特開2017-83955(P2017-83955A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岡崎 誠の特許一覧

特開2017-83955データ処理装置およびコンピュータプログラム
<>
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000003
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000004
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000005
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000006
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000007
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000008
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000009
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000010
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000011
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000012
  • 特開2017083955-データ処理装置およびコンピュータプログラム 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-83955(P2017-83955A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】データ処理装置およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20170414BHJP
【FI】
   G06Q10/00 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-209147(P2015-209147)
(22)【出願日】2015年10月23日
(71)【出願人】
【識別番号】715008632
【氏名又は名称】岡崎 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120293
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 智子
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 誠
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】 ITの導入や運用に関する評価について、他社との比較を可視化する技術を提供する。
【解決手段】 情報技術に基づく各種データを複数のクライアント企業のサーバから受信するデータ受信手段と、 そのデータ受信手段が受信した各種データを用いて、相対的な評価を出力するのに適した評価指標およびその評価指標に基づいた評価値を演算するための評価指標演算手段と、 その評価指標演算手段が算出した相対評価をクライアント企業ごとに出力する相対評価出力手段と、を備える。 その相対評価出力手段は、クライアント企業ごとに異なる相対評価データへ加工して出力する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報技術に基づく各種データを複数のクライアント企業のサーバから受信するデータ受信手段と、
そのデータ受信手段が受信した各種データを用いて、相対的な評価を出力するのに適した評価指標およびその評価指標に基づいた評価値を演算するための評価指標演算手段と、
その評価指標演算手段が算出した相対評価をクライアント企業ごとに出力する相対評価出力手段と、を備え、
その相対評価出力手段は、クライアント企業ごとに異なる相対評価データへ加工して出力することとしたデータ処理装置。
【請求項2】
前記の相対評価出力手段が出力する前記の相対評価データは、出力先であるクライアント企業以外のクライアント企業に係る指標値を匿名化することとした請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記のデータ受信手段にて受信する前記の各種データが前記の相対評価データへ反映されることに基づいて、他のクライアント企業へ自らに係る前記の各種データが含まれることに対して許諾の意思表示を求めるための相対評価データ許諾送信手段と、
前記の許諾の意思表示を受信するための許諾受信手段と、を備えることとした請求項1または請求項2のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項4】
情報技術に基づく各種データを複数のクライアント企業のサーバから受信するデータ受信手順と、
そのデータ受信手順にて受信した各種データを用いて、相対的な評価を出力するのに適した評価指標およびその評価指標に基づいた評価値を演算するための評価指標演算手順と、
その評価指標演算手順にて算出した相対評価を、クライアント企業ごとに異なる相対評価データへ加工してクライアント企業ごとに出力する相対評価出力手順と、をデータ処理装置に実行させることとしたコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記の相対評価出力手順にて出力する前記の相対評価データは、出力先であるクライアント企業以外のクライアント企業に係る指標値を匿名化することとした請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記のデータ受信手順にて受信する前記の各種データが前記の相対評価データへ反映されることに基づいて、他のクライアント企業へ自らに係る前記の各種データが含まれることに対して許諾の意思表示を求めるための相対評価データ許諾送信手順と、
前記の許諾の意思表示を受信するための許諾受信手順と、をデータ処理装置に実行させることとした請求項4または請求項5のいずれかに記載のコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業経営や組織運営において用いられているIT(インフォメーション・テクノロジー)によって蓄積されたデータによって、その組織に対する相対的な評価を提供するための情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
投資に見合うサービスを享受しているか否か、を検証するという作業は、企業経営(または組織運営)において、さまざまなシーンで実行されている。投資に見合うサービスが享受できていないのであれば、資金の無駄、労働の無駄、設備の無駄が発生し、経営資源を圧迫するからである。
【0003】
さて、生産設備など物理的なハードウェアが投資対象であれば、その生産設備が投資に見合うかどうか検証するのは、比較的容易である。
物理的なハードウェアと比較すると容易とは言えないのが、IT(インフォメーション・テクノロジー)に対する投資と、それに見合うサービスが享受できているか否かの検証である。
更に、企業自らがITの導入や運用を実行するのではなく、ITを専門とする外部業者(ベンダー)へ委託するという場合がほとんどである(委託した企業を「クライアント企業」とする)。そのため、導入時のコストのみならず、運用が継続する場合には、定常(または非定常)のコスト、IT担当として従事する社員のコストなどが発生することとなる。
【0004】
クライアント企業において、IT投資とその投資に見合うサービスが享受できているか否かを検証する手法の代表例として、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)がある。
「ITIL」とは、英国政府が専門家チームを組織し、IT利用の先進企業におけるIT運用、ノウハウを調査し、これを体系化し、ガイドラインとしてまとめたものである。
ITILのガイドラインは、数冊の書籍にまとめられているが、中心となっているのは、日常的な運用管理作業をテーマとした「サービスサポート」と、中長期的な運用管理計画の策定をテーマとした「サービスデリバリ」である。
【0005】
ITが(ベンダーや社員を介して)もたらしているサービスが、IT運用における障害やクライアント企業からのリクエストを(ベンダーまたはクライアント企業が)一つ一つ管理しているとする。そして、そのサービスとは、それぞれの根本原因を見いだし、場合によっては設備の変更や増強を含む措置を施し、ユーザへフィードバックするという一連の作業であるとする。
前述の「サービスサポート」では、前記の一連の作業を確実に、組織的に、しかも効率的に遂行するための手順や手法が紹介されている。
サービスサポートのプロセスは、インシデント管理、問題管理、変更管理、リリース管理、構成管理に大別されている。そして、これらの管理を連携させた一連の活動こそがサービスサポートであるとして、望ましい組織体制や対処手順を説明している。
【0006】
サービスデリバリでは、「サービスレベル管理」という言葉を定義している。そして、各組織の求めるサービスレベルを達成するために可用性管理、キャパシティ管理、IT財務管理、ITサービス継続性管理について、それぞれ説明されている。
【0007】
ITILにおける前記のインシデント管理からITサービス継続性管理までを実施するためには、それぞれの管理におけるアクティビティを記録し、その記録内容を分析し、氷霧プロセスの改善指標であるPDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価検証、Act=改善)のサイクルを回す、という必要が(クライアント企業において)ある。
一方、ITそのものは、それを採用する組織(クライアント企業)に合わせたカスタマイズが可能であり、カスタマイズした場合には、自社の運用に合わせた項目の設定、ワークフロー定義などが実行される。
【0008】
「サービスレベル管理」の指標としては、代表的には以下の「KPI」または「SLA」が用いられる。
KPI=Key Performance Indicate ;目標の値を定めること、およびその目標値に向かって実行することである。たとえば、月間の障害発生件数が120件だったら、それを100件まで減らす、といった目標値(またはその目標値に対する行動すること)がKPIとなる。ただし、そのKPIが20件となるための方策は、別途考え、運用しなければならない。
目標値を達成できれば、障害に対応する担当者の人件費が削減できる、ということになる。
【0009】
SLA=Service Level Agreement ;システムの運用によってある目標値を定め、その目標値に達したらインセンティブを頂戴し、達しなかったらペナルティを支払う、といった約束事(契約)である。ベンダーがクライアント企業に対するアウトソーシングによってシステムを運用する際に用いられる。たとえば、月間の障害発生件数を100件以内に抑える、という場合、100件に達しなければ、ベンダーがクライアント企業に対してインセンティブの支払いを、100件を超えたらクライアント企業がベンダーにペナルティの支払いを、それぞれ要求できる。
【0010】
特許文献1には、ITILをベースとした仮想マシン運用の課題を抽出し、この抽出した課題の解決を支援することができる運用効率化支援システムが開示されている。
【0011】
特許文献2には、IT運用内容に合わせてテンプレートを修正することによってITサービス運用の自動化をサポートすることができる運用自動化サポートシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−108066号公報
【特許文献2】特開2012−248085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(ベンダーとクライアント企業との力関係の問題)
クライアント企業にとっては、KPIやSLAを用いての目標達成が妥当なのかどうか、という判断が難しい。
ベンダーにおいては、多数のクライアント企業に対する業務による経験があれば、その経験との比較による相対的な比較くらいはできるものの、客観化することは困難である。
それでも、ベンダーのほうがクライアント企業よりも経験、知見があるため、KPIやSLAの設定においてはベンダー主導で決定されることが多い。そのため、クライアント企業に納得感が不足する事態がしばしば発生する。
【0014】
(ゴール不存在の問題)
ITILには、「継続改善」という項目が存在する。この継続改善とは、クライアント企業が事業活動を継続する限り、クライアント企業の顧客に対する商品やサービスについての質の向上や価格の低減(改善)を継続する(すべきである)、という趣旨である。つまり、ITILは、最終到達点(ゴール)を持っていない。
しかし、事業活動において改善を継続し続ける、ということは、現実的ではない(少なくとも、事業の現場にいる担当者や事業の経営者は、実感している)。いつ終了するのかが不明では、日常の作業が単調化する一方、目に見えた成果を実感できないため、担当者のモチベーションは下がってしまうからである。ここに、ITILと現実の事業活動とのギャップが存在するのである。
そこで、クライアント企業としては、ITILからは離れて自前のゴールを定めなければ、長期間の運用は現実的ではない。しかし、どのようなゴールを定めれば合理的なのか、クライアント企業の経営者が判断できない。
【0015】
(適正なバランスが不明であるという問題)
たとえば、あるクライアント企業がその顧客に対して、あるサービスを提供しているとする。そのクライアント企業にとって、そのサービスのレベルを向上させること(効果性)と、そのサービスの提供に際してのコストを削減すること(効率性)の両方を達成することが理想的である。しかし、こうした課題は二律背反であることが多く、効果性と効率性とを同時に向上させることが困難であるとのが一般的である。
そこで、効果性と効率性とをどのようにバランスさせればよいのか、が課題となる。ところが、そのバランスについての適正さは客観化されておらず、不明である、という問題が存在する(図11参照)。
【0016】
(説明責任が果たせないという問題)
ITの導入によって、どのような効果があったのか(改善がなされたのか)、という説明を求められる場面があったとする。その場合、ITの導入や投資に関する責任者が経営者に対して、あるいは経営者が株主に対して、論理的で説得力のある説明ができない、という問題がある。管理が適正にされているか、という説明を求められる場合も同様である(図10参照)。
ITの導入によって、導入前と導入後をある指標によって数値化することはできる。しかし、その数値が世間的に妥当な数値なのか、ということは、誰にも判断できないのである。その結果、たとえば、到達不可能な目標が設定されてしまって現場のモチベーションが低下したり、到達が極めて容易な目標が設定されてしまって現場の士気が上がらなかったり、という事態が生じてしまう。
【0017】
(IT運用において強い部分や弱い部分を把握できないという問題)
システムの運用は、一般的に、ヘルプデスク(HD)、ネットワーク(NW)、パーソナルコンピュータやスマートフォンやプリンタなどの端末類(EUC)、サーバ(SV)、メインフレーム(MF)、アプリケーションの保守(AMO)などに分類できる。その分類において、どこが弱いのか、どこが強いのか、ということを、そのシステムを採用した組織が自覚できない、という問題がある。
【0018】
本発明が解決すべき課題は、ITの導入や運用に関して、ベンダーとクライアント企業との力関係をより良いものとし、ITにおけるゴールをより明確とし、二律背反の課題の解決についてバランスを取りやすくし、説明責任をより果たしやすくし、強みや弱みを自覚しやすくする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前述した課題を解決するため、本願では、複数の組織から収集したデータに基づいて相対的な評価を出力するデータ処理装置およびコンピュータプログラムに係る発明を提供する。
また、この発明の提供と同時に、「ゴール不存在」という前述の問題に対しては、指標を設定して仮のゴールを定めるとともにそのゴールに到達した場合には、そのゴールとした指標における所定レベルを維持することも可能となる。
【0020】
(第一の発明)
第一の発明は、
情報技術に基づく各種データを複数のクライアント企業のサーバから受信するデータ受信手段と、
そのデータ受信手段が受信した各種データを用いて、相対的な評価を出力するのに適した評価指標およびその評価指標に基づいた評価値を演算するための評価指標演算手段と、
その評価指標演算手段が算出した相対評価をクライアント企業ごとに出力する相対評価出力手段と、を備え、
その相対評価出力手段は、クライアント企業ごとに異なる相対評価データへ加工して出力することとしたデータ処理装置に係る。
【0021】
(用語説明)
「クライアント企業」とは、法人格を備えた企業の他、法人格の有無に関わらない組織も含む。
「情報技術に基づく各種データ」とは、代表的には、ITILの各ツールに基づいてクライアント企業が収集蓄積したデータである。具体的には、以下の「評価指標」を演算するのに必要なデータである。より具体的には、たとえば、投資効率を算出するのに必要なデータは、投資金額およびその投資金額を投入した期間、その投資金額によってもたらされたと考えられる削減経費、売り上げ増加額、インシデント件数、MTBF、バックログなどとなる。
【0022】
「相対的な評価を出力するのに適した評価指標」とは、たとえば、以下のようなものがある。
第一に、投資効率またはコストの削減効果をひとつの指標とし、商品の品質やサービスレベルの向上をもうひとつの指標とし、効果性および効率性を二次元の座標軸を設定し、プロットしていくというものである(図4参照)。
第二に、管理が適切になされているかという管理性をひとつの指標とし、改善が確実に進んでいるかという改善性をもうひとつの指標とし、管理性および改善性を二次元の座標軸を設定し、プロットしていくというものである(図5参照)。
第三に、三次元の座標軸を設定し、更にその中でバブルの大小による表現を使って4つの評価指標を一見して把握できるようにする、といったものもある(図10参照)。
【0023】
「クライアント企業ごとに異なる相対評価データ」とは、他の請求項で限定する場合の他、クライアント企業に係る評価値を強調する、中心に据える、といった見やすさ、分かりやすさの点から加工することを含む。たとえば、管理性および改善性を二次元の座標軸において、対象となるクライアント企業の現状と3年後の目標とを一見して把握できるように加工する、といった相対評価データを出力することとしても良い(図6参照)。
【0024】
(作用)
情報技術に基づく各種データを複数のクライアント企業のサーバから、データ受信手段が受信する。
そのデータ受信手段が受信した各種データを用いて、相対的な評価を出力するのに適した評価指標およびその評価指標に基づいた評価値を、評価指標演算手段が演算する。
その評価指標演算手段が算出した相対評価を、相対評価出力手段がクライアント企業ごとに異なる相対評価データへ加工して出力する。
【0025】
クライアント企業としては、IT投資とその投資に見合うサービスが享受できているか、というサービスレベル管理において、他社との比較という相対的な見解を入手することができる。そのため、IT投資によって設備やシステムの構築を担当したベンダーや担当社員(役職員)に対して、妥当か否かの判断材料を手に入れることができる。
クライアント企業としては、他社との比較という相対的な見解を入手することによって、どのような到達点を定めれば妥当なのか、という点についても判断材料を入手できることとなる。また、適正なバランスがどの辺りなのかという判断材料、説明責任を果たす上での客観的な指標も、入手することができる。加えて、強みや弱みを自覚しやすくなる。
更に、継続的な評価を例えば一年ごとに実行することで、クライアント企業の評価指標を時系列的に捉えることも可能である。
【0026】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記の相対評価出力手段が出力する前記の相対評価データは、出力先であるクライアント企業以外のクライアント企業に係る指標値を匿名化することとしたものである(図2参照)。
ここで、「指標値の匿名化」とは、演算された指標値に幅を持たせたり(図4参照)、隠したり、ダミーとして出力したりすることである。
【0027】
(作用)
クライアント企業としては、入手する相対評価データにおいて自らの相対的なポジションを把握することができる一方で、他のクライアント企業における相対評価データには自らのポジションが明確化されない。そのため、自らは他のクライアント企業に基づく情報を得つつ、ライバル企業への情報流出を抑制できることを期待できる。
【0028】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成することができる。
すなわち、前記のデータ受信手段にて受信する前記の各種データが前記の相対評価データへ反映されることに基づいて、他のクライアント企業へ自らに係る前記の各種データが含まれることに対して許諾の意思表示を求めるための相対評価データ許諾送信手段と、前記の許諾の意思表示を受信するための許諾受信手段と、を備えることとしてもよい(図1参照)。
【0029】
なお、許諾受信手段が受信した許諾の意思表示については、契約データベースなどの記憶手段において、蓄積保存することが一般的である。その契約データベースは、前記の相対評価出力手段における出力形式などにも影響を与えるデータを蓄積することとなる(図1参照)。
【0030】
(作用)
前記のデータ受信手段にて受信する前記の各種データが前記の相対評価データへ反映されることに基づいて、他のクライアント企業へ自らに係る前記の各種データが含まれることについて、相対評価データ許諾送信手段が許諾の意思表示を求める送信を実行する。その意思表示の求めに対し、許諾受信手段が、許諾の意思表示を受信する。
許諾の意思表示に基づき、クライアント企業は、自らに係る各種データを提供することとによって、他のクライアント企業との相対評価を得られることを納得、確認したこととなる。
【0031】
(第二の発明)
第二の発明は、第一の発明に掛かるデータ処理装置を制御するコンピュータプログラムに係る。
すなわち、情報技術に基づく各種データを複数のクライアント企業のサーバから受信するデータ受信手順と、
そのデータ受信手順にて受信した各種データを用いて、相対的な評価を出力するのに適した評価指標およびその評価指標に基づいた評価値を演算するための評価指標演算手順と、
その評価指標演算手順にて算出した相対評価を、クライアント企業ごとに異なる相対評価データへ加工してクライアント企業ごとに出力する相対評価出力手順と、を実行させることとしたコンピュータプログラムである。
【0032】
第二の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の相対評価出力手順にて出力する前記の相対評価データは、出力先であるクライアント企業以外のクライアント企業に係る指標値を匿名化することとしてもよい。
【0033】
第二の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記のデータ受信手順にて受信する前記の各種データが前記の相対評価データへ反映されることに基づいて、他のクライアント企業へ自らに係る前記の各種データが含まれることに対して許諾の意思表示を求めるための相対評価データ許諾送信手順と、前記の許諾の意思表示を受信するための許諾受信手順と、をデータ処理装置に実行させることとしてもよい。
【0034】
第二発明に係るコンピュータプログラムを、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−R、MO(光磁気ディスク)、DVD−R、フラッシュメモリ、SSD、などである。
また、この発明に係るプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他の端末手段へ伝送することも可能である。
【発明の効果】
【0035】
第一の発明によれば、複数の組織から収集したデータに基づいて相対的な評価を出力するデータ処理装置を提供することができた。
第二の発明によれば、複数の組織から収集したデータに基づいて相対的な評価を出力するデータ処理装置を制御するコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本願発明における第一の実施形態の概要を示す概念図である。
図2】本願発明における第二の実施形態の概要を示す概念図である。
図3】本願発明における第一および第二の実施形態を実行する手順を示す概念図である。
図4】バランス問題とその解決手段の一例を概念的に示す図である。
図5】ゴール不存在問題とその第一の解決手段の概念を示す図である。
図6】ゴール不存在問題とその第二の解決手段の概念を示す図である。
図7】強みや弱みを可視化する解決手段を示す概念図である。
図8】コストを可視化する解決手段を示す概念図である。
図9】システム部門においてバックログがどのように変化しているかを示すグラフである。
図10】三次元の評価軸にて4つの指標を示した例である。
図11】従来のITに対する評価における問題点を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。ここで使用する図面は、図1から図10である。
【0038】
図1
図1および図2では、クライアントA,クライアントB,・・・といった複数のクライアント企業と、その複数のクライアント企業からの委託を受けて相対評価データを提供するデータ分析会社との関係を示している。
データ分析会社は、前記の相対評価データを出力するためのハードウェアとして、「アナリシスサーバ」を備える。クライアントA,クライアントBは、それぞれのサーバとなる。
【0039】
アナリシスサーバは、複数のクライアントから、ITILツールに基づいた各種データを用いて、各クライアントに対して、さまざまな指標に基づいて相対的なポジションなどが把握できる相対評価データを出力するサービスを提供する。
そのサービス提供における相対評価データへ、他のクライアント企業へ自らに係る前記の各種データが含まれることに対し、許諾の意思表示を求める。その意思表示の求めを実行するのが相対評価データ許諾送信手段である。
【0040】
各クライアントに係るサーバでは、前記の許諾の意思表示の求めを、相対評価データ許諾受信手段にて受信する。そして、許諾の意思表示を許諾送信手段にて送信する。
各クライアントのから許諾送信手段から送信された許諾の意思表示については、アナリシスサーバの許諾受信手段が受信し、契約データとして契約データベースへ蓄積する。
【0041】
前記の許諾をしたクライアントは、ITILツールに基づいて蓄積した各種データ(クライアントごとに各種データA,B,・・・となる)をアナリシスサーバのデータ受信手段へ送信する。
アナリシスサーバにおいては、受信した各種データを、評価指標演算手段にて演算し、相対評価出力手段へ送る。 なお、実務的には、評価指標演算手段での演算には、データ内容の打ち合わせ、分析の可否の判断、前処理などが必要となる(図3参照)。
相対評価出力手段は、各クライアントに合わせた相対評価データ(A,B,・・・)へ加工し、送信する。
【0042】
各クライアントへ送信された相対評価データ(A,B,・・・)は、相対評価受信手段が受信する。ここにおいて受信する相対評価データは、図4などの出力を得る。
【0043】
図2
図2は、第二の実施形態を示す。図1に示した第一の実施形態と異なり、相対評価データ許諾送信手段、許諾受信手段を備えていない。
アナリシスサーバの運営者と各クライアントとは、別途の契約を締結しているとし、その契約内容は契約データベースへ蓄積していることとする。その契約内容は、たとえば、以下のような内容である。
【0044】
アナリシスサーバの運営者は、クライアントAへ提供する相対評価データAには、クライアントAを明示してよいが、他のクライアントへ提供する相対評価データB,・・・においては、クライアントAを明示しないものとする。
契約データベースへ蓄積されたこの契約内容に基づき、たとえば、アナリシスサーバの運営者がクライアントBへ提供する相対評価データBには、クライアントAがどこに位置するのか特定できないように匿名化というデータ加工を、相対評価出力手段が施す。
【0045】
ここで、匿名化とは、たとえば、相対評価データとして二次元のグラフが表示された場合、プロットのみを示してクライアントが特定できないようにしたり、ダミーのデータを追加したり、プロットそのものを省略したり、プロットする位置をぼやかしたりすることである。
【0046】
アナリシスサーバの運営者とクライアントBとが、他のクライアントへの出力において同じく匿名化を希望する契約をしたとする。
この場合、たとえば、相対評価出力手段がクライアントAへ出力する相対評価データAにおいては、クライアントBがどこに表れているのか特定できない状態で表現されている。
【0047】
図3
図3では、アナリシスサーバの運営者が、クライアントに対してどのような手続きを経るのか、についての一例を図示している。
アナリシスサーバの運営者は、あるクライアントに対し、ITILの原データをCSV形式でお預かりする。図1図2に示した実施形態と異なり、通信回線を介さずに物理的なメディアにて預かる場合もあるが、その場合でも、図1図2に示したデータ受信手段(この場合は、メディアのデータ読み取り装置がデータ受信手段に該当する)を介して、アナリシスサーバへ取り込まれる。
【0048】
ITILの原データを取り込む以外、クライアントにはヒアリングシートへの記入をお願いする。ヒアリングシートは、詳細な図示を省略するが、クライアントの規模や業種に関わらず共通してヒアリングすべき項目を、チェックリスト形式や、簡単な数字入力などで行うものである。
実務的には、アナリシスサーバの運営者がクライアントに対してヒアリングシートを事前に送り、ヒアリングをしながら記入するなどである。ITILの原データには、コスト関係のデータが省略されることが多く、ヒアリングにおいて補足する場合が多い。
【0049】
ITILの原データのお預かり、およびヒアリングシートを受領したら、アナリシスサーバの運営者は、それらから更に聞き取るべき事項などを抽出し、「データ内容についての打合せ」を、クライアントと実行する。
ここでは、データの内容、特にフィールドの意味合いなどについて、アナリシスサーバの運営者が確認する。
【0050】
上記の打合せを終えたら、分析の可否を判断する。すなわち、クライアントが要望する分析が可能であるか、分析を可能とするためのデータが充足されているか、をアナリシスサーバの運営者が判断する。ここで、不足するデータが存在する旨を認識した場合、アナリシスサーバの運営者がクライアントに対してリクエストし、同意を得られたら不足するデータを追加してもらう。
【0051】
分析の可否が判断できたら、前処理、指標値の算出および分析を実行し、クライアントごとのレポート作成となる。厳密な区分けは困難であるが、前処理および指標値の算出・分析までは、主に評価指標演算手段が実行し、レポート作成のための、クライアントごとのデータ加工などは、主に相対評価出力手段が実行する。
【0052】
前述の「前処理」について補足する。
この「前処理」とは、たとえば、クライアント企業ごとに異なるフィールドの内容や判定基準(たとえば障害の重要度や優先度など)を、統一された評価側(アナリシスサーバの運営者)の内容や判定基準に合わせる処理が該当する。
不足している情報やデータについて、他の情報を活用して補う処理も、この「前処理」に該当する。
【0053】
図4
図4では、バランス問題と、その解決手法としての客観化の一例を図示している。
バランス問題の一例としては、効果性と効率性との最適バランスを探る、ということを、このクライアントが求めていたとする。
【0054】
バランス問題の解決に向けての客観化指標として、効率性を縦軸に、効果性を横軸にした二次元の評価平面を設定する。ここでは、客観化を判定する対象クライアント(ハートマークにて表現)が、二次元の評価平面における中心付近へ位置するように、アウトプット形式を調整することとした。
ハートマーク以外は、他のクライアントを意味する。また、匿名化を希望したクライアントは、破裂マークを大きく表現することで、指標値をぼやかしている。
【0055】
アナリシスサーバの運営者は、ハートマークにて表示されたクライアントに対して、目指すべき「相対的なベスト領域」として、波線で囲まれた領域を示している。この例示では、その領域には、ダイヤマークで示された他のクライアントが入っていることから、ハートマークにて表示されたクライアントが「効果性と効率性との最適バランスを探る上で参考となるのはダイヤマークで示された企業である」ということを、レポートの中で報告している。
【0056】
図5
図5では、管理性および改善性のバランス問題と、その解決手法としての客観化およびゴールの可視化の一例を図示している。
ここでは、管理性を縦軸に、改善性を横軸にした二次元の評価平面を設定している。また、それぞれの軸を、良い、悪い、中間の三領域に区分することで、AAからCCまでの9つの領域を策定した。
【0057】
客観化を判定する対象クライアントは、管理性も改善性も中間であるBB領域にポジションしていると表現されている。
また、対象クライアントのライバル企業2社(十時手裏剣マークおよび六角形マーク)が、管理性において「良い」と判断されるBA領域にポジションしていることも表現されている。
この可視化された指標に基づいて、「来年度はBA領域を狙う、といった目標を立てる」、といったことをアナリシスサーバの運営者はレポートの中で報告する。
【0058】
図5では、管理性を縦軸に、改善性を横軸にした二次元の評価平面を設定したが、図4に示した効率性および効果性を二軸としても図5のような可視化は可能である。
【0059】
図6
図6では、ゴール不存在問題と、その第二の解決手段の概念を示している。
すなわち、BB領域にあるクライアントに対して、3年後に目指す領域がAAであることを可視化している。
【0060】
効果性や効率性を常に高め続けなければなない、という風潮があるクライアントに対しては、3年後に目指す領域に達することができた場合には、その領域に留まること、維持することを、アナリシスサーバの運営者はレポートの中で勧める。別の指標による次のステージを目指す、というゴールを新たに設ける方が、効果性や効率性を常に高め続けるよりも、現場の労働者にとっては合理的だからである。
【0061】
図6もまた、効率性を縦軸に、効果性を横軸にした二次元の評価平面を設定したが、図5に示した管理性および改善性を二軸としても図6のような可視化は可能である。
【0062】
図7
図7では、インシデント種別の処理において、強みや弱みを可視化する解決手段の一例を概念的に示している。
システムの運用を、ヘルプデスク(HD)、ネットワーク(NW)、パーソナルコンピュータやスマートフォンやプリンタなどの端末類(EUC)、サーバ(SV)、メインフレーム(MF)、アプリケーションの保守(AMO)、などに分類する。その上で、総合的な評価を「全体」とする。
また、上記の分類の一つ一つに対して、障害、問合せ、要求実現、イベントに項目分けをし、その総合を「全体」とする。
【0063】
図7にて項目が数値化されたクライアントは、全クライアントの平均値に対し、プラスまたはマイナスのパーセント表示が出力される。
たとえば、ヘルプデスク(HD)の総合評価は、全クライアントの平均値よりも5%のプラスである。特に、ヘルプデスクの「障害」はプラス10%である。
一方、サーバ(SV)についての総合評価はマイナス11%と、最も低い値となった。その中でも「障害」は、マイナス23%である。
【0064】
このような評価出力を得たクライアントは、客観的な力量をインシデント種別の処理ごとに把握できる。
その上で、どこへ注力すべきかを考える。たとえば、サーバ系の強化を最初にテコ入れし、次にアプリケーションの保守(AMO)へ着手しよう、といった対策方針を立案することに役立つ。
【0065】
図8
図8では、図6にて示した効果性および効率性の評価から、効率性に結びつくインシデントベースでのコストを可視化する解決手段の一例を概念的に示している。
可視化の対象となるクライアントは「貴社」として示され、全クライアントの平均値である「平均」と比較できる。また、図6に示した「効率性」におけるAエリア、Bエリア、Cエリアでの値をも表示することで、詳細な分析結果を得ることとなる。
【0066】
図9
図9では、相対評価出力手段によって、バックログ数を毎日記録することで、バックログ数がどのように推移しているかを例示している。
このグラフは、一日のうちにやり残した仕事を「バックログ」としてカウントするものである。日が進むにつれてバックログが増加している様子は、処理すべきタスクが処理能力を超えていたことを意味している。このことから、システム、人員などの増強が必要であることが示唆される。
【0067】
図10
図10は、効率性、効果性、改善性という三次元の座標軸を設定し、更にその三次元の座標軸の中において、バブルの大小による表現を使って管理性の評価指標を示したものである。これによれば、4つの指標による評価を一見して把握できる。
詳細な図示は省略するが、相対的な評価による他社との比較、ゴールの検討などに用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、ITによるシステム開発業、ITの運営のためのコンピュータソフトウェアを作成するソフトウェア産業、IT設備を製造する製造業などにおいて利用可能性を有する。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11