特開2017-84591(P2017-84591A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-84591(P2017-84591A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】ヒューズ素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/06 20060101AFI20170414BHJP
   H01H 85/08 20060101ALI20170414BHJP
   H01H 85/36 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
   H01H85/06
   H01H85/08
   H01H85/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-211340(P2015-211340)
(22)【出願日】2015年10月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】川津 雅巳
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502BA08
5G502BB01
5G502BB17
5G502BB19
5G502BD02
(57)【要約】
【課題】 簡易な構造によって大電流に対応した小型ヒューズ素子を提供する。
【解決手段】
ヒューズ素子1は、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2a上に配置された第1の電極3、第2の電極4と、第1の電極3、第2の電極4にそれぞれ低融点金属5を介して接続され、低融点金属5よりも融点の高い導電体6とを備え、導電体6は、低融点金属5が溶融することにより、第1の電極3、第2の電極4のうち少なくとも一つから離間するまで移動して第1の電極3、第2の電極4間の通電経路を遮断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された複数の電極と、
前記複数の電極にそれぞれ低融点金属を介して接続され、前記低融点金属よりも融点の高い導電体とを備え、
前記導電体は、前記低融点金属が溶融することにより、前記複数の電極のうち少なくとも一つから離間するまで移動して何れかの電極間の通電経路を遮断するヒューズ素子。
【請求項2】
前記複数の電極は、第1の電極及び第2の電極とからなり、
前記導電体は、前記第2の電極の前記低融点金属による接続面積が、前記第1の電極の前記低融点金属による接続面積よりも大きい請求項1に記載のヒューズ素子。
【請求項3】
前記複数の電極は、第1の電極、第2の電極及び第3の電極とからなり、
前記導電体は、前記第2の電極の前記低融点金属による接続面積が、前記第1の電極の前記低融点金属による接続面積及び前記第3の低融点金属による接続面積の合計よりも大きい請求項1に記載のヒューズ素子。
【請求項4】
さらに、前記低融点金属が溶融したときに、前記導電体の移動方向を規制する規制部材を備える請求項1から3の何れか1項に記載のヒューズ素子。
【請求項5】
さらに、前記低融点金属が溶融したときに、前期導電体の移動方向を案内するガイド部材を備える請求項1から4の何れか1項に記載のヒューズ素子。
【請求項6】
さらに、ヒータを備え、
前記ヒータは、通電による発熱で前記低融点金属を溶融する請求項1から5の何れか1項に記載のヒューズ素子。
【請求項7】
前記導電体は、前記低融点金属が溶融したときに移動する側の端部が、前記絶縁基板から離れる方向にそり上がっている請求項1から6の何れか1項に記載のヒューズ素子。
【請求項8】
前記導電体は、前記低融点金属が溶融したときに回転移動し、回転中心位置を中心として、線対称の形状とされている請求項3に記載のヒューズ素子。
【請求項9】
前記導電体は、前記低融点金属が溶融したときに回転移動し、回転中心に重心がある請求項3又は請求項8に記載のヒューズ素子。
【請求項10】
前記導電体は、Cu又はCu合金からなる請求項1から9の何れか1項に記載のヒューズ素子。
【請求項11】
前記低融点金属は、ソルダーペーストである請求項1から10の何れか1項に記載のヒューズ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路上に実装され、所定の電流が流れたときに、当該電流経路を遮断するヒューズ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格を超える電流が流れた時に自己発熱により溶断し、当該電流経路を遮断するヒューズエレメントを内蔵したヒューズ素子が用いられている。ヒューズ素子としては、例えば、ハンダをガラス管に封入したホルダー固定型ヒューズや、セラミック基板表面にAg電極を印刷したチップヒューズ、銅電極の一部を細らせてプラスチックケースに組み込んだねじ止め又は差し込み型ヒューズ素子等が多く用いられている。
【0003】
上述した既存のヒューズ素子は、リフローによる表面実装が困難であり、部品実装の効率が低くなるため、近年では特許文献1に記載するような表面実装型のヒューズ素子が開発されている。
【0004】
特許文献1に記載の表面実装型のヒューズ素子は、一般的な電流ヒューズのように過電流で切断する機能の他に、外部回路によりヒータへの通電によりヒューズエレメントを加熱する手法で、電気回路側の制御に基づき意図するタイミングでヒューズエレメントを溶断するというスイッチとしての使い方が可能という特長を持っている。
【0005】
このようなヒューズ素子は、主にリチウムイオン二次電池を使用した電池パックの過充電や過電流の保護素子として採用されている。リチウムイオン二次電池は、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォンなどのモバイル機器において使われており、近年では電動工具、電動自転車、電動バイク及び電気自動車等にも採用されている。そのため電池パックの容量が大きくなり、ヒューズ素子に対して要求される定格電流も年々大きくなってきている。
【0006】
また、特許文献1のヒューズエレメントには、大電流化に対応するために、低融点金属層と高融点金属層を積層したエレメントが用いられ、低融点金属層が高融点金属層を侵食することで溶断速度を向上させて、大電流に対応可能であるにもかかわらず速断性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−229293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のヒューズ素子は、電流定格を上げて大電流に対応する場合、ヒューズエレメントが大型化するため電流定格を上げると、溶断しなければならないヒューズエレメントの体積が増え、速断性に劣るといった問題点が指摘されている。
【0009】
より詳細に説明すると、定格電流を大きくするために、ヒューズ素子の抵抗値を下げる必要があることから、ヒューズエレメントの断面積を大きくとるため、ヒューズ素子全体のサイズも大きくなってしまうのである。
【0010】
また、ヒューズエレメントの断面積を大きくすることの弊害としては、ヒータ等の発熱により溶解した後の溶融エレメントの体積も大きくなり、電極上に溶融エレメントを収容できなくなり、回路切断が不完全となる不具合も生じ得る。
【0011】
ヒータ等の発熱により溶解した溶融エレメントを電極上に収容するためには、電極サイズを大きくするしかなく、やはりヒューズ素子の大型化を招いてしまう。
【0012】
また、特許文献1に記載のヒューズ素子では、ヒューズエレメントを低融点金属層と高融点金属層とを積層することで小型化を達成するとともに、速断性を確保しているが、ヒューズエレメントに特殊な構造を用いるため、製造工程が複雑化するとともに、安価に製造することが難しいといった課題がある。
【0013】
そこで、本発明は、簡易な構造によって大電流に対応した小型ヒューズ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明に係るヒューズ素子は、絶縁基板と、絶縁基板上に配置された複数の電極と、複数の電極にそれぞれ低融点金属を介して接続され、低融点金属よりも融点の高い導電体とを備え、導電体は、低融点金属が溶融することにより、複数の電極のうち少なくとも一つから離間するまで移動して何れかの電極間の通電経路を遮断するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒューズ素子の回路切断をヒューズエレメントの溶断によって行うものではなく、電極と導電体を接続する低融点金属が溶融したとき、溶融した低融点金属の表面張力によって導電体を移動させることで電極間の通電経路を切断できるため、ヒューズエレメントに相当する導電体を溶融させる必要はなく、高融点で簡易な構造の安価な導電体を用いてヒューズ素子の小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明が適用されたヒューズ素子の第1の例を示す平面図である。
図2図2は、本発明が適用されたヒューズ素子の第1の例を示す断面図である。
図3図3は、本発明が適用されたヒューズ素子の第1の例を示す平面図であり、ヒューズ素子が動作した後の状態を示す。
図4図4は、本発明が適用されたヒューズ素子の第1の例の回路構成を説明する回路図であり、図4(A)がヒューズ素子の動作前の状態を示し、図4(B)がヒューズ素子の動作後の状態を示す。
図5図5は、本発明が適用されたヒューズ素子の変形例を示す断面図である。
図6図6は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す断面図である。
図7図7は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す断面図である。
図8図8は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す平面図である。
図9図9は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す平面図である。
図10図10は、本発明が適用されたヒューズ素子の第2の例を示す平面図である。
図11図11は、本発明が適用されたヒューズ素子の第2の例を示す断面図である。
図12図12は、本発明が適用されたヒューズ素子の第2の例を示す平面図であり、ヒューズ素子が動作した後の状態を示す。
図13図13は、本発明が適用されたヒューズ素子の第2の例の回路構成を説明する回路図であり、図13(A)がヒューズ素子の動作前の状態を示し、図13(B)がヒューズ素子の動作後の状態を示す。
図14図14は、本発明が適用されたヒューズ素子の変形例を示す断面図である。
図15図15は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す断面図である。
図16図16は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す断面図である。
図17図17は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す平面図である。
図18図18は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す平面図である。
図19図19は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す平面図である。
図20図20は、本発明が適用されたヒューズ素子の第3の例を示す平面図である。
図21図21は、本発明が適用されたヒューズ素子の第3の例を示す断面図である。
図22図22は、本発明が適用されたヒューズ素子の第3の例を示す平面図であり、ヒューズ素子が動作した後の状態を示す。
図23図23は、本発明が適用されたヒューズ素子の第3の例の回路構成を説明する回路図であり、図23(A)がヒューズ素子の動作前の状態を示し、図23(B)がヒューズ素子の動作後の状態を示す。
図24図24は、本発明が適用されたヒューズ素子の変形例を示す断面図である。
図25図25は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す平面図である。
図26図26は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す断面図である。
図27図27は、本発明が適用されたヒューズ素子の他の変形例を示す平面図である。
図28図28は、本発明が適用されたヒューズ素子が備える導電体の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用されたヒューズ素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
[第1の実施の形態]
[ヒューズ素子]
本発明に係るヒューズ素子1は、図1乃至図3に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2上に配置された複数の電極3,4(以下では、第1の電極3及び第2の電極4と記載する。)と、第1の電極3及び第2の電極4にそれぞれ低融点金属5を介して接続され、低融点金属5よりも融点の高い導電体6とを備える。
【0019】
なお、図1及び図3は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。図2は、図1のA−A’線における断面図である。
【0020】
絶縁基板2は、略矩形状とされており、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0021】
絶縁基板2の相対向する両端部には、第1の電極3及び第2の電極4が形成されている。第1の電極3及び第2の電極4は、それぞれ、CuやAg配線等の導電パターンによって形成され、Cu等酸化されやすい配線材料の場合には表面に適宜、酸化防止対策としてNi/AuメッキやSnメッキ等の保護層が設けられている。また、第1の電極3及び第2の電極4は、絶縁基板2の表面2aより、側面を介して裏面2bに至る。ヒューズ素子1は、裏面2bに形成された第1の電極3及び第2の電極4を介して、図示しない回路基板の電流経路上に表面実装される。
【0022】
低融点金属5は、導電体6を第1の電極3及び第2の電極4にわたって接続する導電性の接続材であり、例えば、ソルダーペーストとしてSnを主成分とする金属を用いることができる。「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属5の融点は、リフロー炉の温度程度とされている。
【0023】
導電体6は、低融点金属5よりも高融点、低電気抵抗の導電体材料からなり、図1乃至図3に示すように、第1の電極3及び第2の電極4にわたって配置され、略矩形状かつ板状の部材である。なお、導電体6は、矩形状、板状に限定されるものではないが、加工容易の観点から本実施の形態において当該形状としている。
【0024】
導電体6は、具体的に、高融点、低電気抵抗の金属材料が好ましく、Ag,Au,Al,Cu,Cu合金等を用いることができる。導電体6は、安価であり、自然酸化被膜ができず低融点金属によって接続し易いCu又はCu合金を用いることが好ましい。なお、導電体6は、第2の電極3及び第2の電極4の間の通電経路を構成し、定格を超える電流によっても自己発熱(ジュール熱)により溶断するものではない。ただし、導電体6が、自己発熱によって溶断することを妨げるものではないことは言うまでもない。
【0025】
導電体6は、リフロー炉によって絶縁基板2上に実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有する。これは、リフロー温度において溶融してしまうと導電体6の実装が困難となるからである。
【0026】
ヒューズ素子1は、小型且つ高定格を実現するものであり、例えば、絶縁基板2の寸法として3〜4mm×5〜6mm程度と小型でありながら、抵抗値が0.5〜1mΩ、50〜60A定格と高定格化が図られている。なお、本発明は、あらゆるサイズ、抵抗値及び電流定格を備えるヒューズ素子に適用することができるのはもちろんである。
【0027】
[ヒューズ素子の動作]
ヒューズ素子1は、低融点金属5が溶融することにより、導電体6が第1の電極3及び第2の電極4のうち少なくとも一つから離間するまで絶縁基板2の表面2a上をスライド移動することで、第1の電極3及び第2の電極4間の通電経路を遮断することができる。
【0028】
導電体6は、第1の電極3及び第2の電極4のそれぞれに対し、異なる接続面積で低融点金属5によって接続されている。従って、低融点金属5の溶融によって導電体6は異なる張力で第1の電極3又は第2の電極4の接続面積の大きな方に引き込まれるように絶縁基板2の表面2a上をスライド移動する。
【0029】
具体的にヒューズ素子1では、図1乃至図3に示すように、第1の電極3上の低融点金属5aの導電体6に対する接続面積よりも、第2の電極4上の低融点金属5bの導電体6に対する接続面積の方が大きくなるように構成されている。従って、導電体6は、低融点金属5の溶融によって第2の電極4側、図中矢印方向に引き込まれ、絶縁基板2の表面2a上をスライド移動して、図3に示すように、第2の電極4上で低融点金属5bによって保持される。
【0030】
また、導電体6は、図1及び図2に示すように、第1の電極3よりも第2の電極4側にオフセットした状態で低融点金属5a,5bによって第1の電極3及び第2の電極4にそれぞれ接続保持されている。
【0031】
具体的に導電体6は、図1中に図示するように、第1の電極3と導電体6の重複する部分の長さをL1とし、第2の電極4と導電体6の重複しない部分の第2の電極4の長さL2とすると、L1<L2となるように、第2の電極4側にオフセットした状態で組み付けられている。
【0032】
これは、導電体6の第1の電極3との接点部分に当たる長さL1以上の移動量を確保しなければ、導電体6と第1の電極3との電気的接続が完全に切断できないためである。言い換えると、スライド移送する導電体6の移動量は、導電体6と重複しない第2の電極4の長さL2に依存するため、L2をL1以上に確保する必要があると言える。
【0033】
次に、ヒューズ素子1の動作を回路図を用いて説明する。ヒューズ素子1は、図4(A)に示すように、導電体6が第1の電極3及び第2の電極4と接続され、第1の電極3及び第2の電極4間を導通させている。そして、ヒューズ素子1は、図4(B)に示すように、外部からの熱によって低融点金属5が溶融すると、導電体6を第2の電極4側にスライド移動させて、導電体6が第1の電極3から離れ、第1の電極3及び第2の電極4の導通が切断する。
【0034】
[変形例1]
次に、第1の実施の形態における他の例として変形例1について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0035】
変形例1にかかるヒューズ素子1は、図5に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、第1の電極3と第2の電極4との間に導電体6を支持する支持部材7を備えている。なお、図5は、図1におけるA−A’線に相当する断面図である。支持部材7は、第1の電極3と第2の電極4との間に配置されるため、電極間のショートを避けるために、絶縁材料で構成するか、絶縁コーティングが施された部材であることが好ましい。
【0036】
支持部材7は、導電体6をスライド移動可能に支持しており、絶縁基板2の表面2a上に固定されている。すなわち、支持部材7と導電体6とは固定されておらず、支持部材7上は導電体6が滑るような形状若しくはコーティングがなされている。
【0037】
低融点金属5が溶融すると導電体6は支持部材7の支持を受け水平に滑らかに第2の電極4側にスライド移動することが可能とされている。すなわち、低融点金属5が第2の電極4側にスライド移動する途中において、導電体6が第2の電極4上の低融点金属5bに片持ちされた状態となるため、導電体6が絶縁基板2の表面2a上で傾いてしまいスライド移動が適切に行えないことが想定される。このため、支持部材7は、導電体6の水平状態を保持することで、スライド移動を適切に行うことができるようにサポートすることが可能である。
【0038】
[変形例2]
次に、第1の実施の形態における他の例として変形例2について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0039】
変形例2にかかるヒューズ素子1は、図6に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、第1の電極3、第2の電極4、低融点金属5、導電体6等を保護するカバー部材8を備えている。なお、図6は、図1におけるA−A’線に相当する断面図である。
【0040】
カバー部材8は、導電体6の可動エリアを規制する移動規制部8aが設けられており、導電体6が所定の方向以外に移動しないようなストッパー機能を有している。このカバー部材8は、例えば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。
【0041】
カバー部材8は、移動規制部8aが絶縁基板2の表面2a上で導電体6と同じ高さまで延在しており、移動規制部8aが導電体6の初期位置から第1の電極3側に所定のクリアランスを保つ位置に設けられている。すなわち、移動規制部8aと導電体6とは導電体6の初期位置では接触しないが、低融点金属5が溶融した状態で導電体6が衝撃等によって第1の電極3側に移動してしまった場合に移動規制部8aと導電体6とが接触し、導電体6を誤った方向にスライド移動させない。
【0042】
移動規制部8aが導電体6の移動を規制した状態であっても、低融点金属5b側の導電体6の接続面積が大きければ、いずれ低融点金属5bの張力によって導電体6が第2の電極4側に引き込まれ、導電体6が第2の電極4側にスライド移動する。
【0043】
このため、移動規制部8aは、導電体6の逆方向への移動を規制することで、導電体6が第1の電極3側に移動してしまうことを防止するとともに、第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0044】
[変形例3]
次に、第1の実施の形態における他の例として変形例3について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0045】
変形例3にかかるヒューズ素子1は、図7に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、導電体6の移動を規制する移動規制部材9を備えている。なお、図7は、図1におけるA−A’線に相当する断面図である。
【0046】
移動規制部材9は、絶縁基板2の表面2a上であって、本構成においては特に第1の電極3上に固定された部材であり、導電体6が所定の方向以外に移動しないようなストッパー機能を有している。移動規制部材9は、例えば絶縁体を用いることができるが、回路構成上ショート等の問題を発生させないため、第1の電極3と一体に製造する場合には、第1の電極3と同様の金属材料を用いることとしてもよい。
【0047】
移動規制部材9は、絶縁基板2の表面2a上で導電体6と同じ高さまで延在しており、移動規制部材9が導電体6の初期位置から第1の電極3側に所定のクリアランスを保つ位置に設けられている。すなわち、移動規制部材9と導電体6とは導電体6の初期位置では接触しないが、低融点金属5が溶融した状態で導電体6が衝撃等によって第1の電極3側に移動してしまった場合に移動規制部材9と導電体6とが接触し、導電体6を誤った方向にスライド移動させない。
【0048】
移動規制部材9が導電体6の移動を規制した状態であっても、低融点金属5b側の導電体6の接続面積が大きければ、いずれ低融点金属5bの張力によって導電体6が第2の電極4側に引き込まれ、導電体6が第2の電極4側にスライド移動する。
【0049】
このため、移動規制部材9は、導電体6の逆方向への移動を規制することで、導電体6が第1の電極3側に移動してしまうことを防止するとともに、第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0050】
[変形例4]
次に、第1の実施の形態における他の例として変形例4について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0051】
変形例4にかかるヒューズ素子1は、図8に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、導電体6の移動を案内するガイド部10を備えている。なお、図8は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。
【0052】
ガイド部材10は、絶縁基板2の表面2a上に固定された部材であり、導電体6が所定の方向に移動するように移動方向に沿ったガイド機能を有している。ガイド部材10は、第1の電極3側から第2の電極4側に延在する平行した2つの部材により構成されており、両電極間をショートさせないように、樹脂材料等の絶縁体を用いることが好ましい。
【0053】
ガイド部材10は、絶縁基板2の表面2a上で導電体6と同じ高さまで延在しており、ガイド部材10が導電体6の初期位置から第2の電極4側に移動する範囲を側面から移動方向を規制するガイドレールとなる位置に設けられている。すなわち、ガイド部材10と導電体6とは導電体6の初期位置から、低融点金属5が溶融した状態で導電体6が第2の電極4側に移動するまで側面で接触し、導電体6を誤った方向にスライド移動させない。
【0054】
このため、ガイド部材10は、導電体6が斜めになってしまったり斜め方向に移動することを規制することで、導電体6を第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0055】
[変形例5]
次に、第1の実施の形態における他の例として変形例5について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0056】
変形例5にかかるヒューズ素子1は、図9に示すように、導電体6の形状を台形状として構成している。なお、図9は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。
【0057】
導電体6は、上述の他の例において矩形状としていたが、第1の電極3側を短辺の上底、第2の電極4側を長辺の下底とする台形状の構造を有している。すなわち導電体6は、第1の電極3側の面積が小さくなり、相対的に第2の電極4側の面積が大きくなる。このため、導電体6と第1の電極3および第2の電極4の低融点金属5による接続面積は第1の電極3側よりも第2の電極4側が大きくなり、溶融した低融点金属5bによる引っ張り力が大きくなる。
【0058】
このため、ヒューズ素子1は、台形状の導電体6を第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0059】
以上で説明した第1の実施の形態における各変形例は、任意の組み合わせで用いることができ、相乗的な効果を得ることができるため、適宜組み合わせて用いることができることは言うまでもない。すなわち、各変形例を全て適用することで、低融点金属5が溶融した時に確実に導電体6を移動させ、第1の電極3及び第2の電極4間の電気的接続を確実に切断することができるといえる。
【0060】
[第2の実施の形態]
[ヒューズ素子]
本発明に係るヒューズ素子1の他の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態で説明したものと同等の機能を有する構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
本発明にかかるヒューズ素子1は、図10乃至図12に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2上に配置された複数の電極3,4,11(以下では、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11と記載する。)と、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11にそれぞれ低融点金属5を介して接続され、低融点金属5よりも融点の高い導電体6と、第2の電極4の下方に配置されたヒータ12とを備える。
【0062】
なお、図10及び図12は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。図11は、図10のB−B’線における断面図である。
【0063】
絶縁基板2は、略矩形状とされており、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0064】
絶縁基板2の一端部には、第1の電極3及び第3の電極11が所定の距離を離間して形成されている。また、絶縁基板2の他端部、特に第1の電極3及び第3の電極11が設けられた一端部と隣接する端部に、第2の電極4が形成されている。第2の電極4は、第1の電極3及び第3の電極11と対向するように延在されて設けられており、絶縁基板2の表面2a上において、第1の電極3及び第3の電極11と第2の電極4とが対向するように配置されている。
【0065】
第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11は、それぞれ、CuやAg配線等の導電パターンによって形成され、Cu等酸化されやすい配線材料の場合には表面に適宜、酸化防止対策としてNi/AuメッキやSnメッキ等の保護層が設けられている。また、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11は、絶縁基板2の表面2aより、側面を介して裏面2bに至る。ヒューズ素子1は、裏面2bに形成された第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11を介して、図示しない回路基板の電流経路上に表面実装される。
【0066】
低融点金属5は、導電体6を第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11にわたって接続する導電性の接続材であり、例えば、ソルダーペーストとしてSnを主成分とする金属を用いることができる。「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属5の融点は、リフロー炉の温度程度とされている。
【0067】
導電体6は、低融点金属5よりも高融点、低電気抵抗の導電体材料からなり、図10乃至図11に示すように、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11にわたって配置され、略矩形状かつ板状の部材である。なお、導電体6は、矩形状、板状に限定されるものではないが、加工容易の観点から本実施の形態において当該形状としている。
【0068】
導電体6は、具体的に、高融点、低電気抵抗の金属材料が好ましく、Ag,Au,Al,Cu,Cu合金等を用いることができる。導電体6は、安価であり、自然酸化被膜ができず低融点金属によって接続し易いCu又はCu合金を用いることが好ましい。なお、導電体6は、第2の電極3及び第3の電極11の間の通電経路を構成し、定格を超える電流によっても自己発熱(ジュール熱)により溶断するものではない。ただし、導電体6が、自己発熱によって溶断することを妨げるものではないことは言うまでもない。
【0069】
ヒータ12は、低融点金属5を溶融させる熱を発生させる電気抵抗部材であり、後述する回路図で説明を行うが、第2の電極4と電気的に接続され、また熱的に接続されている。電気回路上に定格電流が流れる場合に、低融点金属5を溶融させる熱を印加するものである。
【0070】
[ヒューズ素子の動作]
ヒューズ素子1は、低融点金属5が溶融することにより、導電体6が第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11のうち第1の電極3,第3の電極11から離間するまで絶縁基板2の表面2a上をスライド移動することで、第1の電極3及び第3の電極11間の通電経路を遮断することができる。
【0071】
導電体6は、第1の電極3及び第3の電極11の組み合わせと、第2の電極4とのそれぞれに対し、異なる接続面積で低融点金属5によって接続されている。従って、低融点金属5の溶融によって導電体6は異なる張力で第1の電極3及び第3の電極11の組み合わせと、第2の電極4との接続面積の大きな方に引き込まれるように絶縁基板2の表面2a上をスライド移動する。
【0072】
具体的にヒューズ素子1では、図10乃至図12に示すように、第1の電極3上の低融点金属5aの導電体6に対する接続面積と第3の電極11上の低融点金属5cの導電体6に対する接続面積の合計よりも、第2の電極4上の低融点金属5bの導電体6に対する接続面積の方が大きくなるように構成されている。従って、導電体6は、低融点金属5bの溶融によって第2の電極4側、図中矢印方向に引き込まれ、絶縁基板2の表面2a上をスライド移動して、図12に示すように、第2の電極4上で低融点金属5bによって保持される。
【0073】
また、導電体6は、図10及び図11に示すように、第1の電極3及び第3の電極11よりも第2の電極4側にオフセットした状態で低融点金属5a,5b,5cによって第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11にそれぞれ接続保持されている。
【0074】
具体的に導電体6は、図10中に図示するように、第1の電極3及び第3の電極11と導電体6の重複する部分の長さをL1とし、第2の電極4と導電体6の重複しない部分の第2の電極4の長さL2とすると、L1<L2となるように、第2の電極4側にオフセットした状態で組み付けられている。
【0075】
これは、導電体6の第1の電極3及び第3の電極11との接点部分に当たる長さL1以上の移動量を確保しなければ、導電体6と第1の電極3及び第3の電極11との電気的接続が完全に切断できないためである。言い換えると、スライド移送する導電体6の移動量は、導電体6と重複しない第2の電極4の長さL2に依存するため、L2をL1以上に確保する必要があると言える。
【0076】
次に、ヒューズ素子1の動作を回路図を用いて説明する。ヒューズ素子1は、図13(A)に示すように、導電体6が第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11と接続され、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11間を導通させている。そして、ヒューズ素子1は、図13(B)に示すように、ヒータ12からの熱によって低融点金属5が溶融すると、導電体6を第2の電極4側にスライド移動させて、導電体6が第1の電極3及び第3の電極11から離れ、第1の電極3及び第3の電極11の導通が切断する。また、当然であるが、第1の電極3及び第2の電極4間、第3の電極11及び第2の電極4間の導通が切断する。これにより、ヒータ12への通電も解消されるため、ヒータ12の発熱は停止する。
【0077】
[変形例6]
次に、第2の実施の形態における他の例として変形例6について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0078】
変形例6にかかるヒューズ素子1は、図14に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、第1の電極3及び第3の電極11と第2の電極4との間に導電体6を支持する支持部材7を備えている。なお、図14は、図10におけるB−B’線に相当する断面図である。支持部材7は、第1の電極3及び第3の電極11と第2の電極4との間に配置されるため、電極間のショートを避けるために、絶縁材料で構成するか、絶縁コーティングが施された部材であることが好ましい。
【0079】
支持部材7は、導電体6をスライド移動可能に支持しており、絶縁基板2の表面2a上に固定されている。すなわち、支持部材7と導電体6とは固定されておらず、支持部材7上は導電体6が滑るような形状若しくはコーティングがなされている。
【0080】
低融点金属5が溶融すると導電体6は支持部材7の支持を受け水平に滑らかに第2の電極4側にスライド移動することが可能とされている。すなわち、低融点金属5が第2の電極4側にスライド移動する途中において、導電体6が第2の電極4上の低融点金属5bに片持ちされた状態となるため、導電体6が絶縁基板2の表面2a上で傾いてしまいスライド移動が適切に行えないことが想定される。このため、支持部材7は、導電体6の水平状態を保持することで、スライド移動を適切に行うことができるようにサポートすることが可能である。
【0081】
[変形例7]
次に、第2の実施の形態における他の例として変形例7について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0082】
変形例7にかかるヒューズ素子1は、図15に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、第1の電極3、第2の電極4、第3の電極11、低融点金属5、導電体6等を保護するカバー部材8を備えている。なお、図15は、図10におけるB−B’線に相当する断面図である。
【0083】
カバー部材8は、導電体6の可動エリアを規制する移動規制部8aが設けられており、導電体6が所定の方向以外に移動しないようなストッパー機能を有している。このカバー部材8は、例えば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。
【0084】
カバー部材8は、移動規制部8aが絶縁基板2の表面2a上で導電体6と同じ高さまで延在しており、移動規制部8aが導電体6の初期位置から第1の電極3及び第3の電極11側に所定のクリアランスを保つ位置に設けられている。すなわち、移動規制部8aと導電体6とは導電体6の初期位置では接触しないが、低融点金属5が溶融した状態で導電体6が衝撃等によって第1の電極3及び第3の電極11側に移動してしまった場合に移動規制部8aと導電体6とが接触し、導電体6を誤った方向にスライド移動させない。
【0085】
移動規制部8aが導電体6の移動を規制した状態であっても、低融点金属5b側の導電体6の接続面積が大きければ、いずれ低融点金属5bの張力によって導電体6が第2の電極4側に引き込まれ、導電体6が第2の電極4側にスライド移動する。
【0086】
このため、移動規制部8aは、導電体6の逆方向への移動を規制することで、導電体6が第1の電極3及び第3の電極11側に移動してしまうことを防止するとともに、第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0087】
[変形例8]
次に、第2の実施の形態における他の例として変形例8について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0088】
変形例8にかかるヒューズ素子1は、図16に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、導電体6の移動を規制する移動規制部材9を備えている。なお、図16は、図10におけるB−B’線に相当する断面図である。
【0089】
移動規制部材9は、絶縁基板2の表面2a上であって、本構成においては特に第1の電極3上及び第3の電極11上に固定された部材であり、導電体6が所定の方向以外に移動しないようなストッパー機能を有している。移動規制部材9は、第1の電極3から第3の電極11にわたって設けられているため、回路のショートを防止するため、樹脂材料等の絶縁体を用いることが好ましい。
【0090】
移動規制部材9は、絶縁基板2の表面2a上で導電体6と同じ高さまで延在しており、移動規制部材9が導電体6の初期位置から第1の電極3及び第3の電極11側に所定のクリアランスを保つ位置に設けられている。すなわち、移動規制部材9と導電体6とは導電体6の初期位置では接触しないが、低融点金属5が溶融した状態で導電体6が衝撃等によって第1の電極3及び第3の電極11側に移動してしまった場合に移動規制部材9と導電体6とが接触し、導電体6を誤った方向にスライド移動させない。
【0091】
移動規制部材9が導電体6の移動を規制した状態であっても、低融点金属5b側の導電体6の接続面積が大きければ、いずれ低融点金属5bの張力によって導電体6が第2の電極4側に引き込まれ、導電体6が第2の電極4側にスライド移動する。
【0092】
このため、移動規制部材9は、導電体6の逆方向への移動を規制することで、導電体6が第1の電極3及び第3の電極11側に移動してしまうことを防止するとともに、第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0093】
[変形例9]
次に、第2の実施の形態における他の例として変形例9について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0094】
変形例9にかかるヒューズ素子1は、図17に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、導電体6の移動を案内するガイド部10を備えている。なお、図17は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。
【0095】
ガイド部材10は、絶縁基板2の表面2a上に固定された部材であり、導電体6が所定の方向に移動するように移動方向に沿ったガイド機能を有している。ガイド部材10は、第1の電極3及び第3の電極11側から第2の電極4側に延在する平行した2つの部材により構成されており、両電極間をショートさせないように、樹脂材料等の絶縁体を用いることが好ましい。
【0096】
ガイド部材10は、絶縁基板2の表面2a上で導電体6と同じ高さまで延在しており、移ガイド部材10が導電体6の初期位置から第2の電極4側に移動する範囲を側面から移動方向を規制するガイドレールとなる位置に設けられている。すなわち、ガイド部材10と導電体6とは導電体6の初期位置から、低融点金属5が溶融した状態で導電体6が第2の電極4側に移動するまで側面で接触し、導電体6を誤った方向にスライド移動させない。
【0097】
このため、ガイド部材10は、導電体6が斜めになってしまったり斜め方向に移動することを規制することで、導電体6を第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0098】
[変形例10]
次に、第2の実施の形態における他の例として変形例10について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0099】
変形例10にかかるヒューズ素子1は、図18に示すように、導電体6の形状を台形状として構成している。なお、図18は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。
【0100】
導電体6は、上述の他の例において矩形状としていたが、第1の電極3及び第3の電極11側を短辺の上底、第2の電極4側を長辺の下底とする台形状の構造を有している。すなわち導電体6は、第1の電極3及び第3の電極11側の面積が小さくなり、相対的に第2の電極4側の面積が大きくなる。このため、導電体6と第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11と低融点金属5による接続面積は、第1の電極3及び第3の電極11側の合計よりも第2の電極4側が大きくなり、溶融した低融点金属5bによる引っ張り力が大きくなる。
【0101】
このため、ヒューズ素子1は、台形状の導電体6を第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0102】
[変形例11]
次に、第2の実施の形態における他の例として変形例11について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0103】
変形例11にかかるヒューズ素子1は、図19に示すように、導電体6の形状を2つの凸部を有する形状として構成している。なお、図19は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。
【0104】
導電体6は、上述の他の例において矩形状としていたが、第1の電極3側を短辺の上底とする台形と、第3の電極4側を短辺の上底とする台形として、2つの凸部6a,6bとした形状の構造を有している。すなわち導電体6は、第1の電極3及び第3の電極11側の面積が小さくなり、相対的に第2の電極4側の面積が大きくなる。このため、導電体6と第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11と低融点金属5による接続面積は、第1の電極3及び第3の電極11側の合計よりも第2の電極4側が大きくなり、溶融した低融点金属5bによる引っ張り力が大きくなる。
【0105】
このため、ヒューズ素子1は、台形状の導電体6を第2の電極4側に確実にスライド移動させることができるようになる。
【0106】
変形例11は、変形例10と比較して導電体6を小さくするために、通電に寄与しない部分を切り抜いた形状ともいえる。導電体6の小型化により、導電体6を移動させやすくなる。
【0107】
以上で説明した第2の実施の形態における各変形例は、任意の組み合わせで用いることができ、相乗的な効果を得ることができるため、適宜組み合わせて用いることができることは言うまでもない。すなわち、各変形例を全て適用することで、低融点金属5が溶融した時に確実に導電体6を移動させ、第1の電極3及び第3の電極11間の電気的接続を確実に切断することができるといえる。
【0108】
[第3の実施の形態]
[ヒューズ素子]
本発明に係るヒューズ素子1の他の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態で説明したものと同等の機能を有する構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0109】
本発明にかかるヒューズ素子1は、図20乃至図22に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2上に配置された複数の電極3,4,11(以下では、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11と記載する。)と、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11にそれぞれ低融点金属5を介して接続され、低融点金属5よりも融点の高い導電体6と、第2の電極4の下方に配置されたヒータ12とを備える。
【0110】
なお、図20及び図22は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。図21は、図20のC−C’線における断面図である。
【0111】
絶縁基板2は、略矩形状とされており、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0112】
絶縁基板2の一端部には、第1の電極3が形成されている。また、絶縁基板2の他端部、特に第1の電極3が設けられた一端部と隣接する端部に、第2の電極4が形成されている。さらに、絶縁基板2の第1の電極3が形成された一端部と対向する端部に、第3の電極11が形成されている。第1の電極3及び第3の電極11は、絶縁基板2の表面2a上で対向配置 されており、第2の電極4は、第1の電極3及び第3の電極11の間に延在するように設けられており、言い換えると、第2の電極4が第1の電極3と第3の電極11を分断するように配置されているといえる。
【0113】
第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11は、それぞれ、CuやAg配線等の導電パターンによって形成され、Cu等酸化されやすい配線材料の場合には表面に適宜、酸化防止対策としてNi/AuメッキやSnメッキ等の保護層が設けられている。また、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11は、絶縁基板2の表面2aより、側面を介して裏面2bに至る。ヒューズ素子1は、裏面2bに形成された第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11を介して、図示しない回路基板の電流経路上に表面実装される。
【0114】
低融点金属5は、導電体6を第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11にわたって接続する導電性の接続材であり、例えば、ソルダーペーストとしてSnを主成分とする金属を用いることができる。「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属5の融点は、リフロー炉の温度程度とされている。
【0115】
導電体6は、低融点金属5よりも高融点、低電気抵抗の導電体材料からなり、図20乃至図21に示すように、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11にわたって配置され、略矩形状かつ板状の部材である。なお、導電体6は、矩形状、板状に限定されるものではないが、加工容易の観点から本実施の形態において当該形状としている。
【0116】
導電体6は、具体的に、高融点、低電気抵抗の金属材料が好ましく、Ag,Au,Al,Cu,Cu合金等を用いることができる。導電体6は、安価であり、自然酸化被膜ができず低融点金属によって接続し易いCu又はCu合金を用いることが好ましい。なお、導電体6は、第2の電極3及び第3の電極11の間の通電経路を構成し、定格を超える電流によっても自己発熱(ジュール熱)により溶断するものではない。ただし、導電体6が、自己発熱によって溶断することを妨げるものではないことは言うまでもない。
【0117】
ヒータ12は、低融点金属5を溶融させる熱を発生させる電気抵抗部材であり、後述する回路図で説明を行うが、第2の電極4と電気的に接続され、また熱的に接続されている。電気回路上に定格電流が流れる場合に、低融点金属5を溶融させる熱を印加するものである。
【0118】
[ヒューズ素子の動作]
ヒューズ素子1は、低融点金属5が溶融することにより、導電体6が第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11のうち第1の電極3,第3の電極11から離間するまで絶縁基板2の表面2a上を回転移動することで、第1の電極3及び第3の電極11間の通電経路を遮断することができる。
【0119】
導電体6は、第1の電極3及び第3の電極11の組み合わせと、第2の電極4とのそれぞれに対し、異なる接続面積で低融点金属5によって接続されている。従って、低融点金属5の溶融によって導電体6は異なる張力で第1の電極3及び第3の電極11の組み合わせと、第2の電極4との接続面積の大きな方に引き込まれるように絶縁基板2の表面2a上を回転移動する。
【0120】
具体的にヒューズ素子1では、図20乃至図22に示すように、第1の電極3上の低融点金属5aの導電体6に対する接続面積と第3の電極11上の低融点金属5cの導電体6に対する接続面積の合計よりも、第2の電極4上の低融点金属5bの導電体6に対する接続面積の方が大きくなるように構成されている。従って、導電体6は、低融点金属5bの溶融によって第2の電極4側、図中矢印方向に回転しながら引き込まれ、絶縁基板2の表面2a上を回転移動して、図22に示すように、第2の電極4上で低融点金属5bによって保持される。
【0121】
また、導電体6は、図20及び図21に示すように、回転動作する中心部Oを第2の電極4上に配置し、第1の電極3及び第3の電極11には端部が僅かに重複するようにした状態で低融点金属5a,5b,5cによって第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11にそれぞれ接続保持されている。
【0122】
具体的に導電体6は、図20中に図示するように、中心部Oを中心とした点対称の形状をしており、好ましくは中心部Oにその重心があることが好ましい。中心部Oを軸として導電体6が回転移動しやすくするためである。また、中心部Oから導電体6の隅までを結んだ線分により規定される角度θ1は、導電体6に必要とされる最低の回転角度であり、また、図22に示すように、回転した導電体6が第2の電極4に必要とされる幅を規定する角度となる。
【0123】
また、導電体6は、第1の電極3側、第3の電極11側において、回転方向に突出する突出部6c,6dをそれぞれ有している。すなわち導電体6は、略Z字形状をしているといえる。
【0124】
導電体6は、突出部6cが第1の電極3に低融点金属5aにより接続されるとともに、第2の電極4に低融点金属5bにより接続されることとなる。したがって、突出部6cが回転方向に突出することで、溶融した低融点金属5bにより斜めに引き込まれる。また、導電体6は、突出部6dが第3の電極11に低融点金属5cにより接続されるとともに、第2の電極4に低融点金属5bにより接続されることとなる。したがって、突出部6dが回転方向に突出することで、溶融した低融点金属5bにより斜めに引き込まれる。
【0125】
導電体6は、中心部Oの外側において点対称の突出部6c,6dにより、それぞれ回転方向に引き込まれる力が印加され回転モーメントが生じ、中心部Oを回転中心として回転する。
【0126】
次に、ヒューズ素子1の動作を回路図を用いて説明する。ヒューズ素子1は、図23(A)に示すように、導電体6が第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11と接続され、第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11間を導通させている。そして、ヒューズ素子1は、図23(B)に示すように、ヒータ12からの熱によって低融点金属5が溶融すると、導電体6を第2の電極4側に回転移動させて、導電体6が第1の電極3及び第3の電極11から離れ、第1の電極3及び第3の電極11の導通が切断する。また、当然であるが、第1の電極3及び第2の電極4間、第3の電極11及び第2の電極4間の導通が切断する。これにより、ヒータ12への通電も解消されるため、ヒータ12の発熱は停止する。
【0127】
[変形例12]
次に、第3の実施の形態における他の例として変形例12について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0128】
変形例12にかかるヒューズ素子1は、図24に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、第1の電極3及び第3の電極11と第2の電極4との間に導電体6を支持する支持部材7を備えている。なお、図24は、図20におけるC−C’線に相当する断面図である。支持部材7は、第1の電極3及び第3の電極11と第2の電極4との間に配置されるため、電極間のショートを避けるために、絶縁材料で構成するか、絶縁コーティングが施された部材であることが好ましい。
【0129】
支持部材7は、導電体6を回転移動可能に支持しており、絶縁基板2の表面2a上に固定されている。すなわち、支持部材7と導電体6とは固定されておらず、支持部材7上は導電体6が滑るような形状若しくはコーティングがなされている。また、導電体6が回転移動することから、支持部材7は、円弧状に設けることが好ましい。
【0130】
低融点金属5が溶融すると導電体6は支持部材7の支持を受け水平に滑らかに第2の電極4側に回転移動することが可能とされている。すなわち、低融点金属5が第2の電極4側に回転移動する途中において、導電体6が第2の電極4上の低融点金属5bに片持ちされた状態となるため、導電体6が絶縁基板2の表面2a上で傾いてしまい回転移動が適切に行えないことが想定される。このため、支持部材7は、導電体6の水平状態を保持することで、回転移動を適切に行うことができるようにサポートすることが可能である。
【0131】
[変形例13]
次に、第3の実施の形態における他の例として変形例13について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0132】
変形例13にかかるヒューズ素子1は、図25に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、導電体6の移動を案内するガイド部10を備えている。なお、図25は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。
【0133】
ガイド部材10は、絶縁基板2の表面2a上に固定された部材であり、導電体6が所定の方向に回転移動するように移動方向に沿ったガイド機能を有している。ガイド部材10は、第1の電極3及び第3の電極11側から第2の電極4側に延在する対向した円弧状の2つの部材により構成されており、両電極間をショートさせないように、樹脂材料等の絶縁体を用いることが好ましい。
【0134】
ガイド部材10は、絶縁基板2の表面2a上で導電体6と同じ高さまで延在しており、移ガイド部材10が導電体6の初期位置から第2の電極4側に回転移動する範囲を側面から移動方向を規制するガイドレールとなる位置に設けられている。すなわち、ガイド部材10と導電体6とは導電体6の初期位置から、低融点金属5が溶融した状態で導電体6が第2の電極4側に回転移動するまで側面で接触し、導電体6を回転動作から逸脱させない。
【0135】
このため、ガイド部材10は、導電体6を第2の電極4側に確実に回転移動させることができるようになる。
【0136】
[変形例14]
次に、第3の実施の形態における他の例として変形例14について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0137】
変形例14にかかるヒューズ素子1は、図26に示すように、絶縁基板2の表面2a上で、第1の電極3、第2の電極4、第3の電極11、低融点金属5、導電体6等を保護するカバー部材8を備えている。なお、図26は、図20におけるC−C’線に相当する断面図である。
【0138】
カバー部材8は、カバー部材8は、導電体6の回転可動エリアを規制する移動規制部8aが設けられており、導電体6が所定の回転方向以外に移動しないようなストッパー機能を有している。このカバー部材8は、例えば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。
【0139】
カバー部材8は、移動規制部8aが絶縁基板2の表面2a上で導電体6と同じ高さまで延在しており、移動規制部8aが導電体6の初期位置から第1の電極3及び第3の電極11側に所定のクリアランスを保つ位置に設けられている。すなわち、移動規制部8aと導電体6とは導電体6の初期位置では接触しないが、低融点金属5が溶融した状態で導電体6が衝撃等によって回転軸が中心部Oからズレてしまった場合に移動規制部8aと導電体6とが接触し、導電体6の回転方向を中心部Oを回転軸とするように強制する。すなわち、移動規制部8aは、導電体6の回転動作をするガイド部材であるともいえる。
【0140】
移動規制部8aが導電体6の移動を規制した状態であっても、低融点金属5b側の導電体6の接続面積が大きければ、いずれ低融点金属5bの張力によって導電体6が第2の電極4側に引き込まれ、導電体6が第2の電極4上に乗るように回転移動する。
【0141】
このため、移動規制部8aは、導電体6の回転向への移動以外を規制することで、導電体6が第1の電極3及び第3の電極11側に移動してしまうことを防止するとともに、第2の電極4上に乗るように確実に回転移動させることができるようになる。
【0142】
[変形例15]
次に、第3の実施の形態における他の例として変形例15について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0143】
変形例15にかかるヒューズ素子1は、図27に示すように、導電体6の形状を2つの凹部6e,6fを有する形状として構成している。なお、図27は、導電体6を透視してヒューズ素子1の上方から見た平面図であり、導電体6を破線で示している。
【0144】
導電体6は、上述の他の例において略Z字形状としていたが、第1の電極3側の中心部Oから最も遠い側の隅と、第3の電極4側を中心部Oから最も遠い側の隅とに、2つの切り欠きをおこなった凹部6e,6fとした形状の構造を有している。すなわち導電体6は、第1の電極3及び第3の電極11側の面積が切り欠き分だけ小さくなり、相対的に第2の電極4側の面積が大きくなる。このため、導電体6と第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11と低融点金属5による接続面積は、第1の電極3及び第3の電極11側の合計よりも第2の電極4側が大きくなり、溶融した低融点金属5bによる引っ張り力が大きくなる。
【0145】
このため、ヒューズ素子1は、凹部6e,6fを有する導電体6を第2の電極4側に確実に回転移動させることができるようになる。
【0146】
変形例15は、変形例10と比較して導電体6を小さくするために、通電に寄与しない部分を切り抜いた形状ともいえる。導電体6の小型化により、導電体6を移動させやすくなる。
【0147】
[変形例16]
次に、第3の実施の形態における他の例として変形例16について説明する。上述で説明したヒューズ素子1と同等の部位には同じ符号を付して説明を省略し、特に差分について説明を行う。
【0148】
変形例16にかかるヒューズ素子1は、図28に示すように、変形例15と比較して導電体6の形状を2つの凹部6e,6fを円弧状の切り欠き形状として構成している。なお、図28は、導電体6のみを説明する図であるが、他の部位については変形例15と同様である。
【0149】
導電体6は、上述の他の例において略Z字形状としていたが、第1の電極3側の中心部Oから最も遠い側の隅と、第3の電極4側を中心部Oから最も遠い側の隅とに、それぞれ円弧状に切り欠きをおこなった凹部6e,6fとした形状の構造を有している。すなわち導電体6は、第1の電極3及び第3の電極11側の面積が切り欠き分だけ小さくなり、相対的に第2の電極4側の面積が大きくなる。このため、導電体6と第1の電極3,第2の電極4,第3の電極11と低融点金属5による接続面積は、第1の電極3及び第3の電極11側の合計よりも第2の電極4側が大きくなり、溶融した低融点金属5bによる引っ張り力が大きくなる。
【0150】
また、導電体6は、凹部6e,6fを円弧状に切り欠いた形状としたため角がなく、回転移動をする際に引っ掛かる部分がなく滑らかな回転が可能となる。
【0151】
また、導電体6は、凹部6e,6fに相当する部分を絶縁基板2の表面2aから離れるようにそり上げさせたそり部6g,6hとした構造を有している。すなわち、導電体6は、回転方向の端面がそり上がっているため、第2の電極4に乗り上げる際にスムーズな動作が可能であり、第2の電極4の端部に引っ掛かり回転移動が完了しないようなことを防止することができる。
【0152】
このため、ヒューズ素子1は、凹部6e,6f及びそり部6g,6hを有する導電体6を第2の電極4上に乗るように確実に回転移動させることができるようになる。
【0153】
以上で説明した第3の実施の形態における各変形例は、任意の組み合わせで用いることができ、相乗的な効果を得ることができるため、適宜組み合わせて用いることができることは言うまでもない。すなわち、各変形例を全て適用することで、低融点金属5が溶融した時に確実に導電体6を回転移動させ、第1の電極3及び第3の電極11間の電気的接続を確実に切断することができるといえる。
【0154】
なお、第3の実施の形態において、例えば図28に示すように、導電体6を支持する支軸Sを備えるようにしてもよく、中心部Oがずれないように、導電体6を軸支するようにすることで、ガイド部等を設ける必要なく、簡易な構造で導電体6の回転移動をサポートすることができる。支軸Sは、第2の電極4から突出するようにしてもよいし、カバー部材8を用いる場合には、カバー部材8から突出するようにしてもよい。なお、支軸Sを受けるために導電体6に凹みもしくは貫通孔を設けるようにすることが好ましい。
【0155】
なお、上記の第1の実施の形態乃至第3の実施の形態では、導電体6をCu等の金属板を例にして説明したが、低融点金属と高融点金属の積層型のヒューズエレメントを用いてもよいことは言うまでもない。
【0156】
また、本発明を適用したヒューズ素子では、ヒータの内臓有無を問わないが、低融点金属5を溶融するための熱源は適宜必要とすることは言うまでもなく、外部にヒータを設けるか、導電体6の自己発熱を用いる方法であってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0157】
1 ヒューズ素子、2 絶縁基板、2a 表面、2b 裏面、3 第1の電極、4 第2の電極、5 低融点金属、5a 第1の電極上の低融点金属、5b 第2の電極上の低融点金属、5c 第3の電極上の低融点金属、6 導電体、6a,6b 凸部、6c,6d 突出部、6e,6f 凹部、6g,6h そり部、7 支持部材、8 カバー部材、8a 移動規制部、9 移動規制部材、10 ガイド部材、11 第3の電極、12 ヒータ
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