特開2017-86856(P2017-86856A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-86856(P2017-86856A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】サウナマット用下敷シート
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20170421BHJP
【FI】
   A47K3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-71474(P2016-71474)
(22)【出願日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-221326(P2015-221326)
(32)【優先日】2015年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505153096
【氏名又は名称】有限会社バースケア
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 守
(72)【発明者】
【氏名】高田 豊
【テーマコード(参考)】
2D005
【Fターム(参考)】
2D005BA01
2D005BB02
2D005BC02
2D005DA00
2D005DA02
(57)【要約】
【課題】サウナマットについてメンテナンスコストを増大させることなくサウナ利用者の快適な座り心地を維持しやすくする。
【解決手段】厚さ方向に所定の弾力性を有した発泡樹脂シート10からなりベンチ板2とサウナマット5の間に介装されるものであって、発泡樹脂シート10の表面から裏面に貫通する貫通孔11が所定の分布量で複数個設けられており、濡れたサウナマット5に利用者が着座することによりその尻圧で発泡樹脂シート10が厚さ方向に弾性収縮して貫通孔11の体積も所定割合以上縮小するものとされ、利用者が起立して発泡樹脂シート10の厚さが復元するのに伴い貫通孔11の体積が復元することで、その復元量に応じた水分をサウナマット5から貫通孔11内に吸引するものとして、利用者の着座・起立動作に伴いポンプ機能を発揮しながらサウナマット5の水分を吸引し、その乾燥を促すことを特徴とするものとした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に所定の弾力性を有した発泡樹脂シートからなりサウナ室のベンチ板と布製のサウナマットの間に介装されて所定のクッション性及び断熱性を発揮するサウナマット用下敷シートであって、前記発泡樹脂シートの表面から裏面に貫通する所定サイズの貫通孔が、少なくとも利用者の着座位置になる部分で所定の分布量となるように複数個設けられており、前記サウナマットが濡れた状態で前記利用者が着座することにより、その尻圧で着座位置の前記発泡樹脂シートが厚さ方向に弾性収縮してその位置の前記貫通孔の体積も所定割合以上縮小するものとされ、前記利用者が起立し前記発泡樹脂シートの厚さが復元するのに伴いその位置の前記貫通孔の体積が復元することで、その復元量に応じた水分を上方の前記サウナマットから前記貫通孔内に吸引するものとされており、前記利用者の着座・起立動作に伴いポンプ機能を発揮しながら前記サウナマットの水分を吸引して、その乾燥を促すことを特徴とするサウナマット用下敷シート。
【請求項2】
前記発泡樹脂シートは、厚さ6〜15mmの独立気泡型のものとされている、ことを特徴とする請求項1に記載したサウナマット用下敷シート。
【請求項3】
前記貫通孔は、円柱状に形成されて直径が4〜9mmとされており、その分布量が前記貫通孔配置部分の表面積に対する前記貫通孔の合計開口面積の割合で4〜10%とされている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載したサウナマット用下敷シート。
【請求項4】
前記貫通孔は、その直径が5〜7mmとされてその配置部分における面積100平方cmあたりの分布量が15〜25個とされている、ことを特徴とする請求項3に記載したサウナマット用下敷シート。
【請求項5】
前記貫通孔を設けた部分の前記弾力性は、面積100平方cmの円形かつ平坦な底面を有する20kgのウエイトを載せてから10秒後にその厚さが10%以上減少し、前記ウエイトを除去した5秒後には載せる前の厚さの95%以上に復元するものとされている、ことを特徴とする請求項1,2又は3に記載したサウナマット用下敷シート。
【請求項6】
前記発泡樹脂シートは、無架橋発泡ポリエチレンからなることを特徴とする、請求項1,2,3,4又は5に記載したサウナマット用下敷シート。
【請求項7】
前記貫通孔の開口部分を除く裏面総てに亘ってシリコンゴムによるコート層が設けられている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載したサウナマット用下敷シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウナの利用者が座るサウナマットの下に敷いてサウナマットの快適な座り心地を維持するためのサウナマット用下敷シートに関する。
【背景技術】
【0002】
サウナの利用者が座るベンチ板には、タオル生地等からなる布製のサウナマットが配置されるのが通常であり、これを使用することで利用者の肌が高温のベンチ板に直接触れることを回避しながら、その吸水性とクッション性により快適な座り心地を確保しようとしている。
【0003】
しかし、そのサウナマットの上に濡れた体の利用者が複数人座った後では、次の利用者が座る際にサウナマットの吸水能を超えた水分が滲み出てくるため、座り心地が極めて悪い状態となってしまう。また、利用者にとって前の使用者の汗等で濡れたサウナマットに座ることには強い抵抗感を覚えるものである。さらに、一般的なタオル生地製のサウナマットはクッション性が比較的小さく、水で濡れることでそのクッション性が一層低下することになる。
【0004】
これに対し、実登第3017052号公報には、マット本体の裏面に無数の小孔を全体に有した発泡樹脂による裏地材を重合してなるマットが記載されており、これをサウナマットとして使用することで、裏地材がマット本体の水分を吸水しながらそのクッション性に応じた所定レベルの座り心地を確保できるとも考えられる。
【0005】
ところが、このマットの発泡樹脂からなる裏地材は、それ自体がスポンジのように吸水する構造であることに加え、その上をマット本体が覆っている構造であることから、裏地材に保持した水分の乾燥性が極めて悪いという難点があり、サウナマットとして使用した場合、裏地材に水を含んだ状態で上から荷重するとマット本体表面に水分が滲んでしまい、極めて座り心地の悪いものになってしまう。そのため、裏地材と一体になったマット本体を比較的短時間で交換する必要が生じて、その洗浄・乾燥に余分な手間と時間を要することになる。
【0006】
一方、特開平5−137661号公報には、複数枚の独立気泡型発泡シートが積層されてなりその表面から裏面に貫通する水抜き小孔が設けられた浴室スノコが記載されている。この浴室スノコは、表面から裏面に貫通した水抜き小孔が複数個設けられた構造により、表面側にある水分を裏側に排水できるようにしたものである。
【0007】
そこで、このような浴室スノコをサウナマットの下敷として使用することを想定した場合は、その上に濡れたサウナマットを乗せた状況では小孔部分の上に滲んだ水分を受動的に排水するのみであり、サウナマットに含有している水分を積極的に吸い出す機能を有していないため、サウナ利用者の座り心地を改善する効果は殆ど期待できないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実登第3017052号公報
【特許文献2】特開平5−137661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、サウナマットに
ついてメンテナンスコストを増大させることなくサウナ利用者の快適な座り心地を維持しやすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、厚さ方向に所定の弾力性を有した発泡樹脂シートからなりサウナ室のベンチ板と布製のサウナマットの間に介装されて所定のクッション性及び断熱性を発揮するサウナマット用下敷シートであって、その発泡樹脂シートの表面から裏面に貫通する所定サイズの貫通孔が、少なくとも利用者の着座位置になる部分で所定の分布量となるように複数個設けられており、サウナマットが濡れた状態で利用者が着座することにより、その尻圧で着座位置の発泡樹脂シートが厚さ方向に弾性収縮してその位置の貫通孔の体積も所定割合以上縮小するものとされ、利用者が起立し発泡樹脂シートの厚さが復元するのに伴ってその位置の貫通孔の体積が復元することで、その復元量に応じた水分を上方のサウナマットから貫通孔内に吸引するものとされており、利用者の着座・起立動作に伴いポンプ機能を発揮しながらサウナマットの水分を吸引して、濡れたサウナマットの乾燥を促すことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、所定の断熱性及びクッション性を有した発泡樹脂シートをサウナマットの下敷として使用することで使用者の座り心地を確保しやすいものとなるが、その発泡樹脂シートに所定の弾力性を有したものを使用するとともに複数個の貫通孔を設けて利用者の着座・起立動作に伴うポンプ機能を発揮させ、上方のサウナマットの水分を貫通孔内に能動的に吸引する構成としたことにより、サウナマットの乾燥を促進しながらその座り心地を長時間に亘って良好に維持しやすいものとなって、サウナマットの交換頻度を低減することが可能となる。
【0012】
また、このサウナマット用下敷シートに用いる発泡樹脂シートは、厚さ6〜15mmの独立気泡型のものとされていることを特徴としたものとすれば、その弾力性により適度なクッション性と座り午心地を確保しながら充分なるポンプ機能を発揮しやすいものとなる。
【0013】
さらに、上述したサウナマット用下敷シートにおいて、その貫通孔は、円柱状に形成されて直径が4〜9mmとされており、その分布量が貫通孔配置部分の表面積に対する貫通孔の合計開口面積の割合で4〜10%とされていることを特徴としたものとすれば、優れた吸水機能を発揮可能なものとなる。
【0014】
この場合、前記貫通孔は、その直径が5〜7mmとされておりその配置部分における面積100平方cmあたりの分布量が15〜25個とされている、ことを特徴としたものとすれば、一層優れた吸水機能を発揮しやすいものとなる。
【0015】
さらにまた、上述したサウナマット用下敷シートにおいて、その貫通孔を設けた部分の前記弾力性は、面積100平方cmの円形かつ平坦な底面を有する20kgのウエイトを載せてから10秒後にその厚さが10%以上減少し、前記ウエイトを除去した5秒後には載せる前の厚さの95%以上に復元するものとされている、ことを特徴としたものとすれば、その弾性復元力により優れたポンプ機能を発揮可能なものとなる。
【0016】
加えて、上述したサウナマット用下敷シートにおいて、その発泡樹脂シートは、無架橋発泡ポリエチレンからなることを特徴としたものとすれば、柔軟性・断熱性に優れていることに加え、耐薬品性・耐熱性・撥水性・防湿性に優れたものとなるため、高温環境で塩素を含んだ水に曝されるサウナ室内での使用に適したものとなる。
【0017】
また加えて、上述したサウナマット用下敷シートにおいて、その貫通孔の開口部分を除く裏面の総てには、シリコンゴムによるコート層が設けられていることを特徴としたものとすれば、ベンチ板の上で滑りにくくなることに加え、前記貫通孔の裏面側開口部分周辺のシール性が高まって、ポンプ機能をさらに発揮しやすいものとなる。
【発明の効果】
【0018】
所定の弾力性を有した発泡樹脂シートをサウナマットの下敷として使用するものとして、複数個の貫通孔を設けて利用者の着座・起立動作によりポンプ機能を発揮しながらサウナマットの水分を貫通孔内に吸引する構成とした本発明によると、サウナマットのメンテナンスコストを増大させることなくサウナ利用者の快適な座り心地を維持しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における実施の形態であるサウナマット用下敷シートの平面図である。
図2図1のX−X線に沿う拡大した部分断面図である。
図3図1のサウナマット用下敷シートの機能を説明するための拡大した部分断面図であって、(A)は利用者が座る前の状態、(B)は利用者が座っている状態、(C)は利用者が立ち上がった状態である。
図4】本発明における実施例1において図1のサウナマット用下敷シートを実際に作成して実証実験を行った状態を示す図面代用写真であり、配置したサウナマット用下敷シートが見えるようにサウナマットの一部をめくった状態である。
図5】本発明における実施例2において吸水性試験を行った結果のグラフである。
図6】本発明における実施例2において乾燥性試験を行った結果のグラフである。
図7】本発明における実施例2においてベンチ板の乾燥性試験を行った結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態であるサウナマット用下敷シート1を平面図で示しており、図2図1のX−X線に沿う拡大した部分断面図を示している。このサウナマット用下敷シート1は、タオル生地等による布製のサウナマットとサウナ室のベンチ板(木材)との間に介装し、サウナマットのみでは不充分なクッション性及び断熱性を改善することで、サウナ利用者の快適な座り心地を確保するために使用されるものであるが、斯かる機能に加えてサウナマットの水分を積極的に吸引することにより、その肌触りを改善しながらサウナマットの乾燥を促進させる機能を発揮する点を特徴としている。
【0022】
即ち、本実施の形態のサウナマット用下敷シート1は、6〜15mmの厚さを有して厚さ方向に所定の弾力性を有した発泡樹脂シート10からなり、その発泡樹脂シート10の表面から裏面に貫通する直径4〜9mmで円柱状の貫通孔11が、その配置部分における発泡樹脂シート10の表面積に対する貫通孔11の合計開口面積の割合で4〜10%となるように、発泡樹脂シート10の上面総てに亘って均一に開口するように設けられている。
【0023】
そして、その上に配置されたサウナマットが濡れた状態で利用者が着座することにより、その尻圧で着座位置の発泡樹脂シート10が厚さ方向に弾性収縮し、その位置の貫通孔11の体積も所定割合以上縮小するものとされ、その後、利用者が起立して発泡樹脂シート10の厚さが復元するのに伴い、その位置の貫通孔11の体積が復元することで、その復元量に応じた水分を上方のサウナマットの内部から貫通孔11内に吸引するようになっている。
【0024】
斯かる発泡樹脂シート10としては、吸湿性が少なく適度な弾力性により優れたポンプ機能(吸盤作用)を発揮させる観点から、独立気泡型の発泡樹脂シートが好適であり、殊に、無架橋発泡ポリエチレンからなるものが最適である。尚、本実施の形態において発泡樹脂シート10の厚さを6〜15mmとしたのは、様々な態様で試験した結果に基いて、サウナマットの下敷として使用する使い勝手とクッション性のバランス、及び後述するその弾力性に基づくポンプ機能を確保することを考慮したものである。
【0025】
また、貫通孔11の直径を4〜9mmとしたのは、これよりも大きいと貫通孔11内に尻の皮膚が嵌入して座り心地が悪いものとなり、これよりも小さいと貫通孔内の汚れの除去が不充分になりやすく、洗浄に手間を要してしまうからである。尚、前述のように、発泡樹脂シート10の厚さが6〜15mmの本実施の形態の場合、その発泡樹脂シート10の厚さよりも小さい直径5〜7mmの貫通孔11とすることが一層好ましい。
【0026】
その貫通孔11の分布量としては、その配置位置における面積100平方cmあたり15〜25個の範囲とすることが好ましく、例えば450mm×1000mm、厚さ10mmの発泡樹脂シート10において直径6mmの貫通孔11をその全面に亘って設ける場合、互いに等間隔の配置にて合計900個程度を均一の分布量にて設けることが推奨される。
【0027】
本発明において、サウナマット用下敷シート1の弾力性は、その貫通孔11を設けた部分において、充分なポンプ機能を確保する観点から面積100平方cmの円形かつ平坦な底面を有する20kgのウエイトを載せてから10秒後にその厚さが10%以上減少し、前記ウエイトを除去した5秒後には載せる前の厚さの95%以上に復元するものであることが好ましいが、殊に、厚さ6〜15mmで独立気泡型発泡樹脂製のものを用いる本実施の形態では、前記弾力性を有していることにより、一層優れたポンプ機能を発揮可能なものとなる。
【0028】
次に、図3を参照して本実施の形態のサウナマット用下敷シート1の機能を説明する。図3(A)は、サウナ室のベンチ板2の上に配置したサウナマット5の下にサウナマット用下敷シート1を介装した状態を拡大した部分縦断面図で示している。この状態においては、利用者はサウナマット5の上に着座していないが、それまでの複数人の濡れた利用者の使用により、サウナマット5はある程度濡れた状態となっている。
【0029】
図3(A)の状態から、次の利用者がサウナマット5の上に着座して押圧することにより、図3(B)の状態になる。このとき、その押圧力(尻圧)によりサウナマット5とサウナマット用下敷シート1を構成する発泡樹脂シート10は厚さ方向に収縮するが、サウナマット5に含まれている少量の水分が貫通孔11を介してベンチ板2上面側まで移動し、貫通孔11下端側開口部の周縁で封水部50を形成する。
【0030】
その後、利用者が立ち上がることで、図3(C)に示すように発泡樹脂シート10はその弾性復元力により短時間でほぼ元の厚さに戻る。その際、各貫通孔11の下端側開口部は、封水部50によりベンチ板2表面に対し密着しながら封水(密閉)した状態となるため、貫通孔11の体積が拡大することでタコの吸盤のような吸引力を生じて貫通孔11開口部側のサウナマット5を吸い付けながら、それに含まれる水分51を貫通孔11内に吸引し、下方向に移動させるポンプ機能を発揮する。
【0031】
サウナマット用下敷シート1が発揮する上述したポンプ機能により、サウナマット5に含有している水分を顕著に減少させる結果となるため、次の利用者が表面に触れたときの不快感を大幅に低減させることができる。また、サウナマット5に含有する水分を大きく減少させながらベンチ板の上で支持した状態を維持することになるため、そのサウナ室内での乾燥を促す効果も期待できる。
【0032】
さらに、図3(C)に示したように、本実施の形態のサウナマット用下敷シート1は、その貫通孔11内に水分を吸引してベンチ板2表面側に保持するものであるが、貫通孔11が上下に貫通していることに加えこれを覆うサウナマット5が短時間で乾燥することにより、貫通孔11内に保持した水分51も比較的短時間で乾燥することになる。
【0033】
尚、図示は省略するが、上述したサウナマット用下敷シート1において、貫通孔11の開口部分を除く裏面の総てにシリコンゴムによるコート層を設けたものとすれば、ベンチ板の上で滑りにくくなることに加え、貫通孔11の裏面側開口部分周辺のシール性が高まることから、ポンプ機能をさらに発揮しやすいものとなる。
【実施例1】
【0034】
以下に、図1で示したサウナマット用下敷シート1と同様のものを作成して、サウナ室で実際に使用しながらその効果を検証した結果について説明する。
【0035】
作成したサウナマット用下敷シートは、酒井化学社製の無架橋発泡ポリエチレンシート(ミナフォーム:登録商標)の厚さ5mmを2枚貼り合わせて厚さ10mmとしたもの(銘柄1100)を450mm×1000mmに裁断するとともに、その全面に亘って直径6mmの貫通孔を均一の分布量にて900個設けて作成した。尚、その弾力性については、貫通孔を設けた状態で、面積100平方cmの円形で平坦な底面を有した20kgのウエイトを載せてから10秒後にはその厚さが15%減少し、前記ウエイトを除去した5秒後には、ほぼ載せる前の厚さ(100%)に復元することを確認した。
【0036】
そして、図4の左写真に示すように、このサウナマット用下敷シートをサウナ室のベンチ板の上に配置し、これよりも大きなタオル生地製のサウナマットで総て覆った状態で使用した。図4の右写真は利用者が座った後でその位置のサウナマットをめくった状態であり、その座った部分のサウナマットが湿った状態になっていることが分かる。
【0037】
そして、このサウナマット用下敷シートをサウナマットに併用する日と併用しないサウナマットのみの日を分けて、各々5日間使用した。そして、一日当たりのサウナマットの平均交換枚数を各々算出した。尚、交換のタイミングはサウナマットの濡れ具合に応じてサウナ室管理者の判断により決定した(通常通りの交換タイミング)。
【0038】
(結果)本実施の形態によるサウナマット用下敷シートを用いた実験例では、サウナマットの一日平均交換枚数が5枚であったのに対し、サウナマット用下敷シートを使用しない例でのサウナマットの一日平均交換枚数は7枚であった。
【0039】
前述の結果から、本実施の形態によるサウナマット用下敷シートを用いることで、サウナマットの交換頻度を顕著に低減できることが分かった。したがって、本実施の形態によるサウナマット用下敷シートは、サウナ利用者における良好な座り心地の維持について有効であり、且つ、サウナマット交換のための手間及びコストを顕著に削減できるものと考えられる。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明のサウナマット用下敷シートの機能性についてさらに詳細に検証する目的で以下のような実験を行った。実験に使用したのは、前述した実験に用いたものと同一の孔空きサウナマット用下敷シート(孔有り)、孔のない点以外は前記サウナマット用下敷シートと同様の下敷シート(孔無し)、A4サイズにカットしたタオル生地製のサウナマット、ベンチ板(木板を50cm×50cm×10cmのスノコ状に形成したもの)、木板(50cm×50cm×9mm)である。重量測定には総てエー・アンド・デイ社製EW−12Kiを用いた。
【0041】
(吸水性試験)使用者の使用感とサウナマットの交換頻度に関して影響の大きい要素であるサウナマットからの吸水性について、サウナマットに130gの水を含ませた状態にして、A:サウナマットをベンチ板の上に直接配置(シート無し)、B:ベンチ板の上に孔無しのサウナマット用下敷シートを敷いた上に配置(孔無し)、C:ベンチ板の上に孔有りのサウナマット用下敷シートを敷いた上に配置(孔有り)した状態にして、各々サウナマットに座って起立する尻圧負荷動作を100回繰り返し、10回ごと(1〜5回目までは毎回)にその重量を測定しながら、サウナマットに含まれる水分の低下量を記録した。
【0042】
その結果を図5のグラフに示す。グラフから分かるように、尻圧回数が多くなるに従って、水分量の低下が大きくなる傾向は総て共通しているが、AとBにおける水分低下量は近似しているのに対し、Cの孔のあるサウナマット用下敷シートの場合は、A,Bの状況と比較して約2倍の水分量の低下がみられた。
【0043】
(乾燥性試験)使用者の使用感とサウナマットの交換頻度に関して前述と同様に影響の大きい要素であるサウナマットの乾燥性について、以下のような試験を実施した。前述の吸水性試験と同じ条件のA,B,Cについて、室温80度・湿度10%(サウナ室とほぼ同様)の条件とした恒温恒湿室(日立アプライアンス社製ER−105EXMHH−R)にて120分まで10分ごとにサウナマットの乾燥状態を測定した。その結果、図6のグラフに示すように、A,B,Cの3つの条件においてその乾燥状態に有意な差は見られなかった。
【0044】
(ベンチ板の乾燥性試験)ベンチ板の耐久性(耐用年数)に関して影響の大きい要素とされるベンチ板の乾燥性について、以下のような試験を行った。上述したA,Cの条件において、前述のスノコ状のベンチ板の代わりに50cm×50cm×9mmの木板を使用して、各々着座・起立の動作により10回尻圧をかけることでベンチ板に見立てた木板に水分を含ませた後、室温80度・湿度10%の恒温恒湿室(ダバイエスペック社製TBE)にて乾燥させながら、経過時間毎の板の乾燥量を測定した。
【0045】
その結果を図7のグラフに示す。グラフから分かるように、サウナマット用下敷シートのないAの条件では、180分経過までは水分量の変化は殆どなく、210分経過後に水分量が急激に低下した。これに対し、サウナマット用下敷シート(孔有り)のあるCの条件では、時間の経過とともに水分量が減少して100分程度でほぼ乾燥状態となり、シート無しのAと比べて約半分の乾燥時間であった。
【0046】
(クッション性試験)使用者の使用感に関して影響の大きい要素である着座位置におけるクッション性について、以下のような試験を実施した。複合材料試験機(インストロン社製5865)を用い、直径150mmの円盤を圧縮用治具として、上述した試験で用いた孔有りと孔無しのサウナマット用下敷シートを各々上下から挟み、10mm/分の速度で1000N(102kgf)の荷重になるまで圧縮して、両者の変化を測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から分かるように、元の厚さに対して、圧縮荷重100kgfでは孔無しが61%、孔有りが58%まで元の厚さに対して薄くなっており、孔を設けたことでクッション性が5%程度増加していることが分かった。尚、この試験では、5Nの初期荷重を加えてからスタートさせ、試験後にスタート位置に戻した時点で4Nの荷重を有していたことから、ほぼ元の厚さに戻っていることになる。
【0049】
(考察)上述した試験結果から、所定の弾力性を有した発泡性樹脂シートに所定サイズの貫通孔を所定の分布頻度で設けたことで、それに密着したサウナマットの水分がその吸盤作用により能動的に吸水されたものと考えられ、且つ、貫通孔が適度に分布していることでクッション性も向上したものと考えられる。また、このような機能を有したサウナマット用下敷シートをサウナマットとベンチ板の間に介装したことで、ベンチ板の乾燥性向上にも繋がったものと考えられるが、これによりベンチ板の張替え工事の頻度について削減効果が期待されるものである。
【0050】
以上、述べたように、サウナマットについて、本発明によりメンテナンスコストを増大させることなく、サウナ利用者の快適な座り心地を維持しやすくすることが可能となった。
【符号の説明】
【0051】
1 サウナマット用下敷シート、2 ベンチ板、5 サウナマット、10 発泡樹脂シート、11 貫通孔、50 封水部、51 水分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7