【課題】高い屈折率を有するダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を光散乱体として含有する光反射防止膜、及び光反射防止膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】基板上に形成された、ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体及びこれらの組み合わせを含有する樹脂及びガラス被膜からなる光反射防止膜を製造する方法は、(a)ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を樹脂又はガラス質材料粉末、バインダー、及び溶剤を含有する塗料を作製する工程、(b)前記塗料を基板に塗装し塗装膜を形成する工程、及び(c)前記塗装膜を塗布乾燥又は焼結する工程を有する。
基板上の少なくとも片面に形成された被膜に、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を2.0重量%以上含有したことを特徴とする光反射防止膜。
特許請求項1に記載の光反射防止膜において、被膜にダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を5.0重量以上含有したことを特徴とする光反射防止膜。
特許請求項1〜5のいずれかに記載の光反射防止膜において、前記ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体微細粒子の一部分が前記被膜層により固定され、他の部分が表面に突き出していることを特徴とする光反射防止膜。
樹脂とこの樹脂に含まれるメジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を2.0重量%以上含有した光反射防止液をエアブラシで樹脂及びガラス基板に吹き付けて、均一な薄膜を作製することを特徴とする光反射防止スクリーンの製造方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂又はガラス中に粒子を混入することによって表面に凹凸を形成して、表面の凹凸による光の散乱現象(表面拡散)を利用する。さらに、樹脂又はガラス中に、屈折率の異なる粒子を混入することによって、樹脂又はガラスと粒子の屈折率差による光の内部散乱を利用する光反射防止膜にあっては、光反射防止膜に入射した光を散乱させることにより外光の写り込みを防止する。したがって、外光の写り込み防止の度合いを大きくし、画像の鮮鋭性を得ようとする場合、光の内部散乱を大きくするためには、屈折率が大きく、粒子数を多く、すなわち小さな粒子を添加して光の内部散乱を大きくしないといけない。粒子の大きさを小さくすればそれだけ添加量をも減らせることが出来、同じ効果が期待できる。本発明は、屈折率が大きく、粒径の小さなダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を多数添加することによって、十分な外光写り込み防止性能を有する鮮鋭性に優れた光反射防止膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を樹脂、またはガラス質材料粉末と混合して、基板上に塗布又は焼結することにより、ダイヤモンド粒子が均一に分散した光反射防止膜を形成することができることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の光散乱防止膜は、高い屈折率を有するダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を均一に分散させた被膜を基板上に形成させることを特徴とする。
【0009】
前記光反射防止膜は、基板上の少なくとも片面に形成された被膜に、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を2.0重量%以上含有したものが好ましい。
【0010】
前記光反射防止膜は、基板上の少なくとも片面に形成された被膜に、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を5.0重量%以上含有したものがさらに好ましい。
【0011】
前記被膜が樹脂、またはガラスであることが好ましい。
【0012】
前記被膜の厚みが0.05〜50μであることが好ましい。
【0013】
前記基板の少なくとも片面がマット加工されていることが好ましい。
【0014】
前記ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体微細粒子の一部分が前記被膜層により固定され、他の部分が表面に突き出していることが好ましい。
【0015】
前記光反射防止膜を設けた光反射防止スクリーンであることが好ましい。
【0016】
樹脂とこの樹脂に含まれるメジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を2.0重量%以上含有した光反射防止液をエアブラシで樹脂及びガラス基板に吹き付けて、均一な薄膜を作製する光反射防止スクリーンの製造方法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光反射防止膜は、ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体の微細粒子の一部分が被膜層により固定され、他の部分が表面に突き出していることを特徴とする光反射防止膜である。
【0018】
本発明の方法は、屈折率が2.42(波長589.3nmの橙色の光に対する値)と高い値を示し、空気中からダイヤモンド粒子中に光が侵入し、屈折率が2.42と大きいダイヤモンドから屈折率が1.00と小さい空気中に光が進もうとすると、その臨界角が24.4度と小さく、全反射を小さな入射角度で起こすところに特徴がある。すなわちダイヤモンド粒子の内部では入射角が24.4〜90度の広い範囲で全反射が起きるので、光を散乱させ外光の写り込みを軽減、防止するものと考えられる。ここで言う光は、可視放射に限定的に使用しているが紫外放射、可視放射、赤外放射の範囲の電磁波に当てはまることは言うまでもない。
【0019】
ここで臨界角は、その入射角を超えると全反射する最小の入射角のことで、媒質(屈折率n
1)から媒質(屈折率n
2)に光が入るとき、臨界角はθ=arc・sin(n
2/n
1)で表される。屈折率2.42のダイヤモンドから屈折率1.00の空気中に光が進む場合は、臨界角θ=arc・sin(1.00/2.42=0.413)=24.4度になる。すなわちダイヤモンドの内部では入射角が24.4度〜90度の広い範囲で全反射が起こり、光が散乱して光反射防止が起こる。同様にダイヤモンドが被膜中で樹脂、例えばシリコーン樹脂で覆われている場合、外部から光が侵入して、屈折率2.42のダイヤモンドから屈折率1.43のシリコーン樹脂中に光が進む場合は臨界角θ=arc・sin(1.43/2.42=0.591)=36.2度になる。すなわちダイヤモンドの内部では入射角が36.2度〜90度の範囲で全反射が起こり、光が散乱して光反射防止が起こる。上記の件は、シリコーン樹脂中にダイヤモンド粒子の一部分が前記被膜層により固定され、他の部分が表面(空気中)に突き出している場合の光反射防止膜に相当する。
【0020】
樹脂又はガラス中に、屈折率の異なる粒子を混入することによって、樹脂又はガラスと粒子の屈折率差による光の内部散乱を利用する光反射防止膜にあっては、上式に従えば混入する粒子の中でダイヤモンドの屈折率が極端に大きく、外からダイヤモンド内部に入射した光は他の屈折率の小さな粒子に比較して、より広い範囲で全反射が起こり、光が散乱して光反射防止効果がより顕著になる。光反射防止膜に入射した光を内部で散乱させることにより外光の写り込みを防止するからである。
【0021】
因みに、屈折率1.46、粒径(メジアン径)200nmのシリカと、屈折率2.42、粒径(メジアン径)200nmのダイヤモンドをそれぞれ別々に、熱硬化シリコーン中に2重量%添加し、良く分散して、50μTAC(三酢酸セルローズ)フイルムに2μ厚に塗布し、熱硬化した。この塗布面にプロジェクターで映像を映したところ、シリカ粒子塗布面は、外光の写りこみが顕著で、視野角が狭く、真正面から見た角度を0度として、上下左右の斜め30−45度の角度より大きい角度範囲で、色やコントラストが大きく変わり、暗色に変わって表示が認識できなくなって、鮮明な映像が見られなかったのに対し、ダイヤモンド塗布面は、外光の写りこみがなく、視野角が広く、画面のほぼ真横からでもプロジェクターの明るく、鮮明な映像を見ることができた。官能検査であるが、シリカ粒子塗布面の映像に較べて、ダイヤモンド塗布面の映像の鮮鋭性が格段に優れ、色滲みがなかった。
【0022】
このことは、被膜の樹脂またはガラスの種類、塗布厚み、及び光の内部散乱を引き起こす粒子の大きさ、添加量が同じであれば、光の内部散乱は屈折率に依存し、屈折率が大きいほど内部散乱が引き起こし、外光による写りこみが少なくなることと一致する。また色滲みがないことは、ダイヤモンドの色収差が非常に小さいことに起因すると推定される。
【0023】
一般に、光学ガラス分野では、屈折率が大きくなれば、アッベ数が小さくなる関係にある。すなわちアッベ数が小さくなると色収差が大きくなる。しかしながらダイヤモンドは屈折率が2.42と非常に大きく、ダイヤモンド相当の屈折率を有する光学ガラスは見当たらないが、屈折率が最大2.0程度の光学ガラスでは、アッベ数は20程度を示すが、ダイヤモンドは60弱と非常に大きく色収差が極端に小さいという特徴を有する。このことは液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、ELディスプレイ、および、プラズマディスプレイ等のディスプレイ及び映写スクリーンの映像に色収差、すなわち色滲みがなく、「超高精細映像システム」4Kや8Kの高精細な映像は、2Dでありながら奥行きを感じるほどの立体感ある鮮明な映像を再現する。
【0024】
因みに樹脂の光反射防止フィルム、シート又は光反射防止ガラスにおいては、表面の凹凸による光の散乱現象(表面拡散)を利用するために、フィルム、シートの樹脂中又はガラス中に、屈折率の異なる粒子を混入することによって、樹脂又はガラスと粒子の屈折率差による光の内部散乱を利用することが行われているが、そのような粒子としては、シリカ粒子(屈折率1.44〜1.50)、タルク(屈折率1.54〜1.59)、各種アルミノケイ酸塩(屈折率1.50〜1.60)、カオリンクレー(屈折率1.53)といった無機粒子や、シリコーン樹脂(屈折理1.43)、アクリル粒子(屈折率1.49〜1.53)、アクリルスチレン粒子(屈折率1.49〜1.59)、ポリスチレン粒子(屈折率1.59)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.59)、メラミン粒子(屈折率1.60)などの有機粒子から適宜選択されているが、用いられるフィルム、シートの樹脂又はガラスの屈折率は、それぞれ樹脂は1.35〜1.55、ガラスは1.44〜1.84程度で屈折率が小さい。
【0025】
一方、屈折率の大きい粒子としては、チタン酸バリウム(屈折率2.4〜2.5程度)、酸化ジルコニウム(屈折率2.2〜2.4程度)、二酸化チタン(屈折率屈折率2.2〜2.4程度)等の高い屈折率を有する粒子が挙げられるが、これら粒子のメジアン径が0.02〜2.0μの粉末を樹脂やガラス被膜中に均一に分散すると、ミー散乱により、高い散乱効果を発揮するが、ダイヤモンド光反射防止膜に較べ、視野角が45〜50度と小さく、色滲みの発生した欠点を有する光反射防止膜である。
【0026】
本発明は、フィルム、シートの樹脂又はガラス被膜に、屈折率が2.42というダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体の粒子の一部分が前記被膜層により固定され、他の部分が表面に突き出しているので、前述のシリカやタルク等の無機粒子、及びポリスチレンやポリカーネート等の有機粒子の場合に較べて、樹脂又はガラス被膜の屈折率との差がより大きく、ミイー散乱は大きくなる。さらにダイヤモンド粒子等が被膜層より顔を出しておれば、空気の屈折率1.00とダイヤモンドの屈折率2.42との差がさらに大きくなり、ミイー散乱は顕著となり、視野角の広い良好な光反射防止フィルム、シート又は光反射防止ガラスになる。
【0027】
勿論、粒子が同一添加量であれば、粒径が小さいほど粒子の数が多くなり、また同様に同一粒径であれば添加量が多いほどミイー散乱が顕著になり、高い光散乱効果を発揮し、良好な光反射防止フィルム、シート又は光反射防止ガラスが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[1]光反射防止膜
(1)構造
光反射防止膜は、光を散乱させる物質としてダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を含有する。ダイヤモンドは2.42という高い屈折率を有するため、ミー散乱により、高い散乱効果を発揮する物質である。光反射防止膜は、
図1(a)に示すように、基板11と、前記基板11上に設けた樹脂又はガラス被膜12とからなり、前記ガラス被膜層12に前記ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体1が均一に分散されている。メジアン径0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体1は、1〜10nm程度の一次粒子が凝集した形状のものが好ましい。凝集ダイヤモンドは、50〜200nmの二次粒子からなるものが好ましい。またダイヤモンド誘導体1は、ダイヤモンド粒子又はダイヤモンド凝集体の骨格や、ダイヤモンドに付いている官能基にフッ素、珪素、硼素、燐等の元素が反応して付いたものを総称したものである。
【0030】
ミーの散乱理論によると、散乱体(ここではダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体)と媒体(ここでは樹脂又はガラス)との屈折率差が大きいほど光散乱効果は大きくなるので、樹脂又はガラスに比べて相対的に低い屈折率を有する空気を媒体として構成した方がより高い散乱効果が得られる。従って、
図1(b)に示すように、ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体1の一部分が前記樹脂又はガラス被膜層12により固定されて、表面に突き出した状態で光散乱板を構成してもよい。
図1(a)と
図1(b)の混在したものが
図1(c)である。
【0031】
(2)粒子
粒子としては、合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンドのいずれであっても良い。ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体及びダイヤモンド誘導体は、可視光を効率よく散乱させるため0.02〜2.0μのメジアン径を有するのが好ましい。これらのメジアン径を有するダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体は、樹脂又はガラス媒体との大きな屈折率差を有するため、いわゆるミー散乱により光を散乱させることができる。ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体のメジアン径は、最も好ましくは0.05μ以上である。勿論ダイヤモンド粒子、ダイヤモンドの凝集体及びダイヤモンド誘導体を適宜混錬して用いて良いことは言うまでもない。
【0032】
(2)−1ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体及びダイヤモンド誘導体
ダイヤモンドの粒子としては、爆轟法で得られるナノダイヤモンド粒子が好ましい。爆轟法で得られた未精製のナノダイヤモンドを含む微細粒子は、ナノダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、黒く着色している。用途によってはこのまま用いても良いが、より着色の少ない光反射防止膜を得るためには、ナノダイヤモンドを含む微細粒子を酸化処理し、前記グラファイト相を除去して用いるのが好ましい。グラファイト相を除去することにより、着色成分はほとんどなくなるが、微量に残ったグラファイト系炭素の表面に存在する−COOH、−OH等の親水性官能基のため、表面に−OH基を有するガラスとの親和性は極めて良好であり、ガラス被膜層に均一に分散することができる。
【0033】
爆轟法による粗製のダイヤモンドの合成は、例えば、水と多量の氷を満たした純チタン製の耐圧容器に、電気雷管を装着した爆薬[例えば、TNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=60/40]を胴内に収納させ、片面プラグ付き鋼鉄製パイプを水平に沈め、この鋼鉄製パイプに鋼鉄製のヘルメットを被覆して、前記爆薬を爆裂させることにより行うことができる。反応生成物としての粗製のダイヤモンドは容器中の水及び氷中から回収する。
【0034】
前記爆轟法は、Science,Vol.133,No.3467(1961),pp1821−1822、特開平1−234311号、特開平2−141414号、Bull.Soc.Chem.Fr.Vol.134(1997),pp.875−890、Diamond and Related materials Vol.9(2000),pp861−865、Chemical Physics Letters,222(1994),pp.343−346、Carbon,Vol.33,No.12(1995),pp.1663−1671、Physics of the SolidState,Vol.42,No.8(2000),pp.1575−1578、K.Xu.Z.Jin,F.Wei and T.Jiang,Energetic Materials,1,19(1993)、特開昭63−303806号、特開昭56−26711報、英国特許第1154633号、特開平3−271109号、特表平6−505694号(WO93/13016号)、炭素,第22巻,No.2,189〜191頁(1984)、Van Thiei.M.&Rec.,F.H.,J.Appl.Phys.62,pp.1761〜1767(1987)、特表平7−505831号(WO94/18123号)、米国特許第5861349号及び特開2006−239511号等に記載の方法を用いることができる。
【0035】
酸化処理して得られたナノダイヤモンドは、2〜10nm程度のナノサイズの一次粒子が凝集して30〜250nm(動的光散乱法)の二次粒子なので、そのままでは可視光を散乱させるには粒径が小さすぎる。従って、この粒子を光散乱体として使用する場合、更にミー散乱が起こる程度の粒径(メジアン径0.02〜2.0μ)に凝集させて使用するのが好ましい。
【0036】
酸化処理して得られた精製ダイヤモンド粒子は、精製度が高くグラファイト系炭素の残存量が少ないほどダイヤモンドの比率が多くなるので比重が高くなる。本発明で用いる精製ダイヤモンド粒子の比重は3.38g/cm
3より大きいのが好ましい。精製ダイヤモンド粒子の比重は、グラファイト系炭素(グラファイトの比重:2.25g/cm
3)の残存量が少なくなればなるほどダイヤモンドの比重(3.50g/cm
3)に近づく。
【0037】
精製ダイヤモンド粒子は前述の通りグラファイト相が十分に除去されているので、ダイヤモンド本来の性質(優れた機械的性質、化学的安定性、電気絶縁性、低誘電性、熱伝導性、耐熱性等)を十分に発揮することができる。精製ダイヤモンド粒子は高い屈折率を有し、ガラスへの分散性に優れているので、光反射防止膜に好適である。
【0038】
ダイヤモンド誘導体は、爆轟法で得られたナノダイヤモンド粒子又はダイヤモンド凝集体の骨格や、ダイヤモンドに付いている官能基にフッ素、珪素、硼素、燐等の元素を付加して使用するのが好ましい。
【0039】
(3)樹脂及びガラス被膜層
樹脂及びガラス被膜層は、基板上にダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を分散した状態で固定する。
【0040】
(3)−1樹脂被膜層
樹脂被膜層に用いる樹脂は、基板との密着性がよく、かつ前記ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体の分散性が良いものであればどのような樹脂材料を用いても良い。
【0041】
樹脂被膜層は、屈折率が2.42で、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を分散し、基板に塗布、吹き付け等の手段で固定する。樹脂被膜層に用いる樹脂としては、可視光の透過性に優れたものが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルサルファイド系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、トリアジン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。
【0042】
(3)−2ガラス被膜層
ガラス被膜層に用いるガラスは、基板との密着性がよく、かつ前記ダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体の分散性がよいものであればどのようなガラス質材料を用いても良いが、焼結時に基板の熱による損傷を防ぐため、比較的軟化点の低いガラス素材を用いるのが好ましい。低軟化点のガラス素材としては、硼珪酸鉛ガラス等を用いるのが好ましい。あるいは又シランカップリング剤を用いて、ダイヤモンド表面を珪素化しておきガラス基板との密着性を確保する等の方法も好ましい。
【0043】
樹脂及びガラス被膜層は、基板の光源側の片面に設けても良いし、光源に対して反対側の面に設けても良い。勿論両面に設けても良いことは言うまでもない。
【0044】
(4)基板
被膜層にダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体を分散した状態で、樹脂及びガラス基板に塗布して、加熱乾燥、熱硬化、電離放射線硬化等の手段で固定する。
【0045】
(4)−1樹脂基板
樹脂被膜層に用いる樹脂としては、可視光の透過性に優れたものが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルサルファイド系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、トリアジン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。基板の両面に樹脂被覆層を設けるとか、前記樹脂被膜層を形成する面及び/又は反対側の面をマット加工処理することにより、散乱効果をより高めることができる。
【0046】
(4)−2ガラス基板
ガラス基板は、前記ガラス被膜層を形成する時の焼結温度で軟化や損傷の起こらないガラス素材を用いる。具体的には、軟化温度が600℃以上の材料が好ましく、650℃以上のものがより好ましく、700℃以上のものが最も好ましい。低軟化点ガラスの使用であれば、焼結温度は250℃以下にすることも可能である。基板は、平板であっても良いし、使用する目的に応じてどのような形であっても良い。基板の両面にガラス被覆層を設けるとか、前記ガラス被膜層を形成する面及び/又は反対側の面をブラスト処理することにより、散乱効果をより高めることができる。
【0047】
[2]光反射防止膜の形成方法
(1)樹脂被膜からなる光反射防止膜の形成
光反射防止膜は、光を散乱させる物質として屈折率が2.42で、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体からなる微細粒子であるか、又はこれら微細粒子の少なくとも2種以上の組合せからなる混合微細粒子を樹脂中に含有する光散乱防止膜である。光散乱防止膜は、
図1に示すように、基板11と、前記基板上に設けた薄膜層12とからなり、前記薄膜層12により前記ダイヤモンド微細粒子等1が固定されたものであるのが好ましい。メジアン径0.02〜2.0μのダイヤモンド微細粒子等は、1〜10nm程度の一次粒子径を有する微細粒子が凝集し、30〜250nm(動的光散乱法)の二次粒子なので、そのままでは可視光を散乱させるには粒径が小さすぎる。従って、この粒子を光散乱体として使用する場合、更にミー散乱が起こる程度の粒径(メジアン径0.02〜2.0μ)に凝集させて使用するのが好ましい。基板全体のより高い散乱効果を有する光反射防止膜とするには、前記樹脂被膜層を形成する面及び/又は反対側の面をマット加工処理することにより、散乱効果を高め、その上基板の両面に樹脂被膜を設けてより高い散乱効果を有する光反射防止膜とすることが好ましい。
【0048】
(1)−1液体組成物
本発明の液体組成物は、前記ダイヤモンド、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体微細粒子と、バインダーとを含有してなる。前記ダイヤモンド、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体微細粒子のメジアン径は、0.02〜2.0μであるのが好ましい。
【0049】
(1)−2バインダー
前記ダイヤモンド微細粒子等は水に良く分散するので、バインダーは、水溶性樹脂又は水分散性樹脂からなるものが好ましく、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、非塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の水溶性樹脂又は水分散物(ラテックス)が挙げられる。
【0050】
水溶性樹脂及び水分散性樹脂は市販品として入手可能である。アクリル系樹脂の水溶液は、ジョンクリル60(ジョンソンポリマー(株)製)等として入手可能である。ウレタン系樹脂の水系分散液は、ハイドランHW171(大日本インキ化学工業(株)製)、ハイドランAP−40N(大日本インキ化学工業(株)製)等として入手可能である。アクリル系樹脂の水系分散液は、ボンコートHY364(大日本インキ化学工業(株)製)、ネオクリルXK−12(DSM社製)等として入手可能である。アクリルシリコン系樹脂の水系分散液は、カネビノールKD4(日本NSC(株)製)等として入手可能である。非塩素化ポリオレフィン系樹脂の水系分散液は、アローベースSB1010(ユニチカ(株)製)等として入手可能である。ポリエステル系樹脂の水系分散液は、バイロナールMD1245(東洋紡績(株)製)等として入手可能である。
【0051】
液体組成物中におけるバインダーの含有量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は被膜の強度の向上の視点からは、ダイヤモンド微細粒子等は合計で、樹脂材料100質量部に対して、2質量部(2重量%)以上使用するのが好ましく、5質量部(5重量%)以上であるのがより好ましい。その上限は特に限定されないが、膜形成の観点からは100質量部(100重量%)以下が好ましい。
【0052】
(1)−3分散剤
液体組成物には必要に応じて分散剤を含有させても良い。分散剤としては、公知の界面活性剤等を使用することができ、分子中に芳香環を有するスルホン酸系分散剤、アクリル系分散剤等が好ましい。分子中に芳香環を有するスルホン酸系分散剤は、界面活性剤の分野で使用されているいわゆる陰イオン性界面活性剤であって、ナフタレンスルホン酸含有化合物、ベンゼンスルホン酸含有化合物、スチレンスルホン酸含有化合物等である。スルホン酸基はナトリウムやカリウム等の金属塩の形態を有していても良い。
【0053】
ナフタレンスルホン酸含有化合物としては、デモールN、デモールNL、デモールRN(以上花王(株)製)、ポリティN−100K(ライオン(株)製)等が好ましい。ベンゼンスルホン酸含有化合物としては、ネオペレックスNo.6、ネオペレックスG−65(以上花王(株)製)等が好ましい。スチレンスルホン酸含有化合物としては、ポリティPS−1900(ライオン(株)製)等が好ましい。
【0054】
アクリル系分散剤は、界面活性剤の分野で使用されている陰イオン性のポリアクリル酸エステル共重合物、ポリα−メチルスチレン−スチレン−アクリル酸共重合物等が好ましい。
【0055】
分散剤は使用しなくてもよいが、液体組成物を安定化させるため少量使用しても良い。分散剤の添加量は、ダイヤモンド微細粒子等の合計に対し100質量%以下であるのが好ましい。分散剤の添加量が100質量%超の場合、塗膜の強度が低下する。分散剤の添加量は、更に好ましくは0.1〜100質量%であり、最も好ましくは0.1〜50質量%である。
【0056】
(1)−4分散媒
前記ダイヤモンド微細粒子等は、液体組成物の分散媒は水、又は水及び有機溶剤の混合液が好ましい。有機溶剤としては、特にアルコール系の溶剤が好ましい。
【0057】
(1)−5その他の添加剤
液体組成物には、必要に応じて、増粘剤、防腐剤、防かび剤、着色剤等を含有させても良い。
【0058】
(1)−6液体組成物の調製
液体組成物は、必要に応じて分散剤をあらかじめ溶解した水(又は水及び有機溶剤の混合液)に、水溶性樹脂又は水分散性樹脂からなるバインダー及びダイヤモンド、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体からなる微細粒子を添加して後述の装置により分散処理を行って調製する。バインダーとダイヤモンド微細粒子等の添加順は特に制限はないが、分散剤はあらかじめ添加した水溶液にダイヤモンド微細粒子等をまず添加して十分に分散処理するのが好ましい。
【0059】
ダイヤモンド微細粒子等を含む液体組成物を分散する装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散装置が使用できる。ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、液体組成物の用途に応じて、金属不純物が悪影響を与える可能性がある場合には、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0060】
金属混入防止処理としては、メディア型分散機を使用する場合は、セラミック製又は樹脂製のアジテーター及びベッセルからなる分散機を使用する方法や、アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いる方法が挙げられる。メディアとしては、ガラスビーズや、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。大きい径のメディアを使用するとダイヤモンド微細粒子等を破壊してしまう可能性があるため、メディア径は1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下が更に好ましい。
【0061】
ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0062】
(2)ガラス被膜からなる光反射防止膜の形成
屈折率が2.42で、粒子メジアン径が0.02〜2.0μのダイヤモンド微細粒子等を含有する光反射防止膜の形成は、(a)前述のダイヤモンド微細粒子等、ガラス質材料粉末、バインダー、及び溶剤を含有する塗料を作製する工程、(b)前記塗料を基板に塗装し塗装膜を形成する工程、及び(c)前記塗装膜を焼結する工程を有する。基板全体のより高い散乱効果を有する光反射防止膜とするには、前記ガラス被膜層を形成する面及び/又は反対側の面をブラスト処理することにより、散乱効果を高め、その上基板の両面にガラス被膜を設けてより散乱効果を高めた光反射防止膜とすることが好ましい。
【0063】
(2)−1塗料を作製する工程
製造した屈折率が2.42で、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体、低軟化点のガラス質材料粉末、バインダー、及び溶剤を混合し、必要に応じて高沸点有機溶剤、着色剤等を添加し、分散処理することによって塗料を作製する。
【0064】
塗料は屈折率が2.42で、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、ダイヤモンド凝集体、ダイヤモンド誘導体等の分散物なので、長期の保存安定性が必ずしも十分ではない。従って、このナノダイヤモンド微細粒子、ガラス質材料粉末、及びバインダー、必要に応じて高沸点有機溶剤、着色剤等を含有するペーストをあらかじめ作製しておき、使用時に前記ペーストに溶剤を添加して分散処理し、塗料を作製するのが好ましい。この場合、ペーストは公知の混練法により作製することができる。
【0065】
低軟化点のガラス質材料粉末は、後述の焼結工程で溶解する、いわゆるガラスフリットを用いる。低軟化点のガラス質材料粉末としては、PbO−B
2O
3系ガラス、PbO−B
2O
3−SiO
2系ガラス、PbO−ZnO−B
2O
3系ガラス、PbO−B
2O
3−SiO
2系ガラス、特開2007−269530に記載の酸化物微細粒子、酸成分及び金属塩化物を含む混合物を熱処理することにより得られる鉛フリー低融点ガラス、特開2007−269531に記載の強リン酸と、金属、金属酸化物及び金属塩の少なくとも1種とを含む混合物を熱処理することにより得られる鉛フリー低融点ガラス等を用いることができる。ガラス質材料粉末のメジアン径は1〜30μm程度のものを用いるのが好ましい。ガラス質材料粉末の粒径分布が広いほど、ガラス被膜層に凹凸が形成され光散乱効果を発揮するので好ましい。
【0066】
ダイヤモンド微細粒子等の合計は、ガラス質材料粉末100質量部に対して、2質量部(2重量%)以上使用するのが好ましく、5質量部(5重量%)以上であるのがより好ましい。その上限は特に限定されないが、100質量部(100重量%)である。
【0067】
バインダーは、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、非塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸セルロース等を用いることができるが、特にアクリル樹脂、ケイ素酸化物高分子、酢酸セルロースが好ましい。バインダーは、ダイヤモンド微細粒子粉末及びガラス質材料粉末の合計100質量部に対して、2質量部(2重量%)以上使用するのが好ましく、5質量部(5重量%)以上であるのがより好ましい。その上限は特に限定されないが100質量部(100重量%)以下が好ましい。
【0068】
溶剤は、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプルピルアルコール等)、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、石油エーテル等を使用するのが好ましい。溶剤の使用量は、高屈折率微細粒子及びガラス質材料粉末の合計100質量部に対して、100〜900質量部使用するのが好ましく、150〜600質量部であるのがより好ましく、200〜400質量部であるのが最も好ましい。
【0069】
高沸点有機溶剤は、特に限定しないが、鉱物油、植物油、合成乾性油等を用いることができ、例えば、テルピン油、プチルカルビトールアセテート、キシレン、ブチルセロソルブ、ターピネオール、セロソルブアセテート、アルキルアルコール、アセテート、プロピオネート、高級アルキルエステル、パインオイル等を使用するのが好ましい。高沸点有機溶剤は、ダイヤモンド微細粒子及びガラス質材料粉末の合計100質量部に対して、1〜20質量部使用するのが好ましく、2〜15質量部であるのがより好ましく、3〜10質量部であるのが最も好ましい。
【0070】
着色剤を添加する場合、無機の顔料を用いるのが好ましく、例えば重クロム酸カリウム、クロム酸ストロンチウム、酸化銅、コバルト、カドミウム系、二酸化チタン等を用いることができる。着色剤の使用量は、目的に応じて適宜決めることができる。
【0071】
分散処理は、顔料分散等に通常用いられている分散装置等を使用して行うことができる。分散装置としては、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
(2)−2塗装工程
作製した塗料の基板への塗装は、公知の方法、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法によって行うことができる。塗装後の塗装膜は、200℃で20分〜2時間乾燥し、前記溶剤を除去する。
【0073】
(2)−3焼結工程
焼結は、500〜650℃で行うのが好ましい。500℃以下では焼結が不十分となるため焼結後のガラス被膜の強度が低くなる。650℃以上では基板の損傷を招く恐れがある。焼結温度は520〜630℃であるのがより好ましい。焼結時間は、5分〜1時間程度であるのが好ましく、10〜30分程度がより好ましい。焼結は、高屈折率微細粒子の酸化を防ぐため不活性ガス中で行っても良い。ガラス質材料粉末の焼結は500℃以上の高い温度で実施するので基板はガラスであることが好ましい。
【0074】
焼結温度及び時間を調節することにより、
図1(a)及び
図1(b)に示すような均一なガラス被膜を形成しても良いし、
図1(c)に示すようにガラス質材料粉末の形状を残した凹凸のあるガラス被膜としてもよい。凹凸のあるガラス被膜の場合、これらダイヤモンド微細粒子の凝集体による散乱効果に加えて、凹凸による散乱効果を有するため、より高い散乱効果を有する光反射防止膜となる。ガラス全体のより高い散乱効果を有する光反射防止膜とするには、ガラス基板の塗装面の反対面をマット調にするか、またはガラス基板の両面をガラス質材料粉末の形状を残した凹凸のあるガラス被膜としてもよい。
【実施例】
【0075】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0076】
作製した試料の評価は以下の方法に従って行った。
(1)メジアン径
HORIBA LB−500で測定したメジアン径(d50)は、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径を示す。
(2)輝度の評価
LED光源に用いて、比較例1の照度が3000ルクスとなるように調整して、実施例1〜4、比較例2の得られた光反射防止膜に照射して、正面輝度を輝度計(トプコン社製、BM5A)で測定した。同様に比較例3の照度が3000ルクスとなるように調整して、実施例5〜6の得られた光反射防止膜に照射して、正面輝度を輝度計(トプコン社製、BM5A)で測定した。
(3)外光の写りこみ
作製した試料の塗布面にプロジェクターで映像を映しながら、蛍光灯の写りこみを官能検査で確認した。
×;明らかに映像に蛍光灯の写りこみがあり、プロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して眩しく確認出来たもの。
○;映像に蛍光灯の写りこみが僅かにあるが、プロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して識別されないもの。
◎;映像に蛍光灯の写りこみが全く見られず、プロジェクターの光源のランプも全く識別されないもの。
(4)視野角の評価
作製した試料の塗布面にプロジェクターで映像を映し、真正面から見た角度を0度として、上下左右のどの角度範囲で、色やコントラストが大きく変わり、暗色に変わって表示が認識できなくなり、鮮明な映像が見られなくなるかを官能検査で観測した。
×;真正面から見た角度を0度として、上下左右の斜め30−45度の角度より大きい角度範囲で、色やコントラストが大きく変わり、暗色に変わって映像が認識できなくなって、鮮明な映像が見られなかった。
○;真正面から見た角度を0度として、160〜170度の角度範囲で、色やコントラストが少し変わり、映像が不鮮明になった。
◎;塗布面にほぼ平行に映像を見ても鮮明な映像が認識出来た。視野角の問題ないもの。
(5)色滲み
作製した試料の塗布面にプロジェクターで映像を映し、真正面から観測して、色滲みの有無を官能検査で観測した。
×;明らかに映像に色滲みが観測されるもの。
○;微妙ではあるが、弱い色滲み(色収差)が観測されるもの。
◎;全く色滲みが観測されないもの。
【0077】
実施例1
(1)ダイヤモンド素原料(グラファイト−ダイヤモンド粒子)の作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)を60/40の比で含む0.65kgの爆発物を3m
3の爆発チャンバー内で爆発させて生成するダイヤモンド素原料を保存するための雰囲気を形成した後、同様の条件で2回目の爆発を起こしダイヤモンド素原料を合成した。爆発生成物が膨張し熱平衡に達した後、15mmの断面を有する超音速ラバルノズルを通して35秒間ガス混合物をチャンバーより流出させた。チャンバー壁との熱交換及びガスにより行われた仕事(断熱膨張及び気化)のため、生成物の冷却速度は280℃/分であった。サイクロンで捕獲した生成物(黒色の粉末、ダイヤモンド素原料)の比重は2.55g/cm
3、メジアン径(動的光散乱法)は250nmであった。このダイヤモンド素原料は比重から計算して、76容積%のグラファイト系炭素と24容積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
【0078】
このダイヤモンド素原料を60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、2時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、ダイヤモンド素原料からグラファイトが相当部分除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、更にデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、グラファイト‐ダイヤモンドの粉末を得た。デカンテーションを繰り返すことにより、粒径の小さなダイヤモンド粒子は除去され、比較的粗大な凝集粒子が回収された。この凝集粒子の比重は3.39g/cm
3であり、メジアン径は2.0μm(動的光散乱法)であった。比重から計算して、9容積%のグラファイト系炭素と91容積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
【0079】
(2)光反射防止膜の作製
硼珪酸鉛系ガラスフリット(78質量%のPbO、10質量%のSiO
2、12質量%のB
2O
3からなる低融点ガラス)100質量部に対して、100質量部の前記凝集粒子と、10質量部の酢酸セルロース、10質量部のパインオイルを混合及び混練し、ペーストを作製した。このペ
ースト100質量部に対して、20質量部のイソプロピルアルコールを混合し、ディゾルバーで分散することにより、塗料を作製した。
【0080】
この塗料を3mm暑さのガラス基板上にディップ法により塗装し、200℃で15分間乾燥し、イソプロピルアルコールを除去した。乾燥後の塗装物を580℃で20分間焼結し、2μの厚さの光反射防止膜を作製した。この時のナノダイヤモンド含有量は49質量%であった。
【0081】
作製した実施例1の試料の輝度は、比較例1の1.37倍あり、外光の写り込みは全く見られず、視視野角が広く、画面のほぼ真横からでもプロジェクターの鮮明な映像を見ることができた。官能検査であるが、比較例1のアモルファスシリカ粒子塗布面の映像に較べて、実施例1のダイヤモンド粒子塗布面の映像の鮮鋭性が格段に優れ、色滲みがなかった。またプロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して全く識別されなかった。
【0082】
実施例2
(1)精製ダイヤモンド粒子の作製
実施例1で作製したグラファイト−ダイヤモンドの凝集粒子を、
図2に示す装置を用いて超臨界状態で酸化処理した。この装置は、ハステロイ(登録商標)製オートクレーブ31(容量10ml)と、これを加熱する炉32とを具備し、オートクレーブ31には、内容物の温度を検出するための温度計36と、管40とが挿入されている。管40は三方継手41を介して、一方はオートクレーブ31内の圧力を制御する背圧制御器33に接続されており、もう一方は超純水タンク38に接続されている。背圧制御器33は、背圧制御弁と、圧力センサとを具備し、三方継手41と背圧制御器33との間には、冷却コイル34が設けられており、背圧制御器33の後段には廃液容器35が設けられている。三方継手41と超純水タンク38との間には、超純水を送液するポンプ39が設けられている。背圧制御器33及び温度計36にはコンピュータ37が接続されており、背圧制御器33及び温度計36でそれぞれ検出した、オートクレーブ31内の圧力及び温度をコンピュータ37により記録することができる。
【0083】
2.1質量%の前記グラファイト−ダイヤモンドの凝集粒子の水分散液と、13.4Nの硝酸(61質量%、比重1.38、和光純薬工業株式会社製)とを体積比9:1で混合した反応液(7mL)を、前記オートクレーブ31に入れ、管40及び温度計36を取り付け、炉32内に設置した。オートクレーブ31内の圧力が30MPaに到達するまで、タンク38から超純水を0.5mL/分の流量で送液した後、超純水の流量を0.1mL/分に下げ、昇温を開始した。三方継手41から排出されたグラファイト等の不純物を含む水がオートクレーブ31に逆流するのを防止するために、超純水の流量を0.1mL/分に保持しながら、オートクレーブ31内を30MPaの圧力、及び374〜500℃の温度に3.5時間保持することにより、前記グラファイト−ダイヤモンドの凝集粒子を硝酸で超臨界処理した。超純水の流量を0.1mL/分に保持したまま室温まで冷却した後、大気圧まで減圧し、精製されたナノダイヤモンドを含む液を回収した。
【0084】
精製されたナノダイヤモンドを含む液を、自然沈降させデカンテーションにより3回水洗し、更に遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、ダイヤモンド粒子を得た。デカンテーションを繰り返すことにより、粒径の小さなダイヤモンド粒子は除去され、比較的粗大な凝集粒子が回収された。得られたダイヤモンドの凝集粒子は、メジアン径0.75μm、比重3.46g/cm
3であった。この比重から算出した組成は、ダイヤモンド97体積%及びグラファイト3体積%であった。
【0085】
(2)光反射防止膜の作製
硼珪酸鉛系ガラスフリット(78質量%のPbO、10質量%のSiO
2、12質量%のB
2O
3からなる低融点ガラス)100質量部に対して、33質量部の前記ダイヤモンドの凝集粒子と、10質量部の酢酸セルロース、10質量部のパインオイルを混合及び混練し、ペーストを作製した。このペースト100質量部に対して、20質量部のエチルアルコールを混合し、ディゾルバーで分散することにより、塗料を作製した。
【0086】
この塗料を暑さ3mmのガラス基板上にディップ法により塗装し、200℃で15分間乾燥し、エチルアルコールを除去した。乾燥後の塗装物を580℃で20分間焼結し、2μ厚さの光反射防止膜を作製した。この時のナノダイヤモンド含有量は25質量%であった。
【0087】
作製した実施例2の試料の輝度は、比較例1の1.30倍あり、外光の写り込みは全く見られず、視視野角が広く、実施例1と同様に画面のほぼ真横からでもプロジェクターの明るく、鮮明な映像を見ることができた。官能検査であるが、比較例1のアモルファスシリカ粒子塗布面の映像に較べて、実施例1と同様に、実施例2のダイヤモンド粒子塗布面の映像の鮮鋭性が格段に優れ、色滲みがなかった。またプロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して全く識別されなかった。
【0088】
実施例3
(1)精製ダイヤモンド粒子の作製
実施例2で作製したメジアン径0.75μm、比重3.46g/cm
3のダイヤモンドの凝集粒子を使用した。この比重から算出した組成は、ダイヤモンド97体積%及びグラファイト3体積%であった。
【0089】
(2)光反射防止膜の作製
実施例2で得られたダイヤモンドの凝集粒子を用いて、実施例1の光反射防止膜の作製のうち、その凝集粒子を6質量部添加した以外、同様にして、3mm厚さのガラスに厚さ2μに塗布して、光反射防止膜を作製した。この時のナノダイヤモンド含有量は5質量%であった。
【0090】
作製した実施例3の試料の輝度は、比較例1の1.23倍あり、外光の写り込みも全く見られず、視視野角が広く、実施例1と同様に画面のほぼ真横からでもプロジェクターの明るく、鮮明な映像を見ることができた。また官能検査であるが、比較例1のアモルファスシリカ粒子塗布面の映像に較べて、実施例1,2と同様に、実施例3のダイヤモンド粒子塗布面の映像の鮮鋭性が格段に優れ、色滲みがなかった。またプロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して全く識別されなかった。
【0091】
実施例4
(1)精製ダイヤモンド粒子の作製
実施例1で得られたグラファイト−ダイヤモンドの凝集粒子をビーズミルにより分散処理した。ビーズミルによる分散は、アシザワファインテック株式会社製スターミルLMZを用いて行った。243gの前記グラファイト−ダイヤモンドの凝集粒子を水/トリエチレングリコール(50:50の容量比)に分散して5質量%の水分散液を調製し、ディゾルバーで予備分散した。0.1mm径のジルコニアビーズを0.15Lのベッセルに充填し、10m/sの周速で回転子を回転させながら、前記グラファイト−ダイヤモンドの凝集粒子の分散液を0.12L/minで供給し、連続的に分散処理を行った。約2.0時間・分散処理した後のグラファイト−ダイヤモンドの凝集粒子はメジアン径25nmであった。
【0092】
ビーズミルによって分散処理したグラファイト−ダイヤモンドの凝集粒子の2.0質量%水分散液30mLを、オートクレーブ(容量50mL、SUS316製)に入れ、酸素導入管、温度計及び調圧弁を有する蓋で密封し、炉内に設置した。オートクレーブ内の空気を酸素で置換した後、オートクレーブ内が1.0MPa(ゲージ圧)の圧力となるように、室温で酸素を導入した。オートクレーブを平均昇温速度6.5℃/分で昇温し、400±5℃の温度及び24.8±1MPaの圧力で1時間保持した。オートクレーブを室温まで冷却した後、大気圧まで減圧し、精製されたナノダイヤモンドを含む液を回収した。この液は、上澄みと薄い灰色を呈する精製ナノダイヤモンドの沈殿とに分離していた。
【0093】
精製されたナノダイヤモンドを含む液を、自然沈降させデカンテーションにより3回水洗し、更に遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、ダイヤモンド粒子を得た。デカンテーションを繰り返すことにより、粒径の大きなダイヤモンド粒子は除去され、比較的小さな粒子が回収された。得られたダイヤモンドの粒子は、メジアン径20nm(0.02μ)、比重3.48g/cm
3であった。この比重から算出した組成は、ダイヤモンド98体積%及びグラファイト2体積%であった。
【0094】
(2)光反射防止膜の作製
得られたダイヤモンドの凝集粒子を用いて、その凝集粒子を2.2質量部添加した以外実施例1と同様にして、3mm厚さのガラスに厚さ2μの光反射防止膜を作製した。この時のナノダイヤモンド含有量は2質量%であった。
【0095】
作製した実施例4の試料の輝度は、比較例2の1.15倍あるが、映像に蛍光灯の写りこみが僅かにみられた。視野角、色滲み(色収差)は実用上問題ない範囲であるが、実施例1〜3よりは劣っていた。比較例2のアモルファスシリカ粒子塗布面の映像に較べて、実施例1,2、3と同様に、実施例4のダイヤモンド粒子塗布面の映像の鮮鋭性は優れていた。プロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して少し識別された。
【0096】
比較例1
(1)添加粒子と光反射防止膜の作製
ナノダイヤモンド凝集粒子を1.1質量部添加した以外、実施例4と同じようにして光反射防止膜を作製した。このときのナノダイヤモンド含有量は1質量%であった。
【0097】
作製した比較例1の試料の輝度は、比較例2の1.04倍あるが、映像に外光(蛍光灯)の写り込みがはっきりと見られた。視野角、色滲み(色収差)は実用上問題ない範囲であるが、実施例1〜3よりは劣っていた。またプロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して眩しく識別され、使用に耐えなかった。
【0098】
比較例2
(1)添加粒子と光反射防止膜の作製
ダイヤモンド凝集粒子を日本アエロジル(株)製、疎水性フュームドシリカ(製品名:R805、平均粒径:20nm)に変えた以外は、実施例4の光反射防止膜の作製方法(実施例1の光反射防止膜の作製法と同じ)で光反射防止膜を作製した。この時の疎水性フュームドシリカの含有量は2質量%であった。
【0099】
作製した比較例2の試料の輝度は、3000ルーメンに調整して比較した。映像に外光(蛍光灯)の写り込みがはっきりと見られた。視野角も真正面から見た角度を0度として、上下左右の斜め30−45度の角度より大きい角度範囲で、色やコントラストが大きく変わり、暗色に変わって映像が認識できなくなって、鮮明な映像が見られず、色滲み(色収差)が観測された。またプロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して眩しく識別され、使用に耐えなかった。
【0100】
<評価結果>
表1に実施例1〜4、比較例1〜2の添加粉末の粒径(メジアン径)、含有量(質量%)、輝度(ルクス)、外光の写り込み、視野角、色滲み、総合評価結果を示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1から明らかなように、ダイヤモンド微粒子は、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、2.0重量%以上含有したものが輝度(ルクス)、外光の写り込み、視野角、色滲みの観点から優れた光反射防止膜であることが理解される。
【0103】
実施例5
(1)光反射防止膜の作製
熱硬化シリコーン中に実施例1で得たメジアン径2.0μのナノダイヤモンドを50重量%添加し、良く分散して、マット加工した50μPETフイルムのマット加工面に2μ厚に塗布し、熱硬化して光反射防止膜の作製した。
【0104】
作製した実施例5の試料の輝度は、比較例3の1.35倍あり、外光の写り込みは全く見られず、視視野角が広く、画面のほぼ真横からでもプロジェクターの鮮明な映像を見ることができた。官能検査であるが、比較例3の疎水性フュームドシリカ粒子塗布面の映像に較べて、実施例5のダイヤモンド粒子塗布面の映像の鮮鋭性が格段に優れ、色滲みがなかった。またプロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して全く識別されなかった。
【0105】
実施例6
(1)光反射防止膜の作製
熱硬化シリコーン中に実施例4で得たメジアン径0.02μのナノダイヤモンドを2重量%添加し、良く分散して、50μTACフイルムに2μ厚に塗布し、熱硬化して光反射防止膜の作製した。
【0106】
作製した実施例6の試料の輝度は、比較例3の1.12倍あり、映像に蛍光灯の写りこみが僅かにみられた。視野角、色滲み(色収差)は実用上問題ない範囲であるが、実施例1〜3、5よりは劣っていた。比較例3の疎水性フュームドシリカ粒子塗布面の映像に較べて、実施例6のダイヤモンド粒子塗布面の映像の鮮鋭性は優れていた。プロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して少し識別された。
【0107】
比較例3
(1)光反射防止膜の作製
熱硬化シリコーン中に比較例2で使用したメジアン径0.02μの疎水性フュームドシリカ粒子を2重量%添加し、良く分散して、50μTACフイルムに2μ厚に塗布し、熱硬化して光反射防止膜の作製した。
【0108】
作製した比較例3の試料の輝度は、3000ルーメンに調整して比較した。映像に外光(蛍光灯)の写り込みがはっきりと見られた。視野角も真正面から見た角度を0度として上下左右の斜め30−45度の角度より大きい角度範囲で、色やコントラストが大きく変わり、暗色に変わって映像が認識できなくなって、鮮明な映像が見られず、色滲み(色収差)が観測された。またプロジェクターの光源ランプが作製した試料を通して眩しく識別され、使用に耐えなかった。
【0109】
<評価結果>
表2に実施例5〜6、比較例3の添加粉末の粒径(メジアン径)、含有量(質量%)、輝度(ルクス)、外光の写り込み、視野角、色滲み、総合評価結果を示す。
【0110】
【表2】
【0111】
表2から明らかなように、ダイヤモンド微粒子は、メジアン径の粒子径が0.02〜2.0μのダイヤモンド粒子、2.0重量%以上含有したものが輝度(ルクス)、外光の写り込み、視野角、色滲みの観点から優れた光反射防止膜であることが理解される。