特開2017-86394(P2017-86394A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-86394(P2017-86394A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】脱出装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 1/20 20060101AFI20170421BHJP
【FI】
   A62B1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-219244(P2015-219244)
(22)【出願日】2015年11月9日
(71)【出願人】
【識別番号】503049508
【氏名又は名称】有限会社アイエスマック
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 茂
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184AA12
2E184CC32
(57)【要約】
【課題】大型のボンベやインフレータを用いることなく膨張させることが可能で鉄道車両にも搭載することができる脱出装置の提供。
【解決手段】気体を注入することで膨張する袋状のシュート体1と、このシュート体1に前記気体を注入するための送気体2とから成り、車両3の開口部4に前記シュート体1を係止させて車外に脱出する際に使用する脱出装置であって、前記シュート体1の外周部5に多数の穴6を所定間隔で設け、前記送気体2は、ボンベ収納体7に複数の小型ボンベ8を内装した構成とし、前記送気体2には前記小型ボンベ8を前記ボンベ収納体7の外部から開閉操作するためのボンベ操作部を設け、前記送気体2には前記小型ボンベ8を開操作して前記ボンベ収納体7内に充満した気体を前記シュート体1に注入する送気管9を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を注入することで膨張する袋状のシュート体と、このシュート体に前記気体を注入するための送気体とから成り、車両の開口部に前記シュート体を係止させて車外に脱出する際に使用する脱出装置であって、前記シュート体の外周部には多数の穴が所定間隔で設けられており、前記送気体は、ボンベ収納体に複数の小型ボンベが内装されて構成され、前記送気体には前記小型ボンベを前記ボンベ収納体の外部から開閉操作するためのボンベ操作部が設けられ、更に、前記送気体には前記小型ボンベを開操作して前記ボンベ収納体内に充満した気体を前記シュート体に注入する送気管が設けられていることを特徴とする脱出装置。
【請求項2】
請求項1記載の脱出装置において、前記ボンベ操作部は、前記ボンベ収納体に貫通状態に設けられる軸体と、この軸体の前記ボンベ収納体の外側部分と係止して該軸体を回転させる回転操作体とから成り、前記軸体の前記ボンベ収納体内に位置する部分には該ボンベ収納体に内装された前記小型ボンベの頭部を押圧して該小型ボンベ内の気体を放出するためのカム部が設けられていることを特徴とする脱出装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の脱出装置において、前記シュート体を前記車両の開口部に係止した際、前記車両及び地面と接触する前記シュート体の裏面所定部位には補強面材が設けられていることを特徴とする脱出装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の脱出装置において、前記シュート体の前記送気管が挿入される気体注入口には逆止弁が設けられていることを特徴とする脱出装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の脱出装置において、前記小型ボンベにはCOが充填されており、この小型ボンベの内容量は80g以下であることを特徴とする脱出装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の脱出装置において、前記穴はハトメにより補強されたハトメ穴であることを特徴とする脱出装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の脱出装置において、前記穴に係止するフック部が一端に設けられ、人体の手若しくは足に係止する係止部が他端に設けられた漂流防止体を具備したことを特徴とする脱出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、バス等の陸上車両から、緊急時に乗客を安全に脱出させるための脱出装置としては、例えば特許文献1に開示されるように、不使用時には折り畳んで収納でき、膨張させることで滑り台状となる袋状の脱出シュートが使用されている。
【0003】
このような脱出シュートは、通常、脱出シュートと共に車両に搭載されたボンベを使用してガスを注入するか、脱出シュートに一体に設けられたインフレータ(ガス発生装置)を使用して膨張させている。
【0004】
ところで、鉄道車両には、安全管理上、大型のボンベは搭載できず、また、インフレータの使用も忌避されることから、例えばアルミニウム製の梯子状の昇降用具等、ボンベやインフレータが不要なものを使用しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−201423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、不使用時には折り畳んで収納でき、また、大型のボンベやインフレータを用いることなく膨張させることが可能で鉄道車両にも搭載することができ、筏としても使用可能な実用的な脱出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
気体を注入することで膨張する袋状のシュート体1と、このシュート体1に前記気体を注入するための送気体2とから成り、車両3の開口部4に前記シュート体1を係止させて車外に脱出する際に使用する脱出装置であって、前記シュート体1の外周部5には多数の穴6が所定間隔で設けられており、前記送気体2は、ボンベ収納体7に複数の小型ボンベ8が内装されて構成され、前記送気体2には前記小型ボンベ8を前記ボンベ収納体7の外部から開閉操作するためのボンベ操作部が設けられ、更に、前記送気体2には前記小型ボンベ8を開操作して前記ボンベ収納体7内に充満した気体を前記シュート体1に注入する送気管9が設けられていることを特徴とする脱出装置に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の脱出装置において、前記ボンベ操作部は、前記ボンベ収納体7に貫通状態に設けられる軸体10と、この軸体10の前記ボンベ収納体7の外側部分と係止して該軸体10を回転させる回転操作体11とから成り、前記軸体10の前記ボンベ収納体7内に位置する部分には該ボンベ収納体7に内装された前記小型ボンベ8の頭部8aを押圧して該小型ボンベ8内の気体を放出するためのカム部12が設けられていることを特徴とする脱出装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の脱出装置において、前記シュート体1を前記車両3の開口部4に係止した際、前記車両3及び地面と接触する前記シュート体1の裏面所定部位には補強面材13が設けられていることを特徴とする脱出装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の脱出装置において、前記シュート体1の前記送気管9が挿入される気体注入口14には逆止弁15が設けられていることを特徴とする脱出装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の脱出装置において、前記小型ボンベ8にはCOが充填されており、この小型ボンベ8の内容量は80g以下であることを特徴とする脱出装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の脱出装置において、前記穴6はハトメにより補強されたハトメ穴6であることを特徴とする脱出装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の脱出装置において、前記穴6に係止するフック部16が一端に設けられ、人体の手若しくは足に係止する係止部17が他端に設けられた漂流防止体18を具備したことを特徴とする脱出装置に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、不使用時には折り畳んで収納でき、また、大型のボンベやインフレータを用いることなく膨張させることが可能で鉄道車両にも搭載することができ、筏としても使用可能な実用的な脱出装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例の概略説明図である。
図2】本実施例の概略説明斜視図である。
図3】本実施例の概略説明斜視図である。
図4】本実施例の送気体2の概略説明縦断面図である。
図5】本実施例の送気体2の拡大概略説明図である。
図6】本実施例の送気体2の概略説明横断面図である。
図7】本実施例の気体注入口14の拡大概略説明図である。
図8】本実施例の漂流防止体18の概略説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
例えば鉄道車両3の開口部4近傍に折り畳んだシュート体1と送気体2とを収納しておき、緊急時には、送気体2からシュート体1に気体を注入して膨張させ、図1に図示したように鉄道車両3の開口部4にある手摺等と穴6とをロープ等の紐体19で係止して車両3に立てかけるように設置することで、乗客はシュート体1上を滑り下りて安全に車両3から脱出できる。
【0019】
本発明の送気体2は、大型のボンベではなく、ボンベ収納体7内に複数の小型ボンベ8を収納したから、また、インフレータを用いないから、鉄道車両3にも搭載可能となる。
【0020】
また、シュート体1は津波や洪水等の際に筏としても利用でき、また、シュート体1に多数の穴6を設けていることで、シュート体1上に上がれずとも、例えば、穴6に係止するフック部16が一端に設けられ、人体の手若しくは足に係止する係止部17が他端に設けられた漂流防止体18等を用いることで、人体がシュート体1から離れて漂流してしまうことを防止でき、救助を安全に待つことができる。
【実施例】
【0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、気体を注入することで膨張する袋状のシュート体1と、このシュート体1に前記気体を注入するための送気体2とから成り、車両3の開口部4に前記シュート体1を係止させて車外に脱出する際に使用する脱出装置であって、前記シュート体1の外周部5には多数の穴6が所定間隔で設けられており、前記送気体2は、ボンベ収納体7に複数の小型ボンベ8が内装されて構成され、前記送気体2には前記小型ボンベ8を前記ボンベ収納体7の外部から開閉操作するためのボンベ操作部が設けられ、更に、前記送気体2には前記小型ボンベ8を開操作して前記ボンベ収納体7内に充満した気体を前記シュート体1に注入する送気管9が設けられているものである。
【0023】
本実施例は、鉄道車両3の左右側部及び後端の開口部4の近傍位置に収納され、緊急時に各開口部4に係止させて使用される。なお、鉄道車両3に限らず、バス等の陸上車両や航空機等で使用しても良い。
【0024】
具体的には、図2,3に図示したように、シュート体1は可撓性及び難燃性を有する合成樹脂製であり、膨張させた際、左右両側部に手摺となる左右の凸部20が設けられ、上下両端部に滑り降りた際にクッションとなる上下の凸部21が設けられる構成としている。なお、難燃性は塗料によって付与しても良い。また、シュート体1は全体としては平面視矩形状の筏形状となり、水に浮かべて筏のように使用することができる。
【0025】
また、シュート体1の外周部5(鍔部)は薄枠状であり、その内側が気体注入により膨出する部分となる。この外周部5に所定間隔で一周するようにハトメで補強されたハトメ穴6が設けられる。ハトメ穴6はシュート体係止用の紐体19により鉄道車両3の開口部4近傍の手摺等に係止するために用いることもできるし、後述の漂流防止体18を係止するために用いることもできる。
【0026】
また、シュート体1を鉄道車両3の開口部4に係止した際、鉄道車両3及び地面と接触するシュート体1の裏面所定部位、即ち、シュート体1の裏面の上端側及び下端側には、補強面材13が設けられている。補強面材13としてはゴムや合成樹脂や繊維強化樹脂から成るものを採用できる。
【0027】
送気体2のボンベ収納体7は、金属製の箱体であり、COガスが充填された多数の小型ボンベ8が設けられている。
【0028】
また、ボンベ操作部は、図4〜6に図示したように、ボンベ収納体7(の端面)に貫通状態に設けられる軸体10と、この軸体10のボンベ収納体7の外側部分と係止して該軸体10を回転させる回転操作体11とから成り、軸体10のボンベ収納体7内に位置する部分には小型ボンベ8の頭部8aを押圧して該小型ボンベ8内の気体を放出するためのカム部12が設けられている。
【0029】
小型ボンベ8は、ボンベ収納体7の内面に互いに平行となるようにボンベ操作部の軸体10を挟んで固定されたボンベ固定部22に、小型ボンベ8の首部8bが係止されることで固定される。小型ボンベ8はボンベ固定部22に2列で固定される。また、小型ボンベ8は、その頭部8aが、軸体10に設けられるカム部12と接触するようにボンベ収納体7の高さ方向中央側に露出する状態で固定される。この小型ボンベ8の内容量は80g以下のものを採用する(本実施例では74g)。内容量80g以下のものを採用することで、ボンベ収納体7も小型化でき、また、鉄道車両3にも搭載可能となる。
【0030】
本実施例では、軸体10を挟んで上下2つずつ計4つの小型ボンベ8を同時に開閉する1組とし、計4組の小型ボンベ8をボンベ収納体7に内装している。
【0031】
各組の小型ボンベ8の頭部8aを押圧開放するカム部12は、軸受部23に受けられた軸体10に2つずつ設けられている。カム部12は楕円形状で、軸体10を回動して長軸側を上下の小型ボンベ8の頭部8a側に位置させることで組中の各小型ボンベ8の頭部8aを同時に押圧して気体(COガス)を放出させるように構成されている。
【0032】
軸体10のボンベ収納体の外側に突出する部分には、回転操作体11(レンチ)の先端穴が嵌合する断面四角形状部が設けられている。従って、回転操作体11を軸体10の断面四角形状部に嵌合して回転操作することで、ボンベ収納体7に内装された小型ボンベ8を各組毎に開操作してCOガスを放出させ、小型ボンベ8でも迅速に大量のガスを放出してシュート体1に送気することができる。符号24は持ち運び用の把手部、25は圧力逃し弁である。
【0033】
本実施例においては、薄板状の回転操作体11をボンベ収納体7の端面に固定ネジ26で固定している。この回転操作体11は一の軸体10の断面四角形状部に先端穴が嵌合した状態で固定されている。また、他の軸体10の断面四角形状部には、ストッパー28(の先端穴)が嵌合され、このストッパー28が固定ネジ27でボンベ収納体7に固定されることで、誤って操作することがないように構成されている。従って、緊急時には、固定ネジ26による固定を解除して回転操作体11を取り外し、軸体10を回転操作する。また、ストッパー28により固定された軸体10を回転操作する際には、固定ネジ27による固定を解除してストッパー28を取り外して操作する。
【0034】
小型ボンベ8から放出したガスは、ボンベ収納体7内に充満し、このボンベ収納体7の上面に設けられた送気管9を通じてシュート体1へと送気される。送気管9は、シュート体1の気体注入口14に挿入される(図7参照)。符号29は気体注入口14のキャップ、15は逆止弁である。送気管9を挿入する際には逆止弁15の閉塞付勢力に抗して押し開くように送気管9の先端を挿入し、送気後、送気管9を抜出する際には逆止弁15が戻り動して気体注入口14が閉塞される。これにより、シュート体1の膨張状態が良好に維持される。
【0035】
また、シュート体1と共に、図8に図示したような、ハトメ穴6に係止するフック部16が一端に設けられ、人体の手若しくは足に係止する係止部17(例えば面ファスナーを設けた帯体)が他端に設けられた紐状の漂流防止体18を収納しておけば、津波や洪水等の際にシュート体1を筏として使用した際に、ハトメ穴6にフック部16を係止し、係止部17(帯体)を人体の手等に巻き付けて係止することで、容易に漂流を防止できる。
【0036】
本実施例は上述のように構成したから、鉄道車両3の開口部4近傍に折り畳んだシュート体1と送気体2とを収納しておき、緊急時には、送気体2からシュート体1に気体を注入して膨張させ、図1に図示したように鉄道車両3の開口部4にある手摺等と穴6とをロープ等の紐体19で係止して車両3に立てかけるように設置することで、乗客はシュート体1上を滑り下りて安全に車両3から脱出できる。
【0037】
本実施例の送気体2は、大型のボンベではなく、ボンベ収納体7内に複数の小型ボンベ8を収納したから、また、インフレータを用いないから、鉄道車両3にも搭載可能となる。
【0038】
また、シュート体1は津波や洪水等の際に筏としても利用でき、また、シュート体1に多数の穴6を設けていることで、シュート体1上に上がれずとも、例えば、穴6に係止するフック部16が一端に設けられ、人体の手若しくは足に係止する係止部17が他端に設けられた漂流防止体18等を用いることで、人体がシュート体1から離れて漂流してしまうことを防止でき、救助を安全に待つことができる。
【0039】
よって、本発明は、不使用時には折り畳んで収納でき、また、大型のボンベやインフレータを用いることなく膨張させることが可能で鉄道車両にも搭載することができ、筏としても使用可能な実用的なものとなる。
【符号の説明】
【0040】
1 シュート体
2 送気体
3 車両
4 開口部
5 外周部
6 穴
7 ボンベ収納体
8 小型ボンベ
8a 頭部
9 送気管
10 軸体
11 回転操作体
12 カム部
13 補強面材
14 気体注入口
15 逆止弁
16 フック部
17 係止部
18 漂流防止体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8