特開2017-8604(P2017-8604A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017008604-油圧式作業機 図000003
  • 特開2017008604-油圧式作業機 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-8604(P2017-8604A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】油圧式作業機
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20161216BHJP
   E01B 29/00 20060101ALI20161216BHJP
   E01B 37/00 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
   E02F9/24 C
   E01B29/00
   E01B37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-125797(P2015-125797)
(22)【出願日】2015年6月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【テーマコード(参考)】
2D015
2D057
【Fターム(参考)】
2D015GA02
2D015GB07
2D057BA00
(57)【要約】
【課題】 2種類の緊急脱出装置のいずれにも対応可能な緊急脱出用油圧回路を備えた油圧式作業機を提供する。
【解決手段】 杭打機11などの油圧式作業機を脱出させる際に、油圧式作業機の作動油タンク18内の作動油を使用する第1の緊急脱出装置31に対応した供給配管接続回路21及び作動油吸込接続回路25を備えるとともに、緊急脱出装置の作動油タンク内の作動油を使用する第2の緊急脱出装置に対応した供給配管接続回路及び戻り配管接続回路23を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される油圧ポンプから油圧制御部を有する油圧回路を介して供給される作動油により作動する油圧式作業機において、前記油圧回路は、前記油圧ポンプから前記油圧制御部に作動油を供給する吐出配管から分岐した供給配管接続回路と、該供給配管接続回路の分岐点と前記油圧ポンプとの間の配管に設けられて油圧ポンプ方向への作動油の流れを規制する手段と、使用後の作動油を作動油タンクに戻す作動油戻り配管から分岐した戻り配管接続回路と、該戻り配管接続回路の分岐点に設けられて作動油の戻り方向を前記作動油タンク方向と前記戻り配管接続回路方向とに切り替える戻り方向切替弁と、作動油タンク内の作動油を吸い込む作動油吸込接続回路とを備え、
該油圧式作業機が故障したときに、該油圧式作業機の作動油タンク内の作動油を使用する第1の緊急脱出装置を用いて該油圧式作業機を緊急脱出させるときには、前記第1の緊急脱出装置の油圧ポンプから吐出された作動油を前記供給配管接続回路を介して前記油圧制御部に供給するとともに、前記戻り方向切替弁により使用後の作動油の戻り方向を前記作動油戻り配管に設定して使用後の作動油を該油圧式作業機の作動油タンクに戻し、該作動油タンク内の作動油を前記作動油吸込接続回路を介して前記第1の緊急脱出装置の油圧ポンプで吸い込むように設定し、
該油圧式作業機が故障したときに、第2の緊急脱出装置の作動油タンク内の作動油を使用する第2の緊急脱出装置を用いて該油圧式作業機を緊急脱出させるときには、前記第2の緊急脱出装置の油圧ポンプから吐出された作動油を前記供給配管接続回路を介して前記油圧制御部に供給するとともに、前記戻り方向切替弁により使用後の作動油の戻り方向を戻り配管接続回路に設定し、前記作動油戻り配管を介して前記第2の緊急脱出装置の作動油タンクに前記使用後の作動油を戻し、該作動油タンク内の作動油を前記作動油吸込接続回路を介して前記第2の緊急脱出装置の油圧ポンプで吸い込むように設定することを特徴とする油圧式作業機。
【請求項2】
前記供給配管接続回路、前記戻り配管接続回路及び前記作動油吸込接続回路は、前記緊急脱出装置の油圧回路に接続するための油圧ホースとの接続部にセルフシールカップリングをそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1記載の油圧式作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式作業機に関し、詳しくは、作業中にエンジンや油圧ポンプに異常が発生して自走不可能となった場合でも、作業場所から安全な場所に脱出させることができる油圧式作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道の敷設作業や保守作業、周辺施設の整備作業などに、エンジンにより駆動される油圧ポンプからコントロールバルブなどの油圧制御部を介して供給される作動油により作動する走行装置及び作業装置を備えた油圧式作業機が用いられている。通常、鉄道軌道内での作業は、最終列車が通過した後、始発列車が運転を開始する前までの間に行われており、作業終了後は速やかに鉄道軌道内から待避する必要がある。
【0003】
また、架線下や跨線橋下、トンネル内などの鉄道軌道内で作業を行う際には、何らかの原因で油圧式作業機のエンジンや油圧ポンプに異常が発生して走行装置などに作動油を供給できなくなり、油圧式作業機が鉄道軌道内から待避できなくなった場合に備えて、油圧式作業機を外部から作動させて油圧式作業機を鉄道軌道内から脱出させるための緊急脱出装置を待機させておくことが行われている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−180537号公報
【特許文献2】特開2010−180540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載された緊急脱出装置は、脱出させる油圧式作業機と同じような構成を有する油圧式作業機や、各種油圧機器に作動油を供給する油圧ユニットを緊急脱出装置として使用できるように改造したものであるから、作動油を昇圧する油圧ポンプ、油圧ポンプを駆動するエンジン、作動油を貯留する作動油タンク、油圧回路接続用の油圧ホースを巻回するホースリールなどを備えており、緊急脱出装置内の作動油タンクから吸い込んだ作動油を油圧ポンプで昇圧し、供給側の油圧ホースを介して油圧式作業機に供給し、使用後の作動油を戻り側の油圧ホースを介して緊急脱出装置内の作動油タンクに循環させるようにしている。したがって、脱出させる油圧式作業機には、緊急脱出装置から供給された作動油を使用後に緊急脱出装置に戻すための油圧回路を設けておく必要がある。
【0006】
一方、油圧式作業機を脱出させるために必要な作動油は、油圧式作業機内の作動油タンクに貯留されている作動油を使用することが可能であり、この作動油を使用する際には、緊急脱出装置内に作動油タンクを設ける必要はない。この場合の緊急脱出装置は、最も簡易な構成では、油圧ポンプとエンジンとを備えていればよいことになる。しかし、脱出させる油圧式作業機内の作動油タンクに貯留されている作動油を緊急脱出用に使用するためには、緊急脱出装置の油圧ポンプが油圧式作業機内の作動油タンクから作動油を吸い込む油圧回路を設けておく必要がある。
【0007】
すなわち、緊急脱出装置が、該緊急脱出装置内の作動油タンクの作動油を使用するときの油圧式作業機内の油圧回路と、油圧式作業機内の作動油タンクの作動油を使用するときの油圧式作業機内の油圧回路とは異なることになるため、作業現場で使用する緊急脱出装置の種類に対応した油圧回路を有する油圧式作業機を用意する必要があった。
【0008】
そこで本発明は、2種類の緊急脱出装置のいずれにも対応可能な緊急脱出用油圧回路を備えた油圧式作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の油圧式作業機は、エンジンにより駆動される油圧ポンプから油圧制御部を有する油圧回路を介して供給される作動油により作動する油圧式作業機において、前記油圧回路は、前記油圧ポンプから前記油圧制御部に作動油を供給する吐出配管から分岐した供給配管接続回路と、該供給配管接続回路の分岐点と前記油圧ポンプとの間の配管に設けられて油圧ポンプ方向への作動油の流れを規制する手段と、使用後の作動油を作動油タンクに戻す作動油戻り配管から分岐した戻り配管接続回路と、該戻り配管接続回路の分岐点に設けられて作動油の戻り方向を前記作動油タンク方向と前記戻り配管接続回路方向とに切り替える戻り方向切替弁と、作動油タンク内の作動油を吸い込む作動油吸込接続回路とを備え、該油圧式作業機が故障したときに、該油圧式作業機の作動油タンク内の作動油を使用する第1の緊急脱出装置を用いて該油圧式作業機を緊急脱出させるときには、前記第1の緊急脱出装置の油圧ポンプから吐出された作動油を前記供給配管接続回路を介して前記油圧制御部に供給するとともに、前記戻り方向切替弁により使用後の作動油の戻り方向を前記作動油戻り配管に設定して使用後の作動油を該油圧式作業機の作動油タンクに戻し、該作動油タンク内の作動油を前記作動油吸込接続回路を介して前記第1の緊急脱出装置の油圧ポンプで吸い込むように設定し、該油圧式作業機が故障したときに、第2の緊急脱出装置の作動油タンク内の作動油を使用する第2の緊急脱出装置を用いて該油圧式作業機を緊急脱出させるときには、前記第2の緊急脱出装置の油圧ポンプから吐出された作動油を前記供給配管接続回路を介して前記油圧制御部に供給するとともに、前記戻り方向切替弁により使用後の作動油の戻り方向を戻り配管接続回路に設定し、前記作動油戻り配管を介して前記第2の緊急脱出装置の作動油タンクに前記使用後の作動油を戻し、該作動油タンク内の作動油を前記作動油吸込接続回路を介して前記第2の緊急脱出装置の油圧ポンプで吸い込むように設定することを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明の油圧式作業機は、前記供給配管接続回路、前記戻り配管接続回路及び前記作動油吸込接続回路は、前記緊急脱出装置の油圧回路に接続するための油圧ホースとの接続部にセルフシールカップリングをそれぞれ備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油圧式作業機によれば、故障したときに使用する緊急脱出装置が、作動油タンクを持たないものでも、作動油タンクを有するものでも対応することができ、作業現場に配置された緊急脱出装置がいずれの場合でも、故障した油圧式作業機を脱出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の油圧式作業機の一形態例を示すもので、作動油タンクを持たない緊急脱出装置を接続した状態を示す油圧回路図である。
図2】同じく、作動油タンクを有する緊急脱出装置を接続した状態を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本形態例は、油圧式作業機として杭打機を例示したものであって、本形態例に示す杭打機11は、下部走行体の上に上部旋回体を旋回可能に設け、該上部旋回体に、杭打作業に必要な各種機器を設けるとともに、これらを作動させるための制御手段を有するエンジン駆動式の油圧回路を設けたものである。
【0014】
杭打機11に設けられた油圧回路12は、エンジン13によって駆動される複数の油圧ポンプ14と、下部走行体の走行手段や旋回手段、オーガ昇降手段、オーガ回転手段、ウインチなどに設けられた複数の油圧モータ15と、リーダの起伏手段や傾斜手段、ジャッキ手段、チャック手段などに設けられた複数の油圧シリンダ16と、これらの機器に対する作動油の流れを制御するためのコントロールバルブ、ソレノイドバルブなどの複数の各種バルブからなる油圧制御部17と、作動油を貯留する作動油タンク18と、これらの各種機器を接続する油圧配管とを備えており、運転台やリモコンに設けられた操作レバーやスイッチなどによって各油圧制御部17を操作することにより、杭打機11の走行、上部旋回体の旋回、杭打作業などを行えるように形成されている。
【0015】
さらに、前記油圧回路12には、緊急脱出用油圧回路として、複数の油圧ポンプ14から対応する各油圧制御部17に昇圧した作動油をそれぞれ供給する吐出配管14aから分岐した供給配管接続回路21と、該供給配管接続回路21の分岐点21aと前記油圧ポンプ14との間の前記吐出配管14aに設けられて油圧ポンプ14方向への作動油の流れを規制する手段であるチェックバルブ22と、各種機器で使用後の作動油を前記作動油タンク18に戻す作動油戻り配管19から分岐した戻り配管接続回路23と、該戻り配管接続回路23の分岐点23aに設けられて作動油の戻り方向を前記作動油タンク18方向と前記戻り配管接続回路23方向とに切り替える戻り方向切替弁24と、作動油タンク18内の作動油を緊急脱出装置の油圧ポンプが吸い込むための作動油吸込接続回路25とを備えている。なお、パイロット用油圧回路の作動油戻り配管19aと戻り配管接続回路23との分岐点23aの部分には、戻り方向切替弁に代えて、作動油タンク18への油圧回路を開閉する開閉弁24aを設けている。
【0016】
また、前記供給配管接続回路21、前記戻り配管接続回路23及び前記作動油吸込接続回路25は、緊急脱出装置の油圧回路に接続するための油圧ホースとの接続部にセルフシールカップリング26をそれぞれ備えており、油圧ホースを接続したときにのみ回路が開き、油圧ホース非接続時には回路が閉じた状態となっている。
【0017】
杭打機11の通常の単独作業状態では、各接続回路に緊急脱出装置からの油圧ホースは接続されておらず、前記戻り方向切替弁24は、作動油の戻り方向が前記作動油タンク18の方向になるように設定され、開閉弁24aは開状態に設定されている。各油圧ポンプ14から吐出配管14aに吐出された所定圧力の作動油は、チェックバルブ22を通過して対応する油圧制御部17にそれぞれ供給される。このとき、供給配管接続回路21は、先端がセルフシールカップリング26によって閉塞されているため、供給配管接続回路21に作動油が流れることはない。各油圧制御部17から各種機器に供給された作動油は、使用後に、作動油戻り配管19,19aを通って作動油タンク18に戻る。作動油タンク18内の作動油は、図示しない吸込配管によって各油圧ポンプ14に吸い込まれて循環する。これにより、杭打機11は、単独で通常の杭打作業を行うことができる。
【0018】
杭打機11のエンジン13や油圧ポンプ14の故障によって作業が継続できず、作業場所から待避できなくなったときには、図1に示す第1の緊急脱出装置31又は図2に示す第2の緊急脱出装置51を使用して杭打機11を作業場所から所定の待避場所に脱出させる。
【0019】
まず、図1に示す第1の緊急脱出装置31は、作動油タンクを持たないシンプルな構造を有する緊急脱出装置であって、前記杭打機11を脱出させるために必要な台数の脱出用油圧ポンプ32と、該脱出用油圧ポンプ32を駆動するためのエンジン33と、脱出用油圧ポンプ32の吐出管32aと吸込管32bとにそれぞれ設けられたセルフシールカップリング34とを備えている。
【0020】
この第1の緊急脱出装置31は、前記セルフシールカップリング34と、前記杭打機11に設けた前記供給配管接続回路21及び前記作動油吸込接続回路25のセルフシールカップリング26との間が油圧ホース41でそれぞれ接続される。但し、前記戻り配管接続回路23には油圧ホースを接続せず、戻り配管接続回路23はセルフシールカップリング26で閉塞状態としておく。また、戻り方向切替弁24は、作動油タンク18方向のまま、開閉弁24aは開状態のままとしておく。
【0021】
各油圧ホース41を接続した状態で第1の緊急脱出装置31を作動させ、脱出用油圧ポンプ32から所定圧力の作動油をそれぞれ供給すると、各作動油は、各吐出管32aから油圧ホース41を通って供給配管接続回路21に供給される。供給配管接続回路21に供給された作動油は、前記チェックバルブ22によって杭打機11の油圧ポンプ14の方向には流れず、油圧制御部17にそれぞれ供給される。各油圧制御部17から各種機器に供給された作動油は、使用後に、作動油戻り配管19を通って作動油タンク18に戻る。作動油タンク18内の作動油は、作動油吸込接続回路25に吸い込まれ、油圧ホース41を通り、吸込管32bから各脱出用油圧ポンプ32に吸い込まれて循環する。
【0022】
これにより、杭打機11の運転台やリモコンに設けた操作レバーやスイッチなどによって各油圧制御部17を操作することにより、単独作業時と同様に、杭打機11の走行、上部旋回体の旋回、杭打作業などを行うことが可能となる。したがって、上部旋回体の旋回状態やオーガの状態を走行可能な状態とした後、下部走行体の走行手段を作動させることにより、杭打機11を走行させることができ、安全な待避場所に待避させることができる。
【0023】
図2に示す第2の緊急脱出装置51は、前記杭打機11より小型の杭打機をベースとして緊急脱出用の油圧回路を付加したものである。すなわち、通常の杭打機と同様に、第2の緊急脱出装置51の油圧回路52は、エンジン53によって駆動される複数の油圧ポンプ54と、下部走行体の走行手段や旋回手段、オーガ昇降手段、オーガ回転手段、ウインチなどに設けられた複数の油圧モータ55と、リーダの起伏手段や傾斜手段、ジャッキ手段、チャック手段などに設けられた複数の油圧シリンダ56と、これらの機器に対する作動油の流れを制御するためのコントロールバルブ、ソレノイドバルブなどの複数の各種バルブからなる油圧制御部57と、作動油を貯留する作動油タンク58と、これらの各種機器を接続する油圧配管とを備えており、緊急脱出装置として使用しないときには、運転台などに設けられた操作レバーやスイッチなどによって各油圧制御部57を操作することにより、走行、上部旋回体の旋回、杭打作業などを行えるように形成されている。なお、図2では、緊急脱出用として関係のない機器、例えば、リーダの起伏シリンダなどは、図示を省略している。
【0024】
緊急脱出装置51における緊急脱出用の油圧回路は、杭打作業では使用するが、緊急脱出用としては使用しない機器の油圧回路、例えば、オーガ回転手段やオーガ昇降手段の油圧モータ55に接続する油圧回路を、杭打機11を脱出させる作動油を供給するための作動油供給回路61及び杭打機11で使用後の作動油を作動油タンク58に戻すための作動油戻り回路62として使用するとともに、ウインチ用油圧モータの回路を杭打機11のパイロット用の作動油を供給するための作動油供給回路63とし、オーガ昇降用油圧モータの回路の一つを使用後のパイロット作動油を作動油タンク58に戻すための作動油戻り回路64として使用している。各回路の先端には、前記同様に、セルフシールカップリング65が設けられている。
【0025】
この緊急脱出装置51を使用して杭打機11を脱出させる際には、杭打機11における戻り方向切替弁24は、作動油タンク18方向から戻り配管接続回路23方向に切り替え、開閉弁24aは、閉じ状態に切り替えた状態で、所定のセルフシールカップリング間を油圧ホース41でそれぞれ接続する。
【0026】
これにより、緊急脱出装置51の作動油タンク58から吸い込まれ、油圧ポンプ54から吐出された所定圧力の作動油は、オーガ回転手段やオーガ昇降手段、ウインチの油圧モータ55を通る作動油供給回路61,63を通り、油圧ホース41を通って杭打機11の供給配管接続回路21に供給される。杭打機11の供給配管接続回路21に供給された作動油は、前記同様に、各油圧制御部17から各種機器に供給され、使用後に、作動油戻り配管19を通る作動油は、戻り配管接続回路23側に切り替えられている戻り方向切替弁24から戻り配管接続回路23、油圧ホース41、作動油戻り回路62を通り、油圧モータ55及び油圧制御部57の戻り側回路62aを流れて作動油タンク58に戻る。また、作動油戻り配管19aを通るパイロット用の作動油は、開閉弁24aが閉じられているので、戻り配管接続回路23、油圧ホース41、作動油戻り回路64を通り、オーガ昇降手段の油圧モータ55の戻り側回路62bを流れて作動油タンク58に戻る。
【0027】
これにより、前記同様に、杭打機11の運転台などに設けた操作レバーなどによって各油圧制御部17を操作することにより、上部旋回体の旋回状態やオーガの状態を走行可能な状態とした後、下部走行体の走行手段を作動させることにより、杭打機11を走行させることができ、安全な待避場所に杭打機11を待避させることができる。
【0028】
このように、前記杭打機11は、緊急脱出装置が、図1に示すように、作動油タンクを持たない第1の緊急脱出装置31であっても、図2に示すように、作動油タンクを有する第2の緊急脱出装置51であっても、油圧ホース41の接続箇所と、戻り方向切替弁24及び開閉弁24aの切り替えとによって対応することができる。したがって、作業現場で待機させる緊急脱出装置の形式に関係なく杭打機11を使用することができ、緊急脱出装置の形式に応じた油圧回路を有する杭打機を選択する必要がなくなる。
【0029】
なお、前記形態例では、緊急脱出装置を使用して脱出させる油圧式作業機として、鉄道軌道内で杭打作業を行う杭打機を例示したが、本発明の油圧式作業機は、エンジンにより駆動される油圧ポンプから油圧回路を介して供給される作動油により作動する走行装置を備えたクレーン、ショベルをはじめとする各種油圧式作業機に適用できる。また、油圧式作業機の作業場所も特に限定されるものではなく、架線下や橋梁下、トンネル内などのクレーンを使用できない場所で作業する各種油圧式作業機に適用できる。
【0030】
また、油圧ホース接続部にセルフシールカップリングを用いることにより、油圧ホースの着脱によって油圧回路の開閉を自動的に行うことができ、操作性の向上を図ることができるが、開閉弁を用いて油圧回路の開閉を行うこともできる。
【符号の説明】
【0031】
11…杭打機、12…油圧回路、13…エンジン、14…油圧ポンプ、14a…吐出配管、15…油圧モータ、16…油圧シリンダ、17…油圧制御部、18…作動油タンク、19,19a…作動油戻り配管、21…供給配管接続回路、21a…分岐点、22…チェックバルブ、23…戻り配管接続回路、23a…分岐点、24…戻り方向切替弁、24a…開閉弁、25…作動油吸込接続回路、26…セルフシールカップリング、31…第1の緊急脱出装置、32…脱出用油圧ポンプ、32a…吐出管、32b…吸込管、33…エンジン、34…セルフシールカップリング、41…油圧ホース、51…第2の緊急脱出装置、52…油圧回路、53…エンジン、54…油圧ポンプ、55…油圧モータ、56…油圧シリンダ、57…油圧制御部、58…作動油タンク、61…作動油供給回路、62…作動油戻り回路、62a,62b…戻り側回路、63…作動油供給回路、64…作動油戻り回路、65…セルフシールカップリング
図1
図2