【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記
図9に示す構造の特許文献1のノズルでは、ピストン101の噴射側に突出するロッド部および大径部をスリーブとし、貫通する中空部を液通路102としているため、液流量を増加させようとするとピストン101のロッド部が大径化し、パイロット空気を作用させるピストンの受圧面の面積が小さくなり、パイロット空気の圧力を増加させる必要がある。かつ、噴射停止を瞬時且つ液漏れなく行うにはピストンの受圧面の面積を増大させる必要があり、ノズル自体が大型化する問題がある。
【0008】
前記
図10に示す特許文献2のノズルも、特許文献1のノズルと同様に、液通路を開閉するピストン201のロッド部201rをスリーブとして空気通路208を設けている。液体と混合する空気量を増加させるにはロッド部201rを太くする必要があり、その場合、ピストン201の大径シリンダ部201bの受圧面201aが縮小する。よって、噴霧の停止を瞬時に行うと共に液漏れを確実に停止するにはピストン201の大径シリンダ部201bを大きくする必要があり、ノズル200が大型化する。前記特許文献2と同様な構造の特許文献3のノズルも前記と同様な問題を有する。
【0009】
このように、従来提供されている特許文献1、2のノズルは、液通路開閉用のピストンのロッド部をスリーブとして液体通路又は空気通路を設けているため、該通路を流通する液体または気体の流量を増加させる場合、ピストンが大型化し、該ピストンを付勢するスプリングも大型化し、ノズルが大型化する問題がある。さらに、スプリングのバネ力に圧搾空気の付加も必要となり配管が複雑になる。かつ、ロッド部をスリーブとし、その細い中空を液体通路とすると、該液体通路に液体に混入する異物が詰まりやすい問題もある。
【0010】
さらに、ノズルでは噴射圧を高めるために流体通路にオリフィス(最小断面部分)を設けており、
図9及び
図10のノズルにおいても空気と液体との混合部位にオリフィス300を設け、該オリフィス300の流出側で通路断面積が大きくなる。このように、通路に部分的に断面積が大きくなる部分があると、該部分で流体に乱流が発生する。この乱流により、水等の液体中に含まれるシリカ、カルシウム、マグネシウム等の異物が、液体通路の内周面に付着し、これが堆積して目詰まり発生の原因となる。空気等の気体も同様で、気体に含まれる異物が通路内周面に付着して気体通路の目詰まり発生の原因となる。特に、通路断面積が大きくなる部分で通路が屈曲したり、通路内周面に角部があると、乱流が発生しやすくなり、角部に沿って異物が堆積し、通路に目詰まりが発生しやすい問題もある。
【0011】
本発明は前記従来のパイロット空気でピストンを動作して液体流路を開閉する二流体ノズルにおいて、ピストンのロッド部を中空として液体通路または空気通路を設けずに、ピストンの小型化を図ることを主たる課題としている。
また、液体と空気とが混合する部位に設けられるオリフィスおよび通路屈曲部や角部で、異物が通路内面に付着するのを防止し、目詰まりの発生を低減、防止することを従たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、
ノズルのボデイ内において、中心軸線に沿って前後進可能に配置され、噴射側の前部に中実のロッド部を有すると共に後部にシリンダ部を有する液体通路開閉用のピストンと、 前記ピストンのシリンダ部を前後進自在に収容するシリンダ収容室と、
前記シリンダ収容室内の前記シリンダ部の後端面に押し当てて閉弁方向に付勢するスプリングと、
前記ピストンのロッド部前端の弁部で開閉される弁座を通路途中に備えると共に、前記通路の前端の混合室と前記ボデイの側面に開口する液体導入口とを連通する液体通路と、 前記ボデイの側面に開口する空気導入口と前記混合室を連通する噴霧用空気通路と、
前記ボデイの側面に開口する空気導入口と前記シリンダ収容室の前端のパイロット空気導入口とを連通するパイロット空気通路を備え、
前記ピストンのシリンダ部の前面の受圧面に供給する空気により該ピストンを後退させて前記液体通路の弁座を開いて二流体を混合して噴霧する一方、前記ピストンのシリンダ部の後面に作用する前記スプリングでピストンを前進させて前記弁座を閉じて噴霧を停止する構造としている二流体ノズルを提供している。
【0013】
前記構造からなる本発明のノズルは、液体通路を開閉するピストンを備えたノズルにおいて、弁部を先端に設けているピストンのロッド部は比較的小径のピン状の中実体とし、前記特許文献1〜3のようにロッドを筒として液体通路または空気通路としていないために、ロッド部を細くすることができる。その結果、該ロッド部を中央に突出させるピストンのシリンダ部の受圧面の面積が増加でき、ピストンを大型化することなく、ピストンの作動の迅速化を図りながらノズルの小型化を促進できる。
【0014】
前記液体導入口に連通する前記液体通路は、前記ピストンのロッド部が前後進するロッド収容室に開口し、該ロッド収容室の前端に位置する前記液体通路の弁座を介して前記混合室に連通し、
前記空気導入口に連通する前記噴霧用空気通路は、前記弁座より噴射側に設けた空気通路を介して前記混合室に連通させ、
さらに、前記スプリングを収容しているシリンダ収容室を囲む前記ボデイの壁に通気穴を設けて、大気に解放している。
【0015】
前記空気導入口は前記噴霧用空気通路と連通する噴霧用空気導入口と前記パイロット空気通路と連通するパイロット空気導入口とを前記ボデイの側面に近接させた位置に別個に設け、
あるいは、前記空気導入口を1つとし、該空気導入口に前記噴霧用空気通路とパイロット空気通路とを連通している。
【0016】
いずれの場合も、液体導入口には常時液体を供給し、噴霧用空気導入口とパイロット空気導入口を別とする場合は噴霧用空気通路には常時空気を供給し、パイロット空気通路には噴霧時にパイロット空気を導入すると共に噴霧停止時にパイロット空気の供給を停止している。
【0017】
前記空気導入口および液体導入口を設ける部位の前記ボデイの外面を矩形状とし、4辺のうち対向する2辺に前記液体導入口と前記空気導入口を設け、
前記噴霧用空気導入口とパイロット空気導入口を別に設ける場合は、隣接する辺に設けることが好ましい。
【0018】
前記のように、噴霧用空気導入口とパイロット空気導入口を別に設ける場合はノズルのボデイの近接する辺に開口しているため、ノズル内に設ける通路も簡単に形成できる。
特に、ノズルのボデイに1つの空気導入口を設け、噴霧時に導入する空気の一部をパイロット空気として用いてピストンを作動して液体通路を開く一方、噴霧停止時に空気の供給を停止すると、ピストンの背面にパイロット空気を供給しなくとも、背面側のスプリングによりピストンは移動して液体通路を閉鎖する構造とすると、ノズルの1つの空気導入口に1本の空気供給管を接続すれば良いだけで、配管が簡単になると共に、ノズル内部に設ける通路も簡単になり、ノズルを更に小型化することができる。
【0019】
また、ピストンの細径とするロッド部の先端に設ける弁部は台円錐形状とし、その錐状周面に設けている環状の取付凹部に0リングを、前記弁座との間のシール材として嵌合することが好ましい。
【0020】
また、前記ピストンのロッド部の長さ方向の中間部の外周面と前記ロッド収容室の内面との間に液漏れ防止用のシール材として、断面X状の環状体からなるXリングを介在させると共に、該Xリングの前面側にテフロン(登録商標)製のバックアップリングを介在させることが好ましい。
前記Xリングを用いているのはロッド部の径が小さくなるとリング径も小さくなり、リングのねじれや成形時のバリ等で耐久性、シール性に問題が発生することによるが、前記Xリングに代えて、0リングを用いてもよい。
前記バックアップリングは前記Xリングのはみだしを防止するために用いている。
【0021】
さらに、前記ピストンの大径シリンダ部の外周面と前記シリンダ室の内周面の間にYパッキンを介在させて、大径シリンダ部の全面の受圧面に作用するパイロット空気が大径シリンダ部の背面側に漏れるのを防止し、シリンダ部の受圧面に空気圧を確実に作用させることが好ましい。
【0022】
前記ノズルのボデイ内の前記混合室の流入側の中心に、前記噴霧用空気通路を囲む周壁を突出すると共に、前記液体通路の前端を前記混合室の流入側外周に開口し、
前記噴霧用空気通路を囲む周壁の前端側外周面および該前端側外周面を囲む前記混合室の内周面を前端に向けて縮径方向に傾斜させて前記液体通路の前端側に縮径させた環状の傾斜液体通路を設け、該傾斜液体通路から前記混合室に流入する液体を前記噴霧用空気通路の前端の空気噴射口から噴射する気体で吸引する構造としていることが好ましい。
【0023】
前記のように、液体通路に流路断面積を小さくしたオリフィスを設ける代わりに、混合室に向けて縮径する環状の傾斜液体通路を設けている。該傾斜液体通路では長さ方向で軸直角方向の流路断面積を漸次縮小しているため、液圧を次第に高めることができる。このように、流路に横断的なオリフィスを設けていないため、オリフィスを挟む流路が拡大せず、乱流が発生する部分がない。その結果、液体供給路を囲む内周面に液体中の異物が付着し、それが堆積して目詰まりが発生するのを低減、防止できる。
【0024】
さらに、前記噴霧用空気通路の先端の空気噴射口の周縁を鋭角とし、かつ、該噴霧用空気通路を囲む周壁の前端側内周面を傾斜させ、空気通路の前端の空気噴射口に連通する通路を傾斜空気通路とすることが好ましい。
かつ、前記空気噴射口の周縁に連続する前記傾斜空気通路は第1傾斜部と、該第1傾斜部に連続する第2傾斜部を備え、
前記第1傾斜部は前記ノズル軸線に対して0〜5度傾斜し、前記第2傾斜部はノズル軸線に対して10〜30度傾斜することが好ましい。
【0025】
さらに、本発明は、ノズルのボデイ内に液体通路を通して導入される液体と噴霧用空気通路を通して導入される空気とを混合する混合室を備え、
前記ノズルのボデイ内の前記混合室の流入側の中心に、前記噴霧用空気通路を囲む周壁を突出すると共に、前記液体通路の前端を前記混合室の流入側外周に開口し、
前記噴霧用空気通路を囲む周壁の前端側外周面および該前端側外周面を囲む前記混合室の内周面とを前端に向けて縮径方向に傾斜させて前記混合室の流入側の液体通路を縮径させた環状の傾斜液体通路としている二流体ノズルを提供している。
【発明の効果】
【0026】
本発明の二流体ノズルは、液体通路を開閉するピストンを備えたノズルにおいて、弁部を先端に設けるピストンのロッド部は比較的小径のピン状の中実体とし、前記特許文献1〜3のようにロッドをスリーブとして液体通路または空気通路としていないために、ロッド部を細くすることができる。その結果、該ロッド部を中央に突出させるピストンのシリンダ部の受圧面の面積が増加でき、ピストンを大型化することなく、ピストンの作動の迅速化を図りながらノズルの小型化を促進できる。よって、本発明の二流体ノズルの大きさを従来例の
図10に示すノズルの半分以下にまで小型化することができる。
かつ、ピストンを小型化するため、該ピストンを背面側から付勢するスプリングも小型化できると共に、該ピストンのバネ圧に圧搾空気圧を加えてピストンを動作する必要がなく、空気配管経路を簡素化することができる。
さらに、ピストンのロッド部をスリーブとして流路としないため、流路に目詰まりを発生させずに、噴霧液量を増加することができる等の種々の利点を有する。
【0027】
さらに、液体通路から導入する液体と噴霧用空気通路から導入する空気とを混合する混合室の流入側において、縮径する環状の傾斜液体通路を設け、該傾斜液体通路を長さ方向で軸直角方向の流路断面積を漸次縮小することで液圧を次第に高めることにより、流路に横断的なオリフィスを設けない構造とすると、オリフィスを挟む流路部分での乱流発生を防止できる。その結果、液体供給路を囲む内周面に液体中の異物が付着し、それが堆積して目詰まりが発生するのを低減、防止できる。