(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-85803(P2017-85803A)
(43)【公開日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】昇圧部を有する半導体装置及び昇圧回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20170414BHJP
【FI】
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-212616(P2015-212616)
(22)【出願日】2015年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】308017571
【氏名又は名称】シナプティクス・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089071
【弁理士】
【氏名又は名称】玉村 静世
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 穣
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS04
5H730BB02
5H730DD04
(57)【要約】
【課題】トランジスタサイズを大きくすることなく昇圧回路の出力インピーダンスを低くする。
【解決手段】チャージポンプ回路による昇圧電圧の出力端子を昇圧動作の開始前に所定の電圧にプリチャージする。チャージポンプ回路はポンピング容量の一方の容量電極を第1電圧と第2に交互に切り替えながら、ポンピング容量の他方の容量電極に周期的に第3電圧を印加して、当該第3電圧をその切り替え毎に持ち上げることによって昇圧し、その昇圧電圧を出力用のMOSスイッチ回路を介して逐次安定化容量に供給する。これによって第2電圧と第3電圧の和の電圧に昇圧された昇圧電圧を得ることができる。プリチャージ回路によるプリチャージ電圧を前記第3電圧とすることにより、第3電圧を供給するMOSスイッチ回路及び昇圧電圧の出力用のMOSスイッチ回路を第2電圧と第3電圧の和の電圧よりも低い電圧にすることが可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧部を有する半導体装置であって、
前記昇圧部はチャージポンプ部とプリチャージ回路を有し、
前記チャージポンプ部は、安定化容量が外付けされる安定化容量接続端子と、
ポンピング容量が外付けされるポンピング容量接続端子と、
前記ポンピング容量接続端子を介して前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧と第2電圧を交互に供給する第1のMOSスイッチ回路と、
前記ポンピング容量接続端子を介して前記ポンピング容量の他方の容量電極に第3電圧を周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路と、
前記第2のMOSスイッチ回路と前記安定化容量接続端子との間に配置され、前記第2のMOSスイッチ回路とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路と、を有し、
前記プリチャージ部は、前記チャージポンプ回路による昇圧動作の前に前記安定化容量接続端子に向けて前記第3電圧を供給する第4のMOSスイッチ回路を有する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1のMOSスイッチ回路、前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路は、前記第3電圧よりも大きく且つ前記第2電圧と前記第3電圧の和の電圧よりも小さな耐圧を有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、前記第1のMOSスイッチ回路のゲート電極は前記第1電圧と前記第2電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受け、
前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路のゲート電極は、前記安定化容量接続端子と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードの電圧と前記接続ノードの電圧の1/n(nは2以上の自然数)の電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受け、
前記第2のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされ、
前記第3のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる、半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、n=2である、半導体装置。
【請求項5】
請求項3において、前記第3電圧は外部から供給される電圧であり、
前記第2電圧は半導体装置内部で前記第3電圧に基づいて生成される電圧であり、
前記第1電圧はグランド電圧である、半導体装置。
【請求項6】
請求項3において、前記第3電圧は外部から供給される電圧であり、
前記第2電圧は半導体装置内部で前記第3電圧に基づいて生成される電圧であり、
前記第1電圧は外部から供給される第4電圧に基づいて生成される電圧であって前記第2電圧とは異なる極性を有する電圧である、半導体装置。
【請求項7】
請求項5において、前記第2電圧及び前記第3電圧は正の電圧であり、
前記第1のMOSスイッチ回路は前記ポンピング容量の一方の容量電極にグランド電圧を供給するnチャネル型MOSトランジスタと、前記ポンピング容量の一方の容量電極に前記第2電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタとを有し、
前記第2のMOSスイッチ回路は並列接続され相補的にスイッチ動作されることにより前記第3電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタ及びnチャネル型MOSトランジスタを有し、
前記第3のMOSスイッチ回路及び前記第4のMOSスイッチ回路は夫々pチャネル型MOSトランジスタを有する、半導体装置。
【請求項8】
請求項5において、前記第2電圧及び前記第3電圧は負の電圧であり、
前記第1のMOSスイッチ回路は前記ポンピング容量の一方の容量電極にグランド電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタと、前記ポンピング容量の一方の容量電極に前記第2電圧を供給するnチャネル型MOSトランジスタとを有し、
前記第2のMOSスイッチ回路は並列接続され相補的にスイッチ動作されることにより前記第3電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタ及びnチャネル型MOSトランジスタを有し、
前記第3のMOSスイッチ回路及び前記第4のMOSスイッチ回路は夫々nチャネル型MOSトランジスタを有する、半導体装置。
【請求項9】
請求項5において、前記第1電圧は外部から供給された負電圧に基づいて半導体装置の内部で生成された負電圧あり、
前記第2電圧及び前記第3電圧は正の電圧であり、
前記第1のMOSスイッチ回路は前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧を供給するnチャネル型MOSトランジスタと、前記ポンピング容量の一方の容量電極に前記第2電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタとを有し、
前記第2のMOSスイッチ回路は並列接続され相補的にスイッチ動作されることにより前記第3電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタ及びnチャネル型MOSトランジスタを有し、
前記第3のMOSスイッチ回路及び前記第4のMOSスイッチ回路は夫々pチャネル型MOSトランジスタを有する、半導体装置。
【請求項10】
昇圧部を有する半導体装置であって、
前記昇圧部はチャージポンプ部を有し、
前記チャージポンプ部は、安定化容量が外付けされる安定化容量接続端子と、
ポンピング容量が外付けされるポンピング容量接続端子と、
前記ポンピング容量接続端子を介して前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧と第2電圧を交互に供給する第1のMOSスイッチ回路と、
前記ポンピング容量接続端子を介して前記ポンピング容量の他方の容量電極に第3電圧を周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路と、
前記第2のMOSスイッチ回路と前記安定化容量接続端子との間に配置され、前記第2のMOSスイッチ回路とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路と、を有し、
半導体装置の外部から前記第3電圧を受ける第3電圧供給端子にカソードが接続され且つアノードが前記安定化容量接続端子に接続されるダイオードによる当該安定化容量接続端子への第3電圧のチャージ機能を利用することを前提に、前記第1のMOSスイッチ回路、前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路は、前記第3電圧よりも大きく且つ前記第2電圧と前記第3電圧の和の電圧よりも小さな耐圧を有する、半導体装置。
【請求項11】
請求項10において、前記第1のMOSスイッチ回路のゲート電極は前記第1電圧と前記第2電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受け、
前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路のゲート電極は、前記安定化容量接続端子と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードの電圧と前記接続ノードの電圧の1/n(nは2以上の自然数)の電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受け、
前記第2のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされ、
前記第3のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる、半導体装置。
【請求項12】
請求項11において、n=2である、半導体装置。
【請求項13】
請求項12において、前記第3電圧は外部から供給される電圧であり、
前記第2電圧は半導体装置内部で前記第3電圧に基づいて生成される電圧であり、
前記第1電圧はグランド電圧である、半導体装置。
【請求項14】
請求項12において、前記第3電圧は外部から供給される電圧であり、
前記第2電圧は半導体装置内部で前記第3電圧に基づいて生成される電圧であり、
前記第1電圧は外部から供給される第4電圧に基づいて生成される電圧であって前記第2電圧とは異なる極性を有する電圧である、半導体装置。
【請求項15】
チャージポンプ回路とプリチャージ回路を有する昇圧回路であって、
前記チャージポンプ回路は、安定化容量と、
ポンピング容量と、
前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧と第2電圧を交互に供給する第1のMOSスイッチ回路と、
前記ポンピング容量の他方の容量電極に第3電圧を周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路と、
前記第2のMOSスイッチ回路と前記安定化容量との間に配置され、前記第2のMOSスイッチ回路とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路と、を有し、
前記プリチャージ回路は、前記チャージポンプ回路による昇圧動作の前に前記安定化容量に向けて前記第3電圧を供給する第4のMOSスイッチ回路を有する、昇圧回路。
【請求項16】
請求項15において、前記第1のMOSスイッチ回路、前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路は、前記第3電圧よりも大きく且つ前記第2電圧と第3電圧の和の電圧よりも小さな耐圧を有する、昇圧回路。
【請求項17】
請求項16において、前記第1のMOSスイッチ回路のゲート電極は前記第1電圧と前記第2電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受け、
前記第2のMOSスイッチ回路及び第3のMOSスイッチ回路のゲート電極は、前記安定化容量と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードの電圧と前記接続ノードの電圧の1/n(nは2以上の自然数)の電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受け、
前記第2のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされ、
前記第3のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる、昇圧回路。
【請求項18】
チャージポンプ回路とプリチャージ回路を有する昇圧回路であって、
前記チャージポンプ回路は、安定化容量と、
ポンピング容量と、
前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧と第2電圧を交互に供給する第1のMOSスイッチ回路と、
前記ポンピング容量の他方の容量電極に第3電圧を周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路と、
前記第2のMOSスイッチ回路と前記安定化容量との間に配置され、前記第2のMOSスイッチ回路とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路と、を有し、
前記プリチャージ回路は、カソードに前記第3電圧を受け、アノードが前記安定化容量と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードに結合されたダイオードを有し、
前記第1のMOSスイッチ回路、前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路は、前記第3電圧よりも大きく且つ前記第2電圧と前記第3電圧の和の電圧よりも小さな耐圧を有する、昇圧回路。
【請求項19】
請求項18において、前記第1のMOSスイッチ回路のゲート電極は前記第1電圧と前記第2電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受け、
前記第2のMOSスイッチ回路及び第3のMOSスイッチ回路のゲート電極は、前記安定化容量と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードの電圧とその電圧の1/n(nは2以上の自然数)の電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受け、
前記第2のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされ、
前記第3のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる、昇圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇圧部を有する半導体装置、更には昇圧回路に関し、例えば表示パネルのドライバIC(Integrated Circuit)に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
外部電源を昇圧するのにチャージポンプ回路を用いることができる。例えば液晶表示パネルの駆動に用いる液晶ドライバは液晶パネルの画素を表示ライン単位で選択したりするために昇圧電圧を必要とする。尚、チャージポンプ回路について記載された文献の例として特許文献1がある。
【0003】
半導体装置のオンチップ回路でチャージポンプ回路を実現するとき、安定化容量とポンピング容量には外付素子を用いる。チャージポンプ回路はポンピング容量の一方の容量電極を第1電圧と第2に交互に切り替えながら、ポンピング容量の他方の容量電極に周期的に第3電圧を印加し、印加した第3電圧をポンピング容量の第1電圧から第2電圧への入力の切り替え毎に持ち上げることによって、その昇圧電圧を出力用のMOS(metal-oxide-semiconductor)スイッチ回路を介して逐次安定化容量に供給する。これによって第2電圧と第3電圧の和の電圧に昇圧された昇圧電圧を得ることができる。
【0004】
このようなチャージポンプ回路では、ポンピング容量の他方の容量電極には最終的に必要な昇圧電圧が形成されることになるから、当該容量電極に第3電圧を印加するMOSスイッチ回路及び出力用のMOSスイッチ回路には第2電圧と第3電圧の和の電圧に匹敵する耐圧が必要になる。これは、昇圧前の第1電圧と第2電圧をポンピング容量の一方に交互に印加する中耐圧のMOSスイッチ回路に比べて耐圧の大きな高耐圧MOSスイッチ回路を用いることを必要とする。MOSスイッチ素子は耐圧が大きい程オン抵抗が大きくなり、オン抵抗を小さくするにはトランジスタサイズを大きくしてゲート幅を拡げなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−256403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者はチャージポンプ回路の出力抵抗について検討した。チャージポンプ回路の出力抵抗が大きけば昇圧動作が非効率となり電力消費も無駄に大きくなる。チャージポンプ回路の出力抵抗を下げるには上記出力用のMOSスイッチ回路のトランジスタサイズを大きくしなければならなくなり、チップサイズを大型化してしまうという問題のあることが本発明者によって明らかにされた。特に、液晶パネルを駆動する液晶ドライバのようなドライバICについて検討したところ、液晶パネルは高解像度化が進んでタッチ検出機能も搭載する場合が多いことに鑑みると、液晶ドライバの消費電流は増加する傾向にあり、増加する消費電流に対応することができる電源が必要になる。したがって、高圧の動作電源を形成するためのチャージポンプ回路についても、増加する消費電流に対応するために昇圧動作を効率かして電力消費の無駄を無くすことが必要になる。そのためには、液晶ドライバに搭載するチャージポンプ回路の出力抵抗を低減して駆動能力を向上させなければならない。そうだからといって液晶ドライバのチップサイズを大きくすることはできない。液晶ドライバは表示パネルの周囲に額縁上に配置して実装されるため、表示パネルユニットの小型化の要請に反しないためには液晶ドライバのチップサイズを極力大きくしないことが必要になる。チャージポンプ回路の出力インピーダンスとチップ占有面積についての事情は液晶ドライバに限らずチャージポンプ回路を備えたその他のドライバICについても同様と考えられる。
【0007】
本発明の目的は、チャージポンプ回路の出力用トランジスタのサイズを大きくすることなくその出力インピーダンスを低くすることにある。
【0008】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。尚、本項において括弧内に記載した図面内参照符号などは理解を容易化するための一例である。
【0010】
〔1〕<昇圧開始前に出力ノードをプリチャージ(
図1、4、6参照)>
半導体装置(3)は昇圧部(13A、14A、16A)を有する。前記昇圧部はチャージポンプ部(PMP−1p、PMP−2p、PMP−4p)とプリチャージ回路(PRCG−1、PRCG−2、PRCG−1)を有する。前記チャージポンプ部は、安定化容量(C−2)が外付けされる安定化容量接続端子(P3)と、ポンピング容量が外付けされるポンピング容量接続端子(P1及びP2)と、前記ポンピング容量接続端子を介して前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧と第2電圧(GNDとVCIP、VCINとGND、VCINとVCIP)を交互に供給する第1のMOSスイッチ回路(PMOS−1及びNMOS−1、PMOS−10及びNMOS−10、PMOS−1及びNMOS−1)と、前記ポンピング容量接続端子を介して前記ポンピング容量の他方の容量電極に第3電圧(VSP、VSN、VSP)を周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路(NMOS−2及びPMOS−3、NMOS−11及びPMOS−12、NMOS−2及びPMOS−3)と、前記第2のMOSスイッチ回路と前記安定化容量接続端子との間に配置され、前記第2のMOSスイッチ回路とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路(PMOS−2、NMOS−11、PMOS−2)と、を有する。前記プリチャージ回路は、前記チャージポンプ回路による昇圧動作の前に前記安定化容量接続端子に向けて前記第3電圧を供給する第4のMOSスイッチ回路(PMOS−4、NMOS−13、PMOS−4)を有する。
【0011】
これによれば、チャージポンプ部による昇圧電圧の出力端子である安定化容量接続端子を昇圧動作の開始前に第3電圧にプリチャージする。チャージポンプ部はポンピング容量の一方の容量電極を第1電圧と第2に交互に切り替えながら、ポンピング容量の他方の容量電極に周期的に第3電圧を印加して、当該第3電圧をその切り替え毎に持ち上げることによって昇圧し、その昇圧電圧を出力用の第3のMOSスイッチ回路を介して逐次安定化容量に供給する。これによって第2電圧と第3電圧の和の電圧に昇圧された昇圧電圧を得ることができる。プリチャージ部によるプリチャージ電圧を前記第3電圧とすることにより、第3電圧を供給する第2のMOSスイッチ回路及び昇圧電圧を出力する第3のMOSスイッチ回路を第2電圧と第3電圧の和の電圧よりも低い電圧にすることが可能になる。これは、第3電圧を供給する第2のMOSスイッチ回路及び昇圧電圧出力用の第3のMOSスイッチ回路のオン抵抗を小さくする方向に作用する。
【0012】
〔2〕<MOSスイッチ回路の耐圧(
図1、4、6参照)>
項1において、前記第1のMOSスイッチ回路、前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路は、前記第3電圧よりも大きく且つ前記第2電圧と前記第3電圧の和の電圧よりも小さな耐圧を有する。
【0013】
これにより、安定化容量接続端子をプリチャージしない構成に比べて、第3電圧を供給する第2のMOSスイッチ回路及び昇圧電圧出力用の第3のMOSスイッチ回路のサイズを大きくすることなく小さな出力インピーダンスを実現することができる。
【0014】
〔3〕<MOSスイッチ回路のゲート電圧(
図1、4、6参照)>
項2において、前記第1のMOSスイッチ回路のゲート電極は前記第1電圧と前記第2電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受ける。前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路のゲート電極は、前記安定化容量接続端子と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードの電圧と前記接続ノードの電圧の1/n(nは2以上の自然数)の電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受ける。前記第2のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる。前記第3のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる。
【0015】
これにより、第2のMOSスイッチ回路及び第3のMOSスイッチ回路のゲート電圧がその耐圧に見合ったものとなる。
【0016】
〔4〕<n=2>
項3において、n=2とする。
【0017】
これにより、第2のMOSスイッチ回路及び第3のMOSスイッチ回路のオン動作とオフ動作を安定化容量接続端子に形成される昇圧電圧を利用して確実に行うことができる。
【0018】
〔5〕<第1電圧にグランド電圧を採用(
図1、4参照)>
項3において、前記第3電圧は外部から供給される電圧であり、前記第2電圧は半導体装置内部で前記第3電圧に基づいて生成される電圧であり、前記第1電圧はグランド電圧である。
【0019】
これによれば、第3電圧が正極性であればグランド電圧を基準に正極性側の昇圧電圧を形成することができ、逆に第3電圧が負極性であればグランド電圧を基準に負極性側の昇圧電圧を形成することができる。昇圧電圧は“第3電圧+第2電圧”になる。
【0020】
〔6〕<第1電圧に第2電圧とは極性の異なる電圧を採用(
図6参照)>
項3において、前記第3電圧は外部から供給される電圧であり、前記第2電圧は半導体装置内部で前記第3電圧に基づいて生成される電圧であり、前記第1電圧は外部から供給される第4電圧に基づいて生成される電圧であって前記第2電圧とは異なる極性を有する電圧である。
【0021】
これによれば、昇圧電圧は“第3電圧+(第2電圧−第1電圧)”となり、第1のMOSスイッチ回路の耐圧は“第2電圧−第1電圧”となる。システムボード上の電源回路から供給される第3電圧はシステムボード上に実装されているその他の回路による電力消費量が増大したりすることによって低下が懸念される場合がある。外部から供給される第3電圧が不所望に低下すると、項5の構成では昇圧電圧を形成する夫々の要素電圧である第3電圧とそれに起因する第2電圧の低下分が全体に占める割合が大きくなる。これに対して項6では、外部から供給される第3電圧が不所望に低下すると、昇圧電圧を形成する要素電圧の一部である第3電圧とそれに起因する第2電圧の低下分が昇圧電圧に影響するが、第1電圧は昇圧電圧の低下に影響を与えない要素電圧になっているので、第3電圧の低下による昇圧電圧への影響を緩和することができる。換言すれば、昇圧電圧の第3電圧への依存性を低下させることができる。
【0022】
〔7〕<
図1参照>
項5において、前記第2電圧(VCIP)及び前記第3電圧(VSDP)は正の電圧である。前記第1のMOSスイッチ回路は前記ポンピング容量の一方の容量電極にグランド電圧(GND)を供給するnチャネル型MOSトランジスタ(NMOS−1)と、前記ポンピング容量の一方の容量電極に前記第2電圧(VCIP)を供給するpチャネル型MOSトランジスタ(PMOSD−1)とを有する。前記第2のMOSスイッチ回路は並列接続され相補的にスイッチ動作されることにより前記第3電圧(VSP)を供給するpチャネル型MOSトランジスタ(PMOS−3)及びnチャネル型MOSトランジスタ(NMOS−2)を有する。前記第3のMOSスイッチ回路及び前記第4のMOSスイッチ回路は夫々pチャネル型MOSトランジスタ(PMOS−2、PMNOS−4)を有する。
【0023】
これによれば、グランド電圧を基準に正極性側の“第2電圧+第3電圧”の昇圧電圧を形成することができる。
【0024】
〔8〕<
図4参照>
項5において、前記第2電圧(VCIN)及び前記第3電圧(VSN)は負の電圧である。前記第1のMOSスイッチ回路は前記ポンピング容量の一方の容量電極にグランド電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタ(PMOS−10)と、前記ポンピング容量の一方の容量電極に前記第2電圧を供給するnチャネル型MOSトランジスタ(NMOS−10)とを有する。前記第2のMOSスイッチ回路は並列接続され相補的にスイッチ動作されることにより前記第3電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタ(PMOSD−11)及びnチャネル型MOSトランジスタ(NMOS−12)を有する。前記第3のMOSスイッチ回路及び前記第4のMOSスイッチ回路は夫々nチャネル型MOSトランジスタ(NMOS−11、NMOS−13)を有する。
【0025】
これによれば、グランド電圧を基準に負極性側の“第2電圧+第3電圧”の昇圧電圧を形成することができる。
【0026】
〔9〕<
図6参照>
項5において、前記第1電圧(VCIN)は外部から供給された負電圧(VSN)に基づいて半導体装置の内部で生成された負電圧ある、前記第2電圧(VCIP)及び前記第3電圧(VSP)は正の電圧である。前記第1のMOSスイッチ回路は前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧を供給するnチャネル型MOSトランジスタ(NMOS−1)と、前記ポンピング容量の一方の容量電極に前記第2電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタ(PMOS−1)とを有する。前記第2のMOSスイッチ回路は並列接続され相補的にスイッチ動作されることにより前記第3電圧を供給するpチャネル型MOSトランジスタ(PMOS−3)及びnチャネル型MOSトランジスタ(NMOS−2)を有する。前記第3のMOSスイッチ回路及び前記第4のMOSスイッチ回路は夫々pチャネル型MOSトランジスタ(PMOS2、PMOS4)を有する。
【0027】
これによれば、負の第1電圧を基準に正極性側の “第3電圧+(第2電圧−第1電圧)” の昇圧電圧を形成することができる。
【0028】
〔10〕<
図5参照>
半導体装置は昇圧部(15A)を有する。前記昇圧部はチャージポンプ部(PMP−3p)を有する。前記チャージポンプ部は、安定化容量が外付けされる安定化容量接続端子(P3)と、ポンピング容量(C−1)が外付けされるポンピング容量接続端子(P1、P2)と、前記ポンピング容量接続端子を介して前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧(GND)と第2電圧(VCIN)を交互に供給する第1のMOSスイッチ回路(PMOS−10、NMOS−10)と、前記ポンピング容量接続端子を介して前記ポンピング容量の他方の容量電極に第3電圧(VSN)を周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路(NMOS−12、PMOS−11)と、前記第2のMOSスイッチ回路と前記安定化容量接続端子との間に配置され、前記第2のMOSスイッチ回路とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路(NMOS−11)と、を有する。半導体装置の外部から前記第3電圧を受ける第3電圧供給端子(P5)にカソードが接続され且つアノードが前記安定化容量接続端子に接続されるダイオード(SKD)による当該前記安定化容量接続端子への第3電圧のチャージ機能を利用することを前提に、前記第1のMOSスイッチ回路、前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路は、前記第3電圧よりも大きく且つ前記第2電圧と前記第3電圧の和の電圧よりも小さな耐圧を有する。
【0029】
これによれば、半導体装置に外付けされるダイオードが安定化容量接続端子を第3電圧にチャージする機能を備えるから、半導体装置がプリチャージ機能を備えていなくても、第2のMOSスイッチ回路及び第3のMOSスイッチ回路に耐圧に低いMOSトランジスタを採用することが可能になり、項1と同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
〔11〕<MOSスイッチ回路のゲート電圧(
図5参照)>
項10において、前記第1のMOSスイッチ回路のゲート電極は前記第1電圧と前記第2電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受ける。前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路のゲート電極は、前記安定化容量接続端子と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードの電圧と前記接続ノードの電圧の1/n(nは2以上の自然数)の電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受ける。前記第2のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされ、前記第3のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる。
【0031】
これによれば、項3と同様の作用効果を奏する。
【0032】
〔12〕<n=2>
項11において、n=2とする。
【0033】
これによればり、項4と童謡の作用効果を奏する。
【0034】
〔13〕<第1電圧にグランド電圧を採用(
図5参照)>
項12において、前記第3電圧は外部から供給される電圧である。記第2電圧は半導体装置内部で前記第3電圧に基づいて生成される電圧である。記第1電圧はグランド電圧である。
【0035】
これによれば、項5と同様の作用効果を奏する。
【0036】
〔14〕<第1電圧に第2電圧とは極性の異なる電圧を採用>
項12において、前記第3電圧は外部から供給される電圧である。記第2電圧は半導体装置内部で前記第3電圧に基づいて生成される電圧である。前記第1電圧は外部から供給される第4電圧に基づいて生成される電圧であって前記第2電圧とは異なる極性を有する電圧である。
【0037】
これによれば、項6と同様の作用効果を奏する。
【0038】
〔15〕<昇圧開始前に出力ノードをプリチャージ(
図1、4、6参照)>
昇圧回路(13、14、16)はチャージポンプ回路(PMP−1、PMP−2、PMP−4)とプリチャージ回路(PRCG−1、PRCG−2、PRCG−1)を有する。前記チャージポンプ回路は、安定化容量(C−2)と、ポンピング容量(C−1)と、前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧と第2電圧(GNDとVCIP、VCINとGND、VCINとVCIP)を交互に供給する第1のMOSスイッチ回路(PMOS−1及びNMPS−1、PMOS−10及びNMOS−10、PMOS−1及びNMPS−1)と、前記ポンピング容量の他方の容量電極に第3電圧(VSP、VSN、VSP)を周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路(NMOS−2及びPMOS−3、NMOS−11及びPMOS−12、NMOS−2及びPMOS−3)と、前記第2のMOSスイッチ回路と前記安定化容量との間に配置され、前記第2のMOSスイッチ回路とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路(PMOS−2、NMOS−11、PMOS−2)と、を有する。前記プリチャージ回路は、前記チャージポンプ回路による昇圧動作の前に前記安定化容量に向けて前記第3電圧を供給する第4のMOSスイッチ回路(PMOS−4、NMOS−13、PMOS−4)を有する。
【0039】
これによれば、項1と同様の作用効果を奏する。
【0040】
〔16〕<MOSスイッチ回路の耐圧(
図1、4、6参照)>
項15において、前記第1のMOSスイッチ回路、前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路は、前記第3電圧よりも大きく且つ前記第2電圧と第3電圧の和の電圧よりも小さな耐圧を有する。
【0041】
これによれば、項2と同様の作用効果を奏する。
【0042】
〔17〕<MOSスイッチ回路のゲート電圧(
図1、4、6参照)>
項16において、前記第1のMOSスイッチ回路のゲート電極は前記第1電圧と前記第2電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受ける。前記第2のMOSスイッチ回路及び第3のMOSスイッチ回路のゲート電極は、前記安定化容量と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードの電圧と前記接続ノードの電圧の1/n(nは2以上の自然数)の電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受ける。前記第2のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる。前記第3のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる。
【0043】
これによれば、項3と同様の作用効果を奏する。
【0044】
〔18〕<
図5参照>
昇圧回路(15)はチャージポンプ回路(PMP−3p)とプリチャージ回路(PRCG−3)を有する。前記チャージポンプ回路は、安定化容量(C−2)と、ポンピング容量(C−12)と、前記ポンピング容量の一方の容量電極に第1電圧(GND)と第2電圧(VCIN)を交互に供給する第1のMOSスイッチ回路(PMOS−10、NMOS−10)と、前記ポンピング容量の他方の容量電極に第3電圧(VSN)を周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路(NMOS−12、PMOS−11)と、前記第2のMOSスイッチ回路と前記安定化容量との間に配置され、前記第2のMOSスイッチ回路とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路(NMOS−11)と、を有する。前記プリチャージ回路は、カソードに前記第3電圧を受け、アノードが前記安定化容量と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードに結合されたダイオード(SKD)を有する。前記第1のMOSスイッチ回路、前記第2のMOSスイッチ回路及び前記第3のMOSスイッチ回路は、前記第3電圧よりも大きく且つ前記第2電圧と前記第3電圧の和の電圧よりも小さな耐圧を有する。
【0045】
これによれば、項10と同様の作用効果を奏する。
【0046】
〔19〕<MOSスイッチ回路のゲート電圧(
図5参照)>
項18において、前記第1のMOSスイッチ回路のゲート電極は前記第1電圧と前記第2電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受ける。記第2のMOSスイッチ回路及び第3のMOSスイッチ回路のゲート電極は、前記安定化容量と前記第3のMOSスイッチ回路との接続ノードの電圧とその電圧の1/n(nは2以上の自然数)の電圧との間で変化されるスイッチ制御信号を受ける。記第2のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる。前記第3のMOSスイッチ回路は前記接続ノードの電圧によってオフにされ、前記1/nの電圧によってオンにされる。
【0047】
これによれば、項11と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0048】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0049】
すなわち、チャージポンプ回路の出力用トランジスタのサイズを大きくすることなくその出力インピーダンスを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は昇圧回路の第1の例を示す回路図である。
【
図2】
図2は昇圧回路の主なスイッチ制御信号の信号生成論理を示す回路図である。
【
図3】
図3は
図1の昇圧回路による昇圧動作タイミングを例示する動作波形図である。
【
図4】
図4は昇圧回路の第2の例を示す回路図である。
【
図5】
図5は昇圧回路の第3の例を示す回路図である。
【
図6】
図6は昇圧回路の第4の例を示す回路図である。
【
図7】
図7は昇圧回路を適用した昇圧回路を持つドライバICの適用例である液晶パネルユニットの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1には昇圧回路の第1の例が示される。同図に示される昇圧回路13はドライバICのような半導体集積回路にオンチップされた昇圧部13Aを利用して構成される。半導体集積回路は、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路製造技術などによって単結晶シリコンなどの1個の半導体基板(半導体チップ)に形成されている。
【0052】
昇圧回路13はチャージポンプ回路PMP−1とプリチャージ回路PRCG−1から成る。チャージポンプ回路PMP−1は半導体集積回路にオンチップされたチャージポンプ部PMP−1p、半導体集積回路の外付け素子としてのポンピング容量C−1及び安定化容量C−2によって構成される。
【0053】
チャージポンプ部PMP−1pは、外付け素子を接続するために、安定化容量C−2が外付けされる安定化容量接続端子P3と、ポンピング容量C−1が外付けされるポンピング容量接続端子P1、P2を有する。その他に外部電源入力端子として、正極性の外部電圧VSP(例えば5V)が供給される外部電源端子P4、負極性の外部電圧VSN(例えば−5V)が供給される外部電源端子P5が配置される。図示は省略するが半導体集積回路はロジック回路用の電源電圧(例えば3V)の外部電源端子なども備える。
【0054】
ポンピング容量接続端子P1、P2に外付けされたポンピング容量C−1に対してその一方の容量電極に第1電圧の一例であるグランド電圧GNDと第2電圧の一例である正極性の内部電圧VCIPを交互に供給する第1のMOSスイッチ回路として、例えばpチャネル型のMOSトランジスタPMOS−1とnチャネル型のMOSトランジスタNMOPS−1が並列に配置される。
【0055】
ポンピング容量の他方の容量電極には第3電圧の一例である正極性の外部電圧VSPを昇圧動作期間で周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路として、例えばnチャネル型のMOSトランジスタNMOS−2とpチャネル型のMOSトランジスタPMOS−3が並列に配置される。
【0056】
MOSトランジスタPMOS−3、NMOS−2の接続ノードと安定化容量接続端子P3との間には、昇圧動作期間においてMOSトランジスタPMOS−3、NMOS−2とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路としてpチャネル型のMOSトランジスタPMOS−2が設けられている。
【0057】
プリチャージ回路PRCG−1は、第3電圧の一例である外部電圧VSPとグランド電圧を動作電圧とするバッファアンプBUF−1と、その出力をチャージポンプ回路による昇圧動作の前に前記安定化容量接続端子P3に向けて供給する第4のMOSスイッチ回路としてpチャネル型のMOSトランジスタPMOS−4を有する。バッファアンプBUF−1はプリチャージ制御信号φPCpを反転して出力する。プリチャージ制御信号φPCpのローレベルでプリチャージを指示し、その期間にバッファアンプBUF−1からMOSトランジスタPMOS−4を介して出力される外部電圧VSPによって安定化容量C−2がプリチャージされる。
【0058】
内部電圧VCIPは外部電圧VSPとグランド電圧GNDを用いてレギュレータ(図示を省略)で生成される電圧であり、GND≦VCIP≦VSPとされる。昇圧動作において、ポンピング容量C−1の一方の容量電極がグランド電圧GNDと内部電圧VCIPに交互に切り替えられることにより、ポンピング容量C−1の他方の容量電極に周期的に与えられた外部電圧VSPが内部電圧VCIP分持ち上げられて昇圧される。VCMはポンピング容量C−1の一方の容量電極の電圧、VCPはポンピング容量C−1の他方の容量電極の電圧を意味する。昇圧電圧VGHは内部電圧VCIPと外部電圧VSPの和の電圧になる。内部電圧VCIPの最大は外部電圧VSPになるので、昇圧電圧VGHは最大で外部電圧VSPの2倍となる。ここで、プリチャージ開始前に安定化容量接続端子P3はプリチャージ回路PRCG−1によって外部電圧VSPにプリチャージされ、これを基点に、最大で外部電圧VSPの2倍の昇圧電圧VGHが形成される。この昇圧動作の過程でMOSトランジスタPMOS−2、NMOS−2、PMOS−3の夫々のドレイン・ソース間、ゲート・ソース間、ゲートドレイン間の電位差が最大でも外部電圧VSPを超えないようにするために、MOSトランジスタPMOS−2、NMOS−2、PMOS−3のゲート電圧を、昇圧電圧VGHとそれの半分の電圧VGH/2との間で変化させる。これによって、それらMOSトランジスタPMOS−2、NMOS−2、PMOS−3の耐圧は、MOSトランジスタPMOS−1、NMOS−1の耐圧(中耐圧)と同じでよく、それよりも高耐圧のMOSトランジスタを用いることを要しない。MOSトランジスタPMOS−2、NMOS−2、PMOS−3のゲート電圧におけるローレベルは昇圧電圧VGHの半分の電圧VGH/2に限定されず、MOSトランジスタPMOS−1、NMOS−1の耐圧が外部電圧VSPに対して比較的大きな余裕があれば昇圧電圧VGHの半分より小さくてもよいし、MOSトランジスタPMOS−2、NMOS−2、PMOS−3の夫々オン・オフのゲート電圧差が小さければ昇圧電圧VGHの半分より大きくてもよい。
【0059】
更に詳述する。MOSトランジスタPMOS−1、NMOS−1のゲートには昇圧動作期間で内部電圧VCIPとグランド電圧GNDとの間で交互にクロック変化されるゲート制御信号が供給される。MOSトランジスタPMOS−1、NMOS−1は外部電圧VSPに対する耐圧(中耐圧)を備える。MOSトランジスタPMOS−3、NMOS−2のゲートには昇圧電圧VGHとそれの半分の電圧VGH/2との間で変化させるゲート制御信号VG−P3、VG−N2が与えられる。MOSトランジスタPMOS−2のゲートには昇圧電圧VGHとそれの半分の電圧VGH/2との間で変化させるゲート制御信号VG−P2が与えられる。プリチャージ回路PRCG−1のMOSトランジスタPMOS−4の端子間には少なくとも外部電圧VSPの2倍の電圧が印加されるから、チャージポンプ回路PMP−1のMOSトランジスタPMOS−2等の中耐圧MOSトランジスタに比べて耐圧の大きな高耐圧MOSトランジスタが採用される。特に制限されないが、この例ではMOSトランジスタPMOS−4のゲートには正の昇圧電圧VGHが供給される。負の昇圧電圧VGLは負の外部電圧VSNの最大で2倍に昇圧形成された電圧である。
【0060】
図2にはゲート制御信号VG−P2、VG−P3、VG−N2の生成論理が例示される。昇圧電圧VGHの半分の電圧VGH/2は、抵抗分圧比が1/2の抵抗分圧回路40で昇圧電圧VGHを半分とし、グランド電圧GNDと外部電圧VSPを電源とするバッファアンプ41でその分圧電圧を受けて生成する。
【0061】
ゲート制御信号VG−P2は昇圧電圧VGHとその半分の電圧VGH/2を電源とするインバータバッファ43及びレベルシフタ42によって生成される。レベルシフタ42は、昇圧動作期間にクロック変化されるタイミング信号VIN1を入力し、グランド電圧GNDと外部電圧VSPとの間の入力振幅を正の昇圧電圧VGHと負の昇圧電圧VGLとの間の信号振幅にレベルシフトして出力する。インバータバッファ43はレベルシフタ42の出力に応じて昇圧電圧VGHとその半分の電圧VGH/2の間のゲート制御信号VGV−P2を出力する。
【0062】
ゲート制御信号VG−P3、VG−N2は昇圧電圧VGHとその半分の電圧VGH/2を電源とするインバータバッファ46、昇圧電圧VGHとその半分の電圧VGH/2を電源とするバッファ45及びレベルシフタ44によって生成される。レベルシフタ44は、昇圧動作期間にクロック変化されるタイミング信号VIN2を入力し、グランド電圧GNDと外部電圧VSPとの間の入力振幅を正の昇圧電圧VGHと負の昇圧電圧VGLとの間の信号振幅にレベルシフトして出力する。インバータバッファ46はレベルシフタ44の出力に応じて昇圧電圧VGHとその半分の電圧VGH/2の間のゲート制御信号VGV−N2を出力する。バッファ45はレベルシフタ44の出力に応じて昇圧電圧VGHとその半分の電圧VGH/2の間のゲート制御信号VGV−P3を出力する。
【0063】
図3には
図1の昇圧回路13による昇圧動作タイミングを例示する動作波形が示される。特に制限されないが、時刻t0でパワーオンリセットが行われ、時刻t1で昇圧電圧VGHの昇圧動作が開始される。特に制限されないが、ここでは昇圧電圧VGLは外部電圧VSNにプリチャージされているものとする。φPCpは、プリチャージ信号であり、特に制限されないが、昇圧動作の開始までグランド電圧GNDとされ、昇圧動作の開始で外部電圧VSPにされる。パワーオンリセットされると、MOSトランジスタPMOS−4を介して安定化容量C−2に外部電圧VSPの供給が開始され、昇圧電圧VGHは外部電圧VSPのレベルまで上昇される。時刻t0からt1までのプリチャージ期間において、タイミング信号VIN1、VIN2はグランド電圧GNDに固定化され、時刻t1にゲート制御信号VG−N2、VG−P2は外部電圧VSPのレベルに、ゲート制御信号VG−P3は外部電圧VSPの半分のレベルVSP/2になる。これによって内部ノード電圧VCPも外部電圧VSPのレベルになる。
【0064】
時刻t1でタイミング信号VIN1、VIN2のクロック変化が開始されると、その逆相のクロック信号を受けるMOSトランジスタNMOS−1、PMOS−1が相補的にスイッチ動作され、内部電圧VCIPの変化に追従して、内部ノード電圧VCMを内部電圧VCIPとグランド電圧GNDに交互に変化させるこの変化はポンピング容量C−1を介して内部ノード電圧VCPに伝達される。これにより、内部ノード電圧VCPは外部電圧VSPを起点に内部電圧VCIPの変化に追従して徐々にVSP+VCIPの電圧に遷移されていく。この変化がMOSトランジスタPMOS−2を介して安定化容量C−2に供給されて充電され、昇圧電圧VGHはVSP+VCIPの電圧に到達する。この昇圧電圧VGHは内部回路に供給され、駆動回路の動作電源などに利用される。
図3の波形図では昇圧動作は途中で途切れているように図示されているが実際には昇圧電圧を維持するためにその動作は継続される。低消費電力の観点から、昇圧電圧VGHが不所望に低下しない範囲で昇圧動作を間欠的に休止したりすることは可能である。
【0065】
以上説明したように、昇圧電圧VGHは昇圧動作前にプリチャージ回路PRCG−1によって内部電圧VPSのレベルまでチャージされる。その後昇圧動作によって内部電圧VSP以上の電圧にされるが、MOSトランジスタPMOS−2、PMPS−3、NMOS−2のゲート制御は昇圧電圧VGHとその半分の電圧VGH/2との間で行われる。内部電圧VCIPは内部電圧VSPから生成される電圧でVGH=VSP+VCIP(0≦VCIP≦VSP)であるから、MOSトランジスタPMOS−2、PMOS−3、NMOS−2の各端子間の電圧差は内部電圧VSP以上になることはない。したがって、MOSトランジスタPMPS−2、PMOS−3、NMOS−2は中耐圧のMOSトランジスタで構成することが可能となる。プリチャージ回路PRCG−1及び
図2の制御論理は高圧素子を使用するが、昇圧電圧VGHの出力インピーダンスには関係しないため、換言すれば、MOSトランジスタPMPS−2、PMOS−3、NMOS−2に要求されるような低インピーダンスは要求されないから、それらに比べて小さなトランジスタサイズで構成することができる。このように、昇圧用のMOSスイッチ回路を構成するMOSトランジスタPMOS−2、PMOS−3、NMOS−2を中耐圧MOSトランジスタで構成し、昇圧電圧VGHを最大で外部電圧VSPの2倍まで昇圧することができ、昇圧電圧の出力抵抗の低減と昇圧回路のサイズの縮小との双方を実現することができる。
【0066】
図4には昇圧回路の第2の例が示される。同図に示される昇圧回路14は負の昇圧電圧を形成するものであり、
図1の昇圧回路13及び
図2の制御論理に対してトランジスタの導電型と電圧の極性を反転させた構成になっている点が相違される。この昇圧回路14は、ドライバICのような半導体集積回路にオンチップされた昇圧部14Aを利用して構成される。半導体集積回路は、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路製造技術などによって単結晶シリコンなどの1個の半導体基板(半導体チップ)に形成されている。
【0067】
昇圧回路14はチャージポンプ回路PMP−2とプリチャージ回路PRCG−2から成る。チャージポンプ回路PMP−2は半導体集積回路にオンチップされたチャージポンプ部PMP−2p、半導体集積回路の外付け素子としてのポンピング容量C−1及び安定化容量C−2によって構成される。
【0068】
チャージポンプ部PMP−2pは、外付け素子を接続するために、安定化容量C−2が外付けされる安定化容量接続端子P3と、ポンピング容量C−1が外付けされるポンピング容量接続端子P1、P2を有する。その他に外部電源入力端子として、正極性の外部電圧VSP(例えば5V)が供給される外部電源端子P4、負極性の外部電圧VSN(例えば−5V)が供給される外部電源端子P5が配置される。図示は省略するが半導体集積回路はロジック回路用の電源電圧(例えば3V)の外部電源端子なども備える。
【0069】
ポンピング容量接続端子P1、P2に外付けされたポンピング容量C−1に対してその一方の容量電極に第1電圧の一例であるグランド電圧GNDと第2電圧の一例である負極性の内部電圧VCINを交互に供給する第1のMOSスイッチ回路として、例えばpチャネル型のMOSトランジスタPMOS−10とnチャネル型のMOSトランジスタNMOPS−10が並列に配置される。
【0070】
ポンピング容量の他方の容量電極には第3電圧の一例である負極性の外部電圧VSNを昇圧動作期間で周期的に供給する第2のMOSスイッチ回路として、例えばnチャネル型のMOSトランジスタNMOS−12とpチャネル型のMOSトランジスタPMOS−11が並列に配置される。
【0071】
MOSトランジスタPMOS−11、NMOS−12の接続ノードと安定化容量接続端子P3との間には、昇圧動作期間においてMOSトランジスタPMOS−11、NMOS−12とは相補的にスイッチ動作される第3のMOSスイッチ回路としてnチャネル型のMOSトランジスタNMOS−11が設けられている。
【0072】
プリチャージ回路PRCG−2は、第3電圧の一例である外部電圧VSNとグランド電圧GNDを動作電圧とするバッファアンプBUF−2と、その出力をチャージポンプ回路による昇圧動作の前に前記安定化容量接続端子P3に向けて供給する第4のMOSスイッチ回路としてnチャネル型のMOSトランジスタNMOS−13を有する。バッファアンプBUF−2はプリチャージ制御信号φPCnを反転して出力する。プリチャージ制御信号φPCnのハイレベルでプリチャージを指示し、その期間にバッファアンプBUF−2からMOSトランジスタPMOS−13を介して出力される外部電圧VSNによって安定化容量C−2がプリチャージされる。
【0073】
特に図示はしないが、内部電圧VCINは外部電圧VSNとグランド電圧GNDを用いてレギュレータで生成される電圧であり、VSN≦VCIN≦GNDとされる。昇圧動作において、ポンピング容量C−1の一方の容量電極がグランド電圧GNDと内部電圧VCINに交互に切り替えられることにより、ポンピング容量C−1の他方の容量電極に周期的に与えられた外部電圧VSNが内部電圧VCIN分持ち上げられて昇圧される。VCMはポンピング容量C−1の一方の容量電極の電圧、VCPはポンピング容量C−1の他方の容量電極の電圧を意味する。昇圧電圧VGHは内部電圧VCINと外部電圧VSNの和の電圧になる。内部電圧VCINの最大は外部電圧VSNになるので、昇圧電圧VGLは最大で外部電圧VSNの2倍となる。ここで、プリチャージ開始前に安定化容量接続端子P3はプリチャージ回路PRCG−2によって外部電圧VSNにプリチャージされ、これを基点に、最大で外部電圧VSNの2倍の昇圧電圧VGLが形成される。この昇圧動作の過程でMOSトランジスタPMOS−11、NMOS−11、NMOS−12の夫々のドレイン・ソース間、ゲート・ソース間、ゲートドレイン間の電位差が最大でも外部電圧VSNを超えないようにするために、MOSトランジスタPMOS−11、NMOS−12、NMOS−11のゲート電圧を、昇圧電圧VGLとそれの半分の電圧VGL/2との間で変化させる。これによって、それらMOSトランジスタPMOS−11、NMOS−12、NMOS−11の耐圧は、MOSトランジスタPMOS−10、NMOS−10の耐圧(中耐圧)と同じでよく、それよりも高耐圧のMOSトランジスタを用いることを要しない。MOSトランジスタPMOS−11、NMOS−12、NMOS−11のゲート電圧におけるハイレベルは昇圧電圧VGLの半分の電圧VGL/2に限定されず、MOSトランジスタPMOSD−10、NMOS−10の耐圧が外部電圧VSNに対して比較的大きな余裕があれば昇圧電圧VGLの半分より大きくてもよいし、MOSトランジスタPMOS−11、NMOS−12、NMOS−11の夫々のオン・オフのゲート電圧差が小さければ昇圧電圧VGLの半分より小さくてもよい。
【0074】
更に詳述する。MOSトランジスタPMOS−10、NMOS−10のゲートには昇圧動作期間で内部電圧VCINとグランド電圧GNDとの間で交互にクロック変化されるゲート制御信号が供給される。MOSトランジスタPMOS−10、NMOS−10は外部電圧VSnに対する耐圧(中耐圧)を備える。MOSトランジスタPMOS−11、NMOS−12のゲートには昇圧電圧VGLとそれの半分の電圧VGL/2との間で変化させるゲート制御信号VG−P11、VG−N12が与えられる。MOSトランジスタNMOS−11のゲートには昇圧電圧VGLとそれの半分の電圧VGL/2との間で変化させるゲート制御信号VG−N11が与えられる。プリチャージ回路PRCG−2のMOSトランジスタNMOS−13の端子間には少なくとも外部電圧VSNの2倍の電圧が印加されるから、チャージポンプ回路PMP−2のMOSトランジスタNMOS−12等の中耐圧MOSトランジスタに比べて耐圧の大きな高耐圧MOSトランジスタが採用される。特に制限されないが、この例ではMOSトランジスタNMOS−13のゲートには負の昇圧電圧VGLが供給される。
【0075】
ゲート制御信号VG−P11、VG−N11、VG−N12の生成論理については図示を省略するが、
図2のVSPをVSN、VGHをVGL、PMOS−2をNMOS−11、PMOS−3をNMOS−12、NMOS−2をPMOS−11、VG−P3をVG−N12、VG−N2をVG−P11、VG−P2VG−N12と読み替えて構成すればよい。昇圧電圧VGLの半分の電圧VGL/2は、抵抗分圧比が1/2の抵抗分圧回路で昇圧電圧VGLを半分とし、グランド電圧GNDと外部電圧VSNを電源とするバッファアンプを介して後段に供給される。ゲート制御信号VG−N11は昇圧電圧VGLとその半分の電圧VGL/2を電源とするインバータバッファ及びレベルシフタによって生成される。レベルシフタは、昇圧動作期間にクロック変化されるタイミング信号VIN1を入力し、グランド電圧GNDと外部電圧VSNとの間の入力振幅を負の昇圧電圧VGLを用いた信号振幅にレベルシフトして出力する。ゲート制御信号VG−N12、VG−P11は昇圧電圧VGLとその半分の電圧VGL/2を電源とするインバータバッファとレベルシフタを用いて形成される。レベルシフタは、昇圧動作期間にクロック変化されるタイミング信号VIN2を入力し、グランド電圧GNDと外部電圧VSNとの間の入力振幅を負の昇圧電圧VGLを用いて振幅にレベルシフトして出力する。
【0076】
図4の昇圧回路14による昇圧動作タイミングはタイミング信号VIN1以外の電圧波形の極性を反転された波形となる。
図4の場合と同様にパワーオンリセットでプリチャージされた後に昇圧電圧VGLの昇圧動作が開始される。特に制限されないが、ここでは昇圧電圧VGLは外部電圧VSNにプリチャージされているものとする。パワーオンリセットされると、MOSトランジスタNMOS−13を介して安定化容量C−2に外部電圧VSNの供給が開始され、昇圧電圧VGLは外部電圧VSNのレベルまで低下される。プリチャージ期間において、内部ノード電圧VCPも外部電圧VSNのレベルになる。
【0077】
昇圧動作期間ではMOSトランジスタNMOS−10、PMOS−10が相補的にスイッチ動作され、内部電圧VCINの変化に追従して、内部ノード電圧VCMを内部電圧VCINとグランド電圧GNDに交互に変化させる。この変化はポンピング容量C−1を介して内部ノード電圧VCPに伝達される。これにより、内部ノード電圧VCPは外部電圧VSNを起点に内部電圧VCINの変化に追従して徐々にVSN+VCINの電圧に遷移されていく。この変化がMOSトランジスタNMOS−11を介して安定化容量C−2に供給されて充電され、昇圧電圧VGLはVSN+VCINの電圧に到達する。この昇圧電圧VGLは内部回路に供給され、駆動回路の動作電源などに利用される。
【0078】
以上説明したように、昇圧電圧VGLは昇圧動作前にプリチャージ回路PRCG−2によって内部電圧VPNのレベルまでチャージされる。その後昇圧動作によって内部電圧VSNよりも低い電圧にされるが、MOASトランジスタNMOS−12、PMOS−11、NMOS−11のゲート制御は昇圧電圧VGLとその半分の電圧VGL/2との間で行われる。内部電圧VCINは内部電圧VSNから生成される電圧でVGL=VSN+VCIN(VSN≦VCIN≦0)であるから、MOSトランジスタNMOS−12、PMOS−11、NMOS−11の各端子間の電圧差は内部電圧VSN以上になることはない。したがって、MOSトランジスタNMOS−12、PMOS−11、NMOS−11は中耐圧のMOSトランジスタで構成することが可能となる。プリチャージ回路PRCG−2及びその制御論理は高圧素子を使用するが、昇圧電圧VGLの出力インピーダンスには関係しないため、換言すれば、MOSトランジスタNMOS−12、PMOS−11、NMOS−11に要求されるような低インピーダンスは要求されないから、それらに比べて小さなトランジスタサイズで構成することができる。このように、昇圧用のMOSスイッチ回路を構成するMOSトランジスタNMOS−12、PMOS−11、NMOS−11を中耐圧MOSトランジスタのみで構成し、昇圧電圧VGLを最大で外部電圧VSNの2倍まで昇圧することができ、昇圧電圧の出力抵抗の低減と昇圧回路のサイズの縮小との双方を実現することができる。
【0079】
図5には昇圧回路の第3の例が示される。同図に示される昇圧回路15はドライバICのような半導体集積回路にオンチップされた昇圧部15Aを利用して構成される。半導体集積回路は、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路製造技術などによって単結晶シリコンなどの1個の半導体基板(半導体チップ)に形成されている。昇圧回路15はチャージポンプ回路PMP−3とプリチャージ回路PRCG−3から成る。チャージポンプ回路PMP−3は半導体集積回路にオンチップされたチャージポンプ部PMP−3p、半導体集積回路の外付け素子としてのポンピング容量C−1及び安定化容量C−2によって構成される。
【0080】
図5の昇圧回路15は
図4のプリチャージ回路PRCG−2に代えてショットキーダイオードSKDを用いたプリチャージ回路PRCG−3を採用した点が
図4と相違される。ショットキーダイオードSKDのカソードは外部電圧VSNを受ける外部端子P5に結合され、そのアノードは安定化容量接続端子P3に結合されて、外付けとされる。このショットキーダイオードSKDは安定化容量接続端子P3を負の昇圧電圧VGLの到達電圧よりもレベルの高い外部電圧VSNに規定することができ、これは、
図4のプリチャージ回路PRCG−2と同様に昇圧動作開始前に安定化容量接続端子P3を外部電圧VSNのレベルにプリチャージするから、昇圧電圧の出力抵抗の低減と昇圧回路のサイズの縮小との双方を実現することができる。特に、負の昇圧電圧VGLはドライバIC内の最低電圧であるため、ドライバICの基板電位として用いられる場合が多い。この昇圧電圧VGLは外部電源である外部電圧VSNよりも低い電圧であるから、昇圧電圧VGLのノード(安定化容量接続端子P3)を外部電圧VSNにすることによって、昇圧動作の開始時に寄生バイポーラトランジスタがターンオンし難くなり、これはラッチアップ対策に資するものである。単にラッチアップ対策のためだけにショットキーダイオードSKDを設ける場合には、昇圧回路を構成するMOSトランジスタの耐圧を小さくする考慮は必然ではない。この考慮は、昇圧電圧の出力抵抗の低減と昇圧回路のサイズの縮小との双方を実現するという意図の基で初めて見出されるものである。尚、その他の構成については
図4と同様であるからその詳細な説明は省略する。
【0081】
図6には昇圧回路の第4の例が示される。同図に示される昇圧回路16はドライバICのような半導体集積回路にオンチップされた昇圧部16Aを利用して構成される。半導体集積回路は、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路製造技術などによって単結晶シリコンなどの1個の半導体基板(半導体チップ)に形成されている。昇圧回路16はチャージポンプ回路PMP−4とプリチャージ回路PRCG−1から成る。チャージポンプ回路PMP−4は半導体集積回路にオンチップされたチャージポンプ部PMP−4p、半導体集積回路の外付け素子としてのポンピング容量C−1及び安定化容量C−2によって構成される。
【0082】
図6のチャージポンプ回路16は
図1のチャージポンプ回路13に比べて第1のスイッチ回路を構成するMOSトランジスタNMOS−1が負の内部電圧VCINを供給するようにした点が相違される。これに従ってMOSトランジスタPMOS−1、NMOS−1のゲート制御信号は内部電圧VCINとVCIPとの間で変化されることになる。その他の構成は
図1と同様であるからその詳細な説明は省略する。
【0083】
図6の構成は昇圧電圧VGHの最大電圧が外部電圧VSPにできるだけ依存しない構成になっている。即ち、昇圧電圧VGHは“VSP+(VCIP−VCIN)”の電圧となり、MOSトランジスタPMOS−1、NMOS−1の耐圧は“VCIP−VCIN”の電圧となる。システムボード上の電源回路から供給される外部電圧VSPはシステムボード上に実装されているその他の回路による電力消費量が増大したりすることによって低下が懸念される場合がある。外部から供給される外部電圧VSPが不所望に低下すると、
図1の構成では昇圧電圧VGHを形成する夫々の要素電圧である外部電圧VSPとそれに起因する内部電圧VCIPの低下分が全体に占める割合が大きくなる。これに対して
図6の構成では、外部から供給される外部電圧VSPが不所望に低下すると、昇圧電圧を形成する要素電圧の一部である外部電圧VSPとそれに起因する内部電圧VCIPの低下分が昇圧電圧VGHに影響するが、内部電圧VCINは昇圧電圧VGHの低下に影響を与えない要素電圧になっているので、外部電圧VSPの低下による昇圧電圧VGHへの影響を緩和することができる。換言すれば、昇圧電圧VGHの外部電圧VSPへの依存性を低下させることができる。更に付言すれば、高電位側の外部電圧VSPと低電位側の外部電圧が対の電源になる場合、高電位側も外部電圧VSPの低下は他方の低電位側の外部電源の上昇(浮き)を伴うから、電圧VSP、VCIPの低下による昇圧電圧VGHの低下を低電位側の電圧VCINで補充することができる。
【0084】
したがって、
図6の構成によれば、
図1と同様に昇圧電圧VGHの出力抵抗の低減と昇圧回路のサイズの縮小との双方を実現することができると共に、外部電圧VSPの変動に対して昇圧電圧VGHの安定化を増すことができる。
【0085】
尚、特に図示はしないが、
図6の構成は
図4及び
図5の構成にも応用することが可能である。
【0086】
図7には以上説明した昇圧回路を適用した液晶パネルユニットが例示される。1は液晶パネルユニット、2はホスト装置である。液晶パネルユニット1は、液晶表示パネル7、その上に配置されたタッチパネル8、及びドライバICの一例である液晶表示ドライバ3を有する。
【0087】
ホスト装置2は表示データ、表示制御コマンド及びタッチ制御コマンドなどを液晶表示ドライバ3に与え、タッチ検出データやステータスなどを液晶表示ドライバ3から取得する。例えば携帯端末に適用される場合、ホスト装置2は携帯通信網等に接続可能な通信部、通信部を用いた通信プロトコル処理を行うプロトコルプロセッサ、プロトコルプロセッサの制御や種々のデータ処理制御を行うアプリケーションプロセッサ、及び補助記憶装置やその他外部インタフェース回路等の周辺装置を備えて成る。ホスト装置3はそれに限定されず、液晶パネルユニット1を用いる種々の電子機器とすることが可能である。
【0088】
液晶表示パネル7はガラス基板上に複数個の表示素子がマトリクス状に形成され、夫々の表示素子はデータ端子とコモン端子を有する。夫々の表示素子は直列接続された薄膜トランジスタと液晶電極に挟まれた液晶を有し、データ端子は薄膜トランジスタのソースに結合し、コモン端子は一方の液晶電極に結合する。液晶電極は別の保持容量を構成してもよい。表示素子の選択端子は薄膜トランジスタのゲートに結合する。表示素子のコモン端子には共通電位としてのコモン電圧が与えられる。表示素子の選択端子は対応するゲート電極に接続され、表示素子のデータ端子はゲート電極に交差する方向に配置された対応するソース電極に接続される。ゲート電極の夫々における表示素子のラインが表示ラインとされ、表示ライン単位で表示素子の薄膜トランジスタがオンされることによって表示ラインが選択される(表示ラインの走査)。表示ラインの選択期間(水平表示期間)毎にソース電極から表示素子に表示データに応ずる階調駆動信号が与えられる。夫々の階調駆動信号は複数の階調電圧の中から表示データに応じて選択された電圧信号である。表示素子に印加された階調駆動信号の信号電荷は薄膜トランジスタがオフされることによって、次に選択されるまで液晶の液晶電極間で形成される容量に保持されて液晶のシャッタ状態を保つ。
【0089】
タッチパネル8は、順次走査駆動される複数本のスキャン電極と、スキャン電極に交差的に配置された複数の検出電極を有し、電極間の交差部には既定の容量成分(検出容量)が形成されている。スキャン電極が順次駆動されたとき、駆動されたスキャン電極の近傍に被検体(例えば指)があるか否かに応ずる静電容量の相違に従って検出電極に現れる電荷が相違される。その電荷情報がスキャン毎に積分され、積分された信号の電荷の相違がタッチ検出信号として利用されることになる。
【0090】
液晶表示ドライバ3は、ホスト装置2にインタフェースされる入出力回路、表示コントローラ4、タッチコントローラ5、制御回路10、低圧・中圧電源回路11、及び高圧電源回路12を有する。
【0091】
入出力回路6はホスト装置2から表示制御コマンド及びタッチ制御コマンドなどのコマンドCNTDを入力して制御回路10に与える。
【0092】
制御回路10は入力されたコマンドCNTDに基づいて液晶表示ドライバ3の動作を制御する。表示コントローラ4はホスト装置2から供給された画像データDSPDを画像メモリに格納する。表示動作が指示されると表示コントローラ4は、表示タイミングに同期してゲート信号発生回路23で表示ラインを順次選択するための選択信号を生成すると共に、これに並行して、画像メモリ内の画像データに基づいてソース信号発生回路21でソース線を駆動するためのソース信号を生成する。ゲートドライバ24が選択信号に基づいて表示ラインを選択すると、これに同期してソースドライバ22がソース信号に応じて液晶表示パネル7のソース線を駆動する。これにより、液晶表示パネル7には垂直同期期間毎にフレーム単位で水平同期期間に同期して順次表示ラインの画素に輝度信号が書き込まれていく。
【0093】
制御回路10は入力されたコマンドCNTDに基づいてタッチコントローラ5の動作を制御する。タッチコントローラ5は表示タイミングに同期して電極駆動信号発生回路30でスキャン電極と検出電極の駆動信号を生成し、電極ドライバ31で検出電極に初期電位を与えると共にスキャン電極を駆動して、当該スキャン電極と検出電極の交点近傍の静電容量に応ずる電荷信号をタッチ検出回路32で検出電極毎に積分し、積分データをスキャンフレーム毎に蓄積し、これをタッチ検出データTCHDとしてホスト装置2に与える。ホスト装置2は与えられたタッチ検出データTCHDに基づいてスキャンフレーム毎にタッチの有無とタッチ座標を演算して、次のデータ処理に利用する。
【0094】
低圧・中圧電源回路11はロジック用に低耐圧MOSトランジスタ回路等に利用する低圧電源、そして、中耐圧MOSトランジスタ回路等に利用する中圧電源を生成して内部回路に供給する。
【0095】
高圧電源回路12は
図1乃至
図6で説明した昇圧回路を構成するための昇圧部13A、14A、15A、16Aを有する。高圧電源回路12はそれによって生成された昇圧電圧VGH、VGLを高圧電源として内部回路に供給する。液晶表示ドライバ3は正の昇圧電圧VGHと負の昇圧電圧VGLの双方を利用するので、例えば、昇圧部13A又は16Aと、昇圧部14A又は15Aを備える。
【0096】
液晶表示ドライバ3は1個の半導基板(チップ)に形成された半導体集積回路であり、前述のように、に昇圧電圧VGH(VGL)の出力抵抗の低減と昇圧回路のサイズの縮小との双方を実現することができるので、液晶表示ドライバ3はチップサイズの小型化が実現されている。液晶表示ドライバ3は表示パネルの周囲に額縁上に配置して実装されるため、表示パネルユニットの小型化の要請にも答えることができる。
【0097】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0098】
例えば、チャージポンプ回路の出力インピーダンスとチップ占有面積についての事情は液晶ドライバに限らずチャージポンプ回路を備えたその他のドライバICについても同様であるから、本発明は液晶表示ドライバに限らず種々の半導体集積回路に適用することができる。
【0099】
チャージポンプ回路はポンピング容量を一段だけ持つ構成に限定されず、以上説明したチャージポンプ部を複数段直列的に配置下構成であってもよい。このとき、前段のチャージポンプ部の出力は次段のVCIPのような入力端子(
図1)又は次段のVCINのような入力端子(
図4)に接続されれば良い。
【0100】
また、プリチャージ回路のMOSトランジスタPMOS−4(
図1)のソースには直接外部電圧VSPを供給してもよい。同様にMOSトランジスタNMOS−13(
図4)のソースに直接内部電圧VSNを供給してもよい。
【符号の説明】
【0101】
3 液晶表示ドライバ
4 表示コントローラ
5 タッチコントローラ
12 高圧電源回路
13A、14A、15A、16A 昇圧部
13、14、15、16 昇圧回路
PMP−1p、PMP−2p、PMP−3p、PMP−4p チャージポンプ部
PMP−1、PMP−2、PMP−3、PMP−4 チャージポンプ回路
PRCG−1、PRCG−2、PRCG−3、PRCG−4 プリチャージ回路
C−1 ポンピング容量
C−2 安定化容量
P1、P2 ポンピング容量接続端子
P3 安定化容量接続端子
VSP 正の外部電圧
VSN 負の外部電圧
VCIP 正の内部電圧
VCIN 負の内部電圧
VGH 正の昇圧電圧
VGL 負の昇圧電圧
SKD ショットキーダイオード
PMOSD−1、PMOS−2、PMOS−3、PMOS−4 pチャネル型MOSトランジスタ
NMOS−2 nチャネル型MOSトランジスタ
PMOSD−10、PMOS−11 pチャネル型MOSトランジスタ
NMOS−10、NMOS−11、NMOS−12 nチャネル型MOSトランジスタ
NMOSD−13 nチャネル型MOSトランジスタ