特開2017-83370(P2017-83370A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-83370(P2017-83370A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】シート検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20170414BHJP
   B60N 2/00 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
   G01M99/00 Z
   B60N2/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-213847(P2015-213847)
(22)【出願日】2015年10月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成27年5月6日 テイエス テック カナダ インコーポレーテッドへ搬入 平成27年5月5日 テイエス テック インディアナ リミテッド ライアビリティー カンパニーへ搬入
(71)【出願人】
【識別番号】593118128
【氏名又は名称】コアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】石路 健文
(72)【発明者】
【氏名】吉富 史倫
(72)【発明者】
【氏名】西村 和晃
(72)【発明者】
【氏名】岡 裕章
(72)【発明者】
【氏名】片岡 俊則
【テーマコード(参考)】
2G024
3B087
【Fターム(参考)】
2G024AD39
2G024BA01
2G024BA11
2G024DA01
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シートの座面部の傾斜に正確に追従させることができるウエイト構造体を備え、シートの品質検査の精度が高いシート検査装置を提供する。
【解決手段】シートにウエイト構造体を載せて、シートの品質を検査するシート検査装置であって、ウエイト構造体は、シートの座面部の傾斜に追従して傾斜するチルトウエイト構造体3を含んでおり、チルトウエイト構造体3は、基台30と、回転軸51を介して基台30を支持し、シートの前後方向において傾斜可能な可動支持体47とを備えており、基台30は、回転軸51を中心に回転することにより、シートの幅方向において傾斜可能であり、かつ可動支持体47の移動と一体に移動することにより、シートの前後方向において傾斜可能である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートにウエイト構造体を載せて、シートの品質を検査するシート検査装置であって、
前記ウエイト構造体は、前記シートの座面部の傾斜に追従して傾斜するチルトウエイト構造体を含んでおり、
前記チルトウエイト構造体は、
基台と、
回転軸を介して前記基台を支持し、前記シートの前後方向において傾斜可能な可動支持体とを備えており、
前記基台は、前記回転軸を中心に回転することにより、前記シートの幅方向において傾斜可能であり、かつ前記可動支持体の移動と一体に移動することにより、前記シートの前後方向において傾斜可能であることを特徴とするシート検査装置。
【請求項2】
前記可動支持体は、可動体及び水平フレームで構成されており、可動体の一端に軸を介してブラケットに回転可能に取り付けられており、他端に水平フレームが固定されている請求項1に記載のシート検査装置。
【請求項3】
前記基台は、ワイヤで吊り下げられて水平度が保たれている請求項1又は2に記載のシート検査装置。
【請求項4】
前記ウエイト構造体を前記シートの座面上まで搬送する搬送機構をさらに備えており、前記搬送機構は前記ウエイト構造体を吊り下げるための係合体を設けており、前記ウエイト構造体は、前記係合体に係合する被係合体を設けており、前記搬送機構は、前記係合体に前記被係合体を係合させた状態で、前記ウエイト構造体を前記シートの座面部上まで搬送した後、前記係合体と前記被係合体との係合状態を解除する請求項1に記載のシート検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにウエイト構造体を載せてシートの品質を検査するシート検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用のシートは、主に座面と背もたれで構成されており、人が着座して使用するためのものであることから、シートの品質の検査においては、人が着座した状態を想定した検査が求められる。例えば特許文献1に記載のシート検査装置においては、シートに着座する人体の着座部位と実質的に同等な形態となるように型取りされた型治具を被試験シートにセットし、型治具に埋設された接触子を被試験シートの表面に押圧し、接触子の荷重及び変位が測定できるようになっている。このシート検査装置によれば、各測定結果に基づいて、被試験シートの硬さと着座感の相関関係を評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−139633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば自動車用のシートは、多様な動作をするものがあり、前後スライド、リクライニング、高さ調整及び座面の傾斜が自動化されたものもある。特許文献1に記載のような型治具は、シートの各動作に追従するものではなく、多様な動作をするシートの検査に用いることはできなかった。また、シートをクッション材で覆われていないフレームの状態で検査する場合には、座面部に製造ばらつきによる変形がある場合には、型治具を座面部に搭載しても、型治具による負荷を左右均等に加えることはできず、正確な計測値は得られなかった。
【0005】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、シートの座面部に負荷を左右均等に加えることができ、シートの品質検査の精度が高いシート検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のシート検査装置は、シートにウエイト構造体を載せて、シートの品質を検査するシート検査装置であって、前記ウエイト構造体は、前記シートの座面部の傾斜に追従して傾斜するチルトウエイト構造体を含んでおり、前記チルトウエイト構造体は、基台と、回転軸を介して前記基台を支持し、前記シートの前後方向において傾斜可能な可動支持体とを備えており、前記基台は、前記回転軸を中心に回転することにより、前記シートの幅方向において傾斜可能であり、かつ前記可動支持体の移動と一体に移動することにより、前記シートの前後方向において傾斜可能である。この構成によれば、基台はシートの前後方向において傾斜しながら、同時にシートの幅方向においても傾斜可能であるため、シートの高さ方向の位置や傾斜が左右で異なっていても、チルトウエイト構造体の基台はシートの配置状態に追従して傾斜するので、チルトウエイト構造体による負荷がシートに左右均等に加わり、正確な計測値が得られる。
【0007】
前記本発明のシート検査装置においては、前記可動支持体は、可動体及び水平フレームで構成されており、可動体の一端に軸を介してブラケットに回転可能に取り付けられており、他端に水平フレームが固定されていることが好ましい。この構成によれば、簡単な構造で基台をシートの前後方向において傾斜可能にすることができる。
【0008】
また、前記基台は、ワイヤで吊り下げられて水平度が保たれていることが好ましい。この構成によれば、簡単な構造でウエイト構造体をシートの座面上まで搬送する間、基台の水平度を保つことができる。
【0009】
また、前記ウエイト構造体を前記シートの座面上まで搬送する搬送機構をさらに備えており、前記搬送機構は前記ウエイト構造体を吊り下げるための係合体を設けており、前記ウエイト構造体は、前記係合体に係合する被係合体を設けており、前記搬送機構は、前記係合体に前記被係合体を係合させた状態で、前記ウエイト構造体を前記シートの座面部上まで搬送した後、前記係合体と前記被係合体との係合状態を解除することが好ましい。この構成によれば、シート設置の工程を簡素化した安全、迅速かつ正確なシート設置の自動化を実現できる。
【0010】
本発明の別のシート検査装置は、シートにウエイト構造体を載せて、シートの品質を検査するシート検査装置であって、前記ウエイト構造体を前記シートの座面上まで水平方向に搬送する搬送機構を備えており、前記搬送機構は前記ウエイト構造体を吊り下げるための係合体を設けており、前記ウエイト構造体は、前記係合体に係合する被係合体を設けており、前記搬送機構は、前記係合体に前記被係合体を係合させた状態で、前記ウエイト構造体を前記シートの座面部上まで水平方向に搬送した後、前記係合体と前記被係合体との係合状態を解除することを特徴とする。この構成によれば、ウエイト構造体をシートの座面部上まで水平方向に搬送する搬送機構を備えているので、搬送機構にウエイト構造体を所定の高さの位置に吊り下げておけば、ウエイト構造体を水平方向に搬送するだけで、ウエイト構造体をシートの座面部上まで搬送することができる。さらに、係合体と被係合体との係合及びその解除という簡単な構成で、シートに対するウエイト構造体の受け渡しが可能になる。このため、例えばウインチを用いた巻き上げ、巻き下ろしといった工程は不要となり、シート設置の工程を簡素化した安全、迅速かつ正確なシート設置の自動化を実現できる。
【0011】
前記本発明の別のシート検査装置においては、前記ウエイト構造体は、前記シートの背もたれ部に装着させるバックウエイト構造体を含んでおり、前記バックウエイト構造体に前記被係合体を設けており、前記係合体は前記被係合体と係合する側が開いた鉤状のフックであることが好ましい。この構成によれば、バックウエイト構造体がシートの背もたれ部のリクライニング動作と一体に移動することにより、バックウエイト構造体と一体に被係合体が移動していても、係合体は被係合体と係合する側が開いた鉤状のフックであるので、被係合体は係合体に干渉することなく係合する。このことにより、リクライニング動作の完了を待つことなく、予め係合体をシートの座面上に移動させておくことができるので、シート検査から次のシート検査までの時間を短縮でき、シート検査の効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基台はシートの前後方向において傾斜しながら、同時にシートの幅方向においても傾斜可能であるため、シートの高さ方向の位置や傾斜が左右で異なっていても、チルトウエイト構造体の基台はシートの配置状態に追従して傾斜するので、チルトウエイト構造体による負荷がシートに左右均等に加わり、正確な計測値が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るシート検査装置の正面図。
図2図1に示したシート検査装置の要部を示す斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係るシート検査装置において、ウエイト構造体をシートに設置し終えた状態におけるシート検査装置の正面図。
図4図3に示したシート検査装置の要部を示す斜視図。
図5】本発明の一実施形態に係るシート検査装置において、ウエイト構造体がシートの座面部上まで搬送された状態を示す側面図。
図6】本発明の一実施形態に係るシート検査装置において、ウエイト構造体がシートに設置された状態を示す側面図。
図7】本発明の一実施形態に係るシート検査装置において、検査中におけるチルトウエイト構造体の近傍の斜視図。
図8】本発明の一実施形態に係るチルトウエイト構造体及びクッシュウエイト構造体が搬送機構に吊り下げられた状態を側面側から見た要部斜視図。
図9】本発明の一実施形態に係るチルトウエイト構造体及びクッシュウエイト構造体が搬送機構に吊り下げられた状態を裏面側から見た要部斜視図。
図10】本発明の一実施形態に係るチルトウエイト構造体において、基台及び可動支持体が傾斜した状態を示す拡大図。
図11】本発明の一実施形態に係るチルトウエイト構造体において、基台がシートの幅方向において傾斜した状態を示す正面図。
図12】本発明の一実施形態に係るチルトウエイト構造体において、基台がシートの幅方向において傾斜した状態の別の例を示す正面図。
図13】本発明の一実施形態に係るチルトウエイト構造体において、基台がシートの前後方向及び幅方向の両方向に傾斜した状態を示す図であり、チルトウエイト構造体を側面側から見た要部斜視図。
図14】本発明の一実施形態に係るチルトウエイト構造体において、基台がシートの前後方向及び幅方向の両方向に傾斜した状態を示す図であり、チルトウエイト構造体を裏面から見た要部斜視図。
図15】本発明の一実施形態において、フックが支持軸に係合する前の状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るシート検査装置1の正面図を示している。図2は、図1に示したシート検査装置1の要部を示す斜視図である。シート検査装置1は、ウエイト構造体2をシート20に載せて、シート20の品質を検査する装置である。本実施形態では、シート20はクッション材等で覆われていないフレームの状態である。
【0015】
図1において、シート検査装置1はウエイト構造体2をシート20の座面部21上まで搬送する搬送機構8を備えている。搬送機構8は、X軸スライダ6及びZ軸スライダ7で構成されている。X軸スライダ6は、Z軸スライダ7を水平方向に移動させるためのスライダであり支柱9に固定されている。Z軸スライダ7は、ウエイト構造体2を垂直方向に移動させるためのスライダである。詳細は後に説明するとおり、Z軸スライダ7は、支持体11及び支持体14を備えており、ウエイト構造体2を吊り下げることができる。図1の状態は、ウエイト構造体2が退避位置にある状態を示している。シート20を検査する際は、X軸スライダ6の駆動により、Z軸スライダ7がシート20側にスライドし、ウエイト構造体2がシート20の位置まで搬送される。
【0016】
図2において、ウエイト構造体2は、チルトウエイト構造体3、クッシュウエイト構造体4及びバックウエイト構造体5で構成されている。チルトウエイト構造体3は、クッシュウエイト構造体4と一体になっており、バックウエイト構造体5とクッシュウエイト構造体4は分離している。
【0017】
図1において、Z軸スライダ7は支持プレート17を備えており、支持プレート17に支持体11及び支持体14が固定されている。図2において、支持体11は、クッシュウエイト構造体4を吊り下げるための係合体であるロッド12を備えている。クッシュウエイト構造体4には、ロッド12の被係合体である吊り具10が固定されており、吊り具10にロッド12が挿通している。このことにより、クッシュウエイト構造体4及びこれと一体のチルトウエイト構造体3は、支持体11に吊り下げられて支持されている。
【0018】
図2において、支持体14はロッド15を備えており、ロッド15にバックウエイト構造体5を吊り下げるための係合体であるフック16が固定されている。バックウエイト構造体5には、フック16の被係合体である支持軸13が固定されている。このことにより、バックウエイト構造体5は、支持体14に吊り下げられて支持されている。
【0019】
Z軸スライダ7の駆動により、支持プレート17と一体の支持体11及び支持体14が垂直方向(上下方向)にスライドする。また、Z軸スライダ7は、X軸スライダ6の駆動により、水平方向(左右方向)にスライドするので、Z軸スライダ7の水平方向のスライドと共に、支持体11及び支持体14も水平方向にスライドする。このことにより、支持体11に吊り下げられて支持されたクッシュウエイト構造体4及びこれと一体のチルトウエイト構造体3と、支持体14に吊り下げられて支持されたバックウエイト構造体5は、垂直方向及び水平方向の両方に移動可能である。
【0020】
図3は、ウエイト構造体2をシート20に設置し終えた状態におけるシート検査装置1の正面図を示している。図4は、図3に示したシート検査装置1の要部を示す斜視図である。ウエイト構造体2をシート20に設置する際には、図1の状態から、X軸スライダ6の駆動により、Z軸スライダ7を水平方向に移動させて、ウエイト構造体2をシート20の座面部21上まで搬送する。図5は、ウエイト構造体2がシート20の座面部21上まで搬送された状態を示す側面図である。本図の状態から、Z軸スライダ7を駆動させて、支持プレート17を下降させると、これと一体にウエイト構造体2が下降し、ウエイト構造体2がシート20に設置される。
【0021】
図6は、ウエイト構造体2がシート20に設置された状態を示す側面図である。ウエイト構造体2のうち、チルトウエイト構造体3及びクッシュウエイト構造体4は、シート20の座面部21上に載置される。バックウエイト構造体5は、バックウエイト構造体5と一体のフック28がシート20の背もたれ部22を形成するフレーム23に係合し、かつ自重でシート20の凸部24を押圧して、シート20の背もたれ部22に装着される。図6の状態から、Z軸スライダ7(図3参照)を駆動させて、支持プレート17を下降させると、支持軸13に係合したフック16と支持軸13との係合が外れ、ロッド12と吊り具10との係合が外れる。この状態でX軸スライダ6(図3参照)を駆動させて、Z軸スライダ7(図3参照)をウエイト構造体2の退避位置の方向にスライドさせると、支持体11及び支持体14がウエイト構造体2から完全に外れた図3及び図4の状態になる。
【0022】
すなわち、本実施形態においては、搬送機構8(図1参照)は、ウエイト構造体2を吊り下げるための係合体(ロッド12及びフック16)を設けており、ウエイト構造体2は、係合体に係合する被係合体(吊り具10及び支持軸13)を設けており、搬送機構8は、係合体に被係合体を係合させた状態で、ウエイト構造体2をシート20の座面部21上まで水平方向に搬送した後、係合体と被係合体との係合状態を解除して、ウエイト構造体2がシート20へ設置される。
【0023】
この構成によれば、ウエイト構造体2をシート20の座面部21上まで水平方向に搬送する搬送機構8を備えているので、搬送機構8にウエイト構造体2を所定の高さの位置に吊り下げておけば(図1、2参照)、ウエイト構造体2を水平方向に搬送するだけで、ウエイト構造体2をシート20の座面部21上まで搬送することができる。さらに、係合体(ロッド12及びフック16)と被係合体(吊り具10及び支持軸13)との係合及びその解除という簡単な構成で、シート20に対するウエイト構造体2の受け渡しが可能になる。このため、例えばウインチを用いた巻き上げ、巻き下ろしといった工程は不要となり、シート設置の工程を簡素化した安全、迅速かつ正確なシート設置の自動化を実現できる。
【0024】
本実施形態においては、ウエイト構造体2がシート20に設置された図3及び図4の状態で、シート20の品質を検査する。検査完了後は、図3及び図4の退避位置にあったZ軸スライダ7は、再びシート20側にスライドする。これと一体に支持体11及び支持体14もシート20側にスライドし、再びロッド12と吊り具10が係合し、かつフック16と支持軸13が係合する。このときの動作は、ロッド12と吊り具10との係合を解除し、かつフック16と支持軸13ととの係合を解除したときと逆の動作である。前記の係合状態を維持した状態で、ウエイト構造体2は搬送機構8により、再び図1及び図2に示した退避位置まで搬送される。
【0025】
本実施形態においては、ウエイト構造体2は、シート20の背もたれ部22に装着されるバックウエイト構造体5を含んでおり、バックウエイト構造体5に被係合体である支持軸13を設けており、搬送機構8に設けた係合体であるフック16は、支持軸13と係合する側が開いた鉤状である。この構成によれば、シート検査から次のシート検査までの時間を短縮でき、シート検査の効率を高めることができる。この点について、図15を参照しながら説明する。
【0026】
図15は、フック16が支持軸13に係合する前の状態を示す側面図である。本図は図6のフック16の拡大図に相当し、要部のみを図示している。図15の状態では、支持体14(図3参照)及びこれと一体のフック16は、シート20の座面21(図6参照)上にある。また、シート20の背もたれ部22は、リクライニング動作中であり、前方に起き上がるように動作している。この動作と一体にバックウエイト構造体5も起き上がるように移動する。図15に示したように、この移動により、バックウエイト構造体5と一体の支持軸13はフック16に向けて移動する(矢印f方向)。
【0027】
支持軸13がフック16に向けて移動し切った状態では支持軸13はフック16の上側にある。この状態で、Z軸スライダ7(図3参照)を駆動させて、支持プレート17を上昇させると、支持軸13にフック16が係合する。すなわち、シート20の背もたれ部22のリクライニング動作中に、予めフック16をシート20の座面21(図6参照)上に移動させておいても、フック16は支持軸13と係合する側が開いた鉤状であるので、フック16は支持軸13とが干渉することなく係合する。この構成では、リクライニング動作の完了を待つことなく、フック16をシート20の座面21(図6参照)上に移動させることができるので、前記のとおり、シート検査から次のシート検査までの時間を短縮でき、シート検査の効率を高めることができる。
【0028】
ウエイト構造体2がシート20に設置された図3及び図4の状態で、シート20の品質を検査する。本実施形態に係るシート20は、前後スライド、リクライニング、座面高さ調整及び座面前端部のチルト(傾斜)の動作が自動化されたものである。検査時のシート20にはウエイト構造体2が搭載されているので、この状態でシート20を駆動させて前後スライド等を行えば、人が座ったのと同じ状態で検査を行うことができる。検査項目は、例えば作動ストローク、同期ずれ、作動速度、作動電流であり、各項目について良否を判定する。
【0029】
作動ストロークは、前後スライド等の各動作の作動ストロークであり、同期ずれは、各動作の作動ストロークの左右のずれであり、作動速度は各動作の作動速度である。作動電流は、各動作のためのモータの駆動電流である。検査の際に、図4のウエイト構造体2が各動作に正確に追従しなければ、検査値は不正確なものになり、良否の判定も不正確になる。本実施形態に係るウエイト構造体2は、シート20の座面前端部25のチルトの検査項目を正確に検査できるよう構成されており、以下具体的に説明する。
【0030】
座面前端部25のチルトの検査は、図4に示したように、座面前端部25にチルトウエイト構造体3を搭載した状態で行う。この状態では、左右の突起31が座面前端部25に当接することにより、チルトウエイト構造体3による負荷が座面前端部25に左右均等に加わる。一方、シート20の製造ばらつきにより、座面前端部25において、突起31の当接部の高さ方向の位置や傾斜が左右で異なっていると、単にウエイトを座面前端部25に搭載した場合は、左右の突起31の座面前端部25への当接状態が不十分となる。この状態では、ウエイトによる負荷が座面前端部25に左右均等に加わらないので、正確な計測値が得られない。本実施形態に係るチルトウエイト構造体3は、座面前端部25への左右の当接部が座面前端部25の配置状態に追従するように構成することにより、正確な計測値を得られるようにしている。
【0031】
図7は、検査中におけるチルトウエイト構造体3の近傍の斜視図を示している。チルトウエイト構造体3は、クッシュウエイト構造体4の前側に配置されており、シート20の座面前端部25に搭載される。基台30にはウエイトブロック32及びガイドブロック33が固定されている。ウエイトブロック32はシート20に負荷を加えるものであり、ガイドブロック33は、チルトウエイト構造体3をシート20に搭載する際に、シート20の窪み等に沿うように設けたものであり、チルトウエイト構造体3を正規の位置に案内するためのものである。
【0032】
基台30の左右に設けた突起31が座面前端部25に当接してチルトウエイト構造体3による負荷が座面前端部25に加わる。検査はこの状態で行い、シート20が備えるモータ(図示せず)を駆動させて、座面前端部25が持ち上がるように傾斜(チルト)させる(矢印a方向)。この傾斜に伴って基台30も傾斜し、基台30の左右の作動ストロークを測定して、これをシート20のチルトによる作動ストロークとする。
【0033】
本実施形態では、作動ストロークの測定は、シート検査装置1が備えるリニアスケール40により測定する。図7において、基台30の左右には、先端にローラ34を取り付けたローラ治具35が固定されている。座面前端部25が持上がるように傾斜すると、リニアスケール40のロッド41が伸張し、これに伴いローラ治具35のローラ34がガイド体42上を摺動しながら、基台30が傾斜する。基台30の傾斜量に応じて、リニアスケール40のロッド41が伸張し、この伸張量の測定値が座面前端部25のチルトによる作動ストロークとなる。
【0034】
図8は、チルトウエイト構造体3及びクッシュウエイト構造体4が搬送機構8に吊り下げられた状態を側面側から見た要部斜視図である。図9はチルトウエイト構造体3及びクッシュウエイト構造体4が搬送機構8に吊り下げられた状態を裏面側から見た要部斜視図である。図8及び図9は便宜のため、図示は主要部品のみとし、構成部品の一部の図示は省略している。図8に示したように、クッシュウエイト構造体4を構成するプレート45にブラケット46が固定されており、図9に示したように、ブラケット46はプレート45の左右両側に固定されている。
【0035】
図9において、左右のブラケット46には、可動支持体47が取り付けられている。可動支持体47は、可動体48及び水平フレーム49で構成されており、可動体48の一端は軸50を介してブラケット46に回転可能に取り付けられており、他端は水平フレーム49が固定されている。水平フレーム49には、基台30と一体の回転軸51が固定されており、水平フレーム49が回転軸51を介して基台30を支持している。図7に示したように、基台30は、クッシュウエイト構造体4の上部に固定された突出体52に取り付けられた左右1対のワイヤ53で吊り下げられて水平度が保たれている。このことにより、簡単な構造でウエイト構造体2をシート20の座面21(図5参照)上まで搬送する間、基台30の水平度を保つことができる。
【0036】
図8において、可動支持体47を構成する可動体48は軸50を中心に回転可能であり、回転軸51を介して可動支持体47と一体の基台30を持ち上げれば、基台30と一体に可動支持体47も回転する(矢印b方向)。このことにより、基台30及び可動支持体47はシート20の前後方向(矢印d方向)において傾斜可能となる。図10は、基台30及び可動支持体47が傾斜した状態を示す拡大図である。基台30及び可動支持体47はシート20の前後方向(矢印d方向)において、前端側が持ち上がるように傾斜している。図10において、基台を持ち上げる力を解除すれば、基台30及び可動支持体47は自重で逆方向に回転し(矢印c方向)、ワイヤ53で吊り下げられた元の位置(図8)に復帰する。
【0037】
前記のとおり、水平フレーム49(図9)は、回転軸51を介して基台30を支持しており、基台30は回転軸51を中心として回転可能である。このことにより、基台30は、シート20の幅方向においても傾斜可能となる。図11及び図12は、基台30がシート20の幅方向(矢印e方向)において傾斜した状態を示す正面図である。図11は基台30の右端が持ち上っており、基台30はシート20の幅方向において、右端が上になるように傾斜している。図12は基台30の左端が持ち上っており、基台30はシート20の幅方向において、左端が上になるように傾斜している。図11及び図12のいずれにおいても、基台30を持ち上げる力を解除すれば、基台30は自重で持ち上げる方向と逆方向に回転し、ワイヤ53で吊り下げられた水平状態(図8)に復帰する。
【0038】
以上のように、本実施形態に係るチルトウエイト構造体3は、基台20が可動支持体47の移動と一体にシート20の前後方向において傾斜可能であり、かつ回転軸51を中心に回転することにより、シート20の幅方向において傾斜可能である。図13及び図14は、基台30がシート20の前後方向及び幅方向の両方向に傾斜した状態を示す図であり、図13はチルトウエイト構造体3及びクッシュウエイト構造体4を側面側から見た要部斜視図であり、図14はチルトウエイト構造体3及びクッシュウエイト構造体4を裏面側から見た要部斜視図である。
【0039】
可動支持体47の移動と回転軸51の回転は両立可能であり、基台30はシート20の前後方向において傾斜しながら、同時にシート20の幅方向においても傾斜可能である。このため、シート検査装置1に設置されたシート20の座面前端部25において、突起31の当接部の高さ方向の位置や傾斜が左右で異なっていても、基台30は、座面前端部25の配置状態に追従して傾斜するので、チルトウエイト構造体3による負荷がシート20に左右均等に加わり、正確な計測値が得られることになる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、前記実施形態は一例であり適宜変更してもよい。例えば、搬送機構8(図1)は前記実施形態の動作を実現できりものであればよく、その構造は限定されない。また、可動支持体47を構成する可動体48及び水平フレーム49や、可動支持体47を支持するブラケット46は、前記実施形態の動作を実現できるように構成されていればよく、その構造は限定されず、可動体48及び水平フレーム49は、それぞれ別部品で構成されていてもよく、一体に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 シート検査装置
2 ウエイト構造体
3 チルトウエイト構造体
4 クッシュウエイト構造体
5 バックウエイト構造体
8 搬送機構
10 吊り具(被係合体)
12 ロッド(係合体)
13 支持軸(被係合体)
16 フック(係合体)
20 シート
21 シートの座面部
25 シートの座面前端部
30 基台
31 突起
46 ブラケット
47 可動支持体
48 可動体
49 水平フレーム
51 回転軸
53 ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15