【解決手段】対向する一対の挟持片6,6と各挟持片6,6の一端を連結する底部7を備える挟持部材4と楔からなるジョイントであって、挟持片6,6は他端に一対の押え部6a,6bを備えるとともに、押え部6a,6b間に開口部Aが形成されており、各挟持片6,6間にチャンネル材が挿入され、各開口部A内にチャンネル材とクロスする方向にシート止め具が挿入された状態で、挟持部材4の底部7とチャンネル材との間に楔が挿入されて、楔と押え部6a,6bとでシート止め具をチャンネル材に固定することを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
植物を育成、栽培する温室は、骨組にシート止め具を固定し、このシート止め具にシートを固定することで、屋根面、側面、妻面にシートを展張するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、骨組とシート止め具はビス止めによって固定されているため、通常時であれば問題ないが、突風が吹いた場合や、長年使用されてビスが緩んでしまった場合などに一部のビスが外れてしまうことがある。
【0004】
このとき、ビスが外れた箇所を再度ビス止めしようとしても、シート止め具にシートが展張されているため、シートが邪魔をして温室の中からシート止め具をビス止めすることはできない。
【0005】
そこで、特許文献1に示すような、固定金具が開発されている。この固定金具は、骨組を形成するチャンネル材の側面に当接する板状の本体部と、この本体部の上端部に設けられてシート止め具を挿通させる凹部と、上記本体部の上端に設けられて上記シート止め具側に延びる保持部と、上記本体部の下端に設けられて上記シート止め具側に延びる係止部を備え、上記本体部にビス孔を設けてなる。
【0006】
この固定金具によると、上記保持部と上記係止部とでシート止め具と骨組を挟持した状態で、上記本体部に設けられたビス孔にビスを挿入して上記固定金具を骨組に固定することで、シート止め具と骨組とを再度固定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の固定金具は、ビスが外れてしまったシート止め具を再度骨組に固定して、温室を補修できる点において問題はない。
【0009】
しかしながら、温室の骨組を構成する例えばC型チャンネルには、電気コード等のコードを配設することがあり、特許文献1の固定金具を使用すると、C型チャンネルの側面から貫通したビスが当該コードに干渉してしまう恐れがあった。
【0010】
そこで、本発明では、ビスが外れてしまったシート止め具をビスを使用せずに骨組に再度固定できるジョイントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は、対向する一対の挟持片と各挟持片の一端を連結する底部を備える挟持部材と楔からなるジョイントであって、上記挟持片は他端に一対の押え部を備えるとともに、上記押え部間に開口部が形成されており、各挟持片間にチャンネル材が挿入され、各開口部内に上記チャンネル材とクロスする方向にシート止め具が挿入された状態で、上記挟持部材の底部と上記チャンネル材との間に上記楔が挿入されて、上記楔と上記押え部とで上記シート止め具を上記チャンネル材に固定することを特徴とする。
【0012】
また、上記一対の押え部は、それぞれに上記開口部の開口幅を狭くする方向に延びる爪部を有し、一方の爪部を他方の爪部よりも長い長爪部とし、上記底部の上記長爪部と同じ側が切り欠かれるようにしてもよい。この構成によると、挟持部材でシート止め具を押さえつける際に、底部の切り欠かれた切欠き端部を軸にして挟持部材を傾けることで、爪部間よりも幅広のシート止め具を開口部内に容易に入れ込むことができる。
【0013】
また、上記楔が上記チャンネル材と同方向に挿入されるようにしてもよい。この構成によると、ジョイントでシート止め具をチャンネル材に固定した際に、楔とチャンネル材が平行になるため、楔がチャンネル材から突き出てしまう恐れがない。
【0014】
また、上記各挟持片の一端側に上記楔の挿入方向に切り欠かれて形成された当接部を設け、上記楔は、挿入された状態で、上記挟持片の上記当接部に当接可能なストッパと、上記底部の反当接部側端に当接可能な返し部を備えるようにしてもよい。この構成によると、楔を挟持片が切り欠かれた分だけ奥に挿入できるため、楔に設けられた返し部が挟持部材の底部の反当接部側端に当接して引っ掛かるようにしつつ、楔を短くできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ビスが外れてしまったシート止め具をビスを使用せずに骨組みに再度固定できる。また、挟持部材の底部とチャンネル材との間、つまり挟持部材の下側に楔を挿入して固定しているため、補修作業がやり易くなっており、作業効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図示した本実施の形態に基づいて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
【0018】
本実施の形態係るジョイント1は、温室の骨組を構成するチャンネル材2とチャンネル材2に連結されるシート止め具3の補修に主に利用される。
【0019】
図示したシート止め具3は、長尺であって、短手方向から見ると載置された状態で水平になる水平フレーム3aと、水平フレーム3aの一端部から斜めに起立する傾斜フレーム3bと、傾斜フレーム3bに近接し水平フレーム3aの他端部から垂直に起立する垂直フレーム3cと、垂直フレーム3cの先端に連設するL字フレーム3dとを備え、L字フレーム3dの反垂直フレーム3a側が鍔3eを形成する片鍔型に形成され、このシート止め具3は、鍔3eにビスを連結して骨組を構成するC型チャンネルからなるチャンネル材2上にこれとクロスする方向で固定されている。
【0020】
そして、シート止め具3の傾斜フレーム3bと垂直フレーム3cの上端にシートSを載せ、その上からシート止め具3に対向する押えフレーム8でシートSを押えて、ビス9を押えフレーム8とシートSを貫通させてシート止め具3の傾斜フレーム3bと垂直フレーム3cとの間に挟持させることで、シートSを展張させている。
【0021】
なお、本実施の形態においては、チャンネル材2に、C型チャンネルを利用しているが、チャンネル材2はこれに限定されるものではない。
【0022】
本実施の形態に係るジョイント1は、挟持部材4と楔5を備えて構成される。挟持部材4は、
図3、
図4に示すように、対向する一対の板状の挟持片6,6と各挟持片6,6の図中下端である一端を連結する底部7を備えて構成される。そして、挟持片6の図中上端である他端には互いに対向する押え部6a,6bが設けられており、これらの押え部6a,6b間には開口部Aが形成される。
【0023】
また、各押え部6a,6bは先端に開口部Aの開口幅を狭くする方向に延びる爪部6c,6dをそれぞれ有しており、これらの爪部6c,6dは、図中右側である押え部6aの先端に設けられる長爪部6cと、図中左側である押え部6bの先端に設けられ長爪部6cよりも短く設定された短爪部6dを備えてなる。短爪部6dは、
図4に示すように、外側に向けて延びる押え片6eを備える。
【0024】
なお、開口部Aの内、挟持片6の押え部6a,6bの各爪部6c,6d間の幅は、シート止め具3の短手方向幅よりも小さく設定され、それ以外の幅はシート止め具3の短手方向幅よりも大きく設定されている。そのため、開口部A内にシート止め具3を入れ込むことを可能にするとともに、シート止め具3を垂直に持ち上げても各爪部6c,6d間の幅がシート止め具3の短手方向幅よりも小さいため、シート止め具3が抜け出ないようになっている。
【0025】
また、
図3に示すように、本実施の形態に係る挟持部材4の底部7は、長爪部6cが設けられた押え部6aと同側の底部7が切り欠かれている。
【0026】
つまり、本実施の形態に係る底部7は、一対の挟持片6,6の下端である一端の内、図中右側である押え部6a側の一部の間には設けられておらず、底部7は挟持片6の横幅の長さよりも短く設定されている。
【0027】
また、各挟持片6,6は、一端側である底部7側が切り欠かれており、切り欠かれた縁を以下切欠き縁11とする。切欠き縁11は、底部7の切り欠かれた側の端部である切欠き端部10から垂直に延びる大段部11aと、大段部11aと連設されて切欠き端部10から遠ざかる方向に階段状に形成される小段部11bと、小段部11bの端部と挟持片6の押え部6a側の縁とを繋ぐ傾斜部11cとで構成される。
【0028】
なお、本実施の形態においては、切欠き縁11の小段部11bと挟持片6の縁を繋ぐ部分が斜めに切り欠かれているが、直角に切り欠かれてもよい。ただし、本実施の形態では、切欠き縁11に傾斜部11cを設けることで小段部11bと挟持片6の縁との繋がり部分を滑らかにしており、人体を傷つける恐れを減少させると共に、美観的にも優れる。
【0029】
さらに、各挟持片6,6には上方の任意の位置に内側に向けて出っ張る2つの突起12,12が形成されている。
【0030】
つづいて、楔5の挿入時における進行方向の前側端部を先端、後端側端部を末端とすると、楔5は、進行方向に長い矩形板状の水平部5aと、この水平部5aの長手側の両端からそれぞれ延びる脚部5b,5bと、水平部5aの中央から内側へ突出する返し部5dと、水平部5aと脚部5bの末端に設けたストッパ5eとで構成されている。返し部5dは、水平部5aを切り込んで押し出すようにして形成されており、先端側に向けて斜めに突出し、先端が少しだけ脚部5bの高さからはみ出るようになっている。また、脚部5bの下端部には、楔5を挿入し易くするために先端側に向けてテーパするテーパ部5cが設けられている。ただし、楔5は、上記形態に限定されるものではない。
【0031】
次に本発明のジョイント1を利用して、ビスが外れてチャンネル材2との連結が解けてしまったシート止め具3を再度チャンネル材2に連結する工程を説明する。
【0032】
まず、
図5に示すように、チャンネル材2に挟持部材4を嵌め込み、挟持部材4を切欠き端部10を支点にして傾かせてチャンネル材2の底面から底部7の反切欠き端部側を浮かせるように挟持部材4を傾けながら、開口部Aにシート止め具3を入れる。
【0033】
そして、挟持部材4の傾きを戻すことで、押え部6aの長爪部6cをシート止め具3の鍔3eに当接し、押え部6bの短爪部6dと短爪部6dに設けられた押え片6eがシート止め具3の傾斜フレーム3bに引っ掛かる。
【0034】
次に、挟持部材4を下側に引っ張ることで、挟持部材4の底部7とチャンネル材2との間に隙間が形成される。この際、挟持部材4には、突起12,12が設けられているため、上記隙間が閉じてしまわないように仮止めされる。
【0035】
そして、
図6に示すように、挟持部材4の底部7とチャンネル材2との隙間に、底部7の切欠き端部10側から、水平部5aをチャンネル材2に当接させるようにして楔5を打ち込んで圧入することで、楔5と押え部6a,6bの各爪部6c,6dによって、シート止め具3はチャンネル材2にしっかりと押さえつけられて挟持され、再連結される。
【0036】
また、楔5はストッパ5eが切欠き縁11の当接部である小段部11bに当接するまで圧入する。さらに、楔5には返し部5dが設けられているため、楔5が地震や風などの振動によって、抜け方向に移動しても、返し部5dが底部7の反切欠き端側10に当接し、抜け止めされる。
【0037】
以下、本実施の形態に係るジョイント1の効果について説明する。
【0038】
ジョイント1は、対向する一対の挟持片6,6と各挟持片6,6の一端を連結する底部7を備える挟持部材4と楔5を備え、挟持片6は他端に一対の押え部6a,6bを備えるとともに、押え部6a,6b間に開口部Aが形成されており、各挟持片6,6間にチャンネル材2が挿入され、各開口部A内にチャンネル材2とクロスする方向にシート止め具3が挿入された状態で、挟持部材4の底部7とチャンネル材2との間に楔5を挿入し、楔5と押え部6a,6bとでシート止め具3をチャンネル材2に固定する。この構成によると、チャンネル材2にビスを挿入することなく、チャンネル材2から外れてしまったシート止め具3をチャンネル材2に再結合することができるため、チャンネル材2の内側に電気コード等のコードが配設されている場合に、万が一にもビスがコードに干渉してしまう恐れを排除できる。また、本実施の形態においては、挟持部材4の底部7とチャンネル材2との間に楔5を挿入することで、シート止め具3をチャンネル材2に固定しているため、骨組から離れた位置である下側で修復作業ができ、作業効率が向上する。
【0039】
また、本実施の形態においては、一対の押え部6a,6bは、それぞれに開口部Aの開口幅を狭くする方向に延びる爪部6c,6dを有し、これらの爪部6c,6dの一方の爪部6cを他方の爪部6dよりも長い長爪部6cとし、底部7の長爪部6cと同じ側が切り欠かれている。ここで、本実施の形態に係る温室では、複数の連続するチャンネル材2に対してクロスする方向でシート止め具3が各チャンネル材2にビス止めされている。そのため、シート止め具3をチャンネル材2に固定する複数のビスの内の一部だけが外れて、シート止め具3とチャンネル材2とが一部だけ外れてしまった場合には、他の箇所はビス止めされたままなので、シート止め具3を自由に動かすことができない。しかし、この構成によると、切欠き端部10を支点にして、挟持部材4を傾けることができるため、各爪部6c,6d間の幅よりも短手方向幅が大きいシート止め具3を容易に開口部Aに入れ込むことができる。また、本実施の形態においては、長爪部6cと同じ側が切り欠かれているため、長爪部6cと切欠き端部10を反対側に設けた場合に比べ、切欠き深さを短くでき、加工の手間を省略できる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、押え部6a,6bは、各爪部6c,6dを備え、各爪部6c,6dによって、シート止め具3を押さえつけているが、押え部6a,6bの形状は一切限定されずシート止め具3をチャンネル材2に押さえつけられる構成であればよい。
【0041】
また、本実施の形態においては、楔5がチャンネル材2と同方向に挿入されている。ここで、本発明のジョイント1は、一対の挟持片6に挿通孔を設け、当該孔に楔5を挿入し、楔5とチャンネル材2がクロスするようにしてシート止め具3をチャンネル材2に固定してもよいが、この場合、楔5がチャンネル材2から突き出てしまう。これに対して、上記構成によると、ジョイント1でシート止め具3をチャンネル材2に固定した際に、楔5とチャンネル材2とが平行になっている。そのため、楔5がチャンネル材2から突き出てしまう恐れがない。したがって、ジョイント1が低い位置に設けられた場合であっても、楔5が人に突き当たってしまうことがなく、安全性が高くなっている。
【0042】
また、本実施の形態においては、各挟持片6,6の一端側である底部7側に楔5の挿入方向に切り欠かれて形成された切欠き縁11を設け、切欠き縁11は当接部である小段部11bを有し、楔5は、挿入された状態で、挟持片6の小段部11bに当接可能なストッパ5eと、挟持部材4の底部7の反当接部側端に当接可能な返し部5dを備えている。ここで、楔5を挿入する際に返し部5dを抜け止めとして機能させるためには、楔5のストッパ5eが当接部である小段部11bに当接したときに、楔5の返し部5dが挟持部材4の底部7の反当接部側端より奥側に位置していなければならないところ、上記構成によると、挟持片6が楔5の挿入方向に切り欠かれた分だけ楔5を奥に挿入できるため、返し部5dが挟持部材4の底部7に引っ掛かって当接できるようにしつつ、切り欠いて当接部を設けない場合に比べて楔5を短くできる。これにより、楔5を形成する材料を節減でき、経済的である。
【0043】
なお、本実施の形態に係る切欠き縁11は、大段部11aと小段部11bとで構成される2段の段部を備えているが、楔5の長さを短くする効果を発揮する分には、切欠き縁11の当該段部を2段で形成する必要はなく、1段にして当該段部を当接部としてもよい。ただし、上記段部を2段にして2段目の小段部11bを当接部とすると、楔5をチャンネル材2と挟持部材4の底部7との隙間に圧入する際にストッパ5eと当接部が当接するまでの距離が短くなるため、楔5を圧入するための打ち込み量が少なくて済み、作業効率が向上する。
【0044】
また、本実施の形態においては、ジョイント1は、チャンネル材2とシート止め具3を連結するビスが外れてしまった際の修復に利用されているが、ビスが緩んできてしまった部位を補強するのに利用されてもよい。
【0045】
また、温室を新設する際の組立てで、シート止め具3をチャンネル材2にビス止めで固定するのに代えて、ジョイント1を利用してもよい。ジョイント1を利用してシート止め具3をチャンネル材2に固定すると、ビス止めよりも遥かに強固にシート止め具3を固定できる。
【0046】
温室を新設する際の組立てにジョイント1を利用する場合には、
図7に示すように、チャンネル材2を各挟持片6,6間に挿入し、シート止め具3をチャンネル材2にクロスする方向で各開口部A,A間に挿入した状態で、開口部A,A間にシート止め具3と挟持片6の隙間を埋めるように楔5を挿入し、押え部6a,6bの各爪部6c,6dでシート止め具3の傾斜フレーム3bと鍔3eを押えるようにしてもよい。
【0047】
なお、温室を新設する際の組立てにジョイント1を利用する場合であっても、チャンネル材2とシート止め具3の連結を修復する場合と同様に楔5をチャンネル材2と挟持部材4の底部7の隙間に圧入する方法でシート止め具3を固定してもよいのは勿論である。
【0048】
したがって、本実施の形態に係るジョイント1は、チャンネル材2とシート止め具3とを連結するビスが外れてしまった際の修復だけでなく、温室を新設する際のチャンネル材2とシート止め具3の固定手段としても利用できる。また、本実施の形態に係るジョイント1は、シート止め具3がビスでチャンネル材2に連結されてシートが展張した後であっても取り付けできるため、ビスが緩んでしまった際の補強や、ビスが緩んでいない場合であっても風を受けやすい箇所などの補強にも利用できる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。