつ、位置情報精度は粗い課題がある。
【0019】
上述の課題を鑑み、本発明は、広い地域をカバーし、低コストで高精度の位置計測を行える測位システム及び測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る測位システムは、走行移動物体の周辺に設けられた複数の固定基地局と、前記複数の固定基地局からの位置補正情報を受信し、前記複数の固定基地局からの位置補正情報から、走行移動物体上で、高精度位置補正情報を抽出・生成する位置補正情報生成装置と、衛星からの情報を受信して走行移動物体の位置を測位する位置計測装置とを備え、前記位置補正情報生成装置は、抽出・生成した高精度位置補正情報を前記位置計測装置に供給し、前記位置計測装置は、前記位置補正情報生成装置からの高精度位置補正情報により前記走行移動物体の位置を補正して高精度位置情報を生成することを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る測位方法は、位置補正情報生成装置が、走行移動物体の周辺に設けられた複数の固定基地局からの位置補正情報を受信し、前記複数の固定基地局からの位置補正情報から、走行移動物体上で、高精度位置補正情報を抽出・生成するステップと、前記位置補正情報生成装置からの高精度位置補正情報を位置計測装置に供給するステップと、位置計測装置が、衛星からの情報を受信して走行移動物体の位置を測位するとともに、前記位置補正情報生成装置からの高精度位置補正情報により前記走行移動物体の位置を補正して高精度位置情報を生成するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の固定基地局からの位置補正情報から、走行移動物体上で高精度位置補正情報を抽出・生成して、計測位置を補正することにより、広い地域に渡って、低コストで、高精度の位置を計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る測位システムの概要を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る測位システムにおける各部のネットワークの接続を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る測位システムにおける各部のネットワークの接続を示す説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る測位システムにおける各部のネットワークの接続を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る測位システムにおけるリアルモードの説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る測位システムにおける仮想モードの説明図である。
図7】本発明の実施形態に係る測位システムにおけるRTK位置補正情報配信装置を構成するモジュールの説明図である。
図8】認証モジュールでの処理を示すフローチャートである。
図9】マルチ配信インターフェースモジュールでの処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係る測位システムにおけるシステム端末を構成するモジュールの説明図である。
図11】基地局接続・受信モジュールでの処理を示すフローチャートである。
図12】リアルモードモジュールでの処理を示すフローチャートである。
図13】仮想モードモジュールでの処理を示すフローチャートである。
図14】ガイダンスインターフェースモジュール65での処理を示すフローチャートである。
図15】高精度位置情報受信モジュールでの処理を示すフローチャートである。
図16】高精度位置・センサ統合情報の説明図である。
図17】高精度位置情報統合モジュールでの処理を示すフローチャートである。
図18】ネットワーク送信インターフェースモジュールでの処理を示すフローチャートである。
図19】本発明の第1の実施形態に係る測位システムを利用したトラクタの操舵システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る測位システム1の概要を示す説明図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る測位システム1は、走行移動物体11と、ガイダンス装置12(位置計測装置)及び移動衛星受信機13と、自動操舵装置14と、システム端末(位置補正情報生成装置)15と、RTK方式の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)と、RTK位置補正情報配信装置17(17−1、17−2、17−3、…)と、中央制御装置18と、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19と、衛星20(20−1、20−2、…)から構成される。
【0025】
走行移動物体11は、例えば農耕用のトラクタである。
走行移動物体11には、ガイダンス装置12と、移動衛星受信機13と、自動操舵装置14とが搭載されている。
ガイダンス装置12は、GPSを用いて走行移動物体11の運転操作を支援する装置である。
【0026】
移動衛星受信機13は、地球上を周回する複数の衛星20(20−1、20−2、…)からの衛星発信情報を受信して、ガイダンス装置12に供給する。衛星20(20−1、20−2、…)としては、GPS衛星の他に、GLONASS(Global Navigation Satellite System;グロナス)衛星等を補助的に用いても良い。
【0027】
ガイダンス装置12は、GPSから取得された位置情報と、設定された圃場の情報や作業内容により走行ラインを算出し、走行移動物体11の運転操作を支援する。なお、後に説明するように、ガイダンス装置12の計測位置は、システム端末15からの高精度RTK位置補正情報により補正される。
自動操舵装置14は、ガイダンス装置12の制御の基に、走行移動物体11を自動操舵する。
【0028】
システム端末15は、携帯電話網等の端末である。また、システム端末15は、GPS機能やBlueTooth(登録商標)等の近距離無線機能を有している。システム端末15は、複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からのRTK位置補正情報を受信し、高精度RTK位置補正情報を生成し、ガイダンス装置12に供給する。
ガイダンス装置12は、移動衛星受信機13からの衛星発信情報により取得された位置情報を、システム端末15からの高精度RTK位置補正情報により補正して、高精度位置情報を生成する。
【0029】
なお、後に説明するように、システム端末15での高精度RTK位置補正情報の生成には、リアルモードと仮想モードとが選択できる。
リアルモードは、複数の実際の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からのRTK位置補正情報の中から、最も精度の高いものを選択して、高精度RTK位置補正情報を生成するものである。
仮想モードは、複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からのRTK位置補正情報を使って、システム端末15で走行移動物体11上に仮想基地局を生成し、この仮想基地局のRTK位置補正情報により、高精度RTK位置補正情報を生成するものである。
【0030】
また、システム端末15は、ガイダンス装置12からリアルタイムで得られる高精度位置情報と、同時刻のセンサ情報(例えば収量センサ、流量センサ、エンジン回転・負荷センサ、水分センサ、窒素等土壌成分センサ等)とを統合・編集し、この統合データを高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19に送信する。
【0031】
高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19は、システム端末15で、統合・編集された高精度位置情報とセンサ情報との統合情報を、高精度位置・センサ統合情報として、蓄積、保存する。この高精度位置・センサ統合情報は、ビッグデータとして、次期の収量拡大のために分析・活用できる。
なお、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19は、走行移動物体11に備えられた装置であってもよいし、走行移動物体11とは異なる任意の場所に設置された装置であってもよい。
【0032】
固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)は、走行移動物体11が走行する周囲に、複数個設置されている。固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)には、RTK位置補正情報配信装置17(17−1、17−2、17−3、…)が設けられる。固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)は、衛星20(20−1、20−2、…)からの衛星発信情報を受信する。
【0033】
RTK位置補正情報配信装置17(17−1、17−2、17−3、…)は、固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)で受信した衛星信号をRTK位置補正情報に変換して、システム端末15に配信する。
中央制御装置18は、システム端末15で蓄積したシステム状態ログ情報を収集するとともに、最新プログラム情報、接続可能な端末情報等をRTK位置補正情報配信装置17(17−1、17−2、17−3、…)やシステム端末15に送信し、システムの状態を最適化する。
【0034】
図2図3及び図4は、本発明の実施形態に係る測位システム1における各部のネットワークの接続を示す説明図である。
図2に示すように、固定基地局16のRTK位置補正情報配信装置17と、走行移動物体11のシステム端末15との間には、ネットワーク回線網21が設けられる。
【0035】
RTK位置補正情報配信装置17からのRTK位置補正情報は、ネットワーク回線網21経由で、システム端末15に配信される。ここで、走行移動物体11の走行の対象地域は、例として農業の場合、道路、電源、通信回線等が未配備の地域も多く存在し、走行移動物体11と固定基地局16との間の距離は数kmを越える。このことから、ネットワーク回線網21としては、社会資本である携帯電話網を用いることが望ましい。
【0036】
図3に示すように、走行移動物体11には、移動衛星受信機13と、ガイダンス装置12と、自動操舵装置14とが取り付けられている。また、走行移動物体11内には、システム端末15が備えられる。システム端末15としては、携帯端末を用いることができる。システム端末15とガイダンス装置12との間の距離は数m(メートル)と比較的短いことから、システム端末15とガイダンス装置12との間のネットワーク22としては、例えば無線形式のBluetooth(登録商標)のような近接通信を用いることが望ましい。
【0037】
また、ガイダンス装置12と自動操舵装置14との間の情報伝達は、走行移動物体11内の車内LAN(Local Area Network;構内通信網)23又は有線ケーブルが用いられる。また、この車内LAN23には、収量センサ41、流量センサ42、エンジン回転・負荷センサ43、水分センサ44、窒素等土壌成分センサ45等の各種のセンサが接続されている。これらのセンサ情報は、車内LAN23からガイダンス装置12または直接システム端末15に送られ、システム端末15で収集できる。
【0038】
図4に示すように、システムの状態を最適化するプログラム更新・ログ監視情報は、中央制御装置18から、ネットワーク24を通じて、固定基地局16のRTK位置補正情報配信装置17やシステム端末15で送受信される。
また、システム端末15は、高精度位置情報とセンサ情報とを統合し、高精度位置・センサ統合情報を生成する。この高精度位置・センサ統合情報は、ネットワーク24を通じて高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19に送信される。このシステム内で用いるネットワーク24としては、システムを構成する装置の位置・環境・必要コスト・必要情報量を満足するネットワークを適宜選択して用いれば良い。
【0039】
次に、最適RTK位置補正情報の生成処理について説明する。前述したように、本発明の第1の実施形態に係る測位システム1においては、走行移動物体11に設けられたシステム端末15は、複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からのRTK位置補正情報を受信し、これら複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からのRTK位置補正情報から、高精度RTK位置補正情報を抽出・生成し、ガイダンス装置12に供給する。
システム端末15での高精度RTK位置補正情報の生成には、リアルモードと仮想モードとが選択できる。まず、リアルモードについて説明する。
【0040】
図5は、リアルモードの説明図である。
リアルモードは、実際の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からのRTK位置補正情報から、最適RTK位置補正情報を生成するものである。図5において、点Qが走行移動物体11の真値位置座標であるとする。点Oが走行移動物体11の計測位置座標であるとする。また、点B1、B2、B3が固定基地局16−1、16−2、16−3の位置座標であるとする。
【0041】
この例では、固定基地局16−3の点B3が走行移動物体11から最も離れた位置にあり、固定基地局16−1の点B1が次に走行移動物体11から離れた位置にあり、固定基地局16−2の点B2が走行移動物体11に最も近接した位置にあるとする。計測位置座標Oと、真値位置座標Qとの差(O−Q)が計測誤差Dr(Dr=O−Q)となる。この計測誤差Drが小さいほど、リアルタイムにおける走行移動物体11の位置情報特定の精度の向上が図れる。
【0042】
RTK方式では、利用可能な固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の中で、近傍にある固定基地局からの位置補正情報であるほど、精度の高い補正が行える。また、任意の固定基地局16−n(nは整数)の位置と、走行移動物体11の位置との間の距離Lrnは、走行移動物体11が移動するに従い変化する。この例では、固定基地局16−2(点B2)が走行移動物体11に最も近接しており、固定基地局16−2からのRTK位置補正情報が最も精度が高い。
【0043】
そこで、リアルモードの場合、システム端末15は、走行移動物体11と各固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)との間の距離をリアルタイムで計測し、固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の中で最も近傍にある固定基地局からのRTK位置補正情報を、高精度RTK位置補正情報として出力するようにしている。
【0044】
すなわち、リアルモードでは、システム端末15は、周囲の複数の固定基地局16−nと走行移動物体11の位置との間の距離Lrn(Lrn=Bn−On)を計測し(nは整数)、距離Lrnを小さい順にシステム端末15に表示すると共に、距離Lrnが最小となる固定基地局を選択して、最適RTK位置補正情報とする。例えば、図5の例では、固定基地局16−1、16−2、16−3と走行移動物体11の位置との間の距離Lr1、Lr2、Lr3は、以下のようにして求められる。
【0045】
Lr1=B1−O
Lr2=B2−O
Lr3=B3−O
【0046】
距離Lr1、Lr2、Lr3の中で、距離Lr2が最小となることから、固定基地局16−2のRTK位置補正情報が最適RTK位置補正情報として選択される。このように、距離が最小となる固定基地局からのRTK位置補正情報を最適RTK位置補正情報としてガイダンス装置12に供給することで、ガイダンス装置12では、高精度の位置情報が生成できる。
【0047】
次に、仮想モードについて説明する。図6は、仮想モードの説明図である。
仮想モードは、利用可能な周囲の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の情報から仮想基地局を生成し、この仮想基地局により最適RTK位置補正情報を生成するものである。
【0048】
図6において、点Qが走行移動物体11の真値位置座標であるとする。また、点B1に固定基地局16−1があるとし、この固定基地局16−1の座標が(XBa,YBa,ZBa)であるとする。また、点B2に固定基地局16−2があるとし、この固定基地局16−2の座標が(XBb,YBb,ZBb)であるとする。また、点B3に固定基地局16−3があるとし、この固定基地局16−3の座標が(XBc,YBc,ZBc)であるとする。また、点Pに仮想基地局を生成するとし、この仮想基地局の座標を(Xp,Yp,Zp)とする。
【0049】
RTK位置補正情報のデータ構造は、衛星距離・時間基本情報と、電離層及び対流圏を衛星情報が通過することにより発生する遅延誤差情報と、バイアス情報とからなる。ここで、固定基地局16−1でのRTK演算の三要素(衛星距離・時間基本情報Fa1、誤差情報Fb1、バイアス情報Fc1)と、固定基地局16−2でのRTK演算の三要素(衛星距離・時間基本情報Fa2、誤差情報Fb2、バイアス情報Fc2)と、固定基地局16−3でのRTK演算の三要素(衛星距離・時間基本情報Fa3、誤差情報Fb3、バイアス情報Fc3)が取得されるとする。
【0050】
この場合、点P座標(Xp,Yp,Zp)にある点Pの仮想基地局でのRTK演算の三要素(衛星距離・時間基本情報FaP、誤差情報FbP、バイアス情報FcP)は、固定基地局16−1、16−2、16−3のRTK演算の三要素(衛星距離・時間基本情報Fa1、Fa2、Fa3、誤差情報Fb1、Fb2、Fb3、バイアス情報Fc1、Fc2、Fc3)と、固定基地局16−1、16−2、16−3の座標(XBa,YBa,ZBa)、(XBb,YBb,ZBb)、(XBc,YBc,ZBc)と仮想基地局の座標(Xp,Yp,Zp)とによる外挿、内挿演算により、生成できる。
【0051】
このことから、仮想モードの場合、システム端末15は、周囲の複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の情報から、走行移動物体11上に仮想基地局を生成する。そして、この仮想基地局からのRTK位置補正情報を、最適RTK位置補正情報とする。
【0052】
なお、高精度位置情報は走行時にのみ使用されるだけでなく、事前に走行した時点で記録した走行位置を記録し、次に、同地点において別工程を実施する場合に流用される。事例として農業における春の走行記録データを夏等に実施する肥料散布時に復元して用いる等の場合である。走行データを蓄積し、そのデータを復元して次の農耕等工程に用いる場合は、位置情報の誤差が積み重なる。そのためには、最初の走行時に、精度の高いRTK位置補正情報を選択・抽出・生成することが重要となる。
【0053】
リアルモードと仮想モードとを比較すると、仮想モードの場合には、仮想基地局が走行移動物体11上に存在している。このことから、仮想基地局と走行移動物体11との間の距離Lpは、固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)と走行移動物体11との間の距離Lr1、Lr2、Lr3よりも遥かに短距離となる。そのため、特に、固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)が遠方にある場合、仮想モードはリアルモードより高い精度が期待できる。
【0054】
しかしながら、仮想モードはリアルモードよりも演算が複雑になる。このことから、走行移動物体11と、利用可能な固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)との距離に応じて、リアルモードと仮想モードとを使い分けることが考えられる。例えば、利用可能な固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)と走行移動物体11との距離が所定値以内の場合は、リアルモードを用い、利用可能な固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)と走行移動物体11との距離が所定値を越える場合には、仮想モードを用いるようにしても良い。
【0055】
以上のように、本発明の実施形態では、リアルモードと仮想モードとが設定できる。リアルモード方式では、対象地域に複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)を建設し、測位対象の走行移動物体11が移動する位置にリアルタイムに連動し、自動的に走行移動物体11に最も近接する固定基地局16−kを選択・抽出し、システム端末15上に表示し、走行移動物体11は常に最近接のRTK位置補正情報を切り替えて使用できる。このため、対象地域内において最適の高精度の位置情報を連続して得ることができる。
【0056】
仮想モードでは、固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からの情報から、測位対象の走行移動物体11の位置に、システム端末15内で直接、仮想基地局を構成し、仮想RTK位置補正情報を生成する。固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)と走行移動物体11との距離が長距離となった場合でも、高精度の位置情報を利用できる。
【0057】
また、本発明の実施形態における仮想モードでは、測量用位置情報サービスを提供する公的座標値を用いる大型センタ処理やネットワーク経由の送受信方式と異なり、地域内で共通な固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の既知基地局座標値を用いるため、公共座標値への変換演算は不要である。
【0058】
また、走行移動物体11上の位置に即したRTK位置補正情報をシステム端末15上で直接生成するため、ネットワーク介在の必要がなく、ネットワーク接続・伝送時間遅れロスが回避されると共に、圧倒的なシステムの簡素化が図れ、かつ農業等で要求される高精度を満足し同時にコストの課題も解消できる。
【0059】
図7は、RTK位置補正情報配信装置17を構成するモジュールの説明図である。
図7に示すように、RTK位置補正情報配信装置17は、固定衛星情報受信部51と、補正情報配信部52とにより構成される。
【0060】
固定衛星情報受信部51は、位置を正確に測位し基地局として用いる。固定衛星情報受信部51としては、マルチ衛星マルチ周波数の受信機を用いることが望ましい。また、固定衛星情報受信部51は、RTK信号をRTCM(Radio Technical Commission for Maritime Services;海事業務無線技術委員会)形式等により生成する。
【0061】
補正情報配信部52は、認証モジュール53とマルチ配信インターフェースモジュール54と、端末情報テーブル55とにより構成される。認証モジュール53は、中央制御装置18からのプログラム更新情報を受け取り、補正情報配信部52のプログラムを最新状態に更新する。また、認証モジュール53は、中央制御装置18からの接続許可端末IDの情報を受け取り、端末情報テーブル55を最新状態に更新する。
【0062】
また、認証モジュール53は、走行移動物体11上に搭載するシステム端末15から位置補正情報配信要求が到着した時点で、システム端末15のID(Identifier;識別子)等のセキュリティ情報チェックを行ない、適正なシステム端末15と判断した時に接続を許可する。マルチ配信インターフェースモジュール54は、固定衛星情報受信部51から受け取るRTK位置補正情報を、接続している複数のシステム端末15に配信する。端末情報テーブル55には、接続許可端末IDの情報が格納される。
【0063】
図8は、認証モジュール53での処理を示すフローチャートである。認証モジュール53は、手動起動又は時間起動によりモジュール動作を開始する(ステップS101)。
【0064】
認証モジュール53は、中央制御装置18をアクセスし、プログラム又は端末情報更新の有無を確認する(ステップS102)。
【0065】
未更新のプログラムがある場合には(ステップS103:Yes)、認証モジュール53は、中央制御装置18から補正情報配信プログラムをダウンロードして更新し(ステップS104)、処理をステップS102に戻す。
【0066】
また、未更新の端末情報がある場合には(ステップS105:Yes)、認証モジュール53は、中央制御装置18からの情報により、端末情報テーブル55の接続許可IDを更新し(ステップS106)、処理をステップS102に戻す。
【0067】
未更新のプログラムがなく(ステップS103:No)、未更新の端末情報がない場合には(ステップS105:No)、認証モジュール53は、システム端末15からの配信要求イベントの発生の有無を、時間起動により又は周期的に調査する(ステップS107)。
【0068】
配信要求イベントがあれば(ステップS108:Yes)、認証モジュール53は、端末情報テーブル55の接続許可IDを確認する(ステップS109)。
【0069】
配信要求イベントがなければ(ステップS108:No)、認証モジュール53は、ステップS107に処理を戻す。
【0070】
ステップS110で、端末情報テーブル55に接続許可IDがあると判定されると(ステップS110:Yes)、認証モジュール53は、端末情報テーブル55の配信許可ステータスをオンにし(ステップS111)、処理をマルチ配信インターフェースモジュール54に渡す(ステップS112)。
【0071】
ステップS110で、端末情報テーブル55に接続許可IDがないと判定されると(ステップS110:No)、認証モジュール53は、処理をステップS107に戻す。
【0072】
図7において、マルチ配信インターフェースモジュール54は、固定衛星情報受信部51から受け取るRTK位置補正情報をネットワーク送信フォーマット(NTRIP(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)型式)等に成形する。マルチ配信インターフェースモジュール54は、RTK位置補正情報の連続ストリ−ムを、接続しているシステム端末15の数量分だけ生成し、システム端末15に配信する。
【0073】
図9は、マルチ配信インターフェースモジュール54での処理を示すフローチャートである。
マルチ配信インターフェースモジュール54は、モジュール動作を開始する(ステップS201)。マルチ配信インターフェースモジュール54は、固定衛星情報受信部51からのRTK位置補正情報を連続的に受信し(ステップS202)、固定衛星情報受信部51からのRTK位置補正情報を、ネットワークで配信できるNTRIP形式に変換する(ステップS203)。
【0074】
マルチ配信インターフェースモジュール54は、端末情報テーブル55の配信許可ステータスがオンになっているものがあるかどうかを周期的に確認する(ステップS204)。
【0075】
端末情報テーブル55の配信許可ステータスがオンになっているものがあれば(ステップS205:Yes)、マルチ配信インターフェースモジュール54は、端末情報テーブル55の配信許可ステータスがオンになっているシステム端末15を対象に、NTRIP形式のRTK位置補正情報を連続配信する(ステップS206)。
【0076】
マルチ配信インターフェースモジュール54は、モジュール停止イベントが発生しているか否かを確認する。
モジュール停止イベントが発生していない場合には(ステップS207:No)、マルチ配信インターフェースモジュール54は、処理をステップS204に戻す。
モジュール停止イベントが発生している場合には(ステップS207:Yes)、マルチ配信インターフェースモジュール54は、モジュール動作を終了する。
【0077】
図10は、システム端末15を構成するモジュールの説明図である。
図10において、システム端末15は、高精度補正情報生成部61と高精度位置情報統合部62により構成される。
高精度補正情報生成部61は、基地局接続・受信モジュール63と、高精度位置補正情報抽出・生成モジュール64と、ガイダンスインターフェースモジュール65とにより構成される。
【0078】
基地局接続・受信モジュール63は、複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からの位置補正情報を受信し、リアルモード動作と仮想モード動作を選択する。図11は、基地局接続・受信モジュール63での処理を示すフローチャートである。
【0079】
基地局接続・受信モジュール63は、モジュール動作を開始する(ステップS301)。
【0080】
システム端末15のスイッチをオンすると(ステップS302)、基地局接続・受信モジュール63は、接続対象となる複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)に接続要求を送る(ステップS303)。なお、システム端末15のスイッチは、走行移動物体11で高精度走行開始時にオンされる。
【0081】
基地局接続・受信モジュール63は、全ての接続対象となる固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)に接続要求を送信したかどうかを判定し(ステップS304)、全ての接続対象となる固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)に接続要求を送信していなければ(ステップS304:No)、処理をステップS303に戻す。
【0082】
全ての接続対象となる固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)に接続要求を送信していれば(ステップS304:Yes)、基地局接続・受信モジュール63は、複数の接続許可となる固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)から、複数のRTK位置補正情報を連続受信する(ステップS305)。
【0083】
基地局接続・受信モジュール63は、位置補正情報の生成モード(リアルモード又は仮想モード)を決定する(ステップS306)。位置補正情報の生成モードは、システム端末15への入力操作により設定できる。
【0084】
ステップS307で、リアルモードであると判定された場合には、基地局接続・受信モジュール63は、リアルモードモジュール66に処理を移し(ステップS308)、仮想モードであると判定された場合には、基地局接続・受信モジュール63は、仮想モードモジュール67に処理を移す(ステップS309)。
【0085】
図10において、高精度位置補正情報抽出・生成モジュール64は、リアルモードモジュール66と、仮想モードモジュール67とより構成される。
【0086】
リアルモードモジュール66は、接続対象となる複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)とシステム端末15との距離を求め、最も基線距離の短い固定基地局を自動的かつ動的にシステム端末15の表示画面の最上部等に順に表示し、精度の高い走行位置データを得られる固定基地局16−kを選択・抽出可能とする。
【0087】
そして、リアルモードモジュール66は、選択可能な複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の中から最短基線となる1つの固定基地局16−kを抽出し、最適RTK位置補正情報のデータストリームとして連続受信可能とする。
【0088】
図12は、リアルモードモジュール66での処理を示すフローチャートである。リアルモードモジュール66は、モジュール動作を開始する(ステップS401)。
【0089】
リアルモードモジュール66は、システム端末15内のGPS位置情報を時間起動で周期的に取得する(ステップS402)。
【0090】
リアルモードモジュール66は、接続許可となる複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の位置情報と、システム端末15内のGPS位置情報とから、各固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)とシステム端末15との間の基線距離を演算する(ステップS403)。
【0091】
リアルモードモジュール66は、システム端末15の画面に、基線距離が近接している順に、複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)を表示し(ステップS404)、基線距離が最も近接している固定基地局16−kを選択する(ステップS405)。
【0092】
そして、リアルモードモジュール66は、最も近接している固定基地局を抽出し、送信ステータスを付与し(ステップS406)、ガイダンスインターフェースモジュール65に処理を渡す(ステップS407)。
【0093】
図10において、仮想モードモジュール67は、走行移動物体11の位置に仮想基地局を生成し、選択可能な複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)から基線距離が短くなる複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)を抽出し、その複数の位置補正情報をデータストリームとして並行受信する。複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)のRTK位置補正情報と仮想基地局の座標位置から仮想RTK位置補正情報を内挿、外挿により演算し生成する。
【0094】
図13は、仮想モードモジュール67での処理を示すフローチャートである。
仮想モードモジュール67は、モジュール動作を開始する(ステップS501)。
仮想モードモジュール67は、システム端末15内の現在のGPS位置情報を取得する(ステップS502)。
【0095】
仮想モードモジュール67は、接続が許可された複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の位置情報と、システム端末15内の現在のGPS位置情報から、各固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)とシステム端末15との間の基線距離と方向を演算する(ステップS503)。
【0096】
仮想モードモジュール67は、基線距離と方向から、仮想基地局の生成元となる複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)を選択する(ステップS504)。
仮想モードモジュール67は、システム端末15内のGPS位置情報を仮想基地局の座標値に設定する(ステップS505)。
【0097】
仮想モードモジュール67は、選択している複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)のRTK位置補正情報から、その固定基地局の座標値と、RTK演算の三要素(衛星距離・時間基本情報、誤差情報、バイアス情報)を取得する(ステップS506)。
【0098】
仮想モードモジュール67は、選択している複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の座標と、仮想基地局の座標とによる外挿、内挿演算により、仮想基地局のRTK位置補正情報(衛星距離・時間基本情報、誤差情報、バイアス情報)を生成する(ステップS507)。
【0099】
仮想モードモジュール67は、仮想基地局のRTK位置補正情報に送信ステータスを付与し(ステップS508)、ガイダンスインターフェースモジュール65に処理を移す(ステップS509)。
【0100】
図10において、ガイダンスインターフェースモジュール65は、高精度位置補正情報抽出・生成モジュール64が抽出又は生成した位置補正情報を受け取り、ガイダンスに合致したインターフェースに成形して、最適RTK位置補正情報として送信する。また、ガイダンスインターフェースモジュール65は装置内の各種状態をロギング・蓄積する。
【0101】
図14は、ガイダンスインターフェースモジュール65での処理を示すフローチャートである。
ガイダンスインターフェースモジュール65は、モジュール動作を開始する(ステップS601)。ガイダンスインターフェースモジュール65は、送信ステータスのあるRTK位置補正情報を取得する(ステップS602)。
【0102】
ガイダンスインターフェースモジュール65は、ガイダンス装置12のインターフェースに送信型式を整合し(ステップS603)、最適RTK位置補正情報をガイダンス装置12に送信する(ステップS604)。
【0103】
ガイダンスインターフェースモジュール65は、モジュール停止イベントが発生しているか否かを確認する。
モジュール停止イベントが発生していない場合には(ステップS605:No)、ガイダンスインターフェースモジュール65は、処理をステップS602に戻す。
モジュール停止イベントが発生している場合には(ステップS605:Yes)、ガイダンスインターフェースモジュール65は、モジュール動作を終了する。
【0104】
図10において、高精度位置情報統合部62は、高精度位置情報受信モジュール68と、高精度位置情報統合モジュール69と、ネットワーク送信インターフェースモジュール70とにより構成される。
【0105】
高精度位置情報受信モジュール68は、走行移動物体11のガイダンス装置12で生成された高精度位置情報を受信し、一旦蓄積する。
【0106】
図15は、高精度位置情報受信モジュール68での処理を示すフローチャートである。
高精度位置情報受信モジュール68は、モジュール動作を開始する(ステップS701)。
【0107】
高精度位置情報受信モジュール68は、ガイダンスインターフェースモジュール65からガイダンス装置12の出力情報を受信する(ステップS702)。
高精度位置情報受信モジュール68は、ガイダンス装置12の出力情報から、高精度位置情報を抽出する(ステップS703)。
【0108】
高精度位置情報受信モジュール68は、衛星時刻と高精度位置情報を記録し(ステップS704)、高精度位置情報統合モジュール69に処理を移す(ステップS705)。
【0109】
図10において、高精度位置情報統合モジュール69は、時刻単位の高精度位置情報に対し、走行移動物体11に搭載された各種センサ等からの同時刻センサ収集情報を高精度位置情報と統合・編集する。
【0110】
つまり、図16は、高精度位置・センサ統合情報の説明図である。高精度位置情報受信モジュール68は、衛星時刻と高精度位置情報をガイダンス装置12の出力情報から、ガイダンスインターフェースモジュール65を介して取得し、高精度位置情報統合モジュール69に送る。
【0111】
高精度位置情報統合モジュール69は、図16(A)に示すように、衛星時刻(t1)と高精度位置情報(Hxyz)とを取得する。また、図16(B)に示すように、高精度位置情報統合モジュール69は、収量センサ41、流量センサ42、エンジン回転・負荷センサ43、水分センサ44、窒素等土壌成分センサ45等のセンサ情報から、センサIDとセンサ情報のセット(C1及びC1data、C2及びC2data、…)を取得する。
【0112】
そして、高精度位置情報統合モジュール69は、図16(C)に示すように、衛星時刻(t1)をキーとして、高精度位置情報(Hxyz)と、センサIDとデータとのセット(C1及びC1data、C2及びC2data、…)とから統合データを生成する。
そして、高精度位置情報統合モジュール69は、図16(D)に示すように、この統合データに、走行エリア情報(An)、走行移動物体ID(Rn)、および走行操舵者(Mn)等の付加情報を付加し、高精度位置・センサ統合情報とする。この高精度位置・センサ統合情報は、ネットワーク24を通じて高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19に送信される。
【0113】
図17は、高精度位置情報統合モジュール69での処理を示すフローチャートである。
高精度位置情報統合モジュール69は、モジュール動作を開始する(ステップS801)。
【0114】
高精度位置情報統合モジュール69は、収量センサ41、流量センサ42、エンジン回転・負荷センサ43、水分センサ44、窒素等土壌成分センサ45等のセンサ情報を取得する(ステップS802)。
高精度位置情報統合モジュール69は、センサ情報に衛星時刻をタイムスタンプし、衛星時刻を先頭情報に、センサIDとセンサデータとの複数の情報セットをグループ化する(ステップS803)。
【0115】
高精度位置情報統合モジュール69は、衛星時刻をキーとして、高精度位置情報と、センサIDとデータ・セットを統合する(ステップS804)。
高精度位置情報統合モジュール69は、統合データに、走行エリア情報、走行移動物体ID、走行操舵者等の付加情報を付加し、高精度位置・統合情報として、一時格納エリアに格納する(ステップS805)。
そして、高精度位置情報統合モジュール69は、ネットワーク送信インターフェースモジュール70に処理を移す(ステップS806)。
【0116】
図10において、ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、統合・編集データを一定時間帯毎に集積し、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19のインターフェースに成形し送信する。
【0117】
図18は、ネットワーク送信インターフェースモジュール70での処理を示すフローチャートである。
ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、モジュール動作を開始する(ステップS901)。
【0118】
ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、送信イベントの有無及び送信ブロック単位を確認する(ステップS902)。
【0119】
送信イベントがない場合には(ステップS903:No)、ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、処理をステップS902に戻す。
送信イベントがある場合には(ステップS903:Yes)、ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、送信ブロック単位で、高精度位置・センサ統合情報を一時格納エリアから読み出す(ステップS904)。
【0120】
そして、ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、高精度位置・センサ統合情報を送信対象ネットワーク・インターフェースに合わせてフォーマットを整合し(ステップS905)、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19に送信する(ステップS906)。
【0121】
ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、モジュール停止イベントが発生しているか否かを確認する。
モジュール停止イベントが発生していない場合には(ステップS907:No)、ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、処理をステップS902に戻す。
モジュール停止イベントが発生している場合には(ステップS907:Yes)、ネットワーク送信インターフェースモジュール70は、モジュール動作を終了する。
【0122】
図19は、本発明の第1の実施形態に係る測位システムを利用したトラクタの操舵システムの説明図である。
広大な農地(畑作・水田・酪農)では農業人口の減少及び拡大する農地面積に対抗し、大規模・省力化・高精度農耕を行なうために、大型のトラクタに自動操舵機構を搭載し、トラクタによる農作業の作業効率の改善が望まれている。そのためには、GPSを利用したガイダンス装置における計測位置精度の向上が望まれる。
【0123】
図19において、走行移動物体11としてのトラクタの運行範囲内には、複数の共用の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)を構築するとともに、走行移動物体11にはシステム端末15を設けている。
【0124】
システム端末15は、複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)からのRTK位置補正情報を受信し、リアルモード又は仮想モードにより、高精度RTK位置補正情報を生成し、ガイダンス装置12に供給する。ガイダンス装置12は、移動衛星受信機13からの衛星発信情報により取得された位置情報を、システム端末15からの高精度RTK位置補正情報により補正して、高精度位置情報を生成し、自動操舵装置14により、自動操舵を行なう。
【0125】
このように、GPSを用いてトラクタを自動操舵することで、農作業の負担を大幅に削減できる。また、トラクタの操舵をガイダンス装置12で補助することで、未熟練者でも、熟練者と同等な作業を行なることが期待できる。
【0126】
また、システム端末15は、ガイダンス装置12からリアルタイムで得られる高精度位置情報と、同時刻のセンサ情報(例えば収量センサ、流量センサ、エンジン回転・負荷センサ、水分センサ、窒素等土壌成分センサ等)とを統合・編集して、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19に送信する。
【0127】
固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)は、広大な農地81を取り囲む位置に分散して建設される。コストを抑えて高精度位置情報を活用するためには、共用の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の活用が効果的であり、その場合、複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)が農機の運転における安全対策上のバックアップ基地局の役割も果たすことができる。
【0128】
春等の農耕開始時点での播種には、特に高精度直線走行性能が必要であり、誤差を可能な限り少なくした状態でのRTK補正位置情報の生成が効果的である。春の播種走行データを復元して、農薬散布等に用いる場合には、特に復元データの誤差が課題である。
【0129】
農業地域は都市と異なり、電源設備、通信回線設備、システム設備の安全運用が確保できる場所が限られる。そこで、固定基地局16は、公的な位置付けとなる建物に設けることが望まれる。この例では、固定基地局16−1は、役場本庁舎82に設けられる。固定基地局16−2は、役場支所庁舎83に設けられる。固定基地局16−3は、農業共同組合庁舎84に設けられる。
【0130】
なお、システム全体を最新状態に管理する中央制御装置18や、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19は、セキュリティ確保から、公的な位置付けとなる機関に設定することが望まれる。中央制御装置18及び高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19は、農業共同組合の電算室本庁舎85等に設置することが望ましい。
【0131】
走行移動物体11へのネットワーク回線網21としては、自前のネットワーク回線網を構築するよりも、社会資本である携帯電話網の設備を流用することがコスト、性能面で望ましい。
【0132】
走行移動物体11には、移動衛星受信機13、ガイダンス装置12、自動操舵装置14が搭載される。更に、走行移動物体11には、複数の固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)とシステム端末15とにより、位置補正情報が提供される。
【0133】
システム端末15は、走行移動物体11の位置と固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)との距離に応じて、どの固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)の情報を用いると最も精度が高いかを判定し、最も精度の高い固定基地局16−kを選択・抽出し、システム端末15の画面に表示している。システム端末15では、リアルモードを用いるか、仮想モードを用いるかの区分が可能である。
【0134】
例えば、範囲AR1、AR2、AR3で示すように、走行移動物体11と利用可能な固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)との距離が5km内外等の場合は、リアルモードを用い、走行移動物体11と利用可能な固定基地局16(16−1、16−2、16−3、…)との距離が10kmを越える場合には、仮想モードを用いることが考えられる。システム端末15内の演算量は、リアルモードの方が少なく、高速で利用可能となる。
【0135】
走行移動物体11を新たに追加する場合には、新たな走行移動物体11に端末IDが付加され、この端末IDに対応して、中央制御装置18によりIDの更新が行なわれる。プログラムの機能改善等更新については、必要時に中央制御装置18から更新プログラムがシステム内装置に送られる。
【0136】
また、システム端末15は、ガイダンス装置12からリアルタイムで得られる高精度位置情報と、同時刻のセンサ(水分センサ、窒素濃度センサ、肥料・薬剤等流量センサ、収穫量センサ、エンジン回転・負荷センサ)情報とを統合・編集して、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19に蓄積している。
また、中央制御装置18には、システム端末15で蓄積したシステム状態ログ情報が保存されている。中央制御装置18に蓄積されたデータを使うことで、システムの安定動作を確実にし、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19に蓄積されたデータを使うことでより高精度位置情報の利用可能性を拡大できるようにしている。
【0137】
走行開始時にセンサ動作をオンとして自動走行させることにより、リアルタイムで畝単位又は時間(秒)単位の高精度位置とセンサ収集データをシステム端末15で統合することができる。高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19の情報は必要によりリアルタイムで、又は畝単位走行あるいは当日の農地耕作完了時に、システム端末15により、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19から取得できる。
【0138】
春の播種時期は特に精度が要求され、その後の種の成長により必要となるあらゆる農耕工程が播種の精度に要求されるため熟練農業従事者により走行し、その走行経路ログデータを記録する。夏等の工程では、非熟練者でも春の熟練者の走行ログデータを読み出し、走行移動物体11を自動操舵させることで、効率・精度共に良好な大規模・省力化農耕が可能となる。
【0139】
本発明の実施形態によれば、走行移動物体11が走行する環境上で最適なRTK位置補正情報を選択・抽出・生成して供給できるために、どのような種類のガイダンス装置12や自動操舵装置14にも接続でき、かつ高精度にできる補正情報を供給できる。地域により様々なベンダの機材を用いている場合でも適用可能であるため、新たな高精度位置情報の利用を促進する効果がある。
【0140】
また、本発明の実施形態によれば、個別の既存のRTKの固定基地局16が建設されている地域においても、システム端末15を接続し、既存のRTK受信機等の資産を流用して走行移動物体11の走行に適用できる。そのため、既存の固定基地局16の建設地域を含め、利用者間の共有が可能であり、高精度位置情報の共用利用を促進する効果がある。
【0141】
また、本発明の実施形態によれば、RTK基地局方式では、精度を確保するためには、固定基地局16と走行移動物体11間の基線距離が一定間隔内となるように、固定基地局16を建設する必要がある。本発明の実施形態によれば、仮想化により基線距離を長距離化することが可能であり、共用の固定基地局16の建設コストを低減化できる。
【0142】
また、本発明の実施形態によれば、リアルタイムで農業機材等の走行移動物体11の運行時状況の高精度位置情報と連動した各種自動収集データをネットワーク網経由で、高精度位置・センサ統合情報蓄積装置19に送信して保存することができる。これにより、農業等ビッグデータ蓄積を可能とするため、ビッグデータ活用を促進できる。
【0143】
また、本発明の実施形態によれば、農業分野における個別農業経営体の利用を越えた、コントラクタ等の大規模耕作工程請負においても、精度・コストの問題を解消して利用可能である。コントラクタにおける請負契約では、高精度の契約内容表示・報告が可能となり、農業等における、コントラクタ等請負業のビジネス発展を促すことができる。
【0144】
また、現在、空撮・衛星画像等による画像情報を位置情報に連動させるためには個別の演算処理が必要でありかつ、空撮・衛星画像による精度はcm精度には到底到らない精度である。またその都度、空撮または衛星からの画像情報を購入する必要がありコスト高である。本発明の実施形態では、走行移動物体11が走行する都度、リアルタイムで走行移動物体11が走行した経路に従って高精度位置情報とセンサ等による取得データを自動的に統合・収集できるため、大幅な効率化が図れると共に、精度の改善を可能となる。
【0145】
また、位置情報と連動した収集対象センサ情報の種類は、空撮の場合は空撮装置に搭載する遠隔センサが必要であり、衛星画像の場合は衛星にセンサが搭載されていなければ望むセンサ情報による衛星画像を取得できない。本発明の実施形態では、走行移動物体11に取り付けるセンサの種類を変更するのみで必要なセンサ情報を高精度位置情報と共に収集できる。また、空撮・衛星画像では対象地域の表面情報を主体とせざるを得ないが、本発明の実施形態では、近接測定センサ情報を含め、農地等の接地情報または地下内部情報等も高精度位置情報のZ軸情報と連動して自動的に収集できる。
【0146】
なお、上述の実施形態では、農業分野での適用例について説明したが、本発明は、他の分他での位置計測にも、同様に適用できる。例えば、システム端末15をトラクタ等の作業機械に搭載する他、ロボット等に搭載することで、農業のほか、建設、探索、災害救助等の走行移動物体に応用可能である。
【0147】
なお、測位システム1の全部又は一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより全部または一部の処理を選択的に行っても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0148】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、更に前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0149】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0150】
1:測位システム
11:走行移動物体
12:ガイダンス装置
13:移動衛星受信機
14:自動操舵装置
15:システム端末
16:固定基地局
17:位置補正情報配信装置
18:中央制御装置
19:高精度位置・センサ統合情報蓄積装置
20:衛星
図1
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図3
図4
図5
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