特開2017-84983(P2017-84983A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-84983(P2017-84983A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】半導体製造工程用フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170414BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170414BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/02 Z
   C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-212473(P2015-212473)
(22)【出願日】2015年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 真保
(72)【発明者】
【氏名】田中 一也
(72)【発明者】
【氏名】八木 善史
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA04
4J004CB03
4J004FA04
4J004FA05
4J004FA08
4J040DF031
4J040EF181
4J040EF281
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040MA10
4J040MA11
4J040NA20
4J040PA23
4J040PA42
5F063AA18
5F063AA31
5F063EE04
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE22
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エキスパンド性、復元性に優れ、ウエハダイシングの工程において問題が発生しない、半導体製造工程用フィルムを提供する。
【解決手段】スチレン/エチレンランダム共重合体を主成分として含み、前記スチレン/エチレンランダム共重合体に占めるスチレン成分の含有量が30質量%以上、80質量%以下である。ただし、スチレン成分とエチレン成分の合計を100質量%とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン/エチレンランダム共重合体(A)を主成分として含み、前記スチレン/エチレンランダム共重合体(A)に占めるスチレン成分の含有量が30質量%以上、80質量%以下(ただし、スチレン成分とエチレン成分の合計を100質量%とする。)であることを特徴とする、半導体製造工程用フィルム。
【請求項2】
前記スチレン/エチレンランダム共重合体(A)及びポリオレフィン系樹脂(B)の組み合わせを主成分として含み、(A)及び(B)の合計質量に対して、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)を99〜50質量%、ポリオレフィン系樹脂(B)を1〜50質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の半導体製造工程用フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂(B)が、プロピレン単独重合体、及び/または、プロピレン/α−オレフィン共重合体であることを特徴とする、請求項2に記載の半導体製造工程用フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムの少なくとも片面側に粘着剤層が設けられてなる半導体製造工程用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程において使用するのに適した粘着テープ及び該粘着テープの基材として用いられるフィルムについての発明である。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、まずシリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハが大径の状態で製造され、このウエハは素子小片(チップ)に切断分離(ダイシング)された後に次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハは予め粘着シート(ダイシングシート)に貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップ、マウンティングの各工程に供される。
【0003】
前記ダイシング工程においては、回転しながら移動する丸刃によってウエハの切断が行なわれるが、その際に半導体ウエハを保持するダイシングシートの粘着シート内部まで切り込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式が主流となってきている。該粘着シートは、基材上に粘着剤が塗布されてなるが、該基材としては、エキスパンド性を考慮して比較的軟質な樹脂からなる基材が従来から用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエン炭化水素共重合体水素添加物とプロピレン系樹脂からなる多層フィルムについて開示されており、具体例としてSEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン3元ブロック共重合体)とプロピレン系樹脂からなる積層フィルムが開示されているが、SEBSはエチレン成分やブチレン成分がブロックで存在しているため、これらが結晶化し、エキスパンド時に降伏して復元性が発現しにくいという問題がある。また、プロピレン系樹脂の結晶化度が高いため、配合量が多いとやはりエキスパンド後に復元しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−094418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エキスパンド性、復元性に優れ、半導体のウエハをダイシングする工程において問題が発生しない、半導体製造工程用フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の共重合体を主成分としてフィルムに含有させると、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]スチレン/エチレンランダム共重合体(A)を主成分として含み、前記スチレン/エチレンランダム共重合体(A)に占めるスチレン成分の含有量が30質量%以上、80質量%以下(ただし、スチレン成分とエチレン成分の合計を100質量%とする。)であることを特徴とする、半導体製造工程用フィルム。
[2]前記スチレン/エチレンランダム共重合体(A)及びポリオレフィン系樹脂(B)の組み合わせを主成分として含み、(A)及び(B)の合計質量に対して、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)を99〜50質量%、ポリオレフィン系樹脂(B)を1〜50質量%含有することを特徴とする、[1]に記載の半導体製造工程用フィルム。
[3]前記ポリオレフィン系樹脂(B)が、プロピレン単独重合体、及び/または、プロピレン/α−オレフィン共重合体であることを特徴とする、[2]に記載の半導体製造工程用フィルム。
[4][1]〜[3]のいずれか1項に記載のフィルムの少なくとも片面側に粘着剤層が設けられてなる半導体製造工程用フィルム。
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エキスパンド性、復元性に優れ、半導体のウエハのダイシング工程、特にエキスパンド工程において好ましい性能を有する半導体製造工程用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の1つの実施態様は、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)を主成分として含む半導体製造工程用フィルムである。
【0012】
[スチレン/エチレンランダム共重合体(A)]
本発明に用いるスチレン/エチレンランダム共重合体(A)は、スチレン成分とエチレン成分との共重合体である。
【0013】
スチレン/エチレンランダム共重合体(A)に占めるスチレン成分の含有量は、30質量%以上、80質量%以下であり、35質量%以上、75質量%以下であることが好ましく、40質量%以上、70質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上、65質量%以下であることが更に好ましい(ただし、スチレン成分とエチレン成分の合計を100質量%とする)。スチレン/エチレンランダム共重合体(A)に占めるスチレン成分の含有量がこの範囲にあれば、柔軟性や復元性に優れる半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0014】
スチレン/エチレンランダム共重合体(A)を構成するスチレン成分としては、スチレン単独、α−メチルスチレン単独、p−メチルスチレン単独のいずれかであってもよく、これら2種または3種の組み合わせであってもよいが、エキスパンド性や生産性の観点から、スチレン単独であることが好ましい。
【0015】
スチレン/エチレンランダム共重合体(A)を構成するエチレン成分としては、エチレン単独であってもよく、エチレンと他のモノマー成分の組み合わせであってもよい。エチレンと他のモノマー成分との組み合わせとしては、エチレンとα−オレフィンとの組み合わせが好ましい。エチレンとα−オレフィンの組み合わせの具体例としては、エチレン/ブテン−1、エチレン/ヘキセン−1、エチレン/オクテン−1、エチレン/ブテン−1/ヘキセン−1、エチレン/ブテン−1/オクテン−1、エチレン/ヘキセン−1/オクテン−1、エチレン/ブテン−1/ヘキセン−1/オクテン−1等が挙げられる。
【0016】
スチレン/エチレンランダム共重合体(A)の重合方式は、ランダム共重合である。ブロック共重合体であると、エチレンブロックが規則正しく並んで結晶化するため、エキスパンドした際に降伏し、復元率が悪くなってしまう。一方、スチレン成分とエチレン成分がランダムに重合されているランダム共重合体の場合、分子鎖が不規則なために結晶化が阻害され、エキスパンドした際に降伏せず、十分な復元率を発現することができる。
【0017】
[オレフィン系樹脂(B)]
本発明の半導体製造工程用フィルムは、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)の他に、必要に応じてオレフィン系樹脂(B)を更に含むことができる。オレフィン系樹脂(B)を更に含むことで、弾性率や耐熱性を向上することができ、加工性やエキスパンド性、耐熱性に優れた半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0018】
オレフィン系樹脂(B)の種類は、特に限定されるものではないが、プロピレンの単独重合体、または、プロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体、あるいは、ブロック共重合体、または、これらの混合物であることが、弾性率や耐熱性を向上できるという点で好ましい。α−オレフィンの具体例としては、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等が挙げられる。
【0019】
プロピレンとα−オレフィンの共重合体を用いる場合、オレフィン系樹脂(B)中に占めるα−オレフィン成分の含有量は、0.1質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上、15質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、10質量%以下であることが更に好ましい(ただし、プロピレンとα−オレフィン成分の合計を100質量%とする)。α−オレフィンがかかる範囲内であれば、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)と混合した際に、加工性やエキスパンド性、復元性、耐熱性に優れた半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0020】
本発明のもう1つの実施態様は、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との組み合わせを主成分として含む半導体製造工程用フィルムである。
本発明の半導体製造工程用フィルムは、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)単独からなるものでも良いが、ポリオレフィン系樹脂(B)を更に含むことで、加工性やエキスパンド性、耐熱性を向上することができる。
【0021】
スチレン/エチレンランダム共重合体(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の含有量としては、(A)及び(B)の合計質量に対して、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)99〜50質量%、及び、ポリオレフィン系樹脂(B)1〜50質量%が好ましい。すなわち、(A):(B)=99:1〜50:50(質量比)であることが好ましく、(A):(B)=97:3〜55:45(質量比)であることが更に好ましく、(A):(B)=95:5〜60:40(質量比)であることがより好ましい。スチレン/エチレンランダム共重合体(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の質量比がかかる範囲であれば、透明性や復元性を損なうことなく、加工性やエキスパンド性、耐熱性に優れる半導体製造工程用フィルムを得ることができる。
【0022】
[半導体製造工程用フィルム]
本発明の半導体製造工程用フィルムは、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)単独、または、スチレン/エチレンランダム共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の組み合わせを主成分として含み、柔軟性、加工性、エキスパンド性、透明性、復元性、耐熱性に優れ、ひいては、特にウエハのダイシング工程において用いた際、ウエハダイシングに問題が発生しない半導体製造工程用フィルムである。なお、本発明で言う「主成分」とは、質量比率が50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、とりわけ好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0023】
半導体製造工程用フィルムは、引張降伏伸度が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましく、降伏点が存在しないことがとりわけ好ましい。ウエハのダイシング工程においては、基材フィルムを30〜50%延伸するのが一般的だが、引張降伏伸度が30%未満だと、延伸時に降伏してしまい、その後の復元性が発現しにくい。引張降伏伸度がかかる範囲であれば、半導体製造工程用フィルムが十分な復元性を発現することができる。なお、本発明で言う復元性とは、半導体製造工程用フィルムをエキスパンドした後に、どれだけ元の長さに戻ったかを表す指標であり、以下の式で表される復元率で評価される。
復元率(%)=(引張直後の長さ−復元後の長さ)÷(引張直後の長さ−引張前の長さ)×100
【0024】
復元率の値は、65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましい。半導体製造工程用フィルムの復元率の値がかかる範囲であることにより、ダイシング後の工程にも不具合を生じることがない。
【0025】
半導体製造工程用フィルムは、必要に応じて上記以外の他の合成樹脂や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、スリップ剤(滑剤)、アンチブロッキング剤、顔料、着色剤、充填剤、核剤、難燃剤等、通常ポリオレフィン系樹脂製フィルムに添加される添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。半導体製造工程用フィルムは単層でも多層でもよく、各層に前記添加剤を配合してもよい。
【0026】
本発明の半導体製造工程用フィルムを用いた粘着テープにおいて粘着剤として紫外線硬化型のアクリル系粘着剤を用いる場合は、基材フィルムは紫外線透過タイプとすることが好ましく、通常、紫外線吸収剤の添加は避けることが好ましい。
【0027】
半導体製造工程用フィルムは、Tダイ押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の一般的なポリオレフィン系樹脂フィルムの成形方法により製造することができ、多層の場合は前記の方法で製造した個々の層(フィルム)をラミネーターを用いて貼り合わせる方法やフィルム成形と同時に圧着ラミネートする方法により製造できるが、多層Tダイ押出し法によって成形と同時に積層フィルムを製造するのが工程数も減らすことができて特に好ましい。
【0028】
半導体製造工程用フィルムの厚みは、10μm以上、500μm以下であり、20μm以上、400μm以下であることが好ましく、30μm以上、300μm以下であることがより好ましく、50μm以上、200μm以下であることが更に好ましい。フィルム厚みがかかる範囲であれば、柔軟性、加工性、エキスパンド性、透明性、復元性、耐熱性に優れる半導体製造工程用フィルムが得られる。
【0029】
基材フィルムが多層である場合、各層の厚さは特に限定されないが、例えば基材フィルムが(A)層/(B)層/(C)層の少なくとも3層を有する場合には、各層の厚さの比は特に限定されるものではないが、(A)層の厚さ:(B)層の厚さ:(C)層の厚さ=1:1:1〜1:10:1であるのが好ましい。また各層の組成は同じであっても異なっていてもよい。
【0030】
半導体製造工程用フィルムの少なくとも片面側に粘着剤層を設けることにより、粘着テープが得られる。粘着剤層は、粘着剤を50〜100質量%含有するのが好ましい。粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、従来公知の粘着剤用のアクリル系樹脂を広く用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルの重合体、共重合性単量体との共重合体またはこれらの混合物が用いられる。更に、アクリル系粘着剤の接着性や凝集力を制御する目的でアクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリルまたは酢酸ビニル等の単量体を共重合させてもよい。これらの単量体を重合して得られるアクリル系(共)重合体の重量平均分子量は、5×10〜2×10であることが好ましく、4×10〜8×10であることが更に好ましい。
【0031】
更に、粘着剤層に架橋剤を配合することにより、接着力と凝集力とを任意の値に設定することができる。このような架橋剤としては、多価イソシアネート化合物、多価エポキシ化合物、多価アジリジン化合物及びキレート化合物等がある。多価イソシアネート化合物としては、具体的にはトルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらのアダクトタイプのもの等が用いられる。多価エポキシ化合物としては、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル及びテレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等が用いられる。多価アジリジン化合物としては、具体的にはトリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリホスファトリアジン等が用いられる。またキレート化合物としては、具体的にはエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート及びアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が用いられる。
【0032】
また、粘着剤層中に光重合性化合物を配合することによって、粘着剤層に光線、好ましくは紫外線を照射することにより、初期の接着力を大きく低下させ、容易に被着体から該粘着フィルムを剥離することができる。このような光重合性化合物としては、たとえば特開昭60−196956号公報及び特開昭60−223139号公報に開示されているような光照射によって三次元網状化しうる、分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及び市販のオリゴエステルアクリレート等が用いられる。なお、粘着剤層中に、光重合開始剤を混入することにより、光照射による重合硬化時間及び光照射量を少なくすることができる。このような光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル及びβ−クロールアンスラキノン等が挙げられる。光重合開始剤は、通常光重合性化合物100重量部に対し0.1〜10重量部の量が用いられる。
【0033】
粘着剤層の厚みは、通常1〜50μmである。粘着剤層の厚みがかかる範囲であれば、粘着性とコストのバランスに優れる。
【0034】
粘着剤層の形成は、半導体製造工程用フィルム上に、粘着剤を樹脂等の成分が可溶な溶剤に溶解した後、グラビアコート法、リバースロールコート法、コンマコート法、バーコート法、ナイフコート法及びキスコート法等従来公知のコーティング方式により基材フィルム上に塗布し、溶剤を揮発、乾燥させる方法を用いればよい。
【0035】
半導体工程用フィルムの少なくとも片面側は、プラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理及び火炎処理等の方法により表面処理されていてもよい。また、半導体製造工程用フィルムと粘着剤層の間には、必要によりプライマー層を設けてもよい。また、本発明の目的を損なわない限り、粘着テープの粘着剤層が設けられた側と反対面及び/または半導体製造工程用フィルムと粘着剤層の間に更に樹脂層を設けても良い。
【0036】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
[評価方法]
(1)復元率
JIS K7127に基づいて、得られたフィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23℃/60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフ(引張速度:50mm/分)にて50%延伸し1分間保持した後、試験機から外して5分間放置して復元させ、下記の計算式により復元率を測定した。
復元率(%)=(引張直後の長さ−復元後の長さ)÷(引張直後の長さ−引張前の長さ)×100
ここで、引張直後の長さとは、島津製作所製オートグラフで50%延伸した状態の長さを言う。
【0038】
(2)引張降伏伸度
JIS K7127に基づいて、得られたフィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23℃/60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフ(引張速度:50mm/分)を用いて引張降伏伸度を測定した。
【0039】
本実施例において用いた材料は以下の通りである。
【0040】
[スチレン/エチレンランダム共重合体(A)]
(A)−1:スチレン/エチレンランダム共重合体(スチレン/エチレン=48/52(質量比))
(A)−2:スチレン/エチレンランダム共重合体(スチレン/エチレン=62/38(質量比))
【0041】
[ポリオレフィン系樹脂(B)]
(B)−1:ノバテックPP FY6HA(日本ポリプロ(株)製、プロピレン単独重合体)
【0042】
[実施例1]
(A)−1を40mmφ同方向二軸押出機を用いて200℃で混練した後、Tダイより押出し、次いで約30℃のキャスティングロールにて急冷し、厚み80μmのシートを作製した。得られたシートについて、復元率、引張降伏伸度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例2]
原料として(A)−1と(B)−1を混合質量比80:20(質量比)の割合で混合した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例3]
原料として(A)−1と(B)−1を混合質量比60:40(質量比)の割合で混合した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
[実施例4]
原料として(A)−2と(B)−1を混合質量比80:20(質量比)の割合で混合した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例1]
原料として(B)−1を使用した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
[比較例2]
原料として(A)−1と(B)−1を混合質量比20:80(質量比)の割合で混合した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例3]
原料として(B)−1と(N)−1(旭化成(株)製、タフテック H1041、SEBS、スチレン比率=30質量%)を混合質量比40:60(質量比)の割合で混合した以外は、実施例1と同様の手順によりフィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1より、実施例1〜4は、復元性に優れ、エキスパンド工程においても好ましい性能を有していることがわかる。一方、比較例1〜3は、復元率が悪い結果であった。よって、本発明の半導体工程用フィルムは、柔軟性及びカット性に優れ、特にエキスパンド工程において優れる性能を有し、好適に用いることができることがわかる。