特開2017-84750(P2017-84750A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-84750(P2017-84750A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】複合導体
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/10 20060101AFI20170414BHJP
   C01B 32/152 20170101ALI20170414BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20170414BHJP
【FI】
   H01B5/10
   C01B31/02 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-230671(P2015-230671)
(22)【出願日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-211967(P2015-211967)
(32)【優先日】2015年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋明
【テーマコード(参考)】
4G146
5G307
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB08
5G307EA01
5G307EE03
5G307EF10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】十分な導電性を有しつつ、高い耐久性が得られる導体を提供する。
【解決手段】導体素線12及び棒状炭素材料14からなる複合導体10であって、導体素線12と棒状炭素材料14との間の密着度Cが9〜110N/mmである複合導体10、好ましくは導体素線12の本数と棒状炭素材料14の本数の合計本数が7本であり、断面を見たときに、7本は中心に1本、その周りに6本配置されており、少なくとも中心の1本が棒状炭素材料14である、複合導体。更に、好ましくは、棒状炭素材料がカーボンナノチューブであることが望ましい複合導体10。
【効果】複合導体10は、十分な導電性を有しつつ、高い耐久性が得られる導体を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体素線及び棒状炭素材料からなる複合導体であって、導体素線と棒状炭素材料との間の密着度Cが9N/mm〜110N/mmであることを特徴とする複合導体。
【請求項2】
導体素線の本数と棒状炭素材料の本数の合計本数が7本であり、断面を見たときに、7本は中心に1本、その周りに6本配置されており、少なくとも中心の1本が棒状炭素材料であることを特徴とする請求項1に記載の複合導体。
【請求項3】
棒状炭素材料がカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1、2に記載の複合導体。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、主に高耐久が要求される電線及び導体に適用される。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、炭素繊維の周囲に複数本の軟銅素線を配し、撚り合わせてなる高張力電線が記載されている。しかしながら、炭素繊維と軟銅素線とでは、断線しやすさが桁違いであり、単に炭素繊維を配しただけでは耐久性は十分ではない。後述する比較例1が、そのことを証明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−150841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、十分な導電性を有しつつ、高い耐久性が得られる導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、以下の発明を提供する。
(1)導体素線及び棒状炭素材料からなる複合導体であって、導体素線と棒状炭素材料との間の密着度Cが9N/mm〜110N/mmであることを特徴とする複合導体。
(2)導体素線の本数と棒状炭素材料の本数の合計本数が7本であり、断面を見たときに、7本は中心に1本、その周りに6本配置されており、少なくとも中心の1本が棒状炭素材料であることを特徴とする(1)に記載の複合導体。
(3)棒状炭素材料がカーボンナノチューブであることを特徴とする(1)、(2)に記載の複合導体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、棒状炭素材料を配してなる、十分な導電性を有しつつ、高い耐久性が得られる導体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を表わす図。
図2】一般的な撚線の導体を表わす図。
図3図3(a)は、一般的な撚り線の導体の場合の、屈曲試験時の挙動を模式的に表す。図3(b)は、本発明の複合導体の場合の、屈曲試験時の挙動を模式的に表す。
図4】本発明の複合導体の、撚り合わせ前後の形状変化。(a)は撚り合わせ前、(b)は撚り合わせ後
図5】屈曲試験の方法を表す図。
図6】撚り合せの様子を表す模式図。
図7】屈曲回数と導体抵抗のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、本発明の一実施形態を記載した。本発明の複合導体10は、棒状炭素材料14の周囲に6本の導体素線12を配し、撚り合わせてなる。これに対し、図2に、一般的な撚線の導体を記載した。すなわち、撚線導体20は、7本の導体素線22を撚り合わせてなる。
【0010】
(棒状炭素材料による補強の効果及び一部断線の場合の導通経路の確保の効果)
図3(a)は、一般的な撚り線の導体の場合の、屈曲試験時の挙動を模式的に表す。図3(b)は、本発明の複合導体の場合の、屈曲試験時の挙動を模式的に表す。まず、図3(a)であるが、7本とも導体素線であるため、7本均一に亀裂が入りやすい。そして、特定個所(屈曲による疲労がたまる個所)において断線につながる。そして、急峻な導体抵抗の上昇が生じる。一方、図3(b)のほうは、棒状炭素材料そのものに亀裂や断線が生じることはない。したがって、導体素線の特定個所に断線が生じたとしても、それは他の導体素線へは波及しにくい。まず導通経路としては、断線等のない棒状炭素材料の分が必ず確保されており、例え複数の導体素線の一部が断線したとしても、本発明の複合導体では、棒状炭素材料と導体素線との間の密着度が従前の一般的な撚り線導体のものより極めて高いので、断線部分を迂回した導通経路が確保されており、前述したような急峻な導体抵抗の上昇という現象は生じることはなく、比較的緩やかな導体抵抗の上昇があるだけである。ここで、従前の一般的な撚り線導体で、なぜ密着度が低いものが使用されてきたかその理由を説明する。それは、本発明程度の高い密着度で使用した場合、屈曲試験を繰り返した場合、導体素線間同士でこすれ・摩耗が生じ、いち早く断線するようになるからである。これに対し、棒状炭素材料を使用すると、これらはそもそも摩擦係数が低いものであるから、本発明のように、棒状炭素材料と導体素線との間の密着度が大きくてもこすれや摩耗は起こりにくい。
【0011】
棒状炭素材料、金属素線を複合して撚り合せるときには、周りの金属素線によって作られるスペースに収まるように、棒状炭素材料は金属素線からの押し付け力によって変形する。図4(a)は撚り合せ前の棒状炭素材料と金属素線を示したものであり、図4(b)は撚り合された時の状態を示した図である。
棒状炭素材料と金属素線間の接触電気抵抗値は、その押し付け力によって変化する。この接触量と接触電気抵抗値に関わる押し付け力による重要なパラメータを、本発明では密着度と定義することにした。密着度を記号Cで表す場合、以下の式で近似される。
C≒E×√ΔS 式(1)
ここで、Eは棒状炭素材料の直径方向のヤング率である。ヤング率は一般的に圧縮試験機を用いて、サンプルに加えた荷重と、その変形量から求められる。棒状炭素材料で構成されたものも含めた紡績糸等の中空体の場合、中空部を押しつぶす領域のヤング率と、中空部が減少した後では、ヤング率は異なることになる。ΔSは棒状炭素材料が周りの金属素線によって押しつぶされる時の断面積変化であり以下の式で計算される。
ΔS=(S−S)/S 式(2)
S1は押しつぶされる前の棒状炭素材料の断面積で、棒状炭素材料外径Rcより以下の通り求められる。
=1/4×πRc 式(3)
は押しつぶされた後の棒状炭素材料の断面積で、周りに配置される金属素線の外径Ro、本数nより、以下の通り求められる。
縦横それぞれの長さの変化(歪み)は√ΔSであらわされ、縦横それぞれの方向への応力σは、式(5)の通りに近似される。
σ≒E×√ΔS 式(5)
この棒状炭素材料内の応力σと等しい外側方向の力が、棒状炭素材料が周囲の金属素線を押しつける力である密着度Cとなる。
【0012】
密着度は屈曲試験による可動前の初期抵抗値には影響しない。しかし、炭素繊維を複合した導体の場合には、ケーブルの可動により金属素線に断線が始まった後、密着度が高いことで導体抵抗の上昇を抑える効果が得られる。
本発明の金属素線は、電線、導体に一般的に使用されているものが使用できる。金属素線としては、たとえば、電気用軟銅線、無酸素軟銅線、高抗張力銅合金線、すず入り銅合金線、銅被覆鋼線等があげられる。
本発明の棒状炭素材料としては、単層カーボンナノチューブ(CNT)、2層CNT、3〜5層CNT、多層CNT、新規CNT等のCNTが使用できる。また、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、炭素中空糸膜等の繊維状カーボン類を使用できる。
【0013】
実施例
[屈曲試験の方法]
棒状炭素材料を複合した場合の、密着度と屈曲回数、導体抵抗の関係について、表1、図5で説明する。こちらは、撚り導体を被覆し電線としたもの長さ1mにて、20gの荷重をかけた状態で、R2にて屈曲させた場合を示したものである。
[実施例及び比較例]
棒状炭素材料として、機械強度、導電性に優れたカーボンナノチューブ(CNT)、外径約0.07mmの紡績糸と、錫めっき錫入り銅合金(SAT)を複合した導体、外径約0.05mmのものと、高張力銅合金(SL)、外径約0.05mmのものを用意した。図6は撚り合せの様子を表す模式図である。
【表1】
※4Ω到達回数: 屈曲試験により、導体抵抗が4Ωまで上昇する屈曲回数
※14Ω到達回数: 屈曲試験により、導体抵抗が14Ωまで上昇する屈曲回数
【符号の説明】
【0014】
10 本発明の複合導体
12、22 導体素線
14 棒状炭素材料
20 従来の一般的な撚り線の導体
T 撚りあわせ時のテンション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7