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特開2017-87571樹脂部材と金属部材の接合体、及び金属接合用樹脂組成物
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  • 特開2017087571-樹脂部材と金属部材の接合体、及び金属接合用樹脂組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-87571(P2017-87571A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】樹脂部材と金属部材の接合体、及び金属接合用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/088 20060101AFI20170421BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
   B32B15/088
   B32B15/085 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-220685(P2015-220685)
(22)【出願日】2015年11月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000104364
【氏名又は名称】出光ライオンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(74)【代理人】
【識別番号】100141944
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】粟田 正実
(72)【発明者】
【氏名】大西 聡
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA08B
4F100AB02A
4F100AB04A
4F100AB10A
4F100AC00B
4F100AG00B
4F100AK07B
4F100AK46B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10B
4F100CA23B
4F100DG03B
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB07
4F100GB32
4F100JL03
4F100JL11
(57)【要約】
【課題】接着剤や表面処理を用いずに、十分な接合強度を有する樹脂部材と金属部材の接合体を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂10〜85質量%及び(B)ポリエーテルエステルアミド15〜90質量%を含む樹脂組成物からなる樹脂部材と、金属部材と、を有し、前記樹脂部材と前記金属部材が接した接合部を有する接合体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂10〜85質量%及び(B)ポリエーテルエステルアミド15〜90質量%を含む樹脂組成物からなる樹脂部材と、金属部材と、を有し、
前記樹脂部材と前記金属部材が接した接合部を有する接合体。
【請求項2】
前記(A)熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが70g/10分以下である請求項2に記載の接合体。
【請求項4】
前記樹脂部材が、さらに(C)フィラーを樹脂組成物中10〜75質量%含む請求項1〜3のいずれかに記載の接合体。
【請求項5】
前記(C)フィラーが無機フィラーである請求項4に記載の接合体。
【請求項6】
前記無機フィラーが、タルク、ガラスファイバー、炭酸カルシウム及びワラスナイトからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項5に記載の接合体。
【請求項7】
前記無機フィラーがワラスナイト又はガラスファイバーである請求項5に記載の接合体。
【請求項8】
前記(A)熱可塑性樹脂と(B)ポリエーテルエステルアミドの質量比((B)/(A))が0.5以上である請求項1〜7のいずれかに記載の接合体。
【請求項9】
前記金属部材が、鉄、アルミニウム及びステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜8のいずれかに記載の接合体。
【請求項10】
(A)熱可塑性樹脂10〜85質量%及び(B)ポリエーテルエステルアミド15〜90質量%を含む金属接合用樹脂組成物。
【請求項11】
前記(A)熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項10に記載の金属接合用樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが70g/10分以下である請求項11に記載の金属接合用樹脂組成物。
【請求項13】
さらに(C)フィラーを10〜75質量%含む請求項10〜12のいずれかに記載の金属接合用樹脂組成物。
【請求項14】
前記(C)フィラーが無機フィラーである請求項13に記載の金属接合用樹脂組成物。
【請求項15】
前記無機フィラーが、タルク、ガラスファイバー、炭酸カルシウム及びワラスナイトからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項14に記載の金属接合用樹脂組成物。
【請求項16】
前記無機フィラーがワラスナイト又はガラスファイバーである請求項14に記載の金属接合用樹脂組成物。
【請求項17】
前記(A)熱可塑性樹脂と(B)ポリエーテルエステルアミドの質量比((B)/(A))が0.5以上である請求項10〜16のいずれかに記載の金属接合用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材と金属部材の接合体及び金属接合用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー使用量の削減や二酸化炭素排出量の削減等の要請から、自動車等の輸送機器の軽量化が要求されている。本要求に対し、輸送機器の車体に多く使用されている鋼材の使用量を減らすことが検討されている。例えば、アルミニウム等の非鉄金属や樹脂部材等を鋼材の代替として使用することにより車体の鋼材使用量を減らす、マルチマテリアル化が検討されている。
比重の大きい鋼材を軽量部材に置き換えることは車体の軽量化に有効である。一方、車体の強度や耐食性等を考慮すると、鋼材と軽量部材を組み合わせて使用するには部材間の接合技術が重要となる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
部材間の接合技術について、例えば、樹脂部材と金属部材では、部材間に接着剤を介在させたり(例えば、特許文献2参照)、金属表面や樹脂表面に物理的処理又は化学的処理を施したりすることにより両者を接合している。即ち、従来は、接着剤や表面処理等を施さずに樹脂部材と金属部材を接合した場合、十分な接合強度を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−140067号公報
【特許文献2】特開2010−274545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂部材と金属部材との接合体を、接着剤や表面処理なしで製造することができれば、接着剤塗布工程や表面処理工程を省略でき、接合体の生産効率を向上することができる。
本発明の目的は、接着剤や表面処理を用いずに、十分な接合強度を有する樹脂部材と金属部材の接合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の接合体等が提供される。
1.(A)熱可塑性樹脂10〜85質量%及び(B)ポリエーテルエステルアミド15〜90質量%を含む樹脂組成物からなる樹脂部材と、金属部材と、を有し、
前記樹脂部材と前記金属部材が接した接合部を有する接合体。
2.前記(A)熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である1に記載の接合体。
3.前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが70g/10分以下である2に記載の接合体。
4.前記樹脂部材が、さらに(C)フィラーを樹脂組成物中10〜75質量%含む1〜3のいずれかに記載の接合体。
5.前記(C)フィラーが無機フィラーである4に記載の接合体。
6.前記無機フィラーが、タルク、ガラスファイバー、炭酸カルシウム及びワラスナイトからなる群から選ばれる少なくとも1つである5に記載の接合体。
7.前記無機フィラーがワラスナイト又はガラスファイバーである5に記載の接合体。
8.前記(A)熱可塑性樹脂と(B)ポリエーテルエステルアミドの質量比((B)/(A))が0.5以上である1〜7のいずれかに記載の接合体。
9.前記金属部材が、鉄、アルミニウム及びステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1つである1〜8のいずれかに記載の接合体。
10.(A)熱可塑性樹脂10〜85質量%及び(B)ポリエーテルエステルアミド15〜90質量%を含む金属接合用樹脂組成物。
11.前記(A)熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である10に記載の金属接合用樹脂組成物。
12.前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが70g/10分以下である11に記載の金属接合用樹脂組成物。
13.さらに(C)フィラーを10〜75質量%含む10〜12のいずれかに記載の金属接合用樹脂組成物。
14.前記(C)フィラーが無機フィラーである13に記載の金属接合用樹脂組成物。
15.前記無機フィラーが、タルク、ガラスファイバー、炭酸カルシウム及びワラスナイトからなる群から選ばれる少なくとも1つである14に記載の金属接合用樹脂組成物。
16.前記無機フィラーがワラスナイト又はガラスファイバーである14に記載の金属接合用樹脂組成物。
17.前記(A)熱可塑性樹脂と(B)ポリエーテルエステルアミドの質量比((B)/(A))が0.5以上である10〜16のいずれかに記載の金属接合用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着剤や表面処理を用いずに、十分な接合強度を有する樹脂部材と金属部材の接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の接合体の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の接合体は、樹脂部材と金属部材が接した接合部を有する接合体である。樹脂部材は、(A)熱可塑性樹脂10〜85質量%及び(B)ポリエーテルエステルアミド15〜90質量%を含む樹脂組成物からなる。
【0010】
本発明は、ポリエーテルエステルアミドを含有する樹脂組成物が金属に対し強い接着性を示すことを見出したものである。ポリエーテルエステルアミドは、従来から帯電防止剤として使用されているが、樹脂部材の金属に対する接着性を向上する効果については知られていない。
本発明の接合体では、樹脂部材が金属部材に対して強い接着性を示すことから、接着剤や表面処理を施さなくても、樹脂部材と金属部材を接合することができる。従って、接着剤塗布工程や表面処理工程を経ずに、射出成形や熱プレス成形等によって樹脂部材と金属部材とを接合し、十分な接合強度を得ることができる。
以下、本発明の金属接合用樹脂組成物(樹脂部材)及び接合体の構成成分、並びに、接合体の製造方法について説明する。
【0011】
1.金属接合用樹脂組成物
・熱可塑性樹脂((A)成分)
本発明で使用する熱可塑性樹脂((A)成分)は、特に制限はなく、例えば、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。この中でも、軽量で成形加工が容易であり耐薬品性にも優れることから、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0012】
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。
ホモポリプロピレンはプロピレンの単独重合体であり、ランダムポリプロピレンはエチレンとプロピレンのランダム共重合体であり、ブロックポリプロピレンはホモポリプロピレンとエチレン・プロピレン・ラバーからなる複合重合体である。これらは従来の公知の方法によって得られるものを用いることができる。
【0013】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は、通常、0.1〜70g/10分である。MFRがこの範囲であると、成形性及び接着性に優れる。MFRは、1〜50g/10分であることが好ましく、2〜20g/10分であることがより好ましく、3〜10g/10分であることが特に好ましい。
尚、MFRはJIS K7210に準拠して測定する。
【0014】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物中における(A)成分の含有量は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。(A)成分の含有量が30〜80質量%であれば、接着性及び成形性に優れる。
【0015】
・ポリエーテルエステルアミド((B)成分)
ポリエーテルエステルアミドは、ポリアミドブロックとポリエーテルエステルブロックから成るブロック共重合体であり、分子鎖中にアミド結合、エーテル結合及びエステル結合を有する重合体である。
【0016】
本発明で使用するポリエーテルエステルアミド((B)成分)としては、入手容易性の観点から下記式(1)で表されるものが好ましい。
【化1】
(式中、Rは原料ジカルボン酸に由来する有機基であり、例えば炭素数1〜120のアルキレン基である。a、b、mは各成分に由来する構成単位の繰り返し数である。nは繰り返し数である。)
【0017】
市販品としては、例えば、ペレスタットNC7530、ペレスタットNC6321、ペレスタット300、ペレスタット230(いずれも三洋化成工業株式会社製)等を用いることができる。
【0018】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物中における(B)成分の含有量は、好ましくは20〜70質量%であり、より好ましくは30〜60質量%である。(B)成分の含有量が20〜70質量%であれば、接着性及び成形性に優れる。
【0019】
また、(A)成分と(B)成分の質量比((B)/(A))は、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1.0以上である。質量比((B)/(A))が0.5以上であれば、接着性がさらに向上する。
【0020】
・その他の成分
本発明の樹脂組成物(樹脂部材)は、上述した(A)及び(B)成分の他に、フィラー((C)成分)を含むことができる。
(C)成分としては、タルク、ガラスファイバー、ワラストナイト、マイカ、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機フィラーや、セルロース、合成樹脂繊維等の有機繊維、カーボンファイバー等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物の剛性を向上する能力に優れる繊維状フィラーが好ましく、ワラストナイト及びガラスファイバーが好ましい。
【0021】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、通常、5〜75質量%であり、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。(C)成分の含有量が5〜75質量%であれば、剛性や衝撃特性等の機械特性の他、成形性にも優れる。
【0022】
本発明の樹脂組成物には、上述した(A)〜(C)成分の他に、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、結晶核剤、軟化剤、帯電防止剤、(C)成分以外の充填剤、顔料、難燃剤等の公知の添加剤を配合してもよい。添加剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、実質的に(A)成分、(B)成分及び任意添加成分((C)成分及び添加剤)のみからなっていてもよい。また、(A)成分及び(B)成分のみ、又は(A)成分、(B)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。
「実質的に(A)成分、(B)成分及び任意添加成分のみからなる」とは、組成物の95質量%以上100質量%以下(好ましくは98質量%以上100質量%以下)が(A)成分及び(B)成分であるか、又は(A)成分、(B)成分及び任意添加成分であることを意味する。
尚、本発明の組成物は本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分、(B)成分及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、上述した(A)成分及び(B)成分、並びに任意に(C)成分や添加剤を混合することにより製造できる。例えば、押出成形機等により上記成分の混合物を溶融混練し、ペレタイザーにて造粒することにより、ペレットに加工できる。
本発明の樹脂組成物又はペレット化したものを各種成形機にて賦形することにより、樹脂部材とすることができる。成形方法は特に限定されず、射出成形、異型押出成形、シート押出成形等、公知の方法が適用できる。
【0025】
2.金属部材
金属部材を形成する金属としては、鉄、アルミニウム、銅等の金属単体や、ステンレス(SUS)、マグネシウム合金等の合金が挙げられる。入手が容易であり、加工性及び強度に優れることから、好ましくは、鉄、アルミニウム又はステンレスである。
【0026】
3.接合体の製造方法
本発明の接合体は、上述した樹脂組成物からなる樹脂部材と金属部材とを有する。そして、両部材が接した接合部を少なくとも1か所有する。
樹脂部材及び金属部材の形状については特に制限はなく、それぞれ、棒状、シート状、曲面状等、様々な形状を採用できる。
接合部の形態も特に限定はない。例えば、金属部材の一面上の全体又は一部に接合部が形成されていてもよく、逆に、樹脂部材の一面上の全体又は一部に接合部が形成されていてもよい。また、一方の部材が他方の部材の全面又は一部を被覆している形状でもよい。
【0027】
図1は、本発明の接合体の一実施形態の概略断面図である。
接合体1は、樹脂部材10と金属部材20からなり、両部材の互いに対向する一面が接合部となっている。
【0028】
接合部の形成方法は特に制限はなく、公知の方法が採用できる。例えば、所定の形状に加工した金属部材を金型内部に設置し、その後、金型内に本発明の樹脂組成物を溶融状態で射出して成形する方法(インサート成形)や、樹脂組成物を所定の形状に成形して得られる樹脂部材と、所定の形状に加工した金属部材とを、両部材の少なくとも一部が重なるように設置し、その後、加熱しながらプレスする方法(熱プレス成形)が挙げられる。インサート成形では、樹脂部材の成形と同時に接合部が形成される。
成形条件ついては、使用する(A)成分及び(B)成分の種類に基づいて、適宜設定することができる。例えば、(A)成分としてポリプロピレンを使用する場合、ポリプロピレンの成形条件を参照して設定すればよい。
【0029】
本発明の接合体は、樹脂部材が金属に対し強い接着性を示すため、部材の接合面に接着剤や表面処理を施さなくても、樹脂部材と金属部材を接合することで、十分な接合強度を得ることができる。従って、本発明の接合体は、自動車、航空機、船舶等の輸送機器、宇宙船等の宇宙用途、家庭用電気機器、住宅設備機器等において、金属−樹脂複合部材として好適に使用できる。
【0030】
尚、本発明の接合体においても、接合部に接着剤や表面処理を用いてもよい。例えば、金属部材の表面を公知の表面処理によって粗くすることにより、接合部の表面積が広くなり、また、アンカー効果が期待できる。これにより、樹脂部材と金属部材の接合がより強固になることが期待できる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例及び比較例で用いた成分を以下に示す。
[(A)成分]
・F−300SP(ホモポリプロピレン、MFR=3.1g/10分(230℃、2.16kg)、株式会社プライムポリマー製)
・J−466HP(ブロックポリプロピレン、MFR=3.5g/10分(230℃、2.16kg)、株式会社プライムポリマー製)
[(B)成分]
・ペレスタットNC7530(ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、融点約176℃、三洋化成工業株式会社)
・ペレスタットNC6321(ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、融点約203℃、三洋化成工業株式会社)
[(B’)成分(比較例樹脂成分)]
・トーヨータックPMA−H1100P(マレイン酸変性ポリプロピレン、東洋紡績株式会社製)
・タフテックH1052(スチレン系エラストマー、旭化成ケミカルズ株式会社製)
・YSポリスターT130(テルペン樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製)
[(C)成分]
・ナイグロス8(ワラストナイト(針状フィラー)、NYCO社製)
・ソフトン1800(炭酸カルシウム、平均粒径1.25μm、白石カルシウム株式会社製)
・B9(タルク、浅田製粉株式会社製)
・ECS03T−480(ガラス繊維、平均繊維長3mm、日本電気硝子株式会社製)
[他の成分]
・イルガノックス1010(フェノール系酸化防止剤、BASFジャパン株式会社製)
・イルガフォス168(フォスファイト系酸化防止剤、BASFジャパン株式会社製)
【0032】
実施例1〜8
(1)樹脂ペレットの作製
表1に示す配合量で(A)〜(C)成分及びその他の成分の混合物を押出成形機により溶融混練し、ペレタイザーにて造粒することでペレットに加工し、供試の樹脂ペレットとした。
表1に示す配合量は、(A)成分〜(C)成分についてはこれら全量に対する質量%であり、他の成分については(A)成分〜(C)成分の全量を100質量部としたときの質量部である。
【0033】
(2)接合体の作製
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを下地とし、円形にくりぬいた他のPTFEシート(円形空隙部:直径40mm、厚さ1mm)をその上に置いた。熱プレス後に空隙が残らないように量を調節して供試の樹脂ペレットを円形空隙部に充填した。鉄又はアルミニウムの金属シート(金属部材)(幅:10mm、長さ50mm、厚さ0.2mm)を、長さ20mm程度の部分が樹脂ペレットに重なり、長さ30mm程度の部分は樹脂ペレットに重ならないように、円形空隙部の上に重ねた。この上にさらにPTFEシートを被せた。即ち、金属シート部分を除いて、供試樹脂からなる円柱の上面、下面及び側面のいずれもPTFEと接触するようにした。
この状態で、200℃、10MPaで300秒間熱プレス成形を行い、その後放冷して接合体を得た。
【0034】
(3)接着性の評価
得られた接合体について、下記の方法によって、樹脂部材と金属部材の接着性を評価した。結果を表1に示す。
金属部材のうち、樹脂部材と重なっていない部分を、フック又はクリップを用いてプッシュプルゲージ(デジタルフォースゲージ、株式会社イマダ製SSII−2)に結びつけた。この際、フック又はクリップが測定時には容易に離れないようにした。
樹脂部材を固定した上で、プッシュプルゲージを用いて金属部材を樹脂部材の円柱上面に対して90度の方向に引き上げた。金属部材が樹脂部材から完全に引き剥がされるまでの最大荷重を測定し、引き剥がし荷重とした。引き剥がし荷重が測定上限の20Nを超え、測定が不可能である場合や、金属部材が樹脂部材から剥がれず樹脂部材が凝集破壊した場合は、「>20(N)」と表記した。
実施例1〜8の接合体は、いずれも優れた接合性を有することが分かる。
【0035】
比較例1〜6
樹脂組成物の組成を表1に示す通りとした他は、実施例1と同様にして接合体を作製し、評価した。しかしながら、(B)成分を含まないか、又は(B)成分の含有量が所定量以下である比較例1〜6では、樹脂部材と金属部材の十分な接合強度は得られなかった。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の接合体は、自動車、航空機、船舶等の輸送機器、宇宙船等の宇宙用途、家庭用電気機器、住宅設備機器等において、金属−樹脂複合部材として好適に使用できる。
本発明の金属接合用樹脂組成物は、金属−樹脂複合部材の樹脂部材を形成する材料として好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 接合体
10 樹脂部材
20 金属部材
図1