【解決手段】底板10の左側及び右側のそれぞれには、左右側板30A、30Bとの結合手段である第1フック11が設けられ、後板20の左側及び右側のそれぞれには、左右側板30A、30Bとの結合手段である第1嵌合部21A、21Bが設けられ、左右側板30A、30Bのそれぞれの下側には、底板10との結合手段である第1係合孔31が設けられ、左右側板30A、30Bのそれぞれの後側には、後板20との結合手段である第2嵌合部32が設けられた構成となっている。
前記底板の左側及び右側のそれぞれには、少なくとも二以上の前記第1フックが並列に設けられ、かつ前記左右側板のそれぞれの下側には、少なくとも二以上の前記第1係合孔が並列に設けられた請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャビネット。
前記第2嵌合部が、前記第1嵌合部の外形に対応する凹部と、前記第1嵌合部を前記凹部に案内するガイド部とを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のキャビネット。
前記底板の後側には、少なくとも二以上の前記第2フックが並列に設けられ、かつ前記後板の下側には、少なくとも二以上の前記第2係合孔が並列に設けられた請求項8に記載のキャビネット。
前記天板の左側及び右側のそれぞれには、少なくとも二以上の前記第3フックが並列に設けられ、かつ前記左右側板のそれぞれの上側には、少なくとも二以上の前記第3係合孔が並列に設けられた請求項12に記載のキャビネット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した特許文献1のキャビネットは、床面上に後板を載置した状態で組み立てを行わなければならない。つまり、特許文献1のキャビネットは、床面上に倒された状態で組み立てられる。一般的なキャビネットは、底板よりも後板の面積が広い。このため、特許文献1のキャビネットは、組立作業により広いスペースを必要とするという問題がある。また、後板を床面上に載置すると、後板の塗装面に傷が付いたり、面積の広い後板が変形したりする問題がある。さらに、作業者は、腰を曲げた状態でキャビネットを組み立てなければならず、作業者の腰に負担が掛かるという問題がある。そして、作業者は、腰に負担を掛けながら組み立てたキャビネットを床面上に起こさなければならない。
【0008】
これらに加え、特許文献1のキャビネットは、合成樹脂製の連結保持具を用いている。合成樹脂製の連結保持具は、経年劣化により、又はキャビネットの組立又は分解の際に誤って破損しやすい。このため、製造業者は、ユーザへのアフターサービスに備えて、合成樹脂製の連結保持具を長期間にわたってストックしなければならない。連結保持具を成形するための金型の維持管理を含めると、製造業者の負担は大きい。さらに、キャビネットが金属製の場合は、廃棄の際に連結保持具を分別する手間が掛かる。
【0009】
上述した特許文献2のキャビネットは、左右側板の組み付けに技量を要し、一般のユーザが容易に組み立てることができないという問題がある。すなわち、特許文献2のキャビネットを組み立てる場合は、まず、ベースに後板を結合させて、後板を自立させた状態にする。次いで、左右側板の第1係合溝に、ベースの第1差し込み片を嵌合させた後、第1差し込み片に沿って左右側板を後方に摺動させる。これにより、左右側板の第2係合溝が、後板の第2差し込み片に嵌合させる。しかし、作業者は、左右側板を後方に摺動させる際に、左右側板及び後板の垂直を維持しつつ、ベースが後方に移動しないように保持しなければならない。つまり、作業者は、左右側板の摺動と、左右側板及び後板の垂直維持と、ベースの保持とを同時に行わなければならない。このため、一般のユーザが、特許文献2のキャビネットを一人で組み立てることは難しい。
【0010】
また、特許文献2のキャビネットは、後板及び左右側板をベースに組み付けた後、底板を複数のねじで固定する必要がある。底板をねじ止めする作業は、単純に手間が掛かるだけなく、腰を曲げて行わなければならず、作業者の腰に負担が掛かる。
【0011】
上述した特許文献3のキャビネットは、後板と左右側板とからなる自立体の組み立てに手間が掛かるという問題がある。作業者は、まず、自立しない左右側板の一方と後板とを垂直に保持しながら組み付けなければならない。その後、左右側板の一方と後板との組立体は、自立可能ではあるが不安定であり、この組立体が倒れないように押さえながら、自立しない左右側板の他方を組み付けなければならない。特に、特許文献3のフック及び係合孔は、後板を持ち上げて結合させなければならず、自立体を組み立てる際に、後板と左右側板とを垂直に保持することが極めて困難である。このため、一般のユーザが、特許文献3のキャビネットを一人で組み立てることは難しい。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、一般のユーザが、組立及び分解を一人で容易に行うことができるキャビネット及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記目的を達成するために、本発明のキャビネットは、底板、後板、一対の左右側板、及び天板を含むキャビネットであって、前記底板の後側には、前記後板との結合手段が設けられ、前記底板の左側及び右側のそれぞれには、前記左右側板との結合手段である第1フックが設けられ、前記第1フックは、前記底板の外側の方向に下から上へ傾斜する傾斜部と、前記傾斜部の上方に連続して設けられた爪部とを有し、前記後板の下側には、前記底板との結合手段が設けられ、前記後板の左側及び右側のそれぞれには、前記左右側板との結合手段である第1嵌合部が設けられ、各第1嵌合部は、前記後板の左側又は右側に沿って延びる形状を有し、前記左右側板のそれぞれの下側には、前記底板との結合手段である第1係合孔が設けられ、前記第1係合孔は、前記第1フックが挿入される第1孔と、前記第1フックの傾斜部に当接し、かつ前記爪部に係合される傾斜面とを有し、前記左右側板のそれぞれの後側には、前記後板との結合手段である第2嵌合部が設けられ、各第2嵌合部は、前記左右側板の後側に沿って延び、かつ前記第1嵌合部に対応する形状を有する、構成となっている。
【0014】
(2)好ましくは、上記(1)のキャビネットにおいて、前記第1フックが、前記傾斜部の下方に連続して設けられ、前記底板の表面と同じ高さに位置する水平部を有する構成にするとよい。
【0015】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)のキャビネットにおいて、前記第1フックが、前記底板とは別の金属板からなる構成にするとよい。
【0016】
(4)好ましくは、上記(1)〜(3)のいずれかのキャビネットにおいて、前記第1係合孔が、前記傾斜面に設けられ、前記第1フックの爪部が挿入される第2孔を有する構成にするとよい。
【0017】
(5)好ましくは、上記(1)〜(4)のいずれかのキャビネットにおいて、前記第1係合孔が、前記左右側板とは別の金属板に設けられた構成にするとよい。
【0018】
(6)好ましくは、上記(1)〜(5)のいずれかのキャビネットにおいて、前記底板の左側及び右側のそれぞれには、少なくとも二以上の前記第1フックが並列に設けられ、かつ前記左右側板のそれぞれの下側には、少なくとも二以上の前記第1係合孔が並列に設けられた構成にするとよい。
【0019】
(7)好ましくは、上記(1)〜(6)のいずれかのキャビネットにおいて、前記第2嵌合部が、前記第1嵌合部の外形に対応する凹部と、前記第1嵌合部を前記凹部に案内するガイド部とを有する構成にするとよい。
【0020】
(8)好ましくは、上記(1)〜(7)のいずれかのキャビネットにおいて、前記底板の後側には、前記後板との結合手段としての第2フックが設けられ、前記第2フックは、前記底板の後側の面に対向する垂直部を有し、前記後板の下側には、前記底板との結合手段としての第2係合孔が設けられ、前記第2係合孔は、前記第2フックが挿入される断面略L字形の孔である、構成にするとよい。
【0021】
(9)好ましくは、上記(8)のキャビネットにおいて、前記底板の後側には、少なくとも二以上の前記第2フックが並列に設けられ、かつ前記後板の下側には、少なくとも二以上の前記第2係合孔が並列に設けられた構成にするとよい。
【0022】
(10)好ましくは、上記(8)又は(9)のキャビネットにおいて、前記第2フックが、前記底板とは別の金属板からなる構成にするとよい。
【0023】
(11)好ましくは、上記(10)のキャビネットにおいて、前記第1及び第2のフックが、前記底板とは別の共通の金属板からなる構成にするとよい。
【0024】
(12)好ましくは、上記(1)〜(11)のいずれかのキャビネットにおいて、前記天板の左側及び右側のそれぞれには、前記左右側板との結合手段である第3フックが設けられ、前記第3フックは、前記天板の裏側の面に対向する水平部を有し、前記左右側板のそれぞれの上側には、前記天板との結合手段である第3係合孔が設けられ、前記第3係合孔は、前記第3フックが挿入される水平方向の孔である、構成にするとよい。
【0025】
(13)好ましくは、上記(12)のキャビネットにおいて、前記天板の左側及び右側のそれぞれには、少なくとも二以上の前記第3フックが並列に設けられ、かつ前記左右側板のそれぞれの上側には、少なくとも二以上の前記第3係合孔が並列に設けられた構成にするとよい。
【0026】
(14)好ましくは、上記(12)又は(13)のキャビネットにおいて、前記第3フックが、前記天板とは別の金属板からなる構成にするとよい。
【0027】
(15)上記目的を達成するために、本発明のキャビネットの製造方法は、上記(1)〜(14)のいずれかのキャビネットの製造方法であって、床面上に前記底板を載置する第1工程と、前記底板に前記後板を結合させる第2工程と、前記底板及び前記後板に、前記左右側板のそれぞれを結合させる第3工程と、前記左右側板のそれぞれに前記天板を結合させる第4工程と、を含み、前記第3工程は、前記底板の内側から外側の方向に上から下へ傾斜するように前記側板を傾けること、前記側板を傾けた状態で、前記第1係合孔の第1孔に前記第1フックを挿入すること、前記第1フックを支点にして、前記底板の内側から外側の方向に前記側板を回転させることにより、前記第1フックの爪部を前記第1係合孔の傾斜部に係合させ、かつ前記第1嵌合部を前記第2嵌合部に嵌合させること、を含む、手順となっている。
【発明の効果】
【0028】
本発明のキャビネット及びその製造方法によれば、一般のユーザが、キャビネットの組立及び分解を一人で容易に行うことができる。また、本発明のキャビネットの製造方法の逆の手順を実施することにより、一般のユーザが、キャビネットの分解を一人で容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るキャビネット及びその製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
<全体構成>
図1及び
図2は、底板10、後板20、一対の左右側板30A、30B及び天板40を示す。これらの構成部材は、本実施形態に係る金属製キャビネット1の本体を構成する。底板10、後板20、左右側板30A、30B及び天板40は、いずれも金属板を折り曲げ加工することで構成される。底板10は、後板20及び左右側板30A、30Bのそれぞれに結合される。天板40は、左右側板30A、30Bのそれぞれに結合される。各構成部材は、工具は一切用いないで結合させることが可能である。また、各構成部材の結合を保持するために、ねじや合成樹脂製のファスナは一切不要である。本実施形態のキャビネット1は、各構成部材に設けられた結合手段に特徴がある。以下、底板10、後板20、左右側板30A、30B及び天板40のそれぞれに設けられた結合手段について、詳細に説明する。
【0032】
<底板>
図1及び
図2に示すように、底板10は、図中の水平方向に長い長方形状となっている。
図1に示すように、底板10の左側端面及び右側端面には、第1フック11が二つずつ並列に設けられている。これらの第1フック11は、左右側板30A、30Bとの結合手段である。一方、
図2に示すように、底板10の後側端面には、二つの第2フック12が並列に設けられている。これらの第2フック12は、後板20との結合手段である。第1及び第2フック11、12は、いずれも底板10のコーナ部の近傍に設けられている。
【0033】
後述するが、本実施形態のキャビネット1は、底板10に後板20を結合させた後、底板10及び後板20に、左右側板30A、30Bのそれぞれを結合させる。この結合順序に従って、以下、第2フック12及び第1フック11の構成について説明する。
【0034】
図3(a)、(b)に示すように、第2フック12は、底板10とは別の金属板からなり、例えば、底板10の後側端面の背後に溶接されている。第2フック12における、底板10の後側端面から突出する部分は、略L字形になっており、底板10の後側端面に対向する垂直部12aを有する。第2フック12は、底板10の後側端面と、垂直部12aとの間に、後板20を構成する金属板を挟み込む。二つの第2フック12は、後板20の下側のコーナ部付近の二箇所を保持し、後板20を底板10の後側端面に結合させる。
【0035】
ここで、
図4に示すように、第2フック12は、底板10の後側のコーナ部に配置された第1フック11と共通の金属板によって構成されてもよい。第1及び第2フック11、12を共通の金属板によって構成した場合は、二つのフック11、12の製造コストが安価となり、また、溶接される部品の数と溶接個所の数とを減少させることが可能となる。この結果、キャビネット1の製造コストが安価となる。
【0036】
次に、第1フック11について説明する。
図5(a)、(b)に示すように、第1フック11は、底板10とは別の金属板からなり、例えば、底板10の左側端面及び右側端面のそれぞれの背後に溶接されている。第1フック11は、底板10の左側端面及び右側端面から水平方向に突出するとともに、底板10の表面よりも上に垂直方向に突出する。
【0037】
図6(a)に示すように、第1フック11の水平方向に突出する部分には、底板10の表面と同じ高さに位置する水平部11aが設けられている。そして、第1フック11の垂直方向に突出する部分には、水平部11aに連続する傾斜部11bが設けられている。この傾斜部11bは、底板10の外側の方向に下から上へ傾斜する。この傾斜部11bの上方には、底板10に向かって突出する爪部11cが連続して設けられている。
【0038】
図6(a)に示す第1フック11の水平部11aの幅Lは、
図5(a)、(b)に示す左右側板30A、30Bの内面を構成する金属板の板厚、及び第1係合孔31が設けられた金属板の板厚の合計とほぼ同じ長さとなっている。なお、
図5(a)、(b)において、左右側板30A、30Bの内面を構成する金属板(
図1及び
図2を参照)は、図示を省略する。
【0039】
ここで、
図6(b)、(c)に示すように、左右側板30A、30Bと底板20とを組立又は分解する際には、第1フック11の水平部11a付近を支点にして、左右側板30A、30Bを回転又は逆回転させることで、第1フック11と第1係合孔31とを係合又は係合解除させる(組立及び分解の手順については、後述する)。
【0040】
第1フック11の水平部11aは、組立又は分解の際に、左右側板30A、30Bをスムーズに回転させる効果がある。第1に、水平部11aが底板10の表面と同じ高さに位置することにより、左右側板30A、30Bを回転させるときの支点の位置も、底板10の表面と同じ高さになる。この構成により、左右側板30A、30Bを回転させたときに、左右側板30A、30Bの第1係合孔31の付近が底板10に干渉しない。第2に、水平部11aの幅Lが、左右側板30A、30Bの内面を構成する金属板の板厚、及び第1係合孔31が設けられた金属板の板厚の合計とほぼ同じ長さとなっているので、左右側板30A、30Bの位置が水平方向にずれることなく、回転の支点が定まる。このような水平部11aの構成によって、左右側板30A、30Bをスムーズに回転させることが可能となる。
【0041】
さらに、第1フック11の傾斜部11bは、組立又は分解の際に、第1フック11と第1係合孔31とをスムーズに係合又は係合解除させる効果がある。すなわち、
図5(b)に示すように、第1フック11と第1係合孔31との係合は、第1フック11の爪部11cが第1係合孔31の第2孔31cに挿入され、かつ第1フック11の傾斜部11bが第1係合孔31の傾斜面31bに当接することで完了する。第1フック11の傾斜部11bを、底板10の外側の方向に下から上へ傾斜させたことにより、
図6(b)に示すように、爪部11cが第2孔31cに完全に挿入されるまでの間に、傾斜部11bが傾斜面31bに干渉しない。そして、上述した水平部11aの効果と相俟って、爪部11cは、左右側板30A、30Bの回転によって第2孔31cにストレートに挿入される。一方、
図6(c)に示すように、左右側板30A、30Bの逆回転によって、爪部11cが第2孔31cから抜けた瞬間、傾斜部11bが傾斜面31bから離反する。このような傾斜部11bの構成により、無駄な摩擦抵抗を生じさせることなく、第1フック11と第1係合孔31とをスムーズに係合又は係合解除させることが可能となる。
【0042】
<後板>
図1及び
図2に示すように、後板20は、図中の垂直方向に長い長方形状となっている。
図1に示すように、後板20の下側には、二つの第2係合孔22が並列に設けられている。これらの第2係合孔22は、底板10との結合手段であり、上述した二つの第2フック12に係合される。二つの第2係合孔22は、いずれも後板20の下側のコーナ部の近傍に設けられている。
図9(a)、(b)に示すように、第2係合孔22は、後板20の水平な下側端面から垂直な内面にわたって形成された、断面略L字形の孔である。
図3(b)及び
図4に示すように、第2係合孔22の入口側は、幅が広く、左右に対称な傾斜状の輪郭を有するガイド部になっている。底板10の第2フック12は、ガイド部から第2係合孔22内に導入され、第2係合孔22の幅の狭い上端部に係合される。
【0043】
一方、
図1に示すように、後板20の左側及び右側のそれぞれには、左右側板30A、30Bとの結合手段である第1嵌合部21A、21Bが設けられている。各第1嵌合部21A、21Bは、後板20の左側又は右側に沿って、上端から下端まで延びる形状を有する。第1嵌合部21A、21Bの断面形状を、
図14(a)、(b)に示す。本実施形態の第1嵌合部21A、21Bは、断面が略四角形状の凸部21aを有する。この凸部21aは、後板20の上端から下端まで連続している。
【0044】
<左右側板>
図1及び
図2に示すように、左右側板30A、30Bは、図中の垂直方向に長い長方形状となっている。左側板30Aと右側板30Bとは、対称的な構成となっており、互いに同一の結合手段を有する。左右側板30A、30Bのそれぞれの下側には、二つの第1係合孔31が並列に設けられている。既に述べたとおり、これらの第1係合孔31は、底板10との結合手段であり、二つの第1フック11に係合される。二つの第1係合孔31は、いずれも左右側板30A、30Bの下側のコーナ部の近傍に設けられている。
【0045】
図5(a)、(b)に示すように、第1係合孔31は、左右側板30A、30Bとは別の金属板に設けられている。本実施形態では、左右側板30A、30Bが薄い金属板により構成されているので、第1係合孔31を、左右側板30A、30Bよりも厚い別の金属板に設け、第1係合孔31の変形を防止している。この結果、係合及び係合解除の繰り返しに十分に耐える強度が得られる。第1係合孔31が設けられた金属板は、左右側板30A、30Bの下側に溶接されており、図示しない左右側板30A、30Bの内面を構成する金属板(
図1及び
図2を参照)に覆われる。左右側板30A、30Bの内面を構成する金属板には、第1係合孔31に対応するスリット状の孔が設けられている。
【0046】
本実施形態の第1係合孔31は、下側から順に、第1孔31a、傾斜面31b及び第2孔31cを有する。第1孔31aは、第1フック11が挿入される入口である。
図5(a)に示すように、第1孔31aは、幅が広く、左右に対称な傾斜状の輪郭を有するガイド部と、このガイド部の上方に連続する幅の狭い上端部とで構成される。第1孔31aのガイド部は、第1係合孔31が設けられた金属板の裏側に、第1フック11を導き入れる。ガイド部の幅が広くなっているので、二つの第1フック11を二つの第1孔31aに容易に挿入させることが可能である。一方、第1孔31aの幅の狭い上端部は、第1フック11の板厚に対応している。そして、第1孔31aの上端は、第1フック11の水平部11a上に当接し、左右側板30A、30Bを回転させるときの支点となる。次に、第1孔31aの傾斜面31bは、第1フック11の傾斜部11bと同じ垂直方向の幅及び傾斜角を有する。この傾斜面31bの上端部には、四角形状の第2孔31cが設けられている。この第2孔31cには、第1フック11の爪部11cが挿入される。既に述べたとおり、第1フック11の爪部11cが第2孔31cに挿入されたとき、傾斜面31bが第1フック11の傾斜部11bに当接する。これにより、第1フック11と第1係合孔31との係合が完了する。第1フック11と第1係合孔31との係合が完了したとき、左右側板30A、30Bのそれぞれは、底板10に対して垂直状態になる。
【0047】
一方、
図1及び
図2に示すように、左右側板30A、30Bのそれぞれの後側には、後板20との結合手段である第2嵌合部32が設けられている。各第2嵌合部32は、左右側板30A、30Bの後側に沿って延びる。各第2嵌合部32は、後板20の第1嵌合部21A、21Bに対応する形状を有する。ここで、第1嵌合部21A、21Bは、後板20の上端から下端に達する長さとなっているが、第2嵌合部32は、左右側板30A、30Bの上端から中央を超えて下方に延び、下端に達しない長さとなっている。第2嵌合部32の長さを短くしたことにより、左右側板30A、30Bの回転又は逆回転に伴う、第1嵌合部21A、21Bとの嵌合又は嵌合解除がスムーズになる。
【0048】
第2嵌合部32の断面形状を、
図14(a)、(b)に示す。本実施形態の第2嵌合部32は、凹部32a及びガイド部32bを有する。これらの凹部32a及びガイド部32bは、左右側板30A、30Bを構成する金属板を折り曲げて構成される。凹部32a及びガイド部32bは、左右側板30A、30Bの上端から下端に達しない長さで連続している。凹部32aの内形は、第1嵌合部21A、21Bの凸部21aの外形に対応する略四角形状の断面形状となっている。ガイド部32bは、凹部32aに連続する傾斜状となっている。このガイド部32bは、凸部21aを凹部32bの中へ案内し、凸部21aと凹部32bとを嵌合させる。
【0049】
さらに、
図1に示すように、左右側板30A、30Bのそれぞれの上側には、二つの第3係合孔33が並列に設けられている。これらの第3係合孔33は、次に述べる天板40との結合手段であり、天板40の二つの第3フック41に係合される。
【0050】
図7(b)、
図16(a)〜(c)に示すように、第3係合孔33は、左右側板30A、30Bとは別の金属板に設けられている。上述したように、本実施形態では、左右側板30A、30Bが薄い金属板により構成されているので、第3係合孔33を、左右側板30A、30Bよりも厚い別の金属板に設け、第3係合孔33の変形を防止している。この結果、係合及び係合解除の繰り返しに十分に耐える強度が得られる。第3係合孔33が設けられた金属板は、左右側板30A、30Bの上側裏面に溶接されている。左右側板30A、30Bの上側を構成する金属板には、第3係合孔33を包囲する長方形の開口が設けられている。
【0051】
図7(b)に示すように、本実施形態の第3係合孔33は、幅の広い挿入部33aと、左右に対称な傾斜状の輪郭を有するガイド部33bと、このガイド部33bに連続する幅の狭い係合部33cとで構成される。挿入部33aは、天板40の第3フック41が挿入される入口であり、第3係合孔33が設けられた金属板の裏側に、第3フック41を導き入れる。挿入部33aの幅が広くなっているので、二つの第3フック41を二つの第3係合孔33に容易に挿入させることが可能である。ガイド部33bは、第3フック41を幅の狭い係合部33cに案内する。係合部33cの幅は、第3フック41の板厚に対応している。
【0052】
<天板>
図1及び
図2に示すように、天板40は、図中の水平方向に長い長方形状となっている。天板40の左側及び右側には、上述した左右側板30A、30Bとの結合手段である第3フック41が二つずつ並列に設けられている。これらの第3フック41は、左右側板30A、30Bの第3係合孔33に係合される。
【0053】
図7(a)に示すように、第3フック41は、天板40とは別の金属板からなり、例えば、天板40の裏面に溶接されている。第3フック41は、略L字形になっており、天板40の裏面に対向する垂直部41aを有する。
図16(c)に示すように、第3フック41は、左右側板30A、30Bの第3係合孔33に挿入され、その垂直部41aを、第3係合孔33が設けられた金属板に係合させる。各第3フック41と各第3係合孔33との係合は、左右側板30A、30Bの上側端面に沿って、天板40を後方にスライドさせることにより同時に完了する。
【0054】
なお、各第3フック41と各第3係合孔33とが強固に係合するため、天板40が、地震などによって、左右側板30A、30Bから分離しまうことはない。しかし、天板40の意図しない分離を確実に防止するため、天板40の少なくとも1箇所を、左右側板30A、30B又は後板20のいずれかに、ねじや合成樹脂製のファスナで固定してもよい。
【0055】
<製造方法>
次に、上述したキャビネット1の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に示す底板10、後板20、左右側板30A、30B及び天板40は、以下に述べる第1〜第4工程を経て組み立てられる。
【0056】
図8に示すように、まず、第1工程として、底板10を床面上に載置する。次いで、第2工程として、底板10に後板20を結合させる。
図9(a)、(b)に示すように、後板20の二つの第2係合孔22の入口に、底板20の二つの第2フック12を導入させ、後板20を僅かに押下させる。これにより、第2フック12と第2係合孔22とが係合され、底板10に後板20が結合される。このとき、後板20が、後方に傾いた状態で自立する場合がある。
【0057】
次いで、第3工程として、底板10及び後板20に、左右側板30A、30Bのそれぞれを結合させる。第3工程の詳細を
図10〜
図14に示す。左右側板30A、30Bは、一枚ずつ順番に底板10及び後板20に結合させる。以下の説明では、組立手順の一例として、左側板30Aを先に結合させた後に、右側板30Bを結合させることとする。
【0058】
まず、
図10に示すように、底板10の内側から外側の方向に上から下へ傾斜するように、左側板30Aを傾ける。次いで、
図11及び
図13(a)に示すように、左側板30Aを傾けた状態で、第1係合孔31の第1孔31aに第1フック11を挿入する。その後、
図11及び
図13(b)に示すように、第1フック11の水平部11aを支点にして、底板10の内側から外側の方向に、左側板30Aを回転させる。この左側板30Aの回転によって、左側板30Aは、底板10及び後板20の両方に同時に結合される。
【0059】
すなわち、
図11及び
図12に示すように、左側板30Aは、底板10に対して垂直状態になるまで回転される。このとき、
図13(c)に示すように、第1フック11の爪部11cが第1係合孔31の第2孔31cに挿入され、かつ第1フック11の傾斜部11bが第1係合孔31の傾斜面31bに当接する。これにより、第1フック11と第1係合孔22との係合が完了する。これと同時に、後板20の第1嵌合部21Aと、左側板30Aの第2嵌合部32との嵌合も完了する。すなわち、
図14(a)に示すように、左側板30Aが垂直状態になるまでの過程において、左側板30Aの第2嵌合部32が、下側から徐々に、後板20の第1嵌合部21Aに嵌合される。そして、
図14(b)に示すように、左側板30Aが垂直状態になったところで、第1嵌合部21Aと第2嵌合部32との全長にわたる嵌合が完了する。特に、本実施形態では、第2嵌合部32が、凹部32a及びガイド部32bを有する。ガイド部32bは、下側から徐々に、第1嵌合部21Aの凸部21aを凹部32aの中へ案内し、凸部21aと凹部32bとを嵌合させる。この構成により、後板20が、後方に傾いた状態で自立した場合でも、左側板30Aと後板20とを容易に嵌合させることができる。
【0060】
その後、
図12に示すように、左側板30Aと同様の手順に従って、右側板30Bを、底板10及び後板20の両方に同時に結合させる。
【0061】
次いで、第4工程として、
図15に示すように、左右側板30A、30Bのそれぞれに天板40を結合させる。まず、
図16(a)、(b)に示すように、天板40の各第3フック41を、左右側板30A、30Bの各第3係合孔33に挿入させる。その後、天板40を後方にスライドさせると、
図16(c)に示すように、各第3フック41と各第3係合孔33との係合が、全て同時に完了する。以上の手順により、
図17に示すキャビネット1が完成する。
【0062】
<作用効果>
上述した本実施形態のキャビネット1及びその製造方法によれば、一般のユーザが、キャビネット1の組立を一人で容易に行うことができる。特に、左右側板30A、30Bを回転させることで、底板10及び後板20の両方に同時に結合させることができ、このことが、一人での組立作業の容易化に貢献している。また、各構成部材を結合させる作業は、全て直立した姿勢で行うことができ、作業者の腰に負担が掛からない。さらに、各構成部材の結合を保持するために、ねじを用いる必要がなく、工具なしでキャビネット1を組み立てることが可能である。そして、上述した製造方法の逆の手順を実施することにより、一般のユーザが、キャビネット1の分解を一人で容易に行うことができる。
【0063】
またさらに、本実施形態のキャビネット1は、床面上に載置した底板10に、後板20及び左右側板30A、30Bが順に組み付けられるので、後板20が傷づいたり、変形したりすることがなく、少ない作業スペースでキャビネット1を組立及び分解することができる。
【0064】
これに加え、本実施形態のキャビネット1は、合成樹脂製のファスナを用いずに、各構成部材の結合を保持することができるので、合成樹脂部品の経年劣化や破損の心配がない。また、ユーザへのアフターサービスに備えて、合成樹脂部品をストックしたり、在庫管理したりする必要もない。さらに、キャビネット1を廃棄する際には、金属製の各構成部品から合成樹脂部品を分別する手間も掛からない。
【0065】
<第2実施形態>
本発明のキャビネットは、上述した第1実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、底板10と左右側板30A、30Bとを結合するための第1フック11及び第1係合孔31は、
図5(a)、(b)に示す構成に限定されるものではない。例えば、
図18(a)、(b)及び
図19(a)〜(c)に示す構成の第1フック51及び第1係合孔61に変更することが可能である。以下、代替可能な第1フック51及び第1係合孔61について、図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図18(a)及び
図19(a)に示すように、第1フック51は、底板10とは別の金属板からなり、底板10の裏面に溶接されている。第1フック51は、略長方形状の金属板を折り曲げ加工することにより、水平部51a、傾斜部51b及び爪部51cが連続して設けられている。水平部51aは、底板10の表面と同じ高さに位置し、底板10の左側端面及び右側端面から水平方向に僅かに突出する。一方、傾斜部51b及び爪部51cは、底板10の表面よりも上に突出する。傾斜部51bは、底板10の外側の方向に下から上へ傾斜する。爪部51cは、底板10に向かって突出する。上述した第1実施形態の第1フック11と異なり、本実施形態の第1フック51は、水平部51a、傾斜部51b及び爪部51cが、図中の水平方向に広い幅を有する。図示しないが、本実施形態の第1フック51は、底板10の左側端面及び右側端面に、二つずつ並列に設けられている。
【0067】
一方、第1係合孔61は、左右側板30A、30Bとは別の金属板に設けられ、下側から順に、第1孔61a、傾斜面61b及び第2孔61cを有する。これらの第1孔61a、傾斜部61b及び第2孔61cは、第1フック51の水平部51a、傾斜部51b及び爪部51cに対応する水平方向の幅を有する。このため、本実施形態における第1孔61aは、単純な断面略L形の孔であり、第1実施形態の第1孔31aのような傾斜状のガイド部や幅の狭い上端部を有しない。傾斜面61bは、第1フック51の傾斜部51bと同じ垂直方向の幅及び傾斜角を有する。図示しないが、本実施形態の第1係合孔61は、左右側板30A、30Bのそれぞれの下側に、二つずつ並列に設けられている。
【0068】
図19(b)、(c)及び
図18(b)に示すように、第1フック51の水平部51a付近を支点にして、左右側板30A、30Bを回転させることで、第1フック51と第1係合孔61とを係合させることができる。すなわち、第1フック51の爪部51cが第1係合孔61の第2孔61cに挿入され、かつ第1フック51の傾斜部51bが第1係合孔61の傾斜面61bに当接する。このような第1フック51と第1係合孔61との係合は、左右側板30A、30Bを逆回転させることで解除される。
【0069】
<第3実施形態>
本発明のキャビネットは、上述した第1実施形態の金属製キャビネット1に限定されるものではない。本発明の結合手段は、木製キャビネットにも適用することができる。木製キャビネットに適用した本発明の結合手段の具体例を、
図20(a)、(b)及び
図21(a)、(b)に示す。
【0070】
図20(a)、(b)において、底板70及び左右側板80A、80Bは、いずれも木製の板部材からなる。木製の底板70には、金属板からなる第1フック71が設けられている。一方、木製の左右側板80A、80Bには、金属製の係合プレート83が設けられている。係合プレート83は、第1係合孔としての第1孔83a及び傾斜部83bを有する。係合プレート83は、金属製の目隠しプレート84によって覆い隠される。金属部品である第1フック71、係合プレート83及び目隠しプレート84は、いずれも木製の底板70又は左右側板80A、80Bに、二つのねじ91によって固定されている。
【0071】
図20(b)に示すように、第1フック71は、金属板の一端側を折り曲げ加工することにより、水平部71a、傾斜部71b及び爪部71cが連続して設けられている。
図21(a)に示すように、水平部71aは、底板70の表面と同じ高さに位置し、底板70の左側端面及び右側端面から水平方向に僅かに突出する。傾斜部71b及び爪部71cは、底板70の表面よりも上に突出する。傾斜部71bは、底板70の外側の方向に下から上へ傾斜する。爪部71cは、底板70に向かって突出する。上述した第2実施形態の第1フック51と同様に、本実施形態の第1フック71も、水平部71a、傾斜部71b及び爪部71cが、図中の水平方向に広い幅を有する。図示しないが、本実施形態の第1フック71は、底板70の左側端面及び右側端面に、二つずつ並列に設けられている。
【0072】
図20(b)に示すように、木製の左右側板80A、80Bには、窪み81が形成されている。窪み81内には、左右一対の段差部82が設けられている。これらの段差部82により、正面視した窪み81の形状は、略T字形となっている。各段差部82には、ねじ91が螺合されるねじ穴が形成されている。各段差部82には、係合プレート83及び目隠しプレート84がねじ止めされる。図示しないが、本実施形態の窪み81、段差部82、係合プレート83、目隠しプレート84及び二つのねじ91からなる結合手段は、左右側板80A、80Bのそれぞれの下側に、二つずつ並列に設けられている。
【0073】
既に述べたとおり、係合プレート83は、第1係合孔としての第1孔83a及び傾斜部83bを有する。第1孔83aは、幅が広く、左右に対称な傾斜状の輪郭を有するガイド部と、このガイド部の上方に連続する幅の狭い上端部とで構成される。第1孔83aのガイド部は、係合プレート83の裏側に、第1フック71を導き入れる。ガイド部の幅が広くなっているので、二つの第1フック71を二つの第1孔83aに容易に挿入させることが可能である。また、第1孔83aの上端部の狭い幅は、第1フック71の水平方向の幅に対応している。一方、係合プレート83の傾斜面31bは、第1フック71の傾斜部71bと同じ縦幅及び傾斜角を有する。ここで、第1及び第2実施形態と異なり、本実施形態の係合プレート83は、第1フック71の爪部71cが挿入される第2孔を有しない。
図21(b)に示すように、第1フック71の爪部71cは、係合プレート83の傾斜面83bの上端面に係合される。
【0074】
目隠しプレート84は、逆U字形の金属板であり、略T字形の窪み81の上側を覆い隠す。この目隠しプレート84により、第1フック71と係合プレート83との結合状態が外部から視認できなくなり、結合箇所の外観をシンプルで美しく見せることができる。
【0075】
図21(a)、(b)及び
図20(a)に示すように、第1フック71の水平部71a付近を支点にして、左右側板80A、80Bを回転させることで、第1フック71と係合プレート83とを係合させることができる。すなわち、第1フック71の爪部71cが係合プレート83の傾斜面83bの上端に係合され、かつ第1フック71の傾斜部71bが係合プレート83の傾斜面83bに当接する。このような第1フック71と係合プレート83との係合は、左右側板80A、80Bを逆回転させることで解除される。