(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-8636(P2017-8636A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】ベタ基礎用の型枠ホルダ材
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20161216BHJP
【FI】
E02D27/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-126688(P2015-126688)
(22)【出願日】2015年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】311011092
【氏名又は名称】株式会社 ダンネツ
(74)【代理人】
【識別番号】100099014
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 滿茂
(72)【発明者】
【氏名】太田 吉四郎
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA16
(57)【要約】
【課題】 ベタ基礎の構築を容易化する型枠ホルダであって、立上部の断熱特性を向上させる。
【解決手段】 発泡樹脂製の型枠材を保持するホルダ材20であって、屋外側のアウターホルダ21と、屋内側のインナーホルダ31と、連絡材40とを備える。アウターホルダは、主板22と、この主板より面積の小さな副板24と、主板と副板とを連絡するブリッジ材26とを備える。ブリッジ材26は、端部を主板および副板の上下略中央に固定する。インナーホルダは、主板の略半分の面積とした屋内側のハーフ主板32と、ハーフ主板より面積の小さなハーフ副板34と、ハーフ主板とハーフ副板とを連絡するブリッジ材36とを備える。ブリッジ材36は、端部をハーフ主板およびハーフ副板の下端部に固定する。連絡材40は副板24の上下略中央部とハーフ副板34の下端部とを連絡する(請求項1)。アウターホルダ21とインナーホルダ31に発泡樹脂製の型枠材を配設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂製の型枠材を保持するホルダ材であって、
このホルダ材は、
屋外側に配する型枠材を支持するアウターホルダと、
屋内側に配する型枠材を支持するインナーホルダと、
前記アウターホルダとインナーホルダとを連絡する連絡材とを備え、
前記アウターホルダは、
屋外側に配する主板と、
この主板より面積の小さな副板と、
前記主板と副板とを連絡する第一のブリッジ材とを備え、
この第一のブリッジ材は、その端部を前記主板および副板の上下略中央に固定したものであり、
前記インナーホルダは、
前記主板の略半分の面積とした、屋内側に配するハーフ主板と、
このハーフ主板より面積の小さなハーフ副板と、
前記ハーフ主板とハーフ副板とを連絡する第二のブリッジ材とを備え、
この第二のブリッジ材は、その端部を前記ハーフ主板およびハーフ副板の下端部に固定したものであり、
前記連絡材は、
前記副板の上下略中央部と前記ハーフ副板の下端部とを連絡することを特徴とするベタ基礎用の型枠ホルダ材。
【請求項2】
アウターホルダを構成する主板および副板と、インナーホルダを構成するハーフ主板およびハーフ副板は、略方形の樹脂板であることを特徴とする請求項1記載のベタ基礎用の型枠ホルダ材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂製の型枠材を用いてベタ基礎を作る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用の基礎は、
図6に示すように、地面1をコンクリート2によって被覆して立上部3を設けるベタ基礎と、
図7に示すように、地面1を露出させた状態で立上部4を設ける布基礎がある。
【0003】
いずれの場合も、立上部3の上に土台を配置して、この土台の上に柱材等を設け、躯体を構築する。
【0004】
地面1をコンクリート(土間スラブ(2))によって被覆するベタ基礎は、家を面で支えるので不同沈下が起こりにくいとされ、立上部3に通気口を設けなくても良いので害虫の侵入を防ぐことが出来、床下の湿度が安定する等の利点がある。使用するコンクリート量が多いので、布基礎に較べ建築コストが若干嵩む。
【0005】
ベタ基礎と布基礎はどちらにも利点があるが、近時、高気密/高断熱住宅の普及等により、ベタ基礎の需要が増加する傾向にある。
【0006】
ベタ基礎を作る手順は、例えば、基礎が配置される部分の地面1に砂利を敷き詰めて転圧し、砂利の上に捨てコンクリートをかぶせ、配筋工事を行い、土間スラブ(2)のコンクリート打設を行う。土間スラブ(2)の養生後、立上部3の型枠を組んだ上で、型枠にコンクリートを打って立上部3を形成する。
【0007】
一般的な型枠は、木製型枠であり、立上部3のコンクリートの養生後は、当該型枠を取り外して撤去した。しかし、このような木製型枠を用いると、段階を踏んで成形する土間スラブ(2)と立上部3の形成に、時間と手間を要する。
【0008】
このため、樹脂製の型枠材を用いて、当該型枠材からコンクリートを打設して、土間スラブ(2)と立上部3とを同時に作る技術が提案された(特許文献1)。
【0009】
これは、
図8に示すように、二枚の樹脂製の板状の型枠パネル11を、接続部12を介して平行に支持するもので、この型枠パネル11と接続部12は、樹脂成形によって一体に成形する。
【0010】
このような型枠材を使用すれば、平行配置する二枚の型枠パネル11の離間調整など、熟練を要する面倒な作業を省略でき、コンクリート打設後、型枠材を取り外す必要がないので、工期を短縮し、建築コストを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−115629号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
問題は、ベタ基礎の断熱性能である。
【0013】
特許文献1に係る技術は、樹脂製の型枠パネル11と接続部12とを一体成形するものであり、ベタ基礎を作る作業性には優れるが、立上部3を断熱することは難しい。
【0014】
一体成形する型枠パネルは、断熱性能を高めるような肉厚成形も困難であるし、使用する樹脂材も限定されるので、型枠パネルに優れた断熱性能をもたせることも困難である。
【0015】
ベタ基礎は、立上部3から伝達される冷気が、大量のコンクリートである土間スラブ(2)に蓄冷(蓄熱)されるので、少なくとも立上部3の外側(外周)に断熱材を配することが望ましいが、従来の技術(例えば特許文献1)では、立上部3の外側/内側に断熱性の高い素材を配することは出来ない。
【0016】
別途、断熱材を配することは可能であるが、完成後の立上部3に断熱材を配することは難しく、また、接着剤や固定金具を用いて立上部3の外側に断熱材を配しても、断熱材の固定状態を長期にわたって保証することは困難である。
【0017】
そこで、本発明は、ベタ基礎の構築を容易化する型枠ホルダであって、立上部の断熱特性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため、本発明に係るベタ基礎用の型枠ホルダ材は、屋外側に配する型枠材を支持するアウターホルダと、屋内側に配する型枠材を支持するインナーホルダと、前記アウターホルダとインナーホルダとを連絡する連絡材とを備え、前記アウターホルダは、屋外側に配する主板と、この主板より面積の小さな副板と、前記主板と副板とを連絡する第一のブリッジ材とを備え、この第一のブリッジ材は、その端部を前記主板および副板の上下略中央に固定したものであり、前記インナーホルダは、前記主板の略半分の面積とした、屋内側に配するハーフ主板と、このハーフ主板より面積の小さなハーフ副板と、前記ハーフ主板とハーフ副板とを連絡する第二のブリッジ材とを備え、この第二のブリッジ材は、その端部を前記ハーフ主板およびハーフ副板の下端部に固定したものであり、前記連絡材は、前記副板の上下略中央部と前記ハーフ副板の下端部とを連絡する(請求項1)。
【0019】
この型枠ホルダ材は、屋外側のアウターホルダと、屋内側のインナーホルダによって、それぞれ、発泡樹脂製の型枠材を保持し、コンクリートの打設を可能とするものである。
【0020】
ベタ基礎の構築時には、屋内側のインナーホルダに支持させる発泡樹脂材を小さくすることによって、土間スラブを作る打設コンクリートの流動を円滑にする。このため、屋内側のインナーホルダは、屋外側のアウターホルダに較べて面積を小さくし、ハーフ主板とハーフ副板の下端部に第二のブリッジ材を設け、当該第二のブリッジ材の下方を開放して、上部から打ち込む打設コンクリートが土間側へスムーズに流れ込むようにした。
【0021】
アウターホルダを構成する主板および副板と、インナーホルダを構成するハーフ主板およびハーフ副板は、略方形の樹脂板とする場合がある(請求項2)。
【0022】
アウターホルダとインナーホルダを樹脂成形することにより、製品の軽量化、難錆化、製造コストの低減等の利点を得る。また、形状を略方形とすることにより、最小面積で効率的に、コンクリート打設時の振動等に耐えるよう発泡樹脂を支持させることが出来る。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る型枠ホルダ材によれば、ベタ基礎の構築が容易となり、また型枠材に発泡樹脂を使用するため、ベタ基礎の立上部の断熱特性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係るホルダ材を例示する斜視図である。
【
図3】
図1に示すホルダ材に突起を設ける場合を例示する斜視図である。
【
図4】
図1に示すホルダ材を用いて型枠材を設置する状態を示す図である。
【
図5】
図4に示す型枠材にコンクリートを打設した状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1、
図2は、実施形態に係るホルダ材20を例示するものである。
【0026】
このホルダ材20は、屋外側に配する型枠材を支持するアウターホルダ21と、屋内側に配する型枠材を支持するインナーホルダ31と、アウターホルダ21とインナーホルダ31とを連絡する連絡材40とを備える。
【0027】
アウターホルダ21は、屋外側に配する主板22と、この主板22より面積の小さな副板24と、主板22と副板24とを連絡する第一のブリッジ材26とを備える。
【0028】
第一のブリッジ材26は、その端部を前記主板22および副板24の上下略中央に固定する。
【0029】
インナーホルダ31は、前記主板22の略半分の面積とした、屋内側に配するハーフ主板32と、このハーフ主板32より面積の小さなハーフ副板34と、前記ハーフ主板32とハーフ副板34とを連絡する第二のブリッジ材36とを備える。
【0030】
第二のブリッジ材36は、その端部を前記ハーフ主板32およびハーフ副板34の下端部に固定する。
【0031】
前記連絡材40は、前記副板24の上下略中央部と前記ハーフ副板34の下端部とを連絡する。以下、各部を説明する。
【0032】
本発明に係るホルダ材20は、全体を樹脂によって成形する。好ましくは、射出成形等により、全体を一体成形する。
【0033】
図1では、主板22とハーフ主板32とを凹凸のない平板として示したが、好ましくは、発泡樹脂製の型枠材をグリップするための凹凸を設ける。例えば、
図3に示すように、主板22とハーフ主板32に縦方向に伸びる突出片Pを複数設ける等である。突出片Pは、例えば、左右端部と中央部とに縦方向に設ける。なお、配設位置、配設方向、配設個数は、これに限定されない。主板22およびハーフ主板32と一体に成形しても良い。
【0034】
適宜形状の突出片Pを設けると、型枠材に対するグリップ性能(噛み合い性能)が高まるだけでなく、主板22とハーフ主板32の変形を防止できる。変形防止のため、図示した突出片Pのほかにも適宜形状の凹凸を主板22とハーフ主板32に設けて良い。
【0035】
副板24の面積を主板22より小さくし、ハーフ副板34の面積をハーフ主板32より小さくするのは、二つの副板24、34の間にコンクリートを打設するためであり、コンクリートと型枠材との接触面積をより大きく確保するためである。
【0036】
主板22と副板24はブリッジ材26を介して連絡し、両者の離隔寸法を一定に保つ。ブリッジ材26の長さは、使用する型枠材の厚みに応じて設定する。
【0037】
同様に、ハーフ主板32とハーフ副板34はブリッジ材36を介して連絡し、両者の離隔寸法を一定に保つ。ブリッジ材36の長さは、使用する型枠材の厚みに応じて設定する。ブリッジ材26、36の長さは、必ずしも同一である必要はない。なお、同一でも良いことは勿論である。
【0038】
ブリッジ材26、36は、好ましくは、複数本(例えば均等間隔で三本)設ける。強度を保証するためである。
【0039】
アウターホルダ21のブリッジ材26は、主板22と副板24の上下略中央部を連絡させる。ブリッジ材26の上側と下側に、それぞれ型枠材を配設するためである。
【0040】
インナーホルダ31は、ハーフ主板32とハーフ副板34の下端部(下端部近傍を含む)を連絡させる。ブリッジ材36の上側にのみ型枠材を配設するためであり、ブリッジ材36の下方には型枠材を設けないからである。
【0041】
連絡材40は、アウターホルダ21の副板24とインナーホルダ31のハーフ副板34とを連絡するもので、強度を高めるため、複数本設ける。この連絡材40は、打設コンクリートの衝撃を低減させるため、断面形状を円形または楕円形とすることが望ましい。
【0042】
連絡材40の長さは、基礎の立上部の厚みに応じて適宜設定する。副板24とハーフ副板34との間、つまり連絡材40の部分にコンクリートが打設される。
【0043】
図1では、副板24と連絡材40との接続部を単純に図示したが、コンクリート打設の衝撃に耐えるよう、接続部には、補強用のリブ(図示せず)を設けて、副板24およびハーフ副板34と連絡材40との固定強度を高めることが望ましい。
【0044】
主板22、副板24、ハーフ主板32、ハーフ副板24の形状は適宜設定して良いが、好ましくは、正方形または長方形等の方形とする。製造が容易であり、コンクリート打設時の衝撃に耐え易く、コンクリート打設後の型枠材の支持にも適するからである。主板22、副板24、ハーフ主板32、ハーフ副板24の肉厚は、コンクリート打設時の衝撃に耐え、コンクリート打設後の型枠材の支持にも適する程度の適宜肉厚に設定する。
【0045】
インナーホルダ31のハーフ副板34は、アウターホルダ21の副板24よりも面積が小さいので、連絡材40は、副板24の上下略中央部とハーフ副板34の下端部とを連絡するように設ける。
【0046】
ブリッジ材26、36、連絡材40の断面形状は適宜設定する。例えば、方形または円形とすることが好ましい。また内部中空(管)とせず、棒状の柱状体とすることが望ましい。長期にわたる強度を保証するためである。
【0047】
かかるホルダ材20を用いて基礎を作るときは、例えば
図4に示すように、アウターホルダ21のブリッジ材26の上下に、発泡樹脂製の型枠材51、52を配設する一方、インナーホルダ31のブリッジ材36の上に、発泡樹脂製の型枠材53を配する。
【0048】
好ましくは、インナーホルダ31の受け具55を設ける。受け具55は、例えば、捨てコンクリートF1に埋設した基端アンカー56と、基端アンカー56から上方に延びるボルト材57と、ボルト材57の上端に設けたナット58と、ナット58に固定した支持材59−1、59−2を備える。F2は、例えば、転圧砂利である。
【0049】
縦方向の支持材59−1は、ハーフ主板32を支えるものであり、横方向の支持材59−2は、型枠材53の下端部を支える。そして、ナット58を回転させて高さ位置を上下動させると、型枠材53の下端部を支える支持材59−2が上下動して、型枠材53の高さ位置を型枠材51に揃える。
【0050】
図5は、型枠材51、53の間にコンクリート(斜線部分)を打設した状態を例示するものである。
【0051】
打設したコンクリートは、捨てコンクリートF1に達して空間に充填され、型枠材53の下端部と略同一の高さをもって広がって土間コンクリートR1となる。そして、型枠材51、53の間のコンクリートが立上部R2となる。
【0052】
型枠材51、53の上端部の高さは、受け具55を介して予め均等調節できるので、立上部R2は、上面を水平に形成できる。
【0053】
従って、かかるホルダ材20を用いれば、十分な肉厚をもった発泡樹脂製の型枠材51〜53を用いて、ベタ基礎の内側/外側を断熱できるとともに、土間コンクリートR1と立上部R2の形成作業を同時に行うことが出来るため、作業効率を改善することが出来る。従来のように、ベタ基礎の構築後に、基礎周りの断熱作業が必要になることもない。型枠材51〜53が、そのまま断熱材となって機能するからである。
【0054】
本発明に係るホルダ材は、前記実施形態のものに限定されない。例えば、主板と副板の形状は、方形に限らず他の多角形や円形でもよい。ハーフ主板(32)、ハーフ副板(34)は、主板(22)、副板(24)の略半分のサイズ(例えば約40%〜60%程度)であって、厳密に半分の面積という意味ではない。すでに述べたように、連絡材40は断面形状を円または楕円とすることが望ましいが、ブリッジ材(26、36)の断面形状は円、楕円、矩形その他形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0055】
20 ホルダ材
21 アウターホルダ
22 主板
24 副板
26 第一のブリッジ材
31 インナーホルダ
32 ハーフ主板
34 ハーフ副板
36 第二のブリッジ材
40 連絡材
51、52、53 型枠材
55 受け具
56 基端アンカー
57 ボルト材
58 ナット
59−1、59−2 支持材
F1 捨てコンクリート
F2 転圧砂利
P 突出片
R1 土間コンクリート
R2 立上部