特開2017-87423(P2017-87423A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017087423-固定構造 図000003
  • 特開2017087423-固定構造 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-87423(P2017-87423A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】固定構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/56 20060101AFI20170421BHJP
【FI】
   B29C65/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-215422(P2015-215422)
(22)【出願日】2015年11月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】鯵坂 俊治
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD03
4F211AD24
4F211TA01
4F211TA06
4F211TC02
4F211TD14
4F211TN02
4F211TN75
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】貫通孔壁面と突起との間に隙間が確保された固定構造を提供する。
【解決手段】金属板10を樹脂板20に熱かしめ固定によりするにあたり、金属板10に、樹脂板20に形成された熱かしめ突起21よりも大径の貫通孔11を形成する。そして、その金属板10の上に、熱伝導率の低いシート材30を敷く。このシート材30には、熱かしめ突起21が貫通するだけの細径の貫通孔31が設けられている。そして、このシート材30を敷いた状態で、熱かしめ突起21を加熱、溶融することにより、金属板10を樹脂板20に熱かしめ固定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起を有する、熱可塑性の第1の部材と、
前記突起の径よりも大径である第1の貫通孔を有する、前記第1の部材よりも高い熱伝導率を有する第2の部材と、
前記第1の貫通孔と連通して前記突起を貫通させる第2の貫通孔を有し、前記第2の部材の上に敷かれて該第2の部材を前記第1の部材との間に挟む、該第1の部材よりも低い熱伝導率を有するシート状の第3の部材とを備え、
前記突起の、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔を貫通した部分の熱変形もしくは該部分へのオーバーモールドにより、前記第2の部材が前記第1の部材に固定されていることを特徴とする固定構造。
【請求項2】
前記第2の貫通孔が、前記第1の貫通孔よりも小径の貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記第1の部材が樹脂材料からなる部材であり、前記第2の部材が金属材料からなる部材であって、前記突起の熱かしめにより、該第2の部材が該第1の部材に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属等からなる高い熱伝導率を有する部材を熱かしめ等により固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
部材を熱かしめにより固定する構造が、カメラや携帯電話、その他の様々な機器で採用されている。例えば特許文献1には、コネクタにおける熱かしめの構造が示されている。
【0003】
ここで、自動車に搭載されている機器において、高い熱伝導率を有する金属部材を樹脂の熱かしめにより固定する構造について考察する。
【0004】
自動車のエンジンルーム内に搭載される機器の場合、例えば−40〜150℃の広い温度範囲でその動作が保証される必要がある。これを実現するため、上記の固定構造についても工夫が必要となる。すなわち、金属と樹脂とでは熱伝導率だけでなく熱膨張率も大きく異なっている。このため、樹脂材料に設けられる熱かしめ用の突起の径よりも、金属材料に形成される、その突起を貫通させる貫通孔の径を大径する必要がある。すなわち、貫通孔壁面と突起との間に隙間を持たせておき、熱膨張率の違いによる寸法変化をその隙間で吸収することで歪みの発生を抑える必要がある。
【0005】
一方、熱かしめは、上記の突起を加熱して溶解させる技術である。このため、突起の溶解時に、溶解した樹脂がその突起と貫通孔壁面との間の隙間に流れ込み、その隙間が埋められてしまうという問題がある。
【0006】
特許文献2には、突起と貫通孔との間に隙間を空けた構造が示されている。しかしながら、この特許文献2に提案された技術は、突起と貫通孔壁面との間の隙間を確実に埋めるための技術であって、ここで提起している問題とは相入れない技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−264025号公報
【特許文献2】特開2008−162125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、貫通孔壁面と突起との間に隙間が確保された固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の固定構造は、
突起を有する、熱可塑性の第1の部材と、
上記突起の径よりも大径である第1の貫通孔を有する、上記第1の部材よりも高い熱伝導率を有する第2の部材と、
上記第1の貫通孔と連通して上記突起を貫通させる第2の貫通孔を有し、上記第2の部材の上に敷かれてその第2の部材を第1の部材との間に挟む、第1の部材よりも低い熱伝導率を有するシート状の第3の部材とを備え、
上記突起の、第1の貫通孔および第2の貫通孔を貫通した部分の熱変形もしくはその部分へのオーバーモールドにより、上記第2の部材が上記第1の部材に固定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の固定構造は、第2の部材の上に敷かれた、第1の部材よりも低い熱伝導率を有するシート状の第3の部材を備えている。
【0011】
このため、熱かしめにおける熱、あるいはオーバーモールドによる熱が第3の部材で遮られ、突起の、貫通孔の壁面に対面している部分には、熱が伝わり難い。また、熱かしめあるいは、オーバーモールドによる溶融した材料は、第3の部材に遮られて突起と貫通孔壁面との間の隙間への侵入が妨げられる。このようにして、突起と貫通孔壁面との間に隙間が確保される。
【0012】
ここで、本発明の固定構造において、上記第2の貫通孔が、上記第1の貫通孔よりも小径の貫通孔であることが好ましい。
【0013】
こうすることにより、その隙間への溶融材料の侵入が一層確実に防止される。
【0014】
また、本発明の固定構造は、上記第1の部材が樹脂材料からなる部材であり、上記第2の部材が金属材料からなる部材であって、上記突起の熱かしめにより、第2の部材が第1の部材に固定されているものであってもよい。
【0015】
本発明は、具体的には、このような固定構造に好適である。
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明によれば、貫通孔壁面と突起との間に隙間が確保され、熱膨張率の違いによる歪みの発生を避けた固定構造が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自動車に搭載される機器の1つを構成するバスバーと呼ばれる部品の概要図である。
図2図1に示す部品で採用されている熱かしめ構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、自動車に搭載される機器の1つを構成するバスバーと呼ばれる部品の概要図である。
【0020】
この部品100は、2枚の金属板10,10により電力を移送する部品である。この部品100では、2枚の金属板10,10の間に樹脂板20が介在している。その樹脂板20は、2枚の金属板10,10の間隔を一定に維持するとともに、2枚の金属板10,10どうしの間の電気的な絶縁を担っている。2枚の金属板10,10のそれぞれは、熱かしめにより、樹脂板20に固定されている。この図1には、図1の上面側の金属板10を熱かしめにより樹脂板20に固定する、複数(この図1では5つ)の熱かしめの頭部22があらわれている。その頭部22と金属板10との間にはシート材30が挟まれている。この図1の下面側の金属板10も、同様の熱かしめ構造により、樹脂板20に固定されている。
【0021】
本実施形態では、樹脂板20が、本発明にいう第1の部材の一例に相当する。また、2枚の金属板10,10のそれぞれが、本発明にいう第2の部材の一例に相当する。さらに、シート材30が、本発明にいうシート状の第3の部材の一例に相当する。
【0022】
図2は、図1に示す部品で採用されている熱かしめ構造を示した断面図である。ここでは、2枚の金属板のうちの一方の金属板、かつ、1つの熱かしめ部分の構造のみが示されている。
【0023】
ここで、図2(A)は熱かしめ前であって、かつ、シート材配置前の状態を示している 。また、図2(B)は熱かしめ前であって、シート材を配置した後の状態を示している 。さらに、図2(C)は、熱かしめ後の状態を示している。
【0024】
樹脂板20は、熱可塑性の樹脂からなる部材であり、熱かしめ突起21を有する。具体的には、本実施形態における樹脂板20は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を材料としている。この樹脂板20の熱伝導率は約0.29W/mKである。また、金属板10は、ここでは銅合金からなり、貫通孔11を有する。この貫通孔11は、本発明にいう第1の貫通孔の一例に相当する。この金属板10の熱伝導率は約400W/mKであって、樹脂板10と比べ極めて高い熱伝導率を有する。ここで、熱かしめ突起21は、熱かしめにあたり、図2(A)に示すように、貫通孔11に挿通される。この金属板10に形成されている貫通孔11は、樹脂板20に設けられている熱かしめ突起21の径よりも太径の貫通孔である。このため、この貫通孔11に挿通された熱かしめ突起21と、この貫通孔11の壁面11aとの間には、隙間が形成されている。
【0025】
熱かしめにあたっては、さらに、図2(B)に示すように、シート材30が、樹脂板20との間に金属板10を挟むようにして、金属板10の上に敷かれる。このシート材30には、金属板10に形成されている貫通孔11と連通する貫通孔31が形成されている。この貫通孔31は、本発明にいう第2の貫通孔の一例に相当する。この貫通孔31は、第1の貫通孔11よりも小径であって、熱かしめ突起21がぎりぎり通る程度の寸法の貫通孔である。このシート材30は、樹脂板20よりも低い熱伝導率を有する。具体的には、本実施形態では、熱伝導率が約0.2W/mKのフッ素系シート、あるいはポリイミド系シートが採用されている。また、シート材30の耐熱温度は、樹脂板20の融点以上であることを要する。例えば、樹脂板20がPBT製の場合、シート材30は223℃以上の耐熱性が必要である。
【0026】
図2(B)に示すようにシート材30を敷いた後、熱かしめ突起21に熱かしめヘッド(不図示)が宛てがわれて、熱かしめ突起21が加熱、溶融される。そして、一旦溶融した熱かしめ突起21が冷えると、図2(C)に示す、樹脂による熱かしめの頭部22が形成される。金属板10は、この頭部22により、樹脂板10に固定される。このシート材30は、1つには、溶融した樹脂が熱かしめ突起21と第1の貫通孔11の壁面11aとの間の隙間に入り込むことを防ぐ役割を担っている。また、このシート材30は、さらに、熱かしめの際の熱が金属板10に伝わるのを防ぐ役割を担っている。
【0027】
ここで、仮に、シート材30を敷かずに、図2(A)の状態で熱かしめを行なうと、1つには、溶融した樹脂が、熱かしめ突起21と第1の貫通孔11の壁面11aとの間の隙間に入り込むことになる。また、もう1つには、極めて高い熱伝導率を有する金属板10を経由して熱が直ちに伝わり、熱かしめ突起21の第1の貫通孔11に入り込んでいる部分までもが直ぐに溶融してしまうことになる。この2つの原因により、熱かしめ突起21と第1の貫通孔11の壁面11aとの間の隙間が溶融樹脂で埋められてしまい、その隙間が確保されないおそれがある。
【0028】
ここで、金属板10と樹脂板20は、熱膨張率も大きく異なっている。このため、その隙間が確保されていないまま環境温度が高温になると、そこで歪みが生じ、図1に示す部品100が変形してしまい、正しく動作しなくなるおそれがある。本実施形態の場合、熱伝導率の低い、かつ、小径の貫通孔31が形成されたシート材30が敷かれているため、その隙間が確実に確保される。したがって、熱膨張率の違いのよる寸法変化は、その隙間で吸収され、高温環境下にあっても、図1に示す部品100の歪みや反り等の変形が防止される。
【0029】
なお、ここでは、熱かしめ突起21を加熱、溶融し、熱かしめにより金属板10を樹脂板20に固定する固定構造について説明した。ただし、本発明の固定構造は熱かしめによる固定に限られるものではない。すなわち、本発明の固定構造は、溶融した樹脂等を、上述の実施形態における熱かしめ突起21に相当する突起を覆うように流し込むオーバーモールドによる固定方法を採用したものであってもよい。
【0030】
また、ここでは、金属板10を樹脂板20に固定する例について説明したが、本発明は、金属板10、樹脂板20に限られるものではない。本発明の固定構造は、熱伝導率の高い部材を熱かしめあるいはオーバーモールドで固定する場合に、広く採用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 金属板
11 貫通孔
11a 壁面
20 樹脂板
21 熱かしめ突起
22 頭部
30 シート材
31 貫通孔
100 部品
図1
図2