特開2017-83589(P2017-83589A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-83589(P2017-83589A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】防災用具
(51)【国際特許分類】
   G09F 17/00 20060101AFI20170414BHJP
   G08B 5/00 20060101ALI20170414BHJP
   G09F 13/20 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
   G09F17/00 Z
   G08B5/00 S
   G09F13/20 Z
   G09F17/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-210230(P2015-210230)
(22)【出願日】2015年10月26日
(71)【出願人】
【識別番号】595024054
【氏名又は名称】タツネ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】田部田 富久
【テーマコード(参考)】
5C083
5C096
【Fターム(参考)】
5C083AA01
5C083BB31
5C083DD05
5C083FF03
5C083HH26
5C083JJ30
5C083JJ42
5C096BA04
5C096BB25
5C096DA08
5C096DD05
5C096FA03
(57)【要約】
【課題】災害時に被災者または避難場所の位置を発見しやすくする防災用具を提供する。
【解決手段】本発明により提供される防災用具は、支柱の上端部に少なくとも一つの旗と電気的発光体が設けられている防災用具であって、組立可能に分割されている2つ以上の支柱片1a〜1dからなる支柱1、上端部となる前記支柱片1aの側面に設けられている旗収納部、前記旗収納部内に巻取り及び引出し可能に収納されており所定の地色を有する旗2a〜2c、前記旗の地色と同じ色に点灯する電気的発光体3、前記電気的発光体に給電するための電源または電源接続部(例えば符号13)、支柱の前記旗収納部が設けられた位置よりも下端側に設けられた支柱の傾き角を変更可能な傾き角調節部9、支柱の前記旗収納部が設けられた位置よりも下端側に所望により設けられた方位角調節部10、支柱の下端部に設けられた他の構造物に前記支柱を固定することが可能な固定部11、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の上端部に少なくとも一つの旗と電気的発光体が設けられている防災用具であって、
組立可能に分割されている2つ以上の支柱片からなる支柱、
支柱の上端部となる前記支柱片の側面に設けられており、前記支柱の軸方向と平行な巻取軸を有する旗収納部、
前記旗収納部内に巻取り及び引出し可能に収納されており、所定の地色を有する旗、
支柱の上端部となる前記支柱片の最上端又は側面に設けられており、前記旗の地色と同じ色に点灯する電気的発光体、
前記電気的発光体に給電するための電源または電源接続部、
前記支柱の前記旗収納部が設けられた位置よりも下端側に設けられており、支柱の傾き角を変更可能な傾き角調節部、及び、
前記支柱の前記傾き角調節部が設けられた位置よりも下端側の位置に設けられており、他の構造物に前記支柱を固定することが可能な固定部、
を備えた防災用具。
【請求項2】
前記支柱の前記旗収納部が設けられた位置よりも下端側に設けられており、支柱の軸回り方向の方位角を変更可能な方位角調節部をさらに備え、
前記固定部は、前記支柱の前記方位角調節部が設けられた位置よりも下端側の位置に設けられている、請求項1に記載の防災用具。
【請求項3】
前記支柱は、分割された2つ以上の支柱片が入れ子状に嵌まり合ってなる伸縮可能な支柱である、請求項1又は2に記載の防災用具。
【請求項4】
旗を収納した前記旗収納部を2つ以上備えており、各旗収納部は上端部となる前記支柱片の側面に支柱の軸回り方向に間隔をあけて配置されており、各旗収納部に収納されている旗は互いに異なる地色を有し、
前記電気的発光体は、各旗の地色と同じ色に切り替えて点灯することが可能である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の防災用具。
【請求項5】
前記傾き角調節部は、前記支柱の下端部となる前記支柱片の最下端または軸方向中間位置に設けられており、
前記固定部は、支柱の下端部となる前記支柱片の前記傾き角調節部が設けられた位置よりも下端側の位置に設けられている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の防災用具。
【請求項6】
前記傾き角調節部は、支柱の下端部となる前記支柱片の最下端に設けられており、
前記固定部は、前記傾き角調節部の下部に設けられている、請求項5に記載の防災用具。
【請求項7】
前記傾き角調節部の傾き可変域は、支柱が直立状態の時の軸方向に対し45度以上である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の防災用具。
【請求項8】
前記方位角調節部は、前記支柱の下端部となる前記支柱片の最下端または軸方向中間位置に設けられており、
前記固定部は、支柱の下端部となる前記支柱片の前記方位角調節部が設けられた位置よりも下端側の位置に設けられている、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の防災用具。
【請求項9】
前記方位角調節部は、支柱の下端部となる前記支柱片の最下端に設けられており、
前記固定部は、前記方位角調節部の下部に設けられている、請求項8に記載の防災用具。
【請求項10】
前記方位角調節部の方位可変域は、支柱の軸回り方向に60度以上である、請求項2乃至9のいずれか一項に記載の防災用具。
【請求項11】
前記固定部は、他の構造物を挟みこむクリップ機構を有する固定部である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の防災用具。
【請求項12】
前記電源が、蓄電機能を有する太陽光発電機である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の防災用具。
【請求項13】
前記支柱を格納した状態における全長が20〜40cmである、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の防災用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時に被災者または避難場所の位置を発見しやすくし、救助要請又は避難誘導を円滑にする防災用具に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や洪水等の災害によって広い被災地域内に被災者が取り残された場合には、被災者または避難場所の位置を発見しやすくする旗や灯火等の信号を掲げ続けることにより、救助者が発見してくれるのを待つ、或いは、被災者を避難場所へ誘導することが防災上有効である。
特に、被災地での捜索が難航する場合には、被災者は長時間にわたり信号を掲げ続ける必要がある。また広範囲にわたり捜索が行われる場合や、ヘリコプター等を用いて被災地を上空から捜索する場合には、遠く離れた場所から、或いは、はるか上空からでも被災者が掲げた信号を発見しやすいことが望まれる。
【0003】
特許文献1には、本体部1の先端に第一の発光部2が形成され、その第一の発光部の先端にパイプ3が取り付けられ、パイプの先端に第二の発光部4が形成され、パイプに旗5が取り付けられ、本体部内に電源が収容されている信号用具が開示されている(特許文献1の請求項1、図1を参照)。
特許文献1の信号用具は、旗と灯火を組み合わせた信号用具であり、船舶等の遭難時に灯火により人の注意を喚起し且つ旗により救助を求める合図を送ることができる(特許文献1の段落0019)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−16980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の信号用具は、災害時に被災者または避難場所の位置を知らせる信号として利用できる。
しかし特許文献1の信号用具は、手に持って使用するものであるから、長時間にわたり信号を掲げ続ける使い方には適していないし、また、はるか上空からでも発見しやすくするために何か特段の工夫がされているものではない。
したがって特許文献1の信号用具は、地震や洪水等の災害によって広い被災地域内に被災者が取り残されたような状況では、信号発信機能を十分に果たすことができない場合がある。
本発明は上記の実状を鑑みて成し遂げられたものであり、災害時に被災者または避難場所の位置を発見しやすくする防災用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供される防災用具は、支柱の上端部に少なくとも一つの旗と電気的発光体が設けられている防災用具であって、
組立可能に分割されている2つ以上の支柱片からなる支柱、
支柱の上端部となる前記支柱片の側面に設けられており、前記支柱の軸方向と平行な巻取軸を有する旗収納部、
前記旗収納部内に巻取り及び引出し可能に収納されており、所定の地色を有する旗、
支柱の上端部となる前記支柱片の最上端又は側面に設けられており、前記旗の地色と同じ色に点灯する電気的発光体、
前記電気的発光体に給電するための電源または電源接続部、
前記支柱の前記旗収納部が設けられた位置よりも下端側に設けられており、支柱の傾き角を変更可能な傾き角調節部、及び、
前記支柱の前記傾き角調節部が設けられた位置よりも下端側の位置に設けられており、他の構造物に前記支柱を固定することが可能な固定部、
を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防災用具は、昼間は所定の地色を有する旗によって位置情報を発信し、夜間は旗の地色と同じ色に点灯する電気的発光体によって位置情報を発信できるから、昼夜を問わず長時間にわたり位置情報を発信できる。
また本発明の防災用具は、防災用具を固定部によって他の構造物に固定し、支柱の角度を傾き角調節部によって調節できるから、旗や電気的発光体を遠く離れた場所から或いは上空からでも発見しやすい位置及び角度に保ちながら、長時間にわたり位置情報を発信できる。
さらに本発明の防災用具は、支柱を短い支柱片に分割することができ、かつ、旗を旗収納部内に巻き取られた状態で収納することができるので、保管時にはコンパクトであり、携帯性に優れている。
したがって本発明の防災用具によれば、災害時に被災者または避難場所の位置を発見しやすくし、救助要請、避難誘導を円滑にすることができる。
また本発明の防災用具は、地震や洪水等の災害によって広い被災地域内に被災者が取り残されたような状況下で特に有効であり、信号発信機能を十分に果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の防災用具の一例(防災用具101)を模式的に示す図であり、支柱を完全に引き伸ばし、3つある旗を全て引き出した状態を示す。
図2】本発明の防災用具の一例(防災用具101)を模式的に示す図であり、支柱を完全に縮めた格納状態とし、3つある旗を全て引き出した状態を示す。
図3】本発明の防災用具の一例(防災用具101)を模式的に示す図であり、支柱を完全に縮めた格納状態とし、3つある旗を収納した状態を示す。
図4】防災用具101の先端部となる支柱片1aの横断面における旗収納部の構造を模式的に示した図である。
図5】防災用具の先端部となる支柱片1aの内面側に旗収納部の巻取軸を配置した一例について、当該支柱片1aの横断面における旗収納部の構造を模式的に示した図である。
図6】本発明の防災用具の他の一例(防災用具102)を模式的に示す図である。
図7】本発明の防災用具をテレビアンテナの脚部に取り付けた様子を示す図である。
図8】本発明の防災用具をバルコニーの柵に取り付けた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明により提供される防災用具は、支柱の上端部に少なくとも一つの旗と電気的発光体が設けられている防災用具であって、
組立可能に分割されている2つ以上の支柱片からなる支柱、
支柱の上端部となる前記支柱片の側面に設けられており、前記支柱の軸方向と平行な巻取軸を有する旗収納部、
前記旗収納部内に巻取り及び引出し可能に収納されており、所定の地色を有する旗、
支柱の上端部となる前記支柱片の最上端又は側面に設けられており、前記旗の地色と同じ色に点灯する電気的発光体、
前記電気的発光体に給電するための電源または電源接続部、
前記支柱の前記旗収納部が設けられた位置よりも下端側に設けられており、支柱の傾き角を変更可能な傾き角調節部、及び、
前記支柱の前記傾き角調節部が設けられた位置よりも下端側の位置に設けられており、他の構造物に前記支柱を固定することが可能な固定部、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
図1図2及び図3は、本発明の防災用具の一例(防災用具101)を模式的に示す図である。図1は、支柱を完全に引き伸ばし、3つある旗を全て引き出した状態である。図2は、支柱を完全に縮めた格納状態とし、3つある旗を全て引き出した状態である。図3は、支柱を完全に縮めた格納状態とし、3つある旗を収納した状態である。
図1に示すように、防災用具101は、支柱1を完全に伸ばした状態において、支柱1の上端部には赤色の旗2a、黄色の旗2b、青色の旗2cが設けられており、また、支柱1の最上端には各旗の色に合わせて赤、黄、青に切り替えて点灯することが可能な電気的発光体3が設けられている。
支柱1の最下端に傾き角調節部9が設けられており、当該傾き角調節部9の下部に方位角調節部10が連結しており、当該方位角調節部10の下部にクリップ機構を有する固定部11が連結している。
支柱の下端部となる支柱片1dの最下端近傍の側面には、蓄電機能を有する太陽光発電機13のコード13aが挿入されており、このコードにより太陽光発電機13が電気的発光体に接続されている。
図3に示すように、防災用具101は、支柱を短い支柱片に分割することができ、かつ、旗を旗収納部内に巻き取られた状態で収納することができるので、保管時にはコンパクトであり、携帯性に優れている。
【0011】
本発明の防災用具は、昼間は赤、青、黄色などの所定の地色を有する旗によって位置情報を発信し、夜間は旗の地色と同じ色に点灯する電気的発光体によって位置情報を発信できるから、昼夜を問わず長時間にわたり位置情報を発信できる。
また本発明の防災用具は、防災用具を固定部によって他の構造物に固定し、さらに支柱の角度を傾き角調節部によって調節できるから、旗や電気的発光体を遠く離れた場所から或いは上空からでも発見しやすい位置及び角度に保ちながら、長時間にわたり位置情報を発信できる。
【0012】
本発明において防災用具の支柱は、組立可能に分割されている2つ以上の支柱片からなり、保管時に支柱を分割して長さを短くすることができる。組立可能に分割させている構造としては、例えば、振出竿のように太さが異なる空洞状の支柱片が嵌まり合ってなる伸縮可能な入れ子構造、支柱片の末端同士を嵌め合わせるなどの方法で継ぎ合わせる構造、折り畳み可能な関節部を有し使用時に関節部を固定する構造などを挙げることができる。
図に示す防災用具101の場合は、4つに分割された支柱片1a、1b、1c、1dが入れ子状に嵌まり合ってなる伸縮自在な支柱1を有する。各支柱片の径は、上端部となる支柱片1aが最も大きく、下端部に近い支柱片ほど小さくなり、下端部となる支柱片1dが最も小さい。
図1に示すように支柱を完全に引き延ばした状態において、各支柱片は、締り嵌めによって固定されても良いし、各支柱片の末端、例えば支柱片1a、1b、1cそれぞれの下端4a、4b、4cに設けたネジ式の締め付け部材を支柱の軸回り方向に回転させて締め付けることにより固定されても良い。ネジ式の締め付け部材を用いる場合には、支柱を途中まで引き延ばした状態で支柱片を締め付けて固定することにより、使用時における支柱を任意の長さに調節することができる。
図2図3に示すように、上端部となる最も太い支柱片の内部に他の支柱片が完全に格納されると、支柱1は最も短い格納状態をとる。
なお、支柱の入れ子構造は、図1に示すような各支柱片の径が上端側から下端側に向かって小さくなる構造に限定されず、各支柱片の径が下端側から上端側に向かって小さくなる構造であってもよい。
防災用具101の長さLは、最上端に発光部などの、又は、最下端に固定部などの付属物がある場合には、それら付属物を含めた両端間の寸法である。支柱1を完全に格納した状態における長さ、すなわち最少長さLminは特に限定されないが、およそ20〜40cmの範囲であることが携帯性の観点から好ましく、さらにLminが25〜35cmの範囲であることが好ましい。また、支柱1を完全に伸ばしきった状態における長さ、すなわち最大長さLmaxは特に限定されないが、通常およそ75〜100cmの範囲とされる。
【0013】
図3に示すように、各色の旗は、上端部となる支柱片1aの側面に設けられた旗収納部内に巻取り及び引出し可能に収納されており、図1に示すような使用状態において引き出される。各旗の端縁に、引き出す時に掴むつまみ片、例えば図1に示すようなリング状のつまみ片5a、5b、5cを設けても良い。
旗が2つ以上ある場合には、必要な色の旗だけを引き出して使用する。本発明の防災用具には旗を一つ設けるだけでも良いが、地色が互いに異なる2つ以上の旗を設け、さらに、各旗の地色と同じ色に切り替えて点灯できる電気的発光体を設けた場合には、被災状況の程度や救助の緊急性などの状況に合わせて適した色の旗を掲げることにより、より多くの情報を救助者に伝達することができる。
旗には、文字や模様が付されていてもよい。旗は単色である必要はなく、二色以上の地色を有していてもよい。例えば、旗を左右又は上下ほぼ半々に分けて、そのうちの一方を赤、他方を緑としたような場合には、地色が2色あると考えればよい。
また、旗は防水加工及び/又は防炎加工されていることが好ましい。
【0014】
旗収納部は、支柱の軸方向と平行な巻取軸を有しており、当該巻取軸により旗を巻き取る。旗収納部は、当該旗収納部の巻取軸と支柱の軸方向とが平行となるように位置合わせされた状態で、支柱の上端部となる前記支柱片の側面に設けられる。旗収納部の巻取軸は、支柱片の側面の外面側に配置されても良いし、内面側つまり中空な支柱片の内部に配置されてもよい。
防災用具101の場合には、旗収納部の巻取軸が支柱片1aの側面の外面側に配置されているが、支柱片1aの外周面が旗収納部カバー8で覆われ、巻取軸は旗収納部カバー8の内側に配置されているため、外観上は、旗収納部カバー8の表面と、各色の旗が出入りするスリット状の貫通孔7(7a、7b、7c)が見えるだけである。
図4は、防災用具101の先端部となる支柱片1aの横断面における旗収納部の構造を模式的に示した図である。防災用具101の場合には、各色の旗を巻き取る巻取軸6(6a、6b、6c)が、支柱片1aの側面の外面側に、支柱の軸方向と平行になるように位置合わせされた状態で配置されている。旗収納部カバー8は、支柱片1aの外周面を覆っており、支柱片1aの側面と旗収納部カバー8により区切られた空間に巻取軸6が配置され、各色の旗が出入りするスリット状の貫通孔7(7a、7b、7c)が当該旗収納部カバー8に形成されている。巻取軸6には、旗を完全に引き出したときに巻戻しの動力が発生して自動的に巻き取ることができる自動巻取り機構(図示せず)が取り付けられている。そして、前記巻取軸6と前記旗収納部カバー8と貫通孔7と前記自動巻取り機構とで、防災用具101の旗収納部が構成されている。自動巻取り機構には、ロールスクリーンに用いられるものと同様の機構を採用することができる。巻取り機構としては、上記した自動巻取り機構のほかにも、手動の巻取り機構を採用しても良い。
【0015】
図5は、防災用具の先端部となる支柱片1aの内面側に旗収納部の巻取軸を配置した一例について、当該支柱片1aの横断面における旗収納部の構造を模式的に示した図である。
この例では、各色の旗を巻き取る巻取軸6(6a、6b、6c)が支柱片1aの側面の内面側に支柱の軸方向と平行になるように位置合わせされた状態で配置され、各色の旗が出入りするスリット状の貫通孔7(7a、7b、7c)が支柱片1aの側壁に形成され、さらに、旗を完全に引き出したときに巻戻しの動力が発生して自動的に巻き取ることができる自動巻取り機構(図示せず)が取り付けられている。そして、前記巻取軸6と前記貫通孔7と前記自動巻取り機構とで旗収納部が構成されている。
【0016】
電気的発光体3は、支柱1の上端部となる支柱片1aの側面に設けてもよいが、最上端に設けた場合には点灯時の視認性が良いので好ましい。
電気的発光体3は、電気により発光する発光素子と、発光素子を収容し保護する透明カバーとで構成される。発光素子としては、LED、ハロゲン灯、一般的なフィラメント球、蛍光灯など様々なものを用いることができるが、明るさと省電力性に優れるLEDを用いることが好ましい。
旗の色に合わせて電気的発光体の点灯色を変える方法としては、例えば、旗の色と同じ各色の着色フィルターを電気的発光体に内蔵しておき旗の色に合わせて着色フィルターを切り替える方法、旗の色と同じ各色の透明カバーを用意しておいて旗の色に合わせて透明カバーを取り換える方法、旗の色と同じ各色の点灯色をもつ発光素子を電気発光体の内部に内蔵しておき旗の色に合わせて発光素子を切り替える方法、点灯色を変えることができる発光素子を用い旗の色に合わせて点灯色を変える方法などがある。
なお、旗の地色と電気的発光体の点灯色が同じであるとは、厳密な意味で同じ色であることまで必要ではなく、発信すべき信号の内容が同じであると看守できる程度に近似した色であれば同じ色であることを意味している。
【0017】
本発明の防災用具は、電気的発光部を点灯するための電源又は電源接続部を備えている。電源は、防災用具の本体に内蔵されていても良いが、長時間の使用に耐えるためには、大容量あるいは発電可能なものを接続できる方が有利である。電源の種類は特に限定されず、一般的に市販されている乾電池のような一次電池、自動車用バッテリーのような充電可能な二次電池、太陽光発電機のような発電機などを用いることができるが、被災地での電源確保の観点から発電機能と蓄電機能を備えたものを用いるのが好ましい。また太陽光発電機は、被災地でも長期間にわたり容易に発電可能であるため好ましい。
また被災地での電源確保の観点から、防災用具の本体に給電経路を2系統以上設けることにより、複数の電源を接続可能とすることが好ましい。例えば、2系統ある給電経路のうち一方に電池を接続し、他方に別の電池または発電機を接続してもよい。
図6は、本発明の防災用具の他の一例(防災用具102)を模式的に示す図である。図に示した防災用具102では、支柱の下端部となる支柱片1dの最下端近傍の側面に電源接続部12を設け、さらに当該電源接続部12に隣接する位置に蓄電機能を有する太陽光発電機13のコード13aを挿入している。太陽光発電機13は、電源接続部12に接続するものであっても良い。電源接続部12の設置位置や電源コードの挿入位置は特に限定されないが、支柱の最下端又はその近傍に設けることが、嵩張らないので好ましい。
【0018】
本発明の防災用具には、支柱の旗収納部が設けられた位置よりも下端側に、支柱の傾き角を変更可能な傾き角調節部を設ける。また本発明の防災用具には、必要に応じて、支柱の前記旗収納部が設けられた位置よりも下端側に、支柱の軸回り方向の方位角を変更可能な方位角調節部を、さらに設けてもよい。そして、前記支柱の前記傾き角調節部及び前記方位角調節部が設けられた位置よりも下端側の位置に、支柱を他の構造物に固定することが可能な固定部を設ける。
傾き角調節部及び方位角調節部を設ける位置は特に限定されないが、傾き角調節部及び方位角調節部を支柱の下端部となる支柱片の最下端または軸方向中間位置に設け、固定部を、支柱の下端部となる支柱片の傾き角調節部及び方位角調節部が設けられた位置よりも下端側の位置に設けることにより、傾き角調節部、方位角調節部及び固定部を支柱の下端部に集中配置することができる。
【0019】
図1に示す防災用具101の場合には、支柱1の下端部となる支柱片1dの最下端に傾き角調節部9が連結し、当該傾き角調節部9の下部に方位角調節部10が連結し、方位角調節部10の下部に固定部11が連結している。傾き角調節部9は、支柱の傾き角を変更し、所望の傾き角で固定する。方位角調節部10は、支柱の軸回り方向の方位角を変更し、所望の方位角で固定する。
防災用具101のように、傾き角調節部及び方位角調節部が支柱片の最下端に設けられる場合には、支柱は最下端の位置を起点として傾き、かつ、軸回りに回転する。傾き角調節部及び方位角調節部の機構は特に限定されないが、例えば、カメラのスタンドや三脚、デスクのスタンド照明などの位置合わせに用いられている機構と同様のものを採用できる。
本発明においては、傾き角調節部及び方位角調節部の一方又は両方を、支柱の下端部となる前記支柱片の軸方向中間位置に設けてもよい。傾き角調節部を、支柱の下端部となる前記支柱片の軸方向中間位置に設けた場合には、支柱は傾き角調節部が設けられた位置を起点として傾くので、支柱が下端部近傍で屈曲することにより防災用具全体としては傾く。
【0020】
傾き角調節部及び方位角調節部によって調節できる角度の範囲は、できるだけ広いことが好ましい。
傾き角調節部の傾き可変域については、具体的には、支柱が直立状態(つまり傾き角調節部が設けられている位置よりも上部側の軸と下部側の軸とのなす角が180度である状態)である時の軸方向に対し45度以上であることが好ましく、60度以上であることがさらに好ましく、90度以上であることがさらに好ましい。
方位角調節部の方位可変域については、具体的には、支柱の軸回り方向に60度以上であることが好ましく、90度以上であることがさらに好ましく、180度以上であることがさらに好ましく、360度つまり全方位に回転できることが最も好ましい。
【0021】
本発明において、傾き角調節部と方位角調節部の位置関係は、これらが支柱の旗収納部が設けられた位置よりも下端側に設けられる限り、どちらが上端側で、どちらが下端側に配置されていてもよい。また、傾き角調節部及び方位角調節部の一方又は両方が支柱片に内蔵されて支柱片の一部を構成していてもよい。
本発明において、傾き角調節部及び方位角調節部と固定部の位置関係は、支柱の傾き角調節部及び方位角調節部が設けられている位置よりも下端側の位置に固定部が設けられている位置関係であればよい。ここで、支柱の傾き角調節部及び方位角調節部が設けられている位置よりも下端側の位置に固定部が設けられているとは、支柱片の傾き角調節部及び方位角調節部が設けられている位置よりも下端側の位置において、固定部が支柱片に直接連結するか又は他の部材を介して間接的に連結していることを意味する。
例えば、下端部となる支柱片の軸方向中間位置に傾き角調節部及び方位角調節部が設けられている場合には、当該支柱片の最下端に固定部を設けてもよい。また、支柱片の最下端に傾き角調節部及び方位角調節部が設けられている場合には、当該傾き角調節部及び方位角調節部の下部に固定部を設けてもよい。さらに、支柱の機能が失われない限りにおいて、支柱片の最下端に傾き角調節部及び方位角調節部を連結し、当該傾き角調節部の下部に他の部材を連結し、当該他の部材の下部に固定部を連結してもよい。
【0022】
固定部11は、他の構造物を挟みこむことができるクリップ機構を有している。本発明において固定部の係止機構はクリップ機構に限定されないが、クリップ機構は操作性が良く、防災用具をワンタッチで他の構造物に取り付けることができるので、好ましい。
図7は、本発明の防災用具をテレビアンテナの脚部に取り付けた様子を示す図であり、図8は、本発明の防災用具をバルコニーの柵に取り付けた様子を示す図である。
これらの図に示すように、本発明の防災用具を、救助者が発見しやすそうな場所にある構造物に取り付けた後、傾き角調節部により支柱の傾きを調整し、さらに方位角調節部により旗が向いている方向を調整することによって、防災用具の旗及び電気的発光体を、遠い場所や上空から発見しやすい位置及び方向に固定することができる。さらに、支柱の伸縮長さを伸びきった状態だけでなく、伸ばす途中の長さでも固定できる場合には、支柱の長さを調整することによっても防災用具の旗及び電気的発光体を発見しやすい適切な位置及び方向に設定できる。
したがって本発明の防災用具によれば、災害時に被災者または避難場所の位置を発見しやすくし、救助要請、避難誘導を円滑にすることができる。
また本発明の防災用具は、地震や洪水等の災害によって広い被災地域内に被災者が取り残されたような状況下で特に有効であり、信号発信機能を十分に果たすことができる。
【符号の説明】
【0023】
101、102:防災用具
1:支柱
1a、1b、1c、1d:支柱片
2(2a、2b、2c):旗
3:電気的発光体
4(4a、4b、4c):支柱片の下端
5(5a、5b、5c):つまみ片
6(6a、6b、6c):巻取軸
7(7a、7b、7c):スリット状の貫通孔
8:旗収納部カバー
9:傾き角調節部
10:方位角調節部
11:固定部
12:電源接続部
13:太陽光発電機
13a:太陽光発電機の専用コード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8