【解決手段】本発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の極が周方向に並ぶように設けられ且つそれぞれの極が三つ以上の磁石収容孔5と、磁石収容孔5内に収容された磁石とを有する積層鉄心の製造方法であって、磁石収容孔5を有する積層体10を準備する工程と、積層体10の径方向に延びる直線VSを基準として対称の位置に設けられた一対の磁石収容孔5x,5yの中にそれぞれ磁石を配置した状態において、磁石収容孔5x,5yに封止用樹脂を注入する工程と、他の磁石収容孔5zの中に磁石を配置した状態において、当該他の磁石収容孔5zに封止用樹脂を注入する工程と、を含む。
前記(B)工程において、上型及び下型を有し該上型及び下型の少なくとも一方に樹脂ポットが設けられた金型の上型及び下型間に前記積層体を配置し、前記樹脂ポットと前記一対の磁石収容孔とを連通する第1の樹脂流路を通じて、前記一対の磁石収容孔に封止用樹脂を注入し、
前記(C)工程において、前記上型及び下型間に前記積層体を配置し、前記樹脂ポットと前記他の磁石収容孔とを連通する第2の樹脂流路を通じて、前記他の磁石収容孔に封止用樹脂を注入する、請求項1記載の積層鉄心の製造方法。
前記一対の磁石収容孔は、各極の領域における周方向中央を通るように径方向に延びる前記直線を基準として対称の位置に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の積層鉄心の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の積層鉄心は、1極あたり1つの磁石挿入孔12と、その中に封止された永久磁石14とを備え、1極あたり1つの樹脂溜りポット17から1つの磁石挿入孔12に封止用樹脂を供給する工程を経て製造される(特許文献1の
図1(B)参照)。近年、磁気特性向上の観点から、1極あたり複数の磁石収容孔と、これらの中にそれぞれ封止された磁石とを備える積層鉄心の開発がなされている(例えば、特開2013−102622号公報の
図1参照)。
【0006】
本発明者らは、1極あたり複数の磁石を有する積層鉄心の量産化について検討したところ、以下の課題があることを見出した。すなわち、鉄心本体(積層体)の1極あたりの磁石収容孔の数が増えるにしたがって磁石の封止に必要な樹脂の量が増大する傾向にある。このことにより、1極あたりの複数の樹脂収容孔に供給すべき樹脂量が1つの樹脂ポットから供給できる樹脂量を上回ってしまうおそれがある。その対策として、例えば、樹脂ポットの容量を増やす、樹脂ポットの数を増やすことが考えられる。しかし、これらの対策は金型を大幅に改修するか、あるいは、新たな金型を準備する必要があり、コストの増大を招来する。
【0007】
そこで、本発明者らは、1極あたり1つの樹脂ポットから複数回に分けて複数の樹脂収容孔に封止用樹脂を供給することを検討した。すなわち、まず、各極の複数の磁石収容孔のうち、一部の磁石収容孔に対してのみ先行して封止用樹脂を注入し、樹脂ポットに樹脂を補充した後、残りの樹脂収容孔に対して封止用樹脂を注入することによって積層鉄心を試作した。その結果、1つの樹脂ポットから1回で樹脂収容孔に封止用樹脂を供給する場合には生じない積層鉄心の変形が認められた。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、複数の磁石収容孔に対してそれぞれ磁石を固定する工程において積層鉄心の変形を十分に抑制できる積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、複数の樹脂収容孔に対して複数回に分けて封止用樹脂の注入を行った場合、積層鉄心が変形する原因について検討した。その結果、この変形は封止用樹脂の注入に伴って鉄心本体に加わる力によって各極にアンバランスな内部応力が生じることが主因であるとの知見が得られた(
図10参照)。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0010】
本発明の一態様に係る積層鉄心の製造方法は、複数の極が周方向に並ぶように設けられ且つそれぞれの極が三つ以上の磁石収容孔と、磁石収容孔内に収容された磁石とを有する積層鉄心の製造方法であって、(A)磁石収容孔を有する積層体を準備する工程と、(B)三つ以上の磁石収容孔のうち、積層体の径方向に延びる直線を基準として対称の位置に設けられた一対の磁石収容孔の中にそれぞれ磁石を配置した状態において、当該一対の磁石収容孔に封止用樹脂を注入する工程と、(C)三つ以上の磁石収容孔のうち、一対の磁石収容孔以外の他の磁石収容孔の中に磁石を配置した状態において、当該他の磁石収容孔に封止用樹脂を注入する工程と、を含む。
【0011】
当該積層鉄心の製造方法では、樹脂注入の際、各極にアンバランスな内部応力が生じないように、換言すれば、各極において内部応力が釣り合うように、同時に樹脂注入をすべき2つの磁石収容孔(一対の磁石収容孔)を選択する。すなわち、上述のとおり、(B)工程において、積層体の径方向に延びる直線を基準として対称の位置に形成された一対の磁石収容孔に封止用樹脂を注入する。このことで、一方の工程においては、径方向に延びる直線を基準に対称に注入荷重が加わり、注入荷重による内部応力が釣り合うこととなる。したがって、注入荷重によって積層鉄心が変形することを十分に抑制することができる。(C)工程において、上記一対の磁石収容孔以外の他の磁石収容孔に封止用樹脂を注入する。(B)工程及び(C)工程を経ることで積層鉄心が製造される。なお、(A)工程後であれば、(B)工程を実施した後に(C)工程を実施してもよく、あるいは、(C)工程を実施した後に(B)工程を実施してもよい。
【0012】
(B)工程及び(C)工程において所望の磁石収容孔に容易に封止用樹脂を充填する観点から、以下の構成を採用してもよい。すなわち、(B)工程において、上型及び下型を有し該上型及び下型の少なくとも一方に樹脂ポットが設けられた金型の上型及び下型間に積層体を配置し、樹脂ポットと一対の磁石収容孔とを連通する第1の樹脂流路を通じて、一対の磁石収容孔に封止用樹脂を注入し、(C)工程において、上型及び下型間に積層体を配置し、樹脂ポットと他の磁石収容孔とを連通する第2の樹脂流路を通じて、他の磁石収容孔に封止用樹脂を注入してもよい。また、(B)工程において、封止用樹脂を注入する前に、樹脂ポットが設けられた金型と積層体との間に、第1の樹脂流路が形成された第1プレートを配置し、(C)工程において、封止用樹脂を注入する前に、樹脂ポットが設けられた金型と積層体との間に、第2の樹脂流路が形成された第2プレートを配置してもよい。
【0013】
一対の磁石収容孔は、各極の領域における周方向中央を通るように径方向に延びる直線を基準として対称の位置に配置されていてもよい。これにより、(B)工程では、周方向中央を通る直線を基準として対称の位置に配置された一対の磁石収容孔に封止用樹脂が注入されることとなる。このことで、各極における注入荷重をより均一化することができる。
【0014】
上述した各磁石収容孔が以下のように配置されている場合においても、注入荷重による内部応力が釣り合うように封止用樹脂を注入することができる。すなわち、他の磁石収容孔は、平面視において、一対の磁石収容孔に挟まれるように配置されていてもよい。また、一対の磁石収容孔は、平面視において、積層体の径方向に延びて形成されており、他の磁石収容孔は、周方向において一対の磁石収容孔に挟まれるように配置されており、平面視において、積層体の周方向に延びて形成されていてもよい。
【0015】
更に、本発明の他の態様に係る積層鉄心の製造方法は、複数の極が周方向に並ぶように設けられ且つそれぞれの極が三つ以上の磁石収容孔と、磁石収容孔内に収容された磁石とを有する積層鉄心の製造方法であって、(X)磁石収容孔を有する積層体を準備する工程と、(Y)三つ以上の磁石収容孔のうち、積層体の径方向に延びる直線を基準として対称の位置に設けられた一対の磁石収容孔に磁石を圧入する工程と、(Z)三つ以上の磁石収容孔のうち、一対の磁石収容孔以外の他の磁石収容孔に磁石を圧入する工程と、を含む。
【0016】
当該積層鉄心の製造方法では、(Y)工程において径方向に延びる直線を基準として対称の位置に設けられた一対の磁石収容孔に磁石が圧入され、また、(Z)工程において一対の磁石収容孔以外の他の磁石収容孔に磁石が圧入される。このように、磁石収容孔に磁石を固定するための磁石の圧入が複数工程に分けて行われる場合(例えば装置の構造上、複数工程に分けて磁石の圧入を行わざるを得ない場合)において、一方の工程では、対称の位置に配置された一対の磁石収容孔に磁石が圧入されている。このことで、一方の工程においては、径方向に延びる直線を基準に対称に圧入荷重が加わり、圧入荷重による内部応力が釣り合うこととなる。これにより圧入荷重によって積層鉄心が変形することを抑制することができる。なお、上記(Y)工程及び(Z)工程はいずれが先に実施されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の磁石収容孔に対してそれぞれ磁石を固定する工程において積層鉄心の変形を十分に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。ここでは封止用樹脂を注入する際の積層体の向きに基づいて構成の位置を表記するものとする。例えば、封止用樹脂注入時に上を向いている積層体の面を「上面」と表記する。
【0020】
<モータコアを構成する回転子及び固定子>
図1(a)は回転子を構成する積層鉄心Rの斜視図である。積層鉄心Rの形状は略円筒形であり、中央部に位置する開口Raはシャフト(不図示)を装着するためのものである。開口Raを構成する内周面Rbには凸状キーRcが設けられている。
【0021】
図1(b)は固定子を構成する積層鉄心Sの斜視図である。積層鉄心Sの形状も略円筒状であり、中央部に位置する開口Saは積層鉄心(回転子)Rを配置するためのものである。積層鉄心Sの内周面Sbには厚さ方向に延びる多数の溝Scが形成されている。溝Scによって形成される凸部Sdにコイルが巻きつけられる。
【0022】
<回転子を構成する積層鉄心>
図2及び
図3も参照しながら、
図1(a)に示す積層鉄心(回転子)Rについて詳細に説明する。積層鉄心Rは、複数の極が周方向に並ぶように設けられており、複数の電磁鋼板1が積層された円筒状の積層体10と、積層体10の上面10aから下面10bにかけて延びる複数の磁石収容孔5と、各磁石収容孔5に収容された磁石7と、各磁石収容孔5を封止する封止用樹脂9と、を備える。なお、
図2においては、積層鉄心Rの構成のうち、磁石7及び封止用樹脂9の図示を省略している。
【0023】
積層体10は、上下方向で隣り合う複数の電磁鋼板1同士がカシメ等によって接合されることにより構成されている。積層体10には、磁石7を収容するための貫通孔として、上記磁石収容孔5が形成されている。磁石収容孔5は、積層体10の各極それぞれに複数形成されている。より詳細には、磁石収容孔5は、積層体10の8個の極それぞれに3個ずつ形成されている。すなわち、積層体10には、計24個の磁石収容孔5が形成されている。
【0024】
積層体10の各極には、磁石収容孔5として、径方向に延びる仮想的な直線VS(
図2参照)を基準として互いに対称の位置に配置された磁石収容孔5x,5y(一対の磁石収容孔)と、平面視において磁石収容孔5x,5yに挟まれるように配置された磁石収容孔5z(一対の磁石収容孔以外の他の磁石収容孔)とが形成されている。上記直線VSは、各極の領域における周方向中央部分を通る直線である。よって、磁石収容孔5x,5yは、各極の領域における周方向中央部分を通る直線VSを基準として対称に配置されている。また、磁石収容孔5x,5yは互いに同一の形状とされており、平面視において積層体10の径方向に延びて形成されている。一方、磁石収容孔5zは、平面視において積層体10の周方向に延びて形成されている。なお、磁石収容孔5x,5yが積層体10の径方向に延びて形成されているとは、磁石収容孔5x,5yが、積層体10の径方向から所定の角度(例えば45度以下の角度)だけ傾いた方向に延びて形成されている場合を含んでいる。すなわち、
図2に示されるように、磁石収容孔5x(又は磁石収容孔5y)の重心Gを通る径方向の線分Rdと、重心Gを通る磁石収容孔5x(又は磁石収容孔5y)の長手方向の線分Ldとがなす角αが45度以下となる場合にも、「磁石収容孔5x,5yが積層体10の径方向に延びて形成されている」ものとする。同様に、磁石収容孔5zが積層体10の周方向に延びて形成されているとは、磁石収容孔5zが、積層体10の周方向から所定の角度(例えば45度以下の角度)だけ傾いた方向に延びて形成されている場合を含んでいる。
【0025】
なお、磁石収容孔5x,5yは互いに同一の形状とされているとして説明したがこれに限定されず、それぞれ異なる形状とされていてもよい。また、積層体10の各極には、磁石収容孔5x,5y,5z以外の貫通孔であって軽量化を目的とした軽量孔が設けられていてもよい。また、
図2に示されるように、磁石収容孔5x,5y,5zは積層体10の外周10c近傍に設けられている。
【0026】
各極の磁石収容孔5は、積層体10の外周10cに沿って等間隔に並んでいる。また、同一極の3つの磁石収容孔5x,5y,5zに対しては、1つの樹脂ポット41を通じて封止用樹脂が注入される(
図8及び
図9参照。詳細は後述)。なお、磁石収容孔5の総数は24個に限定されず、モータの用途及び要求される性能に応じて決定すればよい。また、磁石収容孔5の形状及び位置についても、モータの用途及び要求される性能に応じて決定すればよい。
【0027】
各磁石収容孔5には、1つの磁石7が収容されている(
図3(a),(b)参照)。磁石7は永久磁石であり、例えばネオジム磁石などの焼結磁石を使用できる。なお、各磁石収容孔5に入れる磁石7の個数は2つ以上であってもよい。磁石7の種類はモータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、焼結磁石の代わりに例えばボンド磁石を使用してもよい。
【0028】
封止用樹脂9は、例えば、熱硬化性樹脂の組成物からなるマトリックス樹脂である。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂と硬化開始剤と添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難熱剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0029】
<回転子を構成する積層鉄心の製造方法>
図4〜
図9を参照しながら、回転子を構成する積層鉄心Rの製造方法について説明する。積層鉄心Rは以下の工程を経て製造される。
(A)磁石収容孔5x,5y,5zを有する積層体10を準備する工程
(B)直線VSを基準として互いに対称の位置に設けられた磁石収容孔5x,5yの中にそれぞれ磁石7を配置した状態において、磁石収容孔5x,5yに封止用樹脂9を注入する工程
(C)磁石収容孔5x,5yに挟まれるように配置された磁石収容孔5zの中に磁石7を配置した状態において、磁石収容孔5zに封止用樹脂9を注入する工程
(D)上記(B),(C)工程において磁石収容孔5に注入された封止用樹脂9を、熱によって硬化させる工程。
【0030】
なお、上記(B)工程及び(C)工程についてはいずれを先に実施してもよいが、本実施形態では、(B)工程を(C)工程よりも先に実施する例を説明する。
【0031】
まず、磁石収容孔5x,5y,5zを有する積層体10を準備する((A)工程)。これら3つの磁石収容孔5x,5y,5zは、積層体10を貫通するように上面10aから下面10bにかけて延びている。
【0032】
次に、下型30及び上型40を有する金型60を備えた樹脂封止装置50(
図7(a)(b)参照)を使用して磁石収容孔5内に磁石7を固定する作業を実施する。まず、
図4(a)(b)に示すように、下型30に積層体10を配置する。下型30は、積層体10を載置する積層体載置プレート30yと、当該積層体載置プレート30yが載置される下型プレート30xとを有している。また、下型30は、積層体載置プレート30yの上面30aに柱状部32を有する。柱状部32は上下方向に延びる凹状キー(不図示)を表面に有し、柱状部32に積層体10を装着した状態にあってはこの凹状キーと上述の凸状キーRcが嵌り合い、これによって積層体10の回転が防止される。下型30においては、積層体10の下面10bとの当接面を含んだ積層体載置プレート30yと、柱状部32とが下型プレート30xから分離可能とされており、当該分離可能なパーツにより、積層体10用の搬送トレイが構成されている。下型30に積層体10を配置するとはすなわち、積層体10を上述の搬送トレイに載せ、当該搬送トレイを上型40及び下型30の間に配置することをいう。なお、搬送トレイを構成する積層体載置プレート30yを用いずに、下型プレート30xに積層体10を配置してもよい。つづいて、下型30に積層体10を配置した状態において、各極それぞれの複数の磁石収容孔5x,5y,5zに磁石7を挿入する。
【0033】
そして、各極それぞれにおいて、直線VSを基準として互いに対称の位置に設けられた磁石収容孔5x,5yの中にそれぞれ磁石7を配置した状態で、磁石収容孔5x,5yに封止用樹脂9を注入する((B)工程)。当該(B)工程の詳細について、
図5(a)(b)、
図6(a)(b)、
図7(a)、及び
図8を参照して説明する。なお、説明の便宜上、
図6(a)(b)においては、磁石収容孔5x,5y,5zのうち磁石収容孔5zの図示を省略し、磁石収容孔5x,5yのみ図示している。
【0034】
(B)工程では、まず、上型40及び下型30間に積層体10を配置する。上型40は封止用の封止用樹脂9となるペレットP(
図8参照。ペレットはタブレットと称されることもある)を収容可能な複数の樹脂ポット41を有する。当該樹脂ポット41は、各極に1つずつ設けられている。すなわち、1つの樹脂ポット41は、1つの極の3つの磁石収容孔5x,5y,5zに対応して設けられている。つづいて、樹脂ポット41が設けられた上型40と積層体10との間に、カルプレート70a,70b(第1プレート)を配置する(
図7(a)参照)。より詳細には、積層体10の上面10aにカルプレート70aを載置し(
図6(a)参照)、更に、カルプレート70a上にカルプレート70bを載置する(
図6(b)及び
図7(a)参照)。
【0035】
図5(a)に示されるように、カルプレート70aには、カルプレート70aを厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。当該貫通孔は、カルプレート70aが積層体10に載置された状態において、磁石収容孔5x,5yに連通する樹脂流路70xである(
図6(a)及び
図7(a)参照)。樹脂流路70xは、平面視略円形状であり(
図5(a)参照)、1つの磁石収容孔5x(又は磁石収容孔5y)に対して2つ形成されている(
図6(a)参照)。なお、1つの磁石挿入孔に対する貫通孔の数は2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。貫通孔の数は、磁石挿入孔の大きさ、樹脂の注入量等に応じて、適宜設定される。
【0036】
また、
図5(b)に示されるように、カルプレート70bには、カルプレート70bを厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。当該貫通孔は、カルプレート70aと上型40との間にカルプレート70bが配置された状態において、上型40の樹脂ポット41と樹脂流路70xとを連通する樹脂流路70yである(
図6(b)及び
図7(a)参照)。上述した樹脂流路70x及び樹脂流路70yによって、樹脂ポット41と一対の磁石収容孔5x,5yとを連通する第1の樹脂流路が構成されている。樹脂流路70yは、平面視略ハート型形状であり(
図5(b)参照)、1つの磁石収容孔5x(又は磁石収容孔5y)に対して1つ形成されている(
図6(b)参照)。平面視ハート型形状の樹脂流路70yの先端部分70pは、カルプレート70a上にカルプレート70bが載置された状態において、平面視略円形状の樹脂流路70xの外縁を囲うように形成されている(
図6(b)参照)。一方で、樹脂流路70yの基端部分70rは、カルプレート70a上にカルプレート70bが載置された状態において、樹脂流路70xよりも内側(対となる、磁石収容孔5x又は磁石収容孔5y側)に張り出している(
図6(b)参照)。なお、ここではカルプレート70a,70bを2枚重ねて使用する例を説明しているが、カルプレートは1枚であってもよい。この場合、樹脂流路70xとなる貫通孔と、樹脂流路70yとなる流路との両方が形成されたカルプレートを用いればよい。
【0037】
カルプレート70a,70bの配置完了後、樹脂ポット41と磁石収容孔5x,5yとを連通する樹脂流路70x,70yに樹脂ポット41の封止用樹脂9を流すことにより、磁石収容孔5x,5yに樹脂を注入する(
図7(a)参照)。具体的には、
図8に示すように、樹脂ポット41内にペレットPを入れた後、樹脂ポット41にプランジャ42を装着する。そして、上型40に内蔵されたヒータ(不図示)によってペレットPを加熱することによりペレットPを溶融させる。樹脂ポット41内においてペレットPを溶融された後、熱硬化が完全には進行しないうちにプランジャ42を下方に押し込むことにより、封止用樹脂9が、カルプレート70bの樹脂流路70y及びカルプレート70aの樹脂流路70xを通じて磁石収容孔5x,5yに注入される(
図7(a)及び
図8参照)。磁石収容孔の大きさにもよるが、スループット向上の観点から、封止用樹脂9の注入作業の時間は好ましくは15〜30秒程度である。
【0038】
図8に示されるように、1つの磁石収容孔5x(又は磁石収容孔5y)に対応する2つの樹脂流路70xのうち、径方向外側の樹脂流路70xは、平面視において樹脂ポット41の領域から外れた領域に位置している。この点、カルプレート70aに載置されたカルプレート70bの樹脂流路70yは、内側に張り出し樹脂ポット41の直下に配置される基端部分70rと、当該基端部分70rと連続的に形成されるとともに樹脂流路70xの外縁を囲う先端部分70pとを有している。これにより、樹脂ポット41から流れ出す封止用樹脂9は、樹脂流路70yの基端部分70r及び先端部分70pを介して、径方向外側の樹脂流路70xにも確実に到達することとなる。以上が(B)工程の詳細である。
【0039】
上記(B)工程後、各極において、磁石収容孔5x,5yに挟まれるように配置された磁石収容孔5zの中に磁石7を配置した状態において、磁石収容孔5zに封止用樹脂9を注入する((C)工程)。当該(C)工程の詳細について、
図5(c)、
図6(c)、
図7(b)、及び
図9を参照して説明する。なお、説明の便宜上、
図6(c)においては、磁石収容孔5x,5y,5zのうち磁石収容孔5x,5yの図示を省略し、磁石収容孔5zのみ図示している。
【0040】
(C)工程では、まず、上型40と積層体10との間に配置されたカルプレート70a,70bを取り外す。当該カルプレート70a,70bの表面には、磁石収容孔5x,5yに封止用樹脂9を注入する際に付着した不要な樹脂部材が残存している。当該カルプレート70a,70bを取り外すことによって、不要な樹脂部材をカルプレート70a,70bと共に積層体10から除去することができる。つづいて、上型40と積層体10との間に、カルプレート70c(第2プレート)を配置する(
図7(b)参照)。すなわち、積層体10の上面10aにカルプレート70cを載置する(
図6(c)参照)。
【0041】
図5(c)に示されるように、カルプレート70cには、カルプレート70cを厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。当該貫通孔は、カルプレート70cが積層体10に載置された状態において、磁石収容孔5zに連通する樹脂流路70zである(
図6(c)参照)。当該樹脂流路70zによって、樹脂ポット41と磁石収容孔5zとを連通する第2の樹脂流路が構成されている。樹脂流路70zは、平面視略円形状であり(
図5(c)参照)、1つの磁石収容孔5zに対して1つ形成されている(
図6(c)参照)。
【0042】
カルプレート70cの配置完了後、樹脂ポット41と磁石収容孔5zとを連通する樹脂流路70zに樹脂ポット41の封止用樹脂9を流すことにより、磁石収容孔5zに封止用樹脂を注入する(
図7(b)参照)。具体的には、樹脂ポット41内に新たなペレットPを補充し、上型40に内蔵されたヒータ(不図示)によってペレットPを加熱することによりペレットPを溶融させる。樹脂ポット41内においてペレットPを溶融された後、熱硬化が完全には進行しないうちにプランジャ42を下方に押し込むことにより、封止用樹脂9が、カルプレート70cの樹脂流路70zを通じて磁石収容孔5zに注入される(
図7(b)及び
図9参照)。なお、当該樹脂注入の工程のうち、新たなペレットPを補充する工程については、(C)工程の最初に行われてもよい。以上が(C)工程の詳細である。
【0043】
そして、上記(B)工程及び(C)工程において磁石収容孔5x,5y,5zに注入された封止用樹脂9を、熱によって硬化させる((D)工程)。具体的には、樹脂封止装置50が備えるヒータ(不図示)によって積層体10に熱を加えることにより、磁石収容孔5x,5y,5zに注入された封止用樹脂9(熱硬化性樹脂)の熱硬化を進行させる。当該(D)工程における熱硬化性樹脂の加熱温度は、熱硬化性樹脂の種類にもよるが、好ましくは150〜180℃程度である。また、スループット向上の観点から、(D)工程の作業の時間は好ましくは40〜60秒程度である。最後に、余剰樹脂片の除去及び積層体10表面の仕上げ加工等を経て、回転子を構成する積層鉄心Rが完成する。
【0044】
次に、上述した積層鉄心Rの製造方法の作用効果について記載する。
【0045】
例えば、
図10に示されるように、比較例に係る製造方法においては、積層体10に変形が生じている。より詳細には、各磁石収容孔5x,5y,5zの形状、及び、積層体10の外表面10oの形状が変形している。当該比較例に係る製造方法では、封止用樹脂9を注入する一方の工程において、対称の位置に配置された磁石収容孔5x,5yではなく、磁石収容孔5xと磁石収容孔5zとに封止用樹脂9が注入されている。すなわち、1つの極における周方向の偏った領域の磁石収容孔(磁石収容孔5x,5z)に対して同時に(同一工程で)封止用樹脂9が注入されている。このことにより、各極において注入荷重が偏った領域に加わり内部応力が釣り合わなくなる。その結果、各磁石収容孔5x,5y,5zの形状、及び、積層体10の外表面10oの形状が変形している。磁石収容孔5x,5y,5z及び外表面10oの形状の変形は、磁石収容孔5x,5y,5zが積層体10の外周10c近傍に設けられ磁石収容孔5x,5y,5zと外周10cとの間が肉薄部となっていることによってより顕著となる。なお、
図10において、各磁石収容孔5x,5y,5zの形状、及び積層体10の外表面10oの形状を示す一点鎖線は、上記変形前の元の形状を示すものである。また、
図10においては、変形量を100倍程度に誇張して示している。
【0046】
これに対して、本実施形態における積層鉄心Rの製造方法では、(B)工程において、径方向に延びる直線VSを基準として対称の位置に設けられた磁石収容孔5x,5yに封止用樹脂9が注入され、(C)工程において、磁石収容孔5x,5y以外の他の磁石収容孔である磁石収容孔5zに封止用樹脂が注入される。このように、磁石収容孔への封止用樹脂の注入が複数工程に分けて行われる場合において、一方の工程では、対称の位置に配置された磁石収容孔5x,5yに封止用樹脂が注入されている。このことで、一方の工程においては、径方向に延びる直線VSを基準に対称に注入荷重が加わり、注入荷重による内部応力が釣り合うこととなる。これにより、注入荷重によって積層鉄心Rが変形することを抑制することができる。
【0047】
また、所望の磁石収容孔に、より確実且つ容易に封止用樹脂9を充填する観点から、以下の構成を採用する。すなわち、(B)工程において、上型40及び下型30を有し該上型40に樹脂ポット41が設けられた金型60の上型40及び下型30間に積層体10を配置し、樹脂ポット41と一対の磁石収容孔5x,5yとを連通する樹脂流路70x,70yを通じて、一対の磁石収容孔5x,5yに封止用樹脂9を注入し、(C)工程において、上型40及び下型30間に積層体10を配置し、樹脂ポット41と磁石収容孔5zとを連通する樹脂流路70zを通じて、磁石収容孔5zに樹脂を注入する。更に、(B)工程において、封止用樹脂9を注入する前に、樹脂ポット41が設けられた上型40と積層体10との間に、樹脂流路70xが形成されたカルプレート70a、及び、樹脂流路70yが形成されたカルプレート70bを配置し、(C)工程において、封止用樹脂9を注入する前に、樹脂ポット41が設けられた上型40と積層体10との間に、樹脂流路70zが形成されたカルプレート70cを配置する。
【0048】
また、本実施形態の積層鉄心Rの製造方法では、一対の磁石収容孔5x,5yは、各極の領域における周方向中央を通るように径方向に延びる直線VSを基準として対称の位置に配置されている。これにより、一方の工程では、周方向中央を通る直線VSを基準として対称に配置された一対の磁石収容孔5x,5yに封止用樹脂9が注入されることとなる。このことで、各極において生じる封止用樹脂9の注入荷重をより均一化することができる。
【0049】
また、各磁石収容孔が以下のように配置されている場合においても、内部応力が釣り合うように封止用樹脂を注入することができる。すなわち、本実施形態の積層鉄心Rの製造方法では、磁石収容孔5zは、平面視において、一対の磁石収容孔5x,5yに挟まれるように配置されている。更に、磁石収容孔5x,5yは、平面視において、積層体10の径方向に延びて形成されており、磁石収容孔5zは、周方向において一対の磁石収容孔5x,5yに挟まれるように配置されており、平面視において、積層体10の周方向に延びて形成されている。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、積層体の上面から下面にかけて延びる複数の磁石収容孔の形状は、上記実施形態に限定されない。具体的には、
図11(a)に示す積層体10Xのように、径方向に延びる一対の磁石収容孔5x,5yに挟まれるように、周方向に延びる磁石収容孔5o,5pが形成されていてもよい。磁石収容孔5o,5pは、径方向において隣り合っている。また、
図11(b)に示す積層体10Yのように、径方向に延びる一対の磁石収容孔5x,5yに挟まれるように、周方向に延びる磁石収容孔5q,5rが形成されていてもよい。磁石収容孔5q,5rは、周方向において隣り合っている。また、
図11(c)に示す積層体10Zのように、径方向に延びる一対の磁石収容孔5x,5yに挟まれるように、径方向に延びる磁石収容孔5s,5tが形成されていてもよい。磁石収容孔5sは、磁石収容孔5xと同じ方向に延びており、磁石収容孔5xと隣り合っている。また、磁石収容孔5tは、磁石収容孔5yと同じ方向に延びており、磁石収容孔5yと隣り合っている。
【0051】
また、上型と積層体との間にカルプレートを配置することにより、上型に設けられた樹脂ポットと磁石収容孔とを連通する樹脂流路を形成する例を説明したが、これに限定されない。例えば、樹脂ポット及びプランジャを下型に設け、当該下型と積層体との間にカルプレートを配置することにより、下型に設けられた樹脂ポットと磁石収容孔とを連通する樹脂流路を形成してもよい。また、下型が積層体載置プレートと下型プレートとを有する構成において、搬送トレイを構成する積層体載置プレートがカルプレートの用途を兼ねて用いられてもよい。
【0052】
また、樹脂流路が形成されたカルプレートを金型と積層体との間に配置することにより、樹脂ポットと磁石収容孔とを連通するとして説明したがこれに限定されず、金型(上型又は下型)に樹脂流路を形成し、当該樹脂流路が、樹脂ポットと磁石収容孔とを連通するものであってもよい。すなわち、上型に樹脂ポット及びプランジャを設け、当該樹脂ポットと磁石収容孔とが、上型に形成された樹脂流路により連通するものであってもよいし、下型に樹脂ポット及びプランジャを設け、当該樹脂ポットと磁石収容孔とが、下型に形成された樹脂流路により連通するものであってもよい。このように、金型の樹脂流路が樹脂ポットと磁石収容孔とを連通する場合には、カルプレートを用いなくてもよい。
【0053】
上記実施形態においては、(B)工程と(C)工程を同一の金型で実施する例を説明したが、これらの工程を別々の金型で実施してもよい。(B)工程を実施するための金型と、(C)工程を実施するための金型とをそれぞれ準備し、これらを併用することで、待ち時間の短縮化が図られ、その結果、生産性の向上に繋がる。すなわち、(B)工程終了後、金型から外した積層鉄心を(C)工程を実施する別の金型にセットすることができ、これにより、次の積層鉄心をすぐに(B)工程を実施する金型にセットすることができる。これに加え、樹脂ポットの配置を(B)工程と(C)工程で変えることができ、樹脂流路の配置の自由度が増すという利点もある。なお、(B)工程及び(C)工程を同一の金型で実施する場合、金型を作製するコスト(初期コスト)を削減できるという利点がある。
【0054】
また、上記実施形態においては、同一極の磁石収容孔5x、5yに対して、1つの樹脂ポットを通じて樹脂が注入される例を説明したが、一の極の磁石収容孔5y(又は磁石収容孔5x)と、一の極に隣接する他の極の磁石収容孔5x(又は磁石収容孔5y)に対して、1つの樹脂ポットを通じて樹脂が注入されてもよい。すなわち、
図5(b)に示すカルプレート70bの代わりに、
図12(a)に示すカルプレート70b’を用いてもよい。カルプレート70b’は、樹脂流路70y’を通じて磁石収容孔5xに樹脂を注入すると同時に、もう一つの樹脂流路70y’を通じて隣接する極の磁石収容孔5yに樹脂を注入できるように構成されている。この場合、(B)工程と(C)工程で樹脂ポットの位置が変わることになるが、上記のように、これらの工程を別々の金型を用いて実施すればよい。更に、
図12(b)に示すようなカルプレート70dを用いることで、(B)工程と(C)工程を1つのカルプレートで実施することが可能となる。カルプレート70dは、カルプレート70b’と同様に複数対の樹脂流路70y’を有し、更に、磁石収容孔5zに樹脂を供給するための樹脂流路70z’を有する。カルプレート70dを用いることで、(B)工程及び(C)工程の両方を1つのカルプレートで実施することが可能となる。
【0055】
また、上記実施形態においては、(B)工程を(C)工程よりも先に実施する例を説明したが、(C)工程を先に実施してもよい。すなわち、
図13(a)に示すように先に磁石収容孔5x,5yに樹脂を注入してもよいし、
図13(b)に示すように先に磁石収容孔5zに樹脂を注入してもよい。その後、残った磁石収容孔5に樹脂を注入することで、
図13(c)に示すように、全ての磁石収容孔5に樹脂が注入される。
図13(a)〜
図13(c)におけるハッチングを付した部分は樹脂が注入された磁石収容孔5を意味する。
【0056】
また、上型のみに樹脂ポット及びプランジャが設けられている例を説明したがこれに限定されず、上型及び下型の双方に、それぞれ樹脂ポット及びプランジャが設けられていてもよい。この場合、例えば、複数の磁石収容孔のうち積層体の径方向に延びる直線を基準として対称に配置された一対の磁石収容孔に対しては上型の樹脂ポットから樹脂が注入され、他の磁石収容孔に対しては下型の樹脂ポットから樹脂が注入されてもよい。あるいは、一対の磁石収容孔に対しては下型の樹脂ポットから樹脂が注入され、他の磁石収容孔に対しては上型の樹脂ポットから樹脂が注入されてもよい。このように、上型及び下型のそれぞれに樹脂ポット及びプランジャが設けられていることにより、上型及び下型のいずれか一方にのみ樹脂ポット等が設けられている場合と比較して、補充無しで磁石収容孔に注入可能な樹脂量を増やすことができる。このことで、樹脂の注入をより効率的に行うことができる。
【0057】
更に、樹脂による封止以外の手段によって磁石収容孔に磁石を固定し、積層鉄心を製造してもよい。例えば、積層鉄心は、以下の工程を経て製造されてもよい。
(X)磁石収容孔を有する積層体を準備する工程
(Y)積層体の径方向に延びる直線を基準として対称の位置に設けられた一対の磁石収容孔に磁石を圧入する工程
(Z)一対の磁石収容孔以外の他の磁石収容孔に磁石を圧入する工程
【0058】
上記(Y)工程及び(Z)工程の詳細について、
図14(a)及び
図14(b)を参照して説明する。これらの図に示す積層体10Tには、
図3(a)(b)に示す積層体10と同様に一対の磁石収容孔5x,5y及び磁石収容孔5zが形成されている。
図14(a)に示されるように、(Y)工程では、一対の磁石収容孔5x,5yに磁石7xが圧入される(押し込まれる)。平面視において、磁石7xは磁石収容孔5x,5yと同一かやや大きい形状とされている。すなわち、磁石7xは、上型(不図示)により下方向への圧力が加えられてはじめて磁石収容孔5x内に挿入可能な程度に大きい形状とされている。また、
図14(b)に示されるように、(Z)工程では、磁石収容孔5zに磁石7yが圧入される。平面視において、磁石7yは磁石収容孔5zと同一かやや大きい形状とされている。すなわち、磁石7yは、上型(不図示)により下方向への圧力が加えられてはじめて磁石収容孔5z内に挿入可能な程度に大きい形状とされている。
【0059】
当該積層鉄心の製造方法では、(Y)工程において径方向に延びる直線を基準に対称に配置された一対の磁石収容孔5x,5yに磁石7xが圧入され、また、(Z)工程において磁石収容孔5zに磁石7yが圧入される(押し込まれる)。このように、磁石収容孔に磁石を固定するための磁石収容孔への磁石の圧入が、複数工程に分けて行われる場合、例えば装置の構造上、複数工程に分けて磁石の圧入を行わざるを得ない場合)において、一方の工程では、対称に配置された一対の磁石収容孔5x,5yに磁石7xが圧入されている。このことで、一方の工程においては、径方向に延びる直線を基準に対称に圧入荷重が加わり、圧入荷重による内部応力が釣り合うこととなる。これにより、圧入荷重によって積層鉄心が変形することを抑制することができる。なお、上記(Y)工程及び(Z)工程はいずれが先に実施されてもよい。